○松任谷
説明員 水産金融につきましては、
水産庁といたしましても、現在の
漁業経営の実態にかんがみまして、この問題に重点を置きまして打開の道を講じたいというふうに、いろいろと考えておるのでございまするが、御承知の通り、これは大体企業金融とい
つたようなものと、協同組合とい
つたような二つの大きな分類にわかれております。企業金融につきましては、見返り
資金の問題、あるいは融資あつせんの問題とい
つたふうに、比較的信用がある企業金融というべースの上に立
つてや
つておるのでございまして、そうい
つた線に
沿つて極力ごあつせんを申し上げるという立場をと
つておるのでございますが、沼岸の中小零細な
漁業者を構成員としております組合員の金融ということになりますと、いずれも信用力が薄くて、その間何らか
政府の施策を待つのでなければ、金融のベースにも乗りがたいという実態にあるので、
水産庁といたしましては、とに
かく組合金融というものは、
漁業の中心をなすべき沿岸
漁業の経営のせわでもございまするので、この点についてはいろいろと組合の育成の問題と
関連して考えておるのでございます。具体的に申しますると、現在いろいろと問題がございまするが、組合金融は、御承知のように農林中央金庫を中心にしてはかられておるのでございまして、その間農林中央金庫の傘下のもとに、従来の
漁業会が協同組合にかわ
つたというようなことで、いろいろ旧債の固定した部面がそのまま引継がれておる。そうしますると、組合育成の方針から申しまして、こういう固定した
部分を何とか動かすような形において金融の道を講じてやらなければ、せつ
かく設立された協同組合が、半身不随のような形にな
つてしま
つて、将来の強化とか整備とかいうことが、及びもつかなくなるような状態になるという問題が、一つ中心的にあるわけでございます。この第一番の問題をさらに具体的に数字的に申しますると、現在旧水産業団体の資産を承継するために、大体固定資産で十八億
程度、流動資産の固定した
部分で二十二億
程度の
資金が必要にな
つているのであります。そこで現在の金融の
関係から申しますると、極力自主態勢と申しまするか、出
資金なり貯金の増強とい
つたような面で、カバーして参るだけ参らなければいかぬというようなことになるのでございまするが、初めに申し上げました通り、沿岸中小零細な
漁業者の経営状態から申しまして、そういう自力によ
つてこれをまかなうことが、なかなか困難な
状況でございますので、これをたとえば財政
関係、あるいは預金部
資金とい
つたようなものに期待いたしまして、長期かつ低利の借入れによりまして、これを打開して参りたいというふうに、現在のところ方針を立てまして進んでおるのでございます。この点は御承知の通り、農業協同組合にも同じような問題がございまして、その
方面と方向を一にして、かつ方法を一つにして、
水産庁といたしましては解決の道をはかりたい、かように存ずるのでございます。かたがた協同組合自体の問題といたしましても、自主的にそういう方向でや
つて行きたいという機運が、今のところ動いておるのでございます。これがまず第一の協同組合
関係に関する前提の問題でございまして、こ問題を解決することによりまして、新しい
資金の法人が協同組合になされますならば、すなわち販売なり購買というような事業についての、新規の
資金というものが注ぎ込まれますならば、非常に生きて動いて参るということになるのではなかろうかと考えるのでございます。
それから第二の問題といたしましては、現在農林中央金庫で、御承知の通りエイド・フアンドによりまする増資の問題がございまして、それによ
つて農林債券を発行する、現在発行しておりますが、その債券による
資金を、
水産関係にぜひともこの際まわしたいということで、農林中央金庫の方とも具体的に折衝しておるのでございますが、この問題につきましては、大体の方針といたしまして、農林中央金庫では、農林、水産業とい
つたふうに種類別にわくを設定することを考えずに、具体的なケースにつきまして支店の審査を経て、本店に持
つて来たものにつきまして、めんどうを見て行きたいということを考えておるようでございまして、この面につきましては、
水産庁といたしましては、各
資金需要者
関係に呼びかけまして、そうい
つた方向で設備
資金なり、運転
資金の解決に当りたいというふうに考えておるのでございます。
それからなお協同組合
関係の金融の問題といたしましては、
漁業手形の問題があるのでございまして、これは現在のところ、全体から申しますると、御承知のように、基金目標というものによ
つてつなぎ融資が行われておるのでございまして、現在つなぎ融資が約十四億
程度出ておるのでございます。それに対して基金の積立てが三億
程度にな
つておる。非常に基金積立ての
状況が悪いのではないかというふうなおしかりを受けておるのでございますが、これにつきましても極力金融機関に対しましては、実際にまじめに経営して、
計画を立てましても、魚が寄らぬというような場合には、
資金の造成も困難であるという
実情もよく話しまして、この制度の存続をはか
つたのでございまするが、基金の積立てがいかにしても約束通りにな
つていないということは、申訳ない次第でございますので、
水産庁といたしまして、この基金が約束通り積立てられ得るように、いろいろと考えて、県等にも督励をして参
つておるのでございます。ただこの手形の問題は、現在のところ企業
関係と組合
関係とで約半々ぐらいの
実績にな
つておるのでございますが、できますれば将来手形基金とい
つたようなものを業種別なり、あるいはその他の分類によりまして、全国的なプールにまで持
つて行きたいというふうなことを考えております。
さしあたり組合金融の問題として問題になりますのは、そうい
つた点と、さらにもう一つ見返り
資金の利用の問題でございますが、これは組合金融としては、はなはだ
関係の薄い部面に現在な
つておるのでございまして、直接に見返り
資金が組合に対して貸され、あるいは農林中央金庫を通じて貸されるというようなことは、魚田開発の問題以外には、現在のところ問題にな
つておらないのでございまして、
あとの高度利用の問題でございますとか、あるいは南氷洋の母船等の問題は、比較的大中の企業を中心にしまして金融機関が直接審査し、融資をするというような建前をと
つておるのでございます。
以上申しましたように、組合の健全な育成とい
つたような点にまず重点を置きまして、そのつなぎの
資金を考えるということと並行して、組合が動けるような
資金のめんどうを見て行く、それがとりもなおさず組合員である事
業者の経営の改善の方向であるというふうに考えております。つけ足しになるかもしれませんが、例の
漁業権証券の
問題等につきましても、具体的ないろいろの金融方策を通じまして、その用途を考えて、その制度が確定されるという
見通しのもとに、
漁業権証券による
資金化の問題を打開して参
つたならばどうかというふうに、実は考えておるのでございます。
以上が大体
水産金融、ことに協同組合金融の
現状のあらましであります。