運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-10-19 第8回国会 衆議院 災害地対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月十九日(木曜日)     午後二時四十九分開議  出席委員    委員長 松井 豊吉君    理事 青木  正君 理事 飯塚 定輔君    理事 小淵 光平君 理事 小平 久雄君    理事 青野 武一君 理事 池田 峯雄君       青柳 一郎君    岡延右エ門君       金先 義邦君    川端 佳夫君       黒澤富次郎君    塩田賀四郎君       志田 義信君    高橋 權六君       田中不破三君    飛嶋  繁君       野村專太郎君   橋本登美三郎君       笹森 順造君    吉田  安君       井之口政雄君    田代 文久君  出席国務大臣         国 務 大 臣 周東 英雄君  委員外出席者         建設事務官         (河川局次長) 伊藤 大三君         建設事務官         (河川局防災課         長)      賀屋 茂一君 十月十九日  委員砂間一良君辞任につきその補欠として井之  口政雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  災害対策に関する件     —————————————
  2. 松井豊吉

    松井委員長 これより会議を開きます。  災害地対策に関する件を議題といたします。昨日と一昨日の委員会におきまして、各委員よりキジア台風による被害状況調査報告を聽取いたしました上に、政府当局に対しても質疑行つたのでありますが、関係大臣出席が少く、意を尽さないところができましたので、本日委員会を再開いたした次第であります。ただいま経済安定本部長官がお見えになつておりますので、同長官に対し質疑のある方には、この際これを許します。質疑の通告があります。井之口君。
  3. 井之口政雄

    井之口委員 安本長官に御質問申し上げます。先だつてから当委員会に各大臣がお見えになつて、今日の災害対策に対する積極的な意見を聞かれるものと大きな期待を持つていたわけであります。委員長初めそれを約束をしておいでになりました。われわれも質問その他の問題を用意しておつた。ところがたび重なる委員会大臣がお見えにならない。きようやつと初めて一人お見えなつた。こういう状態でありますが、政府は大体この災害対策に対して、非常に不熱心ではないかということをわれわれ考える次第であります。数百万人の人たちが、キジア台風並びにジエーン台風によつていまだに学校のきたない廊下などに住まつている。家もなく、職もないという人たちさえたくさんにいる今日、これに対して政府のとつている態度はきわめて冷淡な感を抱くのでありますが、それに対してどういう考えでかく不熱心であるのか、その点をひとつ全般的な問題として御答弁を願いたい。
  4. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまのお話でありますが、キジアジエーン台風による被害に対しては、政府としては重大な関心を持つて現地調査団を派遣し、また各地方要求等を見まして、今せつかくど方面に何億ということについての計画も立てつつあるわけであります。いろいろ出席要求があつたのに来なかつたというお話でありますが、各大臣それぞれ理由があつたと思います。私は先日の台風については、関係方面に具体的に予算の問題で折衝いたしておるのでありまして、その点は御了承を願いたいと思います。
  5. 井之口政雄

    井之口委員 二十五年度予算におきましてすでに予備費百億をとり、そして大体今までに五十億くらい使つておるそうでありますが、こういうふうなものに対しても、国家はすでに前もつて計画を厳重に持つていなければならなかつたはすだと思う。最近動乱がやんで、そしてわずかに復興にとりかかつているところ、中国においても黄河の災害対策というものは大々的なものをやつている。社会主義の国であつてこういうものが初めてできるという考えをわれわれ深くするのでありますが、幾らかでも、日本政府災害に対して、もつと具体的な方針を前もつて立てておくことが必要ではなかろうか。各地方調査団をたくさん派遣して、地方ではかえつて調査がうるさくて困つているということを話している。その声を出しておるのであります。この間もジエーン台風にあつた西宮市でやはりそれをこぼしておるのでありますが、次から次へ調査団は来るけれども、何一つものにならない。政府は一体何をしておるのか、国会は何をしておるのかという声がある。これに対してどういうふうに具体的に将来の計画を立てようとされるのか。大体今まできまつている方針だけでも御発表願いたい。
  6. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えしますが、ただいまの御質問は多少何か誤解があるのではないかと思います。政府予備金というものは五十億残つておりますが、これは復旧予算であります。各地方災害によつて復旧すべき具体的箇所が明瞭にならなければ配分ができないのであります。あらかじめ頭割りにわけておけという御趣旨ならば、これは実際りくつに合わぬことと思います。従つて今各府県それぞれの地方から出て来ておる具体的な調査に基いて、それが最後に具体的にわけられる運びになると思います。
  7. 井之口政雄

    井之口委員 この五十億の金の使途に対しましても、政府で自主的にこれを判断することができず、自主的に決定することができず、これに対してはやはり政府以外の力によつて許可を得なければならないものであるということを聞いておりますが、はたしてそうであるか。なるほど責任政府において負うであろうけれども、実際の状態がそういうことになつているのではなかろうか。そのためにかく仕事がはかどらないのではなかろうか、こう思うが、どうですか。
  8. 周東英雄

    周東国務大臣 これはどこまでも政府がきめるのでありまして、ただいま申し上げまするように、各府県からの具体的計画が出て、それに対してどういうふうにわけるかということをきめねばならぬ。その方が出て来なければ、わけようがありません。
  9. 井之口政雄

    井之口委員 責任政府においてとられるでありましようが、占領軍との関係において、向うの許可を得るという必要はないのかどうか。この点を具体的に聞かせてもらいたい。
  10. 周東英雄

    周東国務大臣 予算との関係がありますから、それに対する連絡はいたします。しかしいまだかつてこつちで出したことについて修正を要求したことはない。従つて問題としては早く具体的に各府県のがまとまつて、それを各府県に具体的にわけるということが急がれるわけであります。その点については井之口さんもよく認識していただかなければならぬ。ただ荏苒と遅らせておるのではない。ある県だけ先にやつてしまえばあとは足らなくなる。だからその点は各府県から出て参りまして、それに対して適正に、公正にまず初年度の経費をわけるということになると思います。ことに補正の問題については、五十億に加えるに、一応今度は二十五年度補正として土木関係は多分四十一、二億だと思いましたが、それを合せて考えなくちやならぬ。その点はよく御理解をいただきしまして、御協力を願いたいと思います。
  11. 井之口政雄

    井之口委員 それにしても非常に遅いと思うのであります。地元におきましては一日も早く復興することを希望して、そうして調査の点もどしどしと進めて行つて中央報告出しておるような状態を聞き及んでおります。その点は一日も早くやつてもらいたいと思います。  さて第一番に、今災害救助法によつていろいろなたき出しその他居住並びに被服等給與をいたしましたが、その額が、一体今度のジエーン台風並びにキジア台風において幾らぐらいの額に達しておるか、大体の点でもひとつ知らせてもらいたい。かつ被害者一人について、これがどれだけの額に達しておるのか。
  12. 周東英雄

    周東国務大臣 災害救助法に基く関係既定予算で進んでおるのでありまして、具体的に幾ら出ましたか、私承知いたしておりません。大蔵省の方に願いたいと思います。
  13. 井之口政雄

    井之口委員 その点もきわめて薄いものであつて地元災害者にとつては、ほとんど二、三日間のたき出しをこうむつただけであり、かつ居住といい、いまだに学校などに居住しており、そうして災害を受けたそのままの姿でおる所が地方においてあるのであります。これはなるほど、あなたの管轄外だというふうにおつしやればそれまでのことでありますが、政府全体としてはこの重大なものに対して、特に大衆の生活がかく窮迫しておるということに対しては、やはり徹底的に責任を負わなければならぬ。もつと積極的な熱意を示してこの問題を解決しなければいかぬと思います。かつ組まれているところの予算も、厚生関係としては一般的な予算としてごくわずかしか組んでいない。これでは広汎なる罹災民救済の場合に、すずめの涙ほどしか救済できないものとわれわれは考えます。もうそれはやらない前からすでにわかつており、また現地状態も事実それを証明しておる。大阪並び尼崎方面行つて見ますると、床上浸水が三尺も上つておる。それが毎日のように引いたり満ちたりしておつて、まるで水がピストンをやつておる。これに対して政府はどういう手も打つてない。ごくわずかな毛布を、それこそ何十人、何百人で一つをかぶつて寝なければならぬような悲惨な救助の手しか伸ばしていないということを、われわれは見て知つておるのであります。これに対してはもつと積極的にやらなきやならぬものだと思つております。しかし予算の面においてこれができないとすれば、今の政府にもはや災害救助するところの限度というものがあるのじやないか、もうこれ以上どうにもならない状態政府はあるのではなかろうか。これをするにはもつと強力な人民大衆の支持を得たところの政府でなければ、こういうことはやれないと思うのでありますが、どうですか。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 御意見は御意見として聞いておきますが、私どもはまだまだ今後においてもやるべき処置はあると思います。御承知であろうと思つて私は黙つてつたのでありますが、政府といたしましてはジエーンキジアに対して二十五億、ジエーンに対して十二億、キジア関係において十二億五千という預金部資金応急出しまして、応急処置に使われるように各府県にわけておる、これも一つの手であります。またただいま大蔵省の方で日本銀行、市中銀行を通じて適当な金の貸出しをも考えておりますが、こういう点もあわせて御考慮を願つておきたい。私どもはそれで十分とはまだまだ決して考えておりませんが、ともかくも災害の全貌がまだはつきりとわからぬ前に、日本財政金融でやり得る限りにおいて、一応応急資金として今の預金部資金出したということは、ひとつ認めていただかなければならぬと思います。
  15. 井之口政雄

    井之口委員 そこでそういう応急処置でさへも必要とせられるのであります。してみると、こういう災害の場合に、もつと積極的に、もつと急速に法律を運用して、単なる応急融資というだけでなくして、徹底的な災害復旧並びに救助というものにもつと大きな予算を支出し救済する準備をあらかじめやつておくのが政府の任務ではなかろうかと私は思いますが、どうですか。
  16. 周東英雄

    周東国務大臣 どうも予算関係誤解があると思います。あらかじめの準備として今年は百億組んであります。これは今までにない支出であります。それに対して六月から八月十日までに災害がありましたために、五十億を緊急に出した。あらかじめということに対する処置は、二十五年度この内閣が初めてとつ処置であります。たまたま今年は災害が非常に多かつたために、五十億ではまだ足らぬから、補正予算を組んで進めておるわけであります。
  17. 井之口政雄

    井之口委員 今までの災害のまだ復旧されていない部分でさへも約一千億からあるということを聞いております。そこへ持つて来て、わずかに五十億——しか上つていない。関西方面大阪兵庫和歌山だけでも約二千億からの災害の額に達している。いわんやこれに四国を加え、さらにその後の九州被害を加えましたならば、莫大な額に達するのだが、こういうものは予備費の百億やそこらをもつてしては、とても救済できるものではないと思う。もう初めからわかり切つておる。これに対して経済安定本部としては、もつと日本の全体の総合的な災害復旧というものに根本的、大々的な企画を持たれる意思はないのか。かつ緊急災害救助法でももつと拡張して、徹底的にやるというふうな意思はないのか、どうでありますか。
  18. 周東英雄

    周東国務大臣 根本についてはなお研究の余地がありますが、もう少し予算全般を見ていただきたいと思う。決して百億の予備費だけでやつておりません。百億の予備費もこの内閣がこの年度に初めて設けた制度でありますが、そのほかに過年度災害復旧費としては三百七十億組んであります。従来からの発生した災害について、初年度、二年度、三年度というかつこうで出て行く、これが計画でありまして、これをもう少し早く出していただくということは一つ考え方でありますけれども、これはあなたの方もよく御存じて、そう一ぺんに減税もやれ、社会保障もやれ、何もやれ——どうも共産党内閣をおとりになると、えらいことができるようにお考えになるが、そういうことは別といたしまして、やはり国の財政の面から考えまして、できるだけのことはして、今までの政府のやらなかつた過年度災害についての復旧費並びにその年度に起きた災害に対して予備費というようなものを組んだことは、やはり認めていただかないと私はいけないと思います。
  19. 井之口政雄

    井之口委員 そこで重要な問題にぶつかつていると思います。たとえば警察予備隊費用といたしましては、ほとんど法律も制定しないで数百億の金が見積もられている。そういつた場合にはしかも急速、迅速に行われ、惜しげもなく使われるにもかかわらず、災害のごとく、人民自身が、しかも大衆がこうむつているこの被害救済という場合には、税金がないのだがら、金がないのだから、こういうふうなわくでもつて押えられてしまう。ここに現在の政府の性格があるのじやなかろうかと私は思います。決して共産党はあまりそうむちやなことを言うのではなくして、今使われているような金の使い方では、軍国主義を復興するような方向、戦争を準備されるような方向へ金が使われているのであつて、そういう方面をやめて、国民の福祉、国民災害救助という方面にまわしたならば、もつとりつぱに行けるわけである。これをわれわれは考える。  さてさらに復旧費関係でありますが、いろいろな道路河川その他港湾の施設等に非常に多額費用を要しておる。これは今報告中だとのことでありますが、おそらく兵庫阪神地方から神戸、それから淡路方面、さらに和歌山方面、この辺をちよつと調査しただけでも感ずることは、これは今の五十億や、あるいはこれに対する補正予算などの関係では、とても復興できるものではない。淡路だけでもあの沿線の道路は急速に復興しなければならぬと思うのですが、それをやるだけでももう食い込んでしまつて、その他の方面には金が使えない。尼崎方面沈下地帯で、尼崎西部大阪沈下地帯の防波堤を築くだけでも厖大な金がかかる。これに対して政府はまるで投げやりの形でありますが、何か確定的な方針なり見通しでも立てておられるかどうか。
  20. 周東英雄

    周東国務大臣 今お答えを申し上げたのを聞いていらつしやらぬようですが、予備費だけでないということを申し上げた。来年度再来年度とも過年度災害復旧費というものは組まれて行くわけです。その金額のあんばいが、初年度ぜひここまでやつておかなければならぬ点がどれくういあるかという点について争いのあることはあるでしよう。しかしあなたのように五十億や百億でどうなるかと言われるのは、もう少し予算全体を見ていただきたい。過年度災害費というものは組んである。常に予算というものは、その年に発生したもののうちで応急にやらなければならぬものにまず初年度出して、多少苦しいながら——早い方がけつこうでありますけれども、苦しいながら延ばしてもらつて、二年、三年と片づけて行く、こういうよにあんばいして行かなければ、まじめに考えるときにどうしても財政上の問題があろうと思います。ただ初年度ここまでやた方がいいということについての争いは多少あると思います。そこは財政見通しであり、私どもも真剣に初年度どの程度までやつたらいいかということについては、なお研究し、できるだけ予算を増加して参りたいとは思つております。
  21. 井之口政雄

    井之口委員 簡単にさらにお尋ねいたしますが、農家が非常に大きな災害を受けております。かつ開拓民災害を受けておる。これに対して幾らかの融資というふうな点は、あるいは政府において計画するかもしれませんが、ここに災害費の二十五年度の分を見てみても、住宅施設は何ら含まれておりませんし、開拓事業に対しても何ら含まれておらない。そういうところに対してどれくらいの具体的な計画を持つておられるかということが一つ。それから農家被害に対しまして、今日の法律をもつてしては単に供出その他の補正をするだけであつて、積極的にこの被害救済しようということはできない。これをもつと積極的に、農家の家屋その他作物の被害を補償するというような計画国家総合計画として建てようとは思わないのであるか、あるいは漁業者の網その他漁船がみな流失しておる、この流失に対して、国家においてこれを補償しようというふうな考えはないか。それからいろいろな農業協同組合漁業協同組合等の当然公共施設と見られるべき性質のものが損害を非常にこうむつておりますが、これに対して補償する意思があるかどうか、この点をひとつあらためて聞いておきたいと思います。
  22. 周東英雄

    周東国務大臣 細目についてはただいま私よく覚えておりませんが、農業災害にいたしましても、復旧費について農林省からの要求があれば、その範囲において個別的に決定を見るはずであります。
  23. 青野武一

    青野委員 安定本部長官に二、三御質問したいと思いますが、一昨日の災害地対策委員会では建設大臣だけがおいでになつておりましたので、大体関係各省に関する広汎の質問のうち、建設関係だけの問題を四点ほど御質問しておいたのでありますが、幸いに安定本部長官おいでになりましたので、二、三大事なところを御質問したいと思います。  大体台風は忘れたころにやつて来るというようなことが新聞に書いてあるのでありますが、九州に関する限りは、台風の来るたびにほとんどやられております。これは中央気象台の統計を見ましても、いろいろな関係資料を集めましても、日本台風が襲うた場合にはほとんど例外なしに九州に上陸して来る。過去二十年間にわたる雨量の資料を集めてみますと、宮崎県が全国一であります。こういうことを考えますと五年に一ぺん、十年に一ぺん来る台風と違いまして、その被害額につきましても、十分の復旧工事が行われておりませんと、賽の河原の石積みで、元も子もなくしてしまう。終戦後五年間の各地水害、震災、災害台風等関係を衆議院を代表いたしまして同僚議員各地を見てまわつても痛切に感じておるのでありますが、ジエ一ン台風阪神を通過して、室戸台風と同じような大きな災害があつた。全国一の工業都市であり、被害額が大きいからというので、東北の六月、八月の水害九州キジア台風は、どちらかと申しますと小さく見られておる傾きがあるけれども被害総額の差異はありましても、被害を受けた者あるいは被害を甚大に受けた県当局理事者あたりにとりますれば、非常な苦しみをなめておるのが今日の現状であります。特に大分県のごときは、一年の県税を全部合しても教育費に足りない。授業料をこれに加えて辛うじて教育費が一ぱいである。道路工事もその他の行政施設も全然予算がない。第二の島根県のように財政的破綻の上に今日立つておるときに、キジア台風で五十四億円やられた大分県市町村も県も国家の大きな援助がなければもうどうすることもできません。県会議員や知事が私ども九州班視察班のとこに参りまして、文字通り声涙ともに下る陳情をされたときには、私は思わず涙ぐましくなつたのであります。こういう実情の所も九州一つの県にはあるのでありまして、特に鹿児島県や宮崎県は台風のあるたびにひどくやられておるのであります。宮崎県の南部、鹿児島、こういつた所は御承知のように火山灰の地層をなしておりますので、その被害はほかの県に比べて三倍、五倍も大きい。しかもいつもやられておる。こういう所はたとえば災害に関する予備費が二十五年度百億円予算が組まれますれば、そのうちの少くとも三〇%くらいは、常に台風に襲われる大きな被害のある県に優先的に大体決定しておくべきである、こういう意見現地から聞き、われわれもそういうふうな考えを持つて帰つたのでありますが、この点について安本長官の御意見を承りたい。しかも二十六年度災害に関する予算は、今いろいろな意味で困難な立場に立つて関係方面と折衝を続けられておるそうでありますが、そういう意味から言いましても、私ども委員としてはぜひこの点を承つておきたいと存じます。
  24. 周東英雄

    周東国務大臣 災害予備費には、九州宮崎県等のごとき県に対しては、あらかじめ三〇%くらい割当てておいたらという御意見でありますが、金が非常に余裕がありますれば、各府県に割当てておくというようなことができれば非常にいいと思いますけれども、現段階においては、まだその程度まで行き得ないと思いますし、またそういうような考えは持つておりません。
  25. 青野武一

    青野委員 一昨日増田建設大臣にもお尋ねしたのでありますが、あまり答弁が納得行くところまで行つておりませんので、これはひとつ長官にお尋ねしておきたいと思います。私はここにたくさん資料を持つておりますが、あまり具体的になりますので、その内容は申しません。しかし災害復旧費が非常に多額を要しますので、財政的に非常に貧弱な被害地の各県あるいは町村は非常に困つております。今度の九州キジア台風は、中国の一部である山口県、広島県を通過しておりますが、大体九州四国の間を拔けて、高潮による——少くとも二メートルぐらいの高潮でありますが、しかもそれが横なぐりにぶつかつて来た勢いの強い台風によつて潮の力が非常に大きかつたために、ほとんど堤防が破れてしまいまして、福岡県は東部海岸はわずかでありますが、三十キロの海岸堤防において三分の一程度の十キロがつぶれた。そうすると台風にあらざる普通の潮の際でも、どうすることもできない。中津市のごときは、中津市内だけでも七百万円に相当する土嚢を築いております。これは報告書の中にもありましたが、悪いものは一箇月、米あたりを入れますかますであつて丈夫なものであつても、二箇月すれば中は砂でありますからぼろぼろになつてしまつて、とうすることもできない。これは九容全体で一億以上になります。一市が七百万円以上の金を投じておるが、国庫補助の対象にはなりません。これは各町村負担になつて、県はこれを出してやりたくても財政的な余裕がない、こういうものは予算関係でまだ認められておらないと建設大臣は言つておりましたが、これは復旧費の中から支出するように、町村が前もつて自分の努力でつなぎ資金をつくつて一時応急的処置をやる。そういつたものは政府から補助金をやつたときに差引いて、それを補強して行くというふうにしてもらわなければ、災害のあるたびに復旧費はわずかである、応急的にやつた費用地方負担であるというのでは、これはどうすることもできません。この点について福岡県のごときは、沿岸三十キロのうち三分の一やられてどうすることもできない。干拓地帯はぶちこわれ、塩水が飛び込んで、川岸の右左の万田のごときは百五十町歩塩水によつて収穫は皆無、農民はその日から食えない、働くには救済事業がない、税金は容赦なく取立てられる、米は一つもとれない。こういつたものを地方救済ができなければ、国家でやる以外に道はない。予算があるないにかかわらず、こういう気の毒な罹災民救済するものは、国家の大きな財政で、まかなわなければやれないところに来ているのではないか、こう考えますが、ただいま申しましたように、土嚢といつたようなもので応急処置をやつているような費用は案外大きな金額に上りますが、その点についてひとつ意見を承つておきたい。
  26. 周東英雄

    周東国務大臣 まことに御同情にたえない問題であります、しかし国も地方も大貧乏のどん底に落されておる上に災害が来て、弱り目にたたり目ということはこのことだろうと思います。それにつきまして、地方よりは国の方が財政的に大きいから、できる限り中央から地方へ援助するようにという御意見もごもつともであります。政府といたしましてもでき得る限り災害復旧費等はよけい出したいと思つて、われわれ内閣のものは全部その気持でおります。いろいろと努力はいたしおりますけれども財政的の関係上なかなか容易ではございません。そういう場合でございますので、むろん苦しい点もありましようけれども、今市から応急的にかますを出したり、土嚢を積んだりしておるというような、地方ででき得る点は、今までも出たのですから、両方で負担し合つて行くというかつこうでないと、それを全部国が持つというわけには今すぐ行かぬじやないかと思つております。しかしよく地方の御意見は伺い、その具体的案件をよく調査をするように、各関係庁にお話を願い、また私どもの方からお話をして行くつもりでございます。
  27. 青野武一

    青野委員 もう一つ大事なことをお尋ねしておきますが、それに関連して海岸堤防の決壊箇所は、一日もゆるがせにできません。それについて大蔵省預金部の二十五億の金をジエーン台風キジア台風に十二億五千万円ずつ配分することが決定したことは、列車の中で新聞で知つたのでありますが、聞くところによれば福岡——私は福岡の出身でありますが、相当被害を受けておる。はつきりした数字は知りませんが、県の代表者の現地における陳情では四十億をくだらない。そこに大蔵省の預金部は一億円、これではどうすることもできません。そこで九州全体及び四国中国被害を受けた県当局意見では、少くともこの海岸提防をすみやかに復旧するためには、十五億円くらいのいわゆる短期融資をしてもらいたい。これにいる金が最小限度見積つて少くともこの程度である。だから国家の全額負担ということが財政的に困難であれば、十五億の半分を国家負担してくれれば、関係被害県が話合つて、あとの半分はわれわれが負担してでも、この海岸提防を急速に復旧したい。復旧だけではだめでありまして貧弱になつたり非常に弱くなつたところも、やはり補強工作をやらなければなりませんので、一億円の大蔵省預金部の融資ぐらいでは中途半端でどうすることもできません。そこでこういうことは一日を争う問題でありますので、十一月の末ころの臨時国会で補正予算がきまつたら、よく事務的な打合せをしてやるということでは間に合わない。土嚢が腐つてしまう。この点については各県の代表者が安定本部長官なり大蔵省、あるいは関係各省にそれぞれ陳情に参つておりますことであり、また将来も来ると思いますが、ただ原形回復だけではなく、弱くなつた海岸提防を完全に強固なものにするには、大蔵省融資や一部の金ではどうすることもできませんから、それぞれの地元負担するが、国家の半額補助によつて十五億円くらいの海岸提防の強化復旧費出してくれないか、こういう点が地元で強く叫ばれておるのでありますが、この点についてお伺いしておきたいと思うのであります。  それからもう一つ、何べんも質問するのは重複でありますから、あわせてお尋ねしておきたいのは、これは事実かどうかわかりませんが、阪神地方ジエーン台風で、滋賀県は琵琶湖を持つておりますので、漁民諸君が非常に損害を受けた。この点では鹿児島の大隅半島から福岡県の門司の沿岸に至るまで、何百あるいは何千という漁船がさらわれて行き、そうして倉庫の網が海底のもくずになつた。そのために滋賀県ではこの漁民に必要なる漁業用の綿糸の配給が、すでに四千玉きまつたというような情報が入つておる。それがきまつたといたしますならば、キジア台風九州方面の各県の漁業関係被害も非常に大きいのであります。福岡をたとえて申しますと、滋賀県が四千であれば九千玉ぐらいは配給を受けなければどうすることもできない。共同倉庫がそのまま網と一緒に持つて行かれ、岸壁はくずれる、船はとられてしまう、どうすることもできない、こういう点は同じ台風でやられたのなら、ジエーン台風関係はすぐにきまつたが、九州方面はうつちやつておくといつたようなことは、これはあんまりまま子扱いである。事実とすればそれを適切に調査して、こういつた漁業関係の綿糸の配給はすみやかにやつていただきたいと思いますが、これは事実であるか、そういう点について多少畠違いで、漁業関係のことでありますが、予算関係が非常に重要でありますから、あわせてお尋ねしておきます。
  28. 周東英雄

    周東国務大臣 預金部の応急資金が一億では、海岸の堤防復旧にも困るというお話で、これはごもつともですが、一億ですべてをやつていただきたいというのではないことは、御承知の通り応急ですから……。それも実はもう少し私どもとしては預金部資金出してもらいたかつたが、いろいろな関係で一応あれできまりました。そのあとについては十一月に議会が始まつて補正予算がきまつてからでないと出ないということではないのでありまして、すでにある五十億については、全体を眺めて大体各府県に割当つべきことが決定次第、早急に五十億の範囲は早くわけたい、こういうふうに思つております。それから補正予算が国会で通過いたすといたしますれば、そのうち四十一、二億の問題について、さらに初めの計画の残りとして割当が行われると思います。全体の予算につきましては、なお今後ともいろいろ財務当局とも話合つて、財源ができればできるだけ考慮をしたいと思つております。一応今日の状態としては九十一億の範囲でわけられるということを御承知つておきたいと思います。  それから漁業用の網でありますが、ジエーン台風で滋賀県に割当があつたではないかということでありますが、そういうことについては私は事実を存じておりません。がしかし滋賀県だけに漁業用の網がわけられるとは想像できないのであります。今日の場合、ジエーンキジアも大体の要求などが出ますれば、その漁業用網の割当についてできるだけ努力いたすのが筋だと私も考えておりますので、なおよく調査をいたしたいと思います。
  29. 青野武一

    青野委員 最後にもう一つお尋ねしておきたいと思いますのは、——御説明で大体その輪郭はよくわかつたのでありますが、最後に五十億の災害予備費に、きのうの大蔵省関係政府の御答弁によりますと、来る臨時国会に四十一億の補正予算出し、合計九十一億で一応二十五年度災害関係予算がきまるといつたよいうなお話でありましたが、全国的に見て九十一億くらいではどうすることもできません。もちろん公共事業費等において、多少その中に含まれておることも知つておりまするが、これはおそらく被害額の二割に相当しないであろうということを考えますと、今一番大切なことは地方債のわくを拡大してもらうこと、これは関係方面と折衝しても多少困難でありもしようが、関係方面から見ましても、日本の民主国家の再建、国民生活の安定、あるいはいろいろな意味から行きまして、災害というものを無視して、いかにドツジ・ラインを強行しようとしましても、国家の興隆、発展よりも国民生活の方が先につぶれる。災害を無視しての国家の建直しというものはありません。ひとつ思い切つて関係方面と話をして何らかの具体的な救済方針を立ててもらう。そのために一番先に考えられるのは、今のように制限せられた一定のわくをぽかりときめて、それで災害のあつた県に小刻みにわけるのではなく、災害が次から次に起つておるのですから、この点について地方が希望しておりまする地方債のわくをもつと拡大する。もちろんきのうの説明の中にも、来年度はありましたけれども、その程度ではまだ少いのであります。これが被害を受けた県当局のほんとうに悲痛な要求であるということを、私ども身をもつて体験して九州の視察から帰つたのでありますが、この点についての長官のお考えを聞かしてたたきだい。もちろん困難ではありましようが、災害というものが現実に大きな悲惨事を生んでおるということを関係方面に十分納得してもらえるならば、言語習慣が異なつても相当考えてくれるのじやないか、必要によれば、災害対策委員会の決議で代表者が関係方面と折衝してもいいが、政府側からもつと進んで積極的にそういう交渉を開始してもらいたいという希望がありますのでお尋ねしておくわけであります。
  30. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまの御意見については政府部内にも異議はないのであります。預金部資金による地方債の引受け等に関しては、単に災害復旧問題のみならず、公共事業費その他各般にまたがつておりまするが、これらについてはできる限りわくを拡げて行くように目下努力中であります。
  31. 松井豊吉

    松井委員長 笹森君。
  32. 笹森順造

    ○笹森委員 ジエーンキジア台風によつて受けました農作物の災害対策に関することでお尋ねするのでありますが、本来ならば農林当局にお尋ねするのが道だろうと思うのであります。しかし関連においてもしもお答えができるならばお答えを願いたいと思います。  御承知の通り、この両台風日本の南に上陸しましたものが、あるものは裏日本を通り、あるものは日本海を通つたのでありますけれども、二つの台風とも北日本の西海岸に上陸いたしまして、そうして相当な災害をこの方面に与えておるのであります。特に私がここで指摘して災害対策としてお伺いいたしたいのは、この北日本におけるある地方の水稲が非常に倒伏したのであります。この水稲の倒伏したことによつて実に奇現象が起つております。その奇現象と申しますのは、私は現物をここにも持つて来ておるのでありますが、倒伏いたしました稲が盛んに発芽をしたのであります。ある郡のごときは全体の水田の約二割、またある郡においては五割ぐらい倒伏をしたことによつて発芽をしておるのであります。これが実に奇現象でありまして、そういうことはいまだかつてあの地方においてはない。この研究については農業技術の面においてもいろいろあるのでありますが、それは後の問題といたしまして、そういうことのために非常に大きな被害を受けて困つております農村が相当ございますので、一つはやはり事実に即して供出の割当の補正をしていただかなければならぬ、これは当然やつていただけると思つております。ところがその次に大きな問題となつておりますのは、この倒伏した稲が発芽し、あるいはまた温度が非常に高くて湿潤過多、高温の異変という特殊な現象のために、立つているものでも実は発芽をしたものがございまして、稲の品質が非常に悪くなつた。ところで供出を今年いたしましたものの中で、どうしても不合格になる米が非常に多いのであります。ですからぜひとも農家においては幾でもこの供出をしようということになると、今までの四等米ではとうていだめだから、五等米までこれを供出の対象としてもらわなければならぬ、それでもなお供出をして政府から相当の代金を受けるということは困難であろう、こういうような問題が起つて来ておりますので、実はこれは農林当局にお伺いするのがあたりまえですが、長官はその方面の御專門でもありますので、特に今年供出米の規格を下げるということについてもお答え願えるならば、その点をまず先にお伺いしてみたいと思います。
  33. 周東英雄

    周東国務大臣 これは農林大臣の方の所管でありますので、私からお答えすることはいかがかと思います。ただ先例は、麦等について非常な不作があつた場合において、麦の品等を下げて買上げた実例があります。これはよく話合つてみてできるだけ希望に沿うように農林大臣ともよく相談してみたいと思います。ひとつ農林大臣によくお伺いを願いたいと思います。
  34. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまのお話は実は私も承知しております。麦等における特例がありますから、ぜひこの米の点についてもこういう実情をお考え願いたいというのが私のお尋ねの趣旨であつたのであります。これまたお立場上少しむりかもしれませんけれども、つけ加えてお尋ねしておきたいことは、実はそういう発芽をしたということによつて、ある村ではほとんど明年の種もみさえ持ち得ない、こういう場合に米が割れてしまつて芽が出ておる。こういうことについても、ぜひとも来年の種もみなどについてもひとつ考え願わなければならぬ点があるのだが、この操作のこともどういう御用意があるかということをお伺いいたしたいことが一つ。もう一つは、はなはだしいところにおきましては完全供出農家、あるいは不完全供出農家の飯米にも困るということがありますので、これも事実に即してやはり飯米の配給を操作していただかなければならぬという点もありますので、次会には私はまた農林当局から伺いますけれども、お耳に入れておきたいと思います。それよりも大事な問題として指摘しておかなければならぬのは、なぜああいうキジア台風ジエーン台風で倒伏したかという根本の原因は、やはり肥料対策にあるようであります。つまり数年来硫安が政府においても努力して非常によく配給されておりますので、むしろ窒素肥料過多というような状況でありますために、たけは伸びても非常に弱くなつておるのであります。そこでああいう台風が一たび来ますと倒伏するというようなことになる。これはどうしても根本的にその対策をとつていただかなければならぬ。これがためには従来の肥料の増産に関して、窒素系統以外のどうしても燐酸カリについて、根本的にひとつ政府においても対策を立てていただかなければならぬと実は考えております。これは特に経済安定本部等におかれましても肥料の増産に関する対策上何かお考えがなければならぬので、これがもしも完全にできておつたならば、この災害の多くの部分が救われたのじやなかろうかと思いますので、この点をどういうお考えであられるか。特に燐酸、カリの増産に関する今の施策をお伺いしておきたいと思います。
  35. 周東英雄

    周東国務大臣 お話の点はまことにごもつともでありまして、私も同感であります。ただ窒素関係についての製造工場の拡充、それからあるいは元あるものの復旧というような事柄からいたしまして、この方面につきましてはやや戦前にまで復旧いたしております。ただ過燐酸並びにカリ肥料については、いずれも原料といいますか、これを輸入にまたなければならぬというところに非常な苦しみがあります。ことにカリ肥料のごときは遠くヨーロツパから入れておつたのが戦前の状態でありますが、カナダからも最近は入つておるという状況であります。こういう点に非常にむずかしさはありますが、ただいまそういう方面については努力をいたしております。燐酸肥料については燐鉱石の問題等いろいろの方面で、これの方がカリに比較すればやややり方がやさしいかと思いますけれども、燐鉱石の大部分がやはり輸入であり、南方地方だけでとれなくて、遠くにある。そこらにむずかしさがありますが、お話の点はまつたく同感であります。できる限りカリ、燐酸肥料の増産に努めるようにいたしたいと思いますし、またそういう方向に進んでおることを御承知願います。
  36. 笹森順造

    ○笹森委員 今の燐酸、カリの外国肥料の輸入に関する努力のことはよく承知いたしておりますが、何せ輸送賃の関係等でむずかしいこともありましようが、一層の御努力を願わなければならぬ。  最後に特に関係のある問題でありますが、先ほども申し上げました被害地における明年の営農資金に関する問題は、先ほども特にお話があつたようでありまするが、特に倒伏いたしました稲を刈るについても労力は三倍以上もかかる、そうして実際取上げたものが今の政府の買上げの量も少くて非常に困るというので、特に災害地の災害者対策に関して、こういう地方に今までお考えにならなかつたと思われるような特殊な災害のありますことを、また営農資金の必要のありますことをお考えになつて、そしてこれらのものも全体の補正予算考える中にお入れしていただくことをお願いして私の質問を終ります。
  37. 田代文久

    ○田代委員 時間がないそうですから簡単に申し上げますが、災害予算の基準を大体政府はどこにおいておられるかということです。と申しますのは、先ほどから青野君も質問したのですが、なおはつきりしないのです。すでにことしの予算書を見ましても、二十三年度以前の災害復旧に要するものが約七百億、二十四年度発生災害復旧に要するものが九百億、約一千六百億あつたわけであります。それに対しまして本年度組まれた予算は四百七十億見当でありまして、結局それを全部遂行たすといたしまして、一千百あるいは二百見当のものが残つておるということになります。それに加えて新たにことしのジエーンとかキジア災害が起きまして、公共事業関係からだけ見ましても約一千億見当あり、これに民間の全部を含めますと、先日も増田大臣お話によりますと、四千億円余も突破しておるというようなこの厖大なる災害になつておるのであります。つまりこういうふうに災害被害額が非常に厖大になつておる。ところが、聞くところによりますと、二十六年度における災害復旧に対する予算というものは、昨年通りあるいは昨年より以下の四百五十億から四百七十億見当だということの説明があつたのでありまして、かりに昨年と同様といたしましても、これは一体どういう予算の組み方になるのであるか。これを災害復旧せざるままに累積し、新しい大災害が起つた、これに対しまして昨年とまつたく同じな予算の編成の仕方であるということになりますと、われわれは政府はこういう災害に対して何らの対策を持たない。もしこういうことが続けられるくらいならば、何もわれわれは国会議員として国会でいろいろ発言する必要もないし、またわざわざ大臣も選ぶ必要もないのであります。一事務官でも当然組まれる予算の編成方針であります。従つて政府は、ほとんど毎年のようにやつて来る日本のこの災害に対して根本的にどういう災害対策を持つておられるか。具体的に申しますと、災害予算の編成の基準というものをどこに置いておられるのであるかという点を、まず御質問申し上げます。
  38. 周東英雄

    周東国務大臣 お話のように、過年度災害復旧というものが相当たまつていることも御指摘の通りであります。私どもは今年の予算編成の場合において、災害発生の際において、初年度にもできるだけ多く復旧に要するものについて予算出して、あとは二年くらいの間に完全に直して行くという方針を立てたいということで今努力しているわけであります。従来は初年度には一割五分とか一割六分とかいうふうなものが出ている。これは多々ますます弁ずで、多いほどけつこうでありますが、何と申しましても、災害の発生しました年に急速にやらなければならぬということで、各地方からいろいろ計画等が出ます。これはどれも早いほどけつこうでしようけれども、特に急いでやるものについて応急処置をとつておいて、あとは二年、三年と三箇年で計画を進めているのが今までのやり方でありました。しかし実は今まで残つているものもひつくるめて、来年、さ来年と二年半くらいで復旧するについて、二年度以後については予算計画をもう一ぺん再検討しつつ、それに適応した予算を組みたい、こういうふうに今考えているわけであります。過年度災害費として予算に組まれているものは三百七十億ですか、別に予備費が百億、この間においてどういうふうにこれを使うかということは今関係各省と相談中でありますが、来年と再来年の経費を見つつ、過年度災害を二年半くらいで済まして行つたらどうか、こういうふうな徹底した計画を立てようと今しきりに考えている最中であります。
  39. 田代文久

    ○田代委員 私はこれはほんとうに長官が確信を持つて発言されているかどうか疑わざるを得ないのであります。申し上げるまでもなく、日本災害は毎年参つているのでありまして、これが時を待つてくれれば、あるいは三箇年計画あるいは五箇年計画で片づくのでありますけれども、その計画が遂行されない前にまた新しい災害が参つているのであります。これはもうはつきりと科学的な事実になつて現われて来ている。そういう場合に可及的急速に、一挙にその復旧をするという策を立て、またそれを頑強に強行するという対策が立てられない限りは解決いたしません。事実昨年非常にちよびりちよびり復旧したために、その使つた金が全然むだになつている。先日も私たちが相談しておりますときに、ある箇所に十億の金をつぎ込んだけれども、新しい災害が来たために、その後今度その十億つぎ込んだ金が全然むだになつてしまつたということも言われておるのであります。また事実そういうふうになつておる。そういう場合に従前通り三箇年計画で、初年度において三割、次年度において五割、三年度においてまた二割というような計画方式が全然だめである、また非常に不十分であるということが言えるのでありまして、私は、政府自身は根本的にそういう災害対策、あるいは予算編成方針というものを考え直していただかない限りは、この問題は片づかない。結局災害による亡国、あるいは災害の拡大再生産ということになつて参るのであります。それらに対しまして、はつきり政府は自信を持つておられるかどうか。私の憂えるところは、また今までのやり方から見ますと、毎年々々こういう災害が累積いたしまして今後五年、十年になつた場合におそらく何十億円では相済まない。国土は災害によつて荒廃してしまう結果になるのではないか、こういうことはわかり切つた厳然たる事実でありますがゆえに、なぜ政府はもつと思い切つた予算の編成方針をとらないのか。明らかにことしはこれほどの災害が来ておる、昨年度の過年度分も残つておるという場合に、去年と同じ予算の編成でどうして解決して行くか。また全国民を、これによつて災害復旧できるということを納得させられるかどうか申しますと、私は国民は納得できないと思います。ですから非常にむりな点もありましようけれども、少くとも昨年度より大きな予算を編成するという線が出なければ問題は解決しない。しかも相当思い切つたものが出なければならない。ところが承るところによりますと、大体災害復旧というものは大して積極的な生産の復興については意義を持たないという、非常に消極的な見方がある。そうしてもつと総合開発の方にうんと金を使えという見解があるようでありますけれども、これは私は非常に誤つておるように思いますが、長官はどういうふうにお考えになりますか。
  40. 周東英雄

    周東国務大臣 御意見の一部には、ごもつとな点があります。私どもも、国の財政の許す限りは思い切つて災害復旧に対して金を出して、早くやることはよろしいと思います。この点については、国のみならず地方の庁においても、よほどあなた方が考えさせるように指導してもらわなければならぬと私は思うのです。結局は限りある収入をもつて何を優先してものを考えるかということだろうと思います。元気よく災害にみなふち込んだら早いでしようけれども、おそらくあなたの方では災害復旧に対してこれを集中せよとおつしやるでしよし、あるいはまた社会保障、失業対策にうんと金を使えというお話もあろうと思いますが。これもごもつともであります。結局総合的に国は何をやるか、地方は何をやるかということを、官民一致して考えなければならぬ。相当思い切つてやらなければならぬというのには相当金がいる。その金はやはりほかから出るのではなくて、租税から出さなければならぬ。租税に対しては、今日の日本状態として、ある程度減税をして行かなければならぬ。入る方を少くして出る方を思い切つて一度にやれと言われると、なかなかこれはむずかしさがあろうと思います。決してあなたの御意向はごむりとは思いませんが、結局今日の日本として何を重点にしてやるか、そうすると、ちよつとほかのは待つてもらわなければならぬというところに、国なり地方なりで国民考え方というものを持つて行かなければならぬと私は考えております。りくつから言えば、できるだけ早くうんとこさ金を出して、そうして集中的に復旧するのもよかろう。しかしそこはおのずから他の施策、国の仕事と関連して考えなければならぬ点があろうと考えます。また今日私どもが相当思い切つたことを言いだしたのは、新聞で御承知のことと思いますけれども、かなりそれをやるについては地方負担が相当にあるということで、この限度も考えなくちやならぬですが、その点について思いきつて負担をしてやらなければならぬとすれば、地方庁においても何を優先するかということを考えなければならぬ、かような気持でおります。なおついででありますから申し上げますが、災害復旧は早くやらなければならぬけれども、急いで立てたものには、もう一ぺん再検討しなければならぬところもあろうかと思います。また年々歳歳繰返される災害のもとを治めるには、災害の発生を防止するという立場に思いをいたさなければならぬと私は思う。災害の発生したものの復旧はぜひ必要であります。同時に早く手当をすれは災害を防止し得るという施設に対しては、これもまた思い切つて砕けぬ前に施設をすることが大きな政治ではなかろうか、かように思つておるのでありまして、今度の工事予算についてもそういう意味考えつつ、しかも復旧に対して年度計画を立てて、この際でき得る限りの範囲においてやつて行くよりほかやむを得ないのではないかと私たちは考えております。
  41. 田代文久

    ○田代委員 はなはだ抽象論で、私の質問に何ら答えていただいたような気はいたしませんが、討論にわたりますので避けますけれども、大体今の長官考え方は都市重点主義であり、農村、漁村軽視主義である。また都市における重工業中心主義であり、そういう方面にはうんと金をつぎ込むけれども、実際においてこういう被害者大衆に対しては、これはやむを得ないからお前たちはがまんしろという結論になることと私は考えますけれども、これは議論にわたりますから一応打切ります。そこで実際上の問題としまして、これは被害が大きいのだから、四百七十億では少いということを心がとがめるかどうかしれませんけれども、より工事費をふやすという見解から、地方に対しましてこの三分の一の負担を持たせるという計画を明年度においてはお持ちのようであります。たとえば百六十億あるいは二百何十億を合せて、大体総工事量、総予算を七百億見当にしたいということを、先日たしか安本関係からか大蔵関係からか示されましたけれども、現在地方財政がどうなつておるか。実際に県あるいは地方団体というものにそういう厖大なる財政負担の能力があるかどうかということも、これはわかつていることと思いますけれども、そういうことを実際に地方に押しつけまして、しかも地方自治体自身がそういう予算に対して耐え得ないということになります場合に、この災害復旧問題はどうなるか。私の考えから申しますと、とても地方はこれほど厖大なる負担に耐え得ないと思うのですが、その見通しはどうでございましようか。
  42. 周東英雄

    周東国務大臣 一部地方負担するということについては——実は昨年度災害復旧について全額国庫負担ということに対する問題がきまるときに、一応これは二十五年度限りということになつておつたはずであります。これについては、できれば全額負担ということも一つの行き方でありますけれども、なかなか経費の関係でむずかしいと思います。ことにある意味においては、全額国庫負担なるがゆえに長短あると思います。かなり地方責任という問題が軽くなりがちである。またそうなれば何もかも全額国庫負担という要求がふえて、とうてい今のような状態において国庫の負担がなし得ないところであるというようなことから、おそらく二十五年度限りとなつたはづであります。そういう意味において、二十六年度についてはあるいはさつき申された通りに、三分一は従来に返つて大蔵省負担をして、地方においても責任を持つてしつかりとやつてもらうということに一応なつているわけであります。ただしかしその中において、細目的に見て年々災害のある府県についてどう考えるか、あるいは府県財政収入と災害復旧予算との見合いといういろいろな点で、そこに差等をつける必要があるのではなかろうかという話合いになつておりますが、まだ最終決定には至つておりません。要するに私どもは、根本においてでき得る限りあなたと同じように、災害復旧についてやらなければならぬということは考えております。その点についても、財政的な関係と調整して物事を考えておりますので、了承を願いたいと思います。また一方的に、お前は都市のことを偏重して考えておるいとうお話でありますが、私の議論は速記に載つておりますから、決してそういうことになておらぬことだけをはつきり申し上げておきます。
  43. 松井豊吉

    松井委員長 田代さん、時間がないのですが、これで結論にしてください。
  44. 田代文久

    ○田代委員 結局地方債のわくを広げるという問題ですが、これは当然預金資金との関係になつて参りますけれども、実際に預金部の資金のわくをこの方面に広げるために、これを生かすという見通しがつくのでございますか。私の聞くところによりますと、預金部から出すということは大体もう不可能に近いというふうに一部から聞いておりますが、その見通し、それから見返り資金から私たちはもう少し使つたらどうかという考えを持つておるのですが、それに対する見通し、それから四十一億円の補正というものは、これはまだ確定しておるものではないと思うのですが、はつきりこれは確定しておるものとわれわれがとつてよろしいかどうかという点、以上をお尋ねいたします。
  45. 周東英雄

    周東国務大臣 四十一億につきましては、政府としては決定いたしております。いろいろ関係方面と折衡し、その上議会において協賛を経てきまるのでありますから、そのとき初めて確定するかと思います。預金部資金地方債のわくの問題でありますが、これは御承知のように、公共事業費は従来とも地方負担のものについては、地方債を預金部が引受けておる。問題は、そのわくをもう少しふやすかふやさないかという問題であります。それについてただいま努力をいたしております。
  46. 松井豊吉

    松井委員長 御報告申し上げますが、農林省から四時前後に食糧局長官が来るということになつておりますが、その間御希望がございますならば、伊藤河川局次長賀屋防災課長が参つておりますから、御質問のある方はお願いしたいと思うのであります。それからなお御報告申し上げますが、間もなく建設大臣が参ることになつております。  賀屋防災課長にちよつとお伺いいたしますが、二十五年度の防災政策において行いました結果を、われわれは全県下被害地を見て痛切に感じておりますが、二十六年度の防災工事の政策についてはどういう御理想を持つておりますか、その点を承りたい。
  47. 賀屋茂一

    賀屋説明員 防災工事というお話でありますが、災害復旧も合せてだろうと思つております。本年度承知のように、災害復旧は二十二年以来の災害があるのでございまして、二十二年は本年度で完成する予定でございます。二十三年の災害は御承知のように五〇%程度進む予定でございます。それから二十四年の災害は約三七%程度進む予定になつております。この予算はわれわれからみますと非常に少いと思つておるのでありますが、この不足のところは、御承知のように事前に防止するような災害防除の施設の予算がございますので、一部を地方の方で負担してもらいまして、この事業で事前の防止を進めて行きたい。災害がこれほど毎年ふえておるのでありますが、災害復旧工事のやり方が悪いというようなことで多くなるということは、われわれは今のところでは考えておりません。でき得ればなお災害復旧費は増額してもらいたいのでございますが、なお災害防除の事前の防除対策を積極的にやりたい。そうして近く起るであろうと思われるような箇所の未然防止に、積極的に努めて行きたい。見通しといたしましては、本年度災害防除対策の施設を実施しておりますが、この効果が非常にいいのでございまして、比較的少い費用で局所の対策をいたしておりますので、この効果は、ことしあたりの災害の激甚なところでありましても、その事業を実施したところのみは救われておるというような状況でありますので、この工事を積極的に来年度は進めて行きたい、こういうふうに考えております。
  48. 松井豊吉

    松井委員長 建設省の直轄工事で、長野県の天龍川の河川関係が、二千メートルに相当する諏訪湖の氾濫によつて決壊されたという事実を聞いておりますが、これらの被害状況について防災課長の知つているところを御説明願いたいと思うのであります。
  49. 賀屋茂一

    賀屋説明員 天龍川の災害でございますが、御承知のように、天龍川の水源は諏訪湖でありまして、諏訪湖の天龍川に流入するところは水門で押えてございます。そうしてこれから出ます水は一定の量でございまして、その一定量の水が出れば、天龍川は大体において氾濫しないという計画で、下流の工事も実は進んでおるわけであります。諏訪湖流域に降りましたことしの雨量は、非常に時間的に多い雨量でありましたため、諏訪湖に流入する雨量と水門から出ます水量とでは、流入する量の方が非常に多いものですから、諏訪湖に非常に貯留されまして、この諏訪湖の湖岸は相当氾濫したのであります。それで御承知のように、水門と、さらに魚道門とか、あるいは閘門等がありますので、この方面から多少流出しましたので、予定の流出量よりも、多少は多く天龍川の方へ出ております。でありますが、今まで調査されましたところでは、この流失量が非常に多いために被害を受けたというようには考えておらぬのでございます。何分にも天龍川は御承知のように、直轄で始めましてまだ二、三年でございまして、費用もここには重点的には持つて行つておりませんので、直轄の工事といたしましても、局部ができておるだけでございまして、しかもその被害は、未施工部分の氾濫から影響を受けたのでありまして、既設の堤防が裏から壊されたという状況でありますので、工事途中であるから、今年のような被害を受けたことは、やむを得ないというふうに実は考えておるのでございます。災害復旧も、相当府県災害も大きいのでございますが、この復旧につきましては、現在のところ大体二割ぐらいの促進はできるというように予算を配付いたしまして、府県の工事、それから直轄工事も、復旧には促進しております。
  50. 松井豊吉

    松井委員長 もう一点お伺いしますが、あの大きな被害をこうむつた根本原因は、資材のない関係から、いわゆるから積みをしたということも聞いておる。また地元では、いわゆる建設省がやつた仕事が裏詰めもしないで、砂の上に積んだという事実も聞いておりますが、これらの点について課長さんが知つておる範囲内の御説明を願いたいと思います。本年はその設計についても相当の資材がございますので、どういうふうな設計をされておりますか。その辺を簡単に御説明を願いたいと思うのです。
  51. 賀屋茂一

    賀屋説明員 直轄工事の計画につきましては私詳しく存じておりませんが、今度の災害復旧につきましては、このたびこわれましたために、土堤ではございませんで、水捷部には必ず練積みの護岸を設けるというような方針で査定はいたしたわけでございますが、全般をよく存じませんので、ある局部には護岸がいささか低いというところもあるかもしれませんが、これは実施のときにはさらにあらためて実施の設計を立てさせますので、今度の程度水害に対しましては十分に持てるという自信を持つて実は査定いたしたわけであります。
  52. 高橋權六

    ○高橋(權)委員 ついでにお伺いしますが、諏訪湖と天龍川の間の水門というのはどのくらいの水門であるか。それとともに、今委員長に御答弁なさつた、一定量を流しておつたが、その際は魚道その他からより以上に流した。その流す、流さぬについて、それは何か間違いかもしれませんが、水門から下流の方は、流してくれるな、水門から上の湖岸は、浸水するから流してくれということで、県当局かどちらか知らぬが、指揮のもとに放水したから惨害が多かつたというようなことを聞いておりますが、いずれがほんとうであるか、そういうことはなかつたか、お伺いしたいのであります。
  53. 賀屋茂一

    賀屋説明員 あそこは七千個流れるような水門になつておると思いますが、さつき申しましたように非常に湖岸が氾濫いたしますので、湖岸から申しますならば、一個でも多く早く流したいという要望であるし、下流になりますと、一定量以上は絶対に流さぬように——こういうことは災害時においては相当もめるものでございます。それで上下流協定をさせられまして、魚道の方からも一緒に流そうということを協定されまして流したのであります。
  54. 高橋權六

    ○高橋(權)委員 下の方は承諾したのですか。
  55. 賀屋茂一

    賀屋説明員 これは協定をつけて流しております。
  56. 高橋權六

    ○高橋(權)委員 今後そういうところがたくさんあると思いますが、先日から私らの方でも非常に困つておるところがある。それで護岸工事なんかをやられる場合には、より以上に練石なんか使つて丈夫に築堤していただくことは地方でいたしておりますが、今後九州方面には上椎葉ダム、または私らの方にも矢部川にダムをつくる、つくらないで、何だか新聞にはさもできるように——本省の課長や局長さんの皆さんはにつちもさつちもいかぬように、さもきまつたように新聞で書いておりますが、今後そういうことについてはよほど研究してもらいませんと、現在私らの土地から遠いところでありますけれども、下流であります三瀦郡の城島町のごときは、その矢部川の流水が多いために常に水が停滞しておりまして、先日目黒局長に、三瀦郡大善寺村の黒田という所から六五郎橋の方に直流させることを私は希望しておいたが、よくわかつたということは言つておられます。それについても、城島町の停滞する水を、モーターでやるか何か知らぬが、排水工事をやるかのようなことをいろいろ言つておるようであります。どこも水害の多いのは、濫伐に次ぐに濫伐で、あのはげ山をこしらえたために、至るところ山が決壊して山潮が出るようになつておると思うのであります。先日私九州地方建設局にお伺いいたしましたときも、係が違うとか何とか言つていろいろ答弁を逃げられる方もありましたが、われわれ国民としては負担に次ぐに負担でほんとうに困つております。このダムのごときは、こしらえてほんとうによいならば、私らは賛成するのでありますが、あなたの方では、矢部川の上流大淵村の松瀬というところにダムをつくることについて、矢部川の下流の護岸工事に非常に影響することでありますが、どの程度調査しておられるか、またわれわれ国民負担に耐え得ないときに、数千万金の金を使つてまた調査をする——福岡県にある九州地方建設局では、もうたまらないということを言つておるのでありますが、どのくらい調査を進めておられるか、またどういう考えでおるか、どうもこれは私の目の黒いうちは承知のできない問題である。どのくらい調査をなさつておるか。経済安定本部も農林省も——あるいは建設省の一箇所がこれに対して反対してもできないはずだろうとは思いますが、ちよつとその点についてお伺いしたいのであります。
  57. 賀屋茂一

    賀屋説明員 これははなはだ申訳ないのでありますが、私その方のことはちつとも存じておりませんので、その係の方からお答えを願うことにいたします。
  58. 伊藤大三

    ○伊藤説明員 ダムの建設に伴います上流と下流とのいろいろの問題でございますが、私の方でダムを建設いたします場合におきましては、ダムの操作につきましては相当厳格な規定を設けるのでありまして、それを設けるにあたりましては、もちろん地方の上流、下流の意見をよく聞きまして、そうして治水の面から考えまして十分だという点を考えて操作の条件をつけているのであります。  それから今矢部川の上流のダムの問題でございます。先ほどから、九州地方建設局においていろいろと調査をされて、もう調査も完了であるというお話もありました。なお私の方といたしましては、ただ場所的に十分よく行くというだけでもなく、地方の状況、並びに下流のいろいろな地元関係も考慮いたしまして、そうして十分熟慮の上においてそれを決定いたしたいと存じておるのでありまして、現在やる、やらぬというところはまだ研究中でございます。
  59. 高橋權六

    ○高橋(權)委員 先日から目黒局長さんも、非常にていねいに御答弁していただいております。次長さんも非常に御答弁を丁寧にありがとうございましたが、事実この上流は分水嶺になつておりまして、諏訪湖あるいは琵琶湖のごとくであれば、これは問題ありませんが、矢部の奥山は昔は、斧鉞を入れざる土地といわれておつたのでありますが、今山を見ても、飛行機の上から見たらなおさらですが、頂上に登つてながめましても、心細いほど濫伐されて、はげ山になつておる。しかもあの筑後一番の山ですら、開墾地になつておる。むちやくちやに開墾しておる。なぜ開墾しておるかというと、補助をもらつたあとではまた山になすのだといつて、しかも人の山だからと地主をいじめておいて、自分たちばかりもうかろうという、とんでもない考えをもつておる者が多いのであります。そういうことからいたしましても、どうも水を持ちこたえることができない。これにはパージにかかつておる前代議士が一人、このごろ解除になつたか知らぬが、元代議士がおる。そういう連中と、もう一人商工会議所会頭がそれに加わつておるのであります。商工会議所会頭が何と言つておるかというと、自分の体面上これはしやにむにつくるのだと言つておる。しかも私が先日から申し上げるように、十五年前にこしらえてもだめだと言つたところの山犬のため池をしやにむに始めて、もう十四年間、まだできない。一滴の水もまだ下流におせわをできない。それがために三瀦郡、山門郡、八女郡が早魃になつて飢饉になつたことを私は四十数年になつて覚えていないし、その工事が始まつてからもそういうことは一ぺんもまだないのであります。しかも矢部川の本流をせきとめ、あるいは串毛村の田代川を引水し、九州地方建設局で北川内のため池と言つておるのは間違いで、星野村の池の山というところに旧噴火口だと言われる大いなる自然のため池になつておるところがある。それから引水して、そのほかに笠原川というのがある、それと合致させても、まだ五月、六月、七月の渇水期には既存の水田をまかなう水が足りないのです。そういうことをちやんと九州地方建設局で去年の七月十七日に言つておる。おまけに現在もその笠原川の水を水の必要でない冬ごろに貯水するというが、その途中がいつも山がこわれてしまつて、土管がどこかへ行つたというようなことになる。そういうように濫伐の結果、今心細い問題が起つておるのにしやにむにつくるという。しかも先ほど申し上げた犬山のため池のごときは、まだ二億円ぐらい使わなければならぬといつておる。しかも田畑を持つておるところの農民に対しても、四百円の追加すら今問題になつておる。今度そういう大きなダムをつくることになれば、二千円なりそこいらの金は負担させられるだろう。見返り資金もどうせわれわれの金であるが、そういうことになると、かりに二千円負担しても二町持つておる人は四万円、そういう大金を負担させられる。ところが足りない水をためるためにそういう金を使うということははなはだ私はけしからぬことだと思う。これはもう言わなくてもちやんとわかつておる。そうして第一番に元代議士のごときは何と言つておるかというと、よくわからないですが、ちよつと電気学を研究しているからということで天狗になつておる。しかもたとえて言うならば、八女郡から福岡に来てとまるところの宿舎——今建てれば数千万円もいるようなものを二十数万円かで売つてしまつたというような頭の悪い連中だ。そういう連中がただ十何万キロワツトの電気をここで発生させるとか、あるいは大牟田の工業用水をこれでまかなうということは、非常に大きいけれども水を持つことができない。しかもこの山の表面がはげ山であるから、太陽の熱によつて蒸発するところの水分のこともその人は知らないということです。ただ一ぺん代議士になつたからといつて神様のように考える。小なりといえどもわしらの先祖は、母方の方はこんなことを言つてはおかしいと思いますが、山門郡の立花氏である。元伯爵の立花氏の先祖になつておる。(「本論に入れ」と呼ぶ者あり)そうして昔からずつと土木のことを書いたものが伝わつている。今の人は高等数学をやるからいけない。せつかく次長さんもおいでになつておるから、あの矢部川のダムをつくる費用宮崎県の上椎葉のダムの方に持つて行つて、より以上の大きなダムにしていただくようにして、これは調査も絶対にやめていただきたい。今申し上げた商工会議所会頭あたりは第二世の人間をひつぱつて来て、しやにむに私を圧迫して来る。占領軍の名前を使つてもと思うかもしれないが、第二世の土地の人間をひつぱつて来ておる。その方は不公平なことは言うまい、第一番目は砂防工事からやらなければいけないということを言つておる。大方これはだめだろうと私はいい方の意味に解釈しておりますが、次長さんはせつかくその道の権威者であるから、私は新知識を決して排斥するものではないが、しかし昔の人間の言うことは非常にいいことがある。どうか八女郡の矢部川のダムの建設はやめていただきたい。これは先日から申し上げるように、火山地帯ということも考えてもらわぬととんでもないことになるのです。この点も考えていたらちよつとお伺いしておきたいと思います。
  60. 伊藤大三

    ○伊藤説明員 私はなはだ申訳ありませんが、実は矢部川の地帯はあまり存じておりません。今の先生の御説は十分拝聽いたしまして、なお十分考究いしたいと考える次第であります。
  61. 笹森順造

    ○笹森委員 河川局次長に一言お聞きいたしたいのでありますが、ここでお答えできなければあとでよろしゆうございますが、青森県の西の方面の豊饒な平野は岩木川一本でほとんど水をまかなつている。ところがこの岩木川の治水問題は非常に大きな問題となつている。これは御承知の通り、岩木川は直轄河川政府が手を下しておるのでありますが、特に最近問題になつておりますのは、津軽平野一帯に水害が起りますのはいつも湛水ということである。つまり川が急流であつて、非常に勾配のはげしいところから流れて平野に来る。従つて下流においては湛水が常に問題を起して、三年前の湛水のごときは、ほとんど二週間以上湛水が出て田が腐つてしまうという例が出た。問題は岩木川の上流中津軽郡の目屋村の山地帯の付近にダムをつくるという問題であつて、すでに建設省からも調査をされ、あるいは相当施行の準備も進んでおり、治山治水、あるいはまた電源開発の仕事も進んでおるやに伺いますが、現在お手にかけたものはどの程度にお進みになつておるか、もし御発表できるものならばお伺いしたいと思います。
  62. 伊藤大三

    ○伊藤説明員 岩木川の上流ダムの問題につきましては、先ほどもお話のございましたように、調書を進めております。しかしこれを施行するやいなやという現実問題までは進んでいないかとも存じております。なおダムの問題につきましては、最近の治水の形式として相当下流の堤防のみならず、上流のダム工事をすることが非常に要請されて来まして、建設省においても下流の改修のみということは最近実施しにくいという点も相当ございますので、このダムの問題については各省において研究いたしております。ただ何分にもダムは相当の経費を食いますので、わずかばかりの金を長い間入れておいても、入れておる間は効果をあげないという点がありますので、ダムをやるとなれば早急に短期間にやらなければならないために、経費の関係からあまりたくさん取上げることが困難な実情にございます。従つて最も急ぐものから順々に繰上げて優先的に早く完成するように持つて行くような形式で進まざるを得ないのであります。従つて現在は岩木川のダムも来年度予算において取上げるという状態にはならない、むずかしいかと存ずる次第であります。
  63. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまのお話でまだ調査中ではつきりとした線が出ておらぬ。それで私どもは国策上、当然の順序もありましようし、必要から来ることについて別に何ということを申し上げることはないのでありますが、特に御記憶を願いたいのは、直轄河川として改修計画を私どもは拝見いたしておりますと、従来の川の線を相当大幅にかえて行こう、その場所の多くは御承知のあの地帯はりんごの生産地の畑が大分かかつておるのであります。ずつと建設省の計画通りにおやりになりますと、相当の金がなければ、この土地の買収であるとか、それに準じて堤防の構築であるとかいうようなことができない。これらのことをにらみ合せて参りますと、いずれが経済になるというような点などは、これは私が申し上げるまでもないのですけれども、この上流において水の調節をする、ダムをつくることの方が、むしろ全体の河川の改修のために、今計画されていることよりも、これが一挙にして問題を解決するのではなかろうか、こういうような点などは特にひとつ考えを願います。また特に今度電力の問題にもなるのでありまするが、御承知と思いますけれども、大体青森県においては、今硫安をつくるために青森県の西でつくつておりますところの電力を四、五万キロも八戸の硫安工場に持つて行かれておる。従つて津軽地方の人間は電力を要求しております。あの山から発電されまして計画通り四万キロくらいの電力が出ますならば、これまた非常に農村振興ばかりでなく、住民のために安価にして、また有効なる電力が出るということにもなりますので、これらのことをずつと勘案されます場合には、やはり重点がよほどかわつて来るのじやなかろうかと考えます。かたがたせつかく御調査の際には、ただいままで建設省河川局で持つておいでになりましたものをさらに御検討いただいて、できるだけ早く実現されることが結局国家のためになるということがありますので、なおこの上とも御尽力願いたい、これは私の希望として申し上げておきます。
  64. 松井豊吉

    松井委員長 本日はこれをもつて閉会いたします。次会は公報をもつて御通知いたします。     午後四時三十三分散会