○橋本(登)委員 第一班
近畿地方の調査御報告を申し上げます。われわれ第一班は
委員会の議を経まして、去る七日議長の承認によ
つてジェーン台風による
近畿地区災害の
被害状況調査のために、八日午後十時東京を出発して、翌九日午前九時二十七分大阪駅に到着して、ただちに府庁において
被害調査資料に基いて、知事並びに
府関係各部長の説明を聽取し、午後一時
現地被害地区を調査し、終始愼重なる調査を
行つたのであります。
まず
派遣委員の氏名を御報告いたします。
派遣委員は
委員長松井豊吉君、田中織之進君、
加藤充君、
井之口政雄君並びに私であります。なお井之口君は加藤君の
大阪調査後にかわつて参加せられました。また
事務局委員部より
高原参事、建設省より
道路局の篤技官、農林省より
農地局須藤技官、
林野庁藤井技官が随行いたしました。
次に大阪府における
被害状況について御報告いたします。まず今回の風水害について申し上げますと、九月三日大阪府を
襲つた台風は、昭和九年の
室戸台風より少し弱いのでありまして、風速において十メートル余の差がありますが、その
被害高は数倍になるところの甚大な影響と損害を受けております。その原因とするところは、
自然的條件におきましては、第一に風速は
室戸台風の六十メートル余に対し、
ジェーン台風は五十メートル余でありますから、その風速は弱いのでありますが、
通行速度においては、
室戸台風は毎時六十キロないし八十キロの早さで通過したのに対しまして、
ジェーン台風は毎時三十キロないし六十キロというのでありますから、このために
ジェーン台風の方が暴風雨の継続時間が長かつたのであります。第二には台風による高潮が満潮時と一致しておつたのであります。満潮時における表面積は二一・六メートルの高潮に及んでおります。第三には十数年以来大阪市及び尼崎市方面は毎年地盤の沈下がありまして、約二メートル及んでおるのであります。平時においてすら満潮時には浸水し、平常の降雨があつても相当の浸水を来しておるのでありまして、常時
排水作業を必要とする特別異常の地区であります。
人工的條件としましては、第一に以上の
自然的條件を補充するための積極的な対案が立てられておらなかつた。また多少の工事は行われておりますが、戰時中並びに戰後の
日本経済の貧困からいたしまして、これが十分なる実現を見ることができなかつたということが原因であります。第二には、これらの
予防工事がいろいろの理由からして重点的に施工できなかつたために、全面的な被害が多かつたわけであります。
次に、詳しい点については意見として最後に付したいと思いますが、一応各県下の
災害状況を申し上げますと、降雨の状況は、淀川においては百六十四ミリ、大和川においては六十ミリ、神崎川においては九十五ミリ、猪名川においては七十五ミリ。潮の高さは
天保山観測所でありますが、四メートル三七、朝日橋三メートル六〇。東淀川区の
最高潮位は三メートル五〇、西淀川区四メートル〇五。此花区四メートルであります。
なお次に
被害見込額についてでありますが、これは大阪府当局の資料によるものでありますけれども、その主張によりますと、
被害見込総額は一千三百三十四億七千万円であります。これを各
関係別で申し上げますと、
土木関係、上下水道を含めまして九十六億四千二百万円、
住宅関係二百六十八億六千万円、
学校関係十九億一千八百万円、
農林畜水産業関係三十六億三千万円、
耕地関係が一億一千五百万円、
工業関係が二百五十一億円、
商業関係が七十九億四千七百万円、
交通事業関係が十二億七千四百万円、
電気事業関係が四億五千万円、
電信電話事業関係が五億円、
一般船舶関係が五億八千五百万円、その他
生活必需品関係が二百八十四億五千百万円、
応急災害救護費が二十億円、小計一千八十四億七千万円、罹災による
間接的被害でありますが、これが二百五十億円、以上であります。
次に
人的関係の被害について申し上げますと、人の被害は死者が二百三十五名、行方不明百三十二名、重軽傷六千五百四十七名、
罹災者五十三万八千七百五名、住宅の被害は全壊が九千五百十七戸、半壊が三万四千六百四十五戸、流失が百八十戸、浸水が十三万一千二百二十四戸、非住宅の被害が一万六千二百八十六戸、船舶の被害が一千六百五十一隻、四万七千八百四十七トン以上、
通信施設の被害が三千百四十七箇所、耕地の被害が三千九十八町歩、
土木工作物の被害は
河川関係が四百十六箇所七十五億七千三百万円、
道路関係が七十四箇所三千三百万円、橋梁が十三箇所一千八百万円、海岸五十一箇所六億八百万円、港湾が三十三箇所二億六午五百万円、漁港が七箇所二千万円、大阪港が十箇所で十億円、合計六百二箇所で九十五億一千百万円に及んでおります。
次いで
現地調査でありまするが、大阪府当局とともに
大阪市役所当局も同行いたしまして、西淀川区、千船、出来島、此花区、伝法、島屋町、川岸町、港区、大阪港、大正区、小林町、堺市、三宝、大浜、諏訪町の調査を
行つた次第であります。
以上の各地の状況について別紙の資料によつて御報告申し上げますが、至るところ
家屋倒壊がありまして、災害一週間後でありまするが、浸水がいまだに三尺ぐらいに達するところが多くて、目にあまる惨状を呈しておつたのであります。大阪市におきまするところの
市内各区のこまかい資料につきましては、
別紙報告をもつてごらん願いたいと思います。
以上の大阪
府関係の
災害調査をいたしたのでありましたが、なおわれわれ
調査班といたしましては、直接に
被害者の実情を調べ、及び要望を開く必要があると感じましたので、
大阪府庁におきまして、九月十四日午後二時、
和歌山県下の調査が終了しました後に、
農業関係団体代表者、
労務者関係代表者、
工場経営者関係代表者等に集合していただきまして、それぞれ被害の実情に関して説明を求めると同時に、その調査を
行つた次第であります、
以上が大阪
府関係でありまするが、この際大阪府からいたしまして、特に
委員会に対しかつまた
委員会を通じて政府に対しての
要望事項がありましたので、これを御報告申し上げます。
一、今回の災害にかんがみて、西大阪の
地盤沈下に対し
恒久的防潮堤を完成すること。
二、将来の災害を
最小限度に食いとめるために必要なる
道路兼用の横断堤を完備すること。
三、道路、河川、港湾、海岸、堤防その他
土木施設を急速に復旧すること。
右の事業に要する資金に関しては格別なる国の援助を要望するものであります。以上のような
土木関係の要望であります。
次に兵庫県下の
被害状況につきまして御報告申し上げます。阪神間における風速は大体三十五メートル、瞬間は四十八メートルに及んでおりまするが、雨量は九十九ミリのものでありまして、その期間が相当の長時間にわたつております。ことに
尼崎市内におきましては、四メートルに近い高潮が襲来しましたために、全市ほとんど浸水し、甚大な被害をこうむつております。尼崎市以西の
海岸線におきましても、高潮の襲来によりまして全線にわたつて
浸水家屋を出し、相当の被害を受けております。
淡路島におきましては午前中は東海岸、午後は西海岸に二メートル半の高潮と豪雨の襲来によりまして、
海岸線一帯に甚大な被害を受け、漁船の流失、破損を伴うところの
漁業関係方面の損害も莫大であります。
但馬地方は台風の中心が出石郡資母村であつたので、同地方は豪雨となり、合橋村では雨量二百十八ミリ、豊岡市では百七十二ミリの降雨を見まして、風速は瞬間二十八
メーターを示しております。
但馬一帯といたしましては近年にない大きな被害をこうむつておるわけであります。本県下におきまする阪神聞及び
淡路島、
但馬地方の被害の大体は、
県当局の調査によりますると、死者行方不明が二十八名、
重傷者四百九十二名、住宅の被害六万八千余戸、田畑の被害が十三万二午九百九十九町歩、その他道路、橋梁、堤防、鉄道、船舶などの被害が非常に多くなつておりまして、
被害者数は約二百十七万五千名に及んでおります。被害の
見込総額は三百十一億一千七百九十二万円でありますが、今後調査の進行に
伴つて土木、建築及び衛生を
連合国財等において相当増額する見込みであるというような報告であります。
これを
関係別に申し上げますと、一、
土木関係は二十五億五千百七十一万円、
建築関係が三十六億七千八百七十五万円、
経済関係が三十六億六百六十七万三千円、
工場関係が十九億円、
水産関係が三千二百二十万円、
民生関係が一千六百三十万円、
衛生関係が五百万円、
農地関係が五億九千七百万円、
労働関係が十一億三千七百九十五万円、
連合国財産関係が五十九万円、合計して三百十一億七百九十二万二千円になつております。特に兵庫県下におきましては、兵庫県における工業の
中心地区である尼崎市でありますが、この附近の損害が質的にも量的にも最も激甚でありまして、これに続くのが
姫路附近及び丹波、但馬に相当の被害を受けておるのであります。
尼崎地区におきましては、平時におきましても
工場地域の
地盤低下と年女の浸水のために、
主要工場は防潮壁を築造いたしまして非常時に備えてはおるのでありまするが、今回の高潮は非常に激烈であつたために、ついに十数箇所におきまして決壊いたしまして、その惨害を見るに
至つたのであります。なお九月十日におきまして
決壊箇所に
防潮手段が施行されておらないために、満潮時になりますと、常に侵水を繰返しておるという現状でありまして、これがためになお電動機その他
主要機械の損害が増加の一途をたどつているような悪條件のもとにある次第であります。なおこれらの中には復旧には半月あるいは三箇月を要するような工場が多数含まれております。この
被害工場の総数は八百八十、工場の
被害見込みが百九十億円と言われております。このうち
尼崎地区の
工場関係の被害が百二十億円でありまして、その他が五十億円であります。
関係当局においてこれが
復旧所要額として百五十億円くらいを必要とする、こういうような意見であります。
次に
淡路島における
被害状況について御報告いたしますが、調査団一行は、明石より
淡路島に渡りまして、島内の
被害状況を詳細に調査いたしました。特に各部にわたつて調査を進めたのでありまするが、各地たおきまして熱心なる陳情を受けて、これが被害の甚大なることを痛切に感じたのであります。
気象状況から申し上げますと、本島の東海岸が今回の台風の通過の道にあたつておりまして、昭和九年の
室戸台風と比較すべき被害を受けております。九月三日は早朝より降雨がありまして、台風の到達前までに二十三ミリに達する降雨がありました。時間の経過するに伴いまして、豪雨を伴いました北々東の風が強度を刻々に増して、午前十一時二十分に至りまして風速三十一
メーター三、雨量八二・二という数量に達しております。このときに高潮が起りまして、その高さは最高四
メーター以上に及んでおります。
海岸線一帯にわたつて港湾及び道路の損害がはなはだしい結果を招来したわけであります。
被害状況を申し上げますと、九月四日現在の調査によりますれば、
災害者、
罹災者数は四万六千九百八十人、家屋の被害が、世帯数でありまするが、九千四百四十三世帯、非住家が一千四百六十三戸、田畑が二千七百一町歩、
道路決壊が九百五十一箇所、橋梁が百五十三箇所、
堤防決壊が三百二十六箇所、
船舶関係の被害の漁船の大破が百十五隻、中破が百七十八隻、小破が百四十一隻、機帆船が、大破が三十隻、中破が十九隻、小破が四十一隻、こういうような数字になつておりまして、
水産関係の
被害額は一億五千二百四十六万一千四百六十七円であります。
林業関係が二千八百三十六万百円というような数字であります。
なお兵庫県下県庁及び
関係当局からのこの災害に対する
特別要望事項といたしましては、
一、
防潮堤の
復旧費は
全額国庫負担で実施せられたい。
二、
土木関係その他の復興に対する起債については希望額の金額を認めてもらいたい。
三、
住宅復興計画中、六百戸は
高額国庫負担で実施されたい。
四、
住宅金融公庫の貸出し條件を緩和して、新築費のほかに大修理費などについても
国庫補助費特別融資の方法を講ぜられたい。
五、復興諸資材のあつせんについては、強力な支援を賜りたい。
六、米作の被害に対しては、
病虫害用の農薬の購入費の助成及び肥料の旧価格による放出などの措置を講ぜられたい。
七、漁具及び漁船等の助成並びに融資あつせんなどについては特別の方途を講ぜられたい。
八、伝染病の予防費の
概算支拂いについて特別の方法を講じてもらいたい。
九、
平衡交付金並びに
国庫補助金の
算定基準となる本県二十五年度の
普通税收入
見込み額が二十六億円の推定であるが、
地方財政委員会においては、三十五億円と見積られておるのであつて、この
基準的財政收入額を過大に見積らぬように特に考慮せられたい。
十、各起債についても特別の御配慮を賜りたい。
十一、
工場防潮壁構築資金及び
企業復興資金の
供給確保について特別の措置を講ぜられたい。
十二、本年度産米の
補正割当については特別に御考慮願いたい。
十三、水稻の
保險金の
概略拂いを緊急に実施してもらいたい。
以上のような要望がされたのであります。
次いで
和歌山県下の
被害状況について御報告申し上げます。まず
一般概況から申し上げますと、九月三日午前十一時四十五分、本県に上陸いたしました台風は、
本県一帯、特に北部は雨量二百十四ミリ、
最大風速四十六メートルに達する大暴風雨となりまして、家屋の倒壊、樹木の折損が相次ぎまして、前日よりの降雨と相まつて河川は増水いたしまして、橋梁を破壊流出し、堤防は決壊いたしまして、家屋、田畑、
工場施設、土木、交通、林業、
教育施設などに甚大なる損害を與えて、
海岸地区におきまして高潮が襲来して
港湾施設を破壊し、
漁船漁具、
水産増殖施設民家などを流失し、海水が
人家田畑に浸水するなどその猛威は非常なものであります。本県は昭和二十一年の南海の震災以来、おもなる災害のみをあげましても、昭和二十二年の水害、昭和二十三年の震災と水害、昭和二十四年デラ台風並びに七・五水害などの累年の災害によりまして、深刻なる打撃を受けているところへ今回の
ジェーン台風でありまして、非常なる県の民生上重大なる被害を受けておるわけであります。
これを各
関係別に被害の状況を申し上げますと、九月四日現在において
県当局の御調査によりますれば、死傷、死者三十人、行方不明が二十四人、
負傷者千八百二十四人、計千八百七十八人。
罹災家屋及び
罹災人員、住家におきましては全壊二千九百八十五戸、人員が一万三千七百五十七人。流失が七十八戸、人員が三百二十五人。半壊が一万三千七百三十五戸、人員が六万千四百六十二人。浸水が一万千七百十五戸、人員四万六千七百三十五人。計家屋におきましては二万八千五百十三戸、人員においては十二万二千二百七十九人。非住家が一般三万千百八十九戸、公共千四百一戸、計三万二千五百九十戸に及んでおります。これが
被害顧は百二億千百三十万円、
復旧総額が六十五億九千六百八十七万円、なおこれが
応急復旧費として要するものは七億九千七百五十五万円になります。
これを産業別に申しますと、
被害額が六十五億七千二百五十六万円、各部門で申し上げますれば、
耕地関係が十一億千二百万円、
林業関係が六億八千八百万円、
食糧関係が三千八百万円、
開拓関係が一億二千二百万円、
水産関係が三億八千三百万円、
農業関係が三十四億二千六百万円、
商工関係が八億百万円、これらの細目につきましては
別紙資料をもつて御報告申し上げます。
次に
土木関係の被害でありまするが、
土木関係においては被害が七億五千五百五十万円でありまして、これが復旧を要するものが回顧の七億五千五百五十万円ということであります。なお
応急復旧費として二億六千四百万円を要望しております。この
ごまかい点については報告書によつてごらん願います。われわれ
調査班の
調査地域は大阪より
和歌山市に参りますところの農村、
和歌山市、海南、箕島、藤並、湯浅、御坊、南部、田辺、朝来、兵浜、すなわち海草郡、有田郡、旦局郡、西牟婁郡下の
海岸線、河川、農村の各被害地を実地に調査したのであります。これらの
調査地域の海岸は、至るところ
防潮堤が決壊し、紀の川、有田川、日高川の沿岸の
砂防工事も不完全でありまするために、
沿岸農漁村は、高潮によりまして七割以上の被害を至るところ見ております。漁港は漁船の流出、その他甚大なる被害を受けて、林地はほとんど倒木しておりまして特に果実の被害は全滅的な打撃を受けております。今一例を申し上げますと、田辺市におきましては、水稲の被害は百六十町歩に及びまして、かんしよは三十一町歩、蔬菜が十一町歩、果樹三十七町歩、これを減收で見ますと、水稻では八割一分、果樹におきましては九割の全滅的な被害となつております。漁船におきましては、芳養、由良、江川、湊の各漁港におきましては十四隻、建物におきましては三十件、道路におきましても延長一千四百十五メートルの道路がやられております。特に
和歌山県下におきましては全国一の果樹、すなわちみかん、梅などを持つておるのでありますが、その被害はまことに甚大であつて、その大半が被害を受けておるのであります。われわれは調査に愼重を期するために、各町村長より、その被害の
報告現状を調査したのでありますが、いずれもその被害が甚大であり、想像に絶するものがあつたのであります。
次にわれわれ
調査班は、地元民からして熱心なる衷情を傾けての陳情がなされたのでありまするが、本県の
要望事項を御報告申し上げます。
一、大幅の
国庫助成
イ
累年災害を考え、
土木関係において
原形復旧工事のみならず、ある程度の
超過工事を施行する場合でも、
全額国庫負担を認められたい。
口 船溜り、船揚場、林道、
荒廃林地、耕地の復旧に対しましても、
全額国庫負担とせられたい。
二
国庫助成金の
早期決定と
概算交付とを行われたい。
三 大幅な起債の許可、
県單独復旧工事及び
災害復旧公共事業費に対する
県市町村負担額については、国において起債のわくを拡大の上、
全額起債を認められたい。
四
平衡交付金の
増額交付をしてもらいたい。なお
固定資産税の対象となる家屋が大惨害をこうむり、県におきましても、
事業税、
特別所得税などに影響甚大で、相当減税を余儀なくせられておるのでありますから、これらの事情を十分に考えでもらいたい。
五
復旧進捗のための
資金措置。
イ
産業資金の
特別措置生産再開のための必要な資金は、政府の
特別措置により預金部資金浄放出して、貸付の方途を講ぜられたい。
ロ 罹災民の
救済資金、厚生、
生産資金については、従来のわくを拡げて、融資の道を至急講ぜられたい。
ハ
公共施設復旧費に対する融資、土木、林業、水産、耕地、教育などの
公共施設復旧に対して、
国庫補助あるいは起債を受領するまでのつなぎとして、一時融資をせられたい。
ニ
農業災害補償法による共済金あるいは
漁船保險の
保險金を早急に支抑われたい。
六
罹災者に対する
住宅対策
イ
庶民住宅建築に対する
国庫補助戸数の増加をほかられたい。
ロ 罹災による
引揚者住宅応急修理に対する
国庫助成を行われたい。
ハ
住宅金融公庫の
融資対象区域を全県に拡張するとともに、融資のわくを拡げて、
罹災者に対して優先的に貸付を行われたい。
ニ
災害救助法により国庫の助成を得て、
市町村営住宅の建設をしてもらいたい。七
罹災者災害に対する国税の
減免措置を講ぜられたい。稻作の被害甚大であるから、
事前割当生産量の六割減收、これを
事前割当の供出量として全免をざれたい。
なお左のごとき
応急物資の配給またはあつせんをせられたい。
イ 食糧の
特別配給並びに県外米の輸送。
ロ
排水工事用石油の特配。
ハ 建築用その他
復興用資材の確保あつせん。
以上が
和歌山県当局よりの
要望事項であります。
以上、大阪府、兵庫県、
和歌山県の
ジェーン台風の
災害状況を報告申し上げましたが、
現地調査の結果、本
調査班としては、次のような意見を附加して御報告申し上げたいと思うのであります。
上述の報告に示されておりまする数字は、
関係府県当局の提出せられましたものでありますが、その正確度におきましては、原則的に信憑し得るものであると信ずるものであります。しかしその莫大に上る
被害高に対して、現在の規定をもつて、復旧または救済し得る金額というものは、比較的少いのであります。すなわち
公共事業などの
災害復旧対象になる物件の損害は、
被害総額に比してきわめて僅少であります。しかるに大阪、神戸、すなわち
阪神地区のごとく、
委員各位も御承知の通り、
日本産業の重要なる地区でありまして、これが復旧、復興は、現在の
国際経済状況から見て、
日本経済の主力という観点からも、その復旧の一日も早く行われる必要を痛感するところであります。政府は災害後におきましては、従来に比して、急速に一部融資の方法を講じておりますが、その大半は
公共事業関係の
災害復旧費の一種の前渡し的な短期融資でありまして、直接に産業復旧に使用せられる性質の金ではないのであります。従つてこの際政府は急速に、これら重要なる
日本産業地区の災害復旧を目途として、中小企業を含めての産業復旧資金として、預金部資金または見返り資金による相当多額の融資を強力に実行することを希望するものであります。もしこれらの措置が不必要に遅延し、あるいはまた軽視せられるような場合におきましては、阪神産業地区はまつたく麻痺状態に陷るとともに、この結果はゆゆしき社会問題となり、あるいは労働問題を引起すことは必然であるのでありますからして、この点についての強力なる措置を勧告する次第であります。また上述の報告にありましたごとくに、一般住宅、労務者住宅、また開拓者住宅の破損は、その数においてもその質においても莫大なる数字に上つております。これが自力によるところの復旧は、われわれ調査団が現地において調査いたしました結果は、ほとんど不可能な状態であります。ことにわが国は災害の多い国でありますからして、これらの財政的及び金融的な対策が従来全然規定せられておらなかつたということはひとつの欠陥であると考えますので、この際災害住宅金庫のごときものを設定して、計画的に復旧整備をはかる必要を感ずるものであります。特に大都市におけるところの労務者住宅については、関係産業団体とも相はかつて、恒久的な労務者アパートなどを建設するような措置が必要であると感ずるものであります。
第二には、
農業関係の産業復旧に関する資金の問題でありまするが、この種の災害は台風及び大洪水の場合におきましては、まつたく全滅的な性質を結びておりまして、相当集団的に災害が引起されておるのであります。六月、八月の豪雨によるところの災害と同様でありまして、前回の
委員会で御報告がありました通り、茨城県下の小貝川決壊により二町五箇村の全滅のごとき、まつたく全滅的な打撃を受けておるのでありますからして、これが救済に当つては、農業協同組合によるところの相互扶助の力を利用するということは、かくのごとき集団的な災害の場合においてはまつたく不可能であります。特に最近におきましては、農業協同組合が経済的に困難な状況にあることは全国的に同一でありまして、この点は各位のまつたく御承知の通りでありますから、
農業関係の復旧または復興のためには、当然政府が資金的措置をとらなければこれが回復は不可能である。以上の観点から考えましても、この際政府は中央農林金庫を通じ、あるいはまた
県当局を通じて相当額の預金部資金を、この
農業関係の
災害対策費として特別のわくを與えて融資しなければ、最近政府が食糧一割増産というような積極的な政策を掲げましても、これが実現は不可能であるばかりでなくして、従来の生産力を維持することも困難であることを痛切に感じたものであります。もちろんその他の問題といたしましては、共済保險によるところの
保險金額の点につきましても、従来のごとくではなくして、今後單作農家の場合のごときは、従来の
保險金制度は実際上において不合理な点があるのみならず、その金額におきましても、現在の状態におきましては、まつたく再
生産資金どころではなくして、生活費の一部をも負担することも困難であるというような金額にすぎないのであります。これらの点につきましても、農林当局が急速に対策を決定せられんことを要望するものであります。
今回の災害が想像以上に甚大をきわめました主要なるところの原因は、防災工事が不完全である、あるいはまた不徹底であるということが大きな原因をなしております。
阪神地区のごとくに、十年前から地盤の沈下が起きておりまして、その沈下が数尺に及んでいる。従つて一たび今回のごとき災害がありますれば、その被害の甚大であることは事前において明瞭であつたわけであります。しかるにこれが対策が積極的に行われておらなかつた。
阪神地区のごとき網の目のような水路があり、これがまた整理統合といいましようか、対策も不十分である。單に従来の災害復旧が、必要による応急的な、平時の満潮時に対するような対策であつて、従つて今回のごとき高潮の場合においてはその上を一メートルもしくはニメートルも越えて高潮が襲来する、こういうような結果をつくつているのであります。しかもこの高潮堤は
阪神地区ばかりではなくして、今回の台風にかんがみましてこの地方一帯、すなわち
淡路島環状線道路にいたしましても、あるいは
和歌山県下の海岸国道にいたしましても、これらの災害の主力が高潮にあつた。であるからして、この方面におけるところのこの種の
公共事業の主体は、災害防除の目的を達成するためにはこの高潮を防ぐ、いわゆる高潮堤の事業が少くとも災害防除の基本的な対策にならなければならぬし、これを中心として総合的に企画が行われなければならぬことを勧告するものであります。台風はもちろん水産業関係にも大きな影響を與えておりまして、漁船あるいは漁港の破損、破壊、これはもちろん災害復旧でありまするからして、全面的に復旧を要するものでありますけれども、われわれ調査団が現状を調査いたしました結果からいうと、もちろん当地方は瀬戸内海を中心とするところの重要なる漁区でありますからして、漁港の多く設置されんことを希望せられることは当然の人情ではありまするが、現在の日本の国情から考えましても、ただ單に多く漁港をつくるということであつては、必ずしもその目的が達成できない。今回の場合におきましても、もし強力なる漁港が適当に配置せられておつたならば、これだけの漁船の損害、これだけの水産業関係の損害がなかつたのではなかろうかと感ずるのであります。従つて今後の措置といたしましては、恒久的の措置は最も必要なる地区に、
最小限度において急速に、しかも重点的に、強力なる、優秀なる漁港をつくるということであります。これらがいずれも中途半端な漁港設備で行われた結果、今回においてはどの漁港におきましても、ほとんど一隻の漁船をも守ることができなかつたというような、まことに中途半端な漁港が現在歯を並べておる状態でありますからして、この点については厳重に再検討を加えて、かかる場合においてもなお漁船を救い得るような措置が講ぜられんことを要望するものであります。これらのことが一面においては、一般からして政治力の不足を非難せられるところの理由にもなるのでありまして、これらを考慮して強力なる政治的措置が必要と考える次第であります。
特に最後に申し上げたいことは、公共営造建築物、ことに学校などでありまするが、これらの損害がまことに莫大に上つております。もちろんこの原因につきましては、戰後におけるところの資材の不足、あるいは予算の節約というような事情もあげることができますけれども、いやしくも
公共事業体が施工するところの建造物あるいは工事が、建築間もない建物においてもほとんどやられておるというような現在の状況であつては、これはむだに国費もしくは地方費を消費するというような結果になつて参るのであります。従つてこれらの施行につきましては、将来十分なる監督が必要であると同時に、それに必要なる予算措置も行われて、かくのごとき災害を防止し得るようにいたしたいものと考える次第であります。
以上が大綱にわたつての勧告でありますが、なおこの機会に当
委員会におきまして、次のような新機関を設置せられんことを要望してやまないのであります。それは毎年
災害復旧費に対しまして、五百億円前後の莫大な国費あるいは地方費を費消しておるのでありますが、各地の
災害状況を調査いたしました結果、それらのうち、前年度の施行部分の相当の数量が再び災害をこうむつておる。こういうような状態であつて、何ら工事が完全に有効に作用しておらない。しかもこれらの費用は常に国民の血税によつて行われているのでありますから、国会としては、この莫大な国費が完全に使用せられるがためには、これを厳重に監督し、調査する必要がある。われわれ調査団が各地において調査いたしました結果は、はたして完全にこれらの国民の血税が使用せられているかいなかを、まことに疑問とせざるを得ない点が多々あるのであります。従つて当
委員会内に小
委員会として、
災害復旧工事調査
委員会のごときものを設置いたしまして、強力にこれらの復旧工事に対して監督調査する機関をつくることが必要であろうと考えるのであります。
なお本
調査班といたしましては、詳細なる資料は別書をもつて提出しておりますので、この点各位の御了承を願いたいと思うのであります。
要するにわれわれが調査いたしましたのは、台風直後でありましたが、各県ともによくその救援あるいは復旧対策を樹立せられて、乏しい資材、資金をもつて、実に涙ぐましい活動を開始せられておつたのであります。しかもわれわれの調査に対しましても、災害のもとでありまして非常に多忙であり、困難であるにもかかわらず、きわめて熱心に誠意を惜しまない御協力をしていただきまして、この点につきましては、知事及び関係部課長に対して、心からお礼を申し上げるとともに、この調査ができましたことにつきまして、地元各市町村民に対しましても御礼申し上げる次第であります。
これらの災害にかんがみましても、われわれ
調査班といたしましては、今後国会が一丸となつてこれが復旧、復興に努力をいたしまして、一日も早くこれらの被害をこうむりました人々が、前に増しての民生安定の道を得ますことのできますように、当
委員会においても急速にこれらの対策を樹立せられんことを切にお願いいたしまして、御報告を終る次第であります。(拍手)