○野村
委員 先ほど
委員長から御
報告がありました
東北班、すなわち第三班の
災害の
調査の結果について御
報告をいたしたいと
思います。
青野武一君及び私は今回の宮城県及び福島県の
水害につきまして、宮城県におきましては、
委員飯塚定輔君、福島県におきましては、前
委員長大内一郎君に特に御参加をいただきまして、十九日より二十五日まで一週間、その
実情につきましてつぶさに
視察をして参
つたのでありますが、私どもの
視察して参りましたのは、限られた日程でありますので、その
視察範囲もおのずから限られましたが、許される範囲にわたりまして
視察をいたして参
つたのであります。わずか一週間でありましたが、各県の
関係各位の熱心なる御協力によりまして、私らの
調査に多くの便宜を得、特に二百十日をまのあたりに控えまして、
災害以来県官民一致、文字通り不眠不休、応急の
処置に敢鬪せらるる
実情を目撃いたしまして、深い感銘を受けたのでありまして、これらの方々の
努力に対しまして感謝の念を持ちつつ、ここに御
報告いたしたいと思う次第であります。
まず当時の気象の概要並びに今回の
水害の特徴につきまして御説明をいたしますと、八丈島付近に停帶いたしておりました低気圧は、発達いたしまして、毎時二十ノットの早さで北上し、八月四日午前四時、宇都宮を
中心示度九九五三ミリバールで通過をいたしまして、北々西に進み、酒田沖に出、宮城、福島両県はその影響圈に含まれたのであります。
従つて各地に
豪雨をもたらしたのであります。
次に今回の
水害の特徴につきまして申し上げますと、
降雨の総量におきましては、
昭和二十三年のアイオン
台風には及びませんが、約十時間内外に二百ミリないし三百五十ミリに達しまして、急激なる
増水を来したことが特徴であります。特に
山間部の雨量は、平地よりはるかに多いのでありまして、宮城県の広瀬川上流の作並におきましては、五八九・五ミリ、福島県の川内におきましては、四六二ミリにも達するまれに見る
降雨でありまして、荒廃いたしました山地は
各地に山くずれを惹起いたしまして、土砂は
河川に流出し、各
河川の
増水氾濫は大
水害を招くに至
つたのであります。
これより
被害の
状況を申し上げるのでありますが、今回の
災害の全般をながめまして、直接土木
被害もさることながら、広汎なる範囲にわたりまして深刻な
農業被害の甚大なるを認められるのであります。一例を宮城県にとりましても、宮城県の総
被害額六十三億四千九百八十一万六千円のうち、土木
被害十七億千五百二十九万一千円に対して、
農業被害は十六億九千九百八十五万円に達しておるのであります。
まず第一に土木
被害につきまして申し上げますと、宮城県におきましては、ただいま申し上げましたように、実に十七億一千五百二十九万一千円、福島県におきましては、五億一千七百五十三万五千円の
被害を受けているのであります。まずこの
原因を考えてみまするに、これは單に短時間に大
豪雨が来襲したという
原因のほかに、次のことが考えられるのであります。すなわち戰時中及び戰争直後の濫伐、過伐で水源が荒れに荒れまして、洪水のたびごとに荒廃した山地の土砂は流出し、
河床のいやが上にも
上昇を招き、
河床が
耕地より高く
なつているところが
諸所に見られるのであります。また戰時以来
地方財政は逼迫し、改良
工事はおろか、公共土木
施設の維持管理さえ單独ではできない
実情でありまして、未改修
河川が多く、在来の
堤防は低弱でありまして、屈曲もはなはだしくて、
河川工作物も不十分であつたために、
災害が発生しやすい
状態にあつたためであります。これを
河川、
砂防、
道路、
橋梁及び
海岸等につきまして説明いたしますと、まず
河川及び
砂防につきましては、宮城県におきましては
河川の破堤崩壊四百五十七
箇所、
砂防では護岸の
決壊流出、
堰堤の破損等を合せまして三十三
箇所、
被害総額約十億八千万円、福島県におきましては
河川の破堤崩壊二百九十九
箇所、
砂防二十四
箇所、
被害総額約三億五千万円に達しているのであります。前にも申し上げました通り、年々上流からの土砂の流出がはげしく、その
河床は年々隆起し、
堤防は年を経るにつれて増大強化しなければならない現状にあるのであります。しかしこれらの
堤防はすでに堅牢性を欠いているものが多いのでありまして、その関係上年々
災害が絶えないのは当然でありまして、今回のように短期間のうちに相次ぐ
災害をこうむりましたような場合は、
災害と
復旧と繰返しているというよりは、むしろ応急
復旧工事着手前とか着手中に
災害をこうむりまして、
被害をますます大きくしているというのが現状であります。宮城県の迫川の例を見ましても、今回の
水位はアイオン
台風における
水位よりも、三十ないし三十五センチも高か
つたのでありますが、破堤なく、よく洪水より免れましたのは、まつたく
災害助成
工事のたまものなのであります。これらに見ましても、完全にその
工事を終つておりますれば、いい結果をあげていることは、実際に目撃しておるわけであります。
以上は
堤防について述べたのでありますが、今次洪水におきましては、
河川の高
水位持続時間は、いずれも六、七時間にすぎないのでありまして、
堰堤を設けてこの部分の洪水を調節すれば、下流の洪水は低減せられるとともに、貯水を利用して灌漑、発電等に利用するならば、民心安定に及ぼす影響は甚大であるのでありまして、これを設置されたいという声が
災害地の数
箇所で聞かれているのであります。
次に
砂防の問題でありますが、このたびの
原因の一つが、山地の荒廃による土砂の流下によるものでありまして、これを放置いたしますならば、土砂の流出がますますはげしくなりまして、下流地帯の
河床はいよいよ隆起の一途をたどり、
災害を免れないことになるわけで、
各地には
砂防ダムの設置をする声を聞くのであります。
次に水防につきまして申し上げますと、宮城県におきましては北上、阿武隈、名取、迫、江合、鳴瀬等の大
河川を有しておりますが、訓練を経ているのでありまして、
昭和二十二年、二十三年の大洪水におきまして、鍛えられました組織、技術等をもつて今次
水害に抗し、あらゆる危險を冐し水防に挺身いたしましたために、
災害の未然防止及び
被害の拡大防止に意外の成果をあげられたことを見受けたのであります。すなわち迫川筋におきましては、栗原郡若柳町新山付近及び南二又附近におきまして、四日約七十メートルに漏水が始まりましたが、水防団員約三百名に、これに地元の方々多数が応援に出動いたしまして、破堤前において食いとめ、また佐沼付近において、四日、
水位五・二メートルに達し、かつ一時間十五センチの
増水により、未改修区域
堤防は溢水の危險とな
つたので、水防団員及び住民三百名の方々の出動によつて事なきを得たのであります。また福島県におきましては、鮫川の
堤防を不眠不休の水防作業によりまして、山田村及び下流
町村を救つた実例があるのでありまして、今次
水害におきまして、水防活動は実に偉大なる効果をもたらしておることを拝見して参
つたのであります。
次に
道路、
橋梁について申し上げますならば、宮城県におきましては、
道路決壊二百五
箇所、約八千六百万円。
橋梁流失八十
箇所約七千三百万円。福島県におきましては、
道路決壊六十八、約二千七百万円。
橋梁流失三十四
箇所、約四千万円の
被害をこう
むつておるのであります。今回の
降雨は山岳
地方に多かつたために、
被害の多くは主として山岳
地方でありまして、
道路、
橋梁はこの
方面において至るところ
決壊し、一時ほとんど
交通不能の
状態に陷つたところが少くないのであります。
橋梁につきましては、この山岳
方面の木橋はほとんど
流失、もしくは破壊され、特に広瀬川の木橋は、永久橋を除きまして、大部分は落橋いたしたのでありまして、永久橋の架設が強く要望されているのであります。宮城県に川崎町という町がありますが、この町の人々の多くは、炭焼きを業としておりまして、この町だけでも年産三十五万俵の生産があるのでありますが、このたびの
水害によりまして町の
橋梁流失十三、
道路決壊四
箇所の
被害をこうむ
つたのでありまして、そのために木炭の滞貨二万俵も出て、非常に困つておる
実情でございまして、仮の橋をかけるにいたしましても、町に予算がないということで、金融措置もつかない。どうしても困るから国の御援助を待つという深刻な
実情に触れたのであります。
橋梁、
道路の
決壊は
交通不能と
なつて、経済面に及ぼす影響はきわめて大なるものがあるのでありまして、これを放置いたしますならば、復興をそれだけ遅延せしめるものでありますので、この点十分
考慮しなければならぬと考えるのであります。
次に
海岸について申し上げますが、宮城県におきましては、護岸
決壊八
箇所、約五千百万円。福島県におきましては五
箇所、百七十万円の
被害をこうむ
つたのであります。宮城県におきましては日程の関係で、十分
現地まで
視察することかできませんでしたが、福島県におきましては、新地すなわち釣師及び請戸におきまして
海岸の護岸
状態を見て参
つたのでありますが、アイオン、キテイ両
台風、さらに今回の
災害により、護岸はかなりいためられているのであります。この
海岸一帯は年々侵蝕を受けておりまして、釣師はこの二、三年の間に約四十メートルもの侵蝕を受けておるのでありまして、まだ一部には護岸がないところがありまして、このまま放置いたしますならば、ますます
海岸は侵蝕を受けまして、
耕地、住宅等はきわめて憂うべき
状態にあるのでありまして、また護岸
決壊による塩害の
被害も、年々多くの
被害を当
地方は受けておる
状態でございます。
以上土木
被害につきまして御説明いたしたのでありますが、
災害復旧につきましては
原形復旧を原則とせず、防災的見地に立ちまして
復旧計画なり、改修
計画なりをしなければいけないということを痛感するのでありまして、防災的見地を無視いたしまして、
原形復旧に満足しておるならば、
災害と
復旧を繰返し、
復旧は何の役にも立たない、
災害はいつに
なつてもなくならないということを考えるのであります。
第二には
農林関係でございますが、これは便宜上
農地被害と林業
被害にわけまして御説明をいたしたいと
思います。
まず
農地被害につきまして申し上げますが、宮城県の各
河川は広大な
耕地を包容しておりまして、
耕地は海拔八メートル以下という所が非常に多いのでありまして、これは
出水すると、幾日も幾日も滯水するという宿命を持つておるのであります。また水稻單作地帶が多い上に、ちようど稻の出穗期に
冠水されましたために、
農民諸君の精神的、経済的面に與えました影響はきわめて大きいものがございます。その
被害について申し上げますと、宮城県におきましては水稻
冠水四万五千九百九町三反、
流失埋沒五百十町七反、
減收量は実に二十八万四千七百石であります。その他の
農作物を合せますと、約十七億円の
巨額に達するのであります。福島県におきましては、約四億八百万円の
被害をこう
むつておるのであります。特に宮城県の南郷村、鹿島台村、涌谷町、石越村におきましては、低地帯であります関係上きわめて大なる
被害をこうむ
つたのであります。なお南郷村におきましては、作付面積二千八百四十二
町歩のうち
冠水二千四百五十
町歩、しかもそのうち收穫皆無とみなされるものが八百
町歩、涌谷町におきましては、水田総面積千二百六十町のうち流出、埋沒、
冠水千二百十
町歩、畑総面積五百十一
町歩のうち流出、埋沒、
冠水三百二十六
町歩、鹿島台町におきましては
耕地千六百三十七
町歩のうち
冠水面積千五百二
町歩、三日以上の
冠水千百二十二
町歩に及び、石越村におきましては七百八十
町歩のうち、十二日間も実に
冠水いたしまして、全然收穫皆無というような
状態でございます。その
被害一万八千七百二十石に達するものでありまして、石越村のごときは従来富裕にして平和な村とされてお
つたのでありますが、
昭和十九年、二十二年、二十三年及び本年の実に五回の惨禍をこうむりまして、復興の悲願も遂にむなしく、村民は物心両面に大打撃を受けておる
状態でありまして、村民のうちには、せつかく稻を植えても、こうたびたび
水害にやられてしまうくらいならば、むしろ
農業を放棄して国家の生活保護を受けなければ立つて行けないというような、深刻な
実情に触れたのでございます。ことに本年度は
水害をこうむらなかつた所におきましては、御承知の通りに終戰以来の大豊作でありまして、これらの人々に及ぼす心理的な影響はきわめて大きいものがあると感じられておるのであります。国といたしましては、
河川の
復旧及び防災に全力を注ぐとともに、
農地の
復旧に絶大の
努力をなし、
農民の再起を補助しなければならないと考えるのであります。
次に林業の
被害でございますが、戰争による
山林の荒廃と林地の脆弱は、最近のたび重なる
豪雨によりまして急速に崩壊地の面積を拡大いたしまして、今回の
災害により林地四百三十五
町歩、約三億八千万円、林道二千六百四十七
箇所、約二億三千万円、林産物約六千七十万円、その地合計いたしまして、約六億九千万円の
被害を受けて、福島県におきましては、林地百八十五
町歩、約一億六百万円、林道約九千四百五十万円、林産物約百三十四万円、その他合計いたしまして、二億三百万円に達する
被害を受けておるのであります。そのためにこれらの崩壊地は
豪雨のあるごとに多量の土砂を押し流しまして、
河床を高め、洪水の
原因となるばかりでなく、この
被害をこのまま放置いたしますことは、林産物の搬出はもちろん、需給の間に一大支障を来すのでありまして、いずれも
緊急復旧をしなければならないのであります。
以上をもつて概略を説明いたしたのでありますが、最後につけ加えて申し上げたいことは、まず第一に国庫負担金の問題であります。その一つは国庫金支拂いの遅延の問題でありまして、その二は国庫負担の問題であります。まず前者について申し上げますると、アイオン
台風による
災害復旧はすでに三箇年を経過いたしましたが、国庫負担の交付金がいまだにその半ばにすぎない
状態でありまして、一方
地方財政の現況は応急
工事に対するつなぎ資金の捻出等はできない
状態でありまして、本年度のごとく短期間のうちに相次いで
災害をこうむりました際におきましては、前回における
災害に対する金融措置がつかず、これが応急
復旧への着手のできないうちに次の
災害をこうむ
つたのでありまして、この
災害を倍加しておるような現況であります。特に宮城県におきましては、冬期は積雪のため
工事のできない期間があるのでありまして、交付金はできるだけすみやかに交付されなければいかぬと思うのであります。
第二には全額国庫負担の問題でありまして、今回の
水害は前にも申し上げましたように、小
河川の
被害はきわめて多いのでありまして、十五万円以下の
被害が非常に多いのでありまして、福島県はこの点不明でありますが、宮城県におきましては千九百二十
箇所、金額にいたしまして一億八千五百六十万円に達しておるのであります。これを
地方財政でまかなわなければならないとするならば、
復旧の
見込みは立たず、
災害のうき目を繰返さなければならないのでありまして、この十五万円を七万五千円ぐらいにしてもらいたい、そういう措置をとつてもらいたいという要望が非常に強か
つたのであります。
以上ごく概要でございましたが、
調査団にかわりまして御
報告申し上げ、皆さんから御質疑によりましては青野代議士からでも補足していただきたいと
思います。以上をもつて御
報告を終ります。