○前田(榮)
委員 昭和二十五年八月二日、
衆議院規則第五十五條により、
衆議院議長の
承認を得まして、四国西南及び那賀川
総合開発計画並びに地盤沈下に伴う災害の
実情調査のため、中島茂喜君並びに不肖前田が現地に派遣され、
專門員室より井上
調査主事、
建設省防災課より関技官が同行いたしまして、八月二十三日より十日間にわたり、徳島、高知、愛媛、香川の諸県をつぶさに
調査いたして参りました。
今回の
調査において特に重点的に視察いたしましたのは、那賀川及び四国西南
開発地域の
実情、南海大地震による四国各県における地盤沈下並びにこれに伴う諸種の災害状況、幹線道路網、特に未
開発道路の
現況等でありますが、現地状況の詳細につきましては
文書に讓ることといたし、以下
調査団といたしましての
所見の一端を申述べ、あわせて
当局よりの明確なる答弁を求める次第であります。
所見の第一といたしまするのは、
特定地域総合開発法制定に関する問題であります。まず一点といたしまして、先般制定されました国土
総合開発法第十條第六項の規定によりますれば、
特定地域総合開発事業について、国が負担すべき経費の割合に関し、別に法律の定めるところにより特例を設け、または地方財政法弟十六條の規定に基く補助金を交付し、その他必要なる処置を講ずることができるとありますが、本規定こそ国土
総合開発法第十四條中、財政的処置を裏づける唯一のものであり、
特定地域総合開発の存在を実質的に価値づけるゆえんのものでありまして、ある意味においては国土
総合開発法の眼目は、この一点にかかるとも言い得ると思うのであります。しかしながらさらに一歩を進めて申しますれば、その
中心眼目とも称すべき規定も、その
内容をなしますところの国庫補助に関する立法
措置その他の基本的
措置を講ずることなくしては、現実に生きた
効果を発揮することができないのでありまして、もしかかる
措置を閑却するときは、せつかく発足を見ました国土
総合開発法も形式にとどまり、実質的には弊害に終るおそれが多分にあるのであります。従いましてこの際時宜を失することなく、
特定地域総合開発事業に対する国庫補助に関する法的
措置を裏づける必要があると思うのであります。
次に第二点といたしましては、
特定地域総合開発計画のねらいが、公共事業の総合調整による経済
効果の効率的発揮にあることは申すまでもありません。しかしながら現行のごとく、中央の各省、各局と地方都府県の各部各課とを縦に結ぶ予算制度のもとにありましては、一応観念といたしましての机上の総合調整は可能でありますが、予算的裏づけに立脚いたしましたそれが、ほとんど不可能に近い状態にありますことは、本事業の実地に携わ
つて来た者のひとしく痛感いたしておるところであります。今回視察いたして参りました那賀川
総合開発、四国西南
総合開発地域におきましても、これら両
地域の埋蔵資源の主たるものが
林産資源でありまして、林道の開設が第一の急務とされておるのでありますが、一方仕向け先の
関係よりしまして、海上輸送を有利といたしておるのであります。すなわち林道、道路、港湾を通じて、阪神
方面に搬出されるのでありますが、これらはおのおの
行政所管が異なります
関係上、その間の総合調整を欠き、現地における実施
計画に齟齬を来しておりますことは、ただこれら両
地域のみに限られたことではないと思われるのであります。しかしてこの縦の系列のみかたく結ばれた現行制度の行き過ぎに伴う弊害を是正せんとするところに、
特定地域総合開発の存在意義があるのであり、国土
総合開発法中、
特定地域制度を特に認めた以上、さきに述べました国庫補助に関する法的
措置をも含め、強力に事業の総合調整をはかり得る
特定地域総合開発法の急速なる制定化の必要性が痛感されるのであります。
次に地盤沈下並びにそれに伴う災害について申し上げます。昭和二十一年十二月の南海大地震及びその後の余震に起因する地盤沈下並びに高潮による災害につきましては、地盤沈下対策国庫補助事業として、昭和二十三年度以来事業の推進をはか
つているようでありますが、国庫負担年度割額に制約せられ、いまだに完成に至らず、
建設省関係事業のみにても、その査定額、徳島県四億六千万円、高知県十一億八千万円、愛媛県七億七千万円、香川県三億四千万円、計二十七億五千万円余に対しまして、二十五年度末までに完成を
予定されておりますものは、徳島県において二億五千万円、高知県五億円余、愛媛県三億六千万円、香川県二億円余、計十三億一千万円にすぎざる状態でありまして、多数の
関係民は脅威と不安にさらされ、本事業完了の一日も早からんことを熱望いたしているのであります。従いまして
関係当局におきましても、本災害の特殊性にかんがみ、これが対策完成にいま一歩の努力を傾注されんことをまずも
つて要望いたしておきたいのであります。
次に、地盤変動に伴う愛媛県沿岸及び島嶼部一帶における井戸水に対する塩害についてであります。すなわち現在までに判明いたしておりまするもののみにても、本県における井戸水の被害は、海岸線及び島嶼部にわたり、八十四箇町村、被害戸数二万二千戸、被害人口約十二万人余に及んでおるのでありますが、さらに下水の排水が不能となり、これが人家及び田畑に浸入いたし、衛生上捨てがたきものもまた三十八箇町村、被害戸数三万三千戸、被害入口約十万人余に達しておるのであります。しかしてこれが対策といたしましては、簡易上水道の敷設及び排水施設の完備以外に道はないものと思われるのでありますが、これに要する費用は、簡易上水道敷設費四債六千万円余、排水施設事業費一億八千万円、計約六億四千万円余の多きに達するものと推定されるのでありまして、現在における県並びに地元市町村の緊迫せる財政のみをも
つてしては、これが対策に万全を期することはとうてい不可能と思われるのであります。しかしながら事は飲料水に関するものでありまして、
住民の死活問題として、人道上一日もこれを放置することはできない問題と思考されるのでありますが、
当局はこれに対していかなる具体的な
計画を用意しておられるか。また一方地元におきましては、この際ぜひとも本事業を、地盤変動に伴う被害対策事業として、国庫の援助をいただきたい旨強く要望いたしておるようでありますが、これに対して
当局はいかなる見解を有しておられるや、以上二点に関して明確なる御答弁を求めたいのであります。
次に災害の際、海岸堤防等に対して行う緊急仮
工事に対する国庫負担に関する問題であります。すなわちこれら緊急仮工のための県並びに地元市町村の立替金は、徳島県の例で申しましても、年間約二千万円の多きに達しておる模様でありますが、現行の制度をも
つてしましては、これら緊急的な仮
工事につきましては、そのほとんどが国庫補助の対象として認められぬために、地方財政窮乏の今日、地元といたしましてはこれが負担に耐えかねておる
現状であります。しかしながら何といたしましても地元といたしましては、被害を最小限度に食いとめるべく、緊急やむを得ざるために行う
措置であり、一方地盤変動等特殊の悪
條件に際会いたしておる当地方といたしましては、少くとも完全なる海岸堤防の完成せざる限り、その必然的結果といたしまして、例年にわたり繰返さざるを得ない
措置であろうと思うのであります。従いまして
現状においては、当然これらに対する補助の道を講ずべく
考慮の必要があろうと思われるのでありますが、これに対する
当局の御見解を承りたいのであります。
最後に四国中央産業
開発道路の改修促進に関する問題であります。本路線は愛媛県西條市を
中心とし、その東西に新居浜市と今治市とを控えた東愛媛の工業地帯と、高知県高知市を
中心とする一帶、すなわち四国中央狭部を縦貫する延長百十二キロの道路でありまして、戰時中の突貫
工事により、そのほとんどを改修いたしたのでありますが、終戰とともに愛媛県加茂村より高知県本川村に至る延長二十六キロの未改修部分を残して
工事は中止となり、ために本路線は、その大部分の改修を完了いたしておるにもかかわらず、未改修部分がまつたく昔のきこり道、すなわち樵路にすぎざる状態のままに放置され、縦貫道路としての機能をまつたく衷失いたしておるのであります、しかしてこれが改修に要する費用は、随道延長八百五十メートルの開鑿も含め、約三億五千万円と推定されるのでありますが、これが改修完了後の経済
効果の大なるにもかかわらず、本路線の性質が従貫道路であります
関係上、いわゆる一般道路の補修あるいは改修の場合のごとく、その年々の
工事の進捗に比例して、效果をあげ得るものと異なり、全線の完通を見ざる限りその
効果を期待し得ない点にかんがみ、現下の道路予算の
実情等よりして今日まで放置されて来たものと思われるのであります。しかしながら本路線改修完了による
効果は、單に四国南北側を最短距離で連絡し得るという運輸上の效果のみでなく、その沿線に含有する豊富なる資源の年当り増産量のみにても木材二十万石、木炭二百万貫、銅鉱三万五千トン、金額にして合計約三億三千万円等の経済效果をも期待し得るのでありまして、当然本改修
工事の促進に関しましては、これを三箇年、あるいは五箇年
計画等一定の継続事業として早急に着工する必要があると認められるのであります。
以上はなはだ簡單ではありますが、
所見のおもなるものを申述べ、視察の御
報告にかえる次第であります。