○
田中(角)
委員 さきに本
委員会より派遣を命ぜられたる只見川水域中、なかんずく奥会津総合開発に関する部分の
調査を
報告いたします。
只見川班出張議員は砂間一良君と私の二名でありましたが、中ごろより
委員長藥師神君が参会し、專門員室より坂本君、
建設省より井上君が同行いたし、去る八月九日出発、同月十二日帰京いたした次第であります。
今回新潟、福島両県へ国政
調査に参り、只見川流域のいわゆる奥会津地域の総合開発につきましては次回の
委員会において
報告いたすことにしたいと存じますが、その
報告の一部として総合開発地域に
関係ない建設行政について、特に
災害を中心として先に御
報告申し上げたいと思います。
まず第一に海岸浸蝕の問題についてでありますが、日本のような島嶼では各地にかかる
災害は多々見受けられるのでありますが、今回は新潟市における
災害及び福島県の太平洋岸の
災害について
視察して参りました。
〔
内海委員長代理退席、
委員長着席〕
新潟市西海岸の海岸浸蝕は信濃川河口新潟港西防波堤より南西五キロにわたるものでありまして、最も浸蝕をされた部分は大正三年よりすると四百メートルも後退し、年平均浸蝕土量は三十万
立米ないし四十万
立米と推定せられます。この浸蝕の
原因については種々
考えられる要素があるようでありますが、根本的
調査につきましては、
昭和二十三年八月新潟県海岸対策
委員会を設置し、中央出先機関の協力を得てすでに三回の中間
報告を発表するとともに、その
原因の科学的究明及びこれが対策につきさらに
調査研究中でありまして、正確な結論は本
委員会の研究結果をまたねばならないと存じますが、その
原因を
簡單に申し上げますれば、日本海の風波が絶えず砂浜を撹乱洗掘し、また潮汐や沿岸流も砂を移動せしめるものでありますが、特に日本海沿岸においては冬季間の強い北西風に
原因して、海岸線の浸蝕ははなはだしいものとな
つたのであります。これが大正三年ごろより始まり、六年末期ごろよりさらにはなはだしくな
つて来たのは、信濃川の
改修計画に基き大河津の分水
放水路が完成したため、
上流よりの土砂が大部分
放水路に流入する結果、
放水路完成まで本川河口まで
上流土砂が運ばれ、さらに日本海に押し出されたとき、日本海特有の北西風によ
つて汀線に附帶され、大体北西風によ
つて持ち去られた砂の量にひとしい程度のものが附帶するので、当時は何ら汀線に変化が見られずにお
つたわけでありますが、
放水路の完成によりその土砂の押出しがとまり、北西風による浸蝕のみが行われるに至り、今日に至
つたと言うことができると
考えられます。
現在までこれが対策につきましては県
当局としても種々腐心をしておりますが、現存の砂丘がさらに浸蝕されますと、冬季は新潟市は波風にさらされる結果となり、ゆゆしき問題となりますので、西突堤付近は新潟港の浚渫土砂を押し出して、浚渫土砂に対する補給を行い、一応の成功を見ておるのであります。また元測候所付近以西は、強力なる丁字型潜堤を、浸蝕された現在の汀線より約百メートルも突出せしあて現在まで四箇ばかり完成、昨冬それによ
つて砂の持ち去ることは一応とまると同時に、さらに州が付着し始めたようなわけで、この丁字型潜堤は一応成功したものと
考えられ、今後さらに西の方に二キロにわた
つて構築する予定とな
つている。これが完成するまでの応急策としては、一応汀線に木柵護岸を施す
計画にな
つております。
新潟市附近が土砂が持ち去られている反面、大河津の
放水路の出口の両側にある寺泊港附近は信濃川からの土砂のために州が生長し、寺泊港の使用が不能になりつつある
状況であります。新潟県下には各所にかかる地点がありますが、県
当局も大体の施行方法も探究せられた今日、ぜひ予算の増額方を要求しておりました。海岸浸蝕は日本海のみではなく、太平洋岸においても見られ、特に福島県下においては相馬郡新地村釣師、大戸浜、中村町原釜、雙葉郡福浦村浦尻、浪江町請戸、富岡町毛萱海岸等は特にその
被害は甚大でありまして、その防災対策の急が強く要望せられております。本県の海岸浸蝕の
原因については、県
当局の研究
調査にはいささか徹底を欠く点があるように見受けられますが、その概因は県下海岸延長百六十キロが、大部分は天然海岸であ
つて、随所に突出している砂岩たる土丹岩により、砂浜の浸蝕をまぬがれていたのでありますが、最近此の突出した砂岩の小岬はきわめて軟質なため、太平洋の激浪により年々四、五メートル浸蝕崩壊して行く
実情でありまして、ために太平洋の激浪が直接砂浜に、あるいは底流れの変化等によ
つて安定
状況にあ
つた砂浜は流失せられ、直接海岸
堤防護岸にぶつかり、あるいはこれを破壊し、年々約一億円余の
被害を出しており、また人家あるいは耕地に直接恐慌を與え、浸水面積八千町歩、人家移転流失五十戸にも及ぶに至
つたのであります。この科学的
調査による対策も必要なことは事実でありますが、いたずらに予算の要求のみに終始することなく、県
当局はこの
報告でさきにも申し上げた、新潟県の対策
委員会の成果を研究参考とすべきであろうと思います。これらに対する
建設省当局の指導も不十分であると存じます。しかしながらこれまでに受けた
災害の復旧あるいは一応の対策、
堤防護岸に対する予算については、
当局も無関心であることは許されぬところであります。過去
五箇年間における
被害を集計しますと、主要八箇所で、その破堤延長五千五百九十三メートル、浸水面積六百五十二町歩、浸水平均〇・三メートル、家屋移転流失七百戸、道路八千八百九十メートルに及んでおり、また
五箇年間に支出された
災害復旧国庫補助額は一億三千万円にな
つております。
新潟市の海岸浸蝕に比較すれば、その経済
効果は多少相違はありますが、
当局としてはこれをそのまま放置しておくことは許されないのであります。そこで来年度より海岸浸蝕防止費とでも申すべき項目を新たに設けて、この対策を徹底してはいかがかと存じます。
次に阿賀川及び阿賀野川直轄
改修及び
災害復旧工事について申し上げたいと存じます。まず阿賀川の直轄
改修工事についてでありますが、本直轄事業は大正八年より
実施し、全体の約八〇%を完成しており、目下重点は九百町歩の
水害除去に役立つ宮川新水路の完成及び同じく二千町歩の経済
効果を有する湯川新水路の
開鑿であり、前者は来年度完成を期し、後者はさらに推進を
地元は要望しております。
この阿賀川には日橋川、大川、只見川の三大支川を持
つているのですが、日橋川は猪苗代湖より、大川は会津盆地においてきわめて乱流しており、大出水時よりもむしろ中出水時において流心が
堤防に直角に当り、
災害を招くような川であり、また只見川は最近世論に言われる豊富な電力資源を有するきわめて水量の多い川で、三支川ともそれぞれ特色を持
つております。先日の八月
災害では約三千万円の
被害を受けており、
堤防の決壊寸前というのがありました。
地元としては、直轄
工事に対してその技術には信頼するが、とかく災実
復旧費が遅延をきわめて、むしろ復旧面としては、県事業である方がよろしいと申しておりまして、
復旧費の早期支出に対する要望を受けて参
つたようなわけであります。
当局もひとつ阿賀川のみが直轄
工事でないのであります点からして、地方民の気持は他も推して知るべしでありますので、十分改善に努力していただきたいと存じます。もしこの点で改善の余地が見受けられるならば、われわれは協力してその改善に努力を惜しむものでありませんことを
当局もよく知
つておいていただきたいと存じます。阿賀川は新潟県に入るまでに現在七箇所二万七千キロワツトを発電、他に
五箇所一万キロワツトの電力を得ることができる
状況であります。この川は新潟に入りますと、いわゆる阿賀野川となりまして、本邦第八位の河川として日本海に注ぐのであります。この川は二つの地建、すなわち阿賀川が東北地建、阿賀野川は関東地建の
工事担任とな
つておるのでありますが、
当局はなぜ天龍川同様これを一地建にまかせないのか、特に理由があれば明らかにされたいと存じます。この
下流はやはり乱流し、中出水が最も
危險であり、目下
工事は
災害復旧とともに
実施しております。なお本川
下流国道十号線の橋梁は従来木橋であり、年々
災害を受けるので、今度
見返り資金より三億五千五百万円を活用し、総事業費四億六千万円の永久橋をかけることに決定いたし、私たちが参りましたときは
現場事務所の建築にとりかか
つてお
つたようでありました。
次に福島県下の
災害について申し上げますれば、二十二年
災害より本年度七月までの
災害査定額は三十一億でありまして、二十五年度末にはその約五九%を完成することに相なります。また八月三、四日の豪雨による
災害は約五億円でありまして、本年度
災害の査定済みのものと合しますと、約七億円余と相なります。過日八月二十九日には予備費より四千万円配付されたようでありますが、県としても財政逼迫の折、国庫補助金を一日千秋の思いで待
つております。
当局はよく
事情を再認識せられ、安本、
大蔵省も大いにつつついて早急なる支出に努力されることを要望いたします。
次に阿武隈川
上流福島県側直轄
工事についてでありますが、
上流で重点となるべきは、福島の西方より流れて来る荒川の徹底的土砂杆止と本宮町附近の
改修工事でありますが、後者については
地元も
相当協力して
実施してはおりますが、種々
意見を有するようでありますので、
当局出先もよくその
意見を聽取するとともに、
納得の行くように不断の
説明を怠らぬようにしてほしいと
考えます。
最後に郡山、福島間国道四号線道路改良についてでありますが、四七・九キロ中改良済みが鋪装部一九・八%、全体で三一・五%にすぎないので、未改良部分には自動車の行違いにも支障のある
状態で、県担
工事として県が
改修を
実施し非常に良好な結果をあげているのでありますが、とかく
改修工事を直轄に依存する傾向のある今日、県営にてかつ経費を節減して良好なる結果を得たことは、直轄
工事に対する一大警鐘であると
考えられるのであります。だが現地を
調査して深刻に感ずることは、道路予算の僅少ということであります。大蔵、安本
当局の道路に関する観念を根本からかえてかかる必要があると同時に、
建設省当局ももつと熱を入れ、理論的裏づけを示し、理解を得つつ予算の獲得を一層強力に進めるべきではないかと
考えます。幸い当
委員会に道路小
委員会もあることなのですから、もつと
当局の活発な動きがあ
つてしかるべきだと存じます。
以上は奥会津総合開発
関係を除きました今回の
視察の
報告であります。
以上に対し
建設省当局の
意見があれば聽取いたしたいと思います。