○内海委員 本年八月以来の水害につきましては
建設省においても増田大臣を初め、当局の人々が実地についてよくお調べくださいましたわけでありますが、また農林
方面の復興については農林大臣みずからやはり
災害地に行かれて、ことに私どもの踏査して参りました宮城県の実情をよくお調べにな
つておるはずでありますから、政府においてはすでにこれが
対策について十分御研究にな
つて、おそらく午後から質問されるその質問に対しては的確な御答弁があることと信じまして、私どもの踏査して参りました経過について概略御報告申し上げます。
第八臨時国会終了後、八月一日より五日までの間に、関東、東北
地方に局地的大降雨がありまして、その
被害の甚大なることはすでに新聞紙上において御
承知の
通りであります。なかんずくわれわれの踏査して参りました宮城県はその
被害範囲はきわめて多いのであります。ただいま土木
関係において本
年度の
被害は二百五十七億ということを
河川局長は述べられておりますが、しかもそれは六月以前の土木費六十四億を合せて二百五十七億ということなのであります。そうすると差引き土木
関係において、百九十三億の
被害のうちにおいて、もちろんこれは農林省
関係も入るのでありますけれども、宮城県のみの
被害をも
つてしても、六十四億というところの莫大な
被害を見ておるのであります。その
被害の範囲のきわめて広汎かつ
被害額が甚大なることは、この
数字をも
つてしても明らかなのでありまして、これが
復旧対策は民生の安定上きわめて重要な問題でありますので、本委員会におきましても当然委員を派遣して現地を
調査し、その
対策を急速に講ずべきものでありましたが、時あたかも議会は閉会直後でありまして、また一面において国政
調査のために多数の
委員諸君が各地に向
つておりますために、委員会を招集して正式に委員を派遣し、煩瑣な措置をとることは時機を失するおそれがあるので、とりあえず福島
地方を視察中であ
つた藥師神
委員長と佐々木更三君並びに私の、地元選出議員たちが現地
調査をいたして参りましたのであります。その
被害状況を御報告いたしたいと存じます。
すなわち八月十六日夕刻より宮城県庁において佐々木知事、照井土木部長より県
災害の状況を聽取いたしまして、さらに東北
地方建設局の伊東局長より
直轄河川の
災害状況の
説明を聞き、翌十七日は早朝より仙台市内を貫通する広瀬川の急激増水による家屋、橋梁、その他さんたんたる
被害の実情、さらに仙北
地方、すなわち仙台以北の
地方でありますが、これに車を馳せまして、市内の品井沼、吉田川、鳴瀬川等の
堤防決壞、滯水等、稻の枯死し悪臭を放
つておる実情を見ましたが、まことにさんたんたる情勢でありまして、あたかも蒙古の砂漠に立
つて枯草を見るような気がいたしたのであります。それより涌谷町のうちの迫川決壞箇所、夏川決壞箇所等、大破部分をきわめて短時間のうちに視察して参
つたのであります。
このたびの災実をもたらしたのは台風ではなく、強度の弱い熱帶性低気圧で、進路は八丈島、宇都宮、酒田
方面でありましたが、宮城県はその圈内に入り、かつ地勢の
関係上、
昭和二十三年のアイオン台風の降雨量には及ばないけれども、約十時間にわた
つて実に平均三百五十ミリの降雨量を見たのであります。時雨量の大なることによる各
河川の急激出水が特徴で、特に山間部の雨量は平地よりはるかに多く、
上流急勾配の箇所において、甚大なる
被害をこうむるに至
つたのであります。仙山線—仙台、山形間の沿線山間部では、実に十時間の間に六百ミリ、われわれは満州において聞いたのでありますが、一年間の降雨量というものはわずかに四百五十ミリ、しかるに十時間の間に実に六百ミリという雨量を見たということは、ここをも
つて嚆矢とすると言
つても過言ではないと思います。蔵王山では四百ミリ近く、さらに鳴子温泉付近では三百三十五ミリにも達したのであります。これがため死者九名、行方不明八名、流失倒壞
戸数六百七十四戸、浸水家屋約二万戸、冠水耕地
面積五万五千町歩、宮城県の耕地
面積は全体で十万町歩でありますが、そのうち五万五千町歩というものは、ま
つたく水稻がほとんど減收あるいは皆無というような
状態にな
つたのであります。すなわちこれによるところの減收は二十八万五千石に達しておるというのであります。
被害総額は約六十四億円余に及ぶ厖大なるものとされておるのであります。そのうち土木
災害は十八億円、家屋十一億円、農業十七億円、耕地九億余万円等がおもなる
被害額であります。本県は地勢が山間部より急激に
排水の悪い平野に連な
つておるのでありまして、
昭和二十二年九月のカザリン台風、
昭和二十三年九月のアイオン台風、さらに今次低気圧等により、天災を忘れるひまなく
災害に見舞われている実情で、県費の約半分までは
災害復旧費関係に支出されている実情であります。またインフレ下にあ
つては
災害民も何とかその経済的危機を切り拔けつつ来たのでありますが、今日のごとき経済窮迫の実情をも
つてしては、その立ち直りはきわめて遅々、あるいは一部不可能なるものさえある実情であります。県としては、応急、恒久的措置について中央に対して種々要望しておるのであります。
その第一に考えられる点は、
全額国庫負担を存続するはもちろん、本
年度において少くとも十億円の
復旧費を交付してもらいたい。そうして再びかかる
災害をこうむらないように、ぜひとも急速に手を打
つてもらいたい。
第二は、水防活動の効果は偉大なるものがあるが、今後一層水防訓練、資材の整備をはかる必要があるかと思いますので、これに多額の経費を要するが、
地方財政においてはこの
全額を負担することはとうてい容易ではない。そこでこの点についても政府において十分考え、そうして国庫において大幅の増額をしていただきたい。
第三には
砂防工事の徹底であります。
砂防工事の問題については、ただいま
河川局長の
説明もありまして、まことに大きな
予算を
要求しておられるようでありますが、これらについては建設委員会として注目すべき方法、いろいろな考えもあ
つたのでありますが、この際特に申し上げておきたいことは、
建設省直轄工事についてであります。今回の宮城県の
災害は
直轄地区に大
災害が発生したかの感を抱かしめるものがあるが、
直轄工事のいわゆるお役所仕事的形式に流れるうらみが多いのでありまして、この際
建設省においてもこの点について猛省していただきたい。民間施工に
建設省が十分なる
監督をするか、あるいは県営による国庫が十分なる資金を供給するか、こうい
つたような方法でやることによ
つて、今日までこの
災害に対して二年あるいは三年、はなはだしきに至
つては四年に至るも原状復活のできないような
状態では、もうすでに九月を控えておる今日のありさまから見ましても、更におぼつかないありさまでありますから、この面に対しては資金の面において十分お考えを願いたいというのであります。いろいろあるのでありますが、要するにこの問題を要約いたしますと、県民全体の要望といたしまして、まず第一に取上げられた問題は、従来の例によれば、水害箇所の
復旧完成せざるうちに、再び大降雨に見舞われるために、再び
災害をこうむることしばしばあるをも
つて、災
復旧工事は急速完成を要するので、今次土木
災害の
復旧費については本
年度において少くとも十億円以上の国庫負担金の交付をせられたいというのが第一の要望であります。
第二の要望は、耕地
関係災害復旧費についても、
災害土木
復旧工事と同様
全額国庫補助の道を講ぜられ、前項と同じ理由により短期間に交付を完了するようにせられたいというのであります。
第三の要望は、営農資金として一億四千万円の長期貸付をはか
つていただきたい。これはぜひとも安本あたりあるいは大蔵省あたりと折衝せられ、そしてことに農林省あたりは非常な力こぶを入れておるようでありますから、これらの機関と
協力してぜひともこの問題の実現を期していただきたい。
第四は、県及び
災害市町村に対し、
災害住宅復旧費及び
災害復旧事業費にして、
補助の対象とならざるものに対し、長期低利資金の融資方を考慮せられたい。
さらに第五の問題としては、アイオン台風による
災害復旧はすでに三箇年を経過せるも、国庫負担金の交付はいまだにその半ばに達したにすぎないために、
災害復旧工事が遅れ、今回の大降雨による
被害も甚大であ
つた点にかんがみ、今次
災害の
復旧に対しては、本
年度において少くとも十億円以上の国庫負担金を交付されたいことを希望する。これは
建設省に対する最も要望の急なものであります。
第六の
項目といたしまして、今次
災害における水防活動は、偉大なる効果をもたらしたのみでなく、今後においても水防の訓練、水防資材の整備をはかる必要を痛感せられるが、これらに要する経費は、
相当多額を要するので、現下の困窮せる
地方財政においては、負担はなかなか容易ではないので、これに対する国庫
補助金というものは、どういうふうに考えておられるか、これはあとで御答弁を
要求いたします。
さらに第七の問題としては、今回の広瀬川氾濫を見るに、急激なる出水とその含有する
土砂が、驚くべき
被害を招来せる事例にかんがみ、これが防止のため広汎なる
砂防工事の実施を特に要望してやまない。
第八の問題としては、近年の降雨量は二百ないし四百ミリの多きに達することがしばしばあ
つて、これがためにその出水による
河川上流地域の木造橋はほとんど流失の
災害に遭遇しておる実情にかんがみまして、今次の
復旧においては再びかくのごとき損害を繰返さないよう、永久橋としての災実
復旧費を認めてもらいたい。
さらに第九の問題でありますが、耕地の流失、埋沒
復旧工事費は
全額国庫負担をも
つてこの際や
つていただきたい。
第十の問題は、耕地
関係災害復旧工事費の国庫
補助金の交付は、現在各半期ごとに認証交付されるので、農家経済のきわめて貧困な東北
地方などではその間つなぎ資金等の融資により、県費たてかえで
補助金等の前渡し拂い等をいたしておる状況であります。このため、
事業の進捗に甚大なる支障を来しておるのでありますから、これらの交付を短期間に完了するようにとりはから
つていただきたい。
第十一に、冠水及び浸水した稻、これは農林省
関係になるかもしれませんが、報告でありますから申し上げておきます。冠水、浸水した水稻の病虫害防除を行うために要する農薬代の
全額約八千八百万円を国庫において
補助せられたい。なお病虫害の防除はきわめて緊急を要するため、動力噴霧器五十台を至急貸與せられたい。
第十二、今次水害により農業
災害補償制度に基く水稻共済金はおおむね二億八千八百万円に達する見込みであるが、その支拂いは来春になるので、この際政府のあつせんにより右金額を見返りとして、その五割、一億四千万円を営農資金として農林中央金庫より融資してもらいたい。
こういうのが宮城県全体の要望であり、また宮城県会の決議でもあり、宮城県を代表したる知事の意見でもあ
つたのであります。この問題はおそらく農林大臣も建設大臣もあるいは安定本部長官もよく御
承知と存じますので、
河川局長においてできるだけの御
説明なり御答弁なりをこの際お願いできればけつこうであります。