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奧村説明員 先ほどからの御質問の件でありますが、輸入の促進につきましては、外貨予算のもとに十分の資金を計上するということと、それからその外貨予算が十分使い得るような金融
措置を講ずる、円の金融
措置を講ずるという二つの問題で、初めて、先ほどから志田
委員の仰せに
なつておるように、輸入を促進する、現実物が入
つて来るという結果になると考えておる次第でございます。外貨予算の問題につきましては、先ほどから湯川局長以下御
説明いたしましたように、最近大幅に、思い切
つて外貨予算を出すという
措置がとられておるわけであります。実際これを実行するにあたりまして、輸入金融をどうするかという問題につきまして、実は最近までその問題はあまり大きく出て来なか
つたのであります。というのは御
承知のように、民間輸入は本年一月一日から始まりました。それまで今年前半期に入
つて参りました
物資の大部分は、十二月末までに行
つた政府輸入として入
つて来たわけであります。従
つてこれに対する金融上の問題は大して起きなか
つたわけであります。つまり貿易公団なり、あるいはそのあとを引継ぎました通産省の貿易特別会計なり、あるいは農林省の食糧庁の会計等によりまして、大部分の輸入が支拂われてお
つたのであります。ところが民間輸入がいわゆる最近に
なつて、一月以降発給されました輸入許可が、実際現金の支拂いを要するという事態に立ち至
つたわけであります。この間の大体の
数字を申し上げますと、一月から七月までに民間輸入で決済されたものは、わずかに七千万ドルくらいしかなか
つた。それから八月に入りまして、八月だけで五千万ドル近くのものが入
つております。輸入といたしましては、大体毎月五千ドル以上、多い月には七、八千万ドルずつ今まで資金が拂われておるのであります。これはただいま申し上げましたように、一月から七月までは大部分
政府輸入として入
つて来たわけで、民間輸入としては大きな支出は今までなか
つたわけであります。それがこの八月以降非常に大きな金額が民間輸入で入
つて来ております。それは今の外貨予算を実行いたしますためには、
平均月一億ドルくらいの支拂いが今後予想されるのであります。すでに七月——九月に計上されました外貨予算は四億ドルを超過いたしております。そうして今後も先ほど御
説明がありましたように、今持
つておる資金を十分活用するという
意味で、実際の予算も三億以上のものを今計画しておりますので、それが実際物が入
つて来ることになりますと、少くとも月一億ドルくらいの外貨が使われる。ということは、三百六十億の輸入資金を要するということになるわけでございます。それが今までは輸入貿易手形にのみ依存してお
つたわけであります。ところが輸入貿易手形と申しますのは、御存じと思いますが、
日本銀行で再割引いたしますが、これは実際荷物が入
つて来て、そうして手形が
日本に到着して、初めてその際に市中銀行から
日本銀行へ再割を申し込む。そのときの銀行の資金状態によ
つて、
日本銀行は再割に応ずる場合もあり、応じない場合もあるということに
なつておりますので、市中銀行としては、大きな金額に対して輸入の信用状を出すという点においては、非常に不安があるわけでございます。
日本銀行が輸入買手を最初から約束してくれない以上は、市中銀行といたしましては、一億ドルにも上るような毎月大きな信用状を出すということは実際不可能であります。それで外国銀行のユーザンスを利用するという方法は、今から二箇月ばかり前から始ま
つて来たわけであります。これは戰争前にも
日本でも一般に通用してお
つた方法でありますが、世界各国とも、輸入するときに輸入先のクレジツトを利用するという方法でございますが、在日米糸三銀行から、そうい
つたクレジツトを出してもよろしいというような申込みがありまして、それを
日本の為替銀行はみな利用するということに
なつたわけであります。普通ならば、荷物が積み出されましてすぐ為替が組まれます。その為替が大体飛行機で参りますから、十日か二週間くらいで
日本に着きます。そのときにその代金を決済しなければならない。そういたしますと、輸入業者はそのときに円を支拂わなければならない。従
つて為替銀行はそのときに円価を
外国為替管理委員会の特別会計へ拂い込まなければならぬということになりまして、先ほど申し上げましたように
日本銀行が再割してくれない限りは、これが実行できないわけです。ところが外国銀行のユーザンスを利用いたしますと、手形が着いてから九十日なり百二十日なり後において初めて外貨を支拂えばいいわけでありますから、その外貨に相当する代金であるところの円貨は、荷物が着いてから三、四箇月後に拂
つていいということになりますので、その間にその輸入します貨物は、さらに転売され、あるいは製造家の手によりまして、
製品化して現金化する。従
つてその三箇月なり四箇月なりの間に円貨が拂われるということになります。これで初めて輸入金融は円滑に行くという仕組になるわけでございます。ところがその外国銀行からユーザンスを受けますと、これに対して
日本の為替銀行といたしましては、年利四分の利息を外国銀行に拂わなければならない。銀行はさらに一分加えまして、年利五分の利息を輸入業者に貸しておる。この五分というのは、大体こうい
つた輸入手形のユーザンスといたしましては、世界慣行の例でありまして、戰前にも大体標準、五分に
なつております。今でもその五分の利息を利用し得るという状態であります。ただこれを全部に適用していいか、どうかという問題が起きたのは、現在われわれとしては相当の外貨預金を持
つております。これは主として米ドルはアメリカの諸銀行に預けてあるのでありますが、アメリカの法律によりまして、当座預金は無利息ということに
なつております。定期預金にいたしましても、ごくわずかの利息しかつきません。このようにわれわれの持
つておる外貨に果実が生じないで、片方外銀から外貨を借りて、それに年利四分の利息を拂うということは国家的に見て非常に不
経済である、
政府が持
つておる外貨があるなら、外貨にかわ
つてそのとき拂
つてしま
つたらどうだろう、その方が
日本としては有利ではないかという意見が出まして、これは
司令部の方でも同意見で、外銀にかわりまして、手形が組まれたと同時に、為替管理
委員会でこの外貨を支拂
つてしまう。そのときに業者から円貨を取立てると、先ほど申しましたような貿手の再割引の問題がありますので、為替銀行を通じて業者に外貨の支拂いを延ばす、つまり外貨を貸してやる外銀から外貨を借りたと同じように、
日本の銀行に為替管理
委員会から外貨を貸すということにすれば、三月なり四月なり同じ期間外貨の取立てを待
つて外貨なみの利息を徴收すればいいのでありますから、外銀と同じような形が
日本の銀行に與えられる。同時に円の輸入貿手の問題も起
つて来ないのでありますから、そうするのが一番合理的ではなかろうかという案を出しまして、各
方面へ御相談したわけでございます。これに対していろいろの御意見が出たわけであります。最初に出ました案は、そうい
つたことは
政府のやるべき事柄ではないのである、これは外国銀行と同じように、
日本の為替銀行は自分の持
つておる外貨資金で業者に貸し付けてやるべきであるということでございまして、これはまことにオーソドツクスな意見なのでありまして、われわれももとより賛成なのであります。
日本の為替銀行がドルを保有いたしますためには、外国為替特別会計にそのドル相当の円を拂わなければなりません。そういたしますと、今の
日本の為替銀行の金利コストが、大体年利七分くらいについておりますために、外貨のコストがやはり七分につくわけであります。そういたしますと、これを輸入業者に貸し付けるということになりますと、とうてい外銀の出すような低い
程度でサービスは出せないのみならず、外貨を貸りるだけの円が
日本の銀行にございません。金利のみならず、それだけの円が
日本の銀行にありません。それで
日本の銀行は必要な外貨を保有するだけの円を、しかも安い利率で、年利三分か三分五厘くらいの利率で、
日本の為替銀行に円を供給してやらなければならぬという問題が起きたわけであります。これはどうしても
日本銀行としてそういうことをすれば、
日本全体の金利体制が崩れるというわけで
承知できなか
つたわけなのであります。それで戰前は実は横浜正金銀行は横浜正金銀行法という特別法によりまして、特に年利二分くらいの低金利の金を
日本銀行から借りておりました。それのみならず
政府の持
つておる金も横浜正金銀行は利用するという特権を持
つておりまして、それで横浜正金銀行は外貨を自分でも
つてそうい
つたオペレーシヨンができたわけであります。今日横浜正金銀行を
廃止いたしまして、各銀行が平等の市中銀行と
なつております際に、こうい
つた特別の特権を
一つの銀行に與えるということはもとより問題でありませんので、それで仕方がないから
政府機関であるところの
委員会がやろうという案に
なつたわけであります。その問題は結局そうい
つた安い円が與えられるということで実現できなか
つたのであります。
その次にはそれでは今の
日本銀行が輸入貿手を再割にすることを早くから同意を與えたらどうか、信用状を出します前に、この信用状に基いたところの輸入手形に対しては、必ず輸入貿手の再割をするということを
日本銀行が約束してくれるならば、利息の差はわずかに年利三分余りでありますから、これくらいは業者の方でがまんをする。輸入のコストが
上つてもやむを得ないということで、ユーザンスにかえて
日銀の貿手を非常に寛大に許したらどうかという案が出たわけであります。これにつきまして一応いいように見えるのでありますが、事実困りますのは、もしこれを実行しますと、先ほど申しましたように、月に一億ドルの輸入を行う。これに対して三箇月間の輸入貿手を割引いたしますと、一時に約三億ドル、円にいたしまして、一千万円、これは全部が再割するわけではありません。少くとも七、八百億の輸入貿手がたまるわけであります。これを
日本銀行が今の市中銀行に対してあらかじめ必ず引受けますということは、
日本銀行としてはどうしても言い得ない立場でありまして、またそういたしますれば、今日でさえ
日本銀行の市中銀行に対する貸出が千五百億に
なつておりますがこれに加えてさらに輸入貿手として七、八百億円の貸出がふえるということになります。これではとうていオーバー・ローンの問題はさらにむずかしくなるということで、この輸入貿手にかえる案もなかなか実行しがたいのであります。それでどうしても外銀の使
つておるようなユーザンス、つまり外貨による金融で輸入するということが必要とな
つたのであります。もし最初に外国為替
委員会で発案いたしましたような案を実行いたしますと、外国為替特別会計に入
つて来る円の收入というものは、約三月間なくなるわけであります。その間に
輸出はどんどん伸びておりますので、特別会計の赤字が増大する一方であります。これに対しては何とかして円の收入をはからなければならぬ。ところが予算によりまして外国為替特別会計は一時借入金が五百億円、それから資本金が五百億円だけ收入の予算に
なつております。ところが資本金の五百億円は、貿易特別会計から受入れることに
なつてお
つたのでありますが、貿易特別会計の方へ
政府輸入がどんどん入
つて来たために、その
政府輸入の代金の支拂いのために、五百億円の予算は使われてしま
つた。貿易特別会計から為替特別会計の方へ受入れたのでありますが、項目といたしましては
政府輸入代金として入
つて来て、資本金としては入らなか
つたわけであります。それでもうそういう目的で受入れる金はなく
なつた。そういたしますと、今のところ一時借入金が五百億あるだけであります。これは全部借入れてしまいまして、九月の二十二、三日ごろになると、特別会計のバランスが毎日十億
程度しかない。
輸出が多いときは一日十数億にのぼりますが、
ちよつと
輸出がのぼると
輸出手形を拂い切れないという事態に立ち至
つたのであります。
最後にそれでは為替管理
委員会にかわ
つて日本銀行がユーザンスのオぺレーシヨンをや
つたらどうかということの案が出たのであります。こういたしますと今の
日本銀行は輸入に必要な外貨を為替管理
委員会から買うことになります。それを
日本銀行は市中の為替銀行に貸付けます。市中の為替銀行はその外貨を業者に貸付けて、輸入の手形を一応決済する。それで同時に
日本銀行は、外貨を為替管理
委員会が買
つたときに同額の円を為替管理
委員会に支拂うことによ
つて、為替管理
委員会の特別会計の赤字をなくすることができるという案に
なつたわけであります。しかも
日本銀行でありますから、銀行に貸付業務するのは当然である。つまり
簡單に申しますと、戰前正金銀行でや
つておりましたオぺレーシヨンを、今後は
日本銀行がやるというかつこうで、ユーザンス問題が実行できることに
なつたわけであります。これによりまして輸入金融は円金融と離れまして、外貨の金融として
日本銀行によ
つて行われますゆえに、先ほど
経済安定本部より
説明がありましたような、多額の外貨予算も今後は実行できると考えておる次第であります。