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1950-07-29 第8回国会 衆議院 経済安定委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十九日(土曜日)     午後二時一分開議  出席委員    委員長 圖司 安正君    理事 志田 義信君 理事 永井 英修君    理事 竹山祐太郎君       岩川 與助君    寺本  齋君       奈良 治二君    渕  通義君       細田 榮藏君    宮原幸三郎君       村上 清治君    森   曉君       森山 欽司君    松尾トシ子君       深澤 義守君    中野 四郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      一萬田尚登君         経済安定事務官         (経済安定本部         総裁官房次長) 河野 通一君         経済安定事務官         (貿易局長)  湯川 盛夫君         專  門  員 圓地與四松君         專  門  員 菅田清治郎君     ――――――――――――― 七月二十九日  委員川上貫一君及び細田榮藏君辞任につき、そ  の補欠として深澤義守君及び周東英雄君が議長  の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  経済現況朝鮮問題の影響に関する件  閉会中審査申出に関する件   請 願  一 肥料値上げ反対に関する請願佐々木盛雄    君紹介)(第三三号)  二 同(金塚孝紹介)(第三四号)  三 価格差益金徴收延期に関する請願(星島二    郎君紹介)(第六三八号)  四 労務用物資対策に関する請願柄澤登志子    君紹介)(第六四四号)  五 肥料値上げ反対に関する請願本多市郎君   紹介)(第六八六号)   陳情書  一 肥料値上げ反対に関する陳情書    (第三号)  二 同外一件    (第一七号)  三 肥料値上げ反対に関する陳情書    (第    一七四号)  四 労務用物資価格設定に関する陳情書    (第二一    一号)  五 ヂーゼル自動車用軽油確保に関する陳情書    (第二七七号)     ―――――――――――――
  2. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまより会議を開きます。  これより経済現況朝鮮問題の影響に関する件を議題に供し、特に最近の金融情勢並びに金融政策に関し、参考人日本銀行総裁萬田尚登君より、参考意見を聽取いたすことにいたします。参考人萬田尚登君。
  3. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 簡單に現在までの金融情勢並びに金融政策について申し上げます。  御承知のように、ドツジさんがお見えになつて、二十四年度にインフレ收束という大きな手術をいたしました。この手術は大体成功したと考えておるのであります。そこで日本経済は、これは財政も含めて、財政経済と申してよろしいと思いますが、この手術後の状況をどういうふうに持つて行くか、こういうように二十五年度は考えなければならない。二十四年度は手術真最中でありますから、病人の容態が手術に耐え得るようにと、栄養注射もやるというふうに、相当配慮をして参つたつもりでしたが、むろんある程度のデフレとなつた。しかしこれはああいう予算を実行する上においてやむを得ないと思うが、とにかく相当成功した。数字で申し上げましても、財政資金引上げが約九百億、私の方から追加引上げをいたしたのが、これを若干越えております。そして物価を見れば、やみ物価と、当時生産が増大いたしまして統制からはずれた商品価格が下つた。しかし補給金切つた関係から生ずる公定価格、主として卸物価、これは若干上つた。そして全体として物価が横ばいであつた、こういう政策をやつて来たわけであります。あのドツジ・プランの予算を実行して行く上からには、相当栄養補給をしないと、そういう結果が生じないのであります。それから、二十五年度の状況は、もう手術が済んだのですから、むしろ病人をだんだんと動かして、ふとんの上に坐り直さすとか、あるいは日光浴もする、あるいは若干の散歩もして行く、こういうような行き方で行かなくちやならぬ。手術の結果、相当経済の各方面故障を生じた、その故障を直しつつ、この経済が建直つて行くには、どういうふうな方向通貨面ではしようとしておるかとえば、むろん一足飛びに行きませんから、いわゆる国際市場日本商品が競争に耐え得るような生産費というふうな方向に持つて行きたい。いわゆる国際水準へ、国際水準へと近寄るように日本経済を持つて行く。それをほかの言葉で言えば、合理化を進めて行く、こういうことになるのであります。その合理化というものは、いい機械を入れるとか、いい設備をするとか、要するに総体として商品生産費国際水準に近寄らしめ、しかも製品の品質をよくする、こういう経済の動きに持つて行きたい。そういうことをやるのには、相当長期資金がいる、同時に有効需要を喚起する。たとえば一つの例をとつてみますと、電源開発ということは、これは大きな合理化です。合理化といえば、ともすればある会社合理化合理化だと思つているが、これは経済的に見ると非常に範囲が狭い。たとえば今申し上げたように、電源開発ということは、すべての生産者がみな自分生産費を安くするのに役立つから、そういうふうな合理化が大事であるが、同時に会社自体においても大いに合理化を進めて行く、いい機械を入れ、設備もよくして、そして金融というものをその方向に流して行く。言いかえれば、手術中のように、栄養補給というような形で資金を出すことはもういけない、二十五年度は、そういうふうな非常な合目的的な形で資金を出して行くようにすれば、これは相当有効需要を喚起すると私は思うのです。いわゆる経済循環過程に持つて行くのです。今までは手術中で寝ておつたのを、だんだんからだを動かして行く、いわゆる循環過程という形に持つて行かなくちやならぬ。そしてその合理化には相当な金がいる。それでそれは、二十五年度は見返り資金預金部資金を動かして行くというのがねらいであります。この預金部資金は、これは申すまでもなく郵便貯金で、国民所得の中から貯蓄される部分であつて、ただ郵便局という一つ政府機関を通じたというだけのことで、この資金は、他の金融機関資金と異なる点は毫もない、むしろこれは長期に使い得る性質を持つた資金であります。見返り資金にしても、これはアメリカからの援助物質等が来たことによる資金ですが、この見返り資金も、やはりこれは国民所得から出ている、みなが働いてもらつた金から出ているのです。ある会社がいろいろな物資の払い下げを受けたら、その会社から出る、こういう形でありまして、これは一つ国民貯蓄で、ただ税という形を通じて集まつたということです。つまり一方は郵便局という一つ政府機関の形をとり、一方は任意の貯蓄でなく、税という形をとつたので、貯蓄性質を持つことにおいては毫もかわりがない。こういう金が相当巨額にある。こういう金が財政資金に集まる結果、金融機関預金というものはふえない。先ほどから非常にたいへんな、八千億とか一兆とかいろいろ言われておりますが、しかしこれは非常に多くの部分が、クレジツト・エツキスパンシヨンである。銀行は一方で貸出をして、これを当座預金にすれば幾らでもふえるが、現金で窓口から預金されるものは伸びない、自分が得た所得の一部をさいて、銀行窓口に持つて来る預金というものは、割合伸びない、それはお互い考えてもわかる、お互いがもらつたお金の中で、自分生活を支えて、そして税を拂つて、その上に金を預けるということは今なかなか困難である。むろんないのではないが非常に少い。たとえて申しますれば、昨年度に——この数字は正確ではありませんが三千七百億円の銀行預金が増加しておるといわれておる。しかしそのうちでほんとうに現なまを銀行窓口へ持つて来て預けた金というものは、おそらく二割五分あるいはせいぜい三割だ。三千七百億というが実際は千億くらいのものだ。そこで銀行の方は、金融といえばすぐ日本銀行、こういうふうに世の中の人は考える。普通の場合はそうなんです。財政を考える場合には、財政というものはたいてい均衡を得ている以上のものではない。健全財政にいたしましても、財政というものはそれ自体性格からいえば、歳出を少くして歳入を確保すればこれは一番いいと思う。財政に非常に余る金があるというのは特殊な目的を達成する、たとえばインフレを牧束する、あるいはインフレ再発のおそれがあるから相当締めなければならぬというような、特殊の目的に用いらるべきものでありまして、通常の財政としましては、そういうきびしい財政の必要はないと私は思う。そういう意味において政府が数千億——数千億というと大きいかもしれませんが、せめて二千億以上の貯蓄銀行を営んでおると、経済的には私は見得ると思う。それなのに一方の銀行は今申しましたように預金が集まらない。金融といえばすぐ銀行——日本銀行が締めるからと言う。それはちようど空びつへごはんをつげつげと、子供がわんわん言うのとかわりがない。それを依然としてつめて行けばおひつはこわれる。そうでなければならぬ情勢ならばこれもやむを得ない。これは私も金を出してもよろしいが、せつかくごんがちやんと一方のおひつの中には一ぱいたいてある。それをごはんのあるものを食べずにおいて、新しい米を出して、また飯をたけと、こういう行き方というものは、とうてい許さるべきことではない。それでなるべく現在のすでにあるごはんの方を食べて、それをつぐようにつぐようにと私は要求しておる。もし私がそういう要求を強くせずに、自分が新しい米をたいて、さあさあとやつたらどうなる。それでは腐つてしまう。何のためにこの飯があるのかわからない。そして結局新しい米をたいて、次々と出せば、インフレ的な傾向をとることはやむを得ない。今インフレを牧束してこの政策の基盤をくずさないというのが根本方針です。それなのにインフレ的になるようなことをしなさいというようなことは考えられない。それでそういうようなことはいけない。そういうふうに私がやりますことによつて見返り資金預金部資金を、大蔵大臣がお使いになり易いように、いくらかでもお役に立つだろう。もしも私が新しい米をどんどんたけば、そういう主婦もありますまいが、少しぼんやりした主婦になると、こつちの飯は腐らしても、新しい飯の方をつぐというようなことも起るかも知れない。それではいかぬので、こつちを動かしてこつちを動かさぬようにすると大蔵大臣の助けにもなる。こういう態度で今やつておるわけであります。こういうふうにそういう資金使つて日本経済国際水準へと持つて行くように、合理化するように、それによつて有効需要を喚起して、日本経済が循環して、そこで金詰まりもずつとよくなつて来る、そういう方針で進まんとするときに、あるいは進みつつあるときに、朝鮮事変というものが起つた。  この朝鮮事変日本経済における性質とか影響は、私はそう大きく何も考えておらない。しかしやはり朝鮮事変というものが、国際政局の上において、いかなる意義を持つかということから、分析しなければならぬのであります。しかしそういうふうな政局の問題については、私がここでかれこれ言う立場ではない。当面としては、朝鮮事変というものによつて、直接日本経済に物の需要が起る。そういうことについての一応の説明をしなくてはならぬのでありますが、しかしそういうことも、私どもになかなかわかることでもありません。これはむろんアメリカの、あるいは連合国側の事柄である。同時にまたこれはわかつていても、おそらく軍機に関するところでありましよう。とうていこういうようなことをいろいろとやかく申し上げるわけには行かないのであります。しかしここに相当需要があることだけは間違いない。現に皆様方がいろいろ御承知通りであります。言いかえれば合理化によつて有効需要国内的に、あるいは何とか輸出を振興して、そういう面で有効需要を喚起して行こうというときに朝鮮事変が起つて、これが追加になる。言いかえれば日本経済というものに大きな刺戟が来たというふうに考えてよろしい。ただあまりこれを過大に考えない方がいいと思う。むろん先ほど申しましたように朝鮮事変性格をどう見るか、これは非常に重大な点でありまして、日本においてもおそらくいろいろの方面において研究され、あるいは見通され、あるいは見通すことに努力されておることは疑う余地がないのであります。見方によつていろいろ違うのでありますから、今のところは相当需要がある。こういうふうに御承知おきを願いたいと思います  そこで金融面においてどういうことになるかといえば、これがいわゆるインフレ的傾向をとるという。私はそういう一面はあるが、日本経済インフレになるというようなことは考えておりません。また断じてインフレにしないつもりをしておる。しかしながらこれがインフレ的傾向をとる。特にこれが今後における進展いかんによつては、インフレどころではないかもしれない。これは今後の問題でありまして、そう今から心配してもしかたがない。とにかくそこで私は、この刺激を、最も日本経済の復興に一番いいようにこれを取入れて行く。こういうふうにしてインフレにはしない。しかし同時にインフレと申しましても、こういうふうな事変があると、国際的な物価が上る。アメリカにおいても国内物価騰貴を示している。各国においても同じである。こういう事変があると、かりにこれが治まつても、国際的に防衞態勢が強化されることは疑う余地がない、国際的に防衞態勢——言いかえれば軍備が拡張されるということになれば、どうしても国際物価が上昇して行く傾向になる。国際物価が上ると、日本物価が若干上る、上つてもそう心配しなくてもよろしい。こういうふうな形で日本経済が一応充実を済まして、徐々に立ち直ろうというときとしてはよい——よいと言うのも語弊がありますが、やり方いかんによつては最も有効になる。こういうふうに申し上げてもさしつかえはないと思います。ただ朝鮮事変による物の需要為替を通じて起るのであります。さつきもずつと聞いておるうちに、こういう話を金融面でしております。特需が起る、そうすると、そつち方面資金が行くから、ほかの中小企業や農業は、ますます涸渇する。私別に答弁したわけじやないのでありますが、こういう考え方は必要はない、心配はない。若干はそういう影響はあるかもしれないが。特需というものは大体ドルで拂われる。若干の期間的なずれがありますが、ドルで拂う。ドル日本物資を買う場合、国内では三百六十円の円が支拂はれる。すなわちドルが円にかわります。別にほかの資金を圧迫するわけではない。言いかえればそれだけインフレ的になる。ドルを持つて来て円にかえる。国内にある物は持つて行かれて、円だけ残る。こういう形になりますから、インフレ的になる。それでそうも言える。そこでいわゆるこのドルでさらに輸入をふやさなければいかぬということになる。ドルドルのままにして置くとインフレになる。そういうふうにして日本物資ドルで買い付けてドルはたまるが国内に円が出て物は減り、物価が上る傾向になるので、その得たドル物資輸入して、デフレ的な方向——物がふえる方向に持つて行く。まして日本には原料資材がありませんから、輸入がうまく行かぬと、特需という関係からも物価騰貴を生ずるおそれが強いのであります。これは戰時中を考えれば非常によくわかる。非常な物価統制をしても、やみ物価が非常に上つたと同じ傾向をとるというので、今日はドル資金でなるべく輸入をはかるようにようにと持つて行く。これは今日大体そういうふうになりつつあることは皆さん承知通りと思います。  そういうふうに今後におきましては財政から、二十五年度は見返り資金と、預金部資金を出してもらおうというときに持つて来て、さらに口が一つふえた。言いかえれば今申しました外国為替資金という形から金融がゆるんで行く。もう一つ違つた形になりますのは、いわゆる警察予備隊七万五千と保安隊八千、これにおそらく数百億の資金がいるでしよう。これはどういうふうになるのか予算関係のことはよく承知しませぬが、大体これは国債の債務償還をそれだけ減らしてそれに充てる。言いかえればその面からも資金緩和に若干は役立つ。今後はこういうふうに推移して行く。  要するに私の考えでは、朝鮮事変というものの日本経済に対する影響を、日本経済の今後に役立つ限度において十分受入れ、かつ取扱つて行くことが望ましいだろうというふうな見解で、今日進んでおるのであります。後ほど御質問を受けましてお答えをしつつ、もう少し今日の事情を明らかにした方がよろしかろうと思います。
  4. 圖司安正

    圖司委員長 これより通告順により質疑に入ります。松尾トシ子君。
  5. 松尾トシ子

    松尾委員 一万田総裁輸出あるいは輸入財政金融等、広範囲にわたつた方針をお聞きいたしましたが、私は一部のごく軽いところでお尋ねして行きたいと思います。総裁のおつしやるように、朝鮮の動乱によつてアメリカの百億以上の軍事費が、今国内特需注文によつて使われるところにお金が落されるので、ドル資金といいますか、外貨予算の増大をはかることは最もよいことだし、私もそれを原則的には認めておりますけれども、こういう場合に財政金融面を担当していらつしやる方はもちろん、政府全体がこの傾向に善処しなければならないし、一朝もしこれを誤りますと、一部の軍需製品のようなものをつくつているところだけが景気がよくなりまして、巨額の富を獲得しますけれども一般大衆は結局そのあおりを非常に受けてインフレ再発に苦しむようになると思うのです。今総裁の御説明によりますと、輸入お話もございましたが、インフレ防止のためにドル予算によつて輸入をする。これは他の大臣ないし政府委員の御説明にもしばしばあつたのですが、この輸入というものは、軍需資材あるいはその他のどういうものを輸入なさるか、その内容のもくろみがありましたら伺いたい。それによつて日本財政金融に響くところが非常に大きいと思うのです。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 後ほど周東安本長官がお見えになりましてから、安本長官からお答えをお願いした方がよいと思います。国民経済総合計画に基いて、むろん国民生活が、日本経済全体を総合して、どういうふうに資材を分配すれば日本経済に最もいいか、それと同時に戰争ということになつて来ると、その激しさいかんによつては、いろいろとまた考えなくてはならぬ客観情勢も生ずる、それらを見合いつつやつて行くということになると思いますが、どういうものを輸入するかということは——一つのそういうものを輸入するときまつた場合に、いかに金融するかということは私がお答えいたしますが、どういうものを輸入するかということは安本長官にお願いしたい。
  7. 松尾トシ子

    松尾委員 総裁お話の中に、極力インフレを抑制して行く、結局言いかえると金融引締めというようなことが、ちらちらいわれているのですが、この金融引締めということも私は認めるのです。インフレにならないように引締めることは、大切なことだと思うのですけれども、従来やつておりましたような機械的な引締めをやつておりますと、結局のところ日本のような中小企業でもつてつているところに、大きなしわ寄せがあると思うのです。この中小企業育成発展ということが、むしろ日本今新憲法によつて認められているところの、平和国家的発展になると思うのです。一万田総裁金融引締めをおやりになるというその御方針は、引締めをやりながら中小企業生成発展をさせて行かれる見通しなのですか。これを伺いたい。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 どうもこれは私の不徳のいたすところで、私が何かいつたら、私の顔を見ると金融引締めと世間がいうのでありますが、そういうことは毛頭考えておらない。私の立場は、日本経済が必要とする資金はどうしても出して行く、出して上げなくてはならぬ。一面むだな金は引締める。今日デフレになつている原因は何にあるのかといえば、皆さん国会予算をお認めになつたその予算から来ている。二十四年度、二十五年度の予算国会で御承認になりましたが、そこからデフレが生じている金融引締めは私がやるのではないので、日本国民の意思において、大いに苦しい生活をしなくちやならぬ。金融も締めるべしという御方針を示してあるように私は思う。ただ私どもは、それをそのまま持つて行かれたのでは、日本経済はやり得ない、耐え得ないだろう。それで財政から来る引締まり皆さん方の御承認したそれを、実は金融で幾らかずつでも、あまりむりが行かないように調節し、緩和しよう。こういう政策をとつておるのであります。ほんとうをいいますと、あの予算影響が、百パーセント国民生活にも、日本経済にも現われるべきであつて、そういう影響に堪えられないというなら、むしろ予算自体を考へてみるほかないのであります。ところが予算はそのまま御承認になつた。それで当然金融引締まる。言いかえれば、先ほど申しましたように、国民所得の中から蓄積さるべき資金がみな税金に集まつてしまう。銀行の方に金が来ないような仕組みに、経済上当然なる。そういうところをそれじや困るから日本銀行からどしどし出せということになれば、国民所得からそれほど引上げなくてもよいということはある程度言える。しかし引上げなくても戰争に負けたのだから、国民生活は耐乏の生活をしなければならぬ。従つて税をたくさんとつて、苦しい生活を甘受することは当然である。ただとつてもよろしいのだが、そのかわり国民のふところに還元しなければならぬ国民経済から引上げて、余裕の金は財政から日本産業に出してもらう。これを出さずにほつておいては、金融が締る。しかもそれが金融機関の所作のように思われるのは、私としては十分納得が行かない。金融といえば日本銀行以下銀行の手でそういうものを扱つておるかに思われるのですが、基本の点は、どうしても今日財政にあるということを十分知つていただきたい。大体経済で必要なる資金というものは手形を通じて取引される。その手形期日に落ちる限りでは、私どもの方ではいつでもごめんどうを見よう。しかし期日に落ちないような手形を持ち込んでも、日本銀行でもなかなか御融通ができない。こういう態度をとつておるにすぎない。なぜかというと、何でもかんでも日本銀行は金を出すということになると、みなが働いて汗を流した結晶が、今日日本銀行券で支拂われることになつておる。国民所得というものは日本銀行券で受けておる。その値打をだんだん下げるというような政策は、日本銀行として当然とり得ることではない。そういう手形がそういう銀行券発行のいわゆる準備といいますか、いい手形が入つたなら、銀行券値打が維持される。銀行券値打がどうなつてもいい、何でもかんでも日本銀行から出せというような行き方は困る。それで期日に落ちるというようなものは何にも問題はない。先ほど大蔵委員会質問がありましたが、お前、わくというものを持つておるのかといわれるが、そんなものは絶対に持つていない。わくなんというものは考えておりません。ただ結果としてそういう期日に落ちない手形は御免こうむるという結果、ある程度に日本経済の実情としてとまつておる、こういうことにすぎないのであります。そういうことで御了承を願います。
  9. 松尾トシ子

    松尾委員 こげつく所に貸さないということは常識でよくわかるんですけれども中小企業が倒産しかかつているという際において、何か政府にあたたかい財政金融政策というものはないでしようか。今一万田総裁お話では、金融引締めをむりにやつているんじやない、二十四年度二十五年度の予算を通じて、それでやつている。それからまたこげつくような所には貸さない。これはあたりまえだと思うのです。けれども事実上日本は人口は多いし、国は狭いし、そうして憲法のいう通り平和産業をやつてつて、しかも国際価格の標準まで引上げようというときですが、ことに中小商工業は一番種類も、それから働いている人間も多い、これを救つて行かなければ、ぐあい悪いのじやないかと思うのです。そうしてその政府政策によつては、中小商工業者にも金融のできるようなものが、文書ではあるけれども、事実借りに行くとちつとも貸さない、それは総裁のおつしやるように、こげつくからだろうと思いますけれども、何とかうまい、あたたかい金融政策というものはないでしようか。
  10. 周東英雄

    周東國務大臣 お話の点ごもつともですが、これは今までは第一の政策としてインフレを防止するということが一つの大前提となつてつて、その面に向つて財政金融政策がとられて来て大体今日の成果をあげて来たことは御承知通りであります。そこで今後どうするかということになると、結局次の段階としては、産業が積極的に興るように、生産が増強するような面に向つて積極的に動かなければならぬときでありますし、従つて財政金融政策も、おのずからその面に向つて発展して行くことと考えます。但し御質問のように、こげついても貸せとおつしやる。しかし政府金融政策も慈善事業ではないので、これはやはり現実に見込みのあるものでなければ困るだろうと思います。ただ一律に金が詰つて困るから金を貸せ、金を貸せといいますけれども、やはり中小企業を振興させるにつきましても、根本がもう少し考えられなければならぬと思います。ということは、何と申しましても、中小企業始め、他の産業についても同然でありますが、戰争のおかげで設備の新設、改善、置きかえもできていない。償却もされていない。今日から見ると、外国に比べておそらく五十年も遅れているような非能率なものをもつて生産している。これに貸せといつても、運転資金を貸しても、そこでできた物が、非常に非能率であつて、コスト高であれば売れなくなる。ことに外国輸出関係を取扱つている物については、それが非常に大きな欠点になつております。そういうことを考えますと、産業の合理化の面に向つて、廉価良質の物をつくるという面から行くと、設備の新設、改善という点に対して、大きく国家は援助なり金融を考えることが次の段階だと思うのであります。なおその上に必要な原材料の購入、運転資金も考慮するということの段階に行くのではないかと思います。かように私ども考えております。
  11. 松尾トシ子

    松尾委員 今、産業の合理化、それから設備資金とかのために長期貸出をするというお話がありました、長期貸出をやらなければ復興しないというお話がありまして、その線にのつとりますと、何か復金の再活用をするというお話がございますけれども、その可能性はあるのでしようか。もしあるとするならば、従来のようなものでなく、おそらくその内容をかえて行くでしようと思いますけれども、その辺をお伺いたします。
  12. 周東英雄

    周東國務大臣 御質問の点に対しましては、単に復金だけの問題でなく、どういう機関に、どういう形にしたらいいかということを愼重に研究している際であります、まだ結論に達していませんけれども、何とか特別なことを考えたいという気持でおります。
  13. 松尾トシ子

    松尾委員 すると復金ということでなく、ほかの方法でもやられるかもしれないのですね。今復金のことは別にそう活発に御考慮されているわけでもないのですね。それから先ほどお話がございましたように、ちようど病気が治りかけたので、散歩させたり、あるいはいろいろ養生をとらせる時代に入つたとおつしやいました。今までの金融財政の基礎というものは、ドツジあるいはシヤウプ勧告の中にあつたと思うのですけれども、これからだんだん養生させるというときに、非常にいい傾向の出ている今日、むしろ私は従来とつていたドツジ、シヤウプの線でなして、もつと根本的にこれを広げて行くような方法と努力を重ねて行けば、中小商工業にもきわめていい潤いが来るのじやないかと考えるのですか、いかがですか。
  14. 周東英雄

    周東國務大臣 私先ほど申し上げましたように、何かしらん次の段階は積側的に動くときだと申したのは、その点であります。今松尾さんのお話では、ドツジ・ラインというものは固まつた一つの確定不動のようなお考えであるようですけれども、少くともドツジ政策というものは、安定計画というものに入る一つの総合的な考え方だと思うのです。その大前提として大きな点は、何としても悪性インフレ收束せしめるということが、第一段階でなければばならぬ、これがいつまでもそままになつておれば、国民生活の安定もできなければ、経済復興計画の計画自体が立も得なかつたのであります。まずそれを防止するということが一つの段階であり、これが收束される目的を達したならば、次の段階は当然に発展的、積極的な生産増強、産業の復興計画に進んで行くわけでありますが、そういう方面財政金融政策が発展して行くことは、とりも直さず、一つの安定計画を目的としたドツジ・ラインのわくの中に考えられることと私どもは考えております。おそらく松尾さんの御質問は、次の段階はそういうふうに行つてもらいたいという気持だろうと思いますが、そういうことを考えつつ、すべての総合復興計画を施策中であります。
  15. 松尾トシ子

    松尾委員 そうしますと、ドツジとシヤウプのわくでなく、もつと拡大して行くというわけですか、今後も従来のようなドツジ、シヤウプの線にのつとつて、来年も再来年もやつて行くというのでしようか。
  16. 周東英雄

    周東國務大臣 ただいま申し上げましたように、ドツジ、シヤウプというものは、わくというものがきまつておるものじやないと思うのです。日本の産業復興の一つの道行きとして、まず第一に悪性インフレを押えるために金融財政の面を制約した。それができたら次にはある程度堅実な産業に対しては積極的に金を出して行く、これはどうしても進むべき道であつて、その一つの前提を置いて、琴柱に膠するような、政治経済政策はとつて行くべきじやないと考えておりますので、ただいま申し上げたような次第であります。
  17. 松尾トシ子

    松尾委員 しばしばドツジ・ラインの修正ということが問題になりまして、池田蔵相が修正はせぬということをおつしやられるので、私もつと伺つてみたいのですけれども、これはこの辺でやめておきます。最初に御質問申し上げたんですけれどもインフレの抑制をするために輸入をやる、ドル資金がだんだん特需のために多くなるから輸入をやるというお話がございましたけれども輸入をやる場合には軍需資材輸入するのですか、それともその他のものをするのですか、その輸入の内容をお知らせ願いたいと思います。
  18. 周東英雄

    周東國務大臣 個々の品目はまだ詳しくきまつておりませんが、今お話のように、朝鮮事変と結びつけてお考えのようですけれども、私ども政策を立てております考え方といたしましては、別に軍需品を優先して輸入するとかいう問題でなくして、日本経済の再建のために、また今まで輸入されておつて品物でもう少しほしいというものもずいぶんあつたはずであります。これを幸いにしてドル資金が少したまつておるようですから、こういう際に特に国民生活に必要なもの、また日本の基幹産業の育成に必要なものは、できるだけ早く輸入しておこう。それが朝鮮事変等によつて、いわゆる特需物資等の方面に流れて行く場合がありましても、ただちにそれを補えて、国内の需給のバランスを破らぬようにしたいということになつて来るわけでありまして、繰上げ輸入等につきましては朝鮮事変が始まる前から考えておりますが、品目はそういうふうに考えております。たとえば民間需要として原綿、食糧というようなものが最も大きなものになつておるのでありまして、軍需品を特にたくさん輸入するというようなことは、計画の中に必ずしも入つておりません。
  19. 松尾トシ子

    松尾委員 今特殊需要の発注のことについてお話が出ましたから、続けて伺いますが、これは生産者直接にダラー・ノート・チエツクで支拂いがなされるということを聞いております。これがもし生産者がダラー・ノートをもらつたときに、それを外為委員会の方へ全部通して円にかえる。それをやらずに直接自分の顔で外国の銀行へでも預金するということがあるというふうにもまた聞いているのです。もしこうした場合に、二、三箇月前に長官がお話になつたように、年々できるだけ十三億くらいの繰上げ輸入をしたいけれどもいかんせんドル不足でというような御説明がありましたので、こうした特需のダラーの支拂いチエツクを完全に押えるというか、外為委員会の方を通してやるというふうにお考えでしようか。他に漏れているというようなことを発見なすつたことがあるのでしようか、もしどんどんとこれがインフレになつた場合には、必ずしも外為委員会の方にばかりドル為替が入つて来ないと思うのです。そうしたときに政府は特別の法的措置をおとりになつて、これを全部安本なり政府がどのくらい需注があり、どのくらいダラーで支拂われたかおわかりになるような措置をおとりになるかどうか、これをお伺いしたい。
  20. 周東英雄

    周東國務大臣 御心配でございますが、今日までのところ外へ流れていることはございません。全部外為委員会に集中して、そこへドルが入つております。
  21. 松尾トシ子

    松尾委員 そういうふうにおつしやるのですが、それはとつつかまえたらきつとすぐそれを処置するでしようけれども、その目の届かないところに、そうしたことがあるというふうにもちよつて聞いておりますので、なお一層の監督をしていただきたいと思います。また私はそうした軍直接の業者への注文ということが、国の計画上非常に不便だと思うのです。そして政府の御努力によつてむしろP・Dというようなもので注文をしていただくようにしたらいいのではないかと考えます。  次にちよつと農業問題でお聞きしたいのですけれども、今度の特需関係で景気の出るのは、やはり工業製品だと思います。そういうふうになりますと、今一般に朝鮮の動乱で景気がよくなるだろうというふうに考えて、やみの米もだんだん上つて来ているのですが、ほんとうに幾らかでも景気の出るというのは、農村ではなくして、工業をやつている所がむしろ多いのじやないか、その場合に米は上らないで、農具とかあるいは肥料とかいうものが非常に上つてつた場合に、シエーレの問題をどういうふうにお考えになるかをちよつと伺いたい。
  22. 周東英雄

    周東國務大臣 お答えしますが、その前に先ほどのお話で、できる限り特需等に対して一本の線で行くことがいいではないかという御意見、これはごもつともであります。私どもも今そういうふうにやるべく努力しております。ばらばらにいたしますと、どうしてもどこかで偏在的にとられるということで、いろいろ国内経済関係に及ぼす影響は大きいと思います。できれば一本にするという方向にしたいというふうに努力しております。  それから今の特需関係の景気の出るものは、どうしても鉱工業関係だろうというお話であります。ただいまのところまで大体そういう方向になつております。しかしこれも今私どもの努力いたしておるのは、今思惑で一時かなり物によつて上つておりますが、おそらく近くこれはある程度おちつかせ得るのじやないかと考えております。民間の方では、どんどん特需があちこちから起つたり何かするものだから、長期化するかもしれないから、今のうちに買つておけというような考え方もありましよう。米なんかについても、大阪その他でやみ価格が二百円にも上つたということでありますが、昨日現在で六大都市を調査したところによりますと、ちよつとやみがおちつきました。大体百六、七、八十円のところでおちついております。これは一時大分買付したというようなこともあるでしようが、今日朝鮮事変だけでなく、ちようど今端境期で、どうしてもやみの米は上る時期なのです。そこへそういつたものがプラスしたということがありましようけれども、幸いにして米等につきまして、食糧は農林大臣が申しておりますように、大体四箇月分くらい持つております。むしろそういう点について国民の気持を安定させるためにも、一週間ほど前に発表いたしましたように、米なりあるいは小麦粉のよいのを、相当繰上げて六大都市及びその衞星都市に出したわけでございます。こういうことまでやり得る現状にあります。だんだんこの事情がわかりますれば、やみの方も多少おちつくのではないか、またほかの物品についても同様に考えております。それらに対する処置としても、いろいろ輸入つての計画を増加して、どしどし手を打つて進もうとしており、御心配のようなことはおそらくおちつくのじやないかと思つております。ただもしも手違いがあつて、非常なシユーレになつたらどうするか、こういう場合においては、やはりそれは起つたときに処置すればいいのですが、米価等の問題については、新米のときに考慮を沸いたいと考えております。これはすべてその当時における状況を判断して考えて行きたいと思います。
  23. 松尾トシ子

    松尾委員 最後に輸出の問題にちよつと触れてみたいと思うのですが、輸出というのが存外順調に行かないのじやないでしようか。たとえばだんだん材料も高くなるし、工賃も非常にしわ寄せでもしない限りはうまく行かぬのじやないかということと、それから何といつても、日本の貿易先は東南アジアと中国だと思います。それが締出しを食つているかつこうで、うまく行かないのじやないかと思うのでありますが、これが一点と、それからお話にございましたように、この動乱が局部的に收まつた場合に、そのあとの日本輸出というものは、また非常に重大だと思うのですが、今からそうしたときの来るかもしれないことを案じて、御計画になつていらつしやるでしようか。
  24. 周東英雄

    周東國務大臣 幸いにして今日までのところ、輸出については計画数量より毎月多くなつております。本年度の計画は七億くらいの予定でありますが、五月は六千三百万ドル、六月は六千五百万ドルというようなかつこうで、どんどん上つているので、地域別には今覚えませんが、今年はおそらく七億を突破すると思います。そういう状況でありますので、ただいまのところ御心配のようなことはないと思つております。しかしこれはただいまのところはそうであつても、将来に対するおもんぱかりをするということは当然であります。日本輸出のお得意さまがアジア地域であるということも十分考えに入れて、将来のあらゆる場合を考えて、いろいろ施策をいたしている最中でありました。
  25. 松尾トシ子

    松尾委員 アジアの方はそうといたしましても、アメリカの方ではそんなに買つてもらえないでしよう。どうしてかというと、私の懸念でしようけれども、増税も行うし、軍事費は百五億ドルつているような状況ですから、だんだんインフレになると思うのです。そういう場合に、アメリカのいわゆるドル地域では、そうやすやすと買わなくなるのではないかと思いますけれども、その点はどうですか。
  26. 周東英雄

    周東國務大臣 お答えいたします。アメリカにおいても、アジアの関係と同じように、今日までのところはむしろ景気がよく、輸出はどんどんふえている。ことに生糸のごときはえらく上つておるのですが、それはアメリカの買付けが多いからでありまして、あまりめちやくちやに上つてもらつても困ると思つているくらい今景気がよいのでであります。
  27. 松尾トシ子

    松尾委員 物の減少がありますと、その結果が現われて来るのは、かなり時間を要すると思うのです。そうするとアメリカもおそらくこの朝鮮の動乱でインフレになる、こういうぐあいになりますし、増税するとしてもそうやすやすととれないと思いますけれども、そうなつて来れば、この辺が山で、相当輸出の問題も考えて行かなければならないのではないかと懸念するのでお尋ねをしたわけですが、この辺で私の質問は終ります。
  28. 周東英雄

    周東國務大臣 その点は国際情勢の変化を直視して、たえず情報を入れつつ輸出計画、輸入計画を立てておりますから、しばらくごらんを願いたいと思います。
  29. 岩川與助

    ○岩川委員 日銀総裁長期金融の対策について御意見を伺いたいのであります。われわれの聞いておるところでは、見返り資金でまかなつておるようでありますけれども、この点についてまず御説明願いたいと思います。
  30. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 長期資金お話の点については非常に苦心をしております。幸い見返り資金が御承知のように五十二億の金融機関の優先株を引受ける。そうするとこれはいろいろ計算はこまかくなりますから一概には言えないのですけれども、大体二十倍の債券の発行ということになります。それも預金関係もありますから、計算は複雑になつておりますが、大体二十倍であります。特に今回は勤業銀行も、北海道拓殖銀行も債券の発行をやつております。そうして特に勧業銀行では、債券の約半分は地方銀行に預け入れをして、地方銀行窓口を通じて中小金融、不動産金融に当らせる。また農林中央金庫へも見返り資金から二十億の出費がありますが、農林方面長期資金も、さしあたりこういうような金融機関を通じまして、見返り資金の運用を十分やつてもらう。そうしてその間に有価証券市場というものの健全な発達を期するようにして、一般大衆の、長期で比較的金利のよいものに投資しようという資金を集める、いわゆる株式社債という大衆公募の形でやる、こういうふうにいたしております。これは今日の大衆の有価証券に対する知識、並びに有価証券取扱い業者の今日の状況では、相当困難も予想されますが、これからはそれぞれそれらの知識を深め、特に証券業者をして、従来のように有価証券を売つて、もうかりさえすればよいというような観念を一掃させ、銀行預金者の預金を保護するのに忠実であるように、長期資金を投資する方の保護に任ずる、こういうふうな形に持つて行こうと考えております。
  31. 岩川與助

    ○岩川委員 長期資金が非常に不足しておつて、産業界も非常に困つておるということをよく耳にするのであります。今、日銀で相談というか、要求というか、受けておられる大中小企業長期資金に属するものはどの程度のものでしようか。
  32. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 これは大体基準がありまして、政府の方でおきめになつたところにのつとつてつておりますが、輸出産業とか、あるいは国民生活の必需品、こういうふうなものが、私の記憶のあるところでは今中心になつております。
  33. 岩川與助

    ○岩川委員 私がお尋ねしておるのは、今お手元で相談を受けておられる金の高です。どういう程度の御相談を受けておられるでしようか。
  34. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 これは数字を具体的に申し上げないとわからないと思いますが、ちよつと私数字を記憶しておりません。しかし私の立場といたしましては、なるべく敏速に、かつできるだけ多く見返り資金を産業資金に出していただきたいと思つており、これを受付けますれば、きわめて審査を早くして、早く大蔵省の方に持つて行く、こういうことにしております。具体的に毎日どれだけあつたかということは、私詳しく件数、金額を覚えておりません。
  35. 岩川與助

    ○岩川委員 さきの総裁お話では、財政資金をまわせば長期資金が円滑に行くだろうということであつた。これはもつともであろうと思う。しかし財政資金は許可を得なければならぬようなかつこうになつております。その点から見ると非常に困難性があるのであります。しかし一方日本の産業界としては、財政資金の融資がなくても、長期資金は要する段階に入つておりますので、このままにほうつておけないような状態になつておるのであります。そこでもし財政資金をまわさなければ、一体どういうふうな長期資金の対策を必要とお考えになつているか、またどういうふうな対策を持つておられるか、その点をお伺いします。
  36. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 非常にむずかしい問題ですが、私どもとしては財政資金を動かすことを希望しております。それが動かないという場合は、今申しましたような証券市場を通じて、相当長期資金を供給しないわけには行かないのであります。長期資金といいましても、めちやくちやに日本経済で必要とするわけではありません。これは安本あたりでもその計画を策定されておりますが、大体千二、三百億の長期資金があれば、一応間に合うという状況であります。特に最近では、一番手取り早い方法としては、市中金融機関の持つております公債を、政府の償還あるなしにかかわらず買い上げることであります。そうしてこれら金融機関は社債という形で運用をして行くわけであります。国債を所有して長期に金を寝かしておるが、それを現金化して行くから、そのかわり長期に貸してほしいというふうにして、今までずつとやつておるわけでありますが、ただこういうふうな形にしますと、金融機関は資産構成が不均衡になりまして、今日世間で問題になつておるオーバー・ローンを生じます。しかしオーバー・ローンということも、特殊の事情のもとに起つたやむを得ないことでありまして、一般が言うように、それであるから金融機関が不健全とは申しがたい、あるいは内容が悪いとは言えない。しかしこの形のよくないことは事案です。今日外資の導入ということが強く叫ばれているが、そういう形ではどうしても外資の導入は困難である。そういう点もやはり考えつつやつて行かなければならぬ。先ほども申しましたように、起債市場というものを健全にして行く。その間は財政資金と一般金融機関長期ローンで行く。私は千二、三百億程度の長期資金はそう心配せずにやつて行けると思つております。
  37. 岩川與助

    ○岩川委員 総裁御案内の通り、今まで日本長期資金をまかなつたのは主として興業銀行であり、地方は勧業銀行がやつてつたところが両方とも普通銀行になつて、今では長期資金に対しては円滑を欠いておるので、これを元の形態にもどす必要があるとお考えになるか。あるいは今の普通の民間銀行のままで行つても、さしつかえないとお考えであるか、お見解を伺いたいと思います。
  38. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 私の考えとしましては、特殊銀行という形をとらなくても、普通銀行で優にやつて行けると思つております。今日地方銀行あたりでは、不動産を担保とする貸出し、あるいはまた長期金融をしていないというわけではなく、普通銀行の貸出しの内容を見ると、小口でしかも長期金融相当つておる。要するに今日は日本経済の安定度がまだ増していないということと、銀行自体長期運用をし得る資金が非常に不足している主としてこの二つが原因で、形態という問題ではないというふうに考えております。
  39. 岩川與助

    ○岩川委員 今総裁から、地方は円滑に行つているというようなお話でしたけれども、私ども地方をまわつてみると、農村あたりの金融はきわめて逼迫していると思うのです。まつたく困り拔いておる。そこで昔の農工銀行の形態のようにして、不動産を担保として金融をする道を開いてもらいたいという希望が非常に多いのです。今申し上げた農工銀行あたりも、一つの民間銀行であつたのですが、特殊な機関のようなことになつておりますので、前にもどることが必要であると考えますが、総裁はどういうようにお考えでありますか、伺いたいと思います。
  40. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 御意見は私も非常に傾聽するわけでして、農村方面が不動産金融にお困りになつていることはよく承知しております。これについては、昔のような農工銀行を設けるがよいか、いろいろ問題があります。これはむげに悪いというようにも考えない。十分考えてみたいと思います。当面の問題としましては、今資金の蓄積がない。そういうものをやつて資金がない。債券を発行しても、一般には持つてくれる人がないというような問題がありますから、なかなか困難であります。それで私どもは、従来経験のある勧業銀行を動員して勧業債券を発行して、その資金で不動産金融をする。このやり方は、中央都市ばかりではなく、勧業債券発行代り金の相当部分を、各地方の銀行にお預けなさいというようにして、各銀行から不動産金融をするように今進めております。今後農村方面の不動産金融については、農林関係金融機関との関係も十分考えて研究して行きたいと思つております。
  41. 岩川與助

    ○岩川委員 地方に支店があるので十分お調べになつていると思いますが、御案内の通り戰争当時銀行はほとんど合併されまして、地方を本店とする銀行はきわめて少い。地方の預金は本店のみならず東京及び大阪の銀行に集められ、出張所あるいは支店長の権限は非常に狭められておる。私は鹿兒島ですが、私の県の支店など十万円ぐらいの権限しかない。最高のときでも三十万円程度で、それでは活動資金を求めるには不十分であると思うのです。そこで不動産金融を盛んに要求されるのです。不動産金融はなぜ必要かというと、地方では都会の銀行が担保とする性質のものの持合せが少い。今までは不動産が融資の対象になつてつたから割合円滑に行つたけれども戰争からこの方その道がふさがれましたために、非常に困難を来しておる。そこで私は、勧業銀行どもやはり元の農工銀行式にもどして、その県でそういう不動産金融の道を開いていただくと、地方の今日の金詰りも相当道が開けて来ると考えるのです。これは私の見解ですが、御研究を願い、なお行き詰つておることも御了承を願いたいと思います。  それからさつきちよつと触れましたが、長期資金について長官にも伺つてみたいと思います。私どもその見通しは知らぬのですが、見返り資金というものは、今年かあるいは遅くとも来年くらいではないかと思う。そうなりますと、日本の現在の状態からすると、設備資金にまつたく行き詰つて来る。総裁から今有価証券などから長期資金というお話もありましたが、これは非常に困難な問題である。もう見返り資金なきあとの日本長期資金に対する対策を、今日、検討というか、研究して行かなければならぬ段階に入つていると考えますので、それについて御意見を伺いたいと思います。
  42. 周東英雄

    周東國務大臣 ごもつともなお話でありまして、今のままで行けば来々年ぐらいには援助資金が打切られる形になつております。そういう場合におけるこれにかわるべきもの、これは長期資金という問題のみならず、全体的に日本の産業計画について、どういうふうに穴を埋めつつ進めて行くかという大きな問題にぶつつかつているわけであります。私どもそういう立場から、来々年を見越しての一つの自立経済というものを立てることについて、産業計画がどういうふうになるか、産業構造がどういうふうになるか、それに対する金融関係がどういうふうになるかということについて、今せつかく対策中でありますが、だんだんと来々年ごろになれば、かなり産業方面ももう少し生産が増強し、資本蓄積も行われて来ると思うのであります。しかしそういう面と並行いたしまして、私どもの希望でありますが、でき得べくんばぜひ努力したいと思つている点は、やはり従来戰前にやられておつた預金部資金等の還元、これはどうしても考えなければならぬ問題だと思つております。国家の大きな信用力でもつて相当大きく集めているもの、これは昔は農村その他中小商工業に還元されて、しかも長期資金に置きかえられておつた。これが考えらるべき問題でありますが、なかなかできない。預金部資金についてもいろいろ問題があり、ことに私企業に問題があるのでありますが、これを何とかしてひとつ打開して行きたいと思つて、各方面とも相談もし、研究を進めておる点であります。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 ちよつと今の長官のお話に補足しておきます。見返り資金等がなくなつたあとの御心配の点ですが、そこは見返り資金がなくなつても、日本経済自分の力で何とかやつて行けるというところに来るわけであります。そこで一般から言われているところのいわゆる外資の導入ということに大いに努力する、こういうふうになつて来る。この外資の導入ということが相当大きくいわれて来ておる。今長官の言われたように、国内的の施策はむろんやらなければならぬ。同時に外資の導入もやらなければならぬ。これについては総理大臣も、過日銀行大会においてそれとなく言われたようですが、外資の導入が早くできるように、見返り資金が切れた場合、外資が来るように、来るように、今日本経済は苦しくても、よくなるように、よくなるように持つて行かなければならぬ、こういうわけであります。
  44. 永井英修

    ○永井(英)委員 先ほど一万田総裁からのお話を伺いましたが、この朝鮮事変日本に及ぼす影響は過大に見積つてはいけない、こういうお話がありました。現在アメリカの軍事予算追加予算は約百五億ドルということでありますが、それが南方方面相当援助として流れて行くのではないか、こういうふうに考えられますが、その場合には、一番近い日本のいろいろな軍需物資というようなものが相当行くのではないか、こういうふうに考えられますが、この朝鮮事変とあわせてそういうものを考うべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでありますか。
  45. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 お説の通りでありまして、私も朝鮮事変影響相当に考えておりますけれども、これはあまり過大に考えてはならぬ。そうしてなるほどアメリカの軍事予算は大きなものであります。先ほど申した通り、今後においても国際的な貿易体制に入るかもしれぬ。いろいろとそこにある。しかしそういう事情がはたして日本に大きく影響して来るかどうか、これはよほど考えなければならぬ。今日いわゆる輸出の復興があまり伴わない。これもあまりいい商品がなくして値段が割高だつた日本商品をつくるためには、特に原料は輸入に仰がなければならぬ。そうすると、原料というものが海外で相当上る。そうすると、その上つた原料を使つて日本生産過程においてコストが高いということになると、これは相当高いものになる。むろん戰時というような緊急の需要とすれば、そういう値段もかまわないというこもあり得るかもしれぬが、そうなると、今日の輸送関係から見て、そう日本ばかり、日本ばかりというわけにも行わぬ。これは大きな事態でも生ずれば別ですが、そうでない限りは、今日の情勢を見ましても、実際にこの朝鮮事変によつて直接に注文があるとは思えない。その金額は今のところどうもそう大したものではない。けれども実際の資金需要はずつと上まわつておる。なぜかというと、そういう見越しでもつて物を買い集めたり、いろいろのことをやるので、その資金が動く。しかし私はやはり冷静に考えて行かなければならぬと思う。過小評価することもないが、しかし過大評価することもない。なかなかこれはむずかしい国際情勢の動きですから、大きく国際情勢の動きを見つつ冷静に対処して行く、こういうふうに考えたらどうだろうかと思つております。
  46. 永井英修

    ○永井(英)委員 それともう一点、この朝鮮事変によりましていろいろな特需物資、そのほかいろいろそれに影響されて物価が上り、あるいは賃金が上る、こういうような事態が必ず来るのでありますが、その場合に、今後年末までに通貨は大体どのくらいまでふえる見通しを持つておられますか。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 年末の通貨がそういう特需を入れてどうふえるか、これは実はわかりません。年末までに朝鮮事変というものが一体どうなるのか、それもわからぬのでありますが、今のところさしあたつては、たとえばこのときならばこのとき、来年なら来年、あるいは一応年度を通じてどのくらいの需要があるだろうかということを推算するだけの問題でありまして、これもこのくらいだろうというような推測を、こちらが主動の立場にありませんので、軽々に申し上げるのもどうかと思います。どうしても特需に関連してある程度通貨がふえる、こういうふうに私は考えております。
  48. 永井英修

    ○永井(英)委員 よろしゆうございます。
  49. 圖司安正

    圖司委員長 志田義信君。
  50. 志田義信

    ○志田委員 一万田総裁お話を承りまして、たいへん参考になりました。大体同僚委員からもお尋ね申し上げておりますので、私は簡單に二、三の点をお尋ね申し上げたいと思います。  今一万田総裁は、特需物資朝鮮動乱による影響によりましてインフレ傾向をとるであろう。従つてインフレ傾向をとつた場合においては、松尾委員の御質問に対して、やはり金融引締めを相当考えなければならぬというようなお話でありましたが、さきには今春来わが国の経済界は、御承知通りデフレ傾向を来しておる。そうしてこれを政府はデイス・インフレの線でとめようとするに努力したのでありますが、今日は情勢が一変いたしまして、インフレ傾向すら見なければならぬ、こういうことになるのでありますが、そういう場合に、金融引締めをやはりやつて行かなければならぬ。デフレの場合におきましても、インフレの場合におきましても、同様に金融引締めをやるということになるのでありますが、そういう場合に融資あつせんの範囲を縮小して通貨安定をやろうというお考えを、さらにお持ちになつておるかどうか、お尋ね申し上げます。
  51. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 今のお尋ねは二点あるようです。一つインフレ的傾向をとつた場合に大いに金融を締める。私はこれはたとえば特需どいうような関係が来る場合に、はたしてそういう措置がとれるか、これは考えてみなければならぬと思う。それでそういうことのないように、これはドルが来るのですから輸入をふやすことこ最善を盡すというふうに、今日では申し上げておく方が一番妥当ではないかと思います。  それからもう一つ融資あつせんでありますが、大体融資あつせんというのは、初めは資金調整法というものがありまして、私の方にも資金調整局というものがありまして、法律でみな審査をして金を出すのをきめておつた。これは統制経済が非常に強かつたときであります。それから統制が大分ゆるくなつてきたので、そういうものはやめて、お互いの話合いという程度の融資あつせんに持込んだ。行く行くは融資あつせんというものも実はやりたくない。ほんとうを申し上げますと、金融界にたくさんの方がおられるのだから、金融自体自分の見識で、これは日本産業のために貸すべきかどうかお考えになつて自主的な判断の上でするがよろしい。しかし資金調整法廃止後、すぐにそういうふうにすることはむろんできない。同時に相当統制が残つておるので、総合的な見地から考える必要がある。それで私の方で融資あつせんというものを残して参つております。今日も残つておるのでありますが、しかし何かすべての面において、今日日本は自主ということが尊ばれるわけであります。ひとり金融界ばかりでなく、すべての者が自己の判断において、自己の責任において行動しよう、それが私は民主主義の基本であると思う。金融界においてもそれと同じである。ただ人がこういうふうにするから、自分もそのようにやるというのではいかぬので、金融界自身も考えていただきたいというふうに情勢を馴致して行く。それで今の内閣になつて統制がはずれて自由経済になつた。そこでその機運に乗じて、金融界もひとつ自分で考えてやるように、一応前に出てごらんなさい、私どもはちよつとうしろにいるから……。しかしいかぬ場合には私どもがつつかえ棒をいたしましよう、こういうふうにやつて、それでできれば、こういうことは必要のない日本経済を希望している。しかしこれも事態の変化によりましてすべてこういう政策客観情勢の変化によつて、適時に変更を加えるということが必要でありますから、情勢の推移によつては考えて行かなければならぬ。それで今日でもまたいろいろなことについて御相談を受けてやつております。中小企業などは特に御相談に応じて、側も従来とかわつた態度もとつておらない。これは一に観客情勢の変化に応して、こういうものが強まり弱くなる、こういうふうに考えております。
  52. 志田義信

    ○志田委員 自主的な融資にまちたいということは、おそらく日銀としては、市中銀行の自主的な融資にまつというお話だろうと思いますが、先ほど総裁は、資産構成の上から見て、オーバー・ローンになるようなもの、つまりアンサウンドの現われになるようなものに対しては、融資はできないのではないかというお話があつたのであります。しかるにもかかわらず、私は長期金融の上におきまして、金融機関からの長期資金の融通というものは、少くとも昨年よりも今年の方が重要性を増して行くものと思うのであります。それにもかかわらず、証券界その他の状況は、とにかく非常に大口の資金は日銀でやつていただけるといたしましても、その他の産業にあたりましては、自力で資金をつくるということは、非常に困難になつておるのではないか。株式市場の不振は、御承知通り約半年も続いております。従つて事業会社の増資自身は、なかなか困難でありまして、総裁が言われるごとくに、長期資金の調達を自主にやれといつても、おそらくはそれらの市中銀行は、企業の実態が悪化しておるという状態から、金融機関は貸出しに危險を感じて、警戒に出ておるのが現状なのでありまするから、これらの点を考えまして、單に資金の調整だけで実際の貸出しはできないという考えで今後行かれるおつもりであるかどうか。その点をお尋ね申し上げたいと思います。
  53. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 金融機関が今日長期資金を出すのに非常に困難をしている、これはお話通りであります。しかしながら幸い今年は、先ほど申しましたように、相当巨額の債券が出るのであります。言いかえれば金融界としては、自分では融資ができない。自分の預かつている金は短期の預金である。しかしそういう特殊の金融機関の発行する債券を持つことによつて、この短期の預金長期資金に転換をすることができる。それによつて金融界は、所有する有価証券で、必要な短期資金日本銀行から借りることができるというようになつて行く。これによつて今年は長期資金の調達が、去年よりもよく行くだろうと思う。同時に見返り資金の方でも、去年に比べるとよほどよくなつて行くだろうと思う。予算面だけ見ても、私企業に四百億も計上されておるようなわけでございますから、オーバー・ローンということは、そう次々と巨大化せずして行くだろうと思う。むろん今後の推移で設備を拡大する必要があれば、また別個でありますが、しかし今日の日本経済で、そう新規に設備を拡大するという状況ではない。むしろ設備の補修、改善というか、より能率のいい設備に直す面が、生産費を下げる意味においても希望されるのではないかというふうに考えております。
  54. 志田義信

    ○志田委員 先ほど総裁は、朝鮮動乱の問題に関連いたしまして、円資金の調達は、預金部資金か、あるいは見返り資金のような政府の余裕金、あるいは警察予備隊に要する費用のようなものを債務償還費から削減して行くという方法でやつたならばいいだろう、というようなお話でありましたが、もし政府が日銀からの借入れでやりたいという希望を出した場合におきましては、日銀総裁としてこれにどういう態度をおとりになるか。それをお伺いいたしたいと思います。
  55. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 政府から何もお話がないので、先走つて私から申し上げることは何もありませんけれども、筋としては、そういう資金があるのに日本銀行から借入れをするということは私は少くとも大蔵大臣は考えぬだろと思う。それは筋の通らぬ考えであります。特に先ほど申しましたように、私の考えでは、特需関係からドルがたまる。それで円資金が出まわる。要するに外国為替委員会がドルを買う。そうすると外国為替委員会は資金がいる。その資金はどうするかという問題がある。今のところは貸出しも日本銀行とは限りませんが、一応借入れ限度が五百億というふうになつております。ドルが非常にふえて来れば、むろん五百億円くらいでは足りませんから、これの拡張ということも今後問題になるのではないか。まあそうインフレ的な傾向をとらぬ限りにおいては、日本銀行に外国為替委員会から貸してくれという場合には貸してもいい。しかしそのときには輸入をしてもらわなければならぬ。輸入もしないで、ただドルをためるために日本銀行が金を出すということは、インフレ的なもの以外の何ものでもない。そういう話だつたら、私は日本銀行から借りないで、むしろ財政資金から外国為替委員会に金を出してほしい、こういうふうに考えております。しかしこれは今すぐそうしなくてもいい。これは第一次大戰のときに、日本が非常な輸出超過で、アメリカにたいへんなドルがたまつた。二十数億ドルもたまつた日本の百円が五十二、三ドルにもなつたという時代があつた。ああいう時代にも在外正貨はやはり財政資金で買い上げた。これは当時の大蔵大臣日本銀行総裁の協定でやつた。今後も外国為替政府資金で買上げる。そうでないといわゆるインフレがいよいよ大きくなるという前の例もあるのでありますから、そういう措置は、今すぐとはいわず、今後の特需あるいは情勢進展いかんによつて、やはり考えておいていいことだろうと思う。私の態度はそういう態度です。
  56. 志田義信

    ○志田委員 非常に明快な御答弁をいただきましたので、感謝にたえない次第であります。  いま一つお尋ね申し上げますが、今後日銀か、マーケツト・オぺレーシヨンの対象から、興業銀行の債券や社債を除外しまして、緊急な設備資金の貸出しというような場合にあたりましては、社債の買入れを市中銀行に行わせて、それをやれる程度においてオペレーシヨンを継続するような方針をとつて行くのであるかどうか。その点をちよつとお尋ねします。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 ずつとお話申し上げておりましたように、今日の情勢では円資金というものは、相当日本経済に出まわるので、そうオペレーシヨン、オペレーションというわけには行かない。しかも長期資金の調達が必要だということになると、今お話のように長期資金調達という意味合いにおいて社債が出た場合に、それの見合いに必要とすれば、社債を買入れるためのオペレーションをしてもよろしい。しかしなるべくそういうことがなくして、この社債を持つてもらえることが望ましい。
  58. 志田義信

    ○志田委員 スタンプ手形に準じて、手形も貸付けの担保を認める、そうして商業手形の審査は今後嚴重にしなければならぬということを、総裁が部下に命じておられるようでありますが、その点につきまして伺つておきたいと思います。
  59. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 はなはだもつて恐縮なんですが、一応御説明を申し上げておきますと、日本銀行の再割引適格の商業手形というものは、金本位の場合には兌換準備として金と同じ扱いです。日本銀行券は、先ほども申しましたように、日本国民の富を形成している。言いかえれば、みんなが働いて受ける対価が日本銀行券であるから、これは価値を意味する。その日本銀行券値打が引下るというようなことでは、国民大衆というものは耐えられるものではない。従いまして、その兌換券の裏打ちになつておる資産というものは優良なものでなくてはならぬ。これは中央銀行のおきてです。従つてその手形期日に必ず落ちるということが要講される。ところが最近の情勢では、日本銀行にいろいろ再割商業手形というて持ち込んで来られるが、期日に落ちないという情勢が現実である。これは要するに日本経済の循環がうまく行かない。言えかえれば他方において滞貨というような形で申し上げてもいい。一時滯貨というようなものも相当生じた。物をつくつて売れないということになれば、その手形が落ちるはずがない。それを日本銀行で無條件に再割引をすることは、兌換券の価値という意味からも、日本経済を動かして行く上からも——言いかえれば、この商業手形というものは一種の有価証券で、不見転で日本銀行が買う。それは物が動いておるという表徴として、それだけの信用がなければならない。それが落ちないということですから、これは嚴重に審査しなければならぬ。これは日本銀行が恣意的に自分でほしいままにする政策じやない。日本経済の実態が日本銀行にそういうことを要請するわけである。日本経済はかくのごとき様相であるから、お前の方もひとつ考えてみろというわけで、私は日本経済自体からさしずを受けて日本経済をよくして行く以外にはないと思う。  もう一つ工業手形の問題ですが、これはわけを話せばよくわかるのです。日本銀行で再割引しました工業手形は、製造会社なら物を製造する場合に使う原料の手形、たとえば鉄をつくるとすれば、石炭の手形は当時は再割引した。なぜ再割引で引取つたかというと、これはほんとを言うと再割はなかなかできない。ところが当時の日本経済構造というのは、公団というものを政府がおつくりになつて、できた物はその公団が必ず買い上げるという制度であつた。そうすると原料代金は落ちないはずはない。必ず製品は売れるという約束がある。そこでこの原料手形を再割適格に入れて割引した。これは他面では、日本産業になるべく安い金利の資金を差上げよう、同時に統制経済関係から、そういう方面資金が流れやすいようにしようというねらいで、そういう措置を講じた。ところか最近に至りまして、公団はほとんど廃止になり、そして自由競争ということになつて来ましたので、その製品が売れるか売れぬかわからなくなつて来た。そうすると原料代がはたして拂えるかどうかわからぬということになつて来る。そこで先ほど申しましたような性質を有する日本銀行再割の適格手形には、もはや適しない。これも日本経済構造が日本銀行に要請することなんです。何も日本銀行は恣意にやつているわけではない。しかし客観的な経済情勢に応じた措置をとつた。それだからというて再割しないことをもつて日本銀行が金を貸さぬように早合点する人が非常に多い。再割引というは、今申しましたような特別な優遇を與えるという意味なんです。しかし担保には工業手形をとる。だから工業手形は原料の手形としては大事な手形です。それで担保にとる手形なら第一順位、一番いい手形に持つて行く。再割引はいかぬが、その次にいい手形に持つてつた。だからスタンプを押していつも担保にとることにした。そして金利も一銭五厘です。一銭五厘の金利しかスタンプ手形、工業手形にはもらつていない。それだから、そういう日本経済の実態が要請することに応じてとつた措置について、何かまた金を締めるかのように世間は誤解をするが、そうではない。これはもう子供が八つになれば小学校に行き出すと同じことです。ふしぎなことではない。経済の実態に応じたことである。それを昔のままにやつておるならば、むしろたいへんなことになる。まあそういうふうなわけでありますから、御了承願います。
  60. 志田義信

    ○志田委員 総裁は、今後金融引締りをやるようにいつも言われるので、不徳のいたすところだということを申しておられるのですが、私たちは必ずしも総裁の顏が不景気な顔だとも思つていないのでありまして、いろいろと出したり締めたりすることは、今お話のように経済政策の転換の上に立つてこれをおやりになるのだと了承しておるのであります。総裁は、去る五月九日に市中十三銀行の代表者を招きまして、その席上金融政策方向を示しておられるようであります。そのときにも、やはり自分は、デイス・インフレーシヨン政策の継続すら困難になる状態であるから、さらにある程度の金融引締りもやむなきに至るであろうと思う、ということを申しておるようであり、それによるいろいろな商業手形、工業手形の審査基準の改正の問題やら、あるいはただいまお話を承りました工業手形の再割引の問題などおつしやつておるのであります。今後は朝鮮動乱によるインフレ傾向になつた場合におきましても、やはり金融引締りをやむなくするというお考えを堅持しておられるかどうか。その点をお尋ねします。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 先ほどの五月幾日かの点をちよつと申しますと、あのときの話は、こういうことなんですから、誤解のないように願います。何も一般的に金融引締めるのではないのである。期日に落ないような手形を持ち込んで、金融のできたような人は今後は金融は断るというので、何でもかんでもむちやくちやに金融を受けておそたような人がつかなくなつた。それだけは違う。これはしかたがないのです。病気になれば病院に入院しなければならないのとかわりがない。そういう意味で金融引締まるかもしれぬ。ての辺は、その文章がそういうように書いてあれば、文章の字句が足らなかつたか、あるいは話した人の言葉が不足だつたと思います。  それから朝鮮事変が起つてインフレ傾向になつた場合はどうするか。金融は締めるか、締めないか。これはすべて物は、何がゆえにインフレになるのか、インフレの起る原因はどこにあるのか、そういう事態をよく認識し、かつ見きわめないと、どういう政策をとつていいかわからぬ。ただ朝鮮事変インフレ傾向をとるから金融を締めなければならないというように、簡單には行かない。これは病人が寢ている場合でも、何が原因だというのでないと、頭を冷やしていいやら、腸を冷やしていいやらわからない。そういうようなことと同じなんです。よく事態の原因を突きとめる必要があると思います。
  62. 志田義信

    ○志田委員 大分長時間になりましたので、総裁もお疲れと思いますので、できるだけ短く切り上げます。今後の通貨の発行高に対する総裁の見通しをお漏らし願いたい。  それからいま一つは、預金に対する貸出しの割合が多過ぎておると思つておるが、どうか、それをお尋ね申し上げます。  もう一つは、戰争で四兆何千億という金を失つた日本の富でありますから、資金の蓄積のないのはやむを得ないのでありますが、資金の蓄積のない、しかも需要の多いような状況におきまして、銀行資産の今後の構成の上におきまして、先ほどお話のありましたような貸出し増加、ことに不健全な状態を出しては困るというようなお話でありましたが、これを不健全でないように、健全にもどそうとする協力をお進めになるお考えであるか。それを最後にお伺いします。
  63. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 今ここで、たとえば年末には通貨の発行高がどうだろうかなんと言つたら、また問題です。それをすぐ取上げてまた金融引締めるだろうとか言われる。事実特に朝鮮事変か起きて以来、この推移がいかになるかということがわからぬのに、中央銀行総裁が、年末の通貨発行高が幾らとか言つたら笑いものです。そんなことはできないのです。これは今後の推移を愼重に見きわめて、ちようどいいくらいな通貨を常に出して行くというよりほか手はないのであります。  それから金融機関預金と貸出しの比率の問題ですが、これは今日まで預金に対して貸出しが九一%か二%なんです。しかも預金は、自分の貸し出した金を当座預金に振りかえて、それらも含めて九十何パーセントを占めておる。これはオーバーローンであることは、銀行の経営常識からいつても申し上げられます。しかしそのこと自体がやむを得なかつた情勢によつたことは、それがいいとか悪いとかいつてもしかたがない。しかし、そういう情勢は、今後できるだけ直してよく持つて行くように努力しておるその努力、これは当然直し得るだろうと思う。税の問題も財政の現勢も、おそらく二十六年度は大きく違つて来るだろう。国際情勢も違つて来る。今申すように、国内的にいえば、いくらかインフレ的な傾向が起るだろうと心配されるぐらいに、経済活動も相当つて来ると思います。あらゆる面がここで一度に転換——と言うと語弊がありますが、変化を生ずる。そういうようなすべての動きというものを、それぞれ立場において最もよく取扱つて、悪いところを直して行く。今が一番、合理化をするのにしても、あるいは金融界や一般会社の業況を直して行くのにも、割合に苦労が少くてやり得るのじやなかろうかという情勢が出ておる。それが一番大事なんです。こういうように直して行きます。
  64. 深澤義守

    深澤委員 周東さんに数点お伺いいたしたいと思います。朝鮮問題を契機といたしまして、日本の船舶は相当動員されておる。さらに現地の軍から直接業者に対して、いろいろな特需関係の発注がある。ところが業者の方では、この処置に対して占領軍の命令である、あるいは徴用であるというような考えを持つて、これに応じているような傾向もあるようであります。しかしわれわれは、国連軍の警察行動としての対韓作戰工作による需要は、これは占領軍の命令とは違うと考えており、これはやはり、契約として相互了解の上にやるべきものであるというように考えるのが至当ではないかと思うのでありますが、その点について周東さんのお考えを伺いたいと思います。
  65. 周東英雄

    周東國務大臣 お話の点その通りでありまして、ただいまのところ随意契約によつてすべてが処置されております。
  66. 深澤義守

    深澤委員 その次の問題は、朝鮮問題を契機として、吉田総理も、日本には非常にぐあいがいいというような——これはあらゆる意味を含めておるのでありましようが……。ところが一部では、軍需景気が再来したかのごとき幻想を持つておるようです。この点については、今、日銀総裁からもお話があつたのでありますが、よし朝鮮事変によりいろいろな需要がありましても、それは非常に部分的であり、非常に根拠が薄弱なものであるというように考えます。これによつて日本経済か非常に好転し、景気が回復するというようなことは不可能である。もちろん産業界においても、その前途については非常に警戒を拂つておるようでありますが、こういう問題に対して、政府は一体どういうぐあいにお考えになつておるのか、この点をお尋ねしたい。
  67. 周東英雄

    周東國務大臣 政府におきましては、朝鮮事変が起きたから、これによつて好景気になるというようなことを決して考えておるわけではないのであります。この事変によつてお話のように特需等が一部にありますが、これも御意見のように、今日までのところまだ大した数量ではないのですが、ただしかし、いかにもたくさん出ておるように宣伝されたり、また今後もたくさん出て行くだろうというような思惑から、一部に株がつり上つたりしているということを、むしろ私どもは非常に遺憾に思つておるのであります。先ほども松尾君の御質問に対してお答えいたしましたように、私どもは、ある程度こういう形になつておりましても、先の情勢いかんにもよりますが、まず落着くのではないかというような気がしております。しかし私どもは、そういう見通しのもとに立ちつつも、余剰のあるようなものについては、これは日本の将来への産業再建のためになるように、できるだけ物にかえておきたい、こういう関係で善処していることは事実でありますが、この朝鮮事変によつて好景気到来というように考えてはおらぬのであります。
  68. 深澤義守

    深澤委員 それから貿易の問題でありますが、政府は、貿易に対して、非常に好転するであろうという楽観論を持つておるようであります。しかしながら現在の情勢といたしまして、韓国はああいうぐあいで、これは貿易杜絶の状態になるかもしれません。中国の関係も前途なかなかうまく行かないというぐあいにわれわれは考えます。また香港貿易としても非常にまずいのではないかと考えます。また東南アジアの関係におきまして心、ある業者の言うところによると、東南アジアはドルやポンド圏だと思つたところが、これは案外ルーブル圏であるというようなことで、驚愕をしておるということをいわれておるのでありますが、こういう状態から考えまして、貿易の前途というものは非常に楽観を許さない、われわれはこういう見通しを持つのでありますが、こういう点についてどういうぐあいに考えられておるか、お伺いしたい。
  69. 周東英雄

    周東國務大臣 ただいまのところは、直接な影響輸出関係が減るとかいうような状況ではないのです。先ほど松尾君の質問に対して言つたように、毎月々々予定計画よりも上まわつておるのが現状でありまして、今年は、七億ドルぐらいが二十五年度の輸出総計画でありますが、五月は六千三百万ドル、六月が六千五百万ドル、七月は二十日現在ですでに四千四、五百万ドルになつておるという状況でありまして、いろいろな関係もありますが、輸出は今日までのところ朝鮮事変関係なく、むしろ順調といいますか、予定計画より上まわつております。しかし今後将来の問題といたしましては、国際情勢進展いかんによつて、いろいろ影響が来るものと思いますけれども、先ほど総裁お話になつたように、あまりに朝鮮事変の問題を過大にいろいろ考える結果、あまり悲観的に見てもいかぬ、楽観的に見てもいかぬというお話でありますが、その通りでありまして、今のところ順調に進んでおりまして、将来の問題については、各般の状況を絶えず注目しつつ善処して行きたい。かように考えております。  それから日本経済に大きな関係を持つ原料資材輸入でありますが、ゴムとか綿花とか、すず、マンガン、鉄鉱石、粘結炭というようなものが、非常に暴騰しておるということをわれわれは聞いておるわけであります。今後の日本経済がこの原料資材の高騰のために、非常な不利益な状況になるということを考えておるわけですが、この点についてどういうぐあいにお考えになつておるか承りたいと思います。
  70. 周東英雄

    周東國務大臣 お話の品目の中には、お話のように今上つておるものもありますが、そういう問題につきましては、でき得る限り繰上げ輸入等の方法で、今日輸入の増加をはかつて善処したいと思つております。
  71. 深澤義守

    深澤委員 その輸入の増加をはかるということ自体が、非常に楽観を許さないということをわれわれは考えておるわけであります。従つて輸入は原料高のために非常に苦しくなる。それから輸出は東南アジアあるいは中国等の行き詰まりによりまして好転しない。結局ドル圏に依存せざるを得ないという傾向になるのではないかと思うのであります。そういたしますと、結論として、日本経済が結局ドル依存というような形にならざるを得ないと考えるのでありますが、この点はどういうぐあいにお考えになりますか。
  72. 周東英雄

    周東國務大臣 ただいまのところ、そういうふうに悲観的にばかり見ておらないのであります。現在のところ輸出輸入とも大体順調に来ておる。こういうふうに思つております。輸入についてはあらゆる処置を講じつつ増加をはかつております。
  73. 深澤義守

    深澤委員 それでは食糧輸入の問題についてちよつとお伺いしたいのでありますが、政府は特に米の輸入について相当の計画を持つておられるようであります。ところが韓国からの輸入は蹉跌を来しておるのです。それからビルマの方面も非常にぐあいが悪いというような話も聞いております。シヤムの関係も非常に好転していないということを聞いておるのでありますが、最近は南阿連邦あるいはエジプト方面にも手を伸ばしておるということを聞いております。従つてこの米の輸入の問題が非常に困難に逢着しているというようなことを私は聞いておるのでありますが、この点については、どういうぐあいにお考えになつておりますか。
  74. 周東英雄

    周東國務大臣 御心配のようでありますが、今日のところそういうふうな形になつておりません。朝鮮については蹉跌したのではないかというお話でありますが、これは大体十万トンの輸入計画について、九万一千トンはもう輸入済みであります。その他の地方については、また非常に困難でだめだというような話には今なつておりませんし、ことに一部は外麦についても増加の問題を考えておりますから、食糧については今のところそういうふうに悲観的には考えておりません。
  75. 深澤義守

    深澤委員 食糧問題について結局小麦とか、とうもろこしとかいうようなものに依存するというような傾向が強くなつて来ると思います。そうすると従来自由党を中心として叫ばれて参りました米麦等の一部は自由販売、あるいは供出後の自由販売というような形で、食糧関係にも自由経済の方式が導入されるというような期待も一般にあつたようであります。ところが最近においてはこういう方面輸入関係がうまく行かないということのために、依然としてやはり食糧関係については今までの供出制度を持続して、これをさらに強化して行くというような傾向が出て来るのではないかというぐあいに考えられるのでありますが、この点はどうでありますか。
  76. 周東英雄

    周東國務大臣 従来より持に強化するとかいうようなことは、ただいまのところ考えておりません。ただいろいろな国際情勢を見きわめる必要もありますので、農林大臣等も申しておりますように、大体米麦については、しばらく今のままにしておくというこであります。今後の推移によつてこれらの処置は考えたいと思います。
  77. 圖司安正

    圖司委員長 ちよつと探澤委員に申し上げますが、一万田総裁は四時までの御約束でございまして、あなたのほかにまだ淵委員と竹山委員の通告があります。長官に対する御質問でありましたならば、あとに延ばしていただきたいと思います。
  78. 深澤義守

    深澤委員 それではこの際日銀総裁に一点だけ承つておきたいと思います。先ほど来も各委員から申されましたように、農村金融の逼迫は非常にひどい状態になつております。ことに單位農業協同組合のごときは、おそらく五〇%までは赤字の状態にあります。あるいは支拂い不能というような状態があるのであります。この措置については、農林中金の資本を拡張いたして救済するというような方法を講じられているのでありますが、あれではとてもまだ農村の金融逼迫状態を解決する道ではないとわれわれは考えるのであります。この農村の金融枯渇状態は、どういうぐあいにして解決されるか、その方針があられるならば、ひとつお伺いしたいと思います。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 実は私は農村金融には非常に力を入れて、この農村金融は従来特殊な金融でありまして、中央銀行のそう出る立場でもなかつたのでありますけれども、今日の日本のあり方としては、何としても食糧問題というものをやはり解決しなければいけない。できれば食糧というものは自給自足にしておかないと、四面海の関係もあるので、同時にまた非常な多量の食糧を輸入しておる貿易という見地から見ても、今日そういうふうな施策は非常に輸入を削減することのために、輸出振興ということにも該当するのだから、農村金融ということに非常に力を入れて、これは私の立場ではないのでありますけれども、農業の長老連中と会合をして、何とかやりなさい、こう言つておるのですが、なにしろ農業政策自体が確立しないと、金融というものはできるものではない。先ほど大蔵委員会でもその話があつて話しておいたんですが、どこに日本の農業を持つて行こうとするのか、その基本、基盤、いわゆる農政というものがしつかり確立しなければ、ただ困つておるから金融々々では解決するものではない。こういう点、そういう政策がしつかりして来れば、それに必要な資金については、また状況を見つつ考えましよう。私は農業の方面に金を出すことにはいささかも異存はない。何とかして農業の振興をはかりたいのだということを、実は私の方から農業の長老の方々に申し出ておるくらいです。ですからこういうふうに農業政策がなつたんだから、それに金がほしい、出してほしいという要求が、具体的に出ることが望ましい。ただ困つておる、困つておる、それでは金融の道はなかなか今日の事態ではつきにくい、そういう点も私はとくとひとつ御考慮願いたいと思う。それで金融の面自体については、私はやはり農業金融は特殊な金融である。漁業金融にしても農業金融にしても、これはやはりいつぱいである。農業だけで一ぱいである。漁業なんというものは、五年ぐらい見ておかぬと、とれたりとれなかつたり……。特殊の資金がいるのである。それでなるべくそういう金融は特殊な農業系統の金融で考えてもらう。これには何としても終戰後にできました農業協同組合、これが健全な発達をするようにやつてもらわないと……。そうするとこれがずつと系統関係になつて、農林中央金庫、農林中央金庫に資金が不足すれば、妥当なる限り、私の方も援助してよろしい。ところがこの農業協同組合というものが、どうですか。私かれこれここで申し上げませんが、どうですか。よほど考えてもらわなければならぬ点が多いと私は考えておる。そうしてそういうふうな運営の仕方ですから、金がない、ないと言いつつ、この組合で集めた金で、最近まで百五十億円というものが、銀行の預け金になつておる。いわゆる同業者預金。これは金利が当時二銭数厘しておりましたから、組合でせつかく農村の金を集めて、農村に金融が非常に不足しているにかかわらず、農村にその金を使わずに、銀行に預けている。そういうふうなことをやられたのでは、なかなか農村金融というものはうまく行かない。組合というものは組合系統になつているので、この組合の健全化ということについてはどうすればいいのですか、それをたださぬ限りは、なかなか解決しないというのが私の考え方です。決して私たちは農村金融について少しも金を出さぬなんということを考えておるのではありません。何でも筋さえ通れば、特に農村についてはできるだけ盡力しよう、こういう立場をとつておりますことを申し上げます。
  80. 圖司安正

    圖司委員長 渕通義君。
  81. 渕通義

    ○渕委員 一萬田参考人に御質問いたしたいのであります。それはただいま深澤君が申されました農業金融の問題であります。私が今一万田総裁の話を聞いておりますと、日本農政が確立していない、こう申されます。そういう面がなきにしもあらず。しかしながらわれわれが農政学徒といたしまして研究いたしました中心課題は、各党各派を超越して、日本農業の生産性を高めるということが、農政の中心課題であるとするのです従いまして、労働の生産性を高める方向に、各種の農業団体の機構を動員して行く、その方向資金をまわして行くというのが農政の基盤である。これが、自由党たると、社会党たると、民主党たると、ちよつともかわりはない。その方法は、小さな意味においてはかわるところがあるかもしれませんが、労働の生産性を高めるというところに、総裁はお考えをお持ちであるならば、必然的にどのように資金が必要であるかという問題が生れて来るのじやないか。たとえば土地改良の問題、こういう問題を当然お考えになる。それと関連いたしまして、今日土地改革によりまして、多くの諸君が小作農から自作農に転換いたしましたところが、かつての自作農であつた方々は、相当長い間経験を持ち、なおかつ財産を持つておりました。従つて営農資金はたんまりあります。馬もあれば牛もある。農機具もある、銀行預金もあるということですから、そういう方々は、こういう状態に追い込まれましても、農業経営には相当苦心はありますけれども、そう困難は来していない、ところがこのたび解放されました多くの小作人の方が自作農になつたとき、営農資金がない、馬も牛もないというような状態に追い込まれております。こういう人たちに営農資金を與えて行かなければ、日本の食糧の増産はできない。今日土地をもらつた小作人は、失礼ながら今まで自作農が一生懸命やつてつたときよりも、生産は落ちております。言葉をかえて言えば、農地改革の結果、日本の労働の生産性は低下したというのが、偽らざる統計の示すところでございます。そういつた方向に思いをいたされますると、何か予盾があるのじやないか。そこで私がもう一点お聞きしますことは、問題は、農村ほほかの中小商工業と違いまして、まことにもうからぬ企業であります。従つて水の低きに流れるごとく、金というものがどうしても利益のある方へ流れて行く。これを日本の政治なり、あなた方が、低いところに流れないように、逆流させるような作用をさせるのが、農村金融を思うつぼにはめるということではないかと思うのですが、その点、引合わない農業に、いかにして長期資金を流すかという問題を提起いたしたいのであります。それに対する総裁のお考えを承りたい。
  82. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 農業の生産性ということは、むろんその通りです。それでたとえば、私はこういうことを考える。肥料の問題もやかましいけれども、今化学肥料を使いましようが、有畜農業ということも長く日本で叫ばれた。一体日本の農業有畜にするには、具体的にはどうすればいいのか。なかなかむずかしい問題だ。これはやはり具体的に案を立ててもらわないと、たとえばそれを会社組織にして、そこでたくさんの牧畜もやり、牛馬も持つて、それを農村に貸してやる。そういうふうな行き方になれば、そういうふうな点を考慮して有畜農業をするのならする。それから土地改良ということはどういう意味か、土壤の品質の改良というのは、私しよつちゆう言つている。酸性とアルカリ性に始終なるのですから、それを中和させまして、それに、適応した肥料を用いることがよろしい。それならばやはり、農村にそういうふうな技手の一人くらい置いてもいいじやないか。そういうことをやるのは、具体案があつたら組合を中心にして考えて行かなければならぬ。そういうような具体案があつて、それに必要なる資金なら一つお考えになつていかがですか。こういうふうな意味合いで、特殊な金融機関がいるからというなら、組合からやつて行けば、今の金融機構でも十分できぬことはないと思う。それから営農資金なんかでも、従来特別になかつたのですけれども、農業手形制度というものもここに創設しまして、農業手形で営農資金の供給をまず図つた。私の方ではそれを特別にやる措置をとつておる。こういうふうなことをやつておりまするが、しかしおそらく、今農村の問題は、具体的にお困りになつているのは金融であるかもしれません。すべて今は貨幣経済の中ですから、困る点は金融という面に現われて来るのですけれども、今の病気の根源は、もう少し深い違つたところにある。そこをひとつ直すようにして、当面の応急措置は応急措置として考えたらどうですか。元を直さずして、ただ応急措置々々々々では、ずつと間違つた方向に進んで行くかもしれない。だからやはり病根を切開して、直すところは直して、臨床的にも、内服薬も飲むというふうにせぬと、なかなかうまく行かない。ところがそれを言うと、切開をいやがるとか、いろいろな複雑な事情があるとか、何とかいうので、姑息的な当面お茶ぐらい飲んでごまかして行くというようなことをやる。それはいかぬ。決して営農資金に無関心ではないのであります。
  83. 圖司安正

  84. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 まことに遅くなつて恐縮ですから、ごく簡單に三点ほどお伺いします。  第一点は、今政府に農業政策がない、同感であります。しかし今八月から解除される肥料の統制の問題、これについては六百億なり、七百億といわれる肥料の金融——これは総裁も十分お考えをいただいておることと思いますが、これはやり方次第によつては農村の金がからからになつてしまう。生産資金と、購入資金という両面について、十分お考えと思いますけれども、ごく一端でもいいからお考えを伺いたい。それから恒急的な問題としては、私は農地改革によつて土地の担保力を失つておる。従つて農村の長期金融を考える場合においては根本的に土地の担保金融制度を考えなければならぬ段階に来ておると思いますが、これに対する総裁のお考え、それから中間的に一番今われわれがやかましく言つてつた一向動きませんのは、見返り資金の農業に対する投資の問題であります。これはいろいろ御心配をいただいておると思いますけれども、この方向についての御見解がお漏らし願えれば、この三点だけお伺いいたします。
  85. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 肥料金融につきましては、特別に、この公団が廃止された措置といたしまして、大体私はやはり肥料は日本は農村で使う、こういう建前をとる。それでこの金融は、やはり農林系統の金融で主としてやつたがよろしい。それで七割は農協系統で受持つ。そしてその所要資金は農林中金から引続いて金を出す。農林中金が不足すればめんどうを見る。あとの三割くらいは今度できておりまする問屋で扱う。問屋はきわめて信用が薄い。肥料会社自体がなかなか渡せぬとい問屋が多うございます。これは実際肥料会社が信用して渡した問屋なら、商業手形の割引ができはしないか。それからある程度は信用の関係から、工業会社自体でストツクを持つてつたらどうか……。ストツクとして、たとえば春持つてつて秋に必ず肥料は消費される。ただ時間的な関係があれば、それは金融もつけて、ある程度は持つてつたらどうか。こういうことで肥料の金融は片づくことになつておる。  それからもう一つは土地の担保金融、これはとにかく土地が担保力を持たずして不動産金融ということはむりです。これはどうしても改善を加える必要があるでしよう。私はこれについてはいろいろな点で詳しくありませんから、何かの意見を申し上げられませんけれども金融的に見れば、不動産に担保力を持たすとすれば、金融しようということはいいと思います。  それからもう一つ見返り資金ですが、見返り資金を農村へ、というより、むしろ預金部資金を大いに運用したら、特に私は農協あたりが長期資金を出すために債券を発行する場合に、なぜ預金部資金を出さないかという疑問を持つておるのです。これは農村の人は郵便局に預けるのが大体において多いと私は思いますから、そういう資金を農村に還元するのは一番筋が通つておる。それでこれは長期に使えるのですから非常にいい、こういうように思つております。しかし見返り資金を農村に使うこともちつとも支障ありませんが、できれば預金部資金がかりに使えぬから見返り資金を使おうとすれば、預金部資金で片がわりして、見返り資金を余らして、そいつを農村に向けるということはさしつかえはない、けつこうなお考えだと思います。
  86. 圖司安正

    圖司委員長 他に御質問がなければ本問題に対する質疑はこれにて終了いたします。     —————————————
  87. 圖司安正

    圖司委員長 引続き本委員会に付託されました請願の審査に入ります。日程第一、第二、第五は同趣旨のものでありますから、一括紹介説明を求めます。
  88. 永井英修

    ○永井(英)委員 紹介議員が欠席でありますので、私からかわつて内容を申し上げます。  一、二、五は肥料値上げ反対に関する請願であります。  第一は、紹介議員は佐々木盛雄君で、請願人は兵庫県の協農連合会の十三組合、それから神戸市の同じく農協連合会の十三組合、それから第二は紹介議員は金塚孝君で、次城県の県会議長島津三郎君からの請願であります。第五は紹介議員本多市郎君で、請願人は長崎県北松浦郡の上志佐村の農協外三箇村の農協代表であります。  請願の趣旨は今回の肥料消費者価格の二〇%ないし三五%の値上げは、全農民の犠牲において肥料補給金の全面的打切りを実現せんとする政策の端緒であり、八月以降八〇%値上げを前提としての行動である。ここに肥料メーカーの温存保護の役割を果した補給金の撤廃によつて生ずる影響は、業者の負担によつて償うべきが当然である。農民の犠牲において行われることはまことに遺憾である。肥料消費者価格の値上げが飯米農家に対し致命的影響を與えることはいうに及ばず、物価の趨勢により供出米もパリテイ計算で値上げされるであろうが、現在の算定方式では、これらの値上げは正確に反映しないのみならず、飯米農家と供出農家とり不均衡を来すことは明らかであり、よつてわれわれは全農民を代表して政府に値上げ反対を請願するものである。これが値上げに反対する請願の要旨であります。  以下二つの請願書も同様な趣旨であります。
  89. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまの請願につきまして、政府の意見を求めます。
  90. 河野通一

    ○河野説明員 肥料の価格をできるだけ低位に算定いたしまして、農村経済の安定をはかることは、政府といたしましてもきわめて必要なことと考えております。これがため従来肥料に対しましては、御承知のように相当多額の補給金を支出して参つたのでありますが、戰後五年を経過いたしまして、肥料産業に対する生産設備の復興等も相当順調に進んで参つております。また原材料の輸入等につきましても、円滑に進んで参つておりますので、おおむね需給が均衡の域に達したというふうに考えまして、先般八月一日からこの肥料関係の公団を廃止いたしまするとともに、配給統制及び価格統制を撤廃いたすことに決定いたしたわけであります。今後は肥料の価格は、今申し上げましたような、公定価格を廃止いたしますと、当然需給の関係でかわつて参ることに相なるのでありますけれども、肥料生産は御承知のように相当上昇の途をたどつておりますのみならず、肥料産業自体合理化も着々進展して参つておりますこと等を考えますると、このたびの補給金を削減いたしました程度、つまり昨年の価格に比べまして、大体補給金を削減したものは七割くらいになるわけでありますが、この七割程度まで上るということはおそらくあるまい。農村の経済に対してそう強い影響を與えることはあるまいというふうに考えております。なおお話のように、この肥料の値上りによつて生じました農村の生産コストの上昇に対しましては、米価あるいは麦価等につきまして、パリテイの計算のうちに織り込まれて参るわけであります、織り込み方のよしあしの問題はいろいろあるかと思いますけれども、十分この点は実情に即するように、パリテイの計算にあたりまして反映せしめ、必要に応じてバツク・ペイいたしたいというふうに考えております。     —————————————
  91. 圖司安正

    圖司委員長 日程第三、価格差益金徴收延期に関する請願紹介を求めます。永井英修君。
  92. 永井英修

    ○永井(英)委員 紹介議員は星島二郎君でありまして、請願人は立花実君外二百六十二名であります。紹介議員がおいでにならないので、私がかわつて請願の要旨を申し上げます。  請願の趣旨は、未納価格差益金は、繊維界特に既製服業界の不振と金融難の実情にかんがみ、特に今後三年間徴收を延期してもらいたいという趣旨であります。
  93. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまの請願について政府当局の意見を求めます。河野説明員。
  94. 河野通一

    ○河野説明員 価格差益金の徴收は、御承知かと思いますが、実は去る六月一日から大蔵省所管に移されつつあるわけでございまして、的確なことは申し上げかねるかと思いますが、従来安定本部において取扱つておりました経過にかんがみまして、簡單に政府当局といたしまして所見を申し上げたいと思います。  実は価格差益金の徴收につきましては、單に今お話の纎維、ことに洋服等につきまする纎維ばかりでなく、いろいろな物資につきまして、やはり価格差益金の徴收を延期ないしは免除ということが、いろいろ議論せられて参つてつたのであります。政府といたしましては、従来からなるべく実情をくみまして、具体的に個々の問題としてこれを処理して参りたいという方針でおりましたが、單に今お話の衣料についての価格差益金だけを、徴收を延期するというわけには参りません。いろいろな物資につきまして同じような事態がありますし、いわんや今三年間必ず延期するというようなことを、政府の行政事務といたしまして、ここでお約束するわけにはちよつと参りかねるようなわけであります。しかしながら実情を十分考慮いたしまして、御趣意に沿い得る点は、できるだけやつて参りたい、かように考えまするが、三年延期ということをお約束するわけには、ちよつ政府とし参りかねると考えております。     —————————————
  95. 圖司安正

    圖司委員長 次に日程第四、労務用物資対策に関する請願につき紹介を求めます。深澤義守君。
  96. 深澤義守

    深澤委員 請願は富山、石川、岐阜、靜岡、愛知、三重の地方労務用物資協議会労使の代表の請願でありまして、紹介議員は柄澤登志子君でありますがかわつて請願の趣旨を申し上げたいと思います。  請願の趣旨は、最近における経済事情の変化並びに物資流通制度の変化によつて、労務加配というものが当初行われた趣旨が非常に減殺されておる。だから実情に応じて、この労務加配の方針を再検討してもらいたいということが、その趣旨であります。内容といたしましては非常にたくさんありますが、大体において配給するところの主食、衣料品その他の種類、あるいはタバコ、あるいはその他の品物に対して、もつと価額を低廉にしてもらいたいということと、それからその業態及び季節に適応するような品種を配給してもらいたいというようなことが中心の趣旨であります。この労務用物資配給についての経済事情並びに物資の流通事情の変化に基いて、十分実情に即してやつてもらいたいということが、その請願の趣旨であります。
  97. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまの請願について政府当局の意見を求めます。河野説明員。
  98. 河野通一

    ○河野説明員 労務用物資の特配と申しますか、配給量の増加及び配給される物資価格の引下げというのが、今の御請願の要点であるかと思うのでありますが、この前者につきましては、労務用特配物資というものが、勤労者の生活、ことにその生産増強に対して相当重要な意味を持つておりますることにかんがみまして、先般来当安定本部といたしましても、この点非常に大きな関心を持つておりました。これがため中央及び地方には、それぞれ御承知かと思いますが、労務用物資の配給に関しまする協議会を設けて、これらの点を具体的に今審議し、できるだけ実情に沿うように配慮して参りたいというので努力いたしております、ただ後者の点につきましては、つまり労務用の特配物資につきまして特別の価格をつくるという問題でありますが、この点につきましては、結局公定価格のあるものにつきましてはもちろんでありますが、公定価格がなくなりましたものにつきましても、一方のそういう特配物資の値を下げるということにいたしますると、その他の一般の消費物資につきまして値を上げるか、あるいは一般のものの値を上げないかわりに、国庫でこれを持つかという問題が起つて参るわけでございます。前者は一般の消費者に対して非常な値上りを来す影響を與えることになるので、好ましくないという点がありますし、後者ににつきましては、結局財政負担という問題に相なつて参るわけでございます。金額はもちろん大したことではありませんけれども、現在の財政状況からいたしますると、この労務用物資の特配いたしましたものの価格を下げることによつて生ずる業者の損失を国庫で補填するということは、ただいまのところ困難かと考えております。
  99. 圖司安正

    圖司委員長 この際お諮りいたします。本日の請願日程中第一ないし第二、第五の各請願は、いずれもその趣旨において至当と認められ、政府において適当にその措置を講ずべきであると思われますので、いずれも院の会議に付して採択の上、内閣に送付すべきものと議決し、残余の請願については、さらに審議いたす必要がありますので、これを延期することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  101. 圖司安正

    圖司委員長 なお陳情書の取扱いについては、委員長に御一任願いたいと任じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 圖司安正

    圖司委員長 それではさようとりはからいます。     —————————————
  103. 圖司安正

    圖司委員長 なおこの際閉会中審査の件についてお諮りいたします。本委員会におきましては、本会期の初めに国政調査の承認を得まして、物資生産、配給及び消費、労働、物価財政金融、外国為替、貿易、建設、輸送等経済の安定に関する総合的基本問題に関し、あらゆる角度より審議をいたして参りましたが、会期終了も目前に迫つておりますので、閉会中もなお継続して審査を行いたいと存じます。また経済の総合基本計画に関連し、重要産業の実態調査、管区経済局、地方経済調査局及び公団監査の実情調査及び国土総合開発に関する実地調査も行いたいと存じます。つきましては委員派遣の承認を申請いたす前に、国会法第四十七條第二項の定めるところにより、経済の総合的基本計画及び国土総合開発に関する件、事業者団体法に関する件、協同組合制度に関する件、電力に関する件及び経済緊急政策に関する件等の諸問題につき、閉会中も継続して審査することを院議に諮る必要がありますので、その旨議長に申し出でたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認めます。なお閉会中の審査申出書の作成その他については、委員長に御一任願いたいと存じます。  次に委員派遣の承認申請の件について御諮りいたします。閉会中の継続審査が許可になりましたならば、さつそく委員派遣の承認申請をいたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。なお派遣期日、派遣委員の人送、申請の手続等につきましても、これまた委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十九分散会      ————◇—————