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草葉説明員 最近の
国際情勢の中で特に重要と思われます
動向を御
報告申し上げたいと思います。
まず
国際連合でございますが、第五回
総会が先月の十九日から
目下開催中でありますが、今回の
総会におきましては
朝鮮問題が
中心とな
つた感があります。ことにこれに関連いたしまして、
国際連合総会の
権限強化案が強く取上げられて、
目下審議をされておる
状態であります。先々月の末に
朝鮮の
統一及び
復興に関する
イギリスを含む八箇国
提案が出されまして、先月の七日の本
会議で四十七対五票をもちまして通過され、この問題がその後
国際連合強化案を強く示して参つた次第でございますが、実は今回の
総会の翌日、九月二十日に
アチソン・アメリカ代表から四
項目の
国際連合強化案が提出されまして、これを基として平和のための
統一行動の
決議案が七箇国の
共同提案として、ただいま申し上げました十月七日の本
会議に上程されました。翌日から
政治委員会で検討され、十月十八日、
各項別の表決によりまして多数でこれを採択され、その翌日の十九日に
平和監視委員会、
集団保障処置委員会の
構成国が決定されますとともに、これが一括上程されまして、五十対五票の絶対多数をも
つて可決されて、
総会の本
会議に回付されておる
状態であります。その
内容は前文と十五
項目からなります
内容と、最後に
付属書で現在の
総会の
手続規則の改正がなされておりますが、その中で特におもなる二、三の点につきましては、第一項にあります平和に対する脅威が発生して、あるいはまた平和の破壊なり
侵略行為が行われました場合、
安全保障理事会が五大国の意見の不一致でその責任を果し得ない場合におきましては、
安全保障理事会の七箇国の
單純投票または
国際連合加盟国の過半数の要求に基きまして、二十四時間以内に
緊急総会を開くことができるといたした点。第二の点は、第三項にあげておりまする十四箇国からなる
平和監視委員会を設置しまして、
国際的緊急状態が存在いたしまするいずれの
地域にもこれを派遣して、
監視、
報告させること。第三の点は、第八項に出しております全
加盟国は自分の国の軍隊の中に、
安全保障理事会または
総会の指令のもとに、
国連軍として行動し得ます
部隊を各国の憲法に即した
方法で設置するという点。次の点は、第十一項に出しておりまする十四箇国からなる
集団保障処置委員会を設けまして、国際平和と
安全保障を維持するための
方法を検討し、来年九月一日までに
安全保障理事会及び
総会に
報告する。こういう点が現在
内容といたしておる問題であります。これによりまして従来の
国際連合総会が、場合によりましては
安全保障理事会が
動きがとれぬように
なつた場合に、これに
肩がわりをし得る
情勢を呈し得ることと相なりまするので、
総会の
相当の
権限強化と相なることと存ずるのであります。
次に
朝鮮問題の最近の
情勢でございますが、九月十五日に仁川に上陸いたしました
国際連合軍の
作戰がその後着着と成功いたしまして、現在のような軍事的には成功を
收めている次第でありますが、これは九月三十日に
国際連合の
特別政治委員会に上程されました、ただいま申し上げました
朝鮮の
統一及び
復興に関する
イギリスを含む八箇国の
提案が七日の本
会議で圧倒的多数で可決されまして、
従つて国際連合軍は
北鮮三十八度線を越して進んで参る
情勢に相なり、去る二十日には
北鮮の首都でありました平壤が遂に陷落しまして、これで一応
軍事的段階は終末に近づいて来たと観測される次第でございます。今後は主として
経済再建と
統一政府樹立の準備に重点が移
つて来ておると見てさしつかえないと存ずるのであります。八箇国の
提案は
朝鮮の
戰後処理に対しまする
国連の方針を決定いたしたもので、この
決議の
具体化には今後なお多くの問題が残されておりまして、
国連の
軍事的勝利を
政治的勝利に発展させますることが今後の課題であると思われるのであります。
北鮮に対する
行政権の問題でありますが、三十八度線を越しましたその後
韓国政府は
北鮮に
相当行政官を派遣したようでありますが、
国連の
朝鮮中間委員会の勧告によりまして、
韓国政府の権限は認められないことになり、また
国境地帶の占領につきましては、数日前トルーマン大統領の記者団会見におきまして、主として
韓国軍が当るだろうという言明をなされたようでございまするが、南北
統一の選挙によ
つて朝鮮に自由に選挙された
政府を樹立することが、今後の
国際連合の最終の目標と考えられるのであります。さきに申し上げました
決議に規定せる総選挙は
北鮮だけでなさるべきものか、
北鮮だけを意味しておるものか、あるいは全鮮を通ずる選挙であるかという点につきましては、なお明瞭でない。今後に問題が残されておると存じます。アメリカは御案内の通り、
朝鮮処理六箇條で、一応選挙は
北鮮だけで行われ、南鮮で行われました百の議席を満たすというように伝えられておつたのでございますが、最近のこの問題に対しまするオースチン・アメリカ
国連代表の言辞にもありまする点から察しますると、李承晩政権の将来につきましては、至
つて消極的態度であるのではないか、ことに
国際連合中間委員会が十二日の会合におきまして、
北鮮を
韓国政府の権限下に置かずに、
統一政府の構成を決定する全
朝鮮を通ずる総選挙まで、
国連軍総司令官の権限下に置いて、
国連の
北鮮民政機関に各
国連軍代表が参加するという趣旨の勧告を決定いたした。そしてそれをマツカーサー元帥に勧告通報したようでございまするから、従
つてその選挙の問題につきましては
朝鮮委員会の任務に関することでございますし、かつまた
朝鮮統一再建
委員会も発足しておらない現在であり、軍事行動の終結もまだはつきりいたしておらないところでございまするから、今後の
朝鮮委員会の任務において検討されることと相なると存ずるのであります。最近インド支那の
情勢につきましていろいろ伝えられておりまするが、例年十月の雨季明けになりますとこのような
情勢を呈しておつたのでございまするが、ことに本年はホー・チミン軍が九月十六日の拂曉に、
中国との
国境にあります仏軍の前哨拠点とな
つておりますドンケーに、約四、五箇大隊からなる攻勢を開始いたしまして、十八日にそれを占領、続いて九月二十六日にパカー、十月三日にカオバン、十月十七日にはドンダンと次々にだんだん占領いたしまして、二十一日には
国境方面仏軍司令部のありますランソンを占領されるに至つた。だんだんと
国境方面を占領して参つた。この今年のホー・チミン軍の攻撃
状態を考えますと、従来は多くゲリラ戰法を主としてや
つておりましたのに、今年は大砲もあり、その他
相当の重装備の大
部隊による攻撃をしておる。しかしこの攻撃をも
つて全面的な仏軍に対します総攻撃を意味するということよりも、むしろ
国境地帶から仏軍を排撃するというのが眼目ではないかと考えられるのであります。この
状態に対しまして、フランスの
政府は事態の重大性にかんがみて、本国から、あるいは軍首脳部あるいは増援
部隊を急派し、またアメリカ
政府におきましてもこの問題に
相当重大なる関心を拂いまして、マーシヤル長官は十月十三日にインド支那に対する軍事援助
物資の急速な引渡しに全力を盡すことを保障したと伝えておりまするし、その他軍事援助費等の援助もいたしまして現在に及んでおるようでございまするが、しかしこの
状態に対してアメリカの軍隊を派遣するかどうかという点につきましては、十月十一日フランス
政府は米軍の派遣を要請する計画はないと言明いたしておりまするし、また先般十五日行われましたトルーマン大統領、マツカーサー会談におきましても、インド支那にアメリカ軍は派遣しないという政策に変更はなくして、中共がインド支那に侵入した場合にのみアメリカの態度は変更し得るということに意見が一致したと伝えられておりまするような点から考えまして、現在の
情勢において、ただちにさようなことはないものではないかと考えるのであります。フランス及びホー・チミン軍のこの
動きに対しまする————中共の
動向につきましてはフランス首相のプレヴアンは十九日の議会におきまして、中共がホー・チミン軍に積極的援助を
行つておると言明はいたしておりまするが、しかし中共軍が参加しておるという情報はないのでありまするから——現在国府筋の情報によりますと、
国境地帶に中共軍が十五万程度集結しておるような情報もございまするが、参加をしておるということはいまだ考えられないのではないかと存じます。従来ホー・チミン軍は正規軍が約八万、
ゲリラ部隊が約十万ないし二十万と称せられております。
国境地帶だけでもよく訓練されました武装された約三万の兵備があるといわれておりまするのに対しまして、仏軍は十五万のうち約三分の二が北部インド支那に投ぜられておるようでありまするが、その装備は必ずしも良好ではないようでございます。
西ドイツの再軍備の問題はいろいろな意味におきまして
相当論じられておるのでございまするが、御案内の、九月ニユーヨークで開かれました三国外相
会議、第五回北大西洋
理事会、また三国外祖国防相
会議というような
方面におきましてこの問題が活発に討議され、先月の二十四日にワシントンでの北大西洋條約軍事
委員会でさらに討議されましたが、結局は具体的結論に達せずに、現在は去る十月二十八日から開かれておりまする国防
委員会が引継いで、国防
委員会で討議を続けておるようでございます。この西ドイツの再軍備につきましては、アメリカは大体西欧防衛態勢を急速に活発化するという観点から、西ドイツを含む強力な西欧防衛軍設置を主張いたしておりますのに対して、フランスはドイツの復活を恐れる根強い国民的感情から、まず英仏軍の
強化を第一に主張いたしまして、西ドイツ再軍備反対の立場をと
つておるようでございます。
イギリスはその両者の
ちようど
中間的な立場をと
つておると考えられます。フランスは去る二十四日の国民議会におきまして、プレヴアン首相が西ドイツ再軍備にかわるいわゆる西欧防衛軍設置というものを
提案し、国会で可決いたしました。現在この案が防衛
委員会の討議に付されておると思われますが、そのプレヴアン案の
内容といたしておりまするところは、第一は政治的、軍事的に單一な指揮系統のもとに、欧州諸国の兵力を統合いたしまして、
統一欧州軍を各国の国防軍のほかに設置する。第二の点は、三箇国
政府で欧州防衛相を任命する。第三の点は、各国が供給する
部隊はなるべく最小限度にとどめる。第四は、財政は三箇国の共同予算でまかなう。第五は、欧州軍の
目的は、北大西洋同盟の任務を遂行するにある、いわゆる任務にのつと行て行動する。これが大体ただいま申し上げましたプレヴアン案の
内容と思われますが、これが実施にあたりましては、あるいはシユーマンプランの協定の調印なり、あるいは防衞相の任命なり、あるいは西欧防衞相の上に立つ議会の設置なりというのが前提各條になると考えられますので、それがない限りにおきましては、
簡單に西ドイツの再武装の可能性はないことになると存じます。二十六日
終了いたしました軍事
委員会は、一九五三年を目標にいたしまして、西欧に七十箇師団設置の勧告案を作成いたしたのでありますが、ただいま申し上げましたフランスの
提案に対しましては、意見が一致せずに、二十八日から開かれております防衞
委員会に持ち越されながら、現在討議を続けられておる
状態と存じます。
これに対しまして、去る十月の二十日から二日間プラーグでいわゆる東欧八箇国外相
会議というのが開かれまして、主として
ソ連の衞星国及び
ソ連を含んだ東欧八箇国
会議でございますが、
ソ連からはモロトフ副首相が出席しておる点が特に注目される点を思います。今回の
会議は、九月にニユヨークで開かれました三国外相
会議の西ドイツ再武装に関連します問題が
中心問題と思われておるのであります。それが済みましてからの共同発表のコミユニケによりますと、三国外相
会議は、ドイツの戰争
状態停止を宣言することによ
つて、三国のドイツ駐兵継続をカモフラージして、対独平和
状態の遷延を策するものである。また軍需産業の再興、警察組織の
許可、ドイツに再軍備等を與えて、これによ
つてドイツの軍国主義の排除と、平和民主国家としてのドイツの再興を目標として来た米、英、仏、ソ四箇国の申合せを、まつたく蹂躪してしまつたというような意味の、長々としたことを申しながら、特に左の四点について、強くその急務を述べておるようでございます。
その第一点は、いわゆる米、英、仏、ソ、の四箇国
政府が、ドイツが再武装し、侵略的計画へ参加することを許さないこと、及びポツダム協定を
嚴重に履行するという声明をする。第二はドイツの平和経済の発展を妨げる一切の障害を除去いたしますとともに、ドイツの軍事能力の復活を禁止する。第三は
統一ドイツの再建をする。第四は全ドイツ連邦
政府の樹立と、講話條約審議への参加。今回のこの東欧八箇国外相
会議は、前回一九四八年六月、ポーランドで開きましたものと、ほぼ同様でありますが、西欧の
動きに対しまして、ドイツ再軍備が
中心に取上げられ、これに対抗するために全力をおげておることを宣言した点が、今回の
中心の一つの目標であるようにも思われます。
最後に対日講話の点について一言申し加えておきたいと思います。この問題につきましては、いわゆるアメリカの草案というのが、交渉の基礎として七
項目をあげられ、その第一は
手続の問題、いわゆる対日戰に参加したすべての国は條約調印の権利を有するというような意味の
手続の問題。第二は
国連加入の支持、
日本が
国連加入の資格を得次第、
日本の加盟を支持する。第三は領土の帰属の問題、小笠原、琉球はアメリカの信託統治にし、
朝鮮は独立する、この点を
日本は承認する。
台湾、
千島、樺太は米・英・仏・ソ・中で決定して、それが一年以内に確定を見ない場合は、
国際連合総会で最後の決定をする。第四の問題は、
日本の
安全保障の問題、
日本が自分の軍隊で保障できるまでは、これについては
日本はアメリカと協力をする。第五の問題は国際條約を遵守する。第六の問題は、
賠償については、一九四五年九月二日以前発生したあらゆる
賠償権はその請求権を放棄する。第七は
賠償に関する今後の紛争は、国際裁判で解決する。こういういわゆる基礎七
項目に対しましては、まだ各国の反響は十分に現われておらないのでありますから、申し上げる点もないのでございまするが、ただ再軍備の問題につきまのてフイリピン、ニユージランド、オーストラリア
方面に難色があり、インドは米軍あるいは
国連軍が調印後
日本にとどまることは、主権の侵害であるというようなふうに伝えられておる程度でございます。
以上その三、四につきまして申し上げました。