○植原
委員 これはたいへん重大な問題だと思いまして、私が発言を求めたのですが、
田中最高裁判所長官の大阪における発言、または廣島における発言が問題に
なつておりますが、私はこういうふうに了解しております。その了解が間違
つておるならば
政府で間違
つておるとおつしやれば、問題はきわめて明朗になると思います。
田中最高裁判所長官の大阪における発言は、自衛権にからま
つておる問題です。
国家の自衛権はいかなる場合においても存在する。それゆえに自衛権の必要上、どうしても義勇軍があればそれは認めなければならない。こういう御
意思で述べておるのだと思います。そこで朝鮮の問題にからんで、いろいろ言
つたところに問題の誤りがありはせぬかと思います。その朝鮮の問題は仮定である。もし朝鮮に今日共産軍が侵入したことが、
日本の自衛権の発動を要するという場合においては、それは認めなければならないと、こういうようなふうだと思います。しかし、朝鮮は
外国の国土でありますから、そこにおいて
日本の自衛権が発動できるということは間違いじやないか。自衛権ということは、
日本の国土の中において持つことであ
つて、そこで新聞記者が誤解したか、あるいは
田中最高裁判所長官が言い過ぎたかという問題で、実際
日本の国土が侵されて、どうしても義勇軍のようなものがなくては守れないという場合には、私はたとい憲法の
規定があ
つてもそれはよろしいと解釈すべきだ。その
意味において
田中最高裁判所長官は言われたのが、たまたま朝鮮の問題に関連したので、いくらか誤解を招いた、それを廣島において訂正された、こう私は解釈しております。そこで、もう一つ、総理の、たとい要求されても義勇軍は出さぬ、また出すつもりはない、これは私は正しい見解だと思います。
日本の現在の憲法、これは仮定も何もいらない。
日本の
国民は、憲法が存在する限りはこの憲法を守らなければならぬ。その憲法の
規定、精神において、
日本は義勇軍を出すというようなことはできないのだ。ただそこに問題となるのは、今日
日本は被占領
国家で、自由のない国だが、朝鮮の問題は
日本にも非常に大きな関心事、直接
日本には
関係がなくても、
日本の将来を
考えれば重要なことであるので、もし国連が
日本に義勇軍を要求するということに
なつたらどうかというようなことをみな仮定されるので、そこに問題が起ると思うが、私は、さような仮定においても要求はないと思う。なぜかなら、
日本の憲法を守らなければならないということであるなら、さような
日本の憲法の上において、
日本の憲法をみずから破らなければならないようなことは国連においてもしない。さようなことを仮定することが間違
つてお
つて、今日の憲法の間においてはさような義勇軍の問題はない。これが法理上の問題である。もう一つ、実際問題として、今日
日本がしばしば過去において誤解されていることは、
日本は軍国主義者だ、いくさが好きだ、こういうことの誤解がややもすれば東南アジア諸国に特に多い。これは非常に誤解されておる。これが
日本の
講和條約の締結を遅らせた一つの
理由であるとも解釈され得る
理由がないではないと思う。そういう点で、
日本が今日
講和條約の促進を希望するという、これが
日本全
国民の意見であるならば、これは実際問題としても、さような立場に
日本は立たなければならぬ。
日本は断じて義勇軍は出さぬ、また要求されても出さぬ、これが正しいことである。但し
日本は朝鮮問題に対して国連が一生懸命や
つておる、これに対して無関心でおるわけには行かないし、国連が一致して、ほとんど五十二箇国もこれを支持するという
状態に
なつたことは、
日本としてはむしろ感激することであり、喜ぶべきことである。これに対して
日本ができ得ることならばこれを支援するという立場をとらなければならぬ。そこで、この問題は道徳とか精神とかいうことよりは、こういう言葉を用いればもつとはつきりするだろうと私は思う。連合国は
日本の国法を承知されて、
日本の今日の立場をすべて了解しておることと思う。その立場において
日本に要求するものに対しては、
日本は喜んでこれにこたえて応ずる。これで盡きるじやないか。道徳的も物質的もありはしない。もし向うが要求すれば、その要求に
日本は喜んでこたえる、それで盡きるじやないかと思う。そういうふうにして今の解釈をと
つて行けば、
田中最高裁判所長官も多分私はさようであると信じておるが、
日本の
国家を守らなければならない、
国民を守らなければならないという場合には、憲法のいかんにかかわらず、義勇軍組織をしてこれに当
つてさしつかえない。しかしこれは国土における自衛権が侵された場合で、朝鮮における
事件に対して自衛権を認めるなんということは、これはできぬ。で、
日本は憲法上において戰争を放棄している。
従つて、軍隊を持たない。しかしマツカーサー元帥の言われた
通り、自衛権の発動を否定するわけには行かない。自衛権の場合には武器を持
つて立
つてよろしい。それは義勇軍という名にしようとも、名にせざるとも。そういうふうにすれば
田中最高裁判所長官の御意見に対しても、たいがい事は明瞭になる。総理の、義勇軍は送れないということも、憲法の立場から、また実際問題を
考えてもそう思う。そこで今條約
局長の言われた、新條約ができなければわからぬと言うが、今みんな聞いていることは今の問題で、新條約ができるかできないか、そんな問題を今日ここで問題にする必要はないことだ。そういう立場に行けばすべての問題が氷解されるのではないかと私は
考えるがもし
外務省はそれと違
つた意見をお持ちならば別だが、その解釈を聞きたい。