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秋山説明員 第六次造船の問題が
新聞にいろいろ出ておりまして、皆さんにもいろいろ御心配を願
つておると思うのであります。新造船計画の必要なこと、また特にわが国の戰後の海運界におきまして、大型の遠洋鋼船が必要であるということにつきましては、しばしば御
説明申し上げたところでございます。われわれといたしましてはその事態にかんがみまして、見返り資金の融資をなるべく多額に受けまして、そしてできるだけ急速に遠洋適船を建造いたしたい、か
ように
考えまして、およそ二箇月ばかり前から、金融
情勢をいろいろ
考えました。ところがなかなか一般の金融政策の結果といたしまして、現在
民間資金が非常に枯渇いたしておりますので、もし見返り資金からよほどたくさん出なければ、船が十分につくれないという
事情がございますので、去年は五割見返り資金、五割
民間資金ということで建造計画を進めたのでございますが、今年はどうしてもこれを見返り資金七割、
民間資金三割ということで行かなければ、とうてい所期の造船ができない、か
ように
考えた次第でございます。従いましてまずとりあえず第一段階といたしまして、見返り資金の計画の中に予備費六十三億がございましたので、この六十三億を全部海運造船に使わしてもらいたい、か
ようなことに折衝いたしまして、了承を得て、六十三億全部を造船に使う。その七割を見返り資金から出し、あとの三割を
民間資金から出す、か
ように計画いたしたのでありまして、その場合に建造いたすことのできます船腹は、大体約十七万総トンであ
つたのであります。しかしながら現在アメリカの港も開かれまして、また各
方面の国々から
日本船を入れてよろしいという承諾を逐次得ておりますので、それではとても足りませんので、何とかして、少くとも造船所の能力のあります限度、およそ現在能力と
考えております三十万トン程度までこれをふやしたいと
考え、また第二次の見返り資金から二十九億を出していただきまして、これまた七対三で融資して、三十万トンのうちに、小船が二万トンほどございますので、残りの二十八万トンを建造いたしたい、か
ように要請いたしてお
つたのでございます。なぜ
民間資金が十分でないかというお話でございますが、これは現在の財政の
方針からしまして、見返り資金及び郵便貯金、こういうところへ非常に多額の資金が吸收せられるのでございまして、一般の
民間銀行に対する預金が非常に少くな
つているのでございます。しかもこの見返り資金の使い方に対しましては、非常に嚴重な制約を受けておりますし、預金部資金のごときは産業資金には放出できないということにな
つておるわけでございます。従いまして
民間の預金がふえないで、そして資金の需要が非常に多いものでございますから、
民間の銀行といたしましては経済を維持するために、預金の増加の限度を越えるという
言葉は少し強過ぎるのでございますが、預金の増加のうちから適当と一般に
考えられている割合よりも以上に資金を供給して貸出しをしまして、
ようやく金融をつないでおるという
情勢にな
つております。
従つて民間資金が非常にきゆうくつなのでございます。そういつた
ような
事情をもちまして、いろいろと相談いたしたのでございますが、最近に至りまして、一箇月余にわたり愼重討議をしてみたけれ
ども、七割金融するということと五割金融することについては、いろいろと利害がある。七割の融資というのは、大体
政府資金で七割を持つた商船隊をつくるということは、
民間の商船に対する保護が厚きに過ぎるということで、諸
外国の
批判もいかがかと思われる。また
国家資金で船をつくりますと、何とい
つても船主の方の
責任感も比較的軽くなりますし、また造船所の方におきましても、どうもやはり甘えた気持が出まして、造船価格も高くなるという
ようなきらいがある。
従つて見返り資金を七割出すということはどうも適当でないと思う。なお当初この案を立案しました当時に比べまして、
外国航路の再開で、
日本の船がアメリカ
方面へなかなか忙しいのでございます。実は向うのカーゴ・フオーアーに十分船がまわりかねるという事態にな
つておりまして、運賃も他の方に比べますと割合によろしいものでございますから、海運界としても割合に採算がよろしいのであります。また米国以外の各国からもいろいろとクリアランスが来ておりますので一般に見て海運界の前途が非常に明るくな
つて来ている。
従つて当初想定したよりも
民間銀行の海運に対する見方も非常にかわ
つておるのではないか。
従つて当初に見積
つている
考え方よりも、もつと
民間から資金の出る可能性もあるのではないか。こういつた
ような理由で、五割にとどめるべきであるという有力
意見が示されたのであります。わが国といたしましては、金融の面から申しますと、まつたく私
どもは金融の專門家ではごじいませんし、また
責任者でもないのでありますから、この点につきましてはそれぞれ金融
方面の
責任者なり、またエキスパートなりにこれを移しまして、
民間の造船所
方面あるいは船主
方面等に、五割でやらないかということを強く示唆いたしまして、反応を見ておるのでございますが、どうも銀行筋ははなはだ悲観的でごじいまして、この五割五割ではとうてい融資ができない。
従つて今の六十三億で五割五割で融資をいたしますと、約二十万トンの船ができるのでございます。全体として今年、来年を入れまして、海運資金が九十億ほど
民間から調達されるほか、見返り資金から九十億で、合計百八十億ということになるのでありますが、とうていそれだけの見込みはないという、非常に悲観的な
見解が強いのでございます。もしもこの金融界の申します
ように、資金の供給がかりに十分でございませんと、今度は見返り資金がいくらありましても、五〇%しかつけられないわけでありますから、
従つて六十三億のうちに多額の使えない金ができて来る。しかも造船が非常に少いと、造船
業者としましては、たくさんの人を抱えましてとうていや
つて行けませんから、
従つてそこに能力を落すという
事情も起
つて来る
ようなことになりまして、非常にその結果が憂慮せられるわけでございます。目下
政府の上局におかれましても、この問題について愼重に御考究くださ
つているのでございますが、私といたしましてもいろいろと実情を申し述べまして、どういうふうに進むかということを
関係者並びに
政府の
責任者におきまして御考慮を願
つておる、こういつた
ような段階にな
つておるのが、
新聞に出ております第六次造船に関する問題の概要でございます。