○大久保
政府委員 海上保安庁は、
朝鮮事件が勃発いたしますと同時に、諸般の起り得べき問題を
考え合せまして、ただちに必要なる海域の警戒指令を発してお
つたのでございますが、その後マツカーサー書簡を頂戴をした次第で、海上保安庁といたしましては、御
承知のようにきわめて乏しき船艇と、きわめて装備不十分の現況におきまして、
日本の沿岸一万海里になんなんとするこの海域を哨戒警備いたしますためには、きわめて困難なる條件下に置かれておる次第でございます。常日ごろ海上保安庁職員は、きわめて苦しい條件のもとに勤務をいたしておるのでございますが、特にこの事変後におきましては、全員ほとんど不眠不休に近い態勢で
努力をいたしておる次第でございます。しかるに何分に申しましても、陸上におきましては、いろいろこれを援護し得る諸般の
事情が伏在しておりますけれ
ども、海上におきましては、あの広大なる海域において、点点として船を配備して哨戒しております
関係上、海上保安庁の任務達成ということは、まつたく容易なことではなか
つたのでございます。
この
機会におきまして、マ書簡によりまして八千人の増員を許可されたのでございますが、皆さんも御
承知の
通り、海上保安庁は何と申しましても、その船を整備し、これに配乗する人員を充当しなければならない次第でございます。海上保安庁の、マ書簡の
趣旨にこたえ得る今後の課題というものは、実に広汎にして複雑でございます。そこで私
どもの方といたしましては、今後の海上保安の責任を全ういたしますためには、この八千人をどういうふうに使うべきかということにつきまして研究を続け、また
関係方面ともお
打合せいたしておる次第でございますが、ただいまのところ、まだ研究をいたしておるという時期を出ないのでありまして、本日ここに具体的に内容を御
説明する時期までに至
つていないことは、はなはだ残念であると存ずる次第でございます。
なお海上保安庁の諸般の警備態勢といたしましては、
目下海上保安庁は、六十二隻の巡視船を所有いたしております。皆様の御協賛を得まして、海上保安庁が一昨年出発いたしましたときには、わずか二十八隻の巡視船でございました。しかもこれは木造の百トン足らずの、わずか速力八ノツトの巡視船でございましたが、現在はその後逐次船艇を増強いたしまして、六十二隻を所有いたしておる次第でございます。ただこのうち三十五隻は木造船でございまして、まことに装備、性能とも不十分でございましたので、新造船を見返りといたしまして、
昭和二十五年度初頭からこれを繋留いたしまして
使用しない建前に相な
つておりましたけれ
ども、事態はかくのごとき船といえ
どもこれを全面的に活用する必要があると
考えましたので、海上保安庁は即刻繋留しておりましたこの二十隻の木造船も、これを全面的に稼働配備をいたしまして、現在持
つておりまする全船隊、すなわち六十二隻を全幅活用いたしますとともに、太平洋
方面の比較的閑散でありまして、配置がえ可能であると
考えました基地の船艇は、一部これを緊急なる海区に配置がえをいたしまして、新しい警備態勢を敷いておりますような次第でございます。なおまた海上保安庁の各基地の職員、各地方機関の職員は、ほとんど勤務態勢を強化いたしまして、いかなる事態におきましても、即応でき得る態勢を敷いておる次第でございます。ここに現在の
段階における海上保安庁の状況を御報告いたしまして、御
説明にかえる次第であります。