○岩間正男君 私は
日本共産党を代表して
只今議題となりました
予算案に対しまして絶対
反対の意見を表明するものであります。
その前に如何に本
委員会におけるところの
予算審議に対しまして
政府側が非民主的であつたかということは、前の諸君によりまして
お話がありましたのでその点は省略したいと思うのでありますが、ただここで問題にして置かなければならないのは、この
審議遅延の大きな原因をみずから作
つておりながら、その責任をまるで
国会に転嫁するような言辞をしばしば弄しておる。そうして恬として省みない。こういうような態度が持続されるとするならば、これは甚だ遺憾な態度と言わなければならん。ポツダム宣言並びに新憲法の精神を全く蹂躪するものでありまして、強くその責任を我々は追及したいと思うのであります。
本
予算案の性格を検討するために、私達は最近における国内情勢は勿論のことでありますが、
国際情勢、我が国を繞る
国際関係の動向について検討して見ることが必要じやないかと思うのであります。
簡單にこの点に触れて見たいと思いますが、対日講和問題につきましては最近いわゆる外電によりますと、極めて急速な展開をなしておるような動向がございます。この切掛けをなしたものは、去る二月中ソ友好同盟條約にあると我々は
考えるのでありますが、あれ以来アメリカ、イギリスを中心とする欧米諸国家間にも対日早期締結の声が盛んにな
つて来たのであります。又オーストラリア外相スペンダー氏が、全面的講和でなければ不満足であると言われたように、これは早期全面講和の問題として取上げられておるのであります。ソヴィエト同盟副首相のモロトフ氏、それからマレンコフ氏、世界における二大陣営、帝国主義、資本主義陣営と、社会主義、人民民主主義の陣営とは共存が可能であるということをしばしばこれらの人達は申述べておりますが、これに応じましてアチソン米国務長官が、両陣営の共存が可能であるということを言明されておるのであります。然るにこのような
国際情勢に全く反しまして、吉田
内閣を以て代表されますところの
日本の反動勢力は、現在のこの
予算を組むに当りまして、軍事的植民地化の方向に歩を進めるような明らかな方向を取り、これに即応したところの
予算を編成しておるのであります。このような体制の中で、
日本の今の情勢が次に来たらんとする世界大戰、反ソ反共戰の特徴は、極東におけるところの前線基地として強化されるような樣子が起
つておることは外電がしばしば報じておるところであります。このような中におきまするところの
予算の反人民的な性格、反民主的な性格についてはしばしばこれまで我が党の指摘したところであります。それを本
予算の上の指摘して見たいと思うのでありますが、先ず第一に、本
予算案は内外独占資本の要請する軍事産業を復活し、
日本経済を全体として軍事的に再編成して行くこと、そのような方向の挺子としてこの
予算が編成されておるということ、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)又そのためには政治と言わず、
経済と言わず、国全体が自主性を失い、隷属化するような傾向が
はつきり起
つておるのであります。本
予算案の性格は軍事的、植民地的
予算であると先ず言わなければならないのであります。
第二に、当然の帰結としまして内外独占資本家の利益のために全人民、
労働者、農民、
中小企業者、又は民族産業家といわれる産業資本家をも含めまして、全部の勤労者が犠牲を強要されておるのであります。つまり本
予算は大衆收奪のための反人民的
予算であります。このような
予算案の根本性格につきまして、尚具体的に触れて見ますと、先ず歳出の方面においてこれを見ますというと、
公共事業費でありますが、これは二十四年度に比べまして約六割増の九百九十億が支出されることにな
つておりますが、果してこれがどのような方向に使われておるかといいますと、例えば道路
建設五ケ年
計画ということがいわれております。道路の
建設改良は、併しながら主として太平洋岸と
日本海岸を結ぶものに重点が置かれておる。又
地方の産業道路や農村の道路は、このために全く顧みられないというようなことにな
つております。又それ程交通量のないところで、而も並行線のあるようなところに広い大幅の道路ができておる、こういうような傾向が最近強化されておるのであります。これは丁度ヒットラーが政権獲得後に先ず第一に着手したものは何であるかというと、これは公共事業であつたということを我々は想起しなければならないのであります。(「そんなら公共事業を止めたらいいじやないか」と呼ぶ者あり)このようにして名前は公共事業でありますけれども、その蔭には戰争準備への危機が大きく隠されておる、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)こういうところに公共事業そのものを
はつきり我々は検討することが今後においてもこれは十分に必要であるということを指摘せざるを得ないのであります。又河川にせよ、港湾にせよ、海上保安施設の増強にしましても、これが如何なる政治的意図を以て
計画せられ、又使用せられておるかということの問題であります。現在の吉田
内閣を以てしましては、これが軍事的方面に使用される危險性が十分にあることをここで我々は警告せざるを得ないのであります。(「宣伝々々」と呼ぶ者あり)更に
地方財政平衡交付金一千五十億が一体何を狙
つておるか、この交付金の性格について検討を加えます。第一、これによ
つて中央の
地方支配が今後強化される、
地方税法改正で
地方に独立の財源を持たせ、
地方自治を強めるということを
政府は表面謳
つておる。併し事実はこの平衡交付金を以ちまして
地方行政を支配し得るような体制を強化しておるのである。又この交付金の分配に当りまして、
地方財政
委員会がその権力を握ることになるのでありますが、この
地方財政
委員会そのものが、果して人民の意思を代表して、これによ
つて構成されるものかどうか、今まで数多くの
委員会というものが終戰後作られたのでありますが、これらの
委員会そのものがどのような性格を持
つて来たかということを我々はここで思い起せば
はつきりこのような性格を今から指摘することができるのであります。又交付金は、例えば全国十四ケ所の特別
開発地域のように、軍事的重要地点に重点的に配分することも、このようなやり方によ
つてこの
委員会の運営如何によりましては
可能性が出て来るのでありまして、こういうような平衡交付金につきまして十分なる検討の目を向けなければならないと思うのであります。
第三に問題になりますのは、他の同僚諸君からもしばしば繰返された
債務償還の問題であります。この見返
資金を含めまして約一千二百三十億に上るところの巨大な
債務償還は、要するに金融機関、特に銀行手持の国債を買上げることになるのでありますが、この点は言うまでもなく金融機関の
資金を豊富にし、金融による産業支配を著しく強化するものであることは明らかであります。而も最近のように
経済恐慌の形が
はつきり現われておる、人民の生活が非常に極限まで追い詰められておる、こういうさ中におきまして、このような
債務償還が行われておるものは、この性格につきましては、心ある者は何人と雖もこの乱暴な
措置に対しまして、激しい憤りを感ぜざるを得ないのであります。而も二十五年度におきまして
償還期限の到来しておる国債は一体幾らあるか、これは僅かに八億三千万円に過ぎない、そういうようなのにも拘わらず、それに何百倍するところの厖大なる国債を返還するのでありますから、この政策が如何に反人民的であり、又独占資本位の露骨な政策であるかということは、私がここで指摘するまでもないことであります。その外に尚
終戰処理費、価格
補給金、司法警察費、徴税費などの反人民的な、弾圧的な費目が挙げ得るのであります。
ここで特に附言して置きたいのでありますが、先にもちよつと触れました対日
援助見返
資金の問題であります。アメリカの対日
援助資金というものは我が国にと
つて有効なる
債務であるということは、これは周知の
通りであります。先程の蔵相の
答弁でも明らかであり、本
委員会におきましても、しばしば繰返されたところの問題であります。これのそれに見合うところの円貨を積立てましてこの見返
資金ができておるのでありますが、これは明らかに
日本国民での懐からできたものであります。この点につきましては吉田総理の、質問に対する諸種の
答弁によ
つても明らかにな
つており、又両院におけるところの質問の中におきましても、蔵相は明白に、見返
資金は
日本国民のものであるということを断言せられておるのであります。即ち
援助物資を国民に売拂つた代金と、国民の税金によ
つてできておるところの輸入
補給金とを積立てたものが見返
資金でありますから、これは当然そのことは言うまでもないことである。だが先程の補充質問の中でも繰返したのでありますが、この見返
資金の運用の方向、ここが非常に大きな問題である。
日本国民のものであるならば、これは
国会で当然この運用につきましては十全の責任を負わなければならないのでありますけれども、現在はどうな
つておるか、
政府が負うということにな
つておりますけれども、併しこれは名目だけでありまして、これにつきましては一々大きな
制限の前に我々は晒されておるのであります。こういうような見返
資金につきましては十分に我々は今後国民的な関心を深めて行かなければならん。今日この問題について十分な検討がなされ、関心が持たれるというような段階には至
つておらないのでありますけれども、我々は殊に長期
資金が非常に欠乏して今後この見返
資金の占める位置というものは
日本経済の中において甚だ重要な位置を持つものでありますから、これに対して深い関心を持たなければならないと思うのであります。先程も問題になり後程上程されると思うのでありますけれども、このような見返
資金が例えば連合軍用の
住宅建設のために五十二億も使われておる。こういうような使用の方法につきましては、我々はこれに
反対せざるを得ない。
日本国民の金が我々の自由に使えないという事実、これは單に戰争に負けたからということだけではないのでありまして、我が国が今や全く植民地化し、隷属化しつつあるという事実を雄弁に物語
つておるということを私は言わざるを得ないのであります。
以上大体歳出の面について見て参
つたのでありますが、歳入の面に目を転じますというと、歳入の中心問題になるのは税金の問題であります。シャウプ勧告を
基礎とした今回の税制改革におきまして、
政府は盛んに減税を宣伝しておりますが、これをまともに受取
つておるものは誰もいなのであります。極く一部の独占資本の外国資本並びに外国人にと
つては減税になるかも知れない。併し勤労者によ
つては逆に甚だしい増税になることは
労働者や農民は勿論、資本家さえも今日は認めざるを得ない形にな
つておる。これは自由党の諸君と雖もちやんと肝の底に分
つておられるところなんです。この点は更に私はこの国税の問題につきましては、しばしば触れられておりますのでここには詳しく申上げません。
地方財政の面についてここで触れることが必要だと思うのであります。先にも述べましたように、
政府が
予算審議に当りまして支障があることは百も承知しながら、
地方財政法を
国会に
提出しなかつたというのはこれは何であるか、その本当の原因は何であるか、これは
関係方面との手続において遅れておるということを
政府は言
つておりますけれども、併しこれは表面の
理由に過ぎないのであります。若しこのような
地方税法の正体が
はつきり明るみに晒されて、この惡法の姿が大衆の前に現われたならば、この結果は非常に自由党
内閣に不利だということを誰よりも
政府自身が知
つておるからであります。であるからこの提案を遅らしたのであります。
地方税の問題につきまして
簡單にその特長的な点について触れて見ますと、先ず国家財政の收奪、軍事的な使用から起るためのいろいろな皺を全部
地方財政に寄せておるということであります。
又昨年度の
予算の性格と今年度の
予算の性格において大きな相違点の
一つはこの国家財政と
地方財政の比重が
はつきり変
つておるということ、こういうところからいろいろ今後の具体的な施策の変化が起
つて来るのであります。更に平衡交付金は先程も申したのでありますが、これは
地方財政を操作するための誘い水であり、これをやり繰りし、これも操作するためのものとして作られた。こういうような性格を持
つておることは、例えば平衡交付金を出すために七割
地方におけるところの負担がなされなければ後の三割分についてはこれを出さないであろうし、又出しても取上げるかも知れない。こういうような平衡交付金法案はこれは
はつきり出されていないのでありますから、現在におきましては明らかなものではありませんけれども、我々の耳にしたこの性格のうちに
はつきり出ておるのであります。更に税金の額の問題でありますが、住民税、附加価値税、
固定資産税によるところの大増税は実に物凄いことになる。若し税法に謳われておる
通りの税を全部取立てますと大体約三千四百億になるのであります。
政府はこれを見込としまして千九百億とい
つておるのであります。併しながら現在の苦しい
地方財政におきましてこれらの税法が出されれば、その極限までぎりぎり取るというような形に追込まれる。こういうようなことになりますと、
政府は今鳴物入りで宣伝をしておりますが、三百億の減税どころか、国税、
地方値を通じて見ますときに約一千億以上の大増税となる。こういうことが
はつきり出ておるのでありまして、この点につきましては民自党
内閣時代から大いに宣伝されたものが
はつきり今後のこの
予算の遂行によ
つて国民大衆の前に全く襲い掛か
つて来るのであります。(「ノー、ノー」と呼ぶ者あり)又附加価値税、
固定資産税これらによりまして、こういうものが非常に收奪的に取られることによりまして物価は非常に値上げとなり、その値上げは大衆負担に転嫁されて来る。殊に
労働階級に対するところの影響は非常にこれによ
つて強化されざるを得ない。つまり固定資産に再評価によるところの償却部門を認める、或いは貸倒準備金を認める。こういうような方向で
資金部門というものは非常に減らされておる。こういうことによりまして当然これは低
資金、首切り、物価の値上げということが惹き起される。このようにしまして二重、三重の收奪が勤労階級に向
つて来る。
尚ここで我々が注目しなければならないのは、今後の
給與体系の性格というものは、このような
地方税の強化によ
つて全く一変されてしまうだろうということであります。昨日あのような形で、実に
国会史に記録され、而も甚だこれは嫌な記録の姿であります、あのような形で通つたあの
給與法案、あれを以て六千三百円の線を堅持するということは、今後
公務員の生活水準に
一般賃金も頭を揃えさせ或いはそれ以下に追込んで来る。こういう傾向がこのような財政
計画のうちから
はつきり現われて来ております。これは大いに注目しなければならない。このような形で、而も恐らく現在の大衆の生活の状態におきましては税金は取れない。だからこれをぎりぎりまで取るためにいろいろ税務機構の強化とか、取締規則というものを非常に強化して、そしてひどいのになりますと女の子の身体検査まで自由にする。こういうところまで追込んでおる(「ノー、ノー、」と呼ぶ者あり)全く惡代官的のやり方である。(笑声)こういうようなことを我々は今までこの目で
はつきり見て来たのであります。併しこういうようなやり方を取れば
地方財政は赤裸にならざるを得ないのであります。こういうようなところまでに我々を追込んであるのでありまして、吉田
内閣に対する
はつきりして人民の反撃が今から予想される次第であります。(「それこそ共産党の宣伝だ」と呼ぶ者あり)このような世界無比の惡法であるからこそ
政府は人民の前にこの真相を示すことができなかつた。特にここで指摘して置きますのは参議院選挙を前にして、この勇気が出なかつたということは誠に尤もであると言
つてよいことを、私はそういう点から皆さんに同情せざるを得ない。自由党がこれを隠そうとした意図については同情せざるを得ない。(「余計なお世話だ、そんな同情はやめて呉れ」と呼ぶ者あり)
以上述べた二十五年度
予算の根本的性格は軍事的植民地化を促進し、人民の大收奪の上に内外独占資本の利益のみを図る亡国的な
予算でありますが、この
予算を実行したときにはわが国民の生活は誠に驚くべき壞滅の状態に陷るということは、これは申上げるまでもない、国の独立は根本から潰されて来るということは明らかであります
予算の編成には言うまでもなく六千三百円の低賃金水準と四千二百五十円の低米価がその根柢をなしているのでありますが、最近におけるところの
経済恐慌の深まりは国民生活をいよいよ破滅させているのであります。(「
委員長時間を守らせろよ」と呼ぶ者あり)U・Pのアーネスト・ホープライト氏は公平な観察者の意見として最近の新聞に次のように報じております。「反インフれ政策下の
日本人の生活は、インフレ時代よりも苦しく
なつた、
地方新聞に引用された警察
当局の資料によれば東京の自殺者の七〇%は
経済的苦痛がその原因である。」ということを述べているものであります。