○国務大臣(
本多市郎君) この機会に
地方税改正法案の
提案理由、内容の概要を御説明申上げ、続いて提案を予定しておりまする
平衡交付金法案の構想につきまして御説明申上げたいと存じます。
この
地方税法改正の法律案は、これは
地方財政の強化によりまして、真に
民主主義に基く国政の運営の基盤を、これによつて固めて行くというような趣旨でございまして、我が国は敗戰による苦い体験から、新らしい憲法の下に
民主主義に基いてやつて行く基礎は、憲法の上においては確立したのでありますけれども、
民主政治の確立は、單に政治運後の形式を民主化しただけではならないのでありまして、それにはどうしても
政治運営に対する判断が、広く国民の中から生まれて來るように仕向けて行きたい。これがためにはすべて公事に関する問題は可及的に、その問題の周辺にあつて、その問題から直接の影響を受ける人達の手によつて責任ある処理を行わせるようにして参らなければなりませんので、
民主政治の確立と
地方自治の強化とは表裏一体をなす問題であります。
而して、
地方自治の確立を意図して、すでに
地方自治法が制定せられ骨格は
整つたのでありますが、その事務を豊富にし、財政を強化して内容を充実させることこそ先決の問題であります。然るに
地方公共団体の現状は、相次いで負荷せられる任務の重いのに較べて、財政力は微弱であり、
地方自治は財政的に破綻に瀕しているとまで極言せられているのであります。
これを税制の面について申上げますならば、すでに
地方団体のうち七割を超えるものが、
標準税率を超えて課税しておりますし、
法定税目の外に、
地方団体が新税の設定を余儀なくされておりますものが、
課税団体で二千、税目で百種類を超えているのであります。大抵の団体がその税率で課税するものとして定められている筈の
標準税率で課税している団体がむしろ例外でありましたり、
法定税目そのものが、可なり無理なものを捨い上げて、国民に圧迫感を與えていることを虞れているのに、その上更に多くの団体が幾多の無理な税目を設けざるを得ない情況におかれているということは、
地方税收入の甚だしい不足を示すものであつて、そもそも
地方税制そのものが、破綻していると申さねばならないのであります。
現行地方税制は、すでに
国税附加税を捨てて、
独立税中心主義を採つているのでありますが、中枢をなす
事業税、地租及び
家屋税の三收益税は、或いは国の
所得税や
法人税と
課税標準を同じくし、或いは国の決定した
賃貸価格を
課税標準とする等尚著しく国に依存する態勢を改めていないのであります。そもそも
地方自治の伸長を期そうとするならば、活動の源泉となるべき財源を豊富にすると共に、これを
地方団体みずからの責任において確保させ、以て
自治運営に対する住民の鋭い監視と批判を求めるようにして行かねばならないのであります。
よつて、
地方税收入を拡充し、
地方税制の自主性を強化して、
地方自治の根基を培うことを今次
地方税制改正の第一の目標といたしているのであります。
次ぎに、
現行地方税の主要な税目の個々について申述べたいと存じます。
その一は事業に対する課税でありますが、
戰前地方税総額の二〇%を占める程度であつたものが、
現行税制で参りますと、昭和二十五年度には三五%内外を占めることになるのであります。而も
事業税の中個人の事業主の負担いたしますものが、戰前の五〇%内外から九〇%内外に増加して参つているのであります。このことは
現行事業税が二重の意味において不合理になつているのでありまして、即ち第一には他の
課税客体に比べて事業の負担が重すぎるということであり、第二には本來応益的に負担すべき
事業税が大企業に不当に軽課されているということであります。
その二は、土地及び家屋に対する課税でありますが、
地代家賃統制令との関係があるからとはいえ、
戰前地方税総額の三〇%を占めていたものが、
現行税制で参りますと、昭和二十五年度では漸く一〇%を占めるに過ぎなくなるのであります。而も他の税目と比べましても可
なり負担の均衡を欠いていることが感ぜられるのでありまして、
営業用乘用車ですらその一台の負担は畑地三十七町歩、家屋八百数十坪の負担に匹敵しているのであります。
その三は、
住民税であります。元
來戸数割を廃止して
住民税が設けられた当時は收入を目的にはしないで、單に
負担分任の精神を
地方税制の上に存置しておくための、極く少額のものであつたのであります。ところが
地方財政の窮乏は、この税に相当多くの收入と彈力性とを求めざるを得なくなり、
自然団体間においても課税額に可なり大きな幅ができ、
標準税額の十数倍に達している町村も珍しくなくなつて來たのであります。こうなつて來ると、
応能原則を重視すべき租税としてもはや放任し難くなつてしまつたと言わねばならないのであります。
このような現状に鑑み、
地方税制を根本的に改革して、国民の
地方税負担の合理化及び均衡化を確保することを、今次
地方税制改正の第二の目標といたしたのであります。
而して、このような目標の下に、則つた具体的な
地方税改革の方針は、
第一には、
財産課税の重課、
流通課税の整理、
消費課税の
減少軽減、
所得課税の増加、
事業課税の軽減、雑税の整理等を行い、
地方税全般に亘つてその負担の合理化と均等化を徹底することであります。
第二には、
課税標準、税率等に関する
地方団体の権限を拡充して、
地方税制の自主性を強化するとともに、
道府県税と
市町村税とを完全に分離し、以つて、
税務行政の責任の帰属を明確にすることであります。これによ
つて道府県税としたものは、
普通税で
附加価値税、
入場税、
遊興飲食税、
自動車税、拡区税、
漁業権税及び
狩猟者税の七税目、
目的税で
水利地益税であり、
市町村税としたものは、
普通税で
市町村民税、
固定資産税、
自転車税、
荷車税、
電気ガス税、
鉱産税、
木材引取税、
広告税、
入湯税及び
接客人税の十税目であり、
目的税で
水利地益税及び
共同施設税であります。
第三には、有力な直接税を
市町村税として、その收入の強化を図ると共に、住民の
市町村行政に対する関心の増大を求め、以て
地方自治の基盤を培うと共に、
民主政治の推進を期することであります。
第四は、
特別徴收に関する規定を整備すること。
納税秩序を強化すること等により、
税收入確保の方途を講ずることであります。
第五は、税率を全税目に亘つて明確に規定することにより、地域間における
地方税負担の衡平化を期することであります。
かくして、
地方税法を全文に亘つて改正したのでありますが、これによつて、昭和二十五年度において、
地方団体が收入することのできる税額は千九百八億円となる見込であります。昭和二十四年度千五百二十四億円と比較すると、三百八十四億円の増税ということになります。この
地方税の外に
地方財政平衡交付金の創設、
災害復旧費全額国庫負担等を行いますので相当の財源が増加になりますが、勿論これにより
地方財源は甚だしく潤沢になつたということは言えませんが、現下の
国民租税負担の現状に鑑み、
地方税としてはこの程度の増收に止めることを以て適当すると考えた次第であります。
以下新税の創設、
既存説目の変更、
徴税手続の合理化の順に從つて、新
地方税法の内容を御説明申上げます。先ず新設された税目についての説明でありますが、
その第一は
附加価値税であります。
附加価値税は、
事業税及び
特別所得税を廃止すると共に、これらの
課税客体であつた事業の
附加価値に対し、
附加価値額を
課税標準として、
事業所又は
事務所所在の道府県において課税するものであります。
ここに
附加価値と申しますのは、
当該事業がその段階において、国民総所得に附加した価値を指すものでありまして、
生産国民所得の観念で申しますならば、
一定期間における
当該事業の総
売上金額により他の事業から購入した土地、建物、
機械設備、原材料、商品、動力等を控除したものをいい、逆にこれを
分配国民所得の観念で申しますならば、賃銀、地代、利子及び
企業者利潤を合算したものといえましよう。このような
附加価値額を
課税標準とするところの
附加価値税を從來の
事業税に代えて創設するゆえんは、
第一に、從來の
事業税でありますと、
先づ收益課税たる本質上、非転嫁的なものでありますが故に、今日のごとく所得の上に累積的に課税されているときにおいては、事業に対する負担が堪え難いまでに重くなること、
第二に、
事業税の
課税標準は所得であるが故に、必然的に国税たる
所得税及び
法人税の
課設標準の算定の結果に追随せざるを得ないこととなり、
事業税課税についての責任の帰属を不明確にすること、
第三に、
事業税によるときは、所得のないものは常に課税を免がれるが、事業を継続している以上は、常に
地方団体の施設の恩惠に浴しているのであるから、事業はすべて応分の
地方税負担をすべきであることなどの欠陷を有するのに対して、
附加価値税においては、これらのいずれの欠陷をも一応克服できる上に、
取引高税のごとく
重複課瀬とならないこと、企業の
垂直的結合を促進するがごとき欠陷を有しないことなどの長所があり、更に進んで
固定設備の
購入代金が
課税標準から、控除されるが故に、現下の
我が国経済にとつて、最も必要であるところの産業の
有機的構成の高度化を促進するという効果も又期待できるのであります。
而して、
附加価値税は、農業、林業並びに鉱物の掘採及び採取の事業に対しては非課税の取扱といたしたいと考えております。その理由は前二者につきましては、主として
固定資産税の負担が相当重くなつていることによるものであり、後者につきましては、別途
鉱産税が在置されているからであります。
次に
附加価値税の税率は、
標準税率を四%とし、
最高税率を八%としているのでありますが、
原始産業、
自由業等につきましては、
標準税率を三%、
最高税率を六%とし、免税点はいずれも
附加価値額の総額が十二月分として、九万円を原則といたしております。
更に、
附加価値税の
徴收手続は、
申告納付の方法によるものとしております。即ち、法人にありましては、各
事業年度における
附加価値額の実績により、個人にありましては、各年の
附加価値額の実績によつて、それぞれ所定の手続に從いまして、
申告納付するものであります。ただ、六ケ月を越える
事業年度を定める法ににあつては、六月を越えてから一ケ月以内に、個人にあつては五月及び九月に、いずれも前
事業年度又は前年の実績を基礎として概算納付することといたしております。
而して、これらの場合におきまして二以上の道府県に
亘つて事務所又は
事業所を設けて事業を行う者は、
附加価値の総額を事務所又は
事業所所在の
道府県ごとにみずから法定の
分割基準に從つて分割し、その分割した
附加価値額を
課税標準として、
申告納付するものとし、更正及び決定は主たる事務所又は
事業所所在の
都府県知事が、
地方財政委員会の指示に基いて行い、これに関する
関係道府県知事の異議も同樣に方法によつて、決定することとなつております。
尚、これと関連しまして、
附加価値税につきましても、
青色申告書の制度を採用することとし、
納税義務者が、
地方財政委員会規則で定める
帳簿書類を備えつけてこれに
附加価値の計算について必要な事項を記載しているときは、
青色申告書によつて申告させることができるものとし、その者については、原則としてその
帳簿書類によらなければ更正又は決定ができないものとしたのであります。
又、昭和二十五年度限りの
課税標準算定の特例として、金融業、運送業及び倉庫業につきましては、その選択によつて、総
売上金額の一定額を以て、
附加価値額とすることができるものとしておりますが、その理由は主として、差当りの負担の急変を避けようとする趣旨に出たものであります。この
附加価値税の收入見込額は昭和二十五年度四百十九億円、平年度四百四十一億であります。
新税にその二は、
市町村民村であります。同じ税目は從前にも存していたわけでありますが、その性格を一変しているのでありまして、
市町村内に住所を有する個人に対しては、
均等割及び所得割により、事務所、
事業所又は家屋敷を有する個人及び事務所又は
事業所を有する法人に対しては、
均等割によつて課するところの税であります。
從來の
市町村民税と異なりますのは、第一には、世帶主を
納税義務者とする家族主義的な構成をとつていたものを、所得のある限りは、成年者をすべて
納税義務者とする個人主義的な構成をとつていることであり、第二には、
均等割、
資産割及び所得割の三者によつて課税していたのを、
資産割を廃止して、均等割と所得割の二者によつて課税することとしたことであり、第三には、法人に対しては均等割しか課税しないこととしたことであります。
而して、
均等割の額は、人口五十万以上の市において、個人は八百円を標準とし最高一千円、法人は、二千四百円を標準とし、最高四千円、人口五万以上五十万未満の市において、個人は六百円を標準とし、最高七百五十円、法人は千八百円を標準とし、最高三千円、これら以外の
市町村において、個人は四百円を標準とし、最高五百円、法人は千二百円を標準とし、最高二千円としているのであります。
地方、所得割につきましては、前年の
所得税額を
課税標準とし、その百分の十八を標準とし、百分の二十を最高とする方式、及び前年の課税総
所得金額を
課税標準とし、百分の十を最高とする方式、並びに前年の課税総
所得金額から
所得税額を控除した後の金額を
課税標準とし、百分の二十を最高とする方式の三方式のいずれかを選択し得るものとしておりますが、昭和二十五年度におきましては、第一の方式のみを採用することとしております。
尚、
市町村民税は、前年において所得がなかつた者及び
生活保護法の適用を受ける者並びに不具者及び
未成年者に対しては、その全部を、同居の妻に対しては、
均等割を課さないものとしております。ただ
未成年者及び不具者であつても、一定額以上の
資産所得又は
事業所得を有し且つ独立の生計を営む場合又は同居の妻であつても、その夫が
市町村民税の
納税義務者でない場合においては、非課税の取扱を受けないのであります。
課税団体は、六月一日現在において住所又は事務所、
事業所若しくは家屋敷が所在した
市町村で、その
課税方法は
賦課処分によるものとし、納期は原則として、
均等割のみを納付するものは七月、その他のものは、七月、九月、十二月及び二月の四回としております。又收入見込額は、昭和二十五年度において五百七十五億円、平年度において四百八十七億円であります。
新税のその三は、
固定資産税であります。
固定資産税は、土地、家屋及び
減価償却の可能な
有形固定資産に対し、その価格を標準として原則として、所有者に課するところの税であります。これは、從來の地租、
家屋税を拡充したものでありまして、その主な相異点は、
課税客体が土地、家屋の外に、
償却資産の加えられていること。
課税標準が、
賃貸価格と異なり価格であることであります。
而して、その価格は、毎年一月一日の時価を基準として、概ね各
市町村に設置される
固定資産評価員の行う評価に基き、
市村村長が決定いたします。この
市村村長が決定した価格は、
固定資産税の課税の必要上、
市町村に作成を義務付けられた
固定資産課税台帳に登録し、
一定期間関係者の縱覽に供して、確定することとしております。但し、昭和二十五年度分の
固定資産税の
課税標準に限り、農地以外の土地及び家屋については、
賃貸価格の九百倍の額、農地については、
自作農創設特別措置法による
買收農地の対価に二十二・五を乘じて得た額とするものとしております。
又
償却資産の価格については、
資産評価法の規定によつて再評価を行なつた場合における再
評価額の限度額と、同法の規定によ
つて償却資産の所有者が現実に行なつた再
評価額又は再評価を行わない場合にあつては、その資産の
帳簿価格とをみて、
市町村長が決定するのでありますが、原則として資産再評価法による再
評価額の限度額を
課税標準たる価格とするよう指導すべきものと考えております。
固定資産税の税率は、百分の一・七五を標準としておりますが、当分の間百分の三を最高とし、且つ、昭和二十五年度分に限り、百分の一・七五に一定したのであります。いずれも課税の條件を同一にすることによ
つて課税標準額について存する不均衡の所在を明確にし、次の機会における
固定資産の公正な評価を容易ならしめようとする趣旨であります。
尚大規模の工場や
発電施設が近隣の
市町村の公共費の支出に直接且つ重要な影響を與えたり、これらの地方における経済と直接且つ重要な関連を有する場合においては、
地方財政委員会がこれらの
固定資産を指定し、これを評価してその価格を決定し、
固定資産の存在する
市町村の如何に拘わらず、その価額を
関係市町村に配分することができるものといたしておりますのは、税源の極端な偏在を防止しようとする趣旨に外ならないものであります。
又船舶、車輛その他二以上の
市町村に亘つて使用される移動性若しくは
可動性償却資産及び鉄軌道、
発送配電施設その他二以上の
市町村に亘つて所在する
固定資産のうち、
地方財政委員会が指定したものについては、
地方財政委員会が価格を決定し、その価額を
関係市町村に配分するものとしておりますが、その趣旨は主として
関係市町村間における評価の適正を期そうとするところにあるわけであります。
固定資産税の
賦課期日は、
当該年度の初日の属する年の一月一日とし、納期は原則として四月、四月、八月及び十一月の四回としておりますが、昭和二十五年度分の
償却資産に対する
固定資産税に限り一月一回と定めております。この税の收入見込額は昭和二十五年度において約五百二十億円であり、平年度において五百七十八億円であります。
第二は、
既存税目に対して加えられた変更に関する説明でありますが、
その一は、
入場税に関するものであります。第一点は税率を從來の十五割の部分を十割に、又從來の六割の部分を四割に、それぞれ三分の一ずつ引下げることであります。
第二点は新たに
課税除外の規定を設けたことでありまして、(1)学校、
社会教育団体、
社会事業の
経営者等が主催する、(2)学生、生徒、兒童又は素人の行う催しが行われる場所への入場に対しては、(3)その催物の純益がすべて学校、
社会教育、
社会事業等のため支出され、且つ、(4)関係者が何らの報酬を受けない場合に
限つて入場税を課さないことができるものとしたのであります。
第三点は、催物の
主催者等に所定の入場券又は利用券の
発行義務を課すると共に、
入場者が入場し又は利用者が利用する際に、その入場券又は利用券の一半を切り取つて他の一半を
入場者又は利用者に交付する義務を課したこと、及び全員を無料で入場させた場合であつても、その情況により経費を
課税標準として課することができるものとしたこと等徴收の強化を
図つた点であります。
その二は、
遊興飲食税に関するものであります。第一点は、現行の税率十割及び二割に引き下げ、以て負担の軽減と徴税の適正化を図らんとしたことであります。
第二点は、條例で
領收証発行及び
証紙使用の義務を課し得るものとし、
乱れ勝ちな
遊興飲食税の徴收を確保する途を規定したことであります。
その三は、
自動車税、
漁業権税、
自転車税、
荷車税、
広告税、
入湯税及び
接客人税についても新たに
標準税率を定め、以て地域間の負担の均衡化を図ると共に、その
課税手続、救済、罰則等に関する所要の規定を整備して、
納税者の理解に便ならしめようとしたことであります。
第三は、
賦課徴收について改正を加えました諸点に関する説明であります。
その一は、過納に係る
地方団体の
徴收金を
納税者に還付し、又は未納の
徴收金に充当する場合において加算金の制度を創設し、以て
納税者の権利の保護に欠けるところのないようにしたことであります。
その二は、
納税者又は
特別徴收義務者について、
滯納処分、
強制執行、
破産宣告等があつたときは、
地方団体はその
徴收金について
交付要求をなし得るものとし、以て
税收入の確保に遺憾なきを期したことであります。
その三は、
納税者に交付すべき
徴税令書には課税の基礎及び
税額算定の根拠を明確に示さなければならないものとし、以て
納税者の保護とその納税への協力を期したことであります。
その四は、
入場税、
遊興飲食税、
電気ガス税、
木材引取税等を
特別徴收によつて徴收させるときは、
特別徴收義務者にその徴收に係る税金を申告納入させることにするとともに、
入場税と
遊興飲食税の
特別徴收義務者が
特別徴收をする場合においては、そのことを明示する証票の交付方を
地方団体の長に申請するものとし、その交付を受けた証票を店頭その他公衆の見易い箇所に貼付しなければならないものとし、以てこの
種租税徴收の強化を図つたことであります。
その五は、
納税義務者が
申告納付し、又は
特別徴收義務者が申告納入する場合においては、延滯金、
過少申告加算金、不
申告加算金及び重加算金の制度を、又督促状を交付した場合においては、
延滯加算金の制度をそれぞれ新たに設け、以て
納税意識の高揚と滯納の絶滅を期したことであります。
その六は、所要の
罰則規定を整備して徴收の強化を図つたことであります、尚今次改正によつて廃止される税は先に成立いたしました
地方税法の一部を改正する法律と合わせ
道府県民税、地租、
家屋税、
事業税、
特別所得税、
不動産取得税、
酒消費税、電話税、軌道税、電柱税、船舶税、舟税、金庫税、と畜税、
使用人税、漁業権の取得に対する
漁業権税、自動車の取得に対する
自動車税、自転車の取得に対する
自転車税、荷車の取得に対する
荷車税、
都市計画税等の多数に上るのであります。
以上を要するに今次改正案は実に、我が国の
地方税制の
創始以來の画期的なものであり、特に
附加価値税、
固定資産税及び
市町村民税の三大新税の創設、
道府県税体系と
市町村税体系との明確な分離及び
賦課徴收手続の
明確化等の諸点において極めて優れた特色を有し、
地方財政の確立乃至
地方自治強化のために偉大なる貢献をなすべきことが期待されるのであります。
以上申述べましたのが今回の
地方税改正案の大要でございます。
それでは引続きまして
地方財政平衡交付金法案の、これは政府で提案を準備いたしておりますが、その
構想概要というものを、この機会に御説明申上げたいと存じます。
地方公共団体の自主性を徹底し、
地方自治の活溌な運営を期待しつつ、積極的にその発展を図りますことは、
国政民主化の基礎を培う必要の要請でありまして、これがためには、一面
地方自治制度自体の整備を行いますと共に、他面これに即応した
地方税財政制度を樹立いたしますことの緊要なるは論を俟たないところであります。而して
地方税財政制度確立の
基本方策といたしましては、
第一に、
地方団体に対し、豊富潤沢なる財源を與えることであり、
第二に、
地方收入の根幹でありますところの
地方税につきまして、その税制を十分自主的、且つ自律的ならしめることであり、
第三に、すべての
地方団体を通じまして、少くとも合理的且つ妥当な
自治活動を行うだけの財源は、これを保障しなければならないということにあると存ずるのであります。経済社会の進展に伴う経済力の都市集中と、人文の発達に伴う
地方団体の行政活動分野の拡張とは近時一般の趨勢でありまして、その結果強力な財政力を持ち、軽少な
地方税の負担の下に、豊富多彩な
自治活動の可能な
地方団体を生じます半面、貧弱な財政力の下に、住民に過重な税負担を課しながら、最少限度の行政施設すらも営み得ない
地方団体を見るに至りますことは、この間の趨勢に伴う必然の現象であります。このため我が国におきましては、富裕団体と貧弱団体との間の財政力を均衡化し、以て全
地方団体の財政の基盤の確立を図るため、昭和十五年の中央地方を通ずる税制改革に際し、夙に恒久の制度として、地方配付税制度を創設し、爾來今日に至るまで、常に
地方団体間の財源調整の手段として、はた又
地方団体に対する財源附與の手段として、不十分ながらよくその機能を発揮し、
地方自治の向上発展に資するところ顯著なものがあつたのであります。
而して、地方配付税制度は、その財源の一半を
地方団体の課税力の強弱に逆比例的に、他の一半を
地方団体の財政需要の多寡に正比例的に配分しつつ、課税力が一定の限度を超える
地方団体にはこれを交付しないことにして参つたのであります。元來、
地方財政の調整と、
地方団体の自主性の確保とは両立し難い性格を持つものでありまして、地方配付税制度の運用に当りましては、
地方団体の自主性の確保を重点的に考えて参りましたため、地方配付税の配分方法も可及的にこれを簡素にし、地方配付税の配分のため必要とする各
地方団体の課税力や財政需要の測定に当つても、ひたすらこれが当該
地方団体の財政運営の自主性を制約しないよう留意して参つた次第であります。これがため反面各
地方団体間の財源調整は不徹底ならざるを得ない欠陷も又有しておつたのであります。反面ここに又、国庫が個々の経費について或いは一定額を負担し、或いは一定額を補助するという理由も見出されて、大小数百種類に及ぶ補助金、負担金の生れてきたゆえんがあるのであり、これがしばしば
地方団体の行政に無用な干渉を加える動因となつて参つたのであります。併しながら
地方団体をして事務を行わせる以上は、
地方団体をして創意工夫を盡させる途をこそ選ぶべきであり、これを防げる干渉の途は強く排除するよう努力されなければなりません。
而して、真に
地方団体を強力ならしめ
自治運営を活溌ならしめて参りますためには、すべて公共的な事務事業は、單に一地方の利害に止まるもののみならず、全国的な利害に連りますものも又原則としてすべてこれを
地方団体の実施に委ね、而も、その負担とその責任の下に執行せしめて行くことこそ必要でありますし、これがためには、干渉の動因は排除しつつもすべての
地方団体を通じて、これらの事務事業を実施して行くための必要、且つ、最少限度の財源は完全に確保して行けるだけの財政制度を打立てる必要が生じて來るのであります。よつて政府におきましては、
地方自治の確立を企図するシャウプ使節団の勧告の趣旨に鑑み、且つは、今般
地方税財政制度の根本的改革を試みる機会に際し、個々の雑多な補助金を通ずる自治干渉乃至中央支配の途は敢然と排除しつつも、総合的な
地方財政調整の方途はこれを徹底させることを目途に、現行地方配付税制度を廃止して、新たに
地方財政平衡交付金制度を創設することといたしたのであります。而して、從來の財政均衡化方式に画期的な変更を加えると共に、課税力及び財政需要の測定方法を精緻周密ならしめることにより、すべての
地方団体に対し、均衡のとれた
地方税の課税の下に妥当な規模と内容の地方行政を保障するに足るだけの財源は完全に確保することを期して、この法案を提出することといたした次第であります。
以下法案の内容の概略について申上げますと、先ず第一にこの交付金制度の
地方財政均衡化の方式でありますが、これは一定の方法によつて各
地方団体ごとに測定した財政需要額と、財政收入額とを比較し、財政需要額が、財政收入額を超える額を補填するという方式によつております。この方式を採りますならば、各
地方団体の財政需要額と財政收入額とが、的確に捕捉される限り、財政均衡化の趣旨は殆んど完璧に達成せられると存ずるのであります。
次に、毎年度交付すべき交付金の総額は、一定の方法により測定しました
当該年度における財政需要額が、財政收入額を超えると認められる
地方団体の、その超過額の見込額の合算額を基礎として定めることといたしまして、その見積は、
地方団体並びに国の関係行政機関に必要な資料の提出を求め、これに基き
地方財政委員会が行うことといたしております。
次に、各
地方団体に対する交付金は、交付金の総額の百分の九十の額を普通交付金とし、百分の十の額を特別交付金として交付することといたしております。
普通交付金は、その総額を各
地方団体の基準財政需要額が基準財成收入額を超える額に按分して算定いたします。基準財政需要額と申しますのは、
地方団体がその目的を達成いたしますために、合理的、且つ、妥当な水準において地方行政を行う場合に要しまする経費のうち、補助金、負担金、手数料等の特定の收入を財源とする部分を除いたものの所要額を言うのでありまして、その算定は地方行政を相当数の種類に分類し、それぞれの行政に要する経費を測定するために定めた測定標準の数に、測定標準單位当りの標準費用を乘じて行うことといたしております。この場合測定標準の数は、実数をそのまま用いないで、これを一層的確に財政需要の測定ができるようにいたしますために、人口密度、寒冷積雪度等一定の事由を参酌してこれを補正したものを用い、又測定標準單位当りの標準費用は、団体の性格に基く財政需要の相違等を考慮し、道府県、大都市、都市及び町村ごとに定めまして、財政需要測定の適正を期することといたしております。
基準財政收入額は、各
地方団体間の徴税状況により交付金交付の公正を失することのないようにするため、当該団体の法定
普通税の收入見込額を一定の基準税率により客観的に捕捉したものを用いると共に、その基準税率は、
地方財政に彈力性を残し、かたがた
地方団体の徴税税欲の減退を防止するため、
地方税法に定める
標準税率の百分の七十に相当する率を用いることといたしております。
次に特別交付金は、普通交付金の測定標準では捕捉し難い特別の財政需要があること、交付金の額の算定期日後に生じた災害等のため特別の財政需要があること、その他特別の事情があることによりまして、普通交付金の額が過少であると認められる
地方団体に対してその事情を考慮して交付することといたしております。
而してこれらの交付金の算定は、主として按分の方法によりますため、一定期日の現在における
地方団体について算定する必要がありますので、これを毎年度四月一日とし、その期日後
地方団体の廃置分合、境界変更がありました場合には、交付金の決定額につきそれぞれ必要な変更の措置を講ずることといたしております。尚交付金は普通交付金は年四回に分け、特別交付金は年一回にこれを交付することといたしております。
以上が交付金の決定並びに交付方法の概略でありますが、交付金は
地方財政の均衡化上必要欠くべからざる制度であるといたしましても、尚国が一定の基準に基き、
地方団体に交付するものでありますため、その性質上收入の自主性において欠くるところがあり、又その運営の如何によつては、
地方自治の中央集権化的傾向を誘到する惧れなしとしないのであります。このため、この制度と
地方自治との調和を図る趣旨におきまして、
第一に、その総額は、
地方財政の均衡化の機能を果すに、必要な限度とすると共に、その交付方法は、これに関する主要な規定は、すべて法律を以て定め、細目の規定と雖も、可及的に政令又は規則において定めることといたしまして、行政官庁の自由裁量の余地を極力排除することといたしております。
第二に、国は、交付金の交付に当つて、
地方自治の本旨を尊重し、濫りにその円満な発達を阻害するような條件をつけてはならないことを以て、この制度運営の基本方針の一といたしております。從いまして地方行政の種類ごとに財政需要は測定いたしますが、これは原則として平衡交付金交付額算定のための便法に過ぎないのでありまして、これによりまして直ちに各
地方団体の歳出計画に一定の枠を嵌めるものではありません。交付金の使途は、
地方団体の自由に委ね、交付金も又一般財源の一つとして、これを縱横に駆使しながら、
地方団体はその実情に最も適合した行政の総合的運営に遺憾のないよう期すべきものと存ずるのであります。併しながら、反面
地方団体の事務事業といたしておりますものでありましても、国家全般の立場から、その運営に一定の規模と内容とを備えることを、国が当該
地方団体に要請する必要のある場合もありますし、これがため從前国において、これらの経費の一部を負担しておりました経緯もありますので、
地方団体がその行う行政につき、法律又は法律に基く命令により国が要請する程度の規模と内容とを備えることを怠つた場合等におきましては、一定の手続により交付金の額を減額し、又はその一部を返還せしめることといたしております。
又義務教育費の測定とその支出を
地方団体に義務付けるために、別途標準義務教育費法案が提出されておりますが、一面義務教育の特殊性に鑑み、他面、義務教育費国庫負担制度の廃止に代る措置として、義務教育の水準が維持されるまでは、暫定的にこのような制度を
地方財政平衡交付金制度と併行的に設けることも止むを得ないところと考えております。
第三に、交付金の額の算定の基礎につき不服がある場合には、審査の請求を、又、交付金と減額し若しくは返還せしめられる場合には、異議の申立を認め、以て
地方団体の利益の保護を図ることといたしておる次第であります。尚本制度は、從來の均衡化方式に画期的な改変を加えたものでありますために、その十全な成果を收めますためには、今後とも地方経費並びに收入の測定方法につき、更に研究を加え、交付金の計算がますます客観的な基礎に置かれるように要後一層努力を継続して参りたい所在であります。
以上が
平衡交付金法案の構想でございます。