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1950-03-30 第7回国会 参議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月三十日(木曜日)    午前十一時八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員玉置吉之丞君、松村眞一郎君 、木内四郎君、前之園喜一郎君及び下 條恭兵君辞任につき、その補欠として 宇都宮登君、佐伯卯四郎君、安達良助 君、小畑哲夫君及び門田定藏君を議長 において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○担当分科委員の選任の件   —————————————
  2. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 只今より会議を開きます。本日は主として地方税法に関する地方財政の御審議をお願いいたします。  御質問の前に本多国務相より議案に対しまする一応の説明を求められております。発言を許可いたします。
  3. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) この機会に地方税改正法案提案理由、内容の概要を御説明申上げ、続いて提案を予定しておりまする平衡交付金法案の構想につきまして御説明申上げたいと存じます。  この地方税法改正の法律案は、これは地方財政の強化によりまして、真に民主主義に基く国政の運営の基盤を、これによつて固めて行くというような趣旨でございまして、我が国は敗戰による苦い体験から、新らしい憲法の下に民主主義に基いてやつて行く基礎は、憲法の上においては確立したのでありますけれども、民主政治の確立は、單に政治運後の形式を民主化しただけではならないのでありまして、それにはどうしても政治運営に対する判断が、広く国民の中から生まれて來るように仕向けて行きたい。これがためにはすべて公事に関する問題は可及的に、その問題の周辺にあつて、その問題から直接の影響を受ける人達の手によつて責任ある処理を行わせるようにして参らなければなりませんので、民主政治の確立と地方自治の強化とは表裏一体をなす問題であります。  而して、地方自治の確立を意図して、すでに地方自治法が制定せられ骨格は整つたのでありますが、その事務を豊富にし、財政を強化して内容を充実させることこそ先決の問題であります。然るに地方公共団体の現状は、相次いで負荷せられる任務の重いのに較べて、財政力は微弱であり、地方自治は財政的に破綻に瀕しているとまで極言せられているのであります。  これを税制の面について申上げますならば、すでに地方団体のうち七割を超えるものが、標準税率を超えて課税しておりますし、法定税目の外に、地方団体が新税の設定を余儀なくされておりますものが、課税団体で二千、税目で百種類を超えているのであります。大抵の団体がその税率で課税するものとして定められている筈の標準税率で課税している団体がむしろ例外でありましたり、法定税目そのものが、可なり無理なものを捨い上げて、国民に圧迫感を與えていることを虞れているのに、その上更に多くの団体が幾多の無理な税目を設けざるを得ない情況におかれているということは、地方税收入の甚だしい不足を示すものであつて、そもそも地方税制そのものが、破綻していると申さねばならないのであります。  現行地方税制は、すでに国税附加税を捨てて、独立税中心主義を採つているのでありますが、中枢をなす事業税、地租及び家屋税の三收益税は、或いは国の所得税法人税課税標準を同じくし、或いは国の決定した賃貸価格課税標準とする等尚著しく国に依存する態勢を改めていないのであります。そもそも地方自治の伸長を期そうとするならば、活動の源泉となるべき財源を豊富にすると共に、これを地方団体みずからの責任において確保させ、以て自治運営に対する住民の鋭い監視と批判を求めるようにして行かねばならないのであります。  よつて、地方税收入を拡充し、地方税制の自主性を強化して、地方自治の根基を培うことを今次地方税制改正の第一の目標といたしているのであります。  次ぎに、現行地方税の主要な税目の個々について申述べたいと存じます。  その一は事業に対する課税でありますが、戰前地方税総額の二〇%を占める程度であつたものが、現行税制で参りますと、昭和二十五年度には三五%内外を占めることになるのであります。而も事業税の中個人の事業主の負担いたしますものが、戰前の五〇%内外から九〇%内外に増加して参つているのであります。このことは現行事業税が二重の意味において不合理になつているのでありまして、即ち第一には他の課税客体に比べて事業の負担が重すぎるということであり、第二には本來応益的に負担すべき事業税が大企業に不当に軽課されているということであります。  その二は、土地及び家屋に対する課税でありますが、地代家賃統制令との関係があるからとはいえ、戰前地方税総額の三〇%を占めていたものが、現行税制で参りますと、昭和二十五年度では漸く一〇%を占めるに過ぎなくなるのであります。而も他の税目と比べましても可なり負担の均衡を欠いていることが感ぜられるのでありまして、営業用乘用車ですらその一台の負担は畑地三十七町歩、家屋八百数十坪の負担に匹敵しているのであります。  その三は、住民税であります。元來戸数割を廃止して住民税が設けられた当時は收入を目的にはしないで、單に負担分任の精神を地方税制の上に存置しておくための、極く少額のものであつたのであります。ところが地方財政の窮乏は、この税に相当多くの收入と彈力性とを求めざるを得なくなり、自然団体間においても課税額に可なり大きな幅ができ、標準税額の十数倍に達している町村も珍しくなくなつて來たのであります。こうなつて來ると、応能原則を重視すべき租税としてもはや放任し難くなつてしまつたと言わねばならないのであります。  このような現状に鑑み、地方税制を根本的に改革して、国民の地方税負担の合理化及び均衡化を確保することを、今次地方税制改正の第二の目標といたしたのであります。  而して、このような目標の下に、則つた具体的な地方税改革の方針は、  第一には、財産課税の重課、流通課税の整理、消費課税減少軽減所得課税の増加、事業課税の軽減、雑税の整理等を行い、地方税全般に亘つてその負担の合理化と均等化を徹底することであります。  第二には、課税標準、税率等に関する地方団体の権限を拡充して、地方税制の自主性を強化するとともに、道府県税市町村税とを完全に分離し、以つて、税務行政の責任の帰属を明確にすることであります。これによつて道府県税としたものは、普通税附加価値税入場税遊興飲食税自動車税、拡区税、漁業権税及び狩猟者税の七税目、目的税水利地益税であり、市町村税としたものは、普通税市町村民税固定資産税自転車税荷車税電気ガス税鉱産税木材引取税広告税入湯税及び接客人税の十税目であり、目的税水利地益税及び共同施設税であります。  第三には、有力な直接税を市町村税として、その收入の強化を図ると共に、住民の市町村行政に対する関心の増大を求め、以て地方自治の基盤を培うと共に、民主政治の推進を期することであります。  第四は、特別徴收に関する規定を整備すること。納税秩序を強化すること等により、税收入確保の方途を講ずることであります。  第五は、税率を全税目に亘つて明確に規定することにより、地域間における地方税負担の衡平化を期することであります。  かくして、地方税法を全文に亘つて改正したのでありますが、これによつて、昭和二十五年度において、地方団体が收入することのできる税額は千九百八億円となる見込であります。昭和二十四年度千五百二十四億円と比較すると、三百八十四億円の増税ということになります。この地方税の外に地方財政平衡交付金の創設、災害復旧費全額国庫負担等を行いますので相当の財源が増加になりますが、勿論これにより地方財源は甚だしく潤沢になつたということは言えませんが、現下の国民租税負担の現状に鑑み、地方税としてはこの程度の増收に止めることを以て適当すると考えた次第であります。  以下新税の創設、既存説目の変更、徴税手続の合理化の順に從つて、新地方税法の内容を御説明申上げます。先ず新設された税目についての説明でありますが、  その第一は附加価値税であります。附加価値税は、事業税及び特別所得税を廃止すると共に、これらの課税客体であつた事業の附加価値に対し、附加価値額課税標準として、事業所又は事務所所在の道府県において課税するものであります。  ここに附加価値と申しますのは、当該事業がその段階において、国民総所得に附加した価値を指すものでありまして、生産国民所得の観念で申しますならば、一定期間における当該事業の総売上金額により他の事業から購入した土地、建物、機械設備、原材料、商品、動力等を控除したものをいい、逆にこれを分配国民所得の観念で申しますならば、賃銀、地代、利子及び企業者利潤を合算したものといえましよう。このような附加価値額課税標準とするところの附加価値税を從來の事業税に代えて創設するゆえんは、  第一に、從來の事業税でありますと、先づ收益課税たる本質上、非転嫁的なものでありますが故に、今日のごとく所得の上に累積的に課税されているときにおいては、事業に対する負担が堪え難いまでに重くなること、  第二に、事業税課税標準は所得であるが故に、必然的に国税たる所得税及び法人税課設標準の算定の結果に追随せざるを得ないこととなり、事業税課税についての責任の帰属を不明確にすること、  第三に、事業税によるときは、所得のないものは常に課税を免がれるが、事業を継続している以上は、常に地方団体の施設の恩惠に浴しているのであるから、事業はすべて応分の地方税負担をすべきであることなどの欠陷を有するのに対して、附加価値税においては、これらのいずれの欠陷をも一応克服できる上に、取引高税のごとく重複課瀬とならないこと、企業の垂直的結合を促進するがごとき欠陷を有しないことなどの長所があり、更に進んで固定設備購入代金課税標準から、控除されるが故に、現下の我が国経済にとつて、最も必要であるところの産業の有機的構成の高度化を促進するという効果も又期待できるのであります。  而して、附加価値税は、農業、林業並びに鉱物の掘採及び採取の事業に対しては非課税の取扱といたしたいと考えております。その理由は前二者につきましては、主として固定資産税の負担が相当重くなつていることによるものであり、後者につきましては、別途鉱産税が在置されているからであります。  次に附加価値税の税率は、標準税率を四%とし、最高税率を八%としているのでありますが、原始産業自由業等につきましては、標準税率を三%、最高税率を六%とし、免税点はいずれも附加価値額の総額が十二月分として、九万円を原則といたしております。  更に、附加価値税徴收手続は、申告納付の方法によるものとしております。即ち、法人にありましては、各事業年度における附加価値額の実績により、個人にありましては、各年の附加価値額の実績によつて、それぞれ所定の手続に從いまして、申告納付するものであります。ただ、六ケ月を越える事業年度を定める法ににあつては、六月を越えてから一ケ月以内に、個人にあつては五月及び九月に、いずれも前事業年度又は前年の実績を基礎として概算納付することといたしております。  而して、これらの場合におきまして二以上の道府県に亘つて事務所又は事業所を設けて事業を行う者は、附加価値の総額を事務所又は事業所所在道府県ごとにみずから法定の分割基準に從つて分割し、その分割した附加価値額課税標準として、申告納付するものとし、更正及び決定は主たる事務所又は事業所所在都府県知事が、地方財政委員会の指示に基いて行い、これに関する関係道府県知事の異議も同樣に方法によつて、決定することとなつております。  尚、これと関連しまして、附加価値税につきましても、青色申告書の制度を採用することとし、納税義務者が、地方財政委員会規則で定める帳簿書類を備えつけてこれに附加価値の計算について必要な事項を記載しているときは、青色申告書によつて申告させることができるものとし、その者については、原則としてその帳簿書類によらなければ更正又は決定ができないものとしたのであります。  又、昭和二十五年度限りの課税標準算定の特例として、金融業、運送業及び倉庫業につきましては、その選択によつて、総売上金額の一定額を以て、附加価値額とすることができるものとしておりますが、その理由は主として、差当りの負担の急変を避けようとする趣旨に出たものであります。この附加価値税の收入見込額は昭和二十五年度四百十九億円、平年度四百四十一億であります。  新税にその二は、市町村民村であります。同じ税目は從前にも存していたわけでありますが、その性格を一変しているのでありまして、市町村内に住所を有する個人に対しては、均等割及び所得割により、事務所、事業所又は家屋敷を有する個人及び事務所又は事業所を有する法人に対しては、均等割によつて課するところの税であります。  從來の市町村民税と異なりますのは、第一には、世帶主を納税義務者とする家族主義的な構成をとつていたものを、所得のある限りは、成年者をすべて納税義務者とする個人主義的な構成をとつていることであり、第二には、均等割資産割及び所得割の三者によつて課税していたのを、資産割を廃止して、均等割と所得割の二者によつて課税することとしたことであり、第三には、法人に対しては均等割しか課税しないこととしたことであります。  而して、均等割の額は、人口五十万以上の市において、個人は八百円を標準とし最高一千円、法人は、二千四百円を標準とし、最高四千円、人口五万以上五十万未満の市において、個人は六百円を標準とし、最高七百五十円、法人は千八百円を標準とし、最高三千円、これら以外の市町村において、個人は四百円を標準とし、最高五百円、法人は千二百円を標準とし、最高二千円としているのであります。  地方、所得割につきましては、前年の所得税額課税標準とし、その百分の十八を標準とし、百分の二十を最高とする方式、及び前年の課税総所得金額課税標準とし、百分の十を最高とする方式、並びに前年の課税総所得金額から所得税額を控除した後の金額を課税標準とし、百分の二十を最高とする方式の三方式のいずれかを選択し得るものとしておりますが、昭和二十五年度におきましては、第一の方式のみを採用することとしております。  尚、市町村民税は、前年において所得がなかつた者及び生活保護法の適用を受ける者並びに不具者及び未成年者に対しては、その全部を、同居の妻に対しては、均等割を課さないものとしております。ただ未成年者及び不具者であつても、一定額以上の資産所得又は事業所得を有し且つ独立の生計を営む場合又は同居の妻であつても、その夫が市町村民税納税義務者でない場合においては、非課税の取扱を受けないのであります。  課税団体は、六月一日現在において住所又は事務所、事業所若しくは家屋敷が所在した市町村で、その課税方法賦課処分によるものとし、納期は原則として、均等割のみを納付するものは七月、その他のものは、七月、九月、十二月及び二月の四回としております。又收入見込額は、昭和二十五年度において五百七十五億円、平年度において四百八十七億円であります。  新税のその三は、固定資産税であります。固定資産税は、土地、家屋及び減価償却の可能な有形固定資産に対し、その価格を標準として原則として、所有者に課するところの税であります。これは、從來の地租、家屋税を拡充したものでありまして、その主な相異点は、課税客体が土地、家屋の外に、償却資産の加えられていること。課税標準が、賃貸価格と異なり価格であることであります。  而して、その価格は、毎年一月一日の時価を基準として、概ね各市町村に設置される固定資産評価員の行う評価に基き、市村村長が決定いたします。この市村村長が決定した価格は、固定資産税の課税の必要上、市町村に作成を義務付けられた固定資産課税台帳に登録し、一定期間関係者の縱覽に供して、確定することとしております。但し、昭和二十五年度分の固定資産税課税標準に限り、農地以外の土地及び家屋については、賃貸価格の九百倍の額、農地については、自作農創設特別措置法による買收農地の対価に二十二・五を乘じて得た額とするものとしております。  又償却資産の価格については、資産評価法の規定によつて再評価を行なつた場合における再評価額の限度額と、同法の規定によつて償却資産の所有者が現実に行なつた再評価額又は再評価を行わない場合にあつては、その資産の帳簿価格とをみて、市町村長が決定するのでありますが、原則として資産再評価法による再評価額の限度額を課税標準たる価格とするよう指導すべきものと考えております。  固定資産税の税率は、百分の一・七五を標準としておりますが、当分の間百分の三を最高とし、且つ、昭和二十五年度分に限り、百分の一・七五に一定したのであります。いずれも課税の條件を同一にすることによつて課税標準額について存する不均衡の所在を明確にし、次の機会における固定資産の公正な評価を容易ならしめようとする趣旨であります。  尚大規模の工場や発電施設が近隣の市町村の公共費の支出に直接且つ重要な影響を與えたり、これらの地方における経済と直接且つ重要な関連を有する場合においては、地方財政委員会がこれらの固定資産を指定し、これを評価してその価格を決定し、固定資産の存在する市町村の如何に拘わらず、その価額を関係市町村に配分することができるものといたしておりますのは、税源の極端な偏在を防止しようとする趣旨に外ならないものであります。  又船舶、車輛その他二以上の市町村に亘つて使用される移動性若しくは可動性償却資産及び鉄軌道、発送配電施設その他二以上の市町村に亘つて所在する固定資産のうち、地方財政委員会が指定したものについては、地方財政委員会が価格を決定し、その価額を関係市町村に配分するものとしておりますが、その趣旨は主として関係市町村間における評価の適正を期そうとするところにあるわけであります。固定資産税賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とし、納期は原則として四月、四月、八月及び十一月の四回としておりますが、昭和二十五年度分の償却資産に対する固定資産税に限り一月一回と定めております。この税の收入見込額は昭和二十五年度において約五百二十億円であり、平年度において五百七十八億円であります。  第二は、既存税目に対して加えられた変更に関する説明でありますが、  その一は、入場税に関するものであります。第一点は税率を從來の十五割の部分を十割に、又從來の六割の部分を四割に、それぞれ三分の一ずつ引下げることであります。  第二点は新たに課税除外の規定を設けたことでありまして、(1)学校、社会教育団体社会事業経営者等が主催する、(2)学生、生徒、兒童又は素人の行う催しが行われる場所への入場に対しては、(3)その催物の純益がすべて学校、社会教育社会事業等のため支出され、且つ、(4)関係者が何らの報酬を受けない場合に限つて入場税を課さないことができるものとしたのであります。  第三点は、催物の主催者等に所定の入場券又は利用券の発行義務を課すると共に、入場者が入場し又は利用者が利用する際に、その入場券又は利用券の一半を切り取つて他の一半を入場者又は利用者に交付する義務を課したこと、及び全員を無料で入場させた場合であつても、その情況により経費を課税標準として課することができるものとしたこと等徴收の強化を図つた点であります。  その二は、遊興飲食税に関するものであります。第一点は、現行の税率十割及び二割に引き下げ、以て負担の軽減と徴税の適正化を図らんとしたことであります。  第二点は、條例で領收証発行及び証紙使用の義務を課し得るものとし、乱れ勝ち遊興飲食税の徴收を確保する途を規定したことであります。  その三は、自動車税漁業権税自転車税荷車税広告税入湯税及び接客人税についても新たに標準税率を定め、以て地域間の負担の均衡化を図ると共に、その課税手続、救済、罰則等に関する所要の規定を整備して、納税者の理解に便ならしめようとしたことであります。  第三は、賦課徴收について改正を加えました諸点に関する説明であります。  その一は、過納に係る地方団体徴收金納税者に還付し、又は未納の徴收金に充当する場合において加算金の制度を創設し、以て納税者の権利の保護に欠けるところのないようにしたことであります。  その二は、納税者又は特別徴收義務者について、滯納処分強制執行破産宣告等があつたときは、地方団体はその徴收金について交付要求をなし得るものとし、以て税收入の確保に遺憾なきを期したことであります。  その三は、納税者に交付すべき徴税令書には課税の基礎及び税額算定の根拠を明確に示さなければならないものとし、以て納税者の保護とその納税への協力を期したことであります。  その四は、入場税遊興飲食税電気ガス税木材引取税等特別徴收によつて徴收させるときは、特別徴收義務者にその徴收に係る税金を申告納入させることにするとともに、入場税遊興飲食税特別徴收義務者特別徴收をする場合においては、そのことを明示する証票の交付方を地方団体の長に申請するものとし、その交付を受けた証票を店頭その他公衆の見易い箇所に貼付しなければならないものとし、以てこの種租税徴收の強化を図つたことであります。  その五は、納税義務者申告納付し、又は特別徴收義務者が申告納入する場合においては、延滯金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金の制度を、又督促状を交付した場合においては、延滯加算金の制度をそれぞれ新たに設け、以て納税意識の高揚と滯納の絶滅を期したことであります。  その六は、所要の罰則規定を整備して徴收の強化を図つたことであります、尚今次改正によつて廃止される税は先に成立いたしました地方税法の一部を改正する法律と合わせ道府県民税、地租、家屋税事業税特別所得税不動産取得税酒消費税、電話税、軌道税、電柱税、船舶税、舟税、金庫税、と畜税、使用人税、漁業権の取得に対する漁業権税、自動車の取得に対する自動車税、自転車の取得に対する自転車税、荷車の取得に対する荷車税都市計画税等の多数に上るのであります。  以上を要するに今次改正案は実に、我が国の地方税制創始以來の画期的なものであり、特に附加価値税固定資産税及び市町村民税の三大新税の創設、道府県税体系市町村税体系との明確な分離及び賦課徴收手続明確化等の諸点において極めて優れた特色を有し、地方財政の確立乃至地方自治強化のために偉大なる貢献をなすべきことが期待されるのであります。  以上申述べましたのが今回の地方税改正案の大要でございます。  それでは引続きまして地方財政平衡交付金法案の、これは政府で提案を準備いたしておりますが、その構想概要というものを、この機会に御説明申上げたいと存じます。  地方公共団体の自主性を徹底し、地方自治の活溌な運営を期待しつつ、積極的にその発展を図りますことは、国政民主化の基礎を培う必要の要請でありまして、これがためには、一面地方自治制度自体の整備を行いますと共に、他面これに即応した地方税財政制度を樹立いたしますことの緊要なるは論を俟たないところであります。而して地方税財政制度確立基本方策といたしましては、  第一に、地方団体に対し、豊富潤沢なる財源を與えることであり、  第二に、地方收入の根幹でありますところの地方税につきまして、その税制を十分自主的、且つ自律的ならしめることであり、  第三に、すべての地方団体を通じまして、少くとも合理的且つ妥当な自治活動を行うだけの財源は、これを保障しなければならないということにあると存ずるのであります。経済社会の進展に伴う経済力の都市集中と、人文の発達に伴う地方団体の行政活動分野の拡張とは近時一般の趨勢でありまして、その結果強力な財政力を持ち、軽少な地方税の負担の下に、豊富多彩な自治活動の可能な地方団体を生じます半面、貧弱な財政力の下に、住民に過重な税負担を課しながら、最少限度の行政施設すらも営み得ない地方団体を見るに至りますことは、この間の趨勢に伴う必然の現象であります。このため我が国におきましては、富裕団体と貧弱団体との間の財政力を均衡化し、以て全地方団体の財政の基盤の確立を図るため、昭和十五年の中央地方を通ずる税制改革に際し、夙に恒久の制度として、地方配付税制度を創設し、爾來今日に至るまで、常に地方団体間の財源調整の手段として、はた又地方団体に対する財源附與の手段として、不十分ながらよくその機能を発揮し、地方自治の向上発展に資するところ顯著なものがあつたのであります。  而して、地方配付税制度は、その財源の一半を地方団体の課税力の強弱に逆比例的に、他の一半を地方団体の財政需要の多寡に正比例的に配分しつつ、課税力が一定の限度を超える地方団体にはこれを交付しないことにして参つたのであります。元來、地方財政の調整と、地方団体の自主性の確保とは両立し難い性格を持つものでありまして、地方配付税制度の運用に当りましては、地方団体の自主性の確保を重点的に考えて参りましたため、地方配付税の配分方法も可及的にこれを簡素にし、地方配付税の配分のため必要とする各地方団体の課税力や財政需要の測定に当つても、ひたすらこれが当該地方団体の財政運営の自主性を制約しないよう留意して参つた次第であります。これがため反面各地方団体間の財源調整は不徹底ならざるを得ない欠陷も又有しておつたのであります。反面ここに又、国庫が個々の経費について或いは一定額を負担し、或いは一定額を補助するという理由も見出されて、大小数百種類に及ぶ補助金、負担金の生れてきたゆえんがあるのであり、これがしばしば地方団体の行政に無用な干渉を加える動因となつて参つたのであります。併しながら地方団体をして事務を行わせる以上は、地方団体をして創意工夫を盡させる途をこそ選ぶべきであり、これを防げる干渉の途は強く排除するよう努力されなければなりません。  而して、真に地方団体を強力ならしめ自治運営を活溌ならしめて参りますためには、すべて公共的な事務事業は、單に一地方の利害に止まるもののみならず、全国的な利害に連りますものも又原則としてすべてこれを地方団体の実施に委ね、而も、その負担とその責任の下に執行せしめて行くことこそ必要でありますし、これがためには、干渉の動因は排除しつつもすべての地方団体を通じて、これらの事務事業を実施して行くための必要、且つ、最少限度の財源は完全に確保して行けるだけの財政制度を打立てる必要が生じて來るのであります。よつて政府におきましては、地方自治の確立を企図するシャウプ使節団の勧告の趣旨に鑑み、且つは、今般地方税財政制度の根本的改革を試みる機会に際し、個々の雑多な補助金を通ずる自治干渉乃至中央支配の途は敢然と排除しつつも、総合的な地方財政調整の方途はこれを徹底させることを目途に、現行地方配付税制度を廃止して、新たに地方財政平衡交付金制度を創設することといたしたのであります。而して、從來の財政均衡化方式に画期的な変更を加えると共に、課税力及び財政需要の測定方法を精緻周密ならしめることにより、すべての地方団体に対し、均衡のとれた地方税の課税の下に妥当な規模と内容の地方行政を保障するに足るだけの財源は完全に確保することを期して、この法案を提出することといたした次第であります。  以下法案の内容の概略について申上げますと、先ず第一にこの交付金制度の地方財政均衡化の方式でありますが、これは一定の方法によつて各地方団体ごとに測定した財政需要額と、財政收入額とを比較し、財政需要額が、財政收入額を超える額を補填するという方式によつております。この方式を採りますならば、各地方団体の財政需要額と財政收入額とが、的確に捕捉される限り、財政均衡化の趣旨は殆んど完璧に達成せられると存ずるのであります。  次に、毎年度交付すべき交付金の総額は、一定の方法により測定しました当該年度における財政需要額が、財政收入額を超えると認められる地方団体の、その超過額の見込額の合算額を基礎として定めることといたしまして、その見積は、地方団体並びに国の関係行政機関に必要な資料の提出を求め、これに基き地方財政委員会が行うことといたしております。  次に、各地方団体に対する交付金は、交付金の総額の百分の九十の額を普通交付金とし、百分の十の額を特別交付金として交付することといたしております。  普通交付金は、その総額を各地方団体の基準財政需要額が基準財成收入額を超える額に按分して算定いたします。基準財政需要額と申しますのは、地方団体がその目的を達成いたしますために、合理的、且つ、妥当な水準において地方行政を行う場合に要しまする経費のうち、補助金、負担金、手数料等の特定の收入を財源とする部分を除いたものの所要額を言うのでありまして、その算定は地方行政を相当数の種類に分類し、それぞれの行政に要する経費を測定するために定めた測定標準の数に、測定標準單位当りの標準費用を乘じて行うことといたしております。この場合測定標準の数は、実数をそのまま用いないで、これを一層的確に財政需要の測定ができるようにいたしますために、人口密度、寒冷積雪度等一定の事由を参酌してこれを補正したものを用い、又測定標準單位当りの標準費用は、団体の性格に基く財政需要の相違等を考慮し、道府県、大都市、都市及び町村ごとに定めまして、財政需要測定の適正を期することといたしております。  基準財政收入額は、各地方団体間の徴税状況により交付金交付の公正を失することのないようにするため、当該団体の法定普通税の收入見込額を一定の基準税率により客観的に捕捉したものを用いると共に、その基準税率は、地方財政に彈力性を残し、かたがた地方団体の徴税税欲の減退を防止するため、地方税法に定める標準税率の百分の七十に相当する率を用いることといたしております。  次に特別交付金は、普通交付金の測定標準では捕捉し難い特別の財政需要があること、交付金の額の算定期日後に生じた災害等のため特別の財政需要があること、その他特別の事情があることによりまして、普通交付金の額が過少であると認められる地方団体に対してその事情を考慮して交付することといたしております。  而してこれらの交付金の算定は、主として按分の方法によりますため、一定期日の現在における地方団体について算定する必要がありますので、これを毎年度四月一日とし、その期日後地方団体の廃置分合、境界変更がありました場合には、交付金の決定額につきそれぞれ必要な変更の措置を講ずることといたしております。尚交付金は普通交付金は年四回に分け、特別交付金は年一回にこれを交付することといたしております。  以上が交付金の決定並びに交付方法の概略でありますが、交付金は地方財政の均衡化上必要欠くべからざる制度であるといたしましても、尚国が一定の基準に基き、地方団体に交付するものでありますため、その性質上收入の自主性において欠くるところがあり、又その運営の如何によつては、地方自治の中央集権化的傾向を誘到する惧れなしとしないのであります。このため、この制度と地方自治との調和を図る趣旨におきまして、  第一に、その総額は、地方財政の均衡化の機能を果すに、必要な限度とすると共に、その交付方法は、これに関する主要な規定は、すべて法律を以て定め、細目の規定と雖も、可及的に政令又は規則において定めることといたしまして、行政官庁の自由裁量の余地を極力排除することといたしております。  第二に、国は、交付金の交付に当つて、地方自治の本旨を尊重し、濫りにその円満な発達を阻害するような條件をつけてはならないことを以て、この制度運営の基本方針の一といたしております。從いまして地方行政の種類ごとに財政需要は測定いたしますが、これは原則として平衡交付金交付額算定のための便法に過ぎないのでありまして、これによりまして直ちに各地方団体の歳出計画に一定の枠を嵌めるものではありません。交付金の使途は、地方団体の自由に委ね、交付金も又一般財源の一つとして、これを縱横に駆使しながら、地方団体はその実情に最も適合した行政の総合的運営に遺憾のないよう期すべきものと存ずるのであります。併しながら、反面地方団体の事務事業といたしておりますものでありましても、国家全般の立場から、その運営に一定の規模と内容とを備えることを、国が当該地方団体に要請する必要のある場合もありますし、これがため從前国において、これらの経費の一部を負担しておりました経緯もありますので、地方団体がその行う行政につき、法律又は法律に基く命令により国が要請する程度の規模と内容とを備えることを怠つた場合等におきましては、一定の手続により交付金の額を減額し、又はその一部を返還せしめることといたしております。  又義務教育費の測定とその支出を地方団体に義務付けるために、別途標準義務教育費法案が提出されておりますが、一面義務教育の特殊性に鑑み、他面、義務教育費国庫負担制度の廃止に代る措置として、義務教育の水準が維持されるまでは、暫定的にこのような制度を地方財政平衡交付金制度と併行的に設けることも止むを得ないところと考えております。  第三に、交付金の額の算定の基礎につき不服がある場合には、審査の請求を、又、交付金と減額し若しくは返還せしめられる場合には、異議の申立を認め、以て地方団体の利益の保護を図ることといたしておる次第であります。尚本制度は、從來の均衡化方式に画期的な改変を加えたものでありますために、その十全な成果を收めますためには、今後とも地方経費並びに收入の測定方法につき、更に研究を加え、交付金の計算がますます客観的な基礎に置かれるように要後一層努力を継続して参りたい所在であります。  以上が平衡交付金法案の構想でございます。
  4. 小林勝馬

    ○小林勝馬君 大体政府提案理由も聞きましたし、時間もあれでございますから、一応午前中は打切りまして休憩して頂きたいと思います。
  5. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは午後一時まで休憩をいたします。    午前十一時五十三分休憩    —————・—————    午後一時三十六分開会
  6. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 休憩前に引続いて会議を開きます、通告順に発言を許可いたします。岡田宗司君。
  7. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 本田国務大臣に対しまして地方税に関する諸点について御質問をいたします。  今度の地方税法はシャウプ勧告案に基きまして非常に大きく改革をされておるわけでありますが、この改革によりまして直接には地方財政の上にも大きな影響を持つわけであります。と同時にこれが国民生活の上に及ぼす影響も又非常に大きいのであります。從來地方税制がいろいろ変革をされました場合は主として税率等の変革やその他でございまして、又新税が設けられましても全体としての大きな改革はなかつたのでありますが、今度は根本的な変革になつておるのであります。我々は無論この変革におきまして非常にいい部分を認め得るのでありますけれども、と同時にこれが施行されますというと国民の生活、この経済生活の上に非常に大きな影響を及ぼし、これが却つて所期の目的に反するような結果になることを非常に恐れるものであります。  先ず第一にお伺いしたい点は、この地方税法を施行いたしましてこれから出ますところの地方税というものは、先程の御説明によりますというと、二十五年度におきましては二十四年度に比して役三百億の増加になる、こういうふうに言われておるのであります。これは国税の減税と相殺するならば、全体としてはやはり減税になる。こういうふうなことを言われておるのでありますが、果してこの地方税の増税が一体個々の、つまり国民生活を通じて作用いたす場合に、そういう全体的な減税というもの、数字の上で出て來る減税というものと違つた結果を個々の国民経済生活の上にもたらすのではないか。そうしてこれによりまして從來よりも全体としては、或いは数字の上では減税になるが、個々の国民にとりましては相当負担が過重になつて來部分があるのではないか。こういうことが心配されるのであります。その結果この地方税増加によりまして、経済活動が阻害されるものが非常に多くなるということが予想されるのでありますが、全体としてこの地方税制の施行によりまして国民経済がこれによつて阻害されることがないかどうか。先ずその点からお伺いしたいと思うのであります。
  8. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 只今のお説の通り全体的には国税地方税を総合して計算をいたしますと相当の減税になるのでございますけれども、個々の納税者におきましては、今回の国税地方税改正が却つて増税になるというものも出て來ると思うのでございます。これは課税適正化負担均衡化ため税制の根本的改革でありまして、或る程度そうした面を生じますことは、改革という趣旨から考えまして、止むを得ないことと存ずるのでございますが、併し極端なる変動はこれは避けなければなりませんので、それらに対する規定も税法の中に多少は準備されておるのでございますが、それ以外のところは産業を破壞することの程度にまで負担が急増するというふうには考えられないのでございます。今回の改正によりまして重加されます面は、大事業方面が、今日まで欠損であれば事業税がかからんという立場であつたものが、欠損であろうと利益のあるなしに拘わらず、一定設備に対し、又一定附加価値に対し課するということになつておりますので、その所得がなかつたため事業税等で負担が軽かつたという立場の企業が、この新税法を施行される場合には相当高くなるということになりますけれども、これは地方財政の恒久的な財源確保ためにはこの制度によることが妥当であると考えております。從つて御質問の御趣旨の、産業を破壞するというような程度までには至らないと思つております。
  9. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 只今本多国務大臣のお説ですと、産業を破壞するに至らない、こういうお話であつたのであります。で、これは見通しの問題でございますが、丁度この新らしい地方税法が施行されるのが本年の四月一日からになつておるのです。ところが昨年から見て参りますというと、経済界の変動が相当著しい。政府では今はデフレじやないのだ、ディス・インフレだ、こういうことを言つておるのでありますが、その実際はデフレーシヨンの傾向をはつきりと示している。そうして各経済活動も、銀行を除きましては、その経済活動の機能が著しく鈍り、そうして所得がそれぞれ減つて來ておるのであります。そしてその結果これらの地方税が、特に今度の地方税は、新らしい附加価値税にいたしましても、又固定資産税にいたしましても、これは所得の増減と共に増減するものではないのであります。從いまして急激に今日のごとく所得が減少しております場合において、この殆んど固定せられるような税金が、二十四年度標準を以て二十五年度から施行されるということになつて参りますというと、これは総体的に大きな重味になつて参りまして、それが数字の上では全体としての減税になつておるけれども、この地方税増加ために全体に実際は非常に重く感じられるというふうに私共に考えられるのでありますが、この地方税所得の減少に対して相応じて行かない点に大きな欠陷があるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点についての本多国務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  10. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 附加価値につきましては、これは所得そのものではありませんけれども、所得を含む附加価値でありまして、やはりこれは大体附加価値の減少或いは増加ということは所得と比例する税率をもつておると考えます。更に又所得と比例いたしますのは住民税でありますが、住民税所得割は本年に限つて年度所得税額住民税所得割の規準にいたしますけれども、これは税率の方が標準税率でありまして、財政需要額が同じ規模のことをやるのでありましたならば、前年度よりも縮小することと思いますので、そうしたものと見合せまして、税率の方まで下げて行くことが適当と存じます。更に固定資産税だけにつきまして本年度一定税率、一定倍数を以て計算することになつておりますが、他の税率が加減もできますので、この固定資産税は今回のあらゆる税の根本的改革の中に、これ一つぐらいは、どうしても、この変革に際しまして確固たる一つ財源を柱として定めて置く必要があるだろうという点と、更に課税標準等の不均衡を是正するために同じ標準で、本年よりこれを実行することが、後の是正を促進するゆえんであろうというようなことを趣旨といたしておるのでございます。
  11. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この附加価値税の問題でございますが、只今その所得に応じて増減すると言われたのでありますけれども、実際事業税の場合と違いまして所得に応じて増減する程度が極めて少い、そうしてむしろ固定的な部面が多いのであります。從いまして赤字が出るような事業の場合におきましても、相当多額の附加価値税を拂わなければならん。特にこの附加価値につきまして私共が憂慮いたしますことは、この附加価値税が日本の産業の実情に合つたものかどうかという点なんであります。附加価値税は今度初めて行われる税金であります。而も他国にもその例を見ない税金がありまして、理論的にはいろいろ辻褄の合うようにできておるかも知れませんけれども、この附加価値税を施行いたします際に、日本のように産業構成が労力に非常に頼る部面が多く、アメリカのように機械化されておらない、労力に頼る部面が非常に多く、而も企業の規模が大きくなく、中小企業が多いというところにおきましては、この附加価値税がそのために非常に増加され、それが企業に大きな影響を及ぼす。而も今日中小企業は赤字に苦しんでおります際に、急激にこの附加価値税が施行されますために、非常に支出が増加いたしまして、そのため企業の存続を危くするというような事態も生ずるのであります。中小企業で労力を多分に使つておりますところには、そういう危險が相当あるのではないかというふうに考えられるのであります。その点についての本多国務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  12. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 普通の中小企業につきましては、今回取引高税事業税、それらのものが廃止されますので、差引きいたしまして相当負担軽減すると存じます。ただ併し特にこの只今御指摘のように労銀というようなものが附加価値内容の大部分を占めるもの、こうしたものには相当のこれは負担の増となるものが生じて來ると存じておりますが、この附加価値を自治体が課税する場合の課税標準として適当なりと考えました所以は、今日までのような純所得を対象とするものであつては、如何なる大規模な施設、又は如何に自治体の公共施設を、その企業自体が利用しておりましても、負担を免れるというような結果になりまして、これは自治体を経営して行く上におきまして、応益負担と申しますか、そういう精神にも沿わないことであり、地方財政基礎確立するために結局、その地方自治体内で創造された附加価値というものを捉えて課税標準として定めて行くということが、その自治体の財政基礎確立ために必要である。今までのような純益というのでは、只今申上げましたようなことからこれは不適当であるというふうに考える次第でございまして、只今申上げました急激に負担増加するであろうというような内容のものにつきましては、多少の緩和規定もありますけれども、併し根本は、これは税制の根本的改革であるというところで、それを前提として今後の事業をやつて頂く外はないんじやないかと思います。
  13. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先程の大臣の御説明の中に、現下我が国経済にとつて最も必要であるところの産業有機的構成高度化を促進するという効果も又期待できるものであります。こういうことが謳われておるのであります。で、無論日本の産業有機的構成が低くて、これが高められることは、これは我々にとりましても望ましいことなんであります。併しながらこれは当然資本の蓄積が行われ、その資本の蓄積の過程におきまして、漸次新らしい機械の採用、合理的なるもつと能率的なる機械の採用が行われ、それに伴う産業有機的構成高度化して行くということが望ましいのでありまして、今直ちにこういうような中小企業、特に労力を多く使つておりますものが非常に苦しんでおります際に、かようなるその税金のかけ方如何によりまして急激にそれを強いるということは、結局資本の蓄積を促進して有機的構成を高めることにならんのであります。むしろそうではなくて、有機的構成の低い現在苦しんでおります中小企業を破壞することになるということになつて行くのであります。そうしてそれらが破壞されまして、いわゆる大工業、有機的構成の高いもののみが生き残つて行く。こういうようなことになつて、全体としての有機的構成が高められる。つまり中小企業の犠牲ということが考えられるのであります。私はこの税金のかけ方、附加価値税がそういう作用を持つということを憂えるのでありますが、この点につきましての本多国務大臣の御所見を承わりたい。
  14. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは機械設備等の促進は、この附加価値税法に関する範囲内においてのみ行われるというのではなくして、お話のような資本の蓄積の結果として、これはそうした改善がなされるべきものであると思うのでありますけれども、附加価値税法におきまして、どんな小さな中小商工業者でも営業用の固定資産になる道具を買込んだり、機械を買込んだり、或いは土地家屋、或いは工場を建てるというような場合、その代金を附加価値から控除するということによつて、消極的ながらそうした設備が促進されるようなことになるであろう。これは今日の遅れているすべての中小商工業の設備を促進する上において貢献するいいことである。かように考えている次第でございます。中小商工業自体といたしましては、從來の税に比較いたしまして相当大幅に軽減されるのであります。
  15. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この附加価値税と、それから固定資産税でございますが、これらが相当合さりますと大きなものになつて來ます。一例を挙げてみますというと私鉄であります。国有鉄道は無論税金がかかりませんが、私鉄には今度固定資産税と、それから附加価値税がかかるというと、これは相当大幅な負担増加になつて來る。これが必ず運賃の値上げを起すことになつて來ると思うのでありますが、四月一日から私鉄の運賃を上げるというのが一応とり止めになりまして、恐らく五月あたりから引上げられることになるであろう。大屋運輸大臣もそういうふうに言われているのでありますけれども、この結果私鉄の運賃はどれくらい上ることになるか、何割ぐらい上ることになるのか、それの見通しについてお伺いしたい。
  16. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) この附加価値税は特に融通性を持つているのでありまして、転嫁されて行く関係から交通料金等にも影響して來ることと存じます。併し特に影響の大きいものと話に上つておりまするこの交通事業施設等について、総括的に計算をいたしてみますと、通行税、それから取引高税法人税の今回の軽減、そうしたものを国税地方税を通じて総合的に差引計算いたしますと、それ程総括的な集計では増税にならないのでございます。ただよく伝えられておりますところでは、從前納めていた地方税と、今回の地方税制に基く地方税との額を比較して、十倍になり、或いは十倍以上になると噂されているのでありますけれども、それは事業税等が会社が欠損になつたために、非常に少額になつてつたり、或いは全然なかつたり、会社の所得が少かつたためになかつたりして、負担が余り軽過ぎた結果でありまして、これを私鉄にいたしましても、全体的な集計で私の方では見ておりますが、負担の増には余りならないのでございます。併し個々の私鉄会社につきましてこれは計算いたしますと、今のようなことになりますし、運賃の改訂の要素の中にもこれが勿論とり入れられて、今政府で研究中でございますが、何パーセントの引上げになるかということはまだ資料もございませんし、決定もいたしておりません。あとでその資料に基いてお答えをいたしたいと思います。
  17. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今のお話でありますというと、私鉄の運賃には響かない、余り響きが大きくない。こういうようなお話でありますが、併しながら政府が四月一日から私鉄の運賃を引上げるという意図を持つてつたことも、すでに明瞭になつておることなんであります。從つて私鉄の運賃が上るであろうということははつきりしておるのであります。本多国務大臣がその率が分らないと言われますけれども、今日の私鉄の各会社の收益状況から見ますというと、当然運賃が相当な幅で上げられて來るということが予想されるのであります。そうなつて参りますと、これは勤労者の家計に相当響く。一方におきまして国鉄等におきましては運賃が上らない。この方は運賃の増加が家計に響いて來ないのであります。併し私鉄は同じような條件にありながら私鉄の沿線に住む……、私鉄によつて運ばれる通勤者は、これによつて相当家計の上に響いて來る。これは平均の上につきましては成る程足代の上りは小さいことになるのでありますけれども、実際におきましてはその場合に私鉄の沿線に住む者は家計への響きが相当大きくなつて來る。こういうことになつて來ると思われるのでありますが、その点についての本多国務大臣の所見をお尋ねしたい。
  18. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは電力料金の値上げ、地方税改正等が原因となりまして私鉄料金の値上げの運命にありますことは、只今お話の通りであります。ただ政府でまだ決定いたしておりませんけれども準備はいたされつつあるのでございます。その値上げの率は大体平均して一割五分くらいになるのではないかと、調査中の資料でありますが、さように了解いたしております。地下鉄等の値上げはこの一割五分から切離しまして相当大きな値上げで七円が十円くらい、四〇%くらいの値上げになるのではないかと新聞にも出ておりますが、その理由は実は資産評価関係でございまして、資産評価をどの程度にやるかということによつて、大分その固定資産税も違つて参りますので、それによつて決まることでありまして、まだ確定的なことは申上げられないのでございます。そういう関係から今まだ確定的な資料を実は持つておりませんけれども、安本等の調査によりまする経過の話を聽きましたが、地方税改正によつて生活に二%くらいは響いて來るのだろう。これは地方税の上つたところ、交通費の増から一切を総合いたしましてそれぐらい響いて來るように聞いております。まだ資料もまとまつたものを持つておりません。
  19. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 固定資産税と、資産の再評価との関係についてお伺いしたいと思いますが、これは資産の再評価によりまして、資産のこの名目的価値が非常に増大いたします。そういたしますとその固定資産税というものもそれに伴つて非常に大きくなつて來ると思うのでありますが、この固定資産の再評価というものが一体いつ頃それについてはつきりしたものが施行されることになるか。そうしてその場合に急に固定資産税の額が増加することになつて來るのでありますが、それらが税金として非常に大きく負担になつて來るが、そういうような場合においてこれは何らか緩和の措置が講ぜられるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  20. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは資産評価法に基きまして最終が十月末日、それまでに届出によつて資産評価がされて行くわけでありますが、大体この八月から十月の間に再評価すべきものはされるものと考えております。この資産評価をどうするかということ、地方税とは密接な関係がお話の通りあるわけでありますが、会社、まあそういうふうな事業家におかれましては資産の償却を相当増額すべきであるという見地から、成るべく資産評価は多くしたいという理由が生じて参ります。一面又資産評価を、高くすれば、今度は固定資産税が高くなるということで牽制を受けるというような関係にあるのでございますが、この固定資産価額標準として決定いたします場合には、その会社が現実に実行いたしました資産評価額の限度を抑えて行くように指導して参りたいと考えております。
  21. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に固定資産税が家賃に及ぼす影響についてでありますが、政府から出ております資料を見ましても、非常に家賃に及ぼす影響が大きいのであります。例えばここに出ておるものを見ましても、坪当りの計算によりまして現行で約十四円九十六銭九厘となつておるものが、新らしい変更額について見ますというと、二十八円四十八銭九厘という、九割増加するということになつておるのであります。これは先程地方税全体を含めて家計への響きは多分二%くらいであろうというようにいわれておるのでありますけれども、若しこのように家賃が二倍になるということになつて参りますというと、恐らく所得の低い勤労者の家計への響きは單に二%には止まらない。而も先程いわれましたように、私鉄の運賃が上るということになつて参りますというと、更にその影響は大きくなるということが考えられまして、これはやはり賃金ベース改訂の問題とも重要な関連を持つて來るのであります。この家賃の増加が果して先程いわれましたように、家計全体への響きは二%で止まるかどうか。かように大幅に引上げられても、そのくらいに止まるものであるかどうか。その点についてお伺いしたい。
  22. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 生活費の響きが二%くらいと申上げましたのは、実は安定本部で調査中のその話を私が聞いただけでありまして、正確な大体数字を以て御説明申上げたいと存じますが、この固定資産税が家賃に及ぼす影響が最も大きいのでございます。これはそれぞれ例を取りまして場所と、その建物の坪数等によつてその家賃に及ぼす影響を調査した資料がございますので、それで御説明申上げてみたいと存じますが、家賃を公定以下で拂つておるような場合、これは固定資産税の今までの不動産税との差額、それは全部一応家賃が上るものを見なければならんと思います。又公定価格の家賃以上の場合には、そこに吸收さしてしまうこともできようと思います。そうした例につきまして資料に基いて政府委員から御答弁申上げさしたいと思います。
  23. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 固定資産税になります結果、家賃に響きます程度は、よい家屋に住んでおるか、惡い家屋に住んでおるかということで、可なり違うわけであります。即ち固定資産税賃貸価格をやはり基礎にとつて参ります関係上、賃貸価格の安い家屋、言い換えれば惡い家屋におきましては必ずしも家賃額にそう大きく響くとはいえないわけであります。それで全国平均で賃貸価格は坪当り二円四十銭ぐらいであります。今申上げます家屋基礎にしております賃貸価格は十二円九十六銭、これは東京都の標準的な家屋をとつておるわけであります。それによりますと、家賃の現在の坪当りの統制額は十四円九十六銭九厘、その中で家屋税の占めておりますものが六円四十八銭地代が三円五十七銭五厘ということになつております。この部分だけが固定資産税に切り換えられる結果、相当上がると計算しますと、家屋税部分は六円五十六銭五厘になるわけであります。自然十四円九十六銭九厘というものが二十八円四十八銭九厘になりまして、約九割方これで上がるわけであります。併しながら今申上げましたように、全体的には賃貸価格はこれよりは少し低くなると思いますので、その影響はもう少し少いだろうと思つております。それよりも根本的にこの統制家賃の影響を受れる、現実にその響きを受ける家屋というものが全国的にどれくらいあるだろうかということについて多少疑問を抱いておるのであります。全体の家屋のうちで農家の部分が約半分ある。残り半分につきまして、更に実際賃借りしております部分が又半分ぐらいだろうと思います。更にその半分につきまして、現実に遺憾ながら必ずしも統制地代、家賃が守られていない部分もあるわけなのでありまして、そういう点から考えて見ますと、その影響する範囲が今お話になりましたよりは相当範囲が狹いのじやないかというふうな見方をいたしております。
  24. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういうふうに行けば結構なんでありまするけれども、併し特に戰災を受けました地方等におきましては、恐らく影響は非常に大きい、こういうふうに考えられるのでありまして、私は今お話のような全般的な、而も楽観的な考え方は許されないと考えております。これは見解の相違ですからこれ以上お伺いいたしませんが、恐らくこの点がやはり全体の生算費の上に最も大きく響いて來ると私共は考えております。  次にお伺いしたいのでありまするが、この固定資産税課税標準とすべき土地家屋価格は大体賃貸価格の九百倍とお決めになつてあります。それでこれは先に八百倍ということを言われておつたのでありますけれども、まあいろいろな向うとの折衡の結果九百倍になつたのだと思いますが、なぜこの賃貸価格に倍率につきまして政府が当初考えておりました八百倍が通らなかつたのが、これは全体としてやはり影響するところ大きいのでありますが、その交渉の経緯、そうしてなぜ通らなかつたかという点についての御説明をお伺いしたいのです。
  25. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは固定資産税收入予定額、これが大体シヤウプ氏によつて勧告がされておりまして、それによつて地方財政の枠を拡げようと、こういうことになつております。その收入予定額を上げるにつきまして税率若しくは倍数を幾らにすれば丁度見積額と一致するであろうかということについて、計算上の見解のいろいろな意見が出たわけであります。シヤウプ氏は一・七五の税率賃貸価格を千倍にして丁度予定額に達するであろうという勧告をしておられるのでありますが、私共といたしまして、一応八百倍にしてもそれくらいの見積收入額には達するのであろうというような計算をいたして見たのでございますが、この固定資産税土地家屋につきましては、これは確実なものが掴みやすいのでありますけれども、償却資産等の面になりますと、資産評価関係、その程度というようなことも、不確定な要素が相当ありますので、それらの点についていろいろ研究して見ましたが、結局收入予定額を上げるのに最も確実に考えられるのは、土地家屋については九百倍というようなことで、この部分はこの程度に抑えて行くことが必要であろうということに関係方面と政府との見解が一致いたした次第でございます。
  26. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 收入予定袋を予め大体考えて置いて、逆にまあ賃貸価格の倍率を出して來たと、こういうことになつておるのでありますが、これはやはり負担の能力、その方面から当然考えなければならなかつたものが逆にそういうことになつておるので、從つてこれは課税の上におきまして、私は重大な問題だと思うのであります。つまり無理に税金の額をとるために、逆に実際に即応しないような価格の計算、それに一利の税率をかけて担当急激な引上げという結果になつて來ておるのであります。で私共といたしましては、この賃貸価格の倍率をかように急激に大きくすることに対しましては、無論反対の見解を持つておるものでありますが、若し政府がこの平年度の一年間におきまして、大体この九百倍にいたしました結果、政府が予想しておりましたところの税額より更に余計取れたというような場合におきましては、その税率を下げる。そういう意思があるかどうか、お伺いしたいのであります。
  27. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 今年のこの固定資産税につきましては、最前もお話し申上げました通りに、特に全国一定税率で取つてつて均衡の是正を促進しようという趣旨も含まれておるのであります。併しそうかと申しまして、初めから無理であるというのでなく、この程度のことはやり得るであろうという勿論観点にも立つものでありますが、そうした観点から今年実施いたしまして、その結果相当只今のお話のような増收というようなことに、課税標準税率において計算して参りました場合、來年は減税ということも考えておるのであります。併し各市町村におきましては、來年からは標準税率になりますから、本年一年だけは窮屈でありますけれども、來年からは徴税が自主的にできる。政府といたしましては標準税率において加減もする、かように考えております。
  28. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に農地の問題でありますが、農地価格自作農創設特別措置法の第六條第三項の規定による対価に二二・五倍を乘じて得た額、こういうことになつております。これは田につきましては、農地改革が賃貸価格に四十倍であり、それに二二・五倍をかけましたものが丁度九百倍になる、ところが畑地につきましては四十八倍と計算されております。從いまして二二・五倍を乘じますというと、それは倍率が九百倍よりもずつと多くなる。こういうふうになるわけでありまして、畑地の賃貸価格というものが非常に高いということになつて参ります。で畑地につきましては田よりも価格が上廻るという結果も生じて來るのではないかと思いますが、その点につきましての国務大臣のお考えは如何ですか。
  29. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 田畑につきまして賃貸価格基準に倍数を考えました場合は、只今のお話の通りに不均衡になるのでありますが、政府といたしましては、一応田について四十倍、畑について四十八倍というものが、田畑の均衡のとれた時価であり、見方であるという、そこを抑えまして、而して二二・五をかけるということにいたした次第でございまして、四十倍と四十八倍は時価の不均衡を得ておるところであるということに立つておる次第であります。
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その考え方が非常に怪しいと思うのであります。農地価格は、当然その農地にできますところの農産物から得られる所得によつて、いろいろ決まつて來ると思うのでありますが、今後農業方面における変動は相当大きい。で現在のようであればよいのでありますが、戰前のようになりまして、畑地からの所得が非常に減つて参る。そうして田よりも割が惡いというような状況も起つて來るのであります。そういう場合におきまして、こういう倍率がそのまま続けられて行きますというと、畑地を持つております農家にとつて非常な不利になつて來ます。そういう場合におきましては、この倍率の是正というようなことが行われるかどうか、お伺いしたいと思います。
  31. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 只今のところでは、畑地の賃貸価格が非常に安い、田の方が高いので、国家といたしまして、この地価を定める場合に、四十倍、四十八倍で均衡がとれておるという前提に今日ではなつておりますので、それを前提として二二・五を掛けすけれども、來年以後のこの算定に当りましては、十分本年度実績を研究いたしまして、又その評価基準につきましては、十分に実際に即応するように是正して行きたいと考えております。
  32. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は時間になりましたから、他の委員に一つ……
  33. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 先程本多国務大臣から、地方税法案及び平衡交付金法案に関する御説明がありました。この提案理由をお聽きし、又我々に配付されました資料を拜見すればする程、この法案が非常に重大な法案であるということを痛感いたしたのであります。更に本多国務大臣は、この地方税法提案理由の中において、この今回の地方税法及び平衡交付金法は、結論としてこの日本の民主化の一番基礎になる、こういう提案理由になつておるわけでありまして、從つてこの税法の内容及びそれがどういうように運営されるかということは、日本の民主化が、これをただ形式的でなく実質的に、この実が結ぶかどうかにその重大な関係があると思われますので、そこで我々は今回の予算審議に当つて、この地方税法及び平衡交付金法の法案の国会提出を待つていたので、又それを十分検討しなければ一般予算を審議しておる意味がないという主張を取つてつたのでありますが、提案理由を伺つても、この資料を見ても、ますます重要性を我々感じておるわけであります。そこで先ず最初にお伺いいたしたいのは、地方平衡交付金法ですね、この法律案は出るといわれて、未だにまだ提案されておらないのでありますが、これはいつ頃提案の運びになりますか、先ずそれからお伺いいたします。
  34. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 平衡交付金法がいつ頃に出るかということにつきまして、実はたびたび御答弁申上げる通り、誠に申訳ないところでございますが、(笑声)今日にも承認が與えられて出せるのではないかということで待つておる状態でございます。これは責任者の責任ある話ではないのでありますけれども、今日あたり出るような情報も入つたのでございますけれども、(笑声)どうも如何なる理由で、如何なる点がどうであるかということを聽くことができないような状況に今ありますので、確たることは申上げられないのでありますが、もう極めて近いうちに提案できる運びのものと考えております。    〔委員長退席、理事田村文吉君委員長席に着く〕
  35. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 本多国務大臣からもたびたび伺つておるのですけれども、今度の地方平衡交付金ですね、一千五十億というこの予算は、今度の出された一般会計予算の中で、終戰処理費一千九百億に次く大きな金額に上つておるわけです。それは今度の一般会計予算の大きな項目であり、而もこの平衡交付金がどういうふうに配分せられるかということが、これが一般の国税にも影響しますし、無論この地方税にも負担均衡という意味から非常に重要な影響があると思いますが、それが未だに出ないということは非常に遺憾であります。遺憾でありますが、この際としてはその法案が出ないまま我々審議せざるを得ない立場に追込まれて來ておるわけですから、そういう前提で御質問申上げるわけです。先ず私は專ら、この税法の内容その他については又地方行政委員会その他で詳しくお伺いいたしたいと思うのですが、二つの観点から御質問したいと思うのです。その一つは、国務大臣も提案理由に述べておられます、この法案の目的地方団体の自主的な、又民主的な活動確保するということが一点。第二は地方行政を保障して行く、即ちその裏付けとして地方財政確立して行く、こういう立場にまああると思うのです。そこでこの税法なり平衡交付金というものが果してこの目的に副うているかどうか。そういう点から、もう一つは総合予算としての地方財政というものの立場、この二つから御質問申上げて行きたいと思うのですが、そこで最初にお伺いしたいのは、提案理由にありますが、この地方公共団体財政力が非常に微弱である。そうして地方自治財政的に破綻に瀕しておるとまで極言されておる。こういうことが書いてありますが、今回の地方税法を実施し、そうして平衡交付金法を実施することによつて、今綻破に瀕しておる地方財政というものが救われるかどうか。その点と、もう一つは何故に地方財政が破綻に瀕しておるか。これは地方民の担税力の問題とも関係があると思うのですが、この二点についてお伺いいたします。
  36. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 地方財政の窮状は、この両法案の成立を見ましたならば相当緩和されるだろうと思つております。シャウプ氏は行政事務を現状のままにして、市町村に一千億の財源を賦與するということを目途として財政計画を立てられたのでありますが、概ねその趣旨從つてこの税法と平衡交付金法の制度はできております。破綻に瀕しておると言われた理由はどこにあるかということについては、課税が甚だしく不均衡になつておる点、それから課税しようにもその枠が狹小であるために無理な寄附金にまで頼らなければならなくなつていた点、更に根本的には財源そのものが余りに少なかつたという点であります。又自治体が自主的に或いは自治的にこの財政というものを賄う権限が誠に狹かつたというような点であります。こうした点から全く行き詰つていたという点も決してこれは間違いじやないと考えております。今回これによりまして財源が拡大いたしますので、今日までの非常に窮状にありました自治体の財政というものは、相当よくなつて來るということを期待しておる次第でございます。
  37. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その地方自治体の財政が豊かになつて來たという面についてもまだ問題があるのですが、その他方自治体が仮に豊かになるとして、今度は地方税は相当殖えるわけですが、これまでやはり地方財政力が微弱であつた一番大きな原因として、今国務大臣はやはり税源がないという点を指摘されましたが、それは今までのいろいろな税法のやり方ではなかつたのであつて、新しい税法を施行すれば出て來る。こういうような御答弁だと思うのですが、その前に、今の中央の税が非常に多いということはやはり問題であつて、その上に地方税が加算されて來る。結局において国民の中央、地方を通じた税が絶対的に重い。非常に重い。そういうところがあると私は思う。從つて結局中央、地方を通じて税負担軽減されるならば、地方自治機関の財源が多くなつても、その費用を負担する国民経済負担というものが非常に大きくなるので、却つてそのことが民主化の線と相容れなくなるのではないか。民主化は形式だけではいけないと言われましたが、一番重要なものは申すまでもなく民主化だと思うのですが、そういう点について、その負担の問題は、非常に地方の税負担がこれからうんと重くなる。非常に重くなることによつて、却つて民主化というものが妨げられるのではないか。この矛盾はどういうふうにお考えになつておるのですか。
  38. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 全くその実質的な負担力、即ち税源というものは市町村民税、府県税、国務を通じて同一でありますから、その点において解決されることが根本である。税金の重い問題については私も同感であります。このたび国税において昨年度の当初予算に比較いたしますと九百億の減税が見込まれます。これを一面から申しますと、今日の重い税でありますから、それで市町村負担力の余裕が出て來たと言うことはできないと思います。併しとにもかくにも国税の面においては九百億の減税が見込まれる。これは一面から申しますと、それだけ国税としては税源というものを市町村の方へ委讓されたと言うこともできようと思います。そういう関係でありますので、この九百億の減税と四百億の、今回の標準税率によりますれば、増税になりますが、それを差引いた五百億は軽減になる。殊にそれ以外の寄附の方法で集められていた四百億というものを、今度は税として取る枠が拡大される結果、そういう無理な方法による負担は百億程度に減少するだろうと思うのであります。そうして参りますと、寄附による三百億の減と合わせて、結局八百億の負担の減になるということも一応言えると考えております。そうした計画で、税法の上において今回地方財政の枠が拡張すると共に、それに対応する負担力の面においてもこれに対応する只今の減税計画ということで、裏付が一応立つものと考えておる次第でございます。
  39. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 中央、地方を通じて何百億という、とにかく金額としては税金が減る。こういう計算については私は異論はございませんが、問題は中央の方でただ仮に七百億減税する。今度は地方で四百億増税される、その減税された同じ人が増税されるならば、そこで同じ減税、増税の額であるならば、それは負担は変らないわけです。ところが中央の方で七百億減税される人と、地方において四百億増税される人とが違う場合、中央において国税において減税される人は、地方において沢山増税される。こういう結果が生ま者あり)そこはただそれで何百億減税になるからそれで国民負担が軽くなる。こういう言い方は意味がないのであつて、一体誰がどれだけの負担を中央においてされ、地方において誰がどれだけの増税になるのか。こういうことが問題なのであります。而も附加価値税は、後でもお伺いしたいと思うのですが、大体転嫁を認めておるわけですね。租税の転嫁を……。それで、前の取引高税みたいな性格を持つていて、転嫁されるものです。ですから四百何十億取つた場合、これはその業者が、その人が負担しなくてもいいのであつて、或いは労働賃金の切下げをやつて、労働者に負担を掛けてもいいのですね。或いは又物価を引上げてそれだけ生務費に加算してもいいわけです。租税の転嫁がある。租税の転嫁を考えると、四百億仮に増税するとして、その四百億は誰に増税になつて來るかというと、事業者も多少は負担するかも知れませんが、多くの附加価値税の増税は労働者とか、或いは消費階級の負担になる。そういう人は国税の方においてどれだけの減税、中央、地方を通じて三百億の減税と言われますが、附加価値税が転嫁されてしまつたら転嫁された人にとつては、これは増税になつてしまうと思う。こういう負担の不均衡については、この税法を考える時にどういうふうにお考えになつたか。どういうふうに徴收されようとしたか。この点を伺いたい。
  40. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 今お話のことと、丁度反対な見解を持つております。この税法によつて負担に変動を生ずる場合は、これは改革のための変動であつて課税の不適正、不均衡であつたものを是正するためのそれは変動である。かように考えております。更に又只今のお話の個々の納税者について調べて見なければ分らんというお話でありますが、これは誠に個々の納税者にとりましては、それぞれその人の納める税の種類等によつて、或いは金高によつて又違つて來るわけでありますが、政府といたしましては総合的に見て、減税になるというようにことを考える以外にはないと思います。これを総合的に見ますると、今回の国税の減税に浴しない国民は一人もないと言つてよかろうと思います。更に又今度の地方税影響を受けない人もないと言つてよかろうと思います。それからこれを総合的に見ますと、最前申上げたように減税になるこう見て行くべきであつて一人々々についての変動は改革のため合理化である、こういうふうに考えております。
  41. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは本多国務相の御答弁は税法について言われておる。成る程税法の形としてはそういうことが言い得るかも知れませんが、御承知の通りこれはこの前も国税の問題について大蔵大臣に質疑したのでありますが、税法というものと実際の税を徴收する場合と違うわけです。税法上これだけ税をまけたらそれだけ国民負担が軽くなるというものではない。特に租税転嫁の問題を論じても無意味だと思う。租税転嫁をどういうふうにお考えになるのか、特に附加価値税についてはどういうふうにお考えになつておるか。
  42. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) この附加価値税の転嫁は、今日までの取引高税、物品税等の転嫁の方法と違いまして、これは営業経費のような性質を持つて自然転嫁されて行くことになると思いますが、その量において吸收し得るものについては吸收される場合もありましよう、転嫁される場合もありましよう。併しその転嫁の限度は附加価値税総額以上には超えないものでありまして、その限度において決してその負担の増にはならない。負担に堪えられないような増にはならないのである、かように考えております。
  43. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 負担に堪えられないというような意味でなく、負担の公平化という意味ですね。ですから転嫁ははつきり税法でもお認めになつておるのですが、問題は仮に四百億減税と言つてもその中全部じやなくても、それが外の人に転嫁してしまえば、それは或る階級には減税かも知れませんが、或る階級にはそれが転嫁されて増税になつてしまう。そこが非常に私は問題で、ただ数字でこう出しますと如何にも全体の減税のようになりますけれども、実際の税負担というものを考えた場合には、税法だけから考えられないで、それが実際にはどういうようになつて行くかが私は問題だと思うのであります。これについては今の御答弁で私は了承できないのですが、この点にこだわつていますと時間がなくなりますから、次にお伺いいたしますが、先程本多国務大臣はこれによつて地方財政財源が相当殖えるとおつしやつたのですが、併しながら実際には平衡交付制度を設けて殖えるのは、そんなに多くないのじやないかと思うのです。と申しますのは千五十億円の内訳を見ますと、從來地方配付税に相当するものが六百六十七億といわれ、配付税に相当するものが二十四年度におきましては七百四十五億円程度で、配付税に相当するものは多少減つている。それから補助金、これが三百五億といわれております。補助金については二十四年度補助金はどのくらいあつたかお伺いいたしたいのですが、そうしますとその残りは七十八億ということになるわけです。それで平衡交付金と言われますが、平衡交付制度によつて殖える分は本年度二十五年度で七十八億円、こういう計算になつておりますが、そういたしますと地方財政がそんなに豊かになると、こういうふうには言えないのじやないかと思うのです。この点はどういうふうにお考えですか。
  44. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは平衡交付金の内容についてはお話の通り従来の配付税、補助金を総合した程度でありますから殖えておらないのでありますが、今回の災害の全額国庫負担、その他のものを総合いたしますと、八百億くらいの増にはなると考えております。
  45. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 八百億くらいの増になる、その根拠がよく分らないのですが。
  46. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 昭和二十四年度の国庫支出金の総額は一千六百五億円であります。それに対しまして昭和二十五年度の国庫支出金は二千三十六億円で、この分だけで四百三十一億円の増になります。その内訳を申上げますと、昨年の昭和二十四年度の一千六百五億円は、地方配付税が六百六十七億円であり、普通の補助金が五百二十四億円であります。それから公共事業の補助金のうちで災害の分が二百二十億円、その他の分が百九十二億円ということになつております。これに対しまして昭和二十五年度では普通補助金のうち、平衡交付金に相当の部分が繰入れられます関係上、五百二十四億円のものが二百四十億円に下つて参ります。それに対しまして災害の二百二十億円が四百二十九億円に殖えて参ります。更に公共事業の補助金百九十二億円が二百七十七億円に殖え、更に失業対策事業補助金が四十億円、地方配付税が平衡交付金に変つて千五十億円、差引きましてこの分だけで四百三十一億円の増になります。更に地方税その他を合せまして八百数十億円の増になるわけであります。
  47. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その内容については、公共事業費その他については後で又お伺いして参りますが、この平衡交付金に関する限りにおいてはそんなに殖えていないわけですな。
  48. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 昨年の地方配付税は六百六十七億円でありまして、二十五年度地方財政平衡交付金が一千五十億円、そのうち三百五億円の補助金の振替わつた部分がありますから、この部分を差引きますと七百四十五億円になります。昭和二十四年度地方配付税の額が六百六十七億円でありますから、差引七十八億殖えたことになるわけであります。ざつと八十億円ぐらいが殖えたことになります。
  49. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 ですから交付金に関する限りにおいては、先程申上げましたのは、これは藤田武夫氏が衆議院で公述された数字を拜借したのですから正確かどうかは分りませんが、今のお話によりましても大体八十億見当、こういうふうなお話であつたのであります。ですから平衡交付金に関する限りにおいてはそんなに殖えたと、著しく殖えたということは言えないと思うのです。それはその通りでいいわけなのですか、そういうふうに了承して……
  50. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) それは数字で明らかな通り、そのくらいのところでございます。
  51. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次に御質問いたしたいのですが、まだこの法律案が出ておりませんから、大体本多国務大臣の先程お述べになつた提案理由政府の考えておる構想について御質問したいと思うのですが、平衡交付金法案、これによつて先程御説明がありましたが、結局これは地方に対して一般国民の最低水準の行政をやられるための金を、これを平衡交付金から出して、これで調整を図つて行くという趣旨だと思うのですが、先程の提案理由の御説明において、結局地方団体標準行政費と地方団体標準的な税收入、それとの差引の不足をこれで補う、こういう話だつた。そこでこの標準行政費とそれから標準税收入、これはどういうふうにして決めるか、決め方についても一応はお話がありましたが、具体的にこの決め方が非常な問題になつて来ると思いますので、又世間に大蔵省の考え方、或いは地方自治庁の考え方等いろいろあるように聞いておりますが、この標準行政費とそれから標準税收入、これをどういうふうにして決めるか、この二つについて御説明願いたい。
  52. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは最前概要説明のときにも申上げました通り綿密な基準を、普遍的な基準を定めなければならないと考えております。実は法案が提出をされますと、そういう基準も法案の中に予定いたしておるのでございますが、例えば行政費につきましては人口、面積、土木事業方面ですと河の長さとか、道路の面積、又教育費につきましては学校数、学級数、兒童数というような、そういうものを詳細に、これは專門的に検討して基準を決めて行きまして、これによつて標準財政需要額を決定いたしたいと考えております。更に標準税收入額につきましては、それぞれ地方団体から資料を集めまして、その資料とそれから政府関係しておりまする行政機関から提出いたします資料等もこれを集めまして、そうして税法上の標準税率算定をして標準額を決める、こういうことに考えております、但しその経費の点につきましても、收入の点につきましても全額を平衡交付金の査定基準に従いますと弊害も生じて来ようと思いますので、七割を標準とすることにいたしております。例えば税について税を少く取れば、全額それが平衡交付金で調整されるということになりますと、どうも税が少くなりがちで、徴税意欲を減退いたしますから、七割程度は平衡交付金の算定基準になるから、三割まではやはり徴税意欲が働けるという余地を残して計算するというふうにいたしたいと考えております。
  53. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 標準税率ですか、それから標準税收入、これは地方自治団体ごとに自由にそれ以上取つてもいいわけですか。
  54. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 標準税率の上には制限税率がそれぞれ定まつておりますが、その制限税率の範囲内においては標準税率まで自由であります。又その標準税率以下も届出だけで幾ら安く取つても自由ということに法律上はなつております。併しこれは余り極端な場合には、勿論政府といたしましても、いろいろ勧告するような措置を取るようなことがあるかも知れませんけれども、それは決して法律上の権力による措置ではないのでございまして、法律上、上下自由ということになつております。
  55. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、住民税でも、附加価値税でも、固定資産税でも、一応政府は枠を作られたわけですね。それ以上実際において取れるという場合は、これは当然予想されるわけですね。
  56. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは地方市町村は、極めて身近に課税標準等も算定して調査することができるのでありますから、その課税標準を調査し、その上で幾ら歳入がなければならんというところとも睨み合せまして、低い税率で以て予定の歳入が得られれば差支ないのでございます。
  57. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、例えば国税において九百億とか、七百億とか言われておりますが、それだけ減税する。地方税において約四百億増税すると言つても、これは一応標準税率によつて考えた減税であつて、それが実際に四百億地方について増税になる、こういうふうに制限されたものでない。事情によつてはそれ以上地方によつて税金が取れる場合もあると了解してよいわけですか。
  58. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) お話の通りであります。これは政府といたしまして期待しておりますところは、地方団体におかれましてもでき得る限り経費の節減を図つて、減税の方向へ進んで貰いたいと思つておりますが、法律上はお話の通り市町村によつて標準税率以上になり、四百億の予定以上に増税され、それに正比例した数字よりも上廻る場合もないとは言えないのであります。
  59. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、あとで御質問申上げるのですが、今度の国税についてもそうなんですが、国税犯則取締法の改正が今法案として出ておりますが、先程の提案理由の中にも六として罰則規定を非常に強化しておるわけです。そうしますとこれは非常に問題が起つて來るのでして、四百億なら四百億、或いは標準税率なら標準税率、これを固定税率にすれば、そういうことはないと思いますが、そういうふうにこれはその地方自治団体のいろいろな事情によつて多くも取れ、少くも取れるということにしておきますと、そこの行政担当者によつては非常に苛斂誅求な徴税をやる危險性も出て來ると思う。それが今度の徴税機構の枠があり、罰則の強化などによつて非常な弊害が苛斂誅求の一つの裏付になる危險があるのではないかと思うのですが、この点についてはどうお考えですか。
  60. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 今回のこのシャウプ氏の勧告は問題をでき得る限り手近い周辺の人の判断によつて進めて行くということにあるのでありまして、只今お話のような点から、地方民の方々のその市町村に対する責任はますます重くなり、十分の関心を持つていなければ立派な発達はできないということになる次第でありますが、只今のお話の点についてもそれぞれ地方市町村に議会がありますので、そこでその自治体内の負担力、生活状況すべてが勘案されて行くのでありまして、そこで公正な態度で審議いたしましたならば、最も実情に適するようにこなして行けるものと考えております。
  61. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今後この罰則の強化の点については相当問題があると思うのでありますが、この点については今後十分に警戒をしなければならんと思うのです。次にお伺いしたいのは、標準行政費、或いは標準税收入の見積りですが、最後に決めるのはどこですか、その決める順序ですね。大体これまで言われたところでは一応地方自治委員会ですか、あすこで算出して、それから内閣総理大臣に提出するわけです。それからこれは国会に提出して法律で決めるのか、或いは予算措置でできることになるのか、或いは法律で決めるのか、今までの地方配付税のように決めるのか、どういうような決め方をするのですか。
  62. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これはお話の通り最終決定は国会であります。それで只今の標準財政需要額、標準收入額等にそれぞれ算定をいたしまして、その差額が幾ばくになるか、これを補填しなければならん。平衡交付金の概算見積りを地方財政委員会でいたしまして、これを政府に勧告と申しますか、政府に通告をいたします。それに基いて政府が予算にそれを盛り込んで提案をして、最終的には国会の決定ということになります。
  63. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういたしますと、今回のこの平衡交付金の決め方は、過渡期でいたし方ないかも知れませんが、決め方が逆になつておるわけですね。只今のお話を伺いますと、綿密にやはり学童なら学童一人について幾らかかる、それからその人口を掛ける、或いは河川その他についての工費というものを計算して積み上げて、そうして金額を出して行く。こういうお話であつたわけですね。そうしますと、そういうものが積み上つて一千五十億という結論が出て來たのではなく、一千五十億というものが、先程お話を伺いますと、配付税の代りが一つと、補助金の整理が一つ、それからまあ新らしく今度付加わる平衡交付金の調整的な金額が一つ、この三つの要素からなつておるようですが、それが先ずそういう三つの要素から千五十億というものを決めて、それでこれから当嵌めて行くわけですね、配付して行く。そうしますと、実際今度調べて見ました場合、標準行政費と実際の税收とのギヤップが、果して一千五十億であるのかどうか。これは結果を見なければ分らないと思う。今回のやり方ですと先ず千五十億できて、それがあとどういうふうに配付されるか。これは中央の財政の決め方によつてこの地方の配付金というものが決まり、それによつて税制が決まり、地方税制、税の徴收の仕方が決まり、又それによつて標準行政費というものも決まつて來る。これは全く地方自治を助成するという意味で作られたこの平衡交付金法なり、或いは地方税法が逆になつていると、こういうふうに思われるのですが、この点は如何でしようか。
  64. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 本年のところは、お話しの通り逆になつておると見ることもできようと思うのでありますが、これは併し政府といたしましては、平衡交付金法を考えております。その構想に基いて算定する場合、大体この金額で不都合なく処理できるだろうという見込を以て定めた次第でございます。併しこの平衡交付金は、原則としては需要額と收入額の差額を補填するということになつておりますけれども、これは常に国会の議決によつて決定する金額でありまして、国家の財政的事情というものが考慮されなければなりませんので、必ずしもその金額と正確に一致するとは考えられないのでございます。從つて結局はやり方といたしましては、各市町村の受くべき標準交付金というものの標準になるものを出しておきまして、最終的に国会で決定いたしましたその交付金の総額を、その交付標準に按分する外はないと考えております。本年もその方法でやるのでございますが、それには從來ありました配付税の額、更に統合された補助金の額、更に総括的に見ました地方財政の足らないところというようなものを、勘案し調整を加えまして、その上に国家的な財政事情を勘案して、この程度が適当であろうと実は決定いたしておる次第でございます。
  65. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そのお話は理窟としてはよく分るのですが、やはりこれまでの地方配付税の経験もあるわけです。そうしますと、やはりこれが中央の財政によつてどうしても相当制約受けると、こういうことは起り得るのではないのですか。
  66. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) お話の通りであります。從つて今度この平衡交付金の概算測定をいたしまする地方財政委員会は、そこで測定いたしましたものを政府提出すると共に、国会にもそれを提出いたしまして、国会の決定を待つて最終的に決まるというような制度にいたしたいと考えております。
  67. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはこの点はどういうように矛盾を解決されて行くのか。この地方自治という点ですね、その点どうしてもそうなりますと、やはり中央が地方標準行政費、或いは又標準税收入、こういうものを中央が先ず大体決めて、その平衡交付金に合うようにそういうものを押付けるということに、どうしてもこのやり方ではなつて行くのではないか。この点は国務大臣はどういうふうにお考えになるか。又そういう弊害があるとすれば、これはどういうふうにして調整をして行くか、その間の中央の、相当今のお話では、殊に今回の二十五年度については特にそれが顯著に現われておる。これは一番典型的な例と思うのです。先ず千五十億決めちやつて、それからあとで割当てて行くというのですから、地方によつてはそれがうまく減らされるにしても、圧縮されるにしても、本当に均分的に減らされるならいいのですけれども、それが非常に不均衡になる。そういう危險もあると思います。この点はどういうふうに調整されて行くか。これはこの運用がうまく行かなければ、殆んど意味がないようなことになると思うのですね。運用がうまく行かないならば、平衡交付金というこれは、私はいい制度だと思うのですが、こういう制度の運用がうまく行かなければ、地方の自治を却つて妨げるのじやないか。この点が各方面からやはり問題にされていると思うのです。これについての調整はどういうふうにお考えになりますか。
  68. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) お話のありました通り、その不足額に按分する場合、これは全く均衡を得て按分するということには十分注意をしなければならんと思います。これは大体の標準というものが、客観的に定まる性質のものでありますから、それを忠実に守つて行き、適当なる調整を加えて行きましたならば、これは妥当に遂行されるのではなかろうかと思います。只今お話の通り平衡交付金というものが政府、国会によつて決まる結果、必ずしも財政委員会で算定いたしました財政需要額と收入額の差額に一致しないということもあるのでございます。これは財政は国、地方を通じまして、やはり調整を図つて行かなければならない立場から、止むを得ないことと考えております。これには財政委員会、政府並びに国会が妥当な調整を図つて行くということ以上に、ただ財政委員会で地方の需要額を決定したままに、国会もこれに盲從しなければならんというようなところまで持つて行くことは、国家財政運営上又行過ぎではなかろうかと思いまするので、只今のところ、かくのごとき方法が最も妥当ではないかと思つております。
  69. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これが地方に対する配付の不均衡を來たさないように考えて立案されたと言われますが、どの程度にそういうことを具体的に考慮されたか。例えばこれも衆議院において藤田武夫氏の公述の中に言われておつたのですが、この地方税法を見ますと、それがそういうふうに地方財政力均衡のとれるような税法になつておらないと言われております。例えば附加価値税とか、これはまあ府県税ですが、附加価値税、遊興飮食税、入場税、これが府県税になるわけです。ところでこれは非常に地方によつては差がある。殊に農村地帶においてはそういうものは余りない。都市の方にはうんとある。こういう税法自体において、地方税自体において、或る地方においては府県税のその立て方で非常に收入が得られる。又得られ過ぎる場合もあるかも知れない。他の方では、農村を考えるとやはり附加価値税はどうしたつて事業者等に多くかかると思います。又遊興飮食税、これも農村においてそうとれるとは思わない。又入場税においてもそうだと思う。これまで入場税についていろいろ意見があつたのですが、都市と農村にこの入場税財源についていろいろ問題があつたのですが、やはりこういう点は税法から見て、やはりどうも私は先程本多国務大臣が言われたような、非常に富裕な町村、富裕な公共団体と、それから貧しい公共団体との間の財源力の不均衡ですね、こういうものは相当税法において起つて來ると思うのです。これをどういうふうに考慮されておるか、この平衡交付金の交付の場合、この点はどういうふうに……
  70. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 丁度今お話のようなところに、平衡交付金の本当の精神が働くわけでありまして、附加価値税が多く上がる、遊興飮食税が多く上がる、又入場税が多く上がるというようなところは、標準税率算定いたしまして、相当の徴收額がそこに多く現われて参ります。その徴收額と客観的に決定いたします財政需要額との差額というものはなくなるかも……、税收の多いところは差額がなくなつて交付交付の必要がないところもありましよう。差があるにしても、そう税收の多いところは非常に少くなつて参ります。その額に正比例してやるのでありますから。今度は逆に農村等で、只今お話の税は皆県税でありますが、逆に農村等で固定資産税の対象も土地家屋以外にはそうない。或いは市町村民税所得割所得がそう大きな人がいないというようなところは、結局標準税率で計算いたしまして、税の徴收額が低い、低ければ標準財政需要額との差額が多くなる。そういうふうになれば多く平衡交付金が要る。最前お話のいろいろ税源に惠まれておるところには税收が多いだけに差額というものがなくなる、小さくなる。從つて平衡交付金はそれに比例しますから、少くなるか、なくなる、こういうことであります。
  71. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはその通りだ。理窟はそういうふうにできておるのが平衡交付金だと思う。実際においてはやはり今の税法から考えて、どうしてもこの貧弱町村においては、附加価値税の対象となるものは少い。それから又入場税或いは遊興飮食税の対象となるものは少い。そういうところに本当に、先程お話のあつたような標準行政費と、それから標準税收入とのこのギヤップの不足を、平衡交付金でちやんと呉れるならば問題ない。ただ先程御答弁がありましたように、これは中央の全体の国家財政の方の枠があるから、それによつて制約を受ける。そういうときに若しか、或る県において財源を必要とする場合、必要なだけの平衡交付金を貰えないというときにはどこかで税を取らなければならん。税を取らなければならんのですけれども、今の税法では附加価値税入場税と遊興飮食税、これが府県の税源になつておりますから、それをかけようと思つてもかけられない。こういう矛盾が出て來る。又そうでなければ無理な徴税を……、平衡交付金でカバーできないところを無理に非常な増税をされる。或いは増税できなければその地方行政が破壞されて行く、こういう結果が実際の問題として私は起るのじやないかと思う、成る程理窟は、平衡交付金のアイデアは国務大臣の言われた通りだと思う。問題が実行されて行くときに今の税法からするとどうしてもそういうことが出て來ると思う。税法の建前が、府県においては税の対象となるものは殆んどない県と、ある府県が出て來る。今度の税法は著しくそういう差があるわけです。実際問題として差が出て來る。そういう場合にどういうふうにそれの調整を図るか。その点を……
  72. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは需要額と收入額との差額を完全に補填するということが理想であります。それに向つて努力すべきものであると思います。そういたしますとこの制度の精神が一〇〇%に生きるわけであります。その点は全く同感でありますが、ただ御了解願つて置きたいと思いますことは、財政需要額というものを算定いたしますけれども、これは平衡交付交付ため標準額でありまして、それぞれ市町村においてはその自分の市町村の実情に応じた予算を編成いたしまして、運営して行くのでありますから、どういう程度施設をするか、どういう規模に予算を組むかというようなことは、全くこの平衡交付金には捉われないでもいいのでありますから、平衡交付交付ため標準が決まるわけでありまして、自主的にそこは解決されて行くと考えております。
  73. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 やはり本多国務大臣は担当大臣でありますから、我々の質問することに対して皆これがいいという御答弁をしなければならないお立場にあるかも知れませんが、やはりこれを実施して行く上において問題になる点は問題になる点として研究される余地があるのじやないか。自治庁が、政府から出されたものは皆合理的で、しようがないという無理な御答弁でなく、もう少し研究しなければならん点は突つ込んで研究する、こういう態度であつて欲しいと思うのです。それから次にお伺いしたいのは、これはいつも問題になつていたけれども、教育費の問題です。これまで二分の一国庫補助がありましたが、これが今度はなくなる、全額地方負担になる。そこで問題になるのは寄附金の問題なんです。私は寄附金はどうしてもこれは禁止しなければ、政府が禁止という措置を講じなければ……、この寄附金はシャウプ勧告によつて四百億を百億に減すと言つても……、実際問題としてはこれは税と同じだということを言つておられますが、税は取らなければそれだけで済みますけれども、寄附金はそこは性格が違いますから、そういうふうに行かないと思うのです。その点寄附金は百億と言いますが、百億に本当に減す、こういうふうにお考えでありますか。
  74. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) シャウプ使節団の調査によりますと、寄附金で集められた金が四百億に上るということでありますが、これは税としての徴收の途が窮屈でありましたためにそうした無理な手段を取つたのではないかと思うのでありまして、今回地方税の枠が市町村において約四百億拡大せられ、その他地方財政全体についても、歳入増になりますから、そうした無理な方法は減つて行く。それで寄附というものは政府として禁止するという考えはないのでございまして、不自然な寄附、税負担というようなことでかける寄附でなく、全く自由な立場においての寄附というようなもので残るであろう、それが百億ぐらいは残るのではなかろうかと考えておりますが、只今申上げました通りに、これは枠が窮屈なために無理に生じた負担であるから、その面は緩和される。禁止するというところまではまだ行過ぎではないかと考えております。
  75. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 例えば税務署の建物を建てるとか、或いは警察の建物を建てるとか、そういうような寄附、こういうようなものは禁止して差支ないのじやないか。
  76. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 実は只今まで申上げました寄附の中には、税務署等の寄附は含まれておらないのでありまして、国の施設に対する寄附でなく、市町村施設に対する寄附という範囲内においてお話を申上げておつたのでありますが、これがこの国の施設、或いは地方施設に拘わらず、綱紀上或いは行政の妥当を失するというような見地からは、又別に考慮すべきであると考えております。
  77. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういうものについてはやはり禁するという、こういう何かはつきりした措置をお取りになりますかどうか。これは始終新聞なんかに出ておりまして、殊に税務署なんかいろいろな弊害があると思うのです。はつきりした何か措置をお取りになりますか、そういう点については……
  78. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) はつきり法律で以て禁止するというところまでは、政府は結論を出しておりませんが、税務署等に対する寄附は、これは誤解、弊害等も考慮しなければなりませんので、そういうことはやらないようにという通牒は、常に守るようにと通達をいたしてあるわけでございます。この点については更にこれを絶対に禁止すべきかどうかということについては研究すべきではなかろうかと思います。ただ地方市町村等につきまして、土地の成功者、或いは資産家というものが、喜んで自分の地元のために寄附しようというものまで禁止する必要はありませんので、只今のお話の税務署等の場合と、地方市町村における本当の美しい自発的な寄附というものとは、区別して考えたいと存じております。
  79. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この寄附金の問題は、御承知のようにシャウプ税制勧告によつて、全体の中央地方を通じての税負担の問題と関連して取扱われておるのですね。ですからこれが四百億あつたのが百億に大体減るということにならないと、実質的にはそれだけ負担が殖え、やはりそれが予定したより増税になる、こういう問題が起つて來ると思う。どうしても寄附の性質として、例えば小学校の寄附なんかのとき、これは父兄として自分の子供の場合断わるわけにちよつと行かないのですね、なかなか……。余裕のある人は出してもいいけれども余裕のない人で非常に貧困の家庭で、寄附を学校から申込まれたとき非常に困る人が出て來ると思うのです。それが今度寄附を四百億から百億に減らすということについては、何かそういう人に対して……、余裕のある人はいいと思うのです。ところが非常に貧困な人は非常に困る場合がある。実際問題としてこれは何とかしてやりませんと、住民税は殖えて來る、寄附はやはり前と同じだ、これでは実際問題として……、日本の今までの習慣、遅れた習慣から行きますと、それが今度はシャウプ税制勧告で地方税改正されたのだから、寄附は出さないということは言えないと思うのですが、その点は政府として何か考慮されて、適当な措置をお考えにならないと、結局本当に増税になつてしまう、実質的に。何かこの点についてお考えになつておるか、又お考えになるつもりでありますか。
  80. 本多市郎

    ○国際大臣(本多市郎君) これは中央といたしましても研究すべき点は、今のお話等によりましてもあると思うのでありますが、今回の地方財源が拡張したというようなことを十分地方の議会等においても認識せられまして、從來非難のあつた無理な寄附等がないことを期待いたしておる次第であります。これは地方議会、自治体、そういうところの十分な了解の下に無理がなくなるように努めて行きたいと考えております。
  81. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 本多国務相は何かこれに対して声明みたいなものを出されるお考えはありませんか。
  82. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 地方自治制に対する余り行過ぎた干渉とでも誤認されないような範囲内におきまして、只今のお話につきましては研究して善処したいと思います。
  83. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これは実際の末端に行きますと、そういう非常に苦しい問題が起きて來ると思いますから、善処されることを望みます。  それから次にこれは又外の專門の方方からいろいろ御質問があると思いますが、この教育費の問題ですね、今度国庫の補助がなくなつてうまく行きますかどうか、大体今度は六・三制の校舎だけは四十五億ですか、あれで一応まあ建てられると言われておりますが、今度は中身の方に、内容について、国庫補助がなくなつた場合うまく行くかという、この点についてはいろいろ問題があると思うのですが、私は外の方からもいろいろ質問があると思いますから、この点については簡單に御答弁願いたいと思います。
  84. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 義務教育の重要なことは申すまでもないことでありまして、その見地から今日まで義務教育費国庫負担法がありまして、又政府のこれに伴う補助金は教員給料だけの半額負担ということでやつてつたのでありますが、今回これらがすべて平衡交付金の中に統合されましたので、これによつて一括して運営されることになつたのでございます。併し義務教育費について、国家の要請する或る程度の規模までは是非維持して行かなければなりませんので、特に義務教育費標準法というものを準備いたしまして、これも近日提案いたしたいと考えております。從來国家の補助は教員給料半額負担のみでありましたけれども、今度は平衡交付金法の中に教育に関する費用計算の標準が相当詳細に現われて参りますので、從來よりも標準ということについては将來相当よくなつて行くのではなかろうかと思います。よくというのは、一定の標準が分ることによつて甚だしく惡いものというようなものがなくなつて行くのではなかろうかと思います。又平衡交付金法においても、義務教育費標準法におきましても、国家の要請する程度の基標、施設をしない場合はそれぞれ勧告し、これを是正する方法を準備することにいたしております。
  85. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この問題については私は專門外ですから、專門の方から御質問があると思いますから次に移りたいと思いますが、この平衡交付金の中の補助金的な性質を持つておるもの、これは今後やはり殖えて行くのですか、それとも減つて行くのでありますか。
  86. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 平衡交付金の中に統合されました補助金は、これはなくなつてしまうのでございます。もう平衡交付金一本になるのでありまして、今後もやはりこの平衡交付金の中に残つております補助金もでき得る限り統合する方針であります。ただ直ちに統合することが、適当なる普遍的な客観的な標準を見出だすことの困難なものもありますので、今後この程度は実施して行きまして、結論の出たものは統合されることになつて行くと考えております。
  87. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 実はこの平衡交付金一本に統合されることはお話の通りなんですが、実質的に内容から見て、平衡交付金は地方配付税的なものと、補助金的なものと、それから地方の貧弱町村と富裕町村、そういうところの財政の不均衡を調整する、大体この三つ、内容から言つてそういう性格を持つておると思うのです。問題はそういう現在のような補助金的なものが、若しかそういう平衡交付金を考える場合、そういうものは少くして行くという考えと、これを多くして行くという考えとによつて地方行政事務の運用に対して非常なまあ問題が起つて來ると思う。例えば補助金的なうものは、国のいろいろな行政を地方に任せるという場合にやはり相当お金を中央から出すと思う。そういう内容のものなのです。平衡交付金の占めるそういうものは国ではどんどん減らして行くつもりであるのか。そうしますと、今まで非常に問題になつておるがこれから中央のいろいろな行政事務が地方にどんどん委讓されて行くと思う。いわゆる地方自治化によつて……。この関係はどういうふうになつておりますか。
  88. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 只今のところでは、現状の事務配分の状態をこのままでは考えているのでございますが、将來更に地方行政調査委員会議等の結論によつて、更に中央の事務が地方へ委讓される、再配分されるというような場合には、平衡交付金の額にも相当変動があつたり、更に又平衡交付金以外の方法による途等もいろいろ研究されることと存じます。必ず国の事務が地方へ移管される場合、それに対する裏付の財源はそのとき考慮されるべきものと考えております。
  89. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう問題もあると思うのであります。從つて本多国務相は平衡交付金千五十億、これを計上することによつて何か地方で相当財政力の余裕ができるような感じの御答弁があつたのですが、これはこれだけでは相当不足を來たすのではないか。実際問題として相当不足ではないかという意見が相当あると思う。例えば二十四年度において配付税の要求額が千四十九億円と言われております。そうすると、これに対して補助金的なもの、或いは平衡交付金的な、いわゆる調整的なものを加えると相当な額に上るのであつて、ですからシャウプさんは千二百億と、こういうような計算を出したのではないかと思うのですが、とにかくこれでは少ないという意見が実情からいつて相当あるのですが、そこはどういうふうにお考えになりますか。相当沢山盛込んである、こういうようにお考えですか。
  90. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 私も十分であるとは思いません。併し国家財政の事情、更に又地方においては今回の税制改正、その他財源が相当生まれて参りまする関係を考慮いたしまして、この程度ならば支障なく運営できるものであろうという考え方でございます。
  91. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今伺いますと、大体中央から地方に移す行政事務というものは、大体現状程度と見て、そうして交付金を考えた。こういうお話ですが、今後どんどん委讓して行くわけです。いろいろな警察、或いは教育、そういうものに関してどんどん委讓して行く。そうしますと非常に負担が殖える。それから国の行政を委託するものも殖える。そういう場合にやはり交付金が足りない場合には、国の負担地方に皺寄せになつて行くという形はやはり出て來ると思う。この点はやはり相当問題になると思うのですが、私はその点から千五十億というこの交付金が多いというように決して考えない。これによつて地方財政の余裕が相当出るようにはどうしても考えられない。本多国務相はどうも千五十億の平衡交付金によつて相当地方財政が楽になるようなどうもお考えのようじやないかと思うのですが、そうではないですか。
  92. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) この地方平衡交付金の制度によりまして、財政的に余裕が出て來るということは私も考えてもおりませんし、それは申上げていないのであります。或る程度の規模の行政をやるについての財源がこれによつて確保されるという点にあると思うのでございます。更に最前からお話の今後国の行政が地方に移管されるに從つて、又それに伴つて財源は平衡交付金で調節できるか、できないかというような意味でございましたが、これは今後の事務の再配分に関するそれに伴つて財源は税法或いはその他の補助金、或いは予算の移管というようなことで行かなければならんと考えます。この平衡交付金に統合できますものは普遍的なものでなければなりませんので、全く特殊性なものであります場合には、独立して財源的手段を講じて行かなければならいかと考えます。
  93. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次にお伺いしたいのですが、政府は公共事業費が今度非常に殖えておる。そのことを以て自立復興予算であると、こういうことを言つておるのですね。これが一つの景気対策になるのである、有効需要をそこから起して最近の不景気をこの辺から直して行く。こう言つておりますが、この九百九十億の公共事業費の内訳を見ますと、内容を検討して見ますと、実際にはそんなに殖えていないのじやないかと思うのですが、その需要のヴォリユーム、需要量として殖えていないのですが、この九百九十億円の公共事業費のざつとした内訳でもいいからお知らせ願いたい。
  94. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 公共事業費が総額に正比例して事業量が多くなるではないかというお話でしたが、これは何か目下の物価、労銀等の騰貴のために金高は殖えても事業量は減少するから、金高の割合には殖えないのじやないかという意味でありましようかどうか。そうであるとしますと、私共としましては物価、賃金共に大体横這い状態にありますので、公共事業が増額すれば、それだけ事業量も増加するものと、こういう見解をとつておるのでございます。公共事業費の内訳につきましては、後程資料をお上げいたしたいと思います。
  95. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私の質問した趣旨は、これまで公共事業について、地方でやつていた分を国が全額負担する、こういうことになつたのですね、そうでしよう。そういうものがあるのでしよう。ですから国の方の公共事業費は仮に殖えても、地方の方において負担が軽くなるのです。ですから事業量は同じでも公共事業費としては、国の予算としては殖えるのであります。從つて問題は事業量がどれだけ殖えるのかということが問題になる。それは九百九十億に比例して殖えるのじやない、こういうふうに解釈できるのじやないのですか、その点をお伺いしたい。
  96. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 御趣旨は漸く分つたのでございますが、つまり全額国庫負担になる結果、地方負担の分がなくなりますので、結局国庫の負担は多くなつて事業量はそう殖えないのじやないかということでありますが、そういう面も確かにあるのでございます。併し総計において地方三分の一負担の分を加えた額よりも総額において多くなつておるのでありまして、これは計数によつて政府委員から説明申上げます。
  97. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 地方団体において行います公共事業費は、二十四年度において七百二十二億、二十五年度におきましては千三十五億、三百十三億の増加を見ております。
  98. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 事業量はどうなのでしようか。
  99. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 二十四年と二十五年度におきましては、單価は変つておりませんから、只今申しました七百億余りが千億になりまして、合計二百億の事業分量の増加があると考えて間違いないと思います。
  100. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 公共事業費は二十五年度九百九十億円で、二十四年度においては六百二十五億、ところでこの中で一番大きく占めるのは災害復旧と六三制だと思うのですが、災害復旧の方は二十五年度四百七十億、これを二十四年度と比べると、二十四年度は二百三十九億です。そうしますとそう大して殖えてないのですが、その点については、公共事業費が殖えた額に從つて、正比例して事業量は殖えているのじやない、こういうふうに見ることはできないですか。
  101. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 公共事業費の総額が殖えまして、それに正比例しまして殖えておることは確かでございます。具体的に申しますと、災害は、公共事業関係の災害で地方団体の行いましたのは二十四年度三百四十億でありますが、今回は四百七十億となつております。その関係でも百三十億ばかり殖えております。尚申し落しましたが、前年度におきましてはいわゆる失業対策事業費が公共事業費の中で出ておりましたが、今回はその外に六十億プラスしておりますので、更にこの点で事業量は殖えております。
  102. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう事業の金繰りは地方債その他で賜われるのでございますか。    〔理事田村文吉君退席、委員長着席)政府委員(荻田保君) 国庫補助金と地方債と一般財源と、この三つを予定しております。
  103. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 地方債については、地方において相当にそういう形の資金需要はあると思います。今度の資金計画では大体三百億、それを枠があつて三百七十億ぐらいまで大蔵大臣が努力して拡張したと言われておりますが、大体地方債の発行の枠です、これは現在どのくらいになつておりますか。二十五年度はどのくらいになる予定でございますか。
  104. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 現在一応三百億と予定しておりまするが、これはやはりシャウプ勧告通り四百二、三十億まで拡張したいというので交渉中でございますが、大体三百七十億程度は承認は得ております。更に五十億ぐらいできれば殖やしたいと考えております。
  105. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これは私大蔵委員会で預金部の係りの人に聞いたのですが、地方における地方債の資金需要、これは相当沢山あるわけです。地方負担分の公共事業ですか、そういうものにも七百数十億ですね。地方負担の公共事業費はこれは三百二、三十億ある。それからその外に地方負担でない公共事業というものがあるわけですが、そうするとその需要が七百数十億ある。大体合計一千百億ぐらいの地方債に対する……それを起債したいという要求があるということが言われておる。相当地方債に対する各地方の要求は強いわけですが、それに対して預金部でこの地方債を引受けることになつておりますが、今の預金部の資金運用方針からいつて三百七十億ぐらい、こういうのは少な過ぎるじやないか、もつと私は沢山認めなければいけないのじやないか、こういうふうに思うのですが、その点についてどうですか。
  106. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 今回の地方財政計画はやはり四百二十億程度の起債に俟つということで見込みを立てておりますので、その程度までは是非拡張いたしたいと考えております。併しこれは最前次長から答弁申上げましたように、三百七十億程度までしか承認が得られておらないわけでありますので、預金部の事情もありますが、預金部の余裕金はあることと思いますから、できる限り地方の需要、地方の要求もあることでございますから、これは努力いたしたいと思つております。
  107. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この預金部預金法というものがありまして、預金部資金の運用に関する指令があるわけですね。これはいわゆるマーカット少将から出たものでありますが、これによると預金部資金の運用は中央政府及び地方政府の一切の起債及び短期借入を増加するため、可能な限り割当てらるるべし。こういうことになつておりまして、先ず原則として預金部の預金、又は預金、保險局の余裕金は、原則として中央及び地方政府の一切の起債及び短期債を消化するため可能な限り割当てて、その他のものについては金裕があつた場合、余りがあつた場合に運用すべきである。こういうまあ運用の趣旨になつております。ところで二十五年度の預金部資金の運用計画を見ますと、今細かく伺いました地方団体に対する貸付は、三百七十億ということに今なつておるというお話、それから金融債の借入が二百五十億、産業資金四百億、こういうふうになつておるのです。合計一千二十億の余裕金、これをそういうふうに運用することになつておると思うのであります。そうしますと、これは一千二十億の余裕金があるんですから、出て來るのですが、この運用の仕方は、このマーカット指令によればもつとこの地方団体の資金需要に置いていいわけだと思う。この精神から行けばいいと思います。政府の預金部資金の運用の仕方は、このマーカット指令に副うていないのじやないか。この点はどういうふうに政府は考え、又仮に司令部の方で枠を拡げて貰う場合に、どういう交渉になつておるのか。このマーカット指令によれば、当然もつと、三百億の計画を立てたけれども、一生懸命に努力して三百七十億にまで拡げて貰つたと、大蔵大臣が如何にも手柄のように言つておりますが、実はこのマーカット指令によれば、当然千二十億も余裕金があるならば、相当これは地方団体に貸付けてもいい。或いは地方起債をしていいわけなんです。この点は本多国務相はどういうふうにお考えになつておりますか。
  108. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) この起債の枠の問題でありますが、これはインフレ收束の経済安定計画のやはり関係であると考えております。その経済安定計画において支障のない範囲内の預金部資金の運用につきましては、只今お話のありましたそういう方針で運ばれるものと考えております。
  109. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは、そういう方針で進んで行くというお話しですが、実際は資金運用の計画を見ますと、そういう方針になつておらないと思います。千二十億の運用の仕方です、この実際とその御苦心との違い、これはどういうところにあるのですか。
  110. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは只今申上げましたように、経済安定計画の見地から起債の分に拡張され、拡張されましたその起債は、その方針によつてこれは運営される。こういうふうに解釈しておるのであります。
  111. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはそういう御答弁は一応了承いたしますが、経済の再建、或いは安定計画というものも、これはやはり地方自治確立、そういう面ともこれは決して縁がないわけじやないと思う。みんな一体のものだと思う。日本のこの民主化を、形式でなく、実態的にこれを推進せしめる線に沿いながら経済の安定も或いは再建もやつて行くべきものだと思う。こういう意味において、これまで、今回ばかりでない、これはもう随分長い間問題になつている。預金部資金は零細な預金、貯金その他から成つておるのであります。又各地方から集められたそういう預金から成つておる。これはまあ昔よく地方還元ということが言われていたわけなんです。その運用については、極力地方の資金を中央が取つて、集めて、それを大産業その他のそういう方面に投資しないで、これは成るべく地方産業或いは地方公共団体の上にこれを還元するということは、これは望ましいと思うのです。無論その精神から三百七十億という枠を取つていると思うのですけれども、併しそれでは達成されないのです。本当に預金部資金運用の精神から行けば、一千二十億に対して三百七十億、大体、三、四割程度、これでは私はこのマーカット少将の資金運用計画の線に沿つて行くということに言えないのじやないかと思います。ですからこれは大産業に資金を供給するのではなくて、もつと地方に多く還元すると、そういうお考えがあるかどうか。預金部資金を以て銀行債を買う、或いは又預金部資金を市中銀行に預け替をするとか、これはまあ短期の運用でありましようが、とにかく非常に大産業に対しての貸付に預金部資金を運用するということは、私は預金部資金の運用の精神に反すると思います。この点については大蔵大臣も見えられましたから併せてお伺いしたいのですが、本多国務大臣として、地方行政を担当しておられる本多国務大臣としては、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  112. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) ちよつとお待ち下さい。木村さんにお諮りいたしますが、昨日関係筋に行かれた回答を……大蔵大臣が見ておりますから、あなたの御質問をちよつとここで中断して頂いて、大蔵大臣の回答を聞いて、それから後継続願いたいと思いますがよろしうございますか。それでは池田大蔵大臣。
  113. 内村清次

    ○内村清次君 ちよつとそれに関連するので……、大蔵大臣の回答を求めるという委員長の御発言でありますけれども、委員長は、昨日のあなたの政府に対しましての何ですか、御返事は、今日回答を求めるという案文じやなかつたと私は思います。昨日大蔵大臣からああいう申込みがあつたことは確かです。併しそれに対しましては、委員会は委員会の独自の考えで行つておる。併しその間において政府が処置をとるということは、処置をとつて貰いたいというようなことであつて、その回答を受ける立場には委員会はないと思いますが、何かその点はお考え違いではないか、ここにおいて御検討をして頂きたい。
  114. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) お答えいたします。別に回答を求めるということはありませんでしたが、私はこれを今さらえておりますけれども、善処せられんことを望むと言うたつもりであります。その報告をここへ持つて來られたと思います。而して大蔵大臣がここに見えておりまするから、皆さんにその回答を、自身の折衝の結果をここに報告をしたいということでありまするから、その報告を聞きまして、そして諸君の御態度もあると思いますから、そう今木村君にお諮りした次第でございます。
  115. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちよつと何ですか、私達は回答と、そういうようなことは求めたんではないけれども、別に新たな問題として蔵相の方のそういうような申入れをお諮りになつたのですか。その点をはつきりして頂きたい。
  116. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 大蔵大臣よりの申入れがあつたので、午後理事会において協議の結果、午前決定した四月三日を目標に審議を続行することにしますから、政府においては然るべく善処せられんことを望みます。と、それでその結果をば大蔵大臣が來て、ここに発言を求められておりますから、ここに大蔵大臣の発言を許可したいと思います。(「よしよし、」「報告を求めよ」と呼ぶ者あり)
  117. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨日暫定予算の承認方をマーカット将軍に懇請いたしましたところが、暫定予算の編成に対しましてOKを與えるわけにはいかんという回答があつたのです。それを御報告申上げましたところ、只今委員長からのお話のごとく、四月三日までに議了の予定ということのお話があつたのです。その期日は大蔵大臣はあとから分つたのであるから……、こういう意向を国会は持つておる、從つて政府としては暫定予算を出すという既定方針で善処したらどうかというふうなお話がありましたので、今朝参りました。結論は、やはり昨日と同樣に暫定予算の編成を認めるわけには行かないと、こういう結論であるのであります。議長の方への別の御伝言もありましたが、私はここに発表する理由を持ちません。とにかく事情は十分申上げましたけれども、暫定予算の編成につきましてOKはやるわけにはいかんと、こういう結論でございましたので御報告申上げます。
  118. 木下源吾

    ○木下源吾君 今大蔵大臣から聞きましたが、今日の新聞を見まするというと、何か政府ではこの二日、三日ぐらいは別に憲法違反にも何にもならんし差支ないような……新聞で今朝見たんですが、その点についてはどういう、まあ新聞ですからそれを以て責任を追及するわけではありませんが、その点についてどういうふうにお考えになつておりますか。
  119. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私はその新聞を見ません。又そういうことになりましたら非常に困つた問題が起るんではないかと考えております。
  120. 木下源吾

    ○木下源吾君 もう少しはつきり……
  121. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そういう新聞は私は見ません。若し暫定予算を組まずにおいて、そして予算の議了が四月三日になりますと、非常に困つた問題が起るんじやないかと今考えておるのであります。
  122. 小川友三

    ○小川友三君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、暫定予算が、今までの内容でございますと三日或いは四日延びた場合においては、政府側においてどういう支拂面において困ることがありますか。伺つて置きたいと思います。
  123. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 四月一日に予定せられますところの国債の利拂並びに借替が不可能でございます。それから一月から三月までの恩給受給者に対しまする九億の支拂が不可能でございます。尚又問題が多々ありますが、主なる問題を申上げますると、今国会で御審議を願つておりまする進駐軍関係の住宅建設費五十二億円、これはスキャッピンで四月一日までに契約を済ます、こういうスキャッピンの違反になります。又刑務所その他におきましても日々の支拂に困つても参りますし、外国為替特別会計の金繰りにも或る程度支障を來す、こういうようなものが主なものであります。国会関係で申しますと、国会の方々には四月一日に月給その他を拂うことになつておるのでありますが、これも拂えない。一般公務員につきましては、八日でございますから、三日までに議了すれば支障はございません。
  124. 木下源吾

    ○木下源吾君 まあいろいろ政府も御苦心なさつている点はよく分りますが、国会に対してのみそのことをお話になつておるのだが、実は先程も本多国務相に木村委員から聞かれておるのですが、予算と不可分な関係にあるところの平衡交付金法案がまだ出ておらない。こういうことについてはやはり審議に非常な関係があるのだから、早くこれを出すようにということも併せて、あなたの方の困難を克服するためにどれ程の努力をしておられるか、これも一つ責任ある方からお聞きしなければいけない。何か国会の方だけでこれをいろいろ延ばしておるような印象を與えることは甚だ遺憾である。どうかそれを一つ話して下さい。
  125. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨日マーカット将軍との会見のときに、平衡交付金の国会提出が頻りに急がれておるということを申上げました。その通りだ、自分としてもできるだけ早くやりたいというので、余程進捗しておるようなお話でございましたから、私は或いは今日中に出るのではないかということを実は昨日は期待しておつたのであります。昨日は確かに話題に上りまして、マーカット将軍もそうだそうだ、急がなければならんということを言つておられました。実は今日は念を押すのを忘れましたが、昨日の話でははつきり話題に出ました。非常に急がれているようでありました。而してこれは別の問題になりますが、平衡交付金法案と予算とは私は直接にそう関係はないのではないかという考えを持つております。
  126. 木下源吾

    ○木下源吾君 その点が政府と私達とは考えが根本的に違うので、政府はしばしば先般來から交付金法案が出なくても結構枠だけでこれは審議に差支ない、こういうように言われておるのですが、それは成る程審議の上には差支ないと、或いはそうかも知れんけれども、我々はそれよりももつと根本的にこのような法律案が出なければこれはやるべきものでない、こういう基本的な線に立つているのですよ。今大蔵大臣が言われるように、それは予算の審議には余り差支ないのだというような気持で関係方面に御折衝になつているという点が、こういうように遅れている根本原因じやないかと考えるのですが、その点はどうですか。
  127. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 誤解があつてはいけませんから申上げて置きますが、私は平衡交付金も早く出さなければならんという考えの下に昨日マーカット将軍にも申出たのであります。決して全然無関係というような考えは持つておりません。併し只今申上げたのは、直接には関係のある問題ではない。併し出した方が勿論望ましい、こういう考えを持つているのであります。
  128. 木下源吾

    ○木下源吾君 それでは尚何ですが、大蔵大臣はこの法案が出なくてもこの予算が最後的に通過することが、これが正しいと、こういうように考えておられるのですか。
  129. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は正しいとかどうとかいうことは申上げませんけれども、あの法案が出ることを期待し努力いたしまするが、あれが出ないから、これを審議しないというふうなことは望ましくないと考えております。
  130. 木下源吾

    ○木下源吾君 この法案が出ることを期待しておるということを、これが早く、あなたの希望通りに予算が通過することとは全くこれは同じ道を歩いておるのであります。この点の矛盾に対して私はお聞きしておるのでございます。これをどういうふうに解決せられるつもりでおるか、政府は。
  131. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 密接不可分の問題とは考えておりません。私は從いましてあの法案が出なくても御審議御議了願いたいという考えでございます。
  132. 木下源吾

    ○木下源吾君 審議はあなたのおつしやる通り、それは今現在我々はやつておるのでありますけれども、この予算を成立させるという基本的な線において、この予算は一つの法律ですよ、これは。同時にこの法律を裏付けるだけの基礎がなければ、これは満足なものにはならんということだけはお分りでありましよう。
  133. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 御審議御議了願いたいと申上げたのであります。私は密接不可分の関係であるとは考えておりませんので、たとえ平衡交付金が出ないからといつて審議には差支ないという私の信念を持つております。
  134. 木下源吾

    ○木下源吾君 政府の考えと私の考えとは全く違うということをここにお話して置きます。
  135. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) ちよつと……、木村君続行いたしますか。
  136. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣もお見えになりましたから、大蔵大臣にお伺いいたしたいのですが……
  137. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 大蔵大臣は大蔵委員会の方へ急がれるのですから、やはり本多さんに御質問を……
  138. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 ですけれども大蔵大臣に、長くないから、ただ一点だけお伺いして置きたいのです。  只今の大蔵大臣の発言に関連してなんですが、これまで私本多国務相に御質問しておつたわけなんです。又本多国務相地方税法改正案に対する提案理由もここで拜聽したわけでありますが、これによりましても非常に重大な法案であるということが明らかになつておるのです。重大法案です。民主政治確立地方自治強化とは表裏一体をなす、その裏付けをなす法案が地方税法であり、平衡交付金法なんです。今まで私は本多国務相にずつと御質問して來たのでありますが、平衡交付金がどういうふうに、実際に総合予算としての予算に影響して來るかという点について、これまでずつと御質問しておるわけなんです。從つて技術的に枠が千五十億に決まつておるのだから、枠が決まつておるのだから、平衡交付金法が提出されなくても審議に差支ないというような先程の御発言は私は穩当でないと思う。総合予算でその法律案、裏付ける法案が出て來ない。而もこれまで本多国務相にもいろいろ御質問したのでありますが、質問して行けば行く程、非常に重大な法案であると思う。而もこの七百十四億のこの予算の中で終戰処理費に次ぐ大きな金額を占めておるのでございます。終戰処理費千九十億に対して千五十億という、こういう大きな項目になつておる。その裏付けとなるところの法律案が出ていないのであつて、どうしてこの審議が十分にできるか。ですから本多国務相の先程のお話に対する平衡交付金法に対する御説明は、これはまだ非公式な政府構想として御説明になつておるのです。私は大蔵大臣がたびたびこの地方平衡交付金法とこの予算審議とはそう直接、密接不可分な関係はないと言われますが、如何に密接な関係があるかということは、今まで私は御質問しておるわけなんです。これによつても十分分ると思うのです。予算に対し、総合予算に対する大蔵大臣のそういう考え方は、無論大蔵大臣は知つておるわけだと思う。十分知つていながら、そういう態度をとられることは非常に遺憾である。大蔵大臣はそういう地方平衡交付金法について、そういうふうに予算審議上において軽く考えられておる。この点は改められる御意思はないかということをお伺いいたします。
  139. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先程も申上げました通りに、予算案の審議に当りまして、平衡交付金が出ておることは最も望ましいことであることは言うまでもありません。併し絶対にそれと密接不可分のものとは考えておりませんので、私は大体の考え方を申上げ、そうして千五十億円が出れば大した支障はないと思いますから、御審議御議了願いたい、こう申上げておるわけであります。
  140. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは大蔵大臣のお考え方は民主的な財政というものに対する理解はちつともない。何のため財政法というものができますか。それに対する御認識がちつともない。昔のままの財政というものの取扱。我々のこんなにやかましく言うのは、本多国務大臣も言われたように、形式だけの民主化を推進するのじやなくて、実質的な民主化を我々は確立して行かなければならん、実質的な民主化を確立するために、そういう手続についても建前をはつきりして置かなければならん。少くとも参議院においてはそういう建前をはつきりしておる。こんな重大法案がまだ提出されていないのに、この予算審議を終結させるということは、建前上でき難いことじやないかと考えます。大蔵大臣の考えは、これは改める意思はない、こういう御答弁のようでありますから、これ以上私は追及いたしません。非常に遺憾に思う。大蔵大臣の民主的な財政というものに対する認識がちつともない。昔のままの戰争当時、主税局におられた当時の考えを持つてこの予算という問題を考えられておる。こういうふうに私は考えざるを得ない。非常に遺憾であります。  次に大蔵大臣は非常にお忙しいようでありますから、簡單に……、只今本多国務相に質問しておつたのですが、その点についてのお考えを伺いたいのです。預金部資金の運用の問題です。大蔵大臣は御承知の通り預金部資金の運用についてはマーカット少将から指令が出ておるわけですが、この指令によれば、この前も一応御質問したのですが、中央政府及び地方政府の一切の起債及び短期借入を消化するため可能なる限り割当てらるべしこういうふうになつております。ところで二十五年度の預金部資金の運用計画を見ますと、千二十億円の余裕金のうち、大蔵大臣が非常に努力されたにも拘わらず、地方債に割当てられる分は三百七十億です。一千二十億のうち三百七十億、これは大体三割程度です。この点、中央政府及び地方政府の一切の起債及び短期借入を消化するため可能なる限り割り当てらるべし、こういう運用に関する指令の精神と矛盾しないかどうか。預金部資金は大産業にこれを運用すべきではない、金融の民主化という点から言つても、成るべく地方に還元し、そうして大衆的な方面にこれを運用するのが、これが預金部資金運用の精神だと思う。ですからこういうマーカット指令が出たと思う。今の預金部資金の二十五年度の運用計画は、そういうマーカット指令の精神に反しますし、それから今の本多国務相の御説明になつた民主政治確立ため地方自治強化、こういう精神とも私は矛盾すると思う。この点について先程本外国務相に御質問しておつたのですが、大蔵大臣としてのこれに対する御見解をお伺いしたい。
  141. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 木村さんのお話の預金部の二十五年度の運用計画というのは、大蔵省として正式にお出ししておりますか。
  142. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 資料は頂きました。
  143. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 二十五年度の運用計画を大蔵省から議会に御覧に入れておりますか。資料として出しておりますか。
  144. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 資料として出しております。これです。
  145. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私実はその資料を見ておりませんが、若し運用計画に……
  146. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その最後のところにあります。
  147. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 実は多忙のために私はこれを見ておりません。これは一応の運用計画として出したのでありますが、私のこれからやろうとする計画とは少し違つております。それから又これは少し説明をしなければ分らんことであるのであります。御説の通りに預金部資金というものは、只今のところ原則といたしまして地方債の引受或いは地方公共団体への短期融資、これが原則であります。その第二段目といたしましては政府関係機関への出資、これだけに限定されておつたのであります。然るところ年末の金融その他の関係を見まして、私は百億円の臨時的な銀行への融資をいたしました。そうしてこの金はできるだけ中小企業者の方に廻るように無盡或いは信用協同組合或いは地方公共団体に特に沢山行くようにいたしております。最近又百五十億の公団の関係の滯貨融資のことをやつておりますが、これはまだ四、五億円しか出ておりません。原則はこうなんであります。二十五年度の運用計画につきましても、この原則を守らなければいけません。私は守るつもりでおるのでありますが、而してここに出ておりまする資金の方で申しますると、郵便貯金が三百三十億円、郵便貯金の増、これは私は期待し得ると思います。簡易保險或いは厚生年金の百六十億円、これも期待し得ると思うのであります。合計五百億円の新規の金がございます。これへ持つてつて今までの回收金があるのでありまするが、金融機関へのこの前の百億円の預け金が帰つて参りました。それからその他の繰越しもあると思うのでありまするが、この金をどういうふうに使うかということは今後余程注意をしなければならん、この表には載つておりませんが、この表が十分でないということは、運用の方で地方公共団体の貸付金四百億円とやつておりますが、これは間違いであります。それは御承知の通りに、債券の引受として三百七十億円ということは御承知でございます。それからこの前も私お話申上げましたように、短期融資として九十億か百億、年度内で出しております。これも当然來年を予想しなければならんということは、木村さんも御存じのことと思います。これを止めるわけに行かない、原則はそうでありますし、実際面でもやつてつたのであります。こうして参りますと三百六十億の短期融資を併せますと五百億円くらいにならざるを得ないんじやないかと思うのであります。それから又この金融債応募買入、こういうことも言つておりますが、この金融債の応募買入も、興銀なんかの分を買入れた場合に、あなたのおつしやるように大産業に行くと思いますが、農林中金や商工中金の金融債を引受けたらあなたの御質問のようにはならないのであります。こういうことを考えて参りますと、この運用計画というものは、これは三つに産業資金として出すようなこんな曖昧なものじや駄目なんであります。これは大蔵省から提出いたしましたとすれば、私の決裁なしに出したものであり、私の意図とは違つております。直接あなたにお話申上げましたような状況でございまして、繰返して申上げまするが、預金部資金の運用につきましては今までの原則、今までのやり方は変えるつもりはありません。ただ今年は特に国債償還という問題が起りますので、この国債償還につきましては、余程償還の時期、償還される預金部資金の運用については今後考えなければならん問題だと思つておるのであります。決して大産業に沢山出すというようなことは毛頭考えておりません。
  148. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣に誤解のないように申上げて置きますが、これは大蔵委員会において、今度預金部の特別会計に対して赤字補填を一般会計からする法律案が出ておりますけれども、あの法律案を審議する場合の資料として私は正式に要求したんです。そうしてこれは政府委員の方から特に余り確定案ではないが、要するに法律案審議の参考のためにというので配付して貰つたわけです。特にこれは一般にはまだ確定案でないから公表しないように、こういうわけであつたわけです。その点は私は正式に要求して私のところへ配付された資料であるということを大蔵大臣に申上げて置きます。  それから今の御答弁で方針は分りました。ところが先程も本多国務相にお尋ねしたんですが、大体地方においては一千億ぐらいの起債の要求があるんです。これは預金部の係の人に大蔵委員会において聞いたわけです。ところが非常に地方においてそういう起債の要求があるわけです。その千二百億の余裕金のうち、大蔵大臣が今言われましたが、大体三百七十億の起債、それから九十億ぐらいの短期融資、そういうもの、これは大体五百億ぐらい、それに対して農林中金等の今度金融債を引受ければ相当の金額になると思いますが、先程のマーカット指令の建前、あれを原則とすれば一千二十億のうち七、八割ぐらいをその方に運用するというのはあの原則に一致するものと思います。こういう意味で私は地方に対する還元が今大蔵大臣の御答弁になつた程度では、その原則、方針に私は合致していないと思うんです。ですから問題はますますあの精神に合うように運用されることが、私はあの根本方針は正しいと思います。前から……。尤もこれは今問題になつたわけではないのでありまして、預金部資金の運用については、前からそういう議論、意見があつたわけでして、その線に沿うてますます運用されることを希望いたします。  それからこの際ついでに大蔵大臣にもう一点だけでありますからお伺いして置きたいんですが、今度の本会議においても千葉信議員から御質問したんですが、簡易保險の資金の運営です。あれは郵政省の方の係の人に聞きますと、あれを分離すれば保險の勧誘について非常にもつと熱意を入れて一生懸命やれる、こういうことであつて、そうすれば簡易保險の加入者が多くなればその余裕金も多くなるわけでして、大蔵大臣はたびたびこの実現を早く期するということを言つておられますが、これは具体的にどの程度まで進んでおるか、いつ頃この分離が可能になるのであるか、これは税金の蓄積という面から見ましても分離した方が非常にいいと思うので、又一日も早くそうした方がいいと思いますので、重ねてこの点についてお伺いして置きます。
  149. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 本会議でも、又昨日の本席上におきましても答えました通り、我々は両院の決議を尊重し、閣議決定に基いて交渉しておるのであります。何と申しましても、向うからの覚書が來ておりますので、今直ちに向うは変更しようとはいたしません。私は予算を作成します上において、是非必要だという申出はしたのでありますが、それは間に合わなかつたのであります。できるだけ早い機会に実現するように努力したいと考えております。これは單にお話のように、これが郵政省の方に入つて來たならば勧誘が楽だと、こういう表面的のことでなしに、簡易保險、厚生年金というのは、一つの大きな社会事業であります。これは普通の預金部の郵便貯金なんかとは別個のカテゴリーに入るものだ。それで私は運用の、利益の使い方は、これは被保險者に返すというような根本的の処置がありますので、巷間伝えられるように大蔵大臣や大蔵省が反対しているものではございませんから一つ御了承願いたいと思います。
  150. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の大蔵大臣の簡易保險の性質その他に関しては、私よりも遥かによく認識されているようですから、その点はその線に沿うて早く実現されることを切望いたします。続けてよろしいのですか。
  151. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 岩間君が三十分ということでありますが、岩間君にお讓りを願いたいのであります。三十分でお願いいたします。通産省……
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは後に残して、その前にこの前の何がありますから……
  153. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 成るたけ時間は嚴守を願います。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 途中なんで前質問者に申訳ないのでございますが、併しこれは私の代表質問が残つておるのを、私は今までにみんなに讓つて來たので、ここまで追込められたわけです。そういうわけで質問を昨日委員長に約束しましたようにやらせて頂きたいと思う。こういうふうに思うのであります。私はこの前、税の問題についていろいろお伺いしたのでありますが、ここで是非蔵相の意見を確めて置かなければならないのは、税金の調整に関する罰則の問題であります。先ずお伺いしたいのでありますが、国税犯則取締法の一部を改正する法律案というのが只今提案になつているようでありますが、この改正案によりますと、第三條に新たに一項を加える。そうしてその中に「收税官吏臨検、搜索又ハ差押ヲ為スニ当リ必要アルトキハ錠ヲ外シ戸扉又ハ封ヲ開ク等ノ処分ヲ為スコトヲ得」、こういうような実に嚴重な、今までにないような点が今度の罰則の中に強化されているのでありますが、一体この規定は甚だ人権を侵害するものになるんじやないか。こういうふうに思うのでありますが、これが不法侵入とか、そういうような信書の自由等、こういうような問題と関連してどういうふうに蔵相は考えておられるか、見解を質したいと思うのです。
  155. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 細かい問題で十分御説明できるかどうか分かりませんが、私はこの改正案を出します場合に、こう了知しておるのであります。今までの規定を新刑事訴訟法に合するようにやつたのであつて内容につきましては別に人権蹂躙になるような改正はいたしてないと聞いておるのであります。即ちあそこの二條でございまするか、二條には漠然と規定しておつたのを、はつきりさせたいというだけの改正と聞いておるのであります。即ち、新刑事訴訟法と歩調を一にするように、明確にその規定をしたという改正に止まつていると了知いたしております。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 細かいというようなお話でございましたけれども、私はこの問題は細かい問題とは考えていないのであります。なぜかというと税の非常な強化によつて現在これに対するいろいろな反対が起つておる。首相は過日これに対して何とか調整したい、こういうことを言われておるのでありますが、併し現実のこういうような取締罰則の規定におきましては、非常に強化されておる。そうしますと首相の言明と現実に行われておる法案措置などというものがまるであべこべなことになつておる。我々は首相の言明だけを信じておりますと、末端では何が行われておるかといいますと、これとまるで精神の反したものが強化されておるのであります。只今蔵相の説明によりますと、刑事訴訟法に合わしたと、こういうようなお話でありますけれども、これは刑事犯罪とそれから税金によつて起るところの……而も非常に税の徴收強化されておる。このことはもう私は多く述べる必要もない程頻々としてこういう問題が起つておるのですが、この刑事犯罪と税金による犯罪と同じことに見まして、そういうふうに強化しなければならないこう考えられるのか。どうしてこのような強化が必要になつて來たのか、その点を明らかにして頂きたい。
  157. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 別に強化したのではございません。前の法律と今度の法律を比較なさいましたら分ることと思うのであります。それから第二段の刑事犯と租税犯とどうかという問題でありまするが、私は余りそう区別する必要はないと思うのであります。今まで例えば千円の窃盜をすればこれは懲役、百万円の脱税したらこれは罰金も何も取らずに済んだ、こういうことはよくないという考えの下に、大体同様の方法で行くようにいたしたのであります。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも只今の御答弁、私は非常に了解に苦しむのでありますが、非常におかしいのじやないか、新たに一項を插入するというので、新たに強化されておる点が確かあると思う。それから刑事犯と租税犯と、こういうものが同じに扱つて差支ないというような御答弁だと思うのでありまするが、一体現在の状態におきまして租税を納められない、こういう問題が果して蔵相が今説明されたような納めたくなくて納めない、こういうようなところからこういうものだと思つておるかどうか。こういう認識が非常に我々蔵相と見解を異にするものと思う。だからしてやすやすとこういうような彈圧的な法案の強化、罰則の強化ができるのじやないかと、こういうふうに思うのですが、この点はどうですか。
  159. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 岩間君と私の見解は初めから大分違つておるのであります。一項を加えましたということは、実質的に何も強化していないと私は了知いたしておるのであります。條文の説明につきましては政府委員より後刻答弁させてもよろしうございますが、一項を加えまして二項を置きまして、一項に規定しておることをはつきりさしたのであります。どこが強化になつたかというと何らの強化になつたところはないのです。例えば婦女子の身体を検査し得る、こういうことがあつたのでありますが、今回はそれを婦女子の身体を検査する場合においては、成年の婦女子が立会わなければならん。こういうような規定を置きましてはつきりさしておるのでありまして、何も強化したとは私は考えておりません。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 政治はやはり現実と連関して行かなければならんと考えます。今税金の問題は非常に物凄い未だ曾てないようなこれに対する問題が起つているときに、なぜこのような問題をこのような時期において明らかにしなければならないかということは、これは今の蔵相の答弁では我々は理解することができない。この現実的な法律をなぜこのように強化しなければならなかつたかというところに問題があるのです。今蔵相から説明をして貰つたのですが、女子の身体の検査には成年の女子を立会わせなければならない。但し急速を要する場合にはこの限りでないということになつたのでありますから、今のお話によるというと、女の身体検査をやる、そういうときには成年の女子を立会わすということを原則とするが、併し急速を要する場合にはこれを要しないという但書があるのです。從つてこれが惡用される場合にどういうことが起きるかということは、これは多くを語る必要もないと思うが、一体このような惡用について、これはあり得ないと蔵相は考えておられるかどうか、その点を伺いたい。
  161. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 惡用はあつてはならないのであります。今の規定でも婦女子を検査することはできるのであります。併しもつとはつきりさせたいというので、そういう條項を加えたのでありまして、強化したわけではございません。岩間君は或る時は片一方を言い、或る時は外のことをおつしやいますけれども、大体今でも相当の脱税があり、脱税調査に非常な苦労をしておることは御存じであろうと思うのであります。例えば実例を申上げますと、検査に参りますと、銀行の通帳なんか、或いはいろいろな小切手帳なんかを婦女子が懷に入れてしまつてどうしても分らないという時には、これは止むを得ずそういうことをしなければならん。今の懷の通帳なんか見なければならないという場合が起るのであります。そういう時に今までだつたら直ちにできますが、今度は成年の婦女子を立会わせなければならない。こういうことにはつきり規定したわけであります。併しそういう場合にどうしても立会せができないという時には、みすみす帰るというわけに行きませんので、特に必要がある時には例外規定を設けるというので、今までの規定を具体的にはつきりさせたのでありまして、強化したわけではありません。無理があつてはならないと同時に、不当に脱税する者に対しましても規定を置く必要がありますので、改正いたしたのであります。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは明らかにしたというのでありますから、旧法との対照、それからそういう点を後程係員に明らかにして貰いたいと思う。我々はそういう説明の上で十分にこれを検討したいと思う。  次に今の婦女子の問題でありますが、急速の場合ということは一体誰が認定するのですか。この認定の仕方は誰が一体認定するのですか。これを惡用させないために、そういう点の限界が明確でないというと、漠然とした規定ではこれは不安になつて來るのではないかと思います。
  163. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それはその衝に当つた行政官吏の良心による判断でございます。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことから惡用されて起つた例が、これはしばしばあるのでありますが、そういう問題に対しては、どういう取締の方法を考えておりますか。
  165. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そういう事例はまだ税務官吏について聞いておりません。これは若し惡用したということがあれば適当な措置を講じたいと考えております。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは今申しましたのは、二條に亘つてでありますけれども、これは最も特徴的なものでありますけれども、こういう形で徴税規定が、蔵相に言わせればこれは強化ではないと言われると思いますが、この機会に、現在のような税に対して非常に不安な状態に陷入れられておる段階におきまして、こういうふうな措置がとられた、こういうことは徴税官吏の徴税権力というものが、今でもこれは非常に問題になるが、これは蔵相にも二、三回お話したように桐生のような例もある。惡代官と言つておる例がある時に、こういうようなまるで警察権よりももつともつと強化された形でこれが強化された場合に、これに対して非常に不安が釀成されると思いますが、これに対してどういう措置をとりますか。
  167. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 惡代官という評のあることも聞いておりますが、税務官吏が正当に仕事をしまして、この制度ために現在福岡或いは岡山で数人の我々の同僚が危害を受けたこともあるのであります。私はそういう危害を受けることがないように、そういう惡代官という非難を受けることのないように、税制を合理的にして税務の運営を適正にするようにいたしておるのであります。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 問題は結局こういう罰則を設け、それからそれによつて例えば蔵相のお話の危害を受ける。こういうことでありますが、このことが又問題だと思う。なぜそういうような状態に陷つておるか、ここに現在の税の苛酷な姿が出ておる。これを強行する、その強行から今言つたような問題が頻頻として起つておるのであります。この点に対して基本的に一体人民を信用する立場に立つておるのであるか。それとも頭からそういうような不信の上に立つて、そういうことが起るのだ。そういうことに対して飽くまでこの権力を強化して行く。これによつて無言のうちに徴税官吏の圧力が加わつて來て、收税を強行する、こういうところがはつきりあると思うのであります。これは一体現在の内閣の性格であるかどうか。
  169. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 税法の施行を適正にいたします場合に不心得者がおつた場合におきましては、適当な方法を設けまして適正を期さなければなりません。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 結局担税力の問題だと思う。その担税力の限界を突破して強行されるからこそ、こういうことが頻頻として起つておる。喜んで納めるということはこれは表面で奬励しておると思いますが、現在の税金は喜んで納められるような状態のものではない。こういうようなところに、そうして強行されたところ、何と言いますか、現在の收税機構、殊に内外独占資本の收奪にはつきり奉仕しておるところの今の内閣の性格があるということを、我我は指摘せざるを得ない。そういう不信の上に立つて、担税能力というものの上に立つて、十分にこれは納められる、そうして無理がなく收税が行われるという方向でなくて、逆にそれが反対の方向に行つておる傾向を我々は甚だ遺憾とするものであります。  次に税の問題に対して尚一、二関連してお伺いしたい。国税の問題でありますが、五百億の減税ということを言われておりますけれども、果してこれはそういうことになりますか。去年の勤労所得税における源泉課税、これの水増しの問題もあつたのでありますが、蔵相は恐らくこれは税法上の減税であつて、実際の問題とは別だと、こういうように、説明されると思うが、その点はどうですか。
  171. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 財政演説を御覽になり、予算書並びに税法を御覽になりますれば、減税であるということははつきりいたしております。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題は議論を何遍もやつて來たところで、そういう一つの税制上の問題だけでは解決が付かないと思うのであります。すでに安本から出された国民所得を見まするというと、これは一割本年度において増加されておるのであります。結局税法通り取つてつても、非常に水増しが実際問題として起るのであります。そういう点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  173. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 水増しということはどういうことであるか分りませんが、私は税法通り、やつてつたならば、予算通り取れるだろう。こういうふうに考えておるのであります。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは去年も例があるが、最初の見込みよりも非常にこれは強化されておる。ここに源泉課税の問題がはつきりあつたと思うのであります。それから今度の申告所得の場合でありますが、これはどういう方法をとられるのですか。つまり去年の申告額を下つてはならない。最初の予定申告の場合にはそういうふうになると思つておるのでありますが、これはどうですか。
  175. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 原則として申告につきましては前年の決定に沿つてつて頂きたい。業況不振その他の理由がありましたときには必ずしも規定によらないでもよいという改正案提案しておる次第であります。
  176. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると国民所得説明とも関連するのでありますが、前年よりも本年度の実際源泉課税におきましては課税額が多い。こういうふうに推定されておるのですか。
  177. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 全体的には国民所得は殖えると考えておるのであります。大体前年度通り、こういう原則を立てまして、併し個々の人につきまして減る場合もありますので、減るような場合におきましては事前に申出て申告を減らして出していいということになつております。
  178. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題の論議は細かくすれば長くなると思うのでありますが、国民所得の一割増、これと連関いたしまして一体このような前年度の申告額を下らないというような申告から第一期の徴收をやるということになりますと、ここに非常に現実とそぐわないものが起ると考えられるのでありますが、これに対してはどういうふうな方法を考えておられますか。
  179. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大体先程の御答弁で御了承願いたいと思います。大体原則としては前年決定の額というものを申告して、特別の事情のある場合には、それによらなくてもいい、こういうのであります。
  180. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題はしばしば繰返して論議されておるのでありますからむし返しをやめます。  次に外国人の税金の問題でありますが、この内容をどういうふうに今後されようと考えておるか、この点。今まで二、三の経過は聞いたように思うのでありますが、最も最近の大蔵省で考えておられる態度についてお伺いいたします。
  181. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先般來申上げたのと変つておりません。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 それについてもう一度聞かして頂きたいと思います。
  183. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 日本の経済自立復興のために、外国の技術、外国の資本が必要であると考えておりますので、外国の資本に対しましては、即ち社債等を引受けました場合におきましては、日本では税率百分の二十を外国居住者であれば百分の十にしようとするのであります。そうして又勤労所得税につきましては、特に日本再建に必要であるというものにつきましては、一定額を控除して課税すということであります。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 今お話のあとの方でありますが、特に日本の再建に必要だというのは、例えばどういう例がございますか。
  185. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 技術屋、エンジニアを主とするものであります。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 その外にございませんか。
  187. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) あるかも知れませんので、今、検討いたしております。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 何かこういう場合はどうですか、ホテルとかそういうことを聞いておりますが、これはどうでしようか。
  189. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今申上げる段階に至つておりませんが、ホテル業の從事員等につきましては、減税する考えは只今のところ持つておりません。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 或る種の特定のものについては無税にする、それからそうでないものに対しましても非常に先程の税率によつて引下げる、こういうことになるのですが、これをやる人については、日本の経済再建のために必要だと、こういうふうなことを言うのですが、こういう判定は誰がするのでしようか。
  191. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この判定は政府でいたしまして、国会の審議を願うのであります。而して事例を申上げますれば、イギリスにおきましては、特にアメリカ人につきましては、イギリス内での所得にだけ課税することにいたしております。フランスにおきましては、アメリカ人につきましてはアメリカの課税と同樣の課税にする、こういう取扱方をした例があるのであります。
  192. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) もう五分ですからそのおつもりでどうぞ。
  193. 岩間正男

    ○岩間正男君 外国人というのは誰々を指すのです。
  194. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 外国人という表現はどうかと思いますが、この表現の仕方は外国人ではなしに、日本の非居住者というふうに考えて行きたいと思つております。
  195. 岩間正男

    ○岩間正男君 中華人民協和国人とか朝鮮人という場合にどう考えておりますか。
  196. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 非居住者ということになれば、そういう方も同じでございます。
  197. 岩間正男

    ○岩間正男君 次にお伺いしたいのは石油の問題と連関してでありますが、石油会社の例えば日本人の勤務者は大体月給一万一千円ぐらいになつておる。併しこれが外人の場合だと四十万円くらいの月收がある。而もそこに非常に減税乃至は免税というような形で行われておる事実を聞いておるのでありますが、これは事実でありますか。
  198. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今外国人の所得に対しましては課税いたしておりません。今後法案が出ましたらそういうものにも課税することになるのであります。
  199. 岩間正男

    ○岩間正男君 次に伺いたいのでありますが、こういうふうな債務償還の問題が非常に今やかましい問題になつて、当委員会でも一つの大きな中心になつておると思うのでありますが、先程申しましたような税の強化によつてなされたところの厖大なる予算が、千二百億以上もこういう形で債務償還がされる。而もこれについて期限の來ておるところの公債は八億と聞いておりますが、これはそうなつておりますか。
  200. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 來年度期限の來ますものは八億くらいだつたかと思いますが、正確な数字は只今申上げる資料を持つておりません。
  201. 岩間正男

    ○岩間正男君 一体何故そのような段階において、去年の債務償還とは非常に性格が違うと思いますが、何故これを今年強行しなければならないのか、そこに何か一体理由はないのか、その点もつとざつくばらんにお聞きしたいのであります。
  202. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 財政演説その他の機会でたびたび申上げておりますから、一つ御了承願いたいと思います。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は実はそういう表の理由をお聞きしたいと思わないのでありますけれども、こういうことを聞いておりますが、これはどうですか。外資を導入するにはどうしても日本の借財を拂わなくちやならない、そういうような形で債務償還が非常に急がれておるということはこの通りでようございますか。
  204. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 外資を導入いたしまするのには、我が国経済の自立発展ということが先決要件であるのであります。政府の債務が少くなつたから外資が入り易い、外資導入の唯一の條件というふうには私は考えておりません。
  205. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは意見になりますから余り触れませんけれども、どうもこの点が了解されないのだろうと思う。こういう形で厖大な予算が、ここでこういう金融難の段階におきましてこれが償還される、だからその原因を、どうしても外資を導入するのに、こういうふうな一つの地ならし的な條件としてそういうような強化がされておるという点が非常に大きく出ておる点が問題になつておるのだ、こういうふうに思われます。とにかくこれは国税の今度の内容を検討すると明らかなことだと思うのでありますが、補給金の問題についても、公共事業費の問題についても、更に警察費、こういうようなものを見ますというと、その中に非常に多くの軍事化される面、それから非常に彈圧的なもの、徴税強化的なもの、こういう面に非常に大きく使われておるのじやないか、国税がそういうような性格を持つて來たのに対して、一方政府は非常に減税ということをおつしやつておる。国税の減税を大きくおつしやつておりますけれども、今度はそのしわを地方税の方に大きく寄せて來ておる。ここに今度の地方税の大きな性格が出ておるというふうに考えられるわけであります。この比重が非常に大きく変つておると思います。去年の国税並びに地方税、それから今年度地方税国税関係、こういうふうなところに大きな性格の転換があると思うのですが、蔵相はこれをどのように説明されますか。
  206. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 国税につきましては、たびたび申上げましたようにできるだけ財政規模を縮小いたしまして減税する。地方の方は地方分権その他の建前から財政需要が増して参りましたので、最小限度に増税する。而して中央地方を通じましては相当の減税になると、こう言つておるのであります。
  207. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はその二つの関連における性格の変化をお聞きしておるのです。これをどういうふうに説明されるかということを一つ。
  208. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今申上げました通りでございまして、日本の民主主義強化ため地方財政需要が多くなつて参りました。從いましてこれを賄うためには増税しなければならんのだ。併し一方では国税の方が政府の規模をできるだけ縮小して減税する、こういうことですが、こういうことは私は日本の民主化のためにいい方向である。段々こうなつて來るべきものと自分は考えております。
  209. 岩間正男

    ○岩間正男君 私のお聞きしておるのは、この比重が非常に違つておる。去年の国税地方税の大体の比重は十対五というふうに考えておりますが、今年度は十対七くらい、もつと大きくなるのであります。こういうようなことから非常な変化が起るのでありますが、こういうふうな点について蔵相の説明を聞いておるのであります。
  210. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それを今お話申上げておるのであります。で去年の国税を申しますと、專売益金をのけて五千百億、地方は一千五百億、今度は国税は四百四十億、片一方は千九百億、こういうことになつておる。この状況は片一方では財政規模を縮小して減税を來し、片一方は地方分権確立ため財政需要が大きくなつて來たというので増税しておる。
  211. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) もう時間が過ぎましたが……
  212. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも今の点が、説明は非常に表面的な説明で、もつと(「時間だ」呼ぶ者あり)こういうようなこの財政の何ですね、国家財政地方財政とのバランスの変更ですね、その変更から起るところの性格の大きな変化というものがあると思うのでありますが、そういう点について内容的な説明を私は望んだのでありますが、時間がもうなくなつておりますので、大体この点は非常に議論に亘る面も多いと思うので、この辺で止めたいと思います。
  213. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 ちよつと局長、長官にお伺いいたしたいと思いますが、その先に、局長、長官にお聞きいたしたいことにつきましての前提といたしまして大蔵大臣にお尋ねいたしたいのです。  見返資金を、大蔵大臣は日本の産業復興に使う、或いは将來対日援助物資、援助資金が跡絶えたときに、いわゆる資本蓄積をするという建前を終始とられておつて、又見返資金の使途の内容につきましてもそうした方途を重点的に考慮されていることは承知いたしておる事実でありますが、進駐軍人住宅に対しましても、今回五十二億の特別措置が講ぜられておるのは、こうした建前と矛盾は來しておらないか、その事情を承わりたい。
  214. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 矛盾はいたしていないと思います。進駐軍住宅二千戸五十二億円を建てますこと自体は関係方面からの指令であるのであります。そこでどの財源をどこから求めるかということにつきまして検討を加えたのであります。私はこの程度の金ならば、別に増税その他によりまして、終戰処理費から出すよりも見返資金を使つた方が適当じやないか。そうして又今度の住宅には今までのものとは違つて、一戸について一月七十四ドルの家賃を取る。家賃を取るという建前をとるということになりますれば、国の財産ということよりも、公社というふうな形にした方が適当であるとこう考えまして、見返資金から出すことにいたしたのであります。
  215. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 終戰処理費から使われるのが建前のように考えられまするが、特に進駐軍人住宅に対しまして、見返資金からこれを取上げ、取立てるということは、どうもその間に進駐軍の立場におきましても、例えば進駐軍のいろいろな施設が見返資金から直接使われるということは、世界的にも疑惑を受ける問題ではないかと思う。当然終戰処理費というものを増額して、そうして予算修正をして行くという建前の方が筋が立つように思いますが、この点は如何でしようか。
  216. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私はそういうことも考えて見たのでありまするが、結局疑惑というものは、私は全然考えていないのでございます。あのときの予算措置といたしましては、又増税その他によつて一般会計の方をいぢくるよりも、見返資金から出した方がよい、こういう結論になつて、そういう措置をとることにいたしたのであります。
  217. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 もう一点大蔵大臣にこれに関連しお聞きいたしたいことは、この建設後の、或いは使用後の住宅というものは、日本政府と申しますか、日本の側に帰するような建前をとつておられますが、これは援助物資と見返資金が根本的に性格がまだ判然としない現在の建前では、アメリカと債権債務の立場にあるというような実情にあるわけと承知いたしておりまするが、そういつた場合にこれらの住宅が、仮に進駐軍として不用になつた場合に対して、日本政府はこれの処置をどういう工合にとられる予定でありますかというのが一点と、それから今の七十四ドルの家賃と申しますか、家賃を貰うと、公社の立場から見ますれば、貰うと言われておりまするが、一方日本人の現在約一万二千に亘つておる住宅を接收いたしておるあの家賃は、大蔵大臣も御承知の通り、地代家賃統制令等によつてこれが処理され、而もその内容におきましては、あとでこれは長官にもお伺いしますが、著しく不当に低廉なのであります。この不当に低廉であるという問題については又議論があるかも知れませんが、どのような角度から見ましても、実際問題として低廉な状態であります。これが今七十四ドルが坪当り何程の建造費であつて、そうしてどういう割合になるかはまだ建設の内容を聞いておりませんから分りませんが、どう考えて見ましても日本人住宅の相当過去における立派な住宅の割合から見まして、日本人住宅の家賃等の割合は、この今回建設されんとします家賃の割合等から考えまして、半分乃至三分の一ぐらいではないかという見方が濃厚であります。これに対してはどういうお考えを持つておるか承わりたい。
  218. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今度建てます建物は、日本政府の丸抱えによる公団の所有物になるのであります。決して援助物資と直接の関係はないのであります。見返資金というのは、繰返して申上げますが、日本政府のものであるのであります。從いまして進駐軍が去つた後におきましては、その所、その時の状況によりまして処理して行きたいと考えております。  次に二段の、今まで日本人の住宅で接收せられておるところの家賃が不当に安いんじやないか、こういうお話でございますが、これはお話のような点もあります。併し今後におきましては、地方税改正等がありますので、この家賃は引上げて行きたいと考えております。
  219. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 それではもう一点大蔵大臣に聞きますが、見返資金の問題をちよつと脱するのでありますが、この際ちよつと重ねてお聞きいたして置きたいことは、見返資金は日本政府のものだと言われまするが、併しながらこの金額に相当するものは、日本とアメリカとは債権債務の状態にあるのとは違うのでありますかどうか、この点をお聞きしたい。
  220. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これも私たびたび申上げましたのでありますが、向うから参りました援助物資によりまするものは債務と心得ております。併しこれは外の例にもありまするように、講和條約におきましては棒引きにされておるのが今までの実情であります。只今のところでは債務と心得ております。併し援助物資が債務であるからといつて、それから出て來たところの見返資金特別会計のものは政府のものだ、こうお答えして置きます。
  221. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 どうも変なところへ引つ掛つて申訳ないのですが、援助物資が債務であるということであるならば、援助物資がいつまでも日本にストックされても無駄でありまするから、当然これが国民によつて換金されておる、その物資に相当する金額、即ち見返資金というものは從物資の裏書しているものでありまするから、当然援助物資が債務であるならば、それによつて生ずる国民換金である相当金額というものは、アメリカの紐の付いた債務であるべき筋合いのものだと思いますが……
  222. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 紐の付いた債務というのはどういうものですか。私は向うから來ておる援助に対しての債務は心得ております。併しそれによつてできました見返資金特別会計の資金というのは日本政府の資金であるのであります。
  223. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 資金は日本政府のものであるが、その資金は天から降つて湧いたのではなくして、やはりアメリカの援助によつて生じた資金であつて從つて物資が債務ならば、その物資の裏付けされるものは、当然資金の使用ということについては、日本政府責任であるし、或いは司令部の了承を得るのが順序であろうと思うのですが、建前としてはやはり見返資金はアメリカよりの債務であるという解釈をどうしても我々はとらざるを得ないと思います。この点もう一度伺つて置きたい。
  224. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 法律で決めた考え方と経済的な表現の仕方とは違うと思います。私はあなたと余り違つた考えを持つておりません。これはたびたび言つたことでありまして、気持は分つて頂けるだろうと思いますから、この程度でいいのじやございますまいか。
  225. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 よく分りました。でもう一点だけ、お急ぎのようですが、お聞きしたいことを漏したのは、今度地方税改正等に伴つて、こうした日本人の約一万二千戸に亘る接收住宅の家賃と申しますか、補償費と申しますか、こういつたものを相当程度直されるとおつしやいますが、どの程度直すかという御構想の程を承わりたい。
  226. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 御承知の通りに、前の地租家屋税と今度の不動産税が相当上つて参ります。今度その分だけ少くとも直したいと思つております。
  227. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 これはその税に関連する分がスライドするのであつて、実質上は不当な低廉価格でありますから、税に関する問題はそれぞれスライドするのは、これは当然でありまして、特に家賃を上げるとか、補償費を直すという問題とは実質上違うと思います。実質上上げる措置についてのお考慮がおありのように承わりますが、如何でありますか。
  228. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は税が高くなつて來るので家賃を直さなければならないと申上げたのでありまして、税のスライドする以外のことについてはまだ現在のところ行つておりません。
  229. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 大蔵大臣に対する質問はこれで打切ります。  今度は調達庁長官に伺います。現在日本人の住宅約一万二千がまだ接收されておりますが、この接收されておりまする法律的根拠はどれによつてつておるのですか。
  230. 根道廣吉

    政府委員(根道廣吉君) 只今接收されております家屋一万二千戸とおつしやつたように聞きましたが、これは接收関係の契約の件数のことだと思います。実は住宅で接收されておりますのは約三千戸でございます。又その接收の根拠はスキャッピンでございます。
  231. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 そのスキャッピンとは即ちポツダム宣言によりまする強制接收の條令を意味するのか、スキャッピンによつて日本の法律によつて接收されたのでありますか。
  232. 根道廣吉

    政府委員(根道廣吉君) ポツダム宣言に根拠を置いたそれによつて出たところのスキャッピンであります。ただ日本の国内法が直接に発動するいわゆる收用の意味のごとき強制的な場合は、現在はなかつたように記憶しております。調達書が出て、命令書が出て参りまして、それによつて各戸の所有者と交渉いたしまして、私的契約の形を以て契約しております。
  233. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 日本の法律によらざる接收であるわけでありますが、事実上は今私が申上げました通り、進駐軍が殆んど直接日本の住宅に來られて、そうしてこれを買うのだ、或いはこれを動かしてはいけない、或いは机を動かしてはいけない、額を動かしてはいけないと言われる。そこで、こうした特例によるものに対して、政府は家賃の裁定、地代の裁定その他什器等の借り賃の裁定はどれによつて裁定の基礎とされておりますかを伺いたい。
  234. 根道廣吉

    政府委員(根道廣吉君) 地代、家賃等は從來公定価格の、地代家賃統制令を採用しておつたわけでありますが、現実に現在やつておりまするものは、特別調達庁において長官の諮問機関として不動産評価委員会というものが從來ございます。これには広く学識経験者を集めまして、その意見を徴し、又具体的の例については或る一定の基準によつて個々の算定も諮問しておりまして、そこで一致されましたものを調達庁として採用いたしまして、現実の地代、家賃等を支拂つておるわけであります。
  235. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 日本の法律による地代家賃統制令によつてやるならば、こうした家の賃貸者は相互契約によつて、それに準拠した方がこの法律を施行する上において常識であろうと思います。ところが前段において申上げた通り、進駐軍に接收されておる日本人の住宅は強制的であります。例えば明後日入るから明日中にのけというような、その他いろいろの條件を申しますと長くなりますが、極めて辛辣なる接收方法であります。こうしたものは当然地代家賃統制令によらざる、又こうした住宅については特殊のそれぞれの装置があり、或いはそれぞれの庭園があり、又樹木があり、いろいろの施設が相当完備されておるものに対して、現在の地代家賃統制令によつてこういう相互契約、納得づくの随意契約でなくて、強制契約のような工合になつておるものについては、政府は当然現在の終戰処理費の特別措置、終戰処理費の内容については、すべてその使途についていろいろと特別措置が考慮されておることは私が申すまでもない次第でありますから、こうした趣旨に則つて特に今回見返資金五十二億を費して進駐軍住宅を建設し、而もこの家賃が先程大蔵大臣からお聞きいたしますような工合に二万七、八千円にも、二万五、六千円にも相当するような高額の家賃に対比いたしまして、半分乃至三分の一にも足りないというような現状というものは、余りにもこうした被害者と申しますか、接收されておる住宅所有者はそれぞれ家を飛び出され、或いは宿屋住い、高い金を出して家を借りるとか、間借りをするといつたような苦境にある今日、何とかして政府が特別の措置を講ずるお考えはないのかどうか、この辺をお聞きいたしたい。
  236. 根道廣吉

    政府委員(根道廣吉君) 只今岩木委員が申されましたように、自分の家を接收されておる方々が非常にお困りであることは、私共といたしましても誠に御同情に堪えないところであります。又その家賃等が余りにも低いのをどうするかというお話でございまして、只今のところ我々といたしましては、現実の適用に当りましてできるだけ基準を上げて多少なりともその苦しいところを緩和したいと考えておるのでございます。尚地代、家賃等は昨年の五月よりその前に比しまして一・六倍増額いたしました。尚この四月以降に対しましては、只今のところ一・九倍の値上を考慮しておる次第でございます。
  237. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 これは余りにも從來不当に扱つたものの値上と、地方税法改正に伴うスライドでありまして、実質上は依然として根本的には変らないのは私が先程申した通りであります。先程大蔵大臣が申された日本の国費で造るという進駐軍住宅の新設分の家賃と、前から日本人の住宅を追い出して使つておる強制接收のものとの比較が余りにも甚だしいのでありますから、こうした問題につきましては政府は特別の措置を以て地代家賃統制令以外の別個の補償費的性格を持つた援助措置、救済措置を講ぜられる考えはありませんか。重ねて承わりたいことが一点と、それからこれらの住宅は売ることもできなければ、担保に入れて金を借ることもできないので、多数の方は非常に困つておる実情でありますが、こうした措置に対して何らか政府は措置をとられる考えでありますか。
  238. 根道廣吉

    政府委員(根道廣吉君) 只今そういう安いものに対して特に補償を出すかというお問いでございました。只今のところ補償という形において家賃の外に出すということは計画されておりません。併しながら折に触れまして今後もそういう方々の苦境を緩和する方法はできるだけ考えて行きたいと存じます。
  239. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 売れる方法とか、担保になる方法について途を開くお考えはないかどうか。
  240. 根道廣吉

    政府委員(根道廣吉君) その点につきまして、いろいろ苦しい方がございまして、何らか措置をして呉れんかという請願が随分と参ります。これは特別調達庁長官よりその方に伝えまして、こういう苦境にあるから是非これを解除して売却なりし得るように取運んで呉れということを申添える場合も相当ございます。現在のところそれ以上の措置はちよつととり難いのであります。
  241. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 もう一点お聞きします。接收解除後におきまして措置を講ずるために新たに審議会を設置されたそうでありますが、この際審議会の委員にこういう被接收者の代表を是非入れて呉れという強い要望がありますが、その審議会にそういう方を入れるお考えがありますかどうか。
  242. 根道廣吉

    政府委員(根道廣吉君) 現在国会に提案になつております特別調達庁設置法の一部改正案におきまして、從來の不動産評価委員会というものを不動産審議会という名前に改めまして、これを法案のうちに織込んでおります。そしてその場合、從來は官側が主体でありましたが、今度はできるだけ官以外の方々にも入つて頂くようにし、從來はその委員会の委員長は特別調達庁の次長を以て当てておりましたが、これを委員の互選によつて選出して貰うということになつております。そして委員長は政府側の委員でなしに民間側の委員になつて貰いたいというふうに考えております。尚今お話のように被接收者の意見も取入れるように委員のうちに加えたらどうかということでございますが、全く同感でございまして、そのように取計らいたいつもりでおります。
  243. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 特別調達庁に対する私の質問はこれで終りましたが、あと本多国務大臣にお尋ねしたいと思いますが、質疑を続行いたしますか。
  244. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 本多国務大臣に対する御質疑は、木村さんの御質疑が中断しておりますから、その後にして頂きたいと思います。この辺で休憩にして夕食を取りたいと思いますが、よろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは暫時休憩いたします。    午後五時二十七分休憩    —————・—————    午後十時九分開会
  246. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 休憩前に引続きまして会議を開きます。  通告順によつて発言を許可いたします。木村禧八郎君。
  247. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 前回に引続きまして本多国務相に御質問申上げたいのですが、この地方財政委員会ですね、この地方財政委員会構成ですな、これについてお伺いいたしたいのですが、これについてはいろいろ議論があると思うのですが、特にこの地方財政委員会の権限、性格、そういうものについては相当これは愼重に検討しなければならないと思いますが、この構成についてシャウプ勧告案では、知事会会長の任命する者、市長会会長の任命する者、町村長会会長の任命する者、内閣総理大臣任命の二名、計五名を国会の承認を要して任命するということになつておりますが、こういう委員会の構成で果してこの委員会が民主的な構成になるかどうか。更にこれを民主的な委員会の構成にするためにもつと範囲を拡げるというような考えはございますのかどうか。
  248. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 地方財政委員会は、委員会の任務は、これは最も重要なる任務は、平衡交付金の創定、更に交付額の決定というところにあると思います。その外地方財政委員会におきまして、この税法の法律或いは政令等以外のことにつきまして、地方財政委員会の規則を決定するというようなこと、更に総理大臣のこの補助事務をそこの事務局でやらせる。これは委員会のやはり委員長の権限で、事務局にやらせることになるのです。この構成につきましては、シャウプ勧告の線に副いまして五名、但しこの五名の委員のうち政府から推薦いたしまする二名の一人を、これは国務大臣といたしまして、そうしてこれを委員長に充て、以てその国政との調整並びに委員会の議決を閣議を通して強力に実現できるようにするということを考えておるのでございます。更に委員の数を多くして各方面からの意見を反映するようにしたらどうかというお考えも、御尤もであると思いますけれども、只今申上げましたような行政機関として行政を執行して行く機関でございますから、余り多数に上りますことは却つて事務の処理を敏速にすることが困難ではないかと考えまするので、やはりシャウプ勧告の数に止めたい方針でございます。
  249. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この地方財政委員会構成については、もうシャウプ勧告案通りに決まつてそれで御提案になるわけでございますか。
  250. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 私から只今御説明いたしましたような五名ではありまするけれども、その中に委員長として国務大臣を置くのという点は、シャウプ勧告に挙げられておらない点でありまして、この点にはそういう相違がありますけれども、その外はシャウプ勧告の線通りで、趣旨通り立案をいたしまして司令部に承認を求めている段階でございます。
  251. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうすると、聞くところによりますと、まだ相違点についていろいろ政府において検討する余地があるやに聞いておつたのですが、それは大体問題は解決したのでございますか。
  252. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 私がその承認を得るための折衝に当つたのでございますが、委員長問題に対する向うの承認の決定がやはりいろいろ研究されるところがあつて、その点についての判断が遅れているんだろうと思いますが、五人の委員という点については、向うでもその通り了承されるものと思つております。
  253. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私はその点がやはり今までペンディングになつていたように、本多国務大臣からも伺つておりましたが、大体今の御答弁のような方向に、国務大臣を委員長にする、こういうことになるようなお話でありますが、そうしますと、どうして国会提出が遅れているか、その点がどうも了承できないわけなんですが、それは今までと情勢は同じなんでございますし、もう本日中にも或いは明日中にも御提案できるというような御成案があるんでございますか。
  254. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これはたびだび御答弁申上げました通り、今日にも明日にも承認が來るものではないかというので期待いたしておるのでございますが、何分にも向うからどこがいけないというようなことは、もうすでに折衝は結論に達しておるのでありまして、向うの決定を待つている状態であります。これは決して政府の出しておりまするものに対して、どこがいけないというまだ向うから指示を受けたこともないのでございまして、向うの御決定が遅れているその事情につきましては、察しまするに最高責任者の御判断が結論に達しないため遅れているんじやないかと察しておりますが、すでに議会の情勢も向うにも御了承されていると思いますから、今日にも明日にもと期待いたしておる状態であります。
  255. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 本多国務大臣も御承知のように、この法案が早く出ないということが我々の予算審議にも相当影響を與えて來たわけであります。又現に與えているわけでありまして、どうも只今の御答弁を伺つていますと、政府の案に対して別に異議がまだ述べられておらない。何故遅れるかについて、我々は了解できないわけですが、併しそれは非常に私は遺憾だと思うのであります。その点につきましてはもうこれ以上お伺いいたしてもいたし方ないことでございますから、この点についてはこの程度に止めて置きたいと思うのです。ただ我々の考えは、先程本多国務大臣の御答弁がございましたが、委員五名で大体民主的にやつて行けるのではないか、そうして又更に拡張すれば民主的になるが、行政事務をやつて行くのに余りに多くては事務の敏速な運用に差支る、こういうお話でしたが、そう沢山の追加でなく、まあ例えば国会議員の中から互選された者一、二名入れる、或いは又市民団体とか労働組合或いは農村の方、こういう人達の代表を二名程度、こういうふうにまあ我々の意見は五名を大体七名ぐらいですな、七名ぐらいに殖やして行く、そういうような構成にした方がいいのではないか、そう考えるのですが、これに対して本多国務大臣はどういうお考えを持つておりますか。
  256. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは府県知事の推薦する者が府県代表であり、市長会会長の推薦する者が市の代表であり、町村長会会長の推薦する者が町村の代表であることを考えますと、これで少数ながら一応全部の階層の全国民を代表せしめることができるのでありまして、政府といたしましてはシャウプ勧告の通りのことで、政府代表という二名も加わりますので、これで十分やつて行けるものと考えております。
  257. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この点については本多国務大臣と考えが違うのですが、これで民主的に運用できるというお話ですから、更にこれを議論する意思はありませんから、御答弁として承つて置く程度に止めたいと思うのです。  次にお伺いいたしたいのは、この地方税改正案の実施期ですね、この前本多国務大臣にお伺いした際に、大体四月一杯ぐらいに実施できそうなお話がございましたが、やはりそういうお考えでございますか。
  258. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは地方税法案の成立が早ければ五月からの実施は可能であると思います。一にかかつてその成立の時期にありますので、その成立をいたしましてから都道府県市町村におきましては、それぞれ條例を出さなければなりません。この條例をそれぞれ地方議会へかけて成立させて公布するだけの期間が必要でありますが、その期間は長く見ましても一月以内にはすベての準備が整うものであると考えております。
  259. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 新聞の伝えるところによりますと、大体この準備には一月くらいでは足りないのであつて、実際には六月頃、六月早々くらいの実施になるのではないか、そういうような意見が、自治庁の方でそういう観測をしておる、こういう新聞記事が出ておつたのですが、この点は本多国務大臣はどういうふうにお考えでございますか。これは事実に相違しておるのでございますか。
  260. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) その新聞記事はいつ頃成立するということを予測して立てた見込みでありますか、それによつて違うわけでありまして、それぞれ各府県、市町村におきましては、今回の税制改革に対応する條例案等もそれぞれ準備をいたしておりますので、これが成立公布されますならば、私の申上げましたような期間に実施は困難でないと考えております。
  261. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大体一ケ月くいらと見ていいわけですね。
  262. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) さようでございます。
  263. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 我々非常に心配するのは、本多国務相も御承知のように、今度の税制改革は画期的なものであり、而もこれまで税務に対して余り慣れておらない市町村、府県、そういうところで全く新らしい税金を取る、而も住民税附加価値税固定資産税、これらについても画期的な改正が行われるのですが、こういう税制改革を今の見通しとして、市町村、府県のそういう徴税機構でうまくこれが運用できるかどうか、この点についての見通し、これは実際問題として非常に重要ではないかと思うのですが、この点についてどういうように考えておられますか。
  264. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 各地方団体におきましても、シャウプ勧告以來非常な熱意を以て研究準備いたしております。從つて今回のこの税法改正は、誠に根本的な改革で、面倒な点もあるのでございますけれども、十分やつて行けると考えております。化論從來徴税職員の数を以てしては、これは困難であると思われるのでありまして、我々充実いたしましてやつて行くのでありますが、相当の準備はもうできていると考えております。
  265. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 実際問題としてこれがうまく行くかどうかは非常に重大な問題なんでありますが、この点又議論になりますから、それはまあ避けまして、我々は今の、無論まあいろいろ拡充すると思われるのですが、市町村或いは府県等のこの税務機構では非常に困難を極めるのではないか、その結果としてその税がうまく取れないのではないか、それらのことも憂慮されるのでありますが、大蔵大臣の御見込はどうでしようか。今度国税の方においては相当機構が整備されてあると思うのですが、府県及び市町村の方ですね、全く画期的な税を取つて行くと、殊に固定資産税とか或いは附加価値税など、その算定などは非常に困難だと思うのでありますが、この国税の方の御経験のある大蔵大臣の見込は如何ですか。
  266. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 問題は附加価値税固定資産税にあると思うのであります。住民税におきましては、もう十年間の経験済みであります。相当の改正はありましたけれども、大した問題はないと思います。而して不動産税につきましては、御承知の通り資産評価の資料を国税庁の方から連絡することにいたしておりますから、大した問題はないと思います。ただ問題は附加価値税の問題でございますが、地方庁におきましても、府県においても事業所得税を通ります場合において相当の準備ができておるのであります。見方によりましては今の税率では相当收入増、即ち四百二十五億円の收入見込によりまして、或いは非常に沢山取り過ぎるのではないかという心配もあります。又木村さんのおつしやるように、非常に取り足らんというような場合も起るのではないか、こういう懸念がございますが、私の見るところによりましては、事業税につきましても相当のもう経験済みでありますし、又本多国務大臣の言われたように、機構を拡充いたしますし、そうして又申告に段々慣れて参りまするので、私は税收入確保がむずかしいというようなことはないと考えております。ただ何と申しましても初めての税でございまするから、いろいろな困難な点はあると思いまするが、納税者の協力によつて、又各府県の施策のよろしきを得れば困難の問題ではないと考えております。
  267. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは国税についても問題になると思うのですが、地方税においても、その地方税制の改革案を作られた当時、やはり最近のように経済情勢が非常に不景気になつて來ている。こういう経済情勢の変化というものは、これは一応見通されて、こういうことを見通されて税制改革というものは立案されておる。これは国税においても同様でありますが、この点はどうですか。
  268. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 経済情勢の問題につきましては、私は十分に見通を付けてやつたのでございます。ただ問題は附加価値税というものは、世界でも稀に見る税制でございますので、これを施行いたしまするにつきましては、いろいろ検討いたしたのでありますが、これは施行して何ら差支ないし、又非常に事業税或いは取引高税等の施行から考えまして彈力性のあるいい地方税と考えてこの法案を提出したような次第であるのであります。
  269. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 幸い大蔵大臣がおられますのでシャウプ税制勧告の中で、非常に重要な点で而もまだ一般には余り触れられていない問題があるのですが、その点についてちよつとお伺いして置きたいのですが、シャウプ税制勧告は、租税裁判所ですか、租税裁判所というものを設けるべきである、こういう勧告があつたと思いますが、それは今度の地方税改正を見ましても又国税の方におきましても、国税違反取締規則の強化法律案が出ております。又地方税改正案を見ましても罰則が非常に強い、罰則が強化されて來ておるわけであります。一方において非常に税の徴收について罰則を強化し、そうしてその罰則について非常に嚴重な取締をやつておる。こういうものに対応して、そういういろいろな租税上における紛争を解決して行くそのためにはどうしてもシャウプ勧告の租税裁判所を新設するのだと言われておりますが、こういうものは非常にいいのではないか、特に最近例えば群馬あたりではいわゆる反税のいろいろな運動が起つておるということが新聞に報ぜられております。尚各地においてそういうものが始終起つておる。從つてこれをああいうちよつとした目途的の形においてそういう税の問題を紛糾させるということを避ける意味でも、この租税裁判所というものを至急設けてはどうか。非常にこれはいい制度だと思うのですが、大蔵大臣はどういうお考えですか。
  270. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) シャウプ博士は租税裁判所を提唱されておりまするが、今の制度におきましては前の行政訴訟と違いまして、やはり裁判所におきまして租税事務の判決をすることになつておるのであります。で租税裁判所を設けるかどうかという問題につきましては、シャウプ勧告案を基礎にいたしまして検討いたしました結果、今御審議を願つておりまする租税制度の改正につきまして紛争処理機関を新たに設けることにいたしました。租税裁判所に代る役割をやつて行きたいと考えておるのであります。私は今の現状から申しますれば、シャウプ博士の租税裁判所に代るべき紛争処理機関を国税関係に設けてこの任務が終れりと考えておるのであります。行政機関におきましては将來の問題として検討は続けて行きますが、只今のところは紛争処理機関を新に設けまして、そうして納税者の異議の申立に対しまして早急に処理する制度を取りたいと考えております。
  271. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣も御存じのように今度のシャウプ税制勧告は、非常に租税体系として綜合的にできて勧告されておるわけでありますが、あの序文を見ましても、或る一部を採用して一部を採用しないということになると却つて逆効果を生ずる場合もある、こういうふうに勧告されておるのです。ところでですね、シャウプ勧告中で、合法的な脱税として非常に強くまあ指摘されている讓渡所得です、その讓渡所得につきましては、これを今までの半額控除をやめて全額課税しろと、こういうことを勧告されているわけです。その方法として公社債の登録制、それから株式の名義書換の登録、更に無記名定期預金及び金銭信託の廃止、それから架空名義の預貯金の禁止、こういうことについて勧告されたわけです。これを新聞の報道によりますと、こういうことは一応提出する、政府がこの勧告に沿うた法律案を国会に提出することになつてつたが、これを中止することになつた、こういう記事が出ておりましたが、私はこれが若し事実であるとすれば、これはシャウプ勧告案のいろいろな点を惡く改正してしまうんじやないかと、そういうふうに考えますので、この事実につきましてお伺いいたしたい。
  272. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 実は木村さんの私に対する御質問は終つたと思つて出ておつたのでありまするが、折角重要な問題にお触れになりましたのでお答え申上げます。シャウプ勧告案の線に沿つて行く我々の考えには変りはございません。併しシャウプ勧告案が今の日本の経済或いはいろんな情勢に合わないところは、私は全部改めるつもりでおるのであります。而して所得税につきましてもシャウプ勧告案よりも余程違つた考えで行つておる点もあるのであります。で問題の讓渡所得の問題につきましては、無記名預金の問題或いは名義書換の問題を、シャウプ博士のように今日本でやりましたならば、非常に経済再建に差支のある場合が多い、具体的に又実際行われないことがあるのであります。シャウプ博士の理論は、税制の理論としてはいいかも知れませんが、我が国においてはシャウプ博士の御理論は用いられない点が多々あるのであります。アメリカにおきましても殊に問題は讓渡所得の問題であるのであります。アメリカはこの讓渡所得の問題につきましては、二割五分の課税ということにつきましても非常な問題がある、而してシャウプ博士は日本においてこれを施行せよというふうな勧告がありましたが、今の日本の現状におきましては直ちに施行することは困難であり、経済の再建に支障を來すという私は信念の下に、シャウプ博士の勧告案に從わないということにいたしたのであります。それで当初は株式の名義書換の問題は、これは殆んど問題にならん、ただ預金利子の問題と国債、社債の登録の問題につきましては検討を加えておりましたが、最近に至りまして、これも施行するには早過ぎる、こういう考えて暫く法律案提出を待つた次第でございます。繰返して申上げまするが、日本の経済に受入れられる程度の勧告案につきましては十分受入れております。併し受入れられない問題につきましては、私は極力日本の経済情勢を話しまして、受入れられん問題は受入れないことにいたしておるのであります。
  273. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣は前に大蔵委員会におきまして、無記名預金については成るべく早くこれを禁止するという、こういうことを言明されたのです。ところがその方針がこういうように変りましたのはどういうわけですか。
  274. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) その後の日本の経済情勢を見まして、情勢の変化からそういうようにいたしたのであります。
  275. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その後の経済情勢の変化……、その後そう変化していないと思うのですが、(笑声)私は経済情勢の変化というのはおかしいと思うのです。併しまあこの点を追及していますと地方税の質疑点から外れて行きますから、ここで私はこの点についてはこれ以上御質問思上げませんが、併し何故私がこの無記名預金或いは登録の問題をまあ取上げたかといいますと、中央地方を通ずる総合的な税負担の問題、こういう点についてシャウプ勧告は、或いは全体の総合的な租税体系として作上げておるのであつて、そういう意味で或る一つが欠ければ却つて全体のバランスが失われる、却つて惡い税制になつてしまう、從つて若しかその讓渡所得の面だけこれがいけないと來るならば、外の税制においても根本的に考え直さなければならん。外の面では有利な点を採用し、その都合の惡いところだけをやめたならば、これは却つて惡くなる。そこで私はこの点についてはもうこれ以上御質問いたしませんが、更にいろいろ御質問したい点があるのでありますが、時間も参りましたから一応私はこの辺で打ち切ります。
  276. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 議事進行につきまして。本日はすでに十時四十分にもなつておりますので、これを以ちまして散会し、明日既定方針に從いまして審議を続行せられんことをお願いいたします。
  277. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) ちよつとお諮りいたします。今までの委員会の決定は、本日を以て分科会に入ることになつておりましたが、質疑はそのまま残しまして、明日から分科会を開催いたしたいと思いますが、如何でございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  278. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは……
  279. 藤田芳雄

    ○藤田芳雄君 委員長、ちよつと緊急質問があります。
  280. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) ちよつと私の言うのを聞いて下さい。それでは分科会に入ることにいたします。この際分科担当委員選定の件をお諮りいたします。これは御希望を参酌して委員長において選択することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  281. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 御異議ないものと認めます。では委員長において選定いたします。各分科の担当委員の氏名を参事をして朗読いたさせます。    〔佐藤参事朗読〕  第一分科     門田 定藏君 木下 源吾君     堀  末治君 山田 佐一君     横尾  龍君 淺井 一郎君     小畑 哲夫君 宇都宮 登君     高橋龍太郎君 西郷吉之助君     帆足  計君 木村禧八郎君     川上  嘉君 小川 友三君  第二分科     岡田 宗司君 羽生 三七君     小串 清一君 團  伊能君     城  義臣君 岩木 哲夫君     木内キヤウ君 井上なつゑ君     伊達源一郎君 佐伯卯四郎君     岩間 正男君 藤田 芳雄君  第三分科     岩崎正三郎君 和田 博雄君    池田宇右衞門君 島津 忠彦君     平野善治郎君 深川タマヱ君     赤木 正雄君 田村 文吉君     藤野 繁雄君 岩男 仁藏君  第四分科     内村 清次君 森下 政一君     石坂 豊一君 岡崎 真一君     小林 勝馬君 安達 良助君     飯田精太郎君 寺尾  博君     堀越 儀郎君委員長(山田佐一君) 次に兼務委員の件をお諮りいたします。一人で兼務の得る分科の数は、一ケ分科に限ること。各分科の兼務委員の数は、原則としてその分科担当委員数の半数以上にならないようにすること、兼務委員は議決権を認めないこと、從つて兼務委員は分科会の定足数に加えないこと、以上の三件を條件として兼務委員を認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 御異議ないものと認めます。  次に兼務委員の選定は、委員長において指名することにいたしまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  283. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 御異議ないものと認めます。それでは兼務委員を指名いたします。兼務委員の氏名を参事をして朗読いたさせます。    〔佐藤参事朗読〕 兼務委員  第二分科     小林 勝馬君 堀越 儀郎君  第三分科     岡田 宗司君 羽生 三七君
  284. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 尚分科担当委員並びに兼務委員の補欠選定に関しては、予め委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  285. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 御異議ないものと認めます。さよう決しました。  次にお諮りいたしますが、只今岡田君の動議もありましたから、分科会に入りますが、分科会はどうぞ予定の通りの御進行をお願いいたしておきます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  286. 内村清次

    ○内村清次君 只今岡田君の動議につきましては、まだ確認が取られておりませんから、その確認をして頂きまして、それから先程委員長から言われましたように分科会の日取りも、これは理事会で決定してやるということにはつきりしておりますから、どうか皆様方に……
  287. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは只今内村君の御発言がありまして、分科会の決定は二日間と理事会ではなつております。それで本委員会といたしましては三日に終了いたしたいという態度になつております。大体はこの程度で御了承願いたいと思います。すべてのことは理事会へ諮つて円満に今後の情勢に対しても善処して行きたいと思つております。(「異議なし」「散会」と呼ぶ者あり)
  288. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後十時四十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            内村 清次君            岩木 哲夫君            高橋龍太郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            岡田 宗司君            木下 源吾君            和田 博雄君            羽生 三七君            門田 定藏君            森下 政一君           池田宇右衞門君            石坂 豊一君            小串 清一君            岡崎 真一君            島津 忠彦君            城  義臣君            團  伊能君            横尾  龍君            堀  末治君            安達 良助君            淺井 一郎君            小畑 哲夫君            小林 勝馬君            木内キヤウ君            深川タマヱ君            平野善治郎君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            佐伯卯四郎君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            帆足  計君            川上  嘉君            藤田 芳雄君            小川 友三君   国務大臣    大 蔵 大 臣    通商産業大臣  池田 勇人君    国 務 大 臣 本多 市郎君    国 務 大 臣 増田甲子七君   政府委員    内閣官房副長官 菅野 義丸君    特別調達庁長官 根道 廣吉君    総理府事務官    (特別調達庁長    官官房長)   岩永 賢一君    総理府事務官    (地方自治庁財    政部財政課長) 奧野 誠亮君    行政管理政務次    官       一松 政二君    地方自治庁政務    次官      小野  哲君    地方自治庁次長 荻田  保君    大蔵事務官    (大臣官房長) 森永貞一郎君    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (主税局長)  平田敬一郎君    大蔵事務官    (主税局調査課    長)      忠  佐市君    国税庁長官   高橋  衞君    経済安定事務官    (物価庁第三部    長)      川上 為治君