○帆足計君 余り長時間に
亘つては恐縮でありますから、もう一問だけにいたしますけれども、後御
了解を得たいと思います。
只今
総理から中国との貿易につきましては
熱意を持たないわけではないという
意味の御
答弁がございまして、私は非常に嬉しく思います。併しながら現在すでに私は非常に遺憾と思
つておりまするのは、日本の鉄道や電気機関車や、それから機械類などが非常に沢山中国に出ておりまして、又中国の技術者の
方々は大部分日本の大学を卒業した
方々であります。然るに今度の中ソ協定によりまして、厖大なる物資が満洲から東ヨーロツパ並びに東ドイツにまで送られる
ようになりまして、又そこから非常に多くの技術や資材が入る
ようになりまして、その
関係はすでに明治三十七、八年の前の
ような状況に、私共がまごまごしておる間に、戻
つてしまいつつあるかのごとくであります。イギリスも又、貿易協定の準備を始めておりまするので、私は
一つ総理にお願いいたしたいのですが、もはや国際連合の中国承認というものは
時日の問題であり、そうして次の機会に是非御
答弁を願いたいのでありまするけれども、アメリカの国務省から非軍需物資に関する限り、日本と中国との直接貿易を認めてもいいという
ような意向が表明されておるということが、数日前のすべての
新聞に大々的に報道されました。この真偽、いやこの真相につきまして、適当な機会に
予算委員会で私は
政府当局の御報告を伺いたい。現在の情勢からしまするならば、恐らく国際連合がイギリスに次いで中国を承認するでありまし
よう。従いまして日本といたしましては、一日も早く新らしい中国から
責任のある実業家並びに経済当局者の方に視察団でも使節団でも送
つて貰いまして、又こちらからも実業家達が使節団として向うへ派遣されて、そうしてお互いに今苦しいときでありまするから、有無相通ずるための、即ち思想やイデオロギーから離れまして、
本当に有無相通ずるための貿易について、
話合うということを
関係方面から許して頂きたいということを、それがつきません限り非常に困難な実情でございます。それをお願いいたします。
最後に、最近の窮迫いたしました日本経済の打開策につきましては、各
委員から相当御論議がございました。従いまして私は同じことを繰返そうとは思いません。従いましてただ
結論といたしまして、私は日頃痛感いたしておりますることは、歴代の
総理大臣が、経済の問題に対して御理解が少いということが、これが日本の宿命的な事実でございます。戰争中におきましても、曾て近衞公は聰明無比なる頭脳をして、尚且つ経済の問題に対しては全くの無智であ
つた。又東條さんはそれに劣らないものでありました。然るが故に二百五十万トンの鉄で一億トンの鉄と戰争し
ようというこの早発性癡果症というものは驚くべきものであると私は
考えております。ところが戰後におきましても、不幸にして東久邇宮様を初め、芦田
総理、片山
総理、そうして現
総理も、私は経済の問題に対しましては余り御知識が十分でないのではなかろうかと拜察いたしております。従いまして、今、今日経済の問題の分らん人が政治をやるということは、私はこれは非常に一大欠陷だ。
従つてこの欠陷を補いまするために、即ちその欠陷を自覚するということが
一つの私は治療法の
一つではないか。今日この経済の窮状を打開したいという願いは、一自由党、又一
政府の問題ではなくして、
国民の切なる願いでございます。
国民は今正に乞食の
ような生活をし、望みなき生活に喘いでおるわけでありまするから、この悪い條件の中で、もう少しよく経済の、増産の行く
ように組立てる
方法がないものであろうか。私はそれにつきまして、もう少し優れた経済專門家や、実業家の中で、総合的な観点のある人達を
総理の廻りにブレーン・トラストなり、経済
審議会なり適正な形でお集めにな
つて、一週間に一度ぐらいはそういうお話も聞かれて、もう少し実情に即した政治をや
つて頂きたいと思います。この
ような立入
つたお話を何故申すかと申しますと、実は私共本
会議におきましても、
予算委員会におきましても、或いは通産大臣に御
質問をし、通産大臣は練達の稲垣さんがおやめになりました後、この
ような状況であります。故に又大蔵大臣に御
質問しましても、大蔵大臣は税金を取立てることと
財政のことには、少しばかり御堪能でございまするけれども、日本産業の立体的なこの状況、その構造的崩懷の状況については、余り詳しく知識を持
つておられない。又農林大臣にいたしましても、若干その
ようなきらいがあ
つて、農業技術者の方に御
質問する
ような感がある。又青木安本長官にお尋ねいたしましても、まあ大学の大先輩にお話を申上げている
ような感があ
つて、今日の日本の現実の復興というこのきびしい仕事をされる
ような
態勢は私はできていないと思います。果して
内閣では今日の日本の構造的瓦解の状況を的確に把握されておるでありまし
ようか。私は曾て社会党の
内閣のときに若い優秀なブレーンで作りましたあの五ケ年計画に対しまして、
総理が一言の下にあれを退けられたことは、或る
意味においてはこれは卓見であると思
つております。私もあれですらいわゆる官僚的作文であ
つて、
総理のいつも言われる
ように現実の條件に合
つていない。
総理の直感力で言われたと思いますけれども、その点には
賛成でありますけれども、
総理は、あれは
新聞の間違いでありましたでし
ようけれども、余り自給力が強過ぎる、即ちアウタルキーになり過ぎておるというて、あれを
新聞で批評された
ようでありますけれども、実際はそうではない。実際はあれは余りにも貿易要因に依存し過ぎておる。あれでは全き計画の立て
ようがない。実際に貿易の方が拡大評価されておる案として欠陷があることを、私は專門家では批評しておるのではないかと思います。
従いまして
結論といたしまして、現在の不景気はどこから来ておるかと申しますと、二つ根因があるのでございます。第一は日本が朝鮮、台湾、満洲等をなくし、食糧が三割慢性不足となり、重要なる資源資材を失い、輸出市場を失いまして、そうして国内は三割以上も燒けのが原になりまして、人口は二千万以上殖えております。そうして更に年に三百万以上幼き子達が生れておる。これがこの矛盾を来したところの構造的現実であ
つて、單なる一時的不景気というものではございません。この穴を埋めますために、アメリカは占領軍といたしまして、年に千五百億円の輸血を私達にして呉れております。一戸当り一万円にも近いものをただで貰
つておる
ような状況であります。これが今後二、三年内に来なくなるとしたならば、来なくなる分だけを国内で先ず自給するか、然らずんば貿易によ
つて稼ぎ取るか、この二つの途しかないのであります。然りとするならば、これ程大きな困難でありまするから、そのどことどこに一番大きな火傷があり、どこに一番大きな切傷があるかということをよく調べて、大体の目標だけは一応つけて、目標
通り物事は行くわけでありませんけれども、大体の目標だけを作りまして、第一は先ず半分の重点は、外に失うものを内に耕し、従いまして食糧問題、電源の開発、産業の合理化に私は重点的な
努力を注がなければならないときである。千五百億の資金は援助物資としては食糧及び原材料として與えられておりますけれども、通貨事実としては
国民経済の中から千五百億の通貨を吸收しております。従いましてこの吸收したところの通貨を最も上手にこの敗戰の体の中に環元しなければ、行き過ぎのデフレになることは明らかでありますのに、それがただ債務償環に使われ、そうして商業資金として撤布せられておるというところに禍根の
一つがあるのでございます。併しながら祖国の再建のために能率ということを
考え、或る程度の自由経済によるところのきびしい試練ということを
考えることも勿論必要であります。それを相当重要視したことが過去二年に
亘つて自由党が人気を博したゆえんであり、その使命を果したゆえんであると思いますけれども、同時にそればかりでは不十分であります。政策の重点を食糧の増産とか、電源の開発とか、鉄道の電化とか又は勤労者住宅の復旧とか、新たに建
つている住宅とどんどん火事やその他で消えておる住宅のバランスがどうな
つておるかということもよくお調べになりまして、そうして二、三年後に少しでも自給力が増す
ように、援助物資がなくな
つても立
つて行ける
ような
態勢を促進する
ように、経済政策が行われなければならん。
残つた半分の力は、海運と貿易の問題です。この問題は、戰前の二割九分に今な
つている月四千万ドルぐらいしかないところの今の貿易をどう打開するかという問題、このためには輸出の振興、海運の振興、並びに日本の輸出工業の大部分は中小工業でありますから、中小工業の振興についてどの
ように指導したらいいか。自由経済ということは何もかも自由にするということではございません。人の創意と能率と、その自由に対する欲求を尊重して、それが
本当に発揮される
ような條件を作るということを更に
考えねばならんと思います。
そこで
結論として私はお尋ねいたしたいことは、この千五百億の見返資金を商業資金にただ流さずに、長期資金に使われ得る
ような條件を作
つて頂きたい。少くともその三分の一の五百億は、食糧の増産と治水治山に振向けねばならん。
残つた三分の一は、電源の開発と住宅、勤労者の住宅……待合とか女郎屋とかネオンサインに今使われておりますけれども、そういうものでなくて、勤労者の住宅の復旧と合理化資金に使われねばならん。
残つた三分の一は、海運の復興と貿易振興並びに中小工業の振興と能率化のために上手に使い得る
ような性格の資金にこれを焼直さねばならん。そうして現在七百億近くの公債償還に充てられておる
財政部分はよろしく
所得税の減税にすべし。それによ
つて民力を涵養せねばならん。この
ようなことをせねばならんのに何
一つされていない。私は占領軍の政策がこの四ケ年間相当成功して来たのに、今日失敗させては全く申訳ないと思うのであります。
政府の輔弼……輔弼と申しますか、補助的な占領軍に対する協力が、私はそれでは十分であるとは言えない。よい部長や重役はただ社長に対してぺこぺこしておるのでなくして、いい事があればやはり直言せねばならん。占領軍を失敗させてはならんという観点から
考えましても、この点もはや
考えるべきところに来ておる。そこで
総理は現在の経済状況を過渡のデフレとお
考えにな
つておられないのであるか。これが第一のお尋ねしたい点であります。
第二には、先年の
予算は確かに成功しました。そうしてそれは苦い盃でありましたけれども、千五百億の債務を償還し、あれ程恐しか
つたところの悪性インフレをも防ぎ得ました。これは確かに私は司令部の
措置よろしきを得、
内閣の協力よろしきを得た賜物でありますけれども、今日ではそれが明らかに行過ぎておる。行過ぎの結果、更に逆の効果を来そうとし、そのために失業者が殖え、企業は倒産し、産業の復興が進まないならば、国際收支の一環から再び日本の経済は破れて、再び悪性インフレに転換するわけでありますから、
財政の均衡よりももつと大事なものは
国民経済それ自体の均衡であるということを、
政府は忘れておられる。
財政の均衡はインフレ防止の第一の環であります。第二の環は、
国民経済自身がその人口と産業構成とが均衡することであります。第三の環は、国際收支が均衡することであります。この三つの均衡がバランスを得て初めて国の再建ができ得るのに、大蔵大臣は
財政の均衡だけしか御存じない。この
ような状況に対して、もはや先年の
財政で相当の成功をしインフレ防止の第一の手を打
つたわけでありますから、今日はこれを修正する必要がある。その修正をなされる意思が
総理におありかどうか。これが第二のお尋ねであります。
第三のお尋ねは、その修正をしましてこの敗戰の祖国を復興に導いて参りますためには、細かな統制経済ではありませんけれども、若干の目標計画というものが必要である。産業界というものは小さなおでん屋さんとか鰻屋さんではありません。
一つの企業を作るに十億円なり五億円なりに資金が要るわけでありますから、将来の見通しを持たなければならん。その見通しを持
つための産業の目標計画くらいは絶対に必要である。そういう目標計画をすら
政府は何らお立てにな
つておらない。産業界に明示されておらないけれども、その目標計画等というものは、不必要であるとお
考えにな
つておられるのであるか、この三つの点をお尋ねいたしたいと思います。