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1950-02-15 第7回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会   ————————————— 昭和二十五年二月十五日(水曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十五年度一般会計予算内閣  送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  送付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算  (内閣送付)   —————————————
  2. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは只今から昭和二十五年度予算についての公聽会を開会いたします。まず公述人の方々に対して御挨拶を申上げます。本日は公私とも誠に御多忙の中を本公聽会ために御出席下さいましてこの段厚く御礼申上げます。尚公述を願いまするに先立ちまして念のために申上げて置きまするが、時間の都合上御一人の公述は三十分以内に又委員の質疑は十分以内に成るべく終了するようにお願い申上げます。では農業調整委員会全国協議会長黒田新一郎君の御公述をお願いたします。
  3. 黒田新一郎

    公述人黒田新一郎君) 私農業調整委員会全国協議会の黒田でございます。本日公述人として本年度予算に対する意見を述べるようにというお話がございましてお伺いいたしたわけでありますが、私が立場上主として農業関係に関する観点から意見を申上げてみたいと考えるわけであります。  政府は二十五年度予算を安定より復興への予算であると称しておるのでありますが、我々農業関係の者からそれを考えます場合には決して復興というふうなことは考えられない、むしろ農民犠牲が一層強化されまして、経済再建等は到底覚束かないというふうに考えられるのであります。即ち低米価政策の強行は低賃金と結び付きまして、本年度予算編成の主軸をなしておるのでありますが、更に政府が申しております減税は、農家経済破綻を導く動因となります肥料の値上による価格調整費削減によつて行われておるのでありまして、この点は農家経済の上から非常に重大な問題であるのであります。このように非常な苦境に立つております農民の前に、更に横たわつておりますのは税金による強制資本蓄積政策でありまして、これはそのまま資本のみの育成強化に相成りまして、鉱工業と農業とのシエーレは生産力の問題と相俟つて今後急速に拡大される可能性があるのであります。こうした状態を想像いたしますると、農業経済というものが孤立的に相成りまして、ますます困難な状態に追込まれるということが想像されるのであります。こうした状態が如実に現われまして農民は今や配給肥料の購入さえもその資金に苦しむ、又供出税金に追われましていろいろな経営困難の状態が悲劇となつて現われておることはいろいろ事例を申上げる時間もございませんが、如実に現われておるのでありまして、こうした実情は決してその復興の前提をなす経済安定ができたのではなく、その安定政策の行き過ぎが安定恐慌を喚び起こしているというふうにさえ農村の場合では考えられるのであります。この安定恐慌を完全な安定に引戻す基本的な方針がまず建てられるべきだと考えるのでありますが、にも拘わらず本年度予算の動向を見ますと、これらの現実を無視した強硬な均衡予算という名前によりまして、農村デフレ的傾向を一層強化するという方向に参つているのであります。  予算の編成の方針に現われますそれらの主要な点をここに拾つて見ますると、まず本年度有効需要の減退、これは昭和二十五年度には一層深化すると思うのでありますが、その原因をなしますものは、まず第一に債務償還の問題であろうと思います。これは前年度と比べまして予算面では二百九十五億ばかりの減になつておりますが、実質的には昨年の復金債償還から本年は長期公債償還に変つております事実を考えますると、その影響は一層デフレ的な深刻の方向を強化するというふうに考えられるのであります。又賃金ベース並びに米価の据置の方針は本年度予算の骨格をなしているのでありますが、これは明らかに今後直接に国民生活を圧迫いたしまして、昨年の下半期以降に見られました有効需要の減退、滯貨の蓄積増嵩、こうした傾向を一層強くするであろうことは想像するに難くないと思うのであります。又貿易関係に見ましても、その見通しは政府計画しておりますような必ずしも楽観できるものではないと思うのでありまして、現在の海外市場における諸般の情勢等を考えます場合に、これが非常に無理な貿易計画であることが看取できるのであります。次に政府価格調整費削減によりまして、それがそのまま全国民負担軽減である、減税であると言うておりますけれども、これは農村側立場に立つて考えますると、肥料補給金撤廃等による部分が大部分でありまして、その影響は今後肥料値上りとなつて殆んど大部分農民負担に転嫁されるという事実を見逃すわけには参らんのであります。この復興予算農業に與える影響考慮いたしてみますると、いわゆるドツジ構想の低賃金、低米価並びに課税等は本年度財政規模縮小に応じまして、即ち自由意思による資本蓄積有効需要の喚起を考慮いたしまして、かなり減税した形にはなつております。消費インフレを抑制するため減税は段階的に行わるべきであるという基本的な態度が貫かれておりまして、従つて強制貯蓄を国家の手で、或いは公共事業費価格調整費終戰処理費国債費等々を通じて企業にこれは流れましてそれによつて資本蓄積を図ろうとしているのであります。これはこの形を言い換えれば、農民の営々として働いた資金というものは税金の形で大部分吸上げられる、それが国家の手によつて企業に廻されるというふうな形でありまして、そうした措置をとられる反面に農家経営というものが少しも考慮されておらない。即ち米価は本年度産米に二十四年度に比べまして僅かに五%の値上を見込みまして、パリティ一六八、四千五百六十円という方針がすでに決められており、又超過供出価格は二倍に引下げられ、甘藷、馬鈴薯は全然放任されるというふうな政府施策は、少しもこの農村経済実態を正しく取上げられておらんのであります。次に減税農業に及ぼす影響でありますが、減税財源縮小の主な原因は歳出面における価格差補給金大巾削減でありまして、先程も申上げましたように、これから来る肥料価格値上りは実に八月に至つて七割の値上げになるのでありまして、現在でさえ肥料資金問題等農家では非常に資金手当に困難をいたしているのでありますが、そうしたような場合に再生産を阻むであろうことは説明を申上げるまでもない問題でありまして、農家経済には重大な破綻を来たす要因になろうと考えるのであります。  そこで次に、本年度予算性格を分析をいたして見たのでありますが、私共は基本的に今後の農業政策の在の方というものを明確にいたして具体的な予算の場合にもそれが正しく織り込まれることを希望をいたすのでありますが、先ず私共は現在の政府の採つておりまする農業政策に対して、非常に不滿足な感じを持つているのであります。殊に昨年下半期におきます農業政策事ごと農家経営を混乱をせしめ、この重大な転換期に処しまして農業経営方向というものを少しも明示しない、非常な迷惑をかけた政府農業政策であつたと考えるのであります。即ちいも類統制撤廃の問題にいたしましても、或いはその当時政府の一部において考えられました米券制度の問題、或いは補正の問題にしましても、その後に起りました超過供出法制化のポ勅の問題にしましても、悉く現在の農村実情に副わない無理な考え方であつたのでありまして、それらは現在も未解決に相成つておる問題が多いのでありまして、速かに政府において一貫した農業政策を樹立して貰わなければ困ると考えるのであります。今後の農業政策の根幹を成します現在とられつつあります政府考え方は、これは農業政策ではなくして食糧政策であります。食糧の需給ということをのみ考慮いたしまして、農業経営というものを犠牲に供しておるという政策でありまして、この点を根本的に改めて貰わなければならんと思うのであります。即ち日本農業の置かれております特殊性というものを明確に理解いたし、その上に立ちまして日本経済再建農業の持つ役割というものを正しく表面に出しまして、適当な保護政策が当然行われなければならないと考えるのであります。私共が農業保護政策を要求いたしますゆえんのものは、單に重農主義的な点からばかり考えるのではなく、日本農業実情が国全体の責任において農村政策を考えるべき必然性を持つておるという点であるのであります。即ち戰後におきます日本農業の一番苦悩の重点は、何としても耕作面積の少くなつた点であります。言葉を換えて言えば農村人口の過剩であります。統計的に題ましても戰前から戰時中を通じまして、大体農村就労人員は一千四百万でありますが、それが戰後におきまして外地引揚者その他一般企業合理化政府行政整理というようなものが重なりまして、現在では約二千万と称せらるる就労人員であります。従つて耕作面積は従来一戸当り一町歩平均程度でありましたものが、現在は七反五畝に落ちておる。この経営規模縮小は如何に農村科学化高度化を考えましても、この宿命的な土地の狭小ということは何としても打開できません。言い換えれば敗戰の国家的な苦悩である人口問題の整理を農村が一手に引受けておるという形であります。而もこの日本農業食糧自給度を高める必要から主食重点経営を余儀なくされておりまして、それがために適地適作という農業経営の基本的な合理化の要素を犠牲に供しております。それがために生産される農産物価格等は非常な高いコストになつておりまして、そうした実情と考え合せまして、諸外国の最も合理的な経営をする農産物と今後裸で大刀打ちさせられるということは、到底これは日本農業の耐え得るところではないのであります。そうしたような点を考えますると、たとえ今後食糧需給状態は国際的に緩和されたといいましても、日本農業の特殊な事情を考えます場合に、これを保護育成する適当な施策は必要でありまして、特にその点を私共は強調をいたしたいと考えるのであります。  でそれらの今後の基本的な農業政策の内容として考えられますものを、二三ここに申上げてみたいと思うのでありますが、先ず現在の供出制度でありますけれども、これは今まで農村が最も犠牲を強いられ農業経営自主性を失わしめられまして苦しんで参つたのはこの供出制度であります。これは世界的な食糧情勢の緩和と並行いたしまして当然所要な修正をせらるべきものでありまして、私共は現在のごとき食確法或い食管法食糧緊急措置令のごとき食糧法規はすべてこれは過去のものだと考えております。食確法の期限も二十六年三月を以て終了いたすのでありますが、その期限を待たずに一刻も早く新たな日本農業に即応する基本立法を作りまして、これらの三つの法律は速かに廃止をするという方向へ進んで貰いたいと考えるのであります。で今後のこの基本法性格は、現在のごとく政府食糧を自給しよう、自給面の要求からのみ、一方的な立場から農御に強制するというふうな性格を拭い去りまして、勿論国の食糧自給計画という計画性も一部分としては取上げることは勿論でありますが、それより農業経営を主体とした、それに国の食糧自給計画をマッチさした考え方、こうした考え方による食糧供出制度というものが確立されなければならないと思います。又価格の点におきましてもその基本的な農業政策基本法の中にこれも当然明示すべきでありまして、世界食糧価格とそのまま自由な大刀打をするということが、先程申上げたような許されない実情にあります以上、所要の保護政策が、当然この今後の農業政策基本立法の中に織込まれなければならないと考えるのであります。  この農産物価格の問題についてちよつとこの保護政策の必要のゆえんを申上げてみたいと思うのでありますが、アメリカはあれだけ強力な経営力農家は持つておるのでありますが、それと対比して見まする農合に日本農業が如何に弱さを持つておるか、苦しい経営を続けておるかということが分るのでありますが、そのアメリカ農産物価格と他の工業品との価格の比較が、非常にその間の事情を雄弁に物語る資料として私の手許にあるのでありますが、アメリカのこれは農産物価格農業生産品農家生産資材価格の比率を対比した数字でありますが、アメリカ価格を一〇〇といたしましてそれに対する日本価格指数でありますが、硫安の場合一一一三・五であります、闇価格は五三七、これは昨年の三月の統計であります、過燐酸の場合は公定価格一八三、闇価格一、五六八という指数であります。それに比べますと農産物アメリカの小麦一〇〇に対して日本小麦価格は三七・四%であります、小麦粉は向うの一〇〇に対して八七・二、馬鈴薯はややこちらが高いのでありまして九一・五という比率であります。即ち農家生産資材工業生産品でありますが、これは公定価格においてさえ過燐酸のごときは二倍近い、闇価格は十五倍というふうな指数が出ておりますが、それに比べて農産物の方はアメリカに比べて小麦のごときは三七・四%というふうに、こちらは生産者価格は安い価格であります。こういうふうな数字から考えましても、日本農業輸出貿易重点主義を採りまして、その方策として低賃金、低米価が強行されるという結果、このシェーレは特に類例のない強い度合を持つておりまして、そうしたことが今後の日本農業方向を考えます場合に、実情を正しく織込んだ保護政策が取られざる限り、農業経営破綻を来たすということが立証できるのであります。  次に農産物価格の問題でありますが、米価は昨年米価審議会は四千七百円という価格を一応出しましたけれども、政府は結局四千二百五十円という安い価格決定をいたしたのであります。四千七百円という米価審議会決定米価も、決して生産者側としては満足できるものではなくして、当時生産者の要求いたしました再生産を可能ならしめる米価即ち五千七百円を主張いたしたのでありますが、何としてもそうした要求が通らずに四千二百五十円という低米価決定をせられたのであります。併しその理由の一つ生産費を償う米価という考え方は分るが生産費を正しく把握する統計数字がないというふうなことが農林省側一つ考え方でありまして、結局非常に生産費を割つた米価決定をされたのでありますが、これらの点は今後の非常に重要な問題でありましてパリテイ計算そのものに多くの矛盾をはらんでおりまして、生産費を基調とする米価というものが理論的に正しい以上、あくまでそれを実現することのいろいろな障害を除き資料を整えまして、本年度生産者の希望するような方式による米価決定をどうしても貫いて頂かなければならない、かように考えるわけであります。  次に輸入食糧補給金農業生産関係でありますが、本年も四百六十五億の補給金を計上いたしておりますが、私共は実にこの点に対して不満を持つのでありまして、一方国内ではいも類主要食糧としての取扱等を根本的に軽視しまして全面的な統制撤廃というふうなことを考え、漸く最近に至りまして四億万貫の買上計画いたしたように了承をいたしておりますけれども、とにかくいも類等に対する考え方を非常に軽んじておる一方、この厖大な輸入補給金国民負担において支出をするということは、実に一貫性を欠く考え方でありまして、大幅に輸入補給金削減を行い、現に国内にあります食糧を全面的に表面的に出すという施策を行われ、またその削減できました補給金土地改良その他の増産施設に振向けるならば相当の効果は挙げ得るのでありまして、国の財政状態に何らの影響を與えずに国内自給度を高める積極的な施策が行われ、それによつて農業経営も非常に惠まれて来るのでありまして、この点に対しては本年度予算の中の最も私共は重大な関心事として眺めて考えておるわけであります。  次に肥料補給金の問題でありますが、先程も申上げましたように八月に至りますと七割の値上げになりましてその金額は概算二百三十七億に相成るのであります。これは何としても現在の農家経営実態から考えまして、この肥料値上りによる負担というのは農家経営に対する非常な重圧でありまして、到底これはこのままでは堪え得ないというふうに考えるのであります。成る程そのうちの一部分は本年度米価決定等の場合に農作物価格に吸收される可能性はありますが、農家自家消費農産物或いは公定価格制のない農産物、そうしたものに対する肥料値上りは全部農家負担となるのでありまして、現在の経営実態から考えまして非常に重大な問題であります。最近農村関係のいろいろの会合等あります場合に問題がこの一点に集中されておるところを見ましても、肥料値上りのこの補給金撤廃善後措置というものは、何らかの形で実質的に農家負担にならざるような方途を御考慮願わなければ、到底このままでは済まされん問題だと考えるのあります。  次に公共事業費土地改良関係でありますが、本年は公共事業費を相当大幅に増額はいたしておるようであります。即ち昨年の六百六億に比べまして本年の九百七十億というものは相当の増額でありますが、併し先ずこれを分析いたして見ますると本当に農産物生産に直結をする経費というものは総体的には非常に少くなつております。これを累年統計に見ますると、土地改良開拓事業即ちこの直接の食糧増産に向けられる経費というものの公共事業費の中に持つパーセントでありますが、昭和二十一年には三八・六六%、二十二年には三五・一二、二十三年には二三・六一、二十四年には一九・八、二十五年には一六・三というふうに累年この土地改良事業に振向けられる公共事業費というものが逓減をいたしております。このことは非常に私共重大な問題だと思うのでありまして、先程申上げましたような日本農業実態から考え低米価日本経済再建の基盤として犠牲を負うております。実情においては、農家個々蓄積において増産すべき土地改良というものを行う余力は全然ないのであります。そうした国家的な食糧増産のための施策は、これは全面的に国において行うことが正しいのでありまして、今後の日本不利益農業経営は一刻も早く国際農業と太刀打のできる状態に引上げる方法としても、土地改良事業等は最も重点をおいて予算の中に考慮して貰わなければならんと考えるのでありますが、それが累年こうしたパーセンテージが低下して参るというふうなことは、いかにもこの間の実態を理解しない予算編成の仕方であるというふうに批判をしないわけには参らんのであります。  次にこの本年の最も重要な部分として取上げられております減税政策農業政策関係でありますが、政府では減税によつて農業経営の円滑を図り、そこに資本蓄積を行わしめて自力において農業政策の打開をいたさせようというようなことを言つておりますけれども、成るほどこれは直接国税においては相当の減税になりますが地方税においては非常な増額であります。全体を通じて見まする場合に政府の称するごとく決して減税にならんという点であります。これも簡單に数字を申上げて見ますると、私共の計算によりますると二十四年と二十五年を比較いたしまして、農業所得税において二十四年は四百二十億でありましたのが、本年は二百億に相成つております。固定資産税は昨年五十五億でありましたものが本年は二百億に殖えるのであります。住民税は昨年五十億でありましたものが本年は大体私共の計算では百億になるのであります。事業税は一応なくなつて特殊のものだけになりますので、昨年五十億でありましたものが本年は十億に減りますが、これを全部加えて見ますると昨年の合計が五百七十五億、本年は五百十億でありまして、僅かの減税にしかならんのであります。数十億の減税にしからんのでありますが、それに比べて肥料補給金撤廃による、肥料値上り農民負担が二百三十七億というふうなものと思い合せますときに、決して減税がそれ程農業政策の打開の唯一の方途であるという宣伝は当らないのでありまして、これらの点については、何らかの考慮が拂わなければならないと思うのであります。  その他農業関係助長政策でありますが、私共農業協同組合にも関係をいたしておりますが、農業協同組合日本農業がこうした不利益零細経営であることを協同の力によつて何とか打開するという一つの狙いを以て立法化されておるのでありますが、それだけこれに対する維持育成という方途が具体的に行われて、この悪條件の中にある農業経営が多少でも世界農業と接触して行く條件を備えるというためにも、勇敢にそういう施策が採らるべきだと思うのでありまして、その点食糧公団及び肥料公団廃止等の問題が間近に迫つておりますが、それらの場合に農業協同組合の使命を達成し、農業保護政策の一環として取上げられるような施策を特に考慮を思いたいと考えるわけであります。  その外予算の具体的な数字の問題になりますと、私共関係します農業調整委員会経費或いは農地委員会経費等が昨年に比べて大幅な削減をされておるのでありまして、これらの点はますますこの日本農業計画の樹立或いはそれとの連関における農地問題の解決等は、基本的な問題として今後活発な活動を促す必要があるのでありますが、本年度予算に現われるような減額が行われておるということは、これらに対する感度が非常に私は喰違つていると考えるのでありまして、特に御考慮を願いたい点だと考えるわけであります。  最後にいも類統制撤廃の問題でありますが、これは私共は昨年来非常に重大な問題として関心を拂つて参つているのでありますが、本年度輸入食糧計画が相当引上げられておるというふうな点や、全面的な世界食糧情勢の中にあつていも類の主食から外されるという考え方が持たれたのでありますけれども、これは日本食糧自給度を高めるという点から考えましても、農家経営の点から考えましてもさようにかるがるしく扱える問題ではないと思うのであります。何としても日本経済再建を図るためには、輸入食糧支拂代金を少くして国内自給度を高めるということが必要でありまするし、又最返におきまする私が関知します国際情勢等を考えます場合に、いずれの国が、いずれの場合でも日本食糧事情を保障して呉れるという国が一体あるのか、こうした点を考えますると、できるだけ食糧自給度を高めて行くということが望ましいことであつて、本日までいも類の増産をするということに要した努力、犠牲、こういうふうなものを考えます場合に、ここでいもの減産を来すということが将来どういうふうな事態、影響を起すかということを考えますると、実に私共は憂慮に堪えないことだと考えるのであります。我々は政府に対して、いも類の問題については従来のように不適地まで強制して作付をさせということは勿論これを避けるべきことでありますが、農家が自己の経営合理化を考え、その上にこの程度作付はしたい、この程度買上げを希望するという数量に対しては、従来作付を強制した責任からもその程度の処理をすることは必要であろうと考えるのであります。一応政府は今四億万貫の買上計画をしているのでありますが、府県知事の希望する買上数量は六億万貫に現在なつているのであります。これは昨年の計画等に比べますとまだ五割程度は少くなつているのであります。そうした数量はとにかく政府買上げる責任を持つべきだと考えるのでありますが、それらの予算的な措置が少しも織込まれておらないということは、非常に私共は不安心でありまして、これらの点は国会方面において農民の安心のできるような方針を速かに立てしめるように御努力を頂きたいと考えるわけであります。尚いも類買上の問題については、新たな農業保護政策立法ができない以前は食確法によつて買上げるべきだという主張を、中央農業調整審議会等でも決議しておりますが、それらの点はいずれ時を改めまして農民団体として議会の方へも陳情申上げたいと考えておりますが、時間の長くなりますので詳しい私共の意見は省略をさせて頂くことにいたしたいと思います。  以上一応私共の考えておりますことを申上げまして、予算審議の上の御参考にして頂けるならば幸いだと考える次第でございます。誠に有難うございました。
  4. 小林勝馬

    ○小林勝馬君 ちよつとお尋ねしたいのですが、さつきアメリカの方の指数を一〇〇として例えば硫安は日本一一三、小麦アメリカを一〇〇として日本を三七・四、これの価格なつた基礎ですね、どういう計算になつているか、私共考えますにはアメリカ小麦一〇〇に対して肥料が一一三なら一一三というふうな、同じ価格で同じふうに出るなら簡單ですけれども、アメリカ価格日本価格との差はどういうふうにあれを出されているか……
  5. 黒田新一郎

    公述人黒田新一郎君) これはアメリカ小麦生産者価格日本生産者価格との比率を、つまりアメリカ一〇〇に対して日本が三七・四こういい出し方であります。アメリカ日本の……
  6. 小林勝馬

    ○小林勝馬君 貨幣価格はどういう計算になるのですか。
  7. 黒田新一郎

    公述人黒田新一郎君) 貨幣価格は三百六十円の換算で出したものです。
  8. 小林勝馬

    ○小林勝馬君 分りました。
  9. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちよつと先程の御説明の点で分りにくい点があつたのですが、それは食糧関係価格補給金を速かに撤廃すると言われたように考えるのですが、その場合現在でも消費者価格が一〇%内外ですが、非常に大巾値上りになる場合、値上りになることはなるのですが、これをどういうふうにお考えになるかということ。それから即時補給金撤廃という意味が、或いは先程お話があつたように日本食糧自給度を高めて、少くも四百数十億円の見返資金というようなものを節約するような方向に漸次向けて行くべきであるというように解釈したらよろしいのか、その辺はどうですか。
  10. 黒田新一郎

    公述人黒田新一郎君) こういうような言い方はどうかと思いますが、実際国内には表面に出ない食糧が可なりある。それからしていも類のごときは相当買上を希望していますけれども政府はその一部分しか買上げないというふうな問題があるのですが、これは例えば超過供出の特別価格を三倍を二倍に落した、恐らくこれを輸入補給金の一部を割いて、これを三倍まで行かなくても二倍半に引上げるという措置が行われるならば、可なり国内食糧というものは表面に出て来るのですね。これは消極的な考え方なのですがそれだとか、いも類等においても今年の場分では買上しないということになると非常に減産になるだろうと思うのでございますけれども、政府買上げるという措置さえ取れば、やはり他に転換する方法はなかなか有利な作物はないのでいもを作ると思うのですが、そうした場合の価格の点も、現在政府ではいも買上げを基準年度の対米価比率によろうというふうに考えているのですが、そういうものでは非常に安い、現在の対米価比率は六〇%くらいになるだろうと思うのですが、そんなことをせずに現在のいも価格買上げるというようなことをすればいも生産というものは落ちない。それが今政府者考えている政策では、いもは非常な減産をすると思うのです。そういうわけで補給金国内食糧増産の又生産された食糧をできるだけ計画の上に乘せるという経費に使えば輸入食糧をそけだけ削減できると思うのです。それは当面の問題でありまするし、それからしてまあ土地改良事業等に使いということは直ぐ樣今年の食糧増産になつては出て来ない問題でありまして、これは若干の時間を要する問題であると思うのですが、それらもまあ併せて考えて、いつもいつも外国食糧に依存するという考え方から、もう少し国内食糧自給度を高めるという方向にむしろ持つてつて欲しいという考え方なのです。
  11. 羽生三七

    ○羽生三七君 補給金そのものを全面的に撤廃をするということではなく、むしろ使途の点を有効に農業生産の上に役立つような方向に使うということが主眼になつておるのですね。
  12. 黒田新一郎

    公述人黒田新一郎君) そういうことです。
  13. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 日本いも類を含めた食糧自給度を考えて、二十五年度において伝えられる三百四十万トン輸入でする、これは大豆を拔きにしてと言われておりますが、それはどの程度に過剩であるのか、その程度をお伺いしたいのですが……
  14. 黒田新一郎

    公述人黒田新一郎君) これは私共の考え方が正しい見通しかどうかは問題でありますが、大体従来のところで米は六千三百万石程度生産を挙げておられるというふうなここ二三年の実情から考えますと、二百万トン程度の輸入で大体賄つておるわけなんですね。二百万トンを前後しておりますが、それが大豆拔きで三百四十万トン、玄米換算では三千四百万石でありますが、その程度の輸入ということになると一両年の経過から考えますと百万トン以上多くなるのですね。この百万トンというのは、日本の今国内食糧に当嵌めて考えますと、甘藷を昨年は十四億九千万貫事前割当をしましたが、丁度その甘藷全体の量に匹敵するのですね。だから甘藷を一つも作らなくてもいいという計算ですね。二合八勺という計画もそれに連関して考えられるのでしようが、そうしましてもそれだれの数量というものは非常に国内食糧を圧迫するという考え方になるのです。成る程消費者方面ではいも類なんかは非常に好まないだろうと思うのですけれども、これは今まで政府が質より量という指導を強くしまして、可なり品質の悪いものも生産をさしたりしている関係もありますが、これは品質改良やいろいろの工夫をすれば今まで使つたくらいの数量は消費者のそんなに迷惑せずに使えるのじやないか。それからいも以外の食糧も従来は可なり質の悪い主食が配給されましたが、本年は九十万トン近い米を南方から入れることになつておりますから、質をよくすればそれと抱き合せにすればいももそれ程消費者は使うに苦痛じやないと考えるのでありますが、そうした点から考えますと、私共はいもなんかの利用方法をもう少し真劍に考えて、輸入食糧の依存度を低めるという方向に行くことの方が、日本経済再建ために望ましいのじやないかというふうに思うのですが……
  15. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 都会に住んでおります者の家事経済から今後の生活安定という上から考えますと、まだやはり闇の食糧を買つておりますのが事実でございますので、私共はむしろ外国から輸入いたします米の価格補給金が一般の税金を過重にするという意味があるならば、むしろ都会におります者に配給いたす輸入食糧の値段は少し高くなつてもいいけれども、尚且配給の方の主食を殖やして貰う方が、そうして闇のものを買わないで配給だけで暮して行く方が却つて家事経済ためによいという考えを持つておりまして、丁度アメリカから補給金アメリカの綿を輸入して、そうして日本で木綿に織つて東南アジアに売つて、バーターで米を輸入することになつておりますがこの輸入米の分量を殖やして頂きたいとさえ思つていましたが、あなたさまのお話によりまして農家経済立場から考えましても、やはり戰爭中のことや又外国からの輸入食糧の軽減により貿易勘定をよくするということを考えましても、成るべく自給自足して置いた方がいいと思いますが、ただ今回さつまいもの統制を撤廃するについては政府としてもお考えがあつてしておるのであつて政府がなぜさつまいもの統制を撤廃したかというその理由をよくお考え下さいまして、その政府が指摘している理由を緩和さして、成るたけ農村経済をうまくやつて行くような具体的な方法を專門の立場から教えて頂きたい。例えばこの頃出来秋にはさつまいもの配給というものが非常に沢山一遍に来る、とても家庭では消化し切れませんので、あれを農村で蓄えて置いて徐々に出して一年中何とか上手にこなす方法があると思いますが、その方法で行けば甘藷の統制も悪くないと考えますが……
  16. 黒田新一郎

    公述人黒田新一郎君) 御尤もな御意見だと思います。私共は何も農村側の身勝手な考え方ばかり考えるつもりはないのでありまして、消費者の方々の立場も十分考慮して納得の行く食糧政策が行われなくちやならんのでありますが、そこで輸入食糧に相当の国が犠牲を拂つて入れるということも、闇食糧のお話がありましたが、これは超過供出の倍率等をこんなに急激に引下げるならば、食糧事情が多少緩和をして参りまして闇の買出も少くなるというふうなことで、採算の点でこれは表面に出て来ると思うのです。国内食糧というものが一切施策のあり方によつては出て来る。そうすれば輸入食糧で入れるのも国内のまだ地下に潜つている食糧を表面に出すことも同じことでありまして、海外に拂うそうした金を国内で融通がつけばこれは農家もいいし、消費者の方々も闇で買出さなくても安心して相当質のいい食糧計画的に配給をされるということになるのでありまして、その点はお話の点と私の考えは矛盾いたさないと思うのであります。  いも類について一番大きい問題は質が悪かつたということと、配給される時期が集中されておつたということが御迷惑だろうと思いまして、これも政府施策のとり方によつては幾らでも緩和できると思うのであります。キュアリングの施設なんかを一応させましてもその後助成金を打切つたりいろいろして、又その後においては政府買上げを中止してしまいましたから、その効果が出て参りませんけれども、恐らく今品質のいいさつまいもが出れば消費者も喜んでお上りになる。そういうふうなことは幾らでもいもをもう少し重視するという考え方と、消費者の希望する配給の方法というようなものを根本的に政府が考えられるなら、方法の取りようは幾らでもあるのではないだろうかというふうに考えるわけなんであります。そういう点はお話の点と私共の考えておることとは少しも食違いはないと思いますが。
  17. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) どうも有難うございました。次に産別会議副議長高原晋一君にお願いいたします。
  18. 高原晋一

    公述人(高原晋一君) 産別会議の高原であります。本日はこの公聽会に産別会議を代表しまして皆樣の前で予算に関する私達労働者の目から見た点を申上げる機会を得ましたことを光栄に存じます。  今度の政府資料等を見ましてもいろいろな特徴が出ておるのでありますが、池田大蔵大臣の言つておられる基本的な点を考え併せて見ましても、私は先ず本年度予算がどういうふうに我々に影響を與え、現在の労働者の生活並びに市民の生活はどういう現状にあるかということについて考えてみる必要があるし、それが尚一層現在今年度において変化して来た我々の生活の面がつながつたままの形で、来年度の生活の面へ影響して来るというふうに考えます。従つて先ず本年度実情を少し私達の受けておる労働者の現状についてお話し申上げたいと思います。それから大体予算も実行予算とここへ出されておる予算とでは、実行予算の使い方については相当いろいろな変化があるということは、私達の実際タッチしておりましたところからも窺えるのでありまして、そういう点から今後の、今年度予算が実はどういうふうに本当は使われておるだろうかということについてお話申上げたいと思うのであります。  先ず現在労働者の生活状態を見ますと、就業労働者と失業労働者とをやはり分けて考えなくちやならないと思うのでありますが、そのうち就業労働者でも官庁労働者と大企業労働者及び中小企業の労働者というふうに分れると思うのであります。で、今のところ官庁労働者と大企業労働者を一応一律に考えまして、あとは中小企業労働者がそれと違つた形の困窮状態を示していると思うのであります。官業は大体一昨年七月を基準にして理論的に作り上げられた六千三百円ベースを今受けているのでありますが、このベースは今度の予算でもそのまま堅持されることになつております。で六千三百円ベースが我々の生活に満足なものであるかどうかということについては、否最低生活を維持するに足るものであるかどうかということについては、申すまでもなく六千三百円ベースでは最低の人は二千四百円、従つて女学校を卒業しました女の事務員、電話の交換手そういう方々は、まあ三千円ぐらいになるのであります、そういう状態で我々の生活が維持でき得ない程度まで落されているということは事実であります。最近におきましては政府並びに新聞紙あたりでは物価が非常に下つているということを伝えるのでありますけれども、我々の六千三百円ベースでこの物価の下つたことに対して我々の生活が楽になつているかどうかということを考えてみますと、下つた物価は実に我我にどうせ手の届かないものなのであります。例えばまあ卑近な例を取りましても、我々の給與は戰爭中の約六十倍から七十倍程度に上つているのでありますが、卵一つを取つてみますとこれは二十円から二十三円でありますから、二百倍から二百三十倍ぐらいになつてつたのがそれが最近に至りまして十五円ぐらいに下つたとしましても百五十倍でありまして、至底我々の頭の上で下つているのでありまして殆んど影響がないのであります。卵の例を取りますとこれは卵をそれじや全然食べられないかということになりますが、衣料の場合を取つてみますと一番よくはつきりするのでありまして、衣料は我々殆んどこれに手をつけることができない状態にあります。最近は非常に困つてもそれを買うことができない。ところがこれが最近どんどん下り気味でありまして店頭で目を楽しめるには非常に楽しみな程下つて呉れるのでありますがまだまだ我々の手には入らない、我々の実生活には影響がないというふうな現状であります。従つて我々の実生活には殆んど影響がない上に、この不足の六千三百円ベースを家内中の内職とかそれから持つていた物を売つてつていたというような收入が今度はどういうことになりましたかというと、全然売れなくはなるし内職は殆んど目当がなくなつた、手袋一つ内職して編みましても百円に足りないような手間賃なのであります。ですからこの内職のそういうものから收入の面を断たれた労働者の生活の不安というものは、今まで以上に押迫つて来る不安を感じている状態であります。いわゆる逃げ道のない不安を感ずる状態であります。一方昨年来の官庁従業員を初めとしまして一般民間企業あたりに来ましたところの大量馘首、それは最近ではすでにその失業者の群が就業労働者の低賃金を促進する方向へ職を求めて圧迫して来ておる状態であります。ですからこれら両面から就業労働者は殆んど生活の押迫る不安を感じながら働いているというような状態であります。  次にそういうことと非常に有機的に関係があると思うのでありますが、それらのことが昨年のいろいろな施策それから見返資金の運営等の影響によりまして、大企業には集中生産が現われまして中小企業の方はますます苦しくなり崩壞して行くところも非常に多く出て来たのが、新聞あたりでも報道せられている通りでありますが、そこでは労働者は賃金遅配、昨年の暮やや解消されましたけれども殆んど大部分賃金の遅配を背負つておるのであります。これらは働いても一銭も手に入らない状態で遅配を続けながら、ひどいのになりますと四ヶ月くらい遅配をしたままの状態で仕事を続けざるを得ない状態であります。驚いたことには、これは経団連に参つたときだつたと思いますが、賃金の遅配についてどういう対策を持つておるか、労働者が経営者の方々に聞いたことがございますが、中央における中小企業の遅配状況の把握というものは、故意か故意でないかよく分りませんが殆んど把握されておらないのであります。これは企業主がやはり融資の関係等で、賃金遅配があるということを表面に出すと融資して呉れないというような面もあつて、実際実情を上部に通知して来ていないためだろうと思いますが、殆んど中央では賃金の遅配が起つていないことになつておるのであります。こういう実情を無視したデータによりまして、いろいろな施策が行われることは、非常に遺憾なことだと思うのであります。  そういうふうな就業労働者の状態でありますが、これに加えて失業者は現在潜在失業者まで加えますと約千二百万に上ると大体我々は観測しておるのでありますが、これらの方々は一週間のうち一日か二日日雇に出る方もあると思うのでありますが、その日雇の自由労働者の仕事も現在は殆んど圧迫せられまして非常に苦しい状態が続いておるのであります。従つて、この失業者と就業労働者の平均賃金を考えてみますと、これは六千三百円はおろか非常に低いものになつておると思うのであります。  最近はこれらの購買力の低下それから輸出の不振等から、国内にいろいろな商品の氾濫とかそういうものを起しておりますが、それによりまして一昨年、昨年までは余りはつきりしないような感じがいたしました農民及び中小企業、商店と労働者の生活が最近は非常に一致して全部が苦しい状態が来ているということが言えると思うのであります。それらの政策によつて昨年大企業の集中して行きました一、二の例をここで申上げたいと思うのでありますが、例えば電話機の製造ということを見ますと、これは非常に沢山の会社が作つてつたのでありますが、昨年の予算ではこれを日本電気、日立、沖電気、富士電、東芝という五社が独占してしまつているのであります。これに従つて今までやつておつた中小企業は殆んど仕事がなくなつているというのが実情であります。これは私は産別でありますけれども出が大体逓信の者ですから、電気通信関係について申上げたのであります。而もその電気通信の現状を見ますと、固定資産の見返資金の占めるパーセンテージが約七一%百二十億ぐらいになつておると言われておりますが、それの元利の返還と見返資金を受ける前提條件であるところの資産の再評価というものを含めますと、本年度はそのことだけで我々の労働者の賃金というものはもつともつと圧迫され、そうして労働條件をもつともつと悪くしなければ追付かないというような状態にあるのが実情ではないかと思うのであります。  次に先程我々の生活のところで申上げましたことでありますが、手の届かない品物は安くなつていると言いましたけれども、じや手の届くというか生活に絶対欠くべからざる必需品は上つております。公定価格に例を取つてみますと東京卸売物価指数を見ましても、昭和二十三年の七月を一〇〇にいたしますと昨年の十一月は一五八・五に上つております。これに電気料金、水道料、ガスそういうものの値上りを見ますと、我々の生活必需品、支出として必ず出るそういうものは非常に上つておるのであります。ですから我々の実際の生活はそういう面から非常に追詰められていると言うことができると思います。  次に労働條件のことでありますが、昨年馘首が起りまして、各事業所現場では非常に労働條件が悪化しております。中央電話局の例を取つてみましてもここの婦人達は給料が非常に安くて若い人達が多いのでありますが、そこでは今は便所に立つ間が非常に制限されるような状態であります。これは勿論ただそれだけではなく政治的といいますか何か労務対策といいますか、そういう面からも使用者であるところのいわゆる官側が非常に目を光らせていて、誰さんの便所の時間は少し長いとかそういうことばかり言うものですから便所に行くのでも遠慮しなければならんというような状態で、現在働いている状況であります。この予算にもちよつと出ておりますが、本年度に約五千人ばかり電気通信の増員をするのだということが書いてあります。ところがこれは施設の増設に伴つて五千人ばかり必要なんだと書いてあります。施設の増設に伴い今までのいわゆるこの定員法による基準によつて算定すると一万人増員しなければならなくなるのであるが、それを能率を上げる機械の優秀なのを入れることによつて約二分の一の増員に計算しているのであります。これは何も突発的にここでこういう計算がされたのではないのでありまして、定員法の計算のときにすでに現在の機械の能率、そういうものを合せて考えた算出には無理があるのでありまして、現在の定員不足というものは先程の労働條件の悪化によつて明白に出て来ておるのであります。これはひとり官庁労働者特に電気通信労働者について言えるだけでなく、民間の労働者も今は労務対策の面と合わせて労働條件の悪化というものは非常なものになつていると思うであります。  で、これらがどういうふうな具体的な結果として現われて来ておるかと申しますと、大体肺浸潤とかそういう病気の面にどういうふうに現われているかというと、これは逓信方面の資料をとつて見ましても逓信病院にかかる個人当りの額が一昨年に比べますと、勿論物価薬品の値上り等もありますけれども約十倍に上つているのであります。人員もこれに比例して殖えている。このことはいわゆる官庁側で共済組合費を値上するために我々に示した資料によつてもそういうことが言えるのであります。これはデーターに出た一つの明らかにされた部分でありますけれども、民間の方でもやはりこの通りな健康上の障害が現われて来ていると思われるのであります。但し健康上については我々の中にそう詳しいデータがありませんのでここで申上げることはできない。  次にこれらの生活上の変化がその上に積み重ねられて来年度予算に現われ、連続的なカーヴで生活が変化して行くと思うのでありますからその点について申上げたいと思います。先ず第一に先程申上げましたけれどもやはり労働者といたしましては基本的には六千三百円ベースの維持、今度の予算では六千三百円はそのまま維持されるように書いてあるのでありますが、これは人事院の給與勧告によりましても……あの人事院の給與勧告というのは我々決して満足するものではありません、昨年の七月に例をとつてあるのでありますが、それでも相当の値上りをするようにされているのであります。ここでついでに申上げたいのでありますが最近の賃金体系ということについてであります。最近の賃金体系はいわゆる職階級というのが一昨年の三月に日本に初めて現われまして、職階給という名前で現われて来たのでありますが、それが段々普及しまして今民間の東芝あたりでもいわゆる職階給というのが出されて来たのでありますが、その際一昨年の三月にも我々が申しましたように、この職階給は日本におきましては封建的な身分給に、この上に必ず加算されて参ります。最近現われましたのではこの身分給がより以上にはつきりして来まして、課長であるとか何であるとかいう形に、必要以上の附加給が附いて来る形であります。それと同時に能率給が織込まれて来ております。能率給は能力給と違いまして能力に応じて出すのではなくして請負の形を取つて行く可能性があるのでありまして、労働條件をこの上悪化させる可能性を十分持つていると思うのであります。そこで人事院の今度の七千八百円ベースというのを取つてみますと、先程申しました六千三百円ベースのときのは最低が二千四百円でありますが、今度の七千八百円のときには最低が三千四百円ぐらいだつたと思うのであります。千円位しか上つておりません。最高の方は四千円以上上つております。上の方は四千円以上上つておるのであります。このことは今申上げました職階給を一層幅を付けることになるのでありまして、この調子で行きますと下の方の本当の現場で働いている人達の生活はますます苦しくなつて行くということであります。我我は現在九千七百円を要求しておるのでありますが、この九千七百円でも最低を六千円、即ち六千三百円のときに最低が二千四百円でございますから、九千七百円というのは六千三百円に二千四百円を足すことにしまして最低を同じだけ足して行く、勿論六千三百円の給與体系はこれはもう職階給が入つてつて不満なんでありますけれども、それを一層増長するような動きを示す給與体系を取つてつては困る、一律に三千四百円だけを歩増しに増して行くというような形を取つて貰わないと、現場の人達はますます苦しくなるというように考えているのであります。このことと同時にやはり最低の生活を保障するために産別で調べました理論生計費によりますと、大体現在では独り者が六千円くらいかかるというように出来ます。勿論これは普通の生活をして衣料品の占めるパーセンテージが我々の実際とは違つて非常に多いのでありますから、昨年の九月を頂点に、衣料品の値下りその他でやや下つて来ております。これは理論生計費はやや下つている。併し我々の実態は全然それとはまだまだ及びもつかないものであります。我々はその最低の生活を保障して貰う、そういうことをやはり出さなくてはならないと思つております。その上に能力給、能力に応じた給與を附けて頂きたい、そういう考えで是非最低を抑えて保障した給與体系を考えて頂きたいと思うのであります。そういうベース賃金の点ではややもすると最低がごまかされて分らなくなつて来ますので中を是非御吟味願いたいと思うのであります。  次に今度の予算の特徴としまして先程の方も詳しくお述べになりましたからそれ程詳しく申上げられませんけれども、今度の予算の特徴としまして我我の考えておりますのは価格調整費であります。これも現在どういうふうになつておるかということから御説明したいのでありますが、石炭、銅は現在すでに補給金は打切られている例であります。今後打切られるのも恐らくはこうなつて行くであろうということのために申上げたいのでありますが、統制を撤廃したその後の結果を見ますと、中小炭鉱は非常に苦しい状態になりまして賃金の切下げや首切りが出ております。その反面いわゆる非常に大きい炭坑の良質炭の方は値上りを示している状態であります。これを詳しい指数で御説明申上げる必要ないと思いますので略しますが、銅を取つてみましてもやはり同樣の結果が起つております。而も問題になりますことは、この銅の価格が国際価格を一〇〇として日本の銅材は約一三七くらいの比率になつておりますので、この国際価格に対抗するために我々の賃金を切下げるか労働條件を悪化するかというような方策が、再び又ここで起つて来る可能性を十分示していると思うのであります。而も最近の生産計画についてちよつとここで附け加えさして頂きたいのですが、最近の電力の分断問題と合せまして電力分配の割当計画を見ますと、今年の割当に重点を置かれて電力から見て優遇されておる企業は昨年と少し遠いまして、大体において肥料関係それから機械器具の製造関係、そういうものに電力の割当が相当優遇されているようであります。我々はこの問題について非常に心配しておるのでありますが、肥料関係でも特に硫安、硫安もそうでありますがその何といいますか一足飛びに火薬工場に変化することのできるようなそういう施設に、戰前にすでにその経験のあるような工場に、非常に割当が沢山行つておるというような点は我々としては最も気になることであります。これは化学だけについて申上げましたけれども鉄鋼、機械、そういうものについてもやはり同樣の傾向をその中に見出すことができるのであります。でそれではその硫安とかそういう電力は割合優遇されておる工場で労働者の生活はどういうふうになつているかといいますと、電力は優遇されていて産業としてはその工業及び化学工業が優遇されておると思われても、そこの労働者は優遇されなかつたときよりもむしろ苦しくなつているのであります。この点は先程の国際価格と合せ考えると同時に、これらの政策がその労働者により一層の悪影響を及ぼして非常に苦しい状態、首切りが現われている状態が現に出て来ておるのであります。価格調整費撤廃されますと今申上げました二、三の例のように中小企業及び労働者、それから先程も御説明があつたのですが農民にこれらの負担が転嫁されまして、一部の大企業に集中されて来るというふうに考えられるのであります。この点も現在の段階におけるこういう価格調整費の打切りというものについては、相当の考慮を要するのではないかということが考えられるのであります。  次に公共事業費のことでありますが、これは昨年に比べまして相当大幅に殖えておるようでありますけれども、この公共事業費の殖えている意味が我々としては正しく使用されるかどうかということについて今までも相当看過されておつた点があるのではないかと思うのであります。従つてこの点については本年は是非これが如何に使用されるものであるかということについては、最後まで追及して頂きたいと思うのであります。でそれは海上保安施設費が一〇六%くらい増加になつておりますが、これは我々としましては余りどういうことにそれが使われるのかがはつきりしないのでありますが、濠洲でもこの海上保安施設費と称するものが、この前海上保安庁か何かできたときでしたか反対の声明を出しておられたように、我々としてはこの予算が相当大幅になつておるということは相当これがどういうふうに動くかということについて、よく監視しなくてはいけないと思うのであります。それと同樣なことでありますが港湾事業費も相当大きくなつておるのでありますが、これらの点についても平和的にそれらが建設されるのであれば結構ですが、そうでない目的を以て建設されるとすれば、それは我々としては十分警戒すると同時に反対しなくてはならないというふうに考えております。特に最近におきましては本多国務大臣が壱岐対馬に出掛けられたということを聞いておりますが、あすこの特別開発計画を立てられてそれに見返資金を十八億投資するんだというようなことを言つておられるそうであります。これについても現在壱岐對馬というのがどういう状態の地理的に見てどういう場所にあり、どういう重要性をもつておるかということを考えますときに、我々はやはりこの点もただ單にここの道路を建設するのが平和的の目的にのみ使われるのでないような感じを抱かざるを得ないことを残念に思うのであります。この点特に我々労働者としましては非常に心配している状態であります。  次に本年度の見返資金でありますが、先程も申上げましたけれどもこの見返資金は相当に我々に対して影響を與えておると思うのでありますが、政府は、今度例えば電気通信にとつてみますと本年又百二十億の見返資金を逓信の中に入れるようにしております。これらが我々の労働條件をさつき申しましたように非常に圧迫するし、而もこの金がもう少し我々というよりは建設に自由に使われるようにならなくては意味がないし、而も條件のない形で入れて貰わなくては殆んど有効でないと思うのでありますが、百二十億入りました昨年の見返資金は実は農村の電話とか農村の通信とかそういうものの復旧には殆んど使われませんので、中央の非常に需要の大きいところばかりめがけて使つております。従つて公共事業としての性質は段々その性格の薄れて行くような状態であります。その上に我々の想像のつかない辺鄙な所に非常に優秀回線が延びておつたりいたしまして、解釈のつかないことさえ起つているのであります。  次にやはり逓信にも関係があるのでありますが、大蔵省の預金部資金の保有している国債を見返資金買上げようというふうに動いておるやに聞いておりますが、これは我々の零細な金を集めました貯金、保險の資金の大部分が我々の思うように農村その他に還つて来なくなる危險性、今でも勿論還つて来ていない実状なんですが、ますます還つて来なくなる状態、そうして見返資金に運転されるような状態が起るのではないかというふうに懸念を持つものであります。  次に税制についてでありますが、先程も御説明があつたのでありますが、この税制は労働者としましても、非常に宣伝は安くなるように宣伝されておりますが、実は我々の調べて見たところによりますと地方税、それから価格差補給金の打切等の影響、それから失業保險費の増額、そういうもののために実質的な税というものは下つておらないという結果が出ております。失業保險費の増額等は、国庫の負担による増額は、殆んどそれが失業者に対しての何分の一かに満たない上に、その上の増額が我々に、税とは別の形で掛金の方に影響して来ておりまして、殆んど税と同質にこれが取上げられている結果、実質的な税は殆んど変りがないというような結果があると思うのであります。而も地方税が、中央の税の代りにより多く負担しなければならないような状態になつておりますので、我我としては殆んど殖えないばかりか、むしろ重くなるようなことも現われて来やしないかというような心配をいたしております。我々としましてはこの税の問題は勤労所得税の撤廃要求しているのであります。総合所得税は別としましても、勤労所得税だけは而も天引に勤労所得税をとつて貰うことに今まで反対して来ているのでありますが、この点も是非考慮に入れられまして、中小企業農民、商人、一般市民並みに、特別に勤労所得税というものをつけ、そうしてそれが又相当の額で、勤労所得税という形で一度とられて、総合所得税という形にならないように、一つ考慮を願いたいと思うのであります。  大体以上極く簡單でありますが、現在の生活の状態と、その生活の状態の変化がそのままコンティニュアスに来年加わつて行くであろう本年度予算を、その面から価格調整、公共事業或いは見返資金、税制について申上げた次第であります。
  19. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 別に御質疑が……
  20. 小川友三

    ○小川友三君 産別の高原さんにお伺いしますが、勤労所得税の問題ですが全部廃止することが不可能であつた場合、大体勤労所得税を半分くらいに減した場合に、そうすると賃金ベースを変更しなくてもやつて行けるように思いますがね。税金で勤労所得税は千二百億貰つておりますがそれを半分にすれば六百億になりまして、ベースを変更しなくても実質的の收入は……勤労所得というものは六百億しか入つておりませんが、税金の方がはね返るともつと違うのですけれども、実際は半分くらいに減らしたらいいと思いますが如何でしようか。
  21. 高原晋一

    公述人(高原晋一君) それが今度の人事院の七千八百円に近付くというふうな意味でおつしやるのですか。
  22. 小川友三

    ○小川友三君 そうそう、その点から見て産別副議長さんの御見解をちつと教えて下さい。
  23. 高原晋一

    公述人(高原晋一君) それは我々としましては、この勤労所得税については撤廃を主張しておるのでありますが、勿論今おつしやつたことは、ないよりも非常に結構であります。併し先程申しましたように、この七千八百円の賃金ベースについての体系というのを、もう少し下を大きくするようにして併せて考えて頂きませんと、それがどういうふうになるかがはつきりいたしません。勿論我々はその税を半減することは賛成であります。併しそれで七千八百円に止められるということについてはちよつと考えます。その七千八百円についてはもう一度別個にこれでいいかどうかということを考えて貰いたい。若し悪ければその方も少し上げて頂かないと食えないのじやないかと思います。
  24. 小川友三

    ○小川友三君 ベース変更できない場合は、勤労所得税をこの予算委員会或いは本会全体で防いで行く、勤労所得税を下げて行くという運動を展開しなければならんのです。ベースを変えないというのですから税金を下げて行けばいいのですから、残された途が一つあるわけです。政府は逃げるところが一つあるわけです。この点について半分くらいに下げて行くということは、勤労所得税は千二百億だから六百億を下げればいいと思うのですけれども、あなたがもう少し御研究を賜わりたい。  それからもう一つ、対馬に本多大臣が行つて十五億の金を何か外に野心的な方面に使うようなお話がありましたが、調査資料がいいものがあつたら教えて貰いたいのですが。
  25. 高原晋一

    公述人(高原晋一君) これは新聞記者に発表しておつたものでありまするが……
  26. 小川友三

    ○小川友三君 どういう方面に十五億円を使うのですか、平和産業以外に使われる虞れがあるとあなたはおつしやいましたね、その用途はどういう方面ですか。
  27. 高原晋一

    公述人(高原晋一君) それはここへ現われておりますものは道路、河川、港湾そういうものに主に使われるように出ております。表向きはそういうふうに出ております、表向きと言いましても我々が道路ということについては非常に重要視しております。
  28. 小川友三

    ○小川友三君 それから今の海上保安庁の経費を大分増大したということをあなたは指摘されましたが、海上保安庁の費用というものが無駄の方面に使われちやいけないのですが、政府の発表した程度の問題は大体戸締の費用みたいなもので、別に軍艦を造るわけじやなく駆逐艦を造るわけじやない戸締りの費用であつて、海上保安庁に勤務しておられます勤労大衆は、予算が殖えると相当に国民予算が殖えまして非常にいいのじやないかと思いますが、悪い点もあるかと思いますが、この点あなたのおつしやるように経費が今度の予算には殖えておるということですが、私はそれだけ余計に勤労大衆を吸收して行けるという予算もその中に含まれておるわけですから、そこでこれは一遍には反対できないが、併し人を驚かすような設備をする、船を作るということはそれは反対ですが、これについてこの殖えた額の何%がいけないと思いますか。全部いけないわけではないでしよう。
  29. 高原晋一

    公述人(高原晋一君) そういうふうに細かい何%がよい、何%が悪いというとちよつと私には分りませんけれども、大体今の造船計画とかそういうものを見ましても、普通今の海上保安庁で使う造船計画とは違つた感じがするのであります。それからこれは別の例をとりますけれども、最近日本中のお巡りさんに拳銃が付きました。これも私達としては不必要だと考えるのであります。失業者をそちらの方に吸收することは結構でありますが、そういうことは失礼な言い方かも知れませんけれども、徴兵制度を復活しますと一番吸收してしまうようなことが起りますので、そういう点も我々としては心配しておる点であります。
  30. 小川友三

    ○小川友三君 今あなたは価格差補給金のことを申されたが、価格差補給金を出しておる国家は少いのです。併しこれを出しておるため国民肥料も原価の半分で買えたのです。それを段段軽減して行きますと農民も高い肥料を買わなければならんことになり、それが一切に影響して来るということをあなたは指摘されまして誠に御高見でございますが、併しこれは世界中で価格差補給金を出しておる国は少いので、変体的な経済態勢を取つておつたということをお認めになりますか。
  31. 高原晋一

    公述人(高原晋一君) それはそう思います。併し現状でこういう形では困るということです。
  32. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは一時三十分まで中食のため休憩いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 御異議なければこれで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩    —————・—————    午後一時三十四分開会
  34. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは休憩前に引続きまして只今から公聽会を開会いたします。  公述人の方々に対して御挨拶を申上げます。日本は公私共に誠に御多端の中を本委員会のために御出席下さいまして厚く御礼を申上げます。それでは只今から総同盟総主事高野實君の御公述をお願いいたします。
  35. 高野實

    公述人(高野實君) 日本の労働者を代表して、短く二十五年度予算について申上げたいと思います。昨年三月ドツジ公使によつてもたらされました、いわゆるドツジ・ラインの線に沿う予算が、昨年度一年間日本経済にいろいろな影響を與えまして、その結果、インフレの收束と日本経済安定についていろいろ貢献をした節が沢山にあると思います。併しその半面において、ドツジ・ラインの経済安定政策、インフレ收束政策の梃子とするものが低賃金、低米価にあり、又この低賃金、低米価を基礎とする貿易の拡大にあつた。このことから直接労働者農民の生活の上に重大な事態が生じております。特に昨年度予算において、デフレーシヨンの傾向を特に強める素材として問題になりました戰時中の国債償還の額が余りにも多く、このパイプを通じて行われる国民の間の強制的の貯金が、貯蓄が必ずしも産業の上によい影響を及ぼすのではなくて、却つて産業を萎靡沈滯せしめる、かような事態がはつきりして参りました。更に国民経済を根本的に改革する多くの国土開発計画なども、殆んど盡く紙上プランに終つて、現実に国民の前に明朗な将来を約束するものがない、かような事態を見せております。更にこれらの事態を通じて、日本における独占資本の強化が漸く強まつて国民の眼に余るような事態が続いております。政府はこのような事態について、正しい判断をした上で二十五年度予算編成に当つたか。決してさように考えられる節がない。さような節合いが少しも見えない。政府はデフレではなくて、デイス・インフレだと言つているが、事実の進行とデフレの進行であつて、そのために労働階級の肩の上に多くに犠牲がかけられている、こう断ぜざるを得ません。  そこで二十五年度予算を見ますると、一々数字についてこれを挙げるまでもなく、ドツジ・プランに基くデフレ予算が組まれていて、新年度予算の前にはデフレの危機が大きく口を開いている、こう考えざるを得ないものが多いのであります。労働組合の側からいろいろ申上げなければならない多くのものの中で、特に今度の予算が、給與ベースについて六三ベースを固執し、六三ベースについては一歩も讓らんという態度で予算を組まれました。更に六三ベースを合理化するために、政府は給與白書を発表いたしております。併し政府が発表して給與白書の内容が、甚だ誤解に基いたり、誤算に基いたりしているものが多く、到底国民の納得し得るようなものでなかつた。それのみならず、昨年秋から国鉄、專売の調停、裁定が続々と出まするについて、一々政府はその度ごとに給與ベースを引上げずという宣言を発して、調停、仲裁の各委員会の行動を制約するがごとく見えたのであります。私も專売の調停委員の一人としても政府のとつたたびたびの失態に対して大いに不満を持つているものでありますが、勿論給與ベース一つにして、ひとり政府がよくなし得る程の事態にないのかも知れない。しばしばGHQのそれぞれの担当者と話をした際にも、給与ベースについてはこれを動かさない、動かしたくないという意向が明らかであつたし、更にドツジ公使とお話をした際にも、ドツジ公使は、物価が安定しつつあるのであつて、従つて実質賃金は充実しつつあるから給與ベースを引上げる必要はない、こういうふうに考えておられた。私はこの考え方について、いろいろ私の見るところを申上げた。同じことを、本予算編成されて、その中で六三ベースをそのまま踏襲した政府責任に対して嚴重な抗議をいたしたいと思います。更に一ヶ年間の名目賃金の向上は、二十四年度を通じて殆んど変りがない。実質賃金の充実があるかといえば、これまた同じく官庁統計に則つて見て、やはり充実らしい数字一つも見られない。又政府はしばしば基本給は上げないが、労働者の生産協力によつて生産が増強された場合には、その手当を奬励金として増す意思がある。そういう引上げ方であつたならば大いによろしいといつて来たのであるが、事実は必ずしもそうは行かない。例えば今日ストライキに入つている日本製鉄の従業員の言うところによれば、昨年の十月以来、増産歩合を千トン七十五円から二十円に引下げた。そのために従業員の実收は凡そ二千円の低下を見た。このようなことは決して政府や、或いは心ある資本家のとるべき態度ではない。このようにして一々労働者の熱誠こめた生産増強運動も、或る水準に達するならばこれを蹂躪して、実質賃金の切下を行なつている。又日鉄の八幡の寮の寮費を六百円から八百円に引上げた。これも今度のストライキの重大な原因になつているが、かようなことはひとり日本製鉄だけが行なつていることではなくて、或いは社宅の費用の引上、共済設備の費用の削減、給食の費用の引上、或いはカロリーの引下、交通費や電気料などについての新らしい規定など、それぞれ実資賃金を引下げておるのであります。かような事態が引続いております限りにおいて、実質賃金が上つているなどとは言うことができない。又将来を保障されているとも考えられない。又更に政府もしばしば失業者の問題について言つているが、特にGHQの側では、日本において四十数万人の失業手当を貰つている者だけが失業者であつて、他に失業者はいないと考えている。併し事実はさようなものでないことは、政府自身も、参衆両議員の方々も等しく認めていると思う。昨年一ヶ年における官公庁における馘首者の数も二十数万に及んでいる。又企業整備によつて馘首された者も六十万に及んでいる。若し任意退職者の数を合せるならば、昨年一ヶ年に現われた失業者の数、離職者の数についても百万を超えるかも知れないと思われる。その上に中小企業の離職者や引揚者の失業者や又学校卒業者など厖大な失業者がおる。これらの者は何で飯を食つているのか。彼等は額に汗して働いている就職労働者の賃金の中から食べているのである。ドツジ公使は、若し日本に大きな失業者が起つた場合にどのようになるであろうかという記者団の質問に対して、失業者は農村にしわ寄せられるであろうと言つた。更に厖大な失業者が出た場合にどうするのであるかと言つたら、それは臨機応変だと言つたのである。今日この厖大な失業者が仕事にあり就いている労務者の家庭に寄生し、農家に寄生している以上は、たとえ就業者の総賃金の金額が平衡しておりましようとも、国民の、特に労務者の生活水準は甚だしく引下げられているのでありまして、このことを見逃すならば、何の政治があろうか、こう考えざるを得ません。又一昨年の秋以来顯著に現われて参りました工場企業賃金の遲配、欠配、これを最近における大阪、名古屋、川崎など工業地帶における政府の調査によつても明らかであつて、昨年十一月の調査によれば、三十日以上賃金を支拂わないものが、凡そ二五%を越えている有樣であります。暮をひかえて三十日以上も賃金を貰わないでいる就労者、而も営々として工場に働いている労務者がいることを思えば、この事態だけでもデフレの傾向が如何に甚だしいかが分る。従つて各工場における、工場企業者における金融の逼迫を訴える声も大きいのであるが、このことについても十分な施策を見ることがない。若し今日のままで失業者が殖えて行く、地方の金融がうまく行かないということがありますれば、昭和四、五年頃、最も凶悪な経済恐慌が現われました通りの、寸分違わん悪性の恐慌が現われて来るだろう。又そのために徴税も十分ならず、遂には昭和四、五年の頃農村に見られたように、小学校の先生が校長さんの判を押した臨時の金券を貰つて物を買い歩くというふうな、そのような悪い事態が起る可能性を見ないわけには行かない。このような事態の中で、過日の安本長官の衆議院における演説を見ますと、日本における来るべき二十五年度の間における生産は二〇%上昇するであろう、こう言つている。又東洋経済の調査によれば、過去一ヶ年における生産性の向上は、一年間で二割七分の生産性を上昇させている。何とこの二つは重大な対象ではないか。このような事態を直視することなくして、政府は六三ベースを動かせば、必ず物価と賃金の間の悪循環を来すと言つている。若し公務員の賃金ベースを、給與ベースを動かせば、必ず悪循環が起るというのであれば、如何ような事態の下でも公務員の給與を引上げることはできない。かような途は開けて来ない。こう考えざるを得ません。このような政府措置というものは、一昨年七月二十二日マッカーサー元帥が、日本の公務員について新らしい地位を與えたあの書簡の精神とも反すると考えられます。  又政府は、来年度は四百億に垂々とする税金を安くしたのであるから、従業員は、国民はそれぞれ租税の側で新らしい途を開いておる、こう言つておりますが、それはなかなかそのまま受取り難い節々がある。労務者の側でもシャウプ税制案にある勤労所得税よりも、源泉課税よりも、若干の修正を見ているが、それでも今日の源泉課税との間には、十分に物価や賃金、收入の低下などを賄うような租税の緩和は見られない。その上に、今度の税制では地方税住民税や不動産税が増大して、このために家賃も上れば、自転車やその他労務者に必要なそれぞれの人頭割的な租税が引上げられる。このようにして租税の面でも決していいことがない。政府は又物価がどしどし下つているではないか、肉も百匁八十円に売られているし、米も闇米が五十円台の所が出たというではないか、こういうふうに言つておりますが、事実は決してそうではなくて、若しさような安いものがたまたまあるといたしますれば、それは背に腹は代えられん商人がダンピングをしておる、税金を拂いたくとも拂い得ない農民が止むなく貴い労働の結晶を放棄しておる姿ではないのか。労務者一般の必需品となつておる米にしろ、電気料にしろ、炭にしろ、盡く必需品というものはマル公が引上げられて、配給を貰つてもこれを買うことが困難である。又電気が一度止められたら、その電気をつけることができないというのが実情であります。政府は国鉄、專売の裁定に対しても、これに十分な財政的処置をしようとしない。更に人事院の勧告についても、大急ぎで勧告を受け容れる準備をいたさない。そうしてただ一つ、財政的措置ができないと言つているが、我々の目から見れば、財政的措置というものは相対的なものであつて、しようと思えば若干の財政的措置というものはできる。できないのではなくてできるということが常道である。若し政府が来年度は物価が下るというならば、政府はもつともつと物件費などを切下げて、財政的余裕をとるべきである。又国債償還の額を減らして、それらのものを給與ベースに引当てることも困難ではない筈である。更に金融的な措置をも講ずることはできないわけはない、こう考えられます。政府が国鉄、專売の裁定を拒否し、或いは人事院の勧告を無視するというやり方についての政治的責任は別として、このようにして労務者の賃金給與を引上げる、そうしてよりよい生活を国民に保障するという態度がこの予算に一貫して現われていない。こういうことについて労働組合の側から大いなる不満と糾彈の意思を表明いたします。  更に民自党が国会において絶対多数を以て施策を施している事態においては、而もアメリカ政策に対して大いにお手本といたすならば、アメリカがこの一両年とつて参りました産業繁栄の国策に倣つて、大いに労働者の賃金をも引上げる。そうして物価と賃金の悪循環にならんような積極的な、根本的な国土開発の事業を行うべきだと考えます。今若しデフレ予算の修正を施して、大いに新らしい産業繁栄策の基礎を据えようとするならば、国債償還に充てた千二百二十八億の金を削つて、これらを盡く国土開発の根本的な事業と、失業者の労働力を吸收するに足る新らしい産業の開発と、地方において疲弊困憊しておる多くの中小企業に対する金融等に充てるべきだと考えます。又公共事業費が一千億に達していますが、これはいわゆる失業救済的な費用に充てるのではなくて、この費用をも根本的な国土開発のために活用する。そのために一部土建業者や政党者流の腐敗を防ぐために、この金を使用するについては、民主的な監視委員会を作つて貰わなければならない。  第三に、住宅建設について初めて予算の項目を得たが、この中で一般会計から支出している五十億の金については、是非一般勤労者の住宅建設のため措置をとつて貰いたい。これによつて産業を繁栄ならしめる重要な梃子となすことができる。又日本国民生活を根本的によくする途は、ただ一つ水力電気を起すことであるが、昨年の暮までに只見川、那珂川、琵琶湖、熊野川その他多くの電源開発について、それぞれ権威者が立派な調査を出しているが、政府はこれらの志を持つた新らしい英雄のために十分な金を支出すべきである。若しこれらの電源開発が漸次可能になるならば、そのときに初めて電力を豊富に與える意味で、電力の分割も必要であるかも知れない。又国鉄電化について、昨年中熱心に唱道をいたし、努力をして参つたのでありますが、この僅か浜松、米原間の五十一億円のお金について、政府も十分な努力をして呉れなかつた。又GHQその他の人々も努力をして呉れなかつた。五十一億円の金をかけて完成すれば年間六億余のお金が上つて来るのに、かような事業についてさえも政府は十分に熱意を持つていない。今度の予算においても国鉄電化のために十分な努力を拂うべきであると思う。一昨年の六月、日本国民が真に民主的な生活を営むためには二千万キロの電力を起すべきだという進言を安本とGHQとにしたことがあるが、そのときにピアースさんは、お前はもう一度戰争をする気かと言われた。併し僕らはそういう考えを持つていると思われたことについて、大いなる恥辱を感じ、日本世界においていずれの国に求むるよりも豊富な水力電気を持つことのできる国である。このエネルギーを使わずして日本国民の生活向上はある得ない。我我はこういう意味で、向う百年か、百五十年しか堀ることのできない石炭を使わずに、一日も早く水力電気を開発して、有用な石炭を子孫に残すべきだとさへ考えている。こういう事業について政府は新たなる構想の下に、予算の全面的な組替を決行すべきであると思う。  若し政府が給與ベースを引上げることはできないと言つたその建前をどこまでも押して来るということであれば、残念であるが、民主的労働組合五百万の組織している国会共鬪委員会は、恐らくは二十四日を目掛けて重大な決意をするに至るでありましよう。又若し政府が重要な国土開発について予算の組替をしないということであれば、国会共闘に結集している五百万の民主的労働組合は政府を糾彈するでありましよう。我々は日本を盛大なる経済力ある国といたしたい。そのために多くの労務者が喜んで働けるような、而も喜んで将来を楽しむことのできる憲法……こういうものを予算の中に是非組入れて貰いたい。  こういう建前において日本の民主的労働組合は、二十五年度予算を全面的に組替えて、新らしい政策をこの中に盛り入れて貰いたい。そして目覚しい二十五年度予算国民に與えて貰いたい、こう考える次第です。
  36. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) どなたか御質問がありますか。
  37. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 ちよつと遅れまして大変失礼でございますけれども……。公務員の賃金ベースの引上のお話があつたと思いますが、勿論私これ以上、担税力のない国民に増税しないで、而も財政支出の多大の無駄を省きまして、その範囲で生活困難なこの官公吏の方々の給料を値上げして行くということは根本的に反対はいたしません。私達の政党でもそれについて考えているのでございますけれども、政治的良心と申しますか、私がいつも心で、この部屋で苦しんでおることは、幾ら財政支出に無駄がありましても、その金を一体国民のどういう階層の方々に、どういう方法で使うかということであります。勿論官公労組の方々は非常に生活困難ではございましようけれども、只今先生が御指摘になりましたように千二百万に達するような失業者があるでありましようが、その他傷痍軍人も、病気であつてもああいう栄養では困りますし、戰災孤兒なども待遇が悪くて逃出しておりますし、未亡人も十万がこの生活保護法の適用を受けなければならない。農村恐慌も、あの通り山も川も荒れ放題。それからさつき先生がお挙げになりました将来の日本を富裕にいたしますために、いろいろの復興事業をいたさなければなりませんし、こういう方面にも使わなければならない。こういうことを考えますときに、その比重ですね、無駄な財政支出をどういう方面に使うかという比重なんでございますが、先生は良心的に、一体これらのことをさておいて、官公労組の方の賃銀を先にしなければならないとお考えになるのでありましようか。その点を一つ……
  38. 高野實

    公述人(高野實君) 比重についてどのようにするかということについては、いろいろ議論があると思います。併し今の政治條件からするならば、公務員の給與を引上げるということが、即ち民間労働者の賃金をも相対的に保護し、増額することになる。又農村における日傭稼ぎ、或いは賃仕事などの賃金をも保護することになる。こういう意味で公務員の賃金ペースを引上げるということは重要なことだと思います。更に若し公務員の賃金を引上げ、少しでも生活のゆとりをとらしめるという方法が立てられるならば、国民購買力が増大して、現在の品物を作つても売れないという悪い経済環境は打開され得る一つの要素となると考えます。そういう意味で現在の政治條件の下では、公務員の給與を引上げるということが大変大事だと思います。
  39. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 独占資本の強化が目に余るものがあるとおつしやいましたけれども、その点もう少し具体的にお聞かせ頂きたいと思います。
  40. 高野實

    公述人(高野實君) GHQは頻りに独占的傾向について警告をして来ておりますが、併し事実の進行は必ずしもそういう注文通りになつていないと思われます。例えば銀行資本の支配は大変に強化されております。取分け企業整備と名付けられる方法は、銀行の支配を各企業の強化いたしております。そうして銀行が注文した條件を容れなければ金融をしないということで、各企業共銀行の支配下に段々迫いやられておると思います。今突発しております日鉄の争議にしても、聞く所によれば、銀行から出しておる原案を会社は鵜呑みにして従業員に示しておるに過ぎないと言われます。勿論日鉄は四月一日から東西に分れた新会社になりますから、その新会社の中で、八幡だけが黒字の会社であつて、広畑、釜石、輪西が赤字の会社であるから、現在の賃金ペースをそのまま赤字の会社に持込まれては困る。将来の経理について銀行は保証し難いという十分な理由もあることと思いますが、併しながら、だからというて、従業員の方にだけ犠牲を負わす現在の整理案というものが銀行から出ておるということ、そのために又具体的な団体交渉が進行しないという事実については甚だ遺憾に思います。このような事柄は、ここ一両年継続して参りました企業整備の進行と全く裏表である。そうして次第に地方の銀行などは発言権を弱められて、漸く片手に数えられる程度の銀行支配が強化しておると思います。そういう意味合のことを幾つか数えることができようと思います。
  41. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 今お答え頂いたのだが、金融資本面だけのことを発言しておられますが、その外にもいろいろの事例があると思いますが、時間がございませんからそれはそれだけにしまして、米の闇値、今下つて来ております。或いは五十円、六十円台と下つて来ておる地方もあります。これは農民のダンピングだと仰しやつたが、そういうような言葉で米の闇値のことは言い得られましようか。率直な御意見を伺えれば結構であります。
  42. 高野實

    公述人(高野實君) 御承知のように一月一日から肥料も高くなりました。又この年度末には税金も納めなければなりません。子供を学校にやらなければなりません。いろいろな條件を考えますと、農村ではどうしても現金が欲しいと考えておると思う。その迫られた事情ために米を安く売らなければならない。而も若し超過米の形で供出をしますならば、いろいろ大幅の公課が掛つて来る。こういうことも重り合つて安値を出しておるのではないかと、こう考えております。
  43. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 先程のお言葉に、国会共闘委員会のあとについておる五百万の人は、この賃金ペースをいよいよ引上げないということになると、二十四日を期して重大な決意をするとおつしやつたようでありますが、どういうことでありましようか。ここでそういうことを申されますと、議員が幾らか恐喝されたような気持になるのでありますが、当然国家公務員でございますので、この服務規律が法の示すところによつて定められていると思いますけれども、どういう御決意をなされる予定でございましようか。
  44. 高野實

    公述人(高野實君) 国会共闘委は、御承知のように公務員の労働産合、公労法関係の労働組合その他労組法に則る労働組合で組織されております。今すでにストライキの態勢を整えましたものを言いますならば、電産は、二十三日に組合の決定を経て中央労働委員会の調停案を呑むか呑まないかを意思表示することになりますから、その結果重大な決意をするものと思われます。石炭労働者組合は、大凡四十万程の組織を以て只今賃金交渉をしておりますが、この交渉は困難な事態に立至つて決裂をするのではないかと思われますので、大体二十日過ぎには部分的なストライキが始まると思います。全公連は、二十四日の日から賃金問題について全国的なサボタージュを指令しております。かようにしてそれぞれ参加団体の間でストライキ態勢を整えつつあります。我々は決してマッカーサー元帥が二・一ストの際に発したゼネラルストライキを、尚今回も禁を犯して行おうという考えを持つておりませんが、併しながら若し民間労組それぞれの賃金について、或いは企業整備について、強引に政府が給與ベースを引上げないで、このような事態が正しいのであるということで押切つて来るならば、続々ストライキに入る形勢であります。又公務員法によつて、或いは公労法によつて作られておりまする諸労働組合も、給與ベースを引上げないという政府の声明に対しては、憤然たる態度をとると思います。無論法規の示すところに従つて、ストライキを宣言することはありません。又ストライキをしようとも考えていないと思いますが、それぞれ労働基準法その他の遵法鬪争も始まることでありまするから、事態は容易ならない決意の下に進行するものと思われます。かような意味合であります。
  45. 岩間正男

    委員外議員(岩間正男君) 二、三点お伺いしたいのですが、今国会共鬪委の要求は九千七百円ベースだと思うのです。そうしますとこの要求予算に実現するというと、大体どのくらいの額が必要だとお考えになつていらつしやいますか。  それからそれを実現するために、さつきお話のように物価の値下りということを政府は盛んに言つておるんだが、そうするとこの値下りを見込まないで現在の予算の中では物件費を組んでおる。そういうものを節約すれば大体このベースの改訂ができるというふうなお話のようにも聞いたのですが、果して均衡予算の枠内操作でそれができるかどうか。そういう点をお考えになつておるのか。或いはもう均衡予算のドツジ・ラインの線を打ち破らなければ九千七百円のラインは確保できないとお考えになつておるのか。これは非常に二十四日と連関して重要だと思いますからちよつとお伺いします。
  46. 高野實

    公述人(高野實君) 第一の九千七百円にした場合に、どれぐらいの金額であるかということについては、正確に申上げられませんが、大凡一千億に近いものと思つております。  第二の物件費その他の節約費用によつて現われて来る金がどれだけあるかということについても、これは相当議論があろうと思います。又今各省の臨時雇の人数を総合いたしましても、相当の額に上ぼると思われます。又現在公務員の総数においても、予算と実人員との間には若干の違いがあるように思われますから、さようなものを総合統一いたしますれば、相当の額に上るのではないか。今例えば人事院勧告をそのまま実現するとすれば、地方公務員の給與を合せて六百億と言われるが、その中で百三、四十億は税金として政府に戻つて来るであろうし、その他節約の費用を合せれば、政府の実際に支出すべきものは三百五、六十億でないかと思う。従つて政府が若し人事院の勧告だけは服したい。こういう熱意があるならば、それだけの金を、物件費や、人件費その他から融通総合することは困難でないと考えております。
  47. 岩間正男

    委員外議員(岩間正男君) そうすると何でございますか。九千七百円と人事院勧告の内容は全く違つておるのですが、そうすると、重大な決意という場合は、九千七百円の線で考えておられるのか。人事院勧告を考えておるのか。その点がはつきりしないから……
  48. 高野實

    公述人(高野實君) 政府が給與ベースは引上げずという態度であれば、これは重大な決意をせざるを得ない、こう考えておるわけです。我々は言うまでもなく均衡予算はよい予算の方式だと考えます。従つて赤字公債を出せばどれだけでも給與は拂えるのではないかという議論をしたいと考えておるものではありません。従つて均衡予算の範囲において、而もドツジ・ライン的な構想を改めることができる、こう考えておるわけであります。
  49. 岩間正男

    委員外議員(岩間正男君) 分りました。
  50. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 次は松竹社長大谷竹次郎君にお願いいたします。
  51. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 私は自分の仕事として映画演劇を中心に永年やつております。その映画演劇の経営上についてのお話を少ししたいと思います。予算に対して、或いは話が外れるかも知れませんが、その点を一つお含みを願いたいと思います。尤も予算ということを中心としてお話をしようと考えておりますが、自分の仕事の経験の上からお話を申上げたいと思います。  昭和二十五年度予算を拜見いたしますると、教育文化費とか、或いはすべての文化に対する予算が非常に軽減されております。これは私は非常に重大なことである。今日の日本として学校説備とか、教育とかいうものを充実しなければいけないと思います。教育に重点を置かなければならないと思うに反して予算が非常に減つておるということは寒心に堪えないのでありますが、併し我々のやつておりまする映画演劇も、娯楽ばかりでなく、教育ということに重きを置いております。指導であり、又教育であり、娯楽であるというふうにやつておりますが、その演劇の入場税が、御承知の通りシャウプ勧告によりまして、五割の減税になるということになつております。これは非常に喜ばしいことであつて、感謝に堪えないのでありまするが、実際から行きますと、それでもやつて行かれないのであります。それは何かと申しますると、入場料が非常に安いのであります。高くすればいいぢやないかというお説もありましようが、高くすればお客も来ないでしようが、非常に法律に縛られておる。今日は枠が外れまして、入場料に対する制限はないのでありまするが、長い間やかましき法律の下に、入場料を上げることはでき得なかつたのでございます。昭和十二年を比較しますと、税込の百倍になつております。税を入れて百倍です。税をとりますると、入場税をとりますと、四十倍にしかならない。一般の物資は二百十三倍になつております。現在の状態として演劇の観劇料の一番高いのが四百円であります。すでに新聞でもすべてのものは、演劇を見るには四百円とられる、我々サラリーマンは見られないということをよく書いておりますが、その四百円は驚くなかれ、百六十円でありまして、二百四十円は入場税に持つて行かれて拂わなければならないのであります。そうすると本当の経営者の入る金は、昭和十二年度から比較しますと、四十倍であるのであります。一般物資が二百十三倍、一般の物資と申しまするが、演劇は一般の物資を豊富に使つておるのであります。大道具とか衣裳とか鬘とか、そういう一般のものよりも高いものを使う。或いはその中には闇取引もないとも言えません。物が決まりますれば、白のものを赤でやるわけには行きません。赤を赤として、青は青としての衣裳を着せなければならないですから、これは一般の二百十三倍というものより大きなものになつておるのであります。そうして取る金は四十倍では、これはとても行かれるわけはないのです。それが今日の映画演劇を本当に日々日向の氷のごとく滅ぼしつつあるのであります。それが皆様の協力のお蔭として十割ということになるらしいのでありますが、これは非常に喜びに堪えないのでありますが、併し本当のところは、もう映画が五割、演劇が二割以上は困るのであります。困るということはおかしいのですが、業者は、本当の国家の税を納める上においても、それより納め得られない。又それを納めなければ義務が果せないというので、寄り寄りして一部にお願いをしておるわけでありますが、御承知の通りイギリスは六割であります。アメリカは二割であります。今度減りまして十割というのは、世界第一の高率であります。敗戰国の国民として仕方がないかも知れませんが、映画演劇の持つ力が娯楽ばかりでない、今日の社会情勢から見ても、思想の上にも、又国家宣伝の上にも、本当に重要であるということは、今こちらに参りますと、こちらの部屋にも映画を写すようになつております。映画の重要性をお考えになつておることと思います。ですからこの入場税を減らして頂かなければ、演劇はやつて行かれないということが第一に申上げたいのであります。  それから今度の議会に提案されております附加価値税であります。現在審議中と聞いておりますが、これも我々業者にどう決まるか知りませんが、先ず以てお願い申上げたいことは、これは業者別にでもして頂かなければ、映画演劇とか人件費の非常に多いところはやつて行けないのであります。これは多言を弄するまでもありません。映画とか演劇とかいうものは、その費用に対して映画において六割五分、或いは演劇にありては七割五分は人件費であります。その残り三割五分か二割五分の中に莫大な税金がかかることになれば、大変なことになるのであります。尤も一般の整鉄とか、物を使つてやる機械の工場では、人件費が二割五分ということを聞いております。二割五分くらいです。演劇映画は御承知の通り六割五分から七分かかるのであります。これでは、それが若しも事業別に分けて頂かなければ、もう滅亡の一路を迫るより外に途はないと思います。それから私はこの間も或る席上で話をしたのでありまするが、映画が持てる力の大きさ、皆さんの協力によつてよき映画を拵えるということは、減税は論を俟たないのであります。すべてに便宜を與えて頂かなければならん。映画演劇というものは、丙種にあるのであります。外貨を獲得するにおいても、国を紹介する上においても、これ程私はいいものはないと思うのであります。外貨獲得ということは、現在日本状態として大きな問題であります。それを獲得するには映画の持てる力、映画を利用することが一等いいのぢやないかと思います。映画は外国に出すについて物を消滅しないのであります。日本でとつた映画の大体の原版で、三十本燒くものを何百本燒けば、それで外貨獲得ができるのでありまして、そうして国の紹介もできれば、国民の思想も知らしめるのでありますから、そういうことが一等いいのじやないかということは、もうこれは多言を弄するまでもない。終戰後アメリカ映画を日本で一手で配給しておりまするセントラルは、戰後三十億の金を取り上げておるのであります。日本国民敗戰国民の本当の小僧から女中に至るまで、僅かな金を三十億、もうすでにセントラルはそれ以上獲得しておる。これが逆に日本の映画が外貨獲得の一翼を果たせば、そういうことになるのじやなかろうかと私は思います。  大体において映画と演劇というものに、余りに認識がないのではなかろうかと思うのでありまして、日本政府当局は非常にお忙しい、非常なる事務の煩雑を持つていらつしやるために、その暇がないから御覽にならない。御覽にならないことは何となしに継子扱いになる。自分達に理解がなくなる。よく国務大臣にも御覽なさい。とても忙しくて行けないよと言う言葉の中に、映画なんか見られないよ。芝居なんか見るべきものでないということをよく聞きますが、今日の日本状態としては、そんなことでは大変だと私は思うのであります。自分の仕事を誇張するわけでも何でもありません。大きな税金を納め、それが一面に大きな入場税になつておるのであります。現在におきましても百五十億円から税金を納めておるのであります。これが十割になつたらば、税金が減らないかということを、政府当局は我々に酷く詰問されたのでありますが、私は、業者相寄りまして決して減らない。十五割が十割になることは、何となしに五割減つたという考えが直感的に起るのでありますが、事実は二割五分になるのであります。三百円のものを二百円税金納めて百円の取り前が、三百円が五分になれば百五十円になるのですから、二割五分の收入減、税金減税になるのであります。併しこれが値段が下り、税金が下つて地方々々に税制の整理ができれば、私は決して国庫收入が、今度は地方に移りましたが、減らないだけの確信は持つておるのでありまして、その意味におきまして今回制定されんとする附加価値税の御研究と、それからこの入場税、これはどうか是非映画は五割、演劇は二割ということは、各国通じても高いものではない。至当であるという考えを持つておるのでこれを申上げて置きたいと思うのであります。  簡單でありまするが、自分の申上げたいことはこれだけでございますが、何か御質問がありましたら……
  52. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君 今映画は五割、演劇は二割ということが最も理想であるということを大谷さんおつしやつたのでございますが、そうしますとシャウプ勧告によりまして、現在十五割のものが十割ということでありますと、この間が非常に差がまだあるのでございますけれども、そうした点につきまして何かお気付きの点がありましたら、もう少し聞かして頂きたいと思います。
  53. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 税金が減つたについて收入が殖えるというのですか。
  54. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君 シャウプ勧告によりますと十五割の税が今度十割になる、まだこれは実際実施していないのですが、理想とすれば映画が五割、演劇が二割というふうに只今おつしやつたのでございますが、シャウプ勧告は十割ということですから、なかなか今の政府としてやれない。そういう点につきまして一遍にこれは十割の映画が五割になり、十五割の演劇が二割になるということであれば、これは理想でございますが、その間に相当の時日を要すると思うのでございますけれども、何と申したらいいでしようか、業者の苦しみというものは非常なものであろうと思うのでありまして、そこでそうしたことにつきまして業者としてどういうふうにお考えになつておられましようか、その点を一つもう一遍お聞かせ願いたいのですが。
  55. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 私はこの十五割が十割になつたということは、今申上げた通り五割でなく二割五分減ることになるのである、收入が。それはお分りでしよう。仮に三百円とすれば二百円が税金で百円がこの收入、三百円が五割になれば百五十円になるから二割五分の減税になる。それでもやつて行けないというのは、今の観劇料が高い、大衆にこの映画の導引力というものはまだまだあるのであります。或いは各国から比例して見ると殆んど五分の一見ていないのであります。それを現在の映画に或いは日曜日とか祝祭日に行くと大変来ているのじやないか、日劇で渦を巻いているじやないかと言うが、それは殆んど一週の中の日曜日とか祝祭日であつて、平日見るとガラガラです。朝と晩の、時間の都合がいいときの外はがらがらです。あれをもう少し活用して税金を安くする、若しくは業者が観劇料を安くする責任を持つこと、それと経済が豊かになれば映画が非常に良くなると思う。現在の映画が各国と比べて、日本の製作が成績がよいということを誇ることはできません。アメリカ、イギリス映画に追い立てられつつあります。これをよくするには、業者に生産費をもう少し使わしてやらなければならない。金を使えばよくなるということは言えないが税金と人件費でぎゆうぎゆういつておる。これを安く見せて導引力を出して娯楽をさすということはできるだろうと思います。
  56. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君 そういたしますと、この観劇をする、映画でも演劇でも見る人の数というものは、仮に税率が下つて行けばそれ以上に殖えるということなんですね。
  57. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 殖えます。観劇料を安くすれば殖えるということは明らかなんです。今月でしたか日活系が何となしに話の行き懸りで他の業者より十円安くした、それがために非常にいいということは、私も驚いておるのでありますが、現在の状態から言つて十円ぐらいのものは何でもないじやないかという私の言葉は裏切られて、今日のすべての報告を御覽になると分りますが、十円の違いがそれ程驚くべき影響力があると思つております。
  58. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君 もう一つ、簡單でございますから……。そうしますと税率が下れば自然に観劇料は安くなるということでございますね。
  59. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 下りますが、今申して置きますが、税率が下つてその下つただけ安くなるということは言えない。十円下つたから観劇料が十円安くなるということは言えない。業者は仮に十円下つたならば五分はお客に廻り、五分は製作費に廻り、そうして導引力を増すことになる。
  60. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君 今の十五割の税率で行きますと、大体年百四十億、百五十億になつておりますが、それが十割に下る、若しくは五割に下るというような場合になるといたしましても、その百四十億とか百五十億に対しては変らんということですね。
  61. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 私は二十五年の予定になつておる百四十億円は必ず納めると思います。
  62. 岩間正男

    委員外議員(岩間正男君) 簡單にお伺いしますが、今政府の文化政策、教育政策なんかも同じでありますが、税金を財源として取立てることだけは非常に多いのですが、文化を保護する面は殆んどないと思います。今お話の通り入場税のような形で、非常に強化されて出ておるのでありますが、外にはこういうような映画の方、演劇に多年携わつていらつしやつて、資材とか、金融とか、そういう方面においてどういうような、いろいろな政策面で不便を感じていらつしやるとか、何か要望がありましたら伺つて置きたいと思います。
  63. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 資材面で苦しんでおるゆえんを……
  64. 岩間正男

    委員外議員(岩間正男君) 資金の面と資材の面で……
  65. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) 資材面は非常に困つておるということは、今日左程でもありませんが、終戰直後資材が非常に不自由になつて、それは演劇を例にしますと、衣裳は殆んど燒けてしまつた、衣裳を作るということは非常なことなんです。申上げますと腰元一人出しても何万円かかるが、それを出さなければ歌舞伎の收入が立たんということであります。それから金融面では殆んど挾み打ちにかかつておる。丙種になつておるものですから、銀行は融通をしないのであります。映画、演劇は殆んど水のように思つておりますから……。これが第一の間違いなんです。これ程確実であるものはないと私は思うのであります。この間東横という映画が別にできまして、五島慶太君が蔭の資本家となつてつております。五島君曰く、電車なんかやつているよりこの方が余程確実だよと言つております。というのは、今日は一杯、明日はがらがらだ、非常に不等があるように見えても不等がないのです。今日は映画会社が仮に四つあるとすると、四つ合すと導引力は変つていないのです。甲の会社のお客を乙が取る、乙の会社のお客を丙が取るということは、その映画のでき工合によつてお客は移動しますが、全体から言うと変つていないのです。電車に乘るお客の数も映画を見るお客も変つていないという程、事業化したということは私は非常に喜んでいる。それにも拘わらず、丙種だから金は貸さないというようなふうにされるから非常に困つていることが一つと、もう一つ、この機会に申上げたいことは、演劇の上において何が大事といえば、芸術家を保護しなければならない。今現に歌舞伎座も建築しつつありますが、そこに中味に入れるものがなくて困る。その中に入る人間は今非常なみじめな立場に追込まれている。ということは、衣裳に金を持つて行き、大道具に金を持つて行き、鬘に金を持つて行き、脚本家に金を持つて行き、残つたものについて、極く僅かなやつで芸術家は我々と睨み合つているし、特に非常に哀れさがある。私は殆んどこれを哀れさと言いたい。その僅か二万か三万取つた金を、今度は又税務署が半分持つて行くということになると、これは非常に気の毒な立場にあるということを一つ御承知願いたいと思います。
  66. 小林勝馬

    ○小林勝馬君 ちよつてお伺いしますが、今おつしやつた收入面でございますね、大体上はどのくらいで、平均どのくらいなものでございますか。芸能の方々の……
  67. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) これは非常に矛盾があつて、ちよつと言えないのですが、舞台俳優は非常に安いのです。映画の俳優は割合取つている。御承知の通り二三日前まで、二三日前とは言えないが、どこかで見つけられた女優さん、どこかで見つけられた男優が、そのときの運によつて一躍スターになる。これは大きな金、大きな金というとおかしいのですけれども、これも又税金に半分くらい持つて行かれるが、併し舞台俳優の方は取れない。取れないということは、御承知の通り現在東京劇場が一等大きな劇場です。これが二回興業であつて、一日四千人づつ入つても十万のお客です。これから取り上げる以外ないのですから、幾ら大入りしたつてそれ以外は入らないのですから、その金を分けているのだから、そういうわけに行かない。映画となりますと一本とると日本全国配給される。
  68. 小林勝馬

    ○小林勝馬君 大体の額は……
  69. 大谷竹次郎

    公述人(大谷竹次郎君) これは実演俳優からいうと、映画の俳優は十倍にもなつている。例えば映画の俳優が三十万円取る場合は、それと比例して片方は三万円、それで近頃私は俳優の生活を見てやるために映画をどんどんとらした方がいいと言つておりますが、これは又妙なもので、不思議なんです。それが舞台で非常な一流俳優でも映画に入るとそんなに人気がない。だからとりたくないという、そういうわけです。
  70. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 次に日清紡社長櫻田武君にお願いいたします。
  71. 櫻田武

    公述人(櫻田武君) 昭和二十五年度予算について公聽会公述人の御依頼を受けましたので、私産業に従事する一人として見解を申述べます。  第一の問題といたしましては、この予算をよく拜見いたしまして、予算編成の根本になつておりまするところの政府の観測と申しますか、経済界の動きに対する政府の観測というものについて、少し私異つた見解を持つものでございます。政府の観測に従いますると、通貨が第一に安定しておる、これが第一、それから物価、賃金が安定しておる、これが第二、第三に、生産が上昇を見ておるというふうな、この三点を主として御指摘になつて、これで以てデフレーションではない、インフレーションを收束さしてデイス・インフレの線に乘つかつておるんだというふうにお考えになつておるようなんでありまするが、先ず第一に、通貨の面におきましては、これは現在におきましても、三千億円の通貨の、日銀券の発行程度というものを維持するのがむしろ困難なくらいでございます。恐らく年度末には、私の考えでは必ず三千億を割るであろうというふうに考えるのであります。昨年の三千五百とかいうふうな通貨の発行は、とても昭和二十五年度においては困難ではあるまいかというふうに考えられるのであります。尚又全国の銀行の預金の総額、これが大体現在におきましては六千七百億程度のものでございますが、これを通貨との関係を考えて見ますると、通貨が三千億で全国銀行の預金の合計がその倍にしかならないというような国は、まあ国家としては日本でございまして、フランスが確か四倍と私は記憶しておるのでございます。それからアメリカは六倍程度あるのでございます。丁度私、紡績会社を経営いたしておるのでございますが、昔日本が、発行通貨の五倍程度の銀行預金があつて当時の工場経営について申しますれば、一ヶ月のうちに現金を自動車に乘つて銀行に取りに行かなければならぬという日は一日だけでございます。それは給料支拂日一日でございます。その他は、工場の中の、会社の中の金庫は、十円か二十円も現金を持つておればそれでよろしい。現金を持つて事業をやるなんていうようなぶざまな経営は会社はしない。又世間も日清紡績へ行けば十円か二十円しか紙幣はないけれども、三千万でも五千万でも融通を願える。要するに基は信用でございます。通貨と銀行預金との比率、それから通貨の発行高の伸びないというのはなぜかといいますと、経済に上において、企業の経営に対する信用がないということに帰着するのでございます。従つて私は通貨が安定しているようなところで、安心してこれがデフレでないというふうなことは、聊かどうかと思うのであります。それから次に物価、賃金の安定ということにつきましては、物価は成る程横這いいたしておりますのですが、国民生活の、我々の衣食住に使います品物の中で、最近は統制が外れておりまするが、現在におきましても六割程度はどうしてもマル公以外の物資に依存しております。このマル公以外の物資が国民生活の六割を占めておる、而もこれが激落しつつある、暴落しつつある。町へ出て御覽になりますれば、特に絹製品、それから羊毛製品等のごときは、酷いものは、これは極端でありまするが九割下げ、普通のものでも三割乃至五割下げで、尚且これが売れておりません。昨年の九月頃からあとの動きを見ますると、白木屋、三越というふうな百貨店が、この暮によく品物が売れておるのであります。この三越、白木屋等の百貨店が非常に、昨年以上に物が売れたということが、即ち言い換えれば国民一般の購買力がなくなつて、そうして不景気が酷くなつたということの象徴であります。思い出しますと、昭和四年の頃は小売店がばたばた倒れた、そのときデパートのみひとり栄えておつたのであります。こういうふうに一つの必然的な現象として、そうなるのであります。ところが最近におきましては、デパートにおいてすら品物が売れない。そうして一般の小売商は恐るべき値下をして尚且売れないという状態でありますので、昭和二十五年が物価が横這いというふうなことは到底考えられない。我我の日々接しておる現実なんであります。次に賃金はどうかと申しますると、大体組織労働者の賃金は下つておりません。これはむしろ多少上り気味になつておるのでありまするが、これは労働省でお調べになりました数字の、大きい工場のみでありまして、中小企業についての数字ではございませんし、それから尚相当多くの人数を占めますところの自由労働者、特に日傭労働者、これらの賃金は昨年の九月に、大体一日当り三百円乃至三百五十円、それが最近は百五十円でもいいから雇つて呉れろというような傾向に下つております。大工の賃金も、大体千円以上でありましたものが、最近では五百円以上というような大工はおりませんような状態でありまして、賃金は下つておる。特に初給賃金が下つておる。以て物価、賃金が安定しておるとは言えないのであります。  それから雇傭でありますが、国民所得という点から言いますると、賃金を貰う人間の数と、その賃金を拂います賃金の総額がこれのトータルでなければならないのであります。雇傭はどういうふうな状況かと申しますと、昨年の一月を一〇〇といたしまして、労働省の統計を見ましても、七月以降はずつと下つておるのでありまして、五月が一〇〇・九、六月が一〇〇・二、七月が九〇台に入りまして九七・二、八月が九六・二、九月が九五・二というように、中小企業を除外しました労働省の調査によりましても雇傭量が低下しておりまするし、それから人員整理はどうかと申しますと、昭和二十四年の一月から四月までの間、我々の記憶で大体月一万であります。これが五月が二万四千、六月が三万二千、七月が四万、九月が六万四千というふうに九月が急激に増加しております。これは行政整理の都合もあつたのでございますが、十月が五万、十一、二十月が約二万程度に減つておるのでありますが、この人員整理がこの外の中小企業では非常に多い。特に私が関係いたしております機屋さんあたりの人員整理というものは、これはこの数字に現われない多くの整理を受けておる実情にあるのであります。この賃金それ自体に水準が上つていない。むしろ初任給は非常に下つておる上に、その賃金を貰います人の数が、雇傭が下り、而も整理が外のように行われておるということで、物価、賃金安定せりとはお義理にも言えない。  その次に生産でありますが、これは成る程、昨年の十一月は終戰以来のピークを示しております。これは鉱工業生産にいたしましても、電力の生産、これを総合いたしました総合指数としては、生産は確かに終戰以来の記録的な数字を示しておるのでありますが、それとても昨年の三月に比べて一割高程度の、余り大したのものでない。のみならず季節的な影響が相当あるのでございまして、これを以て生産を今後絶えず上昇傾向に置くことができるということは私は言えないのではないか。かように心配いたしておるのであります。それはなぜかと申しますと、皆どうしてこう向になつて生産を増したかと申しますと、これは企業の合理化といいますか、生産コストを引下げるために單位当りの生産費を下げよう。そのためには生産高を殖やすより外に手がない。だから生産をしたという止むに止まれん増産であつたのであります。それともう一つ私が心配しでおりますのは、滯貨が非常に殖えている。滯貨金融が今日のようにやかましく叫ばれておりまするのは、生産した品物が有効需要の面に廻つて参りませんで、滯貨になつておる。特に輸出物等につきましても非常な滯貨であります。幸いに綿製品だけはどんどん海外に捌けてはおりますが、綿製品以外の纖維製品は殆んどストックになつておりますし、それ以外の雑貨、機械類等は殆んど皆滯貨になつてしまつておる。生産は幾らか増したけれども、今日のような滯貨の増ということは未だ曾てなかつたという点も指摘されるのであります。  かように考えて参りますと、予算編成の基本になつておりますところの、この昭和二十五年度に対するところの政府の観測というものが、ディス・インフレの線であるという観測は、私は正にデフレの線に転落する危險が非常に大きいというふうに考えざるを得ないのであります。この実情の認識を根本に置きまして、而も尚且つ日本経済が自立しなければならない。そうしての自分の力で立つて行かなければならないという、ドック・ラインを生かそうということのために、どうしてもここに大きく財政政策の転換を必要とするのではあるまいか。かように考えます。日本経済の自立と申しますれば、私はアメリカのエイド資金の、対日援出資金の金額の推移からもはつきりこれが出ておるのでありまして、昭和二十二年が確か五億四千万ドル程度であります。昭和二十三年がこれが四億八千万ドルくらいに減りました。今度は三億二千万ドルといい、或いは二億三千万ドルも、アメリカの議会の模樣で尚且つこれは決定いたしませんでございますが、このように朝鮮を含むところの対日援助資金は段々減つております。この減るのは、私は非常に歓迎すべきことでありまして、例えて申しますれば、アメリカからガソリンをただ持つて来て我々が乞食のようにこれを頂戴しておつたということを変えましてペルシヤ湾の方へ原油を積み取りに行くペルシヤ湾の方から原油を積り取つて来ますれば、向うからもそれだけ物を買うから、向うも日本から物を買わなければならん。それからバーターの輸出入が起つて来る。原油を持つて来ますればグリスから最後はガソリンまでのいろいろな生産日本で起つて来るというふうに、エイド・ファンドが減りますれば、それだけ日本の産業がそれの倍程に活溌になります。ただアメリカから小麦を貰うのではない。シヤムなんかから米を買えば、シヤムは日本から綿製品を買う。そうすれば日本の綿業が振う。小麦もアメリカからだけでなく、オーストラリア、カナダからも入る、そうすれば小麦の加工業も動き、反対に輸出もでき、これにより経営合理化もできるというようなことで通商協定が結ばれる。この通商協定の下に、アメリカのエイド・フアンドの減つただけは日本の産業が動いて行くという方法で以て、我々は自立をして参らなければならない。これがドツジ・ラインの方向であろうと、私はこう考えておるのでありますが、併しながらこれで自立と申しますれば、どうしも竹の子経営ではいけない。個人の赤字、企業の赤字、財政の赤字という三つの赤字があつた。これが財政の赤字が一遍になくなるということは、これは結構なことでありまするが、本当を言いますると、これが逆になるのが建前ではあるまいか。個人の赤字、企業の赤字がなくなつて、然る後に国家の赤字がなくなるというのが本当ではあるまいかと、かように私は考えるのでありますが、産業としては只今申上げたようにドツジ・ラインが我々のどうしても実施しなければならない方向として示されておりまするし、それから又昭和二十四年度の財政予算の組み方から考えましても、どうしても合理化をいたさなければならない。これは個人にしても、企業にしましても、国家の財政にしましても同じことなんでありまして、この合理化方向へ昨年以来産業挙つて突進して参つたのであります。ところが合理化にもいろいろ種類がある。と申しまするとおかしいようでありまするが、私はそう考えておるのでありまして、先ず第一に、昭和二十四年度合理化は何であるかといいますると、人員の整理であります。過剩の人員を抱えて、そうしてその生活を保持するための賃金ばかり拂つておる。賃金と物価は悪循環をする。これを先ず断ち切らなければならない。生産に応じた賃金にする。生産にマッチしただけの人員に節減するというふうに合理化、第一に行われました合理化というものは、人員の整理、不合理な賃金の切替えというような合理化が行われて参つたのであります。併しながらこの合理化がこれ以上進めばどうなるかということは、すでに先程私の申上げましたように、雇用の面において昨年の九月以降は非常に失業が殖えておる。のみならず人員整理も相当行われ、このままで人員整理の合理化を進め、賃金の切下げをやつて行き、或いは賃金の遅拂い等がひどくなるということになりますれば、国民の購買力というものは殆んど零になつてしまう。国民が購買力をなくしたところに何の産業が立ち得るか。物を作つたが誰も買わんじやないか。この状況が、もう現在ありありと目の前に現われるというような状態なつた場合には、この際思い切つて合理化方向を転換して、違つた意味での合理化に切替えをすべき絶好の時期、絶好と申すのは甚だ言葉が悪いのですが、もう必至の時期になつておると私はかように考えるのであります。それではどういう合理化に進んで行けばいいかと申しますと、一言にして申しますれば、産業の資本蓄積による合理化なんでありまして、金を使いましてそうして機械を精鋭にする、機械を合理的な機械にする、新らしい機械に入れ換え、設備をよくするというふうな面に、産業の合理化というものをこの際切替えなかつたならば、産業の基本は崩れてしまう。今の時期を失したら、我々のような輸出の面において相当世界中と競争いたしまして、今まで負けたということを私共は考えておらなかつたような紡績業ですら、この際にうんと機械、建物に金をかけなければ、もうインドの紡績に負ける、アメリカの紡績には到底追いつけない。イギリスの紡績すら、曾て昭和十二年の頃は、イギリス何するものぞと思つて、我々はインド市場で堂々角逐したのでありますが、イギリスの紡績にすら追つつかなくなる。この際に余程企業の合理化を、人員の面から機械設備、その面に切替えまして合理化をやつて行かなければ、第一世界のマーケットから締め出されるということに相成つておるのでありまして、この意味での企業の合理化をどうしてもやらなければならん。そうすればここに初めて雇用が安定し、且つ徐々に雇用が増加して行き、人間もたんと雇うことができる。対外的競争力もここでついて来る。今まで竹の子経営で食い潰しながら経営しておつたのを、これで止めることができるというふうなことになるのでありまして、こういう合理化をどうしても今後はやつて行かなければならん。ところがこの合理化をするためには何が一番必要かと申しますと、お金であります。資金であります。資金がなければ、到底私の言う転換したる合理化はできない。然らば資金は、産業界としてどういう面から入るかと言いますと、三つしかございません。一つは御承知の株を発行する、或いは社債を発行するかいたしまして、ここで金を集める。これが一つのルートであります。もう一つのルートは銀行屋さんに行つて、金融機関から長期の金融を受ける。これが第二のルートであります。第三のルートは見返資金から金を貸りる。この三つのルートが我々産業に與えられております。このルートから資金を集めて、初めてこの合理化ができるのであります。ところがこの三つのものについてちよつと御説明申上げたいのでありますが、見返資金につきましては、今年は一千四百億というふうに、予算を拜見するとなつておるのでありますが、その中で公企業に四百億、私企業に四百億、残りの中から五百億を債務償還にする予定になつておるのでありますが、私企業に僅か四百億程度の見返資金では、而もその見返資金が造船とか、発電とか、車輛工業とかというふうないわばヘヴィ・インダストリーの方面だけに與えられておるというふうな状態では、到底産業界を潤おすわけには行かないのでありまして、又このヘヴィ・インダストリーは非常に廻転が遅うございますから、金額も僅かなものであると同時に、これが一般に廻つて来る速度が非常に遅い。  然らば株式はどうかといいますと、株は皆さんも御承知のように、非常に昨年から低落しておるのであります。低落するのは無理はないのでありまして、終戰以来、私共の目安の勘定では約千六百億程の増資の株式募集をして、それだけの金を株式市場から我我の産業界が吸い上げたのであります。これは明治御一新以来の金額を遥かに上廻るのでありまして、昨年一ヶ年だけの増資金額でも八百億に達しておる。戰争で以て打ちこわれてしまつた証券市場なり、それから食うに追われておるような国民の懐ろに向つてこれ程大きな重荷を背負いかけさせて、そうして株式市場がどうにか立つて行くというふうなことは、これは考えられないのであります。従つて株式の面からする資金のルートというものは、ここに当分望み得ないであろうというふうに考えておるのであります。株式保有会社の案が、今日の新聞等によりますと、なかなか難航を極めておるようでありますが、僅か十億や二十億のものを以て支えることのできるような株ではありません。先程申上げたように、昨年一ヶ年でも八百億の増資がなされておるのでありますから、少くとも二百億や三百億のものを以て株を支えまして、そうしてこれが五年くらいの間に順当に消化されるというまで待たなければ、到底株式市場は健全にならない。従つて我々は株から金を集めて企業の合理化資金に充てようということは、極く限られた惠まれた産業の一部のもの以外には不可能であるというふうな状態なのであります。  次に金融の面から言いますと、先程申しました六千七百億程度の銀行預金の殆んど八八%を貸金に出しておるというような状態でありまして、到底銀行の融資の余力はないというふうな状態になつております。こういうふうな資金のルートでありますと、見返資金がもう殆んど枠で決められた産業にしか向かないということになりますれば、我々は金融機関なり、或いは株式、証券市場なりから資金を集める以外に、資金を集める手はどこにもない。そのためにはどういうふうにすればいいかというと、ただ一つここに手がある。それは企業がペイするようにするということであります。ペイしない企業には、どんな銀行屋さんだつて貸して呉れません。ペイしない企業には、どんな株主だつて株を持つて呉れません。従つて企業がペイするようにして行くということが一番大事なのでありまして、ペイしなければ到底金融機関を、本予算にありますような千二百七十六億でしたかの債務償還、昨年は千五百七十一億でありましたが、これで以て銀行屋さんの持つております債券をすつかりお買上げになつて、そうして銀行の内容の資産構成というものを非常に健全にされましても、健全になつた銀行屋さんと雖も、必ず損をするという事業に金を貸すような、そんな銀行屋はありません。従つて私は債務償還というようなことは、この際一切お止めになることが必要であるという結論になるのであります。そうして債務償還をすつかり止めて、これをどういう方面に振り向けるかということが一番の問題になると思うのでありますが、或る論者は、これを以て直接投資に充てろというふうなことを申すのでありますが、これは私はドツジ氏の示されました日本経済の自立の案の、一つの私の推測する限りにおけるプリンシプルとしまして、財政の経済への関與を成るべく少くしようという思想が織込まれておる。又これは我々産業界としても、そうあるべきだと思うのでありまするが、その面からしましても、これは望ましくない方向でありまして、この債務償還を止めましたものは、引続いてこれを減税の面に振向けるべきではあるまいか、かように考えておるのであります。なぜ私がこういうふうなことを申すかと言いますると、次に申上げたいと思いまするが、一体税金がこの予算に書いてある程とれるかという問題であります。私は結論を先に申上げますと、到底とれないという結論なんであります。だから税が予算程とりにくい、無理をしてとればぶつこわしになる。ですから減税の方面にすべての力を向けて、そうして先程申しましたように、個人の赤字と企業の赤字をなくするとうことが一番大事なことではあるまいか。一体今の産業界で何が一番我々の頭を悩ます問題かと申しますると、先程の公述人のお話にもありましたが、税金が第一であります。その次に我々紡績屋としては、海外への売行きがどうであろうかということであります。又経営者の立場でもう一つ申しますれば、労働者の状態がどういうふうになつて行くであろうかという、この三点であります。ところが労働者諸君の問題は、これは最近労働組合も非常に自覚して、協力しておりまするので、これで事業が潰れるということは、私は絶対にないと思います。これは国内のあらゆる産業について見ましても、問題は起つておりまするが、労働問題で企業が潰れるということはあり得ない、かように思います。  それから次の営業の面でありまするが、この営業の面も、これは勉強さえすればできることなんであります。幾ら勉強してもできないものは税であります。法人税のとり方にしましても、それからその他地方税のとり方にしましても、現在のシャウプ勧告に示されておりますような税をとられたんでは、企業は到底立つて行けない。それから個人の生活も到底立つて行けません。個人の生活ということになりますと、私の記憶によりますれば、昭和の初年は、私、約三千人程使つておりました名古屋の工場に勤めておりましたが、三千人の従業員の中で職員が確か二十名程でありましようか、私は当時職工から始めたのでありますが、職工、今で言いますと工員階級で一体所得税を納めた人は一人もありません。職員のうちでも我々は何とか所得税が納められるようになりたいと思つても、なかなかそれ程月給が上げて貰えなかつたのでありますが、二十名おります職員のうちで、工場長以下幹部の十名程が所得税を納めて、後の人間は全然所得税などということは考えずに行けたのであります。然るに今や十六歳で初めて紡績工場へ入つたような、いたいけない女の子まで、すべてその日から所得税を負担しなければならんというふうな状態で、従つて個人の生活がいつまでも竹の子である。それから又法人税その他事業税、これは今度は附加価値税とか、或いは固定資産税に変るのでありますが、これらの税金をまともに負担できる事業が、一体今幾らあるだろうかということを率直に考えますれば、纖維の中でも紡績業はどうにかこれが負担できると思います。配当を余り多くいたさない限りにおいては……。その他は食品工業、それ以外には余りこの税金負担に堪えられる工業というものはそう多くございません。これは実情なんでありまして、この税負担を軽減するというこにいたしませんことには、企業は到底ペイし得ない。ペイしない企業は資金が手に入らない。資金が手に入らなければ今申しました資本蓄積によるところの企業合理化は到底行われないで、結局それが……、これは経営者の良心にもよりましようが、勢の赴くところは人員整理の合理化に堕して行つてしまう。そうすれば企業経営者は自分で自分の身を食つて産業を潰してしまうということになるかと思うのでありまして、どうしても減税以外には手がない。従いまして昨年の千五百七十一億円の債務償還というものは、これは私は非常に意味があつたと思うのであります。何しろ昭和二十四年は確かにあのドツジ・ラインの実施の最初の年でありましたし、当時は又消費インフレ影響が残つておりましたので、その残つておつた上に財政が経済へ関與する程度が、殆んど経済即財政と言つてもよろしい程に、財政の経済に対する関與の分野が多かつたのであります。だからこの際は財政を本当に引締めて、そうして債務償還もできるだけやる。そうしてインフレを一気に收束してしまうということがよろしかつたと思うのであります。又文字通り收束してしまつたのであります。ところが、今や産業の合理化方向転換しなければならんというのと同じ意味合におきまして、この債務償還等もこの際に大きく方向転換がなされて然るべきである。  アメリカ政府予算も、最近の……、まだはつきりこれは議会で決まりませんからどうなるか分りませんが、あれだけ見ますると、五十一億ドルの赤字財政であります。アメリカ予算の歴史の上から見ましても、積り積つて確か二千三百億ドルぐらいの赤字になるようでありまするが、昭和二十五年、要するに一九五〇年度のバゼットを見ますると、やはり五十一億ドル程の赤字になつております。あれ程の経済力もなく、資源もなく、そうして戰敗れた日本といたしまして、インフレが止つてデフレに落ち込むのを防ぐというのであれば、債務償還ぐらいはこの転換期にはつきりこれも転換して、零として、そうして減税に振向けて徐ろに気力を養うという点が一番大事ではないかと、かように考えまして、本予算を拜見して第一に私その点に思いをいたしたのであります。  第二の問題といたしましては、この予算の基礎になつております経済條件が、この頂載しました予算書の中に書いてあるのでありますが、物価水準、これは先程私申上げました。給與水準についてもちよつと申上げて置いたのでありますが、経済統制の整理、これは第三に謳つておりまするが、経済統制の整理というものも、今や実情は整理恐慌というふうな状態になつているのでありまして、一番はつきりいたしました例は、生糸の統制が止まるということで以て、銘仙上物の二千七百円あたりが、もう直ぐに一千円を割るというふうなところまで落ち込んでおります。それから綿布なんかにいたしましても、ひと頃の闇の値段と最近の闇の値段とは、もう半分或いは三分の一程度に下つているのであります。羊毛においても、スフ、人絹においても又然りであります。こういうふうに統制が段々と整理されるということは、一種の整理恐慌を惹起している。従つてこの国民所得の面から考えると、統制経済の整理ということは、我々是非やつて頂きたい。これは強行しなければならんと思いまするが、国民所得の上から言うと、これは国民所得を殖す、プラスの働きには決してなつていない。マイナスの働きになつていると言わざるを得ないのであります。  四に貿易が書いありまするが、この貿易につきましてやはり政府の見込は、やや楽観に過ぎるのではあるまいか、かように考えておるのであります。世界各国が非常なドル不足の今日、昨年の三月十七日ポンドの切下が行われまして以来、めぼしい輸出商品と言えば綿製品の限られております。その外の商品は殆んで輸出されておりません。今年に入りまして我々貿易業者も極力輸出に努力はしておりますが、各国共にインポート・ライセンスと申しますか、輸入許可証、輸入許可証で以て非常に制限をいたしておりまして、輸入許可証が下りない限り如何に引合いができても、これは契約にならないというふうな状態、それから尚イギリスのポンドの引下げ後英貨の一ポンドがアメリカのドルにして二ドル八十セントという程度であつたのでありますが、もう最近におきましては二ドル八十セントで通るポンドは余りございません。ポンドは現実のインド、パキスタン等において非常に低良に置かれておる。従つて我々はそこで競争できないのであります。のみならずこの通商協定を結びまして現在外国とそれぞれ日本が通商協定の枠のうちで商売をしなければならんのでありますが、本当に向うさんのお気にいる値段で出して行かれるのは綿布だけでありまして、その外の物は余り向うさんがお好みになりません。ところが日本は向うから原綿を買いましたり、或いは米を買つたり、いろいろの物を買わなければならん。ローガン方式は御承知のように先ず輸入しろ、輸入しておいてそれから輸出をしなければならんというのでありまするが、たとえ綿花を輸入いたしまして、インド、パキスタンから綿花を随分輸入いたしておりまするが、その代りに機関車を売る、電気機械を売る、紡績織機を売る、機械を売るということにいたしましても一ドル三百六十円、或いは一ポンド千八円、このレーションでは機械車や機械は到底向うへ出て行かれないというふうな状態でありまして、片貿易になれば通商協定は実行されない、従つて貿易は細らざるを得ないという状態に追込まれておるのであります。ただ一つ私の望みといたしますのは、現在アメリカの議会でいろいろ論議されておりますアメリカの極東政策というものが、どのような形でできるか。そしてアジアにおける後進地域開発計画、その他がはつきり決まりますれば、日本の工業力というものを或る程度……この計画が、丁度ヨーロッパ・マーシャル・プランに似たような計画が、若し実施されるといたしまれば、アジアにおけるこの計画の実施において日本の工業力を大いに活用されるかも知れないという点であります。これはどうせ実施されるにしましても、今年の七月以降、予算年度以降になるのではあるまいかというように考えます。日本昭和二十五年度の貿易というものについて、これ程勇敢に楽観する気に私はなれないのであります。かように考えて見ますると、国民所得の見積りというものが、この予算でありますと、確か六%程度殖えるようなことになつておると考えておりますが、到底これは不可能だろう。これはざつくばらんに申しまして現在の日本の景気と、去年の景気と比べて見て、国民の所得がどちらが多いか、これでやや腰溜めはつく。それから去年の会社の状態と今年の会社の状態と比べて見て、私自身の紡績会社の面から見て去年程はとても無理だ。これは明瞭であります。成る程国民所得の中でも法人の所得は多少減るように書いてありまするが、前年よりも相当大きく減ずる、減つた国民所得から果してこれだけの税金を取ることができるであろうか。これだけの歳入を予定し得るであろうかということは、これは言わずして明らかなんでありまして、この予算を見まして私は歳入の見積り過大であるということを心配せざるを得ない。従つてそれに応じたところの歳出の面の検討を必要とするのではあるまいかとかように考えるのであります。  それから次に、この税制でありまするが、税制については予算委員の方で御審議になるのか、或いは税法の方で別に御審議になるのか存じませんが、税の中で我々が一番関心を持つておりますのは、産業界といたしましては、一つが資産の再評価の問題につきまして、この再評価の差益に対して課税される。これは六%の課税になつておりますが、この再評価の差益について課税するということは、資産再評価というものは何であるかというと、資本蓄積を増進させるための再評価であります。ところがまだ再評価をして償却をします前に、差があるから、差益が出たからその差益を拂えというふうな税は、これは悪税中の悪税と言わなければならんと思うのであります。これなんかは資産再評価ということのプリンシプルに全く逆行いたしまするので、私は、併しながら社会公平の観念から全然これを止めろと申すのではないのでありまして、担税能力が出たときにお取りになつたらいいんじやないか。資産の再評価をやつて見て、そうして利益状態を見て、利益が出れば担税力があるんだ。それを見て初めて取れ、先ず裸にさして置いてから、それから走らすというのでなくして、走らせて置いて汗が出るから先ず上衣を取り給え、このやり方でなければ税制のこのプリンシプルに逆行するのじやあるまいかというふうな感じであります。  それからこの固定資産税につきまして、これは我々がいろいろ寄つて研究いたしておるのでありまするが、この東京都内の約二百ヶ所について実施調査を行いましたところが、繁華街の表地を別にして、通常宅地のみの平均が賃貸価格の六百倍見当であります。これは全国的に見て大体中庸を得た数字と思うのでありまするが、標準としてお決めになるところの、固定資産税の標準になるところの賃貸価格の何ぼというふうな決め方、これに余程の御考慮が望ましいと思うのであります。こういう実情でありまするから、第一年度における固定資産税の課税標準として土地及び家屋は賃貸価格の七百倍以下に止めるべきであるというふうに私共は考えておるのであります。勿論中には銀座とか、ああいうふうな所は千倍、二千倍になつておるところもあります。それから又地価が賃貸価格の二百倍に達していないというところも実はあるのでありまするが、事業用の建物について再評価の最高基準価格を算出すると、大体今の賃貸価格の五百倍見当になるという数字もはつきりいたしておるのでありまするので、税收の予定額もありましようが、賃貸価格の七百倍を起すというようなことは、到底堪えられないという点を御考慮置き願いたいと思うのであります。  それから第一年度における減価償却資産の評価、これは再評価の最高基準から陳腐化によるところの減価を差引いたものによることを原則としまして、実際にはできるだけ簡單にして不公平の少い基準を使うという意味で、企業が現実に行うところの再評価額を、そのまま課税標準とする方針でやつて行くのが正しいのではあるまいかと、かように考えるのであります。勿論これには弊害も多少伴うことは覚悟しなければなりません。若し課税標準を今申上げた、これよりも高くする場合には、標準税率が今確か一・七五のシャウプ案でありますが、これを引下げて、負担の過重を来たさないようにされたいと思うのであります。電気事業とか、鉄道、軌道等に電柱税とか、軌道税もありますが、これはどれか一つぐらいは止めませんと、とても電鉄は立つて行けない、かように考えるのであります。  それから税制につきまして、附加価値税の問題がありますが、これは全く論文だけありまして、世界には未だ曾て前例のない税金でありますので、これができますれば……、結論を申上げますと、実施を少くとも一年は持つて頂きたい。そうしてもう少し十分に検討をすることにして頂きたいと思うのであります。附加価値税を取られまして、どうにか附加価値税が納められる事業は何かと言いますと、これは率直に申上げまして、紡績会社の中で相当いい利益を出しておる所は、何とか負担して行けます。それからビール会社とかいうふうな事業、製粉会社の優秀なものというふうな所は行けるでしよう。それから製油会社のいい会社は行けるでしようが、余りそれ程思わしく利益の上らない会社は、この附加価値税を取られますると、全くこの企業の食いつぶしが一層大きくなるということになるのであります。かような国民所得並びに税制の面から見まして、減税の方に振り向ける金額……又歳入見込に対して引当てるべき金額が相当多くなるのでありまするので、債務償還は全然止めるという程度の御配慮が望ましいのであります。  尚第四に私の希望としまして、これは附帶決議でも何でも結構でありまするので、一つお考え願いたいと思いまするのは、現在行われておりますこの見返資金は、一体どういうふうになるのか、見返資金の運用について、その確たる方針を、国として決めて置かなければならないという点であります。御承知のように見返資金と申しますのは、アメリカから日本に援助の物資が入ります。その物資を日本の民間に拂下げて作つた金であります。そうして昨年の秋に日本窒素へ数億出されたのを皮切りにしまして、指定された産業に出されておるのでありますが、貸し放しではないので、これは必ず返します。返つた金を今度はどういうふうに使うのかということが……、年々相当大きな金額が公企業行びに私企業に出るのであります。而もその出る金は、はつきり言いますと、国民の租税負担において出ておるとさえ言える。租税とはつきり違うことは違いますけれども、アメリカ日本に対する援助の物資を持つて来た。その物資を日本人が、その多くは食糧でありますが、買つた。その金を見返資金として特定の産業、或いは特定の公企業に出した。その金の始末がどうなつた。又この金を今後どういうふうに運用して行く、これの利息等につきましても、運用につきましても、これだけ大きくまとまつた金が、今後日本経済の、産業開発の面に有効に使うということでなければ、とんでもないことになるのでありまして、ただ見返資金を借りる借りるということばかり、又見返資金をあつちへやれ、こつちへやれという議論ばかりあるのでありますが、我々はむしろ日本経済の上にこの見返資金が将来どうなるだろうか。いわば見返資金経済学と申しますか、この点について参議院の一つ御配慮、これは附帶決議でも結構と思うのでありますが、私は国会が大いにこれについての御配慮を望ましいと思うのであります。  それとこれは甚だ私個人的な関係がありまするので、思いついていつも考えておることでありますが、政府関係機関のこの表で見まして、日本專売公社の経理運営に関して私が気がついておることについて、ちよつとお聽取を願いたい。これも附帶決議でも何でも結構でありますが、御注意を願いたいと思いますことは、專売公社が設立されます時、私は專売公社審議会の委員を仰付かりまして、甚だ不肖とは思いましたけれどもお引受けして、毎月專売公社の総裁室でいろいろ事業運営のお話を承つて、実はびつくりいたしたのであります。どの点に一番びつくりしたかと申しますと、一体專売公社というものを立てて、わざわざ大蔵省の所管から引離して、そうして民間の実業家を総裁に持つて来て、名前まで変えまして公社を設立したというゆえんは、どこにあるかと言いますと、政府の官僚経営ではこの営業は軌道へ乘つた経営ができない。独立採算ができない。ドツジ・ラインによりますと、政府のやつておる事業の中の收支のはつきり立つて、営業のラインに乘つけて、競争主義でやつたらよろしいというのは、独立採算で行かしたかよろしいという趣旨で、切り離されたのだろうと思うのであります。專売公社の経理の説明を聞くたびに不思議に堪えませんのは、すべてが、政府予算のやり方が余り徹底的に專売公社の中に及んでおることなんであります。我々事業経営の者の面から言いますれば、仮に一つの煙草工場の月の経費が八百万円掛る。そうして仮にそこから一億本の煙草を作る。同じ経費で以て一億一千万本煙草を作ればこれはどうなるか。動力費、材料費を差引きまして、そうしてここに働いておる従業員への給與、それからそこの工場の資産の償却、機械の改良というようなものは、これは国の予算と違つて、そこの專売公社の総裁の配慮で、これが自由に使えるというふうな仕組に直さなければ、到底この工場はよくなつて行かない。又従業員の勤労意慾も増さない。予算支出と同じ面で縛つて置くから、創意工夫がやりたくもできないでおるのではあるまいか。かように考える場合がしばしばなんであります。のみならず、或る工場で自転車の置場を作つて、完成しないで放つたらかしてあつたのであります。何故完成しないかというと、予算がもうないからと言うのであります。我々民間業者でありましたら、僅か百万や二百万のものならば銀行から借りて、そうして風雨で壞されないように早く修復しまして、そうしてその借金をあとから返せばいいのであります。これが專売公社が独立採算制になりながら、全然今までの大蔵省の予算経理と同じようなことをやつておりますから、このような恐るべき無駄が随所に行われておるという事実であります。こういうことは私は政府関係機関のこの表でいろいろ見る事業につきましてもつと克明に検討し、そうしてできれば請負制度でもよろしいじやないか。この事業から一般会計への繰入なり何なり、あれは千二百億まで今度專売公社は国へ納めることになつておりまするが、千二百億を納める。そうすれば後は任すからいいようにやり給えというくらいの請負制度でもいいじやないかと考えるのであります。これがすつかり予算で縛られておりますので、特に固定資産の運営等については民間の我々が会社の経理につきまして、機械、建物の固定資産をどういうふうに修理して行けば、どういうふうに保全して行けば十五年持つものが、二十五年持つかというようなことも、ついおざなりになつて参ります。又固定資産そのものの取扱い方から、それから儲かる年と儲からない年によつて固定資産をどういうふうに新設、廃棄するというような配慮が一向になされておらない。まるで事業経営の軌道に乘つておらん、乘せようとすると必ず予算の面でぶつかつてしまう。総裁以下髀肉の歎に堪えない状態になつておるのでありまして、この点は折角政府機関とは言いながら独立採算制をとられた、こういうふうなものに転換したのでありまするからして、私はこの際に清新溌剌たる気を持つて運営できるように配慮して、特に国会として御考慮が望ましいと思うのであります。思いつきのことをでたらめに申上げて恐縮でありますが、私の意見は以上でございます。
  72. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) どなたか御質問ございませんか。
  73. 小川友三

    ○小川友三君 ちよつと一つ企業の赤字と個人の赤字という場合で、特に企業の赤字という面で、どのくらい減税をしたら企業の赤字が埋められるかということを一つ……
  74. 櫻田武

    公述人(櫻田武君) これを拜見しますと法人税が六百億程度でありますが、法人税は私共の考えでは一挙に減らすということもできないと思いますので、シャウプ勧告案で大体よろしいのではあるまいかと、かように考えております。ただ一番困りますのは地方税に委讓されますところの附加価値税と固定資産税であります。これは事業によりましては、附加価値税が今までの事業税に見返るものであります。これの八倍乃至十倍になつて事業が出て参ります。特に電鉄等はそうであります。十倍以上になると思うのであります。これは非常に不当であります。この点は確か事業税の三倍徴收というところを、シャウプ氏が見込んであの税率をお決めになつた筈であります。あの附加価値税を現在通り取つてみれば、はつきりこれを上廻り、五倍程度になるような計算になつております。この附加価値税をできれば一年延ばして頂きたい、かように思うのであります。それと固定資産税につきましても只今申上げましたように、賃金価格の七百倍程度以下にして頂きますれば、大体において企業税金で命が絶えるということから救われるではないか、それとこれは私は差障りがあるかと思いますが、地方税というものに余りに多くの委讓を一遍にするということは地方の徴税者の素質、調査能力という点から見て一挙には無理であります。あの方針は地方団体の自治という点で結構と思いますが、今まで委されて来ておりましたのに……国税を取る金額なり何なりの面が広まり、人員とその仕事とのバランスがとれておりません。況んや地方においてはひどいのでございます。従つて地方税に余り多くの委讓をされるということは、徐々に移して頂きたい。これは業界挙つての要望なんでございます。
  75. 小川友三

    ○小川友三君 もう一点ちよつと、大体日清紡の社長さんは産業資金問題にちよつとからんでお話があつたのでありますが、産業資金は株式、社債、或いは長期資金、見返資金と、この三つに分けて、今の資産再評価問題を大きく取上げております中で、お宅の会社は一流の会社でありますから、金融はどこでもつくと思いますが、大体金融がつかないで困つておる会社が沢山ございます。中小以下の会社では資産再評価をしまして、再評価の差額だけは社債発行ができるというなら、それで金融面が非常に楽になると思うのであります。楽になつたということは年内に税金を拂えばいいのでありますから、そうすると今あなたのおつしやいます裸で駈けて行くというので以つて企業が廻つて行く。そうして温かになつてシャツを脱ぐという程度に儲けると思うのでありますが、その点如何でございましようか。
  76. 櫻田武

    公述人(櫻田武君) この社債を資産再評価をいたしまして、そうして再評価差益税の六%の中の半分、三%を第一年度に取ることになつておるのでありますね、これは私は三、二、一と取るのを一、二、三として何故お取りにならなかつたかと、こういう感じがするのであります。
  77. 小川友三

    ○小川友三君 実は三%拂いましても、あなたは金融の大家でいらつしやいますから、三%を銀行から借りて来られるのでありますが、実際はほんのぽつちり利息を日歩二銭八厘ばかりと私は思つておりますが、如何でございましようか。
  78. 櫻田武

    公述人(櫻田武君) 会社を誉めて頂いて恐縮ですが、手前の方はどうにかするつもりでありますけれども、銀行がもう貸出を危ながつてしない企業が非常に多いのであります。纖維の面の方は、これは紡績会社といいましても今三十五社ございまして、十社は大体銀行が默つて貸して呉れると思いまするが、残りの二十五社は一万から三万錘程度戰後新設した会社でございます。その他個人企業の機屋さん、ここらになると到底金融して呉れんのであります。この点が非常に私は問題になる面だと思うのであります。それともう一つは機械工業、化学工業の工場が非常に辛うございまして、そこらが非常に辛かろうと思うのであります。
  79. 小川友三

    ○小川友三君 よく分りました。
  80. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) それでは玉塚証券株式会社常務取締役関口啓太郎君にお願いいたします。
  81. 関口啓太郎

    公述人(関口啓太郎君) 財政と金融と産業というものは、非常に密接な関連があるのでありますが、インフレ時代におきましては財政というものが、金融及び産業というものをむしろコントロールしておつたというふうに私は考えておりますが、昨年以来の均衡予算、これを前提にして考えますと、これからの日本経済というものは、むしろ金融というものに支配権が置かれて来たのじやないかというように考えるのであります。特に今年度債務償還は先程もお話がございましたように、一千二百七十六億円という大きな金額になつております。この債務償還の一千二百七十六億円というもの、これは一に金融機関がそのまま金庫の中にしまつて置こうと思えばしまつて置けばいい。又これを出そうと思えば出せるという非常に大きな力を金融機関に與えておるものであります。私はそういう点からいたしまして、予算全体の問題と合せて、金融機関に御償還になるこのお金の使い方というものについて、心をいたして頂きたいというふうに考えるのであります。私の申上げたい結論はその辺にございますので、先ず結論だけを申上げまして、そうして私の考えを簡單に申上げたいと考えるのであります。我が国の国民所得というものは、昭和二十五年度におきましては、三兆二千五百二十億円というように発表されておりますが、ところが一般会計の歳入、これは六千六百十四億円、これに国民の購買力として吸收されまする見返資金特別会計の歳入一千五百八十一億円を合せましたものは、合計で八千百九十五億円ということになります。これは国民所得の二割五分に当るのであります。又財政法によつて債務償還されるものは千二百七十六億円でございますから、これは先程申しました歳入と見返資金を合せた合計の一割六分に当るのであります。国民経済におきまして、財政の占める位置の重いことは申上げるまでもないのでありますが、それにも増して、二十五年度予算におきましては、債務償還国民経済に及ぼす影響、これは非常に大きい。この点を先ず第一に頭に置いて頂きたいと思うのであります。  次に政府資金の民間撒布状況を見ますと、例えば昨年の三月というものは引上げ超過が四百九十五億円にも達しておりましたが、十二月には逆に撒布超過が八百八十二億円というような工合でありまして、昨年十月に至る一ヶ年間の全国の銀行、これの預金とか、貸出しの実績を見ますと、その間におきまして、大体月平均いたしまして、二百三十億円くらいずつ増加しておつた。こういうような数字と睨合せますと、一ヶ月の撒布超過が八百八十億になつたり、又或るときは五百億近くにもなる。こういうようなことは政府資金の金の出し方というものが、金融、延いては日本経済に非常に大きな影響力を持つておる。この金の出し方につきまして、予算全体としてよりも、金の出し方というようなものに細かい注意を拂つて頂きませんと、あらつぽいインフレ時代でございますればよろしうございますが、漸次安定経済の時代に入るときに、そういうような細かいところに気を使つて頂くということが、非常に必要な点ではないかと私は考えておるのであります。又二十五年度は預金部資金で五百五十億円程度の増加というように予定されております。又厚生保險特別会計で百三億、簡易生命保險及び郵便年金で二百九十七億円という大きな歳入超過というものが予想されておるのでありまして、こういう政府関係の金融機関のお金の出入りということが、又全体の金融機関のお金の出入りと共に、非常に大きな波を作るということを併せて申上げて置きたいと思います。又この見返資金の特別会計受拂い状況を見ましても、昨年の七月から始まつておりますが、七月には三十億円、十月は二百七億円というような受入れ超過でありまして、十二月は百八十七億の拂出し超過というような工合でございまして、これ又金融全体のリズムを場合によつては非常に撹乱する。こういうようなことを附加えて置きたいと思うのであります。  その次に申上げたい点は、昭和二十四年度におきましては、財政法によりまして復金債の千九十一億円の償還、それから国債の七百五十億円の償還その他で、合計二千百九十六億円の債務償還となつておるのであります。二十五年度は、一般会計で七百二十三億円、見返資金で五百億円という国債を償還する予算になつておりますが、合せて千二百七十六億円の債務償還、これは先程申上げた通りでありますが、ところが二十四年末の国債残額というものを見ますと、二千八百八十二億円ということになつております。その内訳は、市中金融機関の手持ちが九百二十五億円で、コール担保になつておるものが百三十九億円、合せて千六十四億円というのが、市中金融機関の手持ちであります。日本銀行の手持ちが千七億円、政府手持ちは預金部の五百二十億円を合せまして六百三十七億円、その外の一般手持ちが百七十四億円という数字になつておると記憶しております。ところが主として国債償還になります債務償還の千二百七十六億円というものは、右の今申上げました国債の中のどれに対して充当せられるのかということは別といたしましても、預金部手持ちの国債が償還せられるということになりますと、忽ち預金部がその金をどうするかということが非常に重大な問題になつて来るのであります。国債の期限償還によつて徴税の影響力を相殺しよう、又預金部資金を市中金融機関に対する政府指定預金に差し替えまして、そうして金融の調整をやろうというようないろいろ御構想もございますが、これはもつと全般的に財政と金融、全体の金の問題として、大きく御研究を願いたいというふうに思うのであります。いずれにいたしましても国債の償還というものは、それだけ預金部なり市中金融機関の金融支配力というものを大きく増大するものでございまして、日本銀行でも市中銀行でも、とにかく償還金をどう使うかということは、全く自由意思のままに任せられておると申上げても過言ではないと私は思うのであります。先程申上げました金融というものが、この安定経済、この均衡財政におきまして目に見えない大きな支配権を握つたという点を、ここで又繰返して申上げて置きたいと思うのであります。ところが債務償還になります千二百七十六億円の財源というものは、一体どこから出るかということも私検討して見たいと思うのであります。先ず一般会計の歳入六千六百十四億円、これの中で主たるものは租税及び印紙收入の四千四百四十六億円でございますが、この中から法人税或いは再評価税、富裕税、相続税、それに所得税の申告納税分の三割くらいを合計いたしますと、千九十七億円という数字が出るのであります。その他のものは、私は大ざつぱな見当でありますが、これを大衆課税だというふうに考えております。この大衆課税が三千三百四十九億円という計算になるのでありまして、全体の一般会計の歳入の七五%を占めるというように、私は算盤を置いております。それに官業益金の千二百十六億円、それから見返資金の千五百八十一億円が国民大衆から吸收されるお金でということで、合計いたしますと、すべてで六千百四十億円という金が大衆より吸收される。その中からどういう方面にお金が拂われるかということを考えて置く必要があるのであります。私はそういうような大ざつぱな計算からいたしまして、債務償還の財源は先ず大衆に財源を持つておるということが言えるのじやないかと思うのであります。ところがこの債務償還が金融機関の思うままに使える現金になる。そうして国民経済にデフレーション現象が山積いたしまして非常に困つておる。こういう際でもございますので、この使い方については予算の中で、詳しく款項目で御審議なさるそれ以上の御注意を以て、どういう方面に使うか、こういう御研究して頂きたいというふうに考えておるのであります。原則といたしまして、現在のようなデフレ現象が将棋倒しに波及しようとしておるこの現在におきまして、このような巨額の債務償還を、而も大衆の負担において断行するということ、而も二十四年度に引続き二年越しで行い、而もインフレが見事に玉砕されたこの現在において、尚引続いてこれを断行するということは、それが国民の生活、延いては企業の徹底的な合理化を行うという最高目標であるといたしましても、非常に危險である、危險な問題をはらんでおるんじやないかと、私は考えております。併しながら問題は、繰返して申しますが、債務償還の金額の大小だけの問題ではないのでありまして、この債務償還をされまして金融機関の手許に戻つて来るこの現金、これが一体どこへ行くのかということによつて、その影響は全く違つた形になつて来るのじやないかと私は思うのであります。過去の実例通りでございますれば、金融機関は、それが国民経済全体の立場から物事を判断すべき存在であるというふうに私は考えておりますが、金融機関の利害関係によりまして、行動が完全に支配されておるということも、私は或る程度言えるのじやないかというふうに考えております。現在金融機関は手許が非常に逼迫しておりまして、とにかく銀行と運命を共にしようというような、深みに入つておるような大企業に対しては、限りなき融資をしておる。又日本銀行からの借入金はできるだけこれを返す。こういうふうな方針をとつております。それに又貸付金と預金との鞘が非常に接近しておりますので、支拂準備金というものが非常に不足しておる。そういう点からいたしまして、何とかしてこの機会に預金の支拂準備金を積み上げて置こうというような努力をしておる。そのために大企業が発行いたします社債なんかには相当思い切つて応募する。こういうような形になつておるのであります。その結果といたしまして中小企業には融資をする余地がない。又中小企業は成る程安全性において欠けておるというようなこともまあ言えるでありましよう。併しながら私の一つの考えといたしましては、それは株式担保などの確実な担保金融をすれず、それは銀行にとつては非常に安全な投資になる。併しながらその場合におきましても、余裕金がございますればこれをできるだけ非常に関係の深い事業会社なんかに借す。一つの例を申しますと、一千万円貸して五百万円預金さして置きますと、預金の利子は只同様でありますから、実際の運用利廻りは二銭八厘で貸しましても、倍の五銭六厘になるというようなことがあるのでありまして、株式担保の金融のように大衆に資金を還元するようなことはできるだけ……、算盤の上からも不利だというような結果になつておるのであります。でありますから或いは言葉が過ぎるかも知れませんが、要するに現在の金融機関のやつておる業務の状態を見ますと、大衆の犠牲において大企業が危機を内包しながら壽命を長らえて行く。こういうような結果をもたらしておる、というふうにも申上げ得るのじやないかと思います。技術がいいとか、製品の質がいいとかいうことよりも、ただ大企業であるということで銀行からの援助が厚い。又そういうような結果、いたずらにただ漫然と企業集中の傾向を促進しておる。こういうような結果が私は現れるのじやないかというふうに考えておるのであります。それから証券民主化の問題について少し申上げて見たいと思うのでありますが、証券民主化運動の波に踊りまして、過去一両年のインフレ・ブームで株式投資をした大衆というものは、ドッヂ・ラインの影響を真正面に受けて多大の犠牲を拂つておることは申上げるまでもないところであります。私は日本経済の昨今のデフレ現象というものは、インフレの後に来るべきデフレというものを暗示するというようには私は考えておらないのであります。インフレ撲滅から経済安定期に至るまでの過渡期の一つの現象だというふうに確信したいと思つております。こういうような前提に立つて考えますと、現在の株価というものは、デフレ恐慌までも思い過している。行き過ぎた状態だというふうに一応は言えると思うのであります。私は債務償還の先程繰返し申しました資金というものは、金融機関の先程からのような営業方針というものが、止むを得ないという事情であるのでございますれば、いろいろ又別途に考えるべき問題が沢山あると思いますが、できるだけこの際は証券民主化運動で株式を買つた大衆投資家というようなものが、債務償還で金融機関の懷ろに戻りましたこのお金で、融資が受けられるというような、こういう形に持つて行くことが必要ではないかというように思うのであります。戰後の株式拂込金の推移を見ますと、昭和二十年は戰争の済んだ年でありまして、僅か五億であります。二十一年は二十四億、この辺からぼつぼつ株式の拂込みが始まりまして、二十二年には百三億、それが株式ブームの始まりました二十三年には四百三十八億円、昨年には八百二十二億円というふうに拂込金が激増したのであります。この中設備資金に充当せられたものは、先ず二割二分、運転資金に振向けられたものが新割六分、その残りの五割二分というものは金融機関から借りておりましたこの借入金を返済するために、増資されたというような結果が出ておるのであります。金融機関は勿論その後も引き続きまして巨額の貸付金をやつておりますけれども、とにかくこの七百億円以上の資金を、今まで貸しておつた資金を、株式市場を通しまして大衆の懷ろから吸收した。こういう結果になつておるのであります。ところがこのインフレ・ブームの間に、大衆はなぜこの株式を買つたか、これはいろいろ考え方もございますが、要するに株式というものは社債なんかと違いまして、償還期限というものがないのであります。一旦拂い込めばもう一生返して呉れないお金なんです。こういう永久投資になるようなこの株式をなぜ買うのか。余程あり余つた、長期に遊休するお金でもあればともかく、このインフレ時代に生活資金にも困るような時代に、先程申しましたように昨年度のごとき八百億以上の増資が行われた。これは一体何だと申しますと、要するにそういう永久投資の株式でございましても、売ろうと思えば直ぐ売れる。つまり市場性というものがございましたので、永久投資が現金同様な形に変つて、その市場性という魔術によつて、このインフレ・ブームの時代に株式が大量に、大衆に消化せられたのであります。でございますからこの株式を買つたお金というものは、大衆の生活資金、そういうように私は心得ておるのであります。ところがインフレは引続き進行いたしまして、インフレ通貨が続々と現われて参りました。株式市場から、一つ株を売つて金を引上げようという人もございます。差引きいたしますと、株を買おうという人の方が多いわけです。株式市場には絶えずこのインフレ通貨が流入するのであります。この差引き流入する、これがこの株式を大量に消化した原動力になつておるのではないかというふうに私は考える。でありますから、戰後最近に至る株式市場というものは、これはインフレ通貨が引続き市場に流入する。こういう前提でのみ機能を発揮し得る。例えばバラック建築であるというふうに私は思うのであります。経済が安定期に入りまして、市場から金が出るときもある。又市場に金が入るときもある。こういうようなノーマルな脈搏を打つようになりますと、現在の株式市場の機構では直ぐこれが行詰つてしまう。こういうような状態にあると私は考えておるのであります。そこで最近に至りまして、いよいよインフレ通貨がむしろ引上げられる。こういう状態になつて参りますと、大衆はいつでも売れる。いつでも売れるということは、いつでもより高く買う人がおるということで、いつでもより高く買う人がいるということは、インフレ通貨が限りなく流入するという前提の上に立つているのであります。その前提がドツジ・ラインによつて壞れて行く。そういたしますと、今度は売る人ばかりということになつて来る。昨今現われておる株価の非常な暴落というものは、これは要するに株式市場の本質である永久投資を、短期の現金同様にすり替えるというこの市場性の魔術の種がはげちやつた。こういうところに私は大きな原因があるのではないかというふうに考えておるのでありますが、そういう観点からいたしますと、証券金融というものは、今まで大衆は本来ならば買えなかつたような株式を、いつでも金になるという前提で短期資金で買つた。それがインフレが止まつて、短期資金が或る程度回收されるときになりますと、七百億円も金融機関は大衆の懷中から株式市場を通して焦げつきの貸付を回收している。又日本経済全体といたしましても、SILからは百二、三十億円の株を大衆に売つておる、大衆から彼れこれ千数百億の、そういう株式を売つて長期の資金を調達しておるのであります。その千数百億の短期資金を以て取敢えず長期資金が調達されて来た。それがいよいよ安定状態になつて、そのうちの二割や三割、三百億や四百億のお金が入つても、これは僕は安定経済に入つた結果当然起るべき筋道ではないかというふうに考えております。この際証券金融はそういう意味において、非常に大きくお考えになるという必要があるのではないかというふうに思うのであります。この市場性というものは、いつでも売れるという安心感ができますと、いよいよ明日お金が要るというときまで誰も株を売らないかも知れない……。そうでないと来月、或いは再来月必要なお金でも、今のうちに売れるとき売つて置くということになるのであります。この株式市場というものを通して長期資金を吸收するという前提である以上、市場性というものを育成する、この市場性を育成するためには、この金融恐慌のときに……、銀行が実際お金はなくても、窓口に百円札を沢山積んで置けば誰も取付けに来ないのと同じわけですが……、大衆がもうこの株は金にならない、こういう不安を抱かないような措置さえ講じて頂けば、そういう面におきまして、株式市場を通じて長期資金を吸收する方法は、幾らでもあるのじやないかというふうに実は考えておるのであります。  その他いろいろ申上げたい点もありますが、そういうような株式市場の状態でありましたので、株式市場とういものは金融と繋がつて動いておるということが言えるのであります。むしろ株式市場を通じて金融界にお金を供給しておる。こういう状態で最近まで株式市場が動いておつたということが言えると思うのであります。ところがそういうわけでございまして、株式市場につきましては金融との結びつきは非常に薄く、例えば融資準則におきましても昨年の夏までは証券金融は丙ということであつたのであります。いよいよ株過剩の傾向が現われると急遽乙になる、年末に大暴落が起りまして又これが甲になるというように修正はいたされましたけれども、すでに反動が出て参りましてからのことでございますし、証券業者の資本金も全国業者を合計いたしまして、三十億円というふうな程度の非常に小さな資金を持つておるのみであります。金融との結びつきは直ぐにつくというわけには参りません。又株式担保の金融につきましても、株過剩がいよいよ顯著になりました秋の初め頃までは殆んどこれができなかつた。ところがいよいよ増資新株を拂込ませる必要があるというので、新らしく株を買取つた人、又増資新株を拂込む人、こういう人には銀行でお金を貸す、こういうように規則をお決めになつたのでありますけれども、先程も申しましたように現実において銀行は余程何か外に関係のある人でなければ貸さないということで最近に至つております。そういう状態でございまして、大衆といたしましては、永久投資の株式はいつでも売れるというつもりで買つたのが駄目になり、例えば二階に上げられて梯子を取られたという恪好になつているというふうに思われるのであります。この点におきましても話は元へ戻りますが、今後財政関係債務償還をするわけでありますが、この債務償還の相当部分を証券金融という形で以て、大衆に還元するというようなことと同時に、この証券金融につきまして市場の機能を回復して、そうして長期資金を今後又吸收する。このいうような方策を御考慮願いたいというように思うのであります。最近伺つた話によると興業銀行、勧業銀行又拓殖銀行及びその他の銀行におきましては見返資金から、増資新株を見返資金で引受けて貰つて、そうしてその上に四百億円ぐらいの債券を発行するというようなことを伺つております。預金部の保有国債の買入償還が巨額に予定されるのでありますから、地方債の新規発行三百億円と、この銀行債券の四百億円を加えました七百億円というものは、その大部分が預金部で消化されるのじやないかということを私は想像しておるのであります。極めて結構なこととは思いますけれども、この地方債なり銀行債券なりの、その売上げの手取金というものは、これ又果してどういう方面に運用されるかということは、私は非常に大きな問題だというふうに考えております。見返資金特別会計におきましては先程もお話がありましたが、公企業四百億、私企業四百億、経済再建二百八十一億、債務償還五百億、合計千五百八十一億円の運用方針を承つておりますが、私企業及び経済再建に割当てられておるこの六百八十一億円が果してどういう行方を迫るか、直接投資によつて有効需要を喚起する又輸出を振興するというなら結構でありますが、投資という以上はどうしてもこれはビジネス・ベーシス、採算が合う、又投資が安全である、こういうことでなければ私は見返資金が簡單に出るものじやないという一般原則があるというふうに考えるのであります。でありますから昨年度と同じようにビジネス・ベーシスに乘つけたものでございませんので、昨年と同じように見返資金の出るべきものが出ないというふうに、時期を失するようなことが多々あるのではないかというふうに私は惧れてあるのであります。でありますから経済が常態に復して来るということになりますと、金融は原則として担保金融制度というもの、これは正常な経済における金融の原則だというふうに私は考えているのであります。そういう考え方からいたしますと、例えば証券金融の財源もなかなか金融機関としてはないということでございまして、ひと頃は日本銀行はそれを又担保に取るというようなことを御考慮つておつたようでありますが、これ又中央銀行の一般原則からいたしまして、中央銀行は原則としてそういうことはやらない方がいいというような空気も一部にあるやに承つているのであります。それでございますれば、これは私の私案でございますが、むしろ見返資金の特別会計の中に、例えば証券部というようなものを作りまして、そうしてその証券部勘定に二百億円なら二百億円というものをイヤマークする。このイヤマークしたお金をハンドルいたします。そうして金融機関を相手にした証券担保をやる。例えば日歩二銭七厘にし、その期限は六十日、六十日過ぎればとにかく売つてしまう。そうして掛金は六掛けということにいたしますと、銀行は二銭八厘で七掛けくらいで株式担保で金を貸すといたしますと、資金が必要なときは見返資金の証券部に持つて行く。頭金の二掛けだけ持つて行きますと、二銭八厘と二銭七厘の鞘が出る。そうしてここにビジネス・ベーシスに乘つたお金をビジネス・ベーシスの上に活溌に運用することができるのじやないか、というようなことも私一案として考えているのであります。  要するに私の申上げたい点は、先程から繰返し同じことを申上げましたが、財政と金融というものが非常に密接な関係にあるということは、これは万古不易の原則であります。併しながらインフレ時代にはインフレ財政、こ財政が経済の主導力を握る。ところのが安定経済の時代になりますと、財政は一応均衡財政、そういたしますとむしろ金融というものが経済の主導力を握つて来る。特に昨年度年度と財政の方から千数百億円の債務償還があつた。そうして金融の支配力は驚くべき増大をする。この点におきまして私は金融の、今後の金の流れ方というものを予算の面からどういうふうにお考えになるか、この点に思いをいたして頂きたいというふうに考えるのであります。  時間が少し超過いたしましたが、最後に一言だけ附加えて申上げたい点があるのであります。今申上げましたように、債務償還というものによつて金融の支配力が非常に大きくなつているということに加えて、見返資金の支配力というものが、これ又非常に大きいということは申上げるまでもないのであります。ただ一つ考え方として申上げて置きますと、仮に日本国民所得が一ヶ年三兆といたしますと、この三兆に対して通貨が三千億ございます。通貨の流通速度は十回転、こういうことになります。ところが三兆の年生産がございます。この裏をひつくり返しますと三兆の国民所得がある。ところが援助物資によりまして千五百億円の品物が日本の港に入つて来るといたしますと、年三産の三兆プラス千五百億円、つまりサプライの方は三兆千五百億円になる。ところがそれに対してこちらの購買力というものは三千億円、これは通貨の回転速度は十回転でありますから通貨が三千億円、そうして国民所得が三兆、こういうことになります。ところが見返資金によりまして千五百億円の、例えば三分の一の通貨が吸收され五百億円だけ棚上げになるということになりますと、三千億マイナス五百億、つまり二千五百億円しか残らない。そういたしますとこの五百億円をずつと棚上げしてしまいますと、通貨が二千五百億円、そうして一方その通貨が媒介すべき取引の対象は三兆プラス一千五百億になるのであります。通貨の回転速度が相当程度増加いたしませんと金融面にぎごちない動きが出る。先程も櫻田さんのお話がありましたが、曾ての日本の場合は兌換券が十億、そうして銀行預金が二百億あつたのであります。現在は通貨の倍程しか預金がない。こういう状態でありまして、預金通貨というものの力というものが非常に小さい。そういたしますと、通貨の流通速度の彈力性というものは、これは又非常に幅が限られているのであります。でありますから、見返資金で五百億なら五百億というものが常時日銀の特殊別段預金に入つておるということは、この五百億円という通貨を握ることによりまして、この計画デフレを緩めたり縮めたりする非常に大きな魔力がそこに潜んでいるというふうに私は考えているのであります。でありますから見返資金の今後の放出の場合におきましても、そういう面における通貨操作というものを、例えば見返資金で日銀の別段預金になる。それはそのままに預金して通貨の吸收にしてしまわないで、これをとにかく直接に各金融機関の政府引受にでもすれば一応各金融機関はその通貨を放出しようと思えばできる、こういう形になります。見返資金が一応日本の金融をコントロールする力を持つている、一方金融機関が、繰返しますように大きな支配力を持つている。この二つの主人に支配されて、日本経済が運用よろしきを得ざれば極めてぎごちない、疂の上で怪我をしたというようなぎごちない経済界の動きが現われんとも限らないというふうに私は考えているのであります。  どうも長らく駄弁を弄しましたが、私の申上げたい点は、財政の予算そのものの問題も非常に大切でありますけれども、特にこれからは金融というものは、見返資金の運用と併せて非常に大きな支配力を持つている。この点におきまして金融にそれだけの債務償還をして大きな力を與える。その場合におきまして金融全体の動きを予算の裏表の関係におきましてできるだけ愼重に御検討願いたい。これが私の率直な意見であります。
  82. 山田佐一

    委員長(山田佐一君) 御質疑はありませんか……。御質疑がなければ本日はこれを以て散会いたしたいと思います。二十五年度予算についての二日に亘りました公聽会は予定通りこれを以て終了いたします。  本日はこれを以て散会いたします。    午後四時三十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            堀越 儀郎君            木村禧八郎君    委員            岩崎正三郎君            羽生 三七君            森下 政一君            淺岡 信夫君            石坂 豊一君            堀  末治君            小林 勝馬君            深川タマヱ君           前之園喜一郎君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            伊達源一郎君            松村眞一郎君            川上  嘉君            藤田 芳雄君            小川 友三君   委員外議員            岩間 正男君   公述人    農業調整委員会   全国協議会会長  黒田新一郎君    日本産業別労働   組合会議副議長  高原 晋一君    日本労働組合総    同盟総主事   高野  實君    松竹株式会社社    長       大谷竹次郎君    日清紡績株式会    社社長     櫻田  武君    玉塚証券株式会    社常務取締役  関口啓太郎君