○
公述人(岡三郎君)
只今委員長の指名によりまして
公述人としてこれから所見を述べる次第でございますが、初めに私の身分を明確にして置きたいと思います。私
日本教職員組合の副
委員長の岡でございますが、新らしい全官公の議長を勤めておる次第でございます。一応身分を明らかにして
公述に移ります。この
昭和二十五年度の
予算全般に関しまして、先に衆議院におきまして
公聽会が催されました。尚これから以後、衆参両院におきまして愼重なる検討が八千万
国民の注視のうちに行われんとしておるのでありますが、この席上私は率直にこの
予算案に対して意見を申述べ、諸賢の御参考に供する次第でございます。
先ず概括的に申しまして、政府は
昭和二十四年度
均衡予算の実施による
デイス・インフレ政策は、
通貨の縮小、実効価格の停滯、生計費、賃関の保合等に見るごとく成功を收めておると、こう宣伝しておるものでございますが、併しながら我々働く者の立場から申しますと、現実は、
労働者、農民の生活は窮乏化しておるということでございます。次に中小
企業は沒落に瀕しておる。それから失業者は刻々と
増大しておりますし、潜在的な失業者が今や顯在化しつつあると、こういう状態でございます。
それから
滯貨が激増する。
企業整備、人員の首切り、こういうものが相次いで起
つておるのでありまして、果して真実に
日本の
経済が安定へ指向しておると言えるでありましようか。私はこの現像は、いろいろな問題があるといたしましても、購買力の低下から来る相対的
生産過剩によると考えておるものでございます。なぜならば
昭和二十四年度
予算は、その歳入が、七〇%を
大衆よりの租税收入によりながら、歳出は、
資本の
蓄積擁護に向けられたため、大
企業は立直りましたが、
大衆の購買力が激減いたしまして、
生産、消費の不
均衡を更に拡大するに至
つたのであります。この識本の
蓄積に使用された額は、大体我々が計算いたしまして、最小限に見て千三百億程のところでございますが、これが
金融機関に流れ込んで、独占
金融機関を通して集中
生産に振向けられて来たのでございます。更に独占価格による支配に伴
つて、中小
企業が圧迫されて参りました。而も
大衆の購買力の不足は、分配
国民所得においては、勤労
大衆の所得が著しく減じているに拘わらず、勤労者の租税負担は極めて過大に徴收されております。このために働く者の購買力が極端に不足しておるという現実が、
大衆のこの購買力の不足を示すために、
昭和二十四年度
預金部
資金、こうい
つたもの、それから
大衆より吸い上げた郵便貯金、額にいたしまして二百億程度ですが、又対日見返
資金も大体六百三十五億、こういう金が現在遊んでおります。これらのことは、
大衆よりの吸い上げが
大衆に還
つて行かず、意識的、政治的に大
資本に集中されているので、賃金の遅欠配、生算費の切詰め等によ
つて、生活に喘ぐ
大衆の購買力を更に
減退させております。このための過少消費が即ち相対的
生産過剩であるのであります。このことが金詰りと言われておるのであ
つて、輸出不振による九百億に上る
滯貨の洪水と、五百億乃至六百億と計算されている売掛金の
増大、それから
昭和二十四年一月より九月までに一万の事務所の
企業整理がなされまして、それに伴
つて人員七十万に及ぶ馘首が行われたのであります。次に潜在失業者を含め、
昭和二十四年七、八月で五百七十四万乃至九百八十六万とされる失業者の激増等の現象と
なつて現われているのであります。而も二十五年度
予算案は、これらの
財政政策の継承で、その実施の結果は、先に述ベたごとく、恐慌現象を更に悪化させるのではないか、こういう懸念が今や潜在的に非常にあるし、蜷川長官の中小
企業の問題についても、あれが
本当に働く立場においては真実であるということを我々は叫ばずにはおられません。それ故にこの
昭和二十五年度の
予算に対しましては、諸賢が根本的なる
本当の
日本の
再建復興経済のために御検討を煩したい、こう思うものでございます。併しながら時間も非常に短いものでございますので、私は日教組の副
委員長として、又官公労の議長の立場から、教育
財政の問題と、官公吏の給與の問題についてのみこれから申上げたいと、こう思うのでございます。
先ず第一に、教育
予算について申しますと、
シヤウプ勧告に基くところの一般平衡交付金と、標準教育費の
関係でございます。次に第二は、六・三建築費の問題であります。
第一の一般平衡交付金につきましては、すでに諸賢の御
承知の通り、
シヤウプ勧告は
地方財政確立のため、明年度において地方自治体の独立税收を四百億増加すると共に、国庫から一本立の平衡交付金を
支出する制度を確立しました。で二十五年度は御存じのごとく千五十億の
予算が今立てられておるわけでございます。この費用が大体地方公共団体の教育、警察、道路、衛生、厚生、その他各種のものに使われて行く。この点につきましては、今朝程の朝日新聞の論説におきまして、種々義務教育費の確保をせよという論説が載
つておりまして、あの点私誠に同感の意を表する次第でございますが、以下簡單の述べますというと、これらの諸経費の中で、口に教育の尊重を叫ばれてかく現在まで来ておりますけれども、自治体の中に入
つておりますというと、教育費程頭から削られる
予算はございません。これは中央官庁におきましても、文部省
予算というものが、文教の
復興、いわゆる次代を担う生徒のため、或いは次代を担う可愛い子供のためと、こう口には唱えられてお
つても、一旦この白堊の殿堂に入
つてしまえば、又中央の官庁におきましては、この教育費程むごたらしく、あつさりと削られておるものはございません。併しながら中央において削られた教育費も、地方の自治体に行
つてはこれを無視するわけには行きません。そのために地方の自治体の占めるこの率は九百二十一億、大体全総額の二五%に達しておると、こう朝日の論説は書いております。これは私達の統計とほぼ一致しております。この重要なる教育費の裏付をなしてお
つたのが、現在までの義務教育費
国庫負担法でございます。これがいよいよ廃止されて、半額負担がなくなる、こういう状態、それから平衡交付金一本でこれを賄
つて行く、こういう方針でございます。一見、この交付金の問題につきましては誠に妥当であるという考えも持ちますけれども、先程申しましたように、これが如何に義務教育に
影響するかを我々は哀心から心配しておるのでございます。国が必要と認める教育の
基準は、やはり現在の段階におきましては、
財政的、法律的に裏付のある、こういう立場をとらないと、教育費として一応見込んだものが、政治力のために、政治力の強い土木とか、警察とか、厚生、衞生等の方面に流用されて、
地方財政の困窮に名を藉りて、逆に義務教育費の実質的な低下がもたらされる、この点を心配しておるのでございます。又一方、各府県の
財政に
アンバランスがございますので、府県各市町村ごとにでこぼこが生じて、憲法の示す教育の機会均等の均等がなされなくなるという心配がございます。で、この点に関しまして、
日本教職員組合といたしましては、塩原大会により、この
シヤウプ勧告の研究に基きまして、是非共この際、一定額、標準教育費の設定をせねばならんという、この点を決定いたしまして力を注いで参りました。これが文部省並びに教育刷新
委員会の同調を得まして、尚地方の教育
委員会並びに心ある市長村長等の重大なる関心を呼び起して参
つたのでございます。これに対しまして、地方自治庁側では、平衡交付金法案を提出するに当
つて、義務教育費の特別法による裏付を以て、地方自治に対する中央の束縛と、こういうふうに見て両者が対立して現在に
至つております。この二月十一日に、閣議におきまして地方自治庁提出の
地方財政平衡交付金法案と、文部省提出の義務教育費に関する標準教育費法案が、大体同時に形だけは認められることに
なつておりますが、この
内容としての額の問題が残
つておるのでございます。以上、政府は一応義務教育費の最低確保の線に出ましたことは、我々教職員組合としても、これは
一つの進歩であり、現実をよく考えておると考えておりますが、ただその
内容について、明確に次のことを私達は申さなければなりません。と申しますのは、現在閣議了解の線にある文部省案と申しますのは、次のごとき問題を有しておるのでございます。つまり一人当りの單価が非常に低い。当初予定しておりましたのは四千五百円程度、一ケ年について單価の最低として確保されなければならんじやないかと、こう我々も考えており、当局も考えてお
つたものですが、これが逐次交渉の結果、三千八百円より更に三千五百円、最近に至りましては三千二百円と
なつて、全く形だけのものとなり、この結果、平衡交付金に伴う寄附金の廃止とか、そうい
つた問題は再び解消されずに残るような状態がここへ来るんではないか。又PTA負担等の形は依然残
つて行くのではないか、こう考えております。更に範囲が義務教育と限定されましたので、高等学校とか幼稚園とか、こうい
つたものとの教育の一貫した
政策が貫かれなくなるのでなはいか、こう考えます。次に、地方の
財政より逆算したもので、かくあらねばならんという形からではございませんので、前進的
計画性を欠いているという点でございます。以上によりまして教育費の大巾
増額が絶対に必要であるのであ
つて、若しそのために平衡交付金が少いとするならば、当然私はこの平衡交付金をより
増額する
方向に持
つて行かなくちやならんじやないかと、こう考えるものでございます。
非常に時間がかかりましたが、更に教育経費の一例として、六、三建築を取上げてみますと、一応政府は四十五億円の国家
予算が確保されたとこう申しておりますが、元来五百万の生徒のために、二十二年から二十五年、今年に至るまで四ケ年間に僅か総計百十九億五千三百万円に過ぎません。このため地方の市町東独力で建築した建物が、二十二、二十三年度の両年度に七十六億を費しております。このために市町村長三名が自殺をなさり、二千余名の市町村長がおやめに
なつております。この事実により、昨年度当初
予算で零に
なつたこの建築
予算が、吉田
内閣もこの現実にびつくりしたのでしようか、十五億の追加
予算と、各種の努力による四十五億の今年度
予算と
なつて現れたことに対して、その努力は我々として買えるといたしましても、何と言
つても口に教育の尊重を唱えておりながら、やはりここに政治の貧困を私はさらけ出しているとこう考えます。現実に
経済再建が重要であるとは、口の先だけではなくて、やはり現在の子供を立派に育てることが、次代の
日本の文化国家の育成であるということを私は確信しているが故に、このことを口にするわけでございます。この教育費の総額は、全国の親御さん達の
本当に希
つているところでありまして、金のかかる私立学校に行く生児兒童のためにも、高額所得者、
シヤウプ勧告案による三十万円から、五五%の増税をするならば約二百億浮くのでございます。このぐらいの
減税の
財源で、
一つぐらいの功徳を積んでもよかろうと私は思うのでございます。六、三制の建築費に、少くもこの
減税によるところの二百億ぐらいのものは
増額をして貰いたい。これが教育に対する私の
予算上のお願いでございます。
以上大体教育に関する平衡交付金に伴う標準教育費の問題と、第二は、六、三の建築費の問題について概略を申上げました。
時間の都合上、次に、官公労の議長といたしまして、給與ベースの改訂について、
予算上私は次のことを申上げたいと思います。
先ず第一に、政府が給與白書を発表いたしまして、種々の角度から公務員の給與を六、三ベースに抑えようとしておりますが、私はこの
公述に、後刻申上げますが、
予算の
財源は明確にあるということをこの席上に申したくて参
つているのでございます。先ず第一に、給與ベースの改訂に関する人事院
勧告の発表以来、政府は機会あるごとに改訂の意思なきことを明言して来ました。二月三日、正式文書を以て人事院の
勧告拒否の態度に出て来たのでございます。国家公務員法に基いて、我々公務員から団体交渉権と罷業権を奪い、あらゆる彈圧を強化して来た政府が、同じ公務員法の趣旨を敢えて蹂躙して、給與ベース改訂の
勧告を拒否する政治的、道徳的責任を追及すると共に、政府のいわゆる給與白書に掲げる拒否の理由の誤りを私は次のごとく
指摘したいと考えるのでございます。政府は実質賃金は向上しているとこう申しておりますが、実質賃金は果して向上しつつあるでございましようか。第一は、実質賃金が向上したと主張する時日の問題でございます。
基準の時日の問題でございます。即ち政府は
昭和二十三年法律第二百六十五号によりまして、現行六千三百七円ベースが完全に実施されたとこう申しますが、完全に実施されたのは昨年の三月であり、それを
基準時とすべきであるとしています。ちよつと間違いましたが、この六千三百七円ベースが、完全に実施されたのは昨年の三月であり、それを
基準とすべきであるとこう申しておるのでございます。而して同法附則第三十二條によれば、この法律は、
昭和二十四年一月一日から実施するが、
昭和二十三年十二月一日から適用すると謳
つております。そして又同法第一條には、人事院が国会及び
内閣に対し
勧告した給與計算を原則的に承認すると規定し、その
勧告は六千三百七円ベースの数字的基礎である独身者青年男子職員の最低生活
水準維持費を、
昭和二十三年の七月で算出しておることを明記してあるのでございます。
従つて昭和二十三年七月を
基準時とせねばならんことは、実質的にも法律的にも明確であるのでございます。この点政府が甚だ曲解しておるとこう考えます。そのことは又国家公務員法第二十八條或いは第六十四條によれば、公務員の給與は、生計費、
民間給與等によ
つて決定されるのであるから、六千三百七円ベースが
昭和二十三年七月のそれによる限り、そのときを
基準時とされねばならんことは余りにも当然であります。若し
基準時にならんならば、政府の主張する
昭和二十四年三月のそのときの給與は、つまり政府の主張するように二十四年の、昨年の三月ですね、そのときの給與は六千三百七円ベースを遥かに上廻
つたものでなければならん筈でございます。以上のごとく法的にも実質的にも明確である一昨年七月
基準の根拠を無視いたしまして、昨年三月
基準を主張するゆえんのものは、昨年三、四月頃より
経済諸指数が比較的横這いを続けていることから、実質賃金が向上していると、これは捏造するためのものであると私は断言いたします。政府は次に
昭和二十四年三月を
基準として、消費者実効価格指数は、同年十月は九七・八、十一月九三・九、十二月九五・八と大体低落の傾向が見られると主張しますが、
昭和二十三年七月を
基準とするときは、ここに手許にある資料を見ますと、
昭和二十四年五月の一三二・二を山といたしまして、その後横這いを続けています、確かに……。尚同年十二月一二四・一の上昇を示しているのです。
従つて政府が、公務員の実質賃金が
昭和二十四年十二月に一〇四に向上を示していると言
つていることも、実は八〇・六と二〇%の低下となるのであります。根本的に出発の指数を違えて昨年の三月に
基準を置いて計算をしておりますが、三月の
基準ではなくして、一昨年の七月を
基準にして六千三百七円は決められておるわけです。それですから指数を計算するならば、一昨年の、
昭和二十三年の七月の指数を
基準として計算すべきを、
昭和二十四年、昨年の三月を
基準として考えておる。ここに大きな欺瞞があるのでございます。それですから繰返しますと三月を一〇〇として現在八〇・六と言
つておりますが、六千三百七円は、三月ではなくして二十三年の七月の指数で作
つておるのでございまして、二十三年の七月から計算いたしますれば、現在は一二四とこうなるのでございまして、大体二〇%の上昇は現在はつきりとある。六千三百七円の基礎に
なつた数字から考えれば、現在は二〇%上昇しておるとこういうことになるのでございます。而も六千三百七円ベースは、算定当時においても低額に過ぎたものでありまして、同ベースと共に実施された勤務時間の一方的な延長、それに伴う時間当りの賃金の低下、再計算による賃金の引下げ、或いは超過勤務手当の大巾
減額等を計算に入れるときに、実質賃金は更に減
つておるのでございます。又生計費においても、一昨年七月より四〇%の上昇を示し、三月以降も下降していないのであ
つて、公務員が一般
国民と同様の生活
水準を維持するためには、同率以上の給與の引上がなされなければならない、こういう筈でございます。公務員が一般
国民生活
水準以下でよい筈もなく、又ベースの改訂が、政府の主張するごとくたとえ
経済安定を妨げるとしても、その犠牲をひとり公務員が負わなければならん理由も存在し得ない筈であります。更に政府は、今後闇及び自由価格の値下りによ
つて実質賃金は一段と改善されると断じておりますが、併しながら消費者の消費財の各闇価格及び自由物価指数は、昨年四月を山といたしまして漸落の傾向にあるにせよ、一昨年七月より尚下
つてはいないのでありまして、勤労者の生活の
中心である飮食物は、八〇%近くを配給に依存している現在、闇及び自由物価の低下は、非配給食品二〇%にしか
影響しません。つまり闇は下
つたとしても、勤労者は八〇%の
公定価格の生活をしておる、この現状から生活の楽に
なつておらないのでございます。配給食品八〇%は、公定物価の八〇%上昇の
影響によりまして、実質賃金の改善どころかますます実質は低下しておるということでございます。闇に依存できない勤労者の生活は、闇、自由物価はたとえ今後低落いたしましても、
補給金の
削減、貨物運賃の引上、電気料金の値上と
公定価格の値上りによりまして、生活は更に圧迫される、こう解釈するのが又当然でございます。このことは、政府も
昭和二十五年度国家
予算におきまして、物件費を
増額している、つまり政府も給與白書によ
つてああいうでたらめなことを言
つておりますが、国家
予算において、物件費を
増額しておるということによ
つて、みずから認めておるということを私はここで申上げたいと思うのでございます。更に又実質賃金が、政府の主張するようにたとえ向上したとしても、世界に類に見ない戰前の低賃金の現在三一%にしかならないということからも、ベースの改訂拒否の理由とは
本当にならないのであると私は断言いたします。
次に、
民間の給與との差が少い、殆んどないと政府はこう申しております。国家公務員法第六十四條は、その給與決定の重要條件として
民間給與との
均衡を規定しているが、政府は公務員給與と
民間給與との比較差は、昨年三月七千二十九円に対し八千二百二十五円、十月は七千二百四十六円に対し八千六百二十六円であり、上昇率、金額共に両方の開きは僅少に止まる、こう政府は言
つております。先ず上昇率について述べるならば、
民間給與は、一昨年七月に比し昨年十一月は八三%の上昇を示しております。この上昇は、今後も続くことが傾向線、グラフを引張
つて見れば明らかになるのでございますが、公務員の給與が六千三百七円ベースに放置されてよいとは、如何なる角度よりも言えないことでございます。政府の主張する昨年三月七千二十九円、十月七千二百四十六円とする金額及び三%の上昇も、この期間においてなされた二〇%の行政整理が、その大部分が弱年者によ
つて占められたため、平均給與額が計算上増加したと、こういうことが現われておるに過ぎませんで、公務員の受けておる実際の額は何等上昇してはおりません。つまり若い者が首を切られた、そのために残
つた者が年齡的に多く
なつておる、これで平均いたしておりますから、給與が上
つておるように数字では見受けられますけれども、実際の公務員の給與は少しも上
つておらない、こういうことです。又超過勤務手当の増加も、行政整理による
予算残によるもので、
労働強化を
意味する以外の何ものでもない。これを以て六千三百七円ベースにおいて給與が上昇したごとく印象付け、その年の
民間給與の上昇率をカムフラージユせんとする政府の作為も余りに見え透いておると申して過言でありません。金額においても、昨年十一月の
民間の給與は六千三百七円ベースの十四割、公務員の十四割、二千六百円増の八千九百十六円という、公務員は
民間労働者の四割下廻
つた生活
水準を余儀なくされておるのであります。尚政府の言うごとく、若し仮に公務員の給與七千二十九円、七千二百四十六円を是認するといたしましても、その額の
民間給與との差額は、それぞれ千二百円或いは千四百円でありまして、公務員給與の一七或いは一九%になるのでありまして、この差を僅少であると政府は申しておりますが、放置されてよいものでございましようか。又実質賃金の戰前比が、
民間の四五%に対しまして、公務員三一%に過ぎないことも併せ考慮されねばなりません。以上、政府は白書において毎月勤労統計、工業平均賃金は、その対象が大工場
中心であるとこう申しておりますが、中小
企業の方は賃金が安い、こう言
つております。これに対してもここに批判がありますが、時間の
関係上、この政府の比較が全く当
つておらない、この点は、後刻
質問において御答弁申上げたいと思いますが、時間の都合上少し端折ります。
次に、以上全く現政府が出しておる給與白書に対して、各種の角度から私は批判をして参
つたのでありますが、この批判は、私は
本当に科学的で正しいということを確信しております。
以上、給與改訂を何とい
つてもせねばならん理由を述べて参
つたのでありますが、然らば
財源はどこにあるか、この点に対して一言お聞き願いたい。この点は私確信を持
つて参
つたのでございます。で補足いたしますが、時間を少し超過いたしましたが、二月十一日だと思いますが、私は全官公庁を代表いたしまして約十六名がESSのリード課長に面会いたしたのでございます。この時の趣旨は、政府が六千三百円の据置きで
予算を組んでおるが、これは一応理屈がある、と申すのは、政府が昨年七、八月頃に
予算の
基準を立てたが、その後において人事院が
勧告した。そうするならば当然人事院の
勧告に対して政府は尊重して、こうしてもう一応六千三百七円の基礎が昨年の七、八月頃に考えられたのであるから、その後何ケ月か経
つて勧告がなされた、その数字を審らかに検討するならばいざ知らず、頭から無視しておる態度という点について、我々は是非とも我々のこの人事院の
勧告に基く法律案を国会に出さして、政府の案が是か我々の案が是か、一昨年の十二月のごとく鬪わして貰いたいということをリード課長に申したのでございます。初めは少々拒否しておりましたが、最後にやはり
日本の民主主義を……少くとも全国の八千万の代表の輿論がこの議事堂に反映するということを我々は期待し、それでこそ民主主義革命というものが前進するのであるということを強く申した曉に、リード課長は、その意見は尤もだ、それならば至急に国会の議員さんに頼み、君達も研究して、現在の既定
予算の枠内において何とか操作できる途があるかどうか研究して貰え、こういことを申したのでございます。而も現在の政府
予算は、リード課長は次のごとく申しております。あれは與党の民自党と政府が幾つかの案を作
つてESSに出して来たが、その中でまあ一番妥当と思うというものを取上げただけに過ぎない。それで現在の既定
予算の枠内において別の角度から検討すれば、必ず案が出るだろうとまで申しております。而もその時に君達の案が上提されれば、それでこそ対等の立場で国会に
国民の輿論を反映して鬪わせることができるのであるということを、我々には強く申したのであります。君達、そうなれば有利になるから早く行
つて来い。寛容の態度で検討して呉れますかとい
つた時に、リード課長は、寛容の態度を以て検討する。資料が出れば検討する、こう申したのであります。
そこで私は少し端折りますが、白書にあるところの、政府が唱える六百億ですか。この点について私は論旨を進めたいと思います。
政府は人事院
勧告を地方公務員を含む全公務員に実施すれば、年間六百億を要するとい
つておるが、常に
大衆よりの徴税に嚴格である政府が、ベース改訂に伴う給與所得の
税金のはね返りということを飽くまで計算に入れていない。誠に八千万を撞着するも甚しいといわねばならない。日頃出す時には
税金のはね返りをびしびしと取りながら、今回公務員の給與を上げない理由として、六百億は
インフレを助長する、こう頭から申しておりますが、これは誰が見ても給與所得のはね返りがあの中に引かれていない。こういうことを私ははつきりここで言いたい。而も六百億は増税或いは鉄道の運賃の値上、通信料金の引上、或いは二割の行政整理を行なう、こう主張しておりますが、ベース改訂を支持する輿論をこの詭弁によ
つて切ります、こういう僕田意図を持
つておると言わざるを得ないのであります。我々の計算によれば、実際に見て、これはここに資料がございますが、三百八十五億から四百億程度、これがあれば人事院
勧告に基くところの給與ベースの改訂ができると確信しております。而もそれは
減税に何ら
影響せず、或いは増税、物価の値上、行政整理等を要さん枠内の操作でこの給與の改訂ができるのでございます。で
昭和二十五年度
予算案は、
昭和二十四年度
予算案に見られると同じく、歳入面において徹底的な收奪を行い、歳出面において大
資本に奉仕する方針を更に一層強化し、恐慌を激化させておるものでございますが、先づ一番先に、
財源を求めるならば、これは
資本家の前で言うと嫌われると思いますが、
シヤウプ勧告に基く、池田蔵相も言
つてお
つた大
資本の脱税の公認にも等しいところの株式の名儀書換の中止、資産再
評価の繰延べ、無記名
預金の記名延期を取消すならば、歳入増は相当のものがあると誰も常識で考えております。それから昨年四月十三日、平田主税局長が国会において
昭和二十二、二十三年度において約五千九百億円脱税があ
つたと大体推定しております。これを見てもこれだけのものが取れるならば、ベース改訂費用の捻出は容易であるばかりでなくして、中小
企業、農村の
復興にも大いに役に立つと、こう考えます。或いは又大
資本育成の法人税軽減の適正化、又先に述べた
シヤウプ勧告通りの高額所得者、即ち五十万円以上五五%を、三十万円以上五五%に直せば、
シヤウプ勧告の通りにやれば、二百億円が直ぐ浮いて来る。私は
只今ここに資料を持
つております。
税金を軽減する軽減すると言
つておりますが、あの
シヤウプ勧告の中で見ても、非常に累進課税、上の方の高額所得者が軽減されておるのでございますが、あの通りにや
つても二百億浮いて来ると、これは確信を持
つて申します。
次に
財源として挙げられることは、輿論のすべてが
指摘するごとく、公債償還千三百億が余りにも多過ぎる。これを
削減すべきである。端的に申上げます。即ち国債償還費であるが、七百十六億より法律に基くところの期限がある二百十六億を除いて……是非とも今年拂わなくてはならないものが二百十六億でございます。それを政府は七百十六億計上しております。それから特別
会計で約五百億、合せると、今年是非とも返さなければならない二百十六億を除いて、千億を敢えて政府はここに計上しておるのでございます。これは政府の
政策であると断言します。特に現在のごとき金詰りの
経済情勢下において、單に
金融機関に金を廻して
蓄積するのみにて、
デフレはこんな状態ではますます烈しくなると、特に中小
企業者はこれではとてもたまらないと、こう誰も考えております。又当の
金融機関においても、
融資の
方法なく且つ債券保育によるところの対外信用度も低化して、つまりそれが償還されてしまえば、
銀行の対外信用度として債券を持
つておるのでございますが、債券償還には必ずしも
銀行自体も賛成していないと私は聞いております。
銀行自体が賛成していないその
債務償還、いわゆる一千億の計上は、余りにも巨大過ぎると、私はこう申します。政府は速かにこれらの
財源を公務員の給與に廻し、公務員をして公共の仕事に專念せしむると共に、政治の腐敗堕落とか、多量の收賄、贈賄とか、そういうものを是非ともやめさして、
デフレ経済にここで活気を注入して貰いたい。如何にこれを吸上げて日銀に取
つたとしても、政府がこれを出すときには、昨年の例のように、なかなか下の方の中小
企業には廻
つて行かない。僅か三億程度では、この中小
企業の没落に瀕する状況を救う途は全然ないと思います。
次の
財源は、私はここに面白い例が
一つございますが、私は以上のような問題から、更に突込んで何とか
財源はないかと研究したところが、物件費においてまさしくあると、こう考えたのでございます。物件費の中で、大体トータルを申しますというと、
一般会計で大体三・四五%、特別
会計で一・二四%政府機関において一・〇九%、これを節的すれば、公務員の給與の改善は直ちにできるということは私は申します。これを総計いたしまして、尚地方公務員を自治庁の統計の数を加えて割
つてみますというと、中央官庁の、今言
つたような
一般会計、特別
会計、政府機関の
会計だけの平均の余剩金、これを何とか余して、そうしてその金で地方公務員をも含めて出すというと、全体で的二・五八%の節約ができれば、この公務員の給與
財源は出て来る。一兆億以上ありますよ。この一兆億以上ある物件費を二%程度、つまり月給で言えば百円で二円のいわゆる節約ができれば、この公務員の給與の改善の
財源は出て来ると、私はこれははつきり言います。この資料は私ここにございます。
以上、極めて楽にできる
財源の
措置であり、
公共事業費九百九十億のうち、来年度分として百億があります。この百億の中でも、少額の運用は私は不可能ではないと、こう思
つております。又国際小麦協定参加によ
つて、低価な小麦輸入によりまして、食糧の
補給金は相当浮くのではないか。これは
一つの仮定でありますが、そうも考えられます。以上のように、二十五年度
予算の枠内においてさえも、政府の吹く六百億とたとえいたしましても、十分にこの
支出は可能であると、要は
財源よりも、改訂しようという誠意の問題にかか
つておるのである。
以上大変長きに亘りまして申述べましたが、政治的にも、
経済的にも、今回のベース改訂を断行して、新らしい
日本の
再建の真の担い手としての働く公務員の生活を是非とも保障すべきであると、右を結論として私の
公述を終る次第でございますが、私各種の角度から調べた結果、
財源的には確信を持ちました。昨年度の年末において、政府がないないと言
つておりながら何とか絞り出して年末に五十何億や
つた。これは我々としても額には不満があろうとも、やはり国家
予算というものは節減すれば出て来ると、必要以上に
労働情勢を悪化させ、必要以上に
インフレとかそうい
つたものを強調して、昨年五十何億出て、
日本の
経済が
インフレに
なつたでしようか。年末五十何億出ても
日本の
経済は絶対に
インフレにならなか
つたことを、我々ははつきり知
つております。この角度から、余剩を節減して、働く公務員として、又公正なる公務員として、公共の福祉に応えられる公務員としての何とか生活の維充を護
つて、新らしい官吏制度を打建て、新
日本建設の礎石にして頂きたい、こういう角度から申しましたので、非常に時間が超過いたしましたが、大変長く
なつたことをお詫びいたしまして、私の
公述を終ります。