○内村清次君 国鉄に対する仲裁
委員会第二次裁定を含めまして、裁定
制度そのものにつきましての
政府の態度についてお聞きしたてのであります。即ち
政府が第一次国鉄裁定の拒否、更に東京地方
裁判所判決の上訴、及び今回の專売公社裁定の承認など、そのと
つて参りました態度につきましては、全くそこには理論的な一貫性が欠除いたしておりまして、その場その場の御都合主議で終始いたされておるところにつきまして、
国民輿論は勿論といたしましても、我々も大いに不満があるのでございます。法の権威から申しましても、私は
政府の所信をここで質して置きたいのであります。即ち第一次国鉄裁定の全額支拂を拒否いたしましたる際に、
政府は国鉄に対しましてのみ臨時給與を支給することはできない、これは全般的に波及するから不可能であると申したのであります。今回の專売裁定全額支給に際しましては、池田大蔵大臣、増田官房長官のいずれも、公共
企業体の
生産的経営と職員の
労働條件と公務員の勤労條件とは必ずしも同一ではありません。その取扱は別個であると、みずから前言を飜しておられるのであります。私は遅蒔きながら
政府がこの点につきましてお気付きになりましたことは異論はありません。更に又第一次国鉄裁定が国会に付議されんといたしましたときに、我が党を初めといたしまして、野党各派がいずれも裁定案そのものを国会に付議する必要はなく、ただ公労法第十六條により国鉄で賄う以外の
予算の流用についての財源の可否を国会で
審議すればいいのであると主張いたしましたことは、皆さんよく御記憶に新たなところであると存じます。然るに
政府は衆議院與党の絶対多数を当てにいたしまして、強引に裁定そのものの可否を決めるべきだと、公正なる裁定
制度を蹂躙いたした、この不当な
政府の態度につきましても皆さんよく御記憶のことであります。参議院は正しく全額支拂を決議したしましたにも拘わらず、一方的に衆議院の決議のみを取上げて国会の承認はなか
つたとしておるのが現在の
政府の態度であります。然るに今回の專売裁定につきましては、当然のことではありまするが、全額支給をいたしまして、而も一度国会に
予算上、
資金上流用不可能なりと国会に提出いたしました案件をそのまま撤回するなどという行為をなしておるのであります。これでは裁定そのものの可否は国会で
審議する必要なしという野党側の法理論をそのまま行な
つておるということでありまして、いわゆる
政府の如何にも
矛盾した、一貫性のない、そうして非自主的な態度がありありと見えておることを私はここに指摘したいのでございます。
そこでお聞きしたいことは、第一に、この国鉄第二次裁定が明日二五十日を以ちまして、公労法に決められておりますごとく、十日間の期限で
政府は
予算化する義務を持つものであるということであります。これに対しまして
政府は如何なる態度に出られようとしておるか、その点を具体的にお聞きしたいのであります。加賀山総裁は、すでに新聞に発表いたしまして、七十億近くの財源を借入金によ
つて第二次裁定に服従すること言
つております。私はこの公社総裁が、いよゆる法的
考えからいたしましても、これを尊重する意味からいたしましても、当然であると思うのであります。又公社総裁はこの借入金につきまして、いわゆる監督官であるところの運輸大臣及び大蔵大臣に申請をいたしておると思いますが、この点につきまして運輸大臣並びに大蔵大臣はどう扱
つておられるか、又本当に申請したのであるかということにつきましてもお話を承わりたいのであります。然るに裁定には、財源が国鉄公共
企業体の経理、
予算の枠内でできるということを明示しておるのであります。即ちその裁定
理由の第二の経理
状況におきまして、経済九原則の建前から相当詳しく検討したしました結果として、次のようなことを言
つておるのであります。即ち「長い間低
物価政策によ
つて抑えられていた貨物運賃は、ともかく実費を償う
程度の値上げが本年一月から実施され、
定員につきいては昨年七月の整理により十万人が減員され、その結果、
昭和二十五年度
予算案においては、従来の特殊事情が大体解消されたものとい
つてよい。今
昭和二十五年度の
予算案を
昭和二十四年度実行見込と対比するに、運輸收入は約二一%、二百三十二億円の増加であり、赤字三十億から黒字百八十三億円に改善させる見込である。人件費については、
行政整理による九万六千余人の人員減の結果、基本給において十九億二千万円の節約となり、退職手当については四十五億四千万円
程度から五億二千万円
程度に減少するから、差引四十億三千円万の余裕となり、その他を含め人件費総額は七十一億円の節約となる。」ということを言
つております。このように人件費の節約が七十一億もなされておることに先ず我々は注目しなくてはならないのであります。又「收入面については、二百三十億円を超えるところの運輸收入の増加ということは、
一般会計の繰入金の減三十億円、雑收入の減十億円を差引いて百九十億円と
なつた、これが大部分特別補充取賛費の百八十二億円に充当されておる」というのであります。ここが即ち問題であります。
戰後自己
資金によりまして工事の全然なか
つた時代に比べまして、初めて一挙に百八十二億の
多額の支出をされておる。それ故に裁定
理由書では、その他の修繕費の項目を合計いたしまして、資本的支出と人件費との間に多くの不均衝があるということを指摘されております。この点から財源の点をも併せ
考えみまして、そうして低めではあるが八千八百円ベースを公正な裁定であるとして、今回の裁定が出たのであります。勿論労働組合はこの点から見ました見地におきましては、これは不満はあります。併しながら裁定を尊重してこれに服しておることも御承知の
通りであります。実に国鉄に限らず
日本経済全体すべて人のために国のためにあるところの国鉄であり、
日本経済でありまして、又現実に国鉄を動かすものも、又この
賃金改訂を一日千秋の思いで待
つておるところの働く労働組合の人達、従業員であります。特に「二十四年度において十万分に及ぶ整理の結果、ますます職員一人当りの仕事量を増加せしめている点は見逃し難い」と裁定
理由書におきましてもこれを強調されておるのであります。
政府のいうところの高能率の言葉は正に国鉄従業員に当てはまるものでありまするが、併しながらこれに報ゆるに実質
賃金の切下げです。同時に又これに何ら即ち報いていない。今日まで合法闘争の枠内におきまして、実力行使も行わずに、そうして涙を呑んで服従しておりますところの国鉄従業員であります。以上のごとく、その財源の点におきましても、理論上にも、実際上にも、又道義的な情の上におきましても、第三次裁定は絶対行わるべきものであると私は存ずるのでありますが、これに対しまして運輸大臣、大蔵大臣は如何なる態度に出られるのであるか、拒否せられるのであるかどうか、この点について詳しく承わりたいのであります。
更にお聞きしたいことは、二十二日の定例閣議で年度末臨時給與といたしまして、一人当り約六百円の支給を行うと、これを大きく宣伝をしておられるようでおりますが、これは一体何のためのものであるか。第一次国鉄裁定の残額さえも支拂わないのに、第二次裁定の代りといたしまして、このような見え透いた一時金で当面を糊塗するように
政府は今の事態を甘く見られておるのであ
つたならば、その不明と非常識及びその不徳義は限度を越えたものであると言わざるを得ないのであります。この一人当り六百円というものは如何なる根拠で、又如何なる計算で、何の目的で出すものであるか、これをお聞きしたい。更に第一次裁定に対するところの東京地方
裁判所の判決の一部を御承認にな
つて、これを支拂いになるのであるか、この点につきまして法的並びに
内容的に詳細に御答弁を要求いたすものであります。
次に大蔵大臣にお伺いいたしますが、即ち第一には、給與改訂は消費
インフレを惹き起して、
ドツジ・ラインに牴触するというところの
政府の御見解は今も尚持
つておられるかどうか。池田蔵相と官房長官もときどき思い出したように
賃金と物価の悪循環なる
インフレ時代の物真似を申しておられるのでありますが、併しこれに対しましては
一般世論は冷笑しているのであります。即ち財政金融金紙幣が増発せられて、これが過剩購売力とな
つて消費
インフレが進行いたしておるのであるといたしましたならば、
賃金ベースの改訂というものが、或いは物価に若干の
影響を及ぼすこともあり得るかも知れないのでありますけれどもが、併し現在はそれどころか、全くそれと逆に一千二百億というような債務償還をなさろうとしておる。同時に又デフレ
予算によりまして、今でも有効需要は減退をいたしまして、商品は相応的過剩とな
つて、デフレはますます深刻化しようとしておるのであります。このような事情におきまして、
均衡予算の枠を少しも崩さずに
給與ベースの改訂が若干行われましたと言いましても、
賃金と物価の悪循環も
インフレの懸念も少しもないのでございます。却
つてデフレ恐慌
状態を万分の一でもこれを緩和して、そうして景気を回復する一助とな
つて、
日本経済に好
影響を與えるものであると思うのでありまするが、この点どう
考えておられるか。現に滯貨処理とか或いは又証券
対策に多量の
資金放出に苦慮いたしておりますところの
政府が、
給與ベースのみに
ドツジ・ラインを盾に取りまして拒否していることは、全く
矛盾であると言わざるを得ないのであります。この点大蔵大臣はどのように
考えておられるのか、お聞きしたいのであります。
更に
政府は、先に
給與ベース改訂はしない代りに実質
賃金の充実について努力すると言われたのであります。我我が見た場合では、今後資産再評価、固定資産税、附加価値税などの悪
影響は電力及び家賃、公債の大幅の
値上りをもたらしまして、闇価格の値下りを却
つて相殺してしまう、こういうことは明らかでありまするが、ここで再びその見通しにつきまして、こういうような即ち物価騰貴の現象、いわゆる生活を圧迫するものは生じないかどうか。この見通しについても大蔵大臣の責任ある御答弁をお願いしたいのであります。
最後に吉田総理大臣にお聞きしたいのでありまするが、総理は依然として待遇改善、厚生施設の充実によ
つて、そうして実質
賃金の路実を図
つて、給與改訂は行わないという答弁を
機械的に繰返しておられるのであります。この実質
賃金を何らかの方法で充実するという、何らかの方法、即ちこの具体的な問題につきましてお示しを願いたい。いろいろ聞くところによりますと、号俸引上げはむずかしいから、公務員への特別手当を年四回支給することも考慮中であるということであります。若しその一回の支給額が言うところの一人当り六百円であるというのでありましたならば、それこそ誠に笑止の至りであると言わざるを得ないのであります。かかる欺瞞的な手段で一時を糊塗せんとするの余り、常に
政策に一貫性を欠いて、社会問題や違法問題を
政府みずからが起して、勤労大衆の支持を刻々と失墜しておるのでありまするが、何故に総理のいわゆる政治力を発揮して、強くデフレ・ラインの
変更に御努力なさらないのであるか。もつと拔本的な、まじめな努力を盡さないのであるか。我々にと
つて誠に了解に苦しむところでございます。例えば巨額な債務償還は財界に至るまで一致して反対意見が多いのであります。この
国民輿論を背景といたしまして、もつと自主的態度をとられたならば、目下急速に下降しつつあるところの自由党の人気も、或いは持ち直すことができると私達は
考え、又これが国家経済のためにも誠によき結果をもたらすものであると存ずるのであります。かかる拔本的な
措置をとらずして、そうしてこの給與改訂の問題にいたしましても、これも解決をしないという御態度につきましては、我々はどうしてもこれは
賛成することはできないのでございます。いわゆるこれを早く急速に解決するために、
政府はデフレ・ラインをみずから放棄してしまわれる、こういうような態度をとられんことを我々希望するのであります。いわゆるこういうような御態度であるといたしましたならば、民主的労働組合の三月攻勢は、より広く全
勤労者のいわゆる
政府攻撃となり、更に国鉄労働組合の合法闘争が、その合法の枠の中においても相当の実力あるところの対抗手段がとられることも予想できるのでございます。このような事態は、これは、かくまでも忍耐をいたしておりましたところの労働組合の当然発揮すべきところの生活権の防衛手段でありまして、その責任が
政府にあることは誰が見ても明らかであります。国鉄裁定は、法の権威におきまして、社会道義といたしまして嚴守されるべきものであります。且つ又それが嚴守される條件を確然として持
つておるものでありまして、何ら無理のないところでございます。
均衡予算の枠の中で十分に賄い得るところの……