○楠見
義男君
開拓者資金融通法の一部を改正する
法律案につきまして、
委員会における
審議の
状況を御
報告申上げます。
先ず
法律案の
起旨並びに内容について御
説明申上げますと、
政府は
国内開拓事業を遂行するため未
墾地買收を行い、又開墾につきましては、国営、県営、
補助等の
方法によりまして、その実効を図
つて参
つておるのでありますが、一面、
開拓地に入殖した者に対しましては、先に
昭和二十二年成立いたしました
開拓者資金融通法の
規定に基きまして、いわゆる
営農資金、
住宅資金及び
共同施設資金を
政府みずから
貸付け、
開拓地における営農安定の
基礎を與えておるのでございまして、これらの
資金は爾来毎年続けられ、本
年度貸付分を累計いたしますと、
営農資金四十五億円、
住宅資金五億九千万円、
共同施設資金一億六千万円、
合計五十二億五千万円に達しておる
実情であります。而してこれらの
資金は一定の
据置期間を含め、二十年の長期、且つ極めて低利を以て
貸付けられ、
据置期間経過後は
元利均等年賦償還の
方法により償還されることにな
つており、本
年度には
共同施設資金の第一回の
年賦償還が始まるのでございますが、この
償還金額は、
現行法第三條の
規定によりますと、
貸付を受けた時と
年賦金償還の時期との間における米穀の価格の騰落に応じスライドする
建前にな
つており、
従つてその後の米価の変動から申しまして、この年賦金もスライドして相当増加される可能性を生ずるわけでございますが、それでは未だ十分の安定を見ておりません
一般開拓者の実際に即しない憾みがありますので、今回この点に改正を加え、即ち従来の
規定のごとく米価の変動にスライドすることを止め、経済情勢の変動により、開拓者の支拂能力が
一般的に著しく増減したときに、初めて年賦金を増減することといたそうとするであります。尚この機会に行政簡素化の
方針により、中央開拓
審議会を廃止することといたしておるのであります。
委員会は
本案審議に入るに先立ちまして、先ず
政府側から既往の開拓営農の概況について
説明を聽取いたしたのでありますが、それによりますと、未墾地取得面積は昨二十四年十二月末現在で約百十六万町歩、うち国有地は六十一万町歩、民有地は五十五万町歩であります。開墾面積は二十四年三月末現在で三十五万町歩であります。次に、入植戸数は地元増反
関係を除き、昨年十月末現在で累計十七万八千戸、うち二十三
年度末までに累計四万七千戸が離脱いたしております。又既存農家との比較におきましては、
開拓地における入植農家の営農は、動力、農機具及び馬、役肉牛等の大家畜は遥かに既存農家に及びませんが、山羊、緬羊、豚等の中家畜は逆に多く、乳牛の普及も
開拓地の方が若干上廻
つております。併し農作物の反当收量につきましては、既耕地に比し概して甚だしく劣
つており、
従つて経済
状況も著しく劣
つておる
実情であります。而してこのことは、
開拓地においてはそれだけ耐乏生活を行な
つておると同時に、今後の努力の必要性並びに施策の困難性を物語
つておる次第であります。
委員会は概況についての
説明聽取の後、
質疑に入
つたのでありますが、
質疑は主として岡村委員を中心とし、羽生、藤野その他の委員等からも、既往の開拓行政に対する批判とこれが善後措置について、又
開拓地の脱落者の問題について、或いは又今後の開拓営農のあり方等につきまして、
愼重なる検討が加えられたのでございますが、時間の
関係上遺憾ながらここではこれを省略いたします。
要するに論議の中心は、農村不況の最初の波は先ず
開拓地が蒙むることは明らかであり、而も既耕地農家に対する不況対策すら十分に立
つておらない今日、
開拓地対策としては余程の努力と善処方を必要とするということに盡きるのであります。
かくて
質疑終了後、
採決に付しましたるところ、開拓行政につきましては別途いろいろの問題もございますが、本改正
法案それ自体は、この際妥当なるものと認められますので、
全会一致原案
通り可決すべきものと
決定いたした次第であります。
右御
報告申上げます。(
拍手)