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1950-03-08 第7回国会 参議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月八日(水曜日)    午前十時二十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十三号   昭和二十五年三月八日    午前十時開議  第一 両院法規委員選挙  第二 彈劾裁判所裁判員辞任の件  第三 海外移住組合法廃止に関する法律案内閣提出)(委員長報告)  第四 国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收された場合の措置に関する法律案内閣提出)(委員長報告)  第五 栄養士法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第六 性病予防法等の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 農業災害補償法第十二條第三項の規定適用を除外する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 奥会津総合開発費国庫補助に関する請願委員長報告)  第一〇 国道第十号線中吹浦地区改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一一 天竜川改修工事費国庫補助増額に関する請願委員長報告)  第一二 建築士法制定に関する請願委員長報告)  第一三 番匠川上流地域災害復旧費国庫補助に関する請願委員長報告)  第一四 荒尾市海岸大島川堤防補強復旧工事費国庫補助に関する請願委員長報告)  第一五 県道都井岬福島線改修工事費国庫補助に関する請願委員長報告)  第一六 国道第三号線中一部改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一七 砂押改修工事促進に関する請願委員長報告)  第一八 北海道道路費国庫補助増額に関する請願委員長報告)  第一九 杉田川改修工事に関する請願委員長報告)  第二〇 島原半島循環道路実現に関する請願委員長報告)  第二一 南会津街道開通促進に関する請願委員長報告)  第二二 北海道地方費道中金山峠トンネル工事施行に関する請願委員長報告)  第二三 南海地震による飲料水被害地区水道施設および下水道改修請願(二件)(委員長報告)  第二四 県道島地鹿野線中一部改修工事促進に関する請願委員長報告)  第二五 夏川堤防岩手側補強工事施行に関する請願委員長報告)  第二六 新倉、奈良田間道路改修工事施行に関する請願委員長報告)  第二七 大淀川上流支川改修工事促進に関する請願委員長報告)  第二八 由良川河水統制えん堤工事再開および改修工事促進に関する請願委員長報告)  第二九 北上前沢沿岸地域護岸工事施行に関する請願委員長報告)  第三〇 アーリン台風による災害復旧費国庫補助に関する請願委員長報告)  第三一 北上川見前村地区護岸工事施行に関する請願委員長報告)  第三二 九州地方海岸堤防改修工事費国庫補助増額に関する請願委員長報告)  第三三 吉井川上流護岸防災工事施行に関する請願委員長報告)  第三四 梶並川堤防改修工事施行に関する請願委員長報告)  第三五 岡山県下の各河川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第三六 京福道路改良工事促進に関する請願委員長報告)  第三七 北上前沢地域護岸工事施行に関する請願委員長報告)  第三八 準地方費道江差岩内線中一部路線変更開さくに関する請願委員長報告)  第三九 吉井川支流宮川治水工事施行に関する請願委員長報告)  第四〇 吉井川津山地区護岸工事施行に関する請願委員長報告)  第四一 木屋川ダム建設工事再開に関する陳情委員長報告)  第四二 国道第四号線中古河町、新郷村間補裝工事施行に関する陳情委員長報告)  第四三 揖斐川堤防補強工事促進に関する陳情委員長報告)  第四四 藪川改修工事促進に関する陳情委員長報告)  第四五 戰災都市復興事業促進に関する陳情委員長報告)  第四六 災害復旧工事促進に関する陳情委員長報告)  第四七 道路改良補修費国庫補助増額に関する陳情委員長報告)  第四八 砂押改修工事促進に関する陳情委員長報告)  第四九 御山川外支川砂防工事施行に関する陳情委員長報告)  第五〇 黒崎川砂防工事施行に関する陳情委員長報告)  第五一 笹内川砂防工事施行に関する陳情委員長報告)  第五二 第二京浜国道補裝等に関する陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、両院法規委員選挙田中耕太郎君の議員辞職に伴い欠員となりました両院法規委員選挙をこれより行います。
  4. 大隈信幸

    大隈信幸君 只今両院法規委員補欠選挙は、成規手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  5. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 只今大隈君の動議賛成いたします。
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大隈君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長両院法規委員岡部常君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、彈劾裁判所裁判員辞任の件。一昨日星野芳樹君から彈劾裁判所裁判員を辞任いたしたい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) つきましては、この際、日程に追加して、只今欠員となりました彈劾裁判所裁判員選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  12. 大隈信幸

    大隈信幸君 只今彈劾裁判所裁判員補欠選挙は、成規手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  13. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 只今大隈君の動議賛成いたします。
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大隈君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長彈劾裁判所裁判員羽仁五郎君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第三、海外移住組合法廃止に関する法律案日程第四、国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收された場合の措置に関する法律案、(いずれも内閣提出)、以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。外務委員長野田俊作君。     —————————————    〔野田俊作登壇拍手
  18. 野田俊作

    野田俊作君 只今議題となりました二つ法律案につきまして、外務委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず、海外移住組合法廃止に関する法律案より御報告いたします。  この法律案昭和二年拓務省時代制定せられ、今日に至るまで尚存続いたしていたものでありまして、海外移住組合が殆んどその機能を停止しておる現状に鑑み、これを廃止したいというのがその提案の理由であります。本法案は極めて簡單なものでありまして、海外移住組合法廃止という点と、海外移住組合の清算、罰則等を処理するための準拠法たる消費生活協同組合法に必要なる修正をなすことが主な内容であります。  本委員会は本法案審議のため三月三日開会し、質疑討論の結果、海外移住組合法は、内容から見ても、形式からしても、今日の事態に適当なものでなく、これを廃止することは当然であること、尚、新事態に即応したこの種組合に代るべきものの設置の要否につき政府は篤と考究すべきであるとの意見が開陳せられました。採決の結果、本案全会一致政府原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に、国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收された場合の措置に関する法律案でありますが、この法案の趣旨は、国から有償拂下げた物件が後になつて略奪品として沒收された場合に、先に国庫に收納された代金を返戻しようとするものであります。政府の説明によりますと、本法案の対象となる略奪品の主なるものは、非鉄金属機械工具、タイプライター、ミシン、自動車、図書等で、その金額は一億円以下であろうとのことであります。  本委員会は、三月三日、本法案も併せて審議いたしましたが、質疑討論の結果、国が当初処分し得るものと考え売却したものを後に至つてこれを無償で沒收することは不合理であるから、被沒收者に支拂をすることは当然であるとの意見が多く、採決の結果、全会一致政府原案通り可決いたした次第であります。  以上報告いたします。(拍手
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  先ず海外移住組合法廃止に関する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔総員起立
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收された場合の措置に関する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔起立者多数〕
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第五、栄養士法の一部を改正する法律案日程第六、性病予防法等の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出)、以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。厚生委員長塚本重藏君。     —————————————    〔塚本重藏登壇拍手
  25. 塚本重藏

    塚本重藏君 只今上程になりました栄養士法の一部を改正する法律案並びに性病予防法等の一部を改正する法律案の両法案について、厚生委員会における審議経過並びにその結果を御報告申上げます。  先ず、栄養士法の一部を改正する法律案につきまして御報告申上げます。  今回改正せんとする要点の第一の点は、栄養士養成施設修業年限及び栄養士試験受験資格として必要な見習期間を二年以上とすることであります。これは現行制度によりますと、栄養士資格を得るには、厚生大臣の指定いたしました栄養士養成施設において一年以上栄養士たるに必要な知識及び技能を修得するか、又は一年以上栄養士の実務の見習をした後に、厚生大臣の行う栄養士試験に合格しなければならないことになつておりますが、施行の経験に鑑みまして、更にこの修業年限及び見習期間を延長し、栄養士資質向上を図ることが必要と認められるに当つたからであります。第二の点は、栄養士試験審査会に関する規定を新たに設けることであります。これは栄養士試験の公正を期するために必要と認められるからであります。以上が栄養士法の一部を改正する法律案提出理由及び改正の必要であります。  本委員会におきましては、三月三日及び七日の両日亘つて愼重審議を行なつたのでありますが、その間における質疑応答内容速記録によつてこれを御高覽願うことにいたします。昨七日質疑を終了いたしまして、討論に入りましたところ、一委員から、本法案により栄養士知識資質向上することは延いて国民の栄養向上にもなるので、非常に喜びに堪えないが、栄養半養成においては特に療養所及び病院において賄う患者の食事についても十分の考慮を拂つて頂きたいとの希望意見が述べられまして、本案賛成の意を表されたのであります。かくて討論を終りまして採決に入りましたところ、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に性病予防法等の一部を改正する法律案につきまして、その結果を御報告申上げます。  先ず本案提出理由を説明いたしますと、我が国公衆衛生に終戰後著しい発達を示して参つておるのでありますが、昭和二十二年の保健所法改正によりまして、保健所は従来行なつていた指導業務の外に、衛生に関しまする行政事務をも併せて行うようになり、地方第一線における公衆衛生問題につきましては保健所が責任を持ち、目下着々その成果を挙げるように努力いたしておるのであります。これらの保健所都道府県並びに政令で定める三十の市がこれを設置しており、且つ保健所法規定によつて都道府県知事又はこれらの市の市長衛生事務に関する権限保健所委任することによりまして、保健所を中心として衛生行政を実施しておる次第であります。然るに従来の衛生関係法律におきましては、これら市長権限について殆んど規定するところがありませんので、現在は地方自治法規定によりまして、都道府県知事衛生事務に関する権限の一部をこれらの市の市長委任することといたし、その委任範囲厚生次官通牒を以て示して来たのであります。併しながらかかる措置によるのみでは、尚行政事務を行う吏員の身分、権限委任に伴いまする費用負担関係等について種々不便がありますので、これを法律で明瞭に規定することといたして、性病予防法外公衆衛生関係十四件の法律改正することといたしたのであります。  次に改正案内容につきましてその大要を申上げます。第一に、従来都道府県知事権限に属する衛生事務のうち全県的考慮を要するもの、その他特殊なもの以外は、これを政令で定める三十の市につきましては、その市長をして行わしめることとし、各法律についてそれぞれの事項を規定したことであります。第二に、政令で定めまする市の市長は、その事務を行うために市の吏員の中から食品衛生監視員環境衛生監視員、屠畜検査員等の職員を任命し得ることといたしました。第三に、これらの市長が行いまする事務につきまして、その市が費用負担いたしましたときは、国庫よりその市に対して負担金を與えるようにしたいことであります。第四に、これらの法律の中の「行政官庁」「地方長官」等の用語現行用語に改めたこと等であります。以上の改正によりまして、これらの市についての都道府県と市との事務範囲及び市長の行う事務に伴う費用負担並びに手数料收入関係を明瞭にさせ、これらの衛生行政の一層の進達を期しておる次第であります。以上が本法案の概要であります。  本委員会におきましては、三月三日及び七日の両日亘つて愼重審議を行なつたのでありますが、その質疑応答の主なるものの一二を御紹介申上げます。この法案では、都道府県知事権限が一部政令で定める市の市長に移管されることになるが、従来これについてよいところも悪いところもあるようであるが、実際はどうであるかとの質問に対して、一部ではそういうところもあるようだが、一般にはよく行つておると思う、地方自治精神から言つても逐次こういう仕事は市に行わせることにするのが適当であると考えておる、その悪いところについては今後の指導によつて改めて行きたいとの答弁がありました。又現在大都市に教育、消防、警察についての権限を移しておるのであるが、土木建築或いは衛生行政についても全面的に地方に委讓してはどうか、都市にも大小があるが、これらに対して一部だけの権限を移すのか、或いは全面的に移す考えはないか。以上の質問に対しまして、衛生行政については只今の段階では最小限度市に委讓することにしておるのであるが、実施面においてよく検討して、どの程度委讓すべきかは十二分に論議する必要があると思うから、よく研究するとの答弁がありました。  以上の質疑応答の後、質疑を終了いたしまして討論に入りましたところ、別に御発言もなく、採決に入りまして、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上御報告申上げます。
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  先ず栄養士法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔起立者多数〕
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数を認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に性病予防法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔総員起立
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第七、農業災害補償法の一部を改正する法律案日程第八、農業災害補償法第十二條第三項の規定適用を除外する法律の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)、以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   「異議なしと呼ぶ者あり〕
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。農林委員長楠見義男君。     —————————————    〔楠見義男登壇拍手
  32. 楠見義男

    ○楠見義男君 只今議題となりました二つの案件につきまして、農林委員会審議経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず最初に農業災害補償法の一部を改正する法律案について御報告申上げます。  現行農業災害補償法は第一国会において制定せられたものでございまして、旧来の農業保險法及び家畜保險法を統合し、且つ農業災害補償制度強化拡充を図つたものでございますが、法律の目的は、農家農作物蚕兒及び家畜について不可抗力の災害によつて受ける損失を、保險的機構、即ち各農家市町村区域農業共済組合に一定の掛金を拂込んでこれと共済契約を結び、共済組合都道府県單位共済組合連合会との間に保險契約を結び、又連合会政府との間に再保險契約を結ぶという、この保險的機構の運営によりまして損失を填補し、以て農業経営の安定、農業生産確保に資すると共に、進んで積極的に災害防止予防等共同事業によつて損員を未然に防ぎ、或いは被害を最小限に止めんとするものでございます。而してたまたま現行法制定当時より、御承知のように、連年相次ぐ各地の風水害或いは病害、暖冬異変等々によりまして、一面においては再保險者たる政府の支出も少くはなかつたのでございますが、農家にとつては、本災害補償制度による共済金によりまして、勿論完全とは言えませんが、相当の損失填補を受け、直接生活費に、或いは次期の農業生産資金の一部として再起の途を講ずることができ、又最近では本制度農業手形制度の裏打ちとなりまして、金融上にも利用されておる実情であります。併しながら農業災害補償法は、その制定当時から必ずしも完璧なる制度とは言えなかつたことは御承知の通りでございまして、従つてその拡充強化のためには、殆んど毎国会これが修正案が或いは政府より或いは議員提出を以て提案せられて参つたのであります。  今回の改正案内容は、第一に、共済事故拡充いたしまするために、即ち農作物共済について虫害及び鳥獸害を加え、蚕繭共済について、蚕兒風水害地震、噴火による災害及び虫害を加え、又桑葉の病虫害を加えますと共に、第二に、都道府県知事権限として、新たに農業共済組合連合会に対する業務報告徴收会計検査等に関する監督上の権限を加え、本制度の運営上一層の適正を加えんとするものであります。  委員会審議に当りましては種々の質疑が行われ、なかんずく災害国家補償農民負担軽減の問題が大いに論議せられたのでございまして、即ち低米価政策が強行せられ、又農家経済が近時著しく窮迫を告げて参つた現在、更の又シヤウプ勧告を契機として、一般災害復旧全額国庫負担制度が漸次強く前面に押し出されて参つた今日の現状と照応いたしまして、農業災害における共済事故拡充は勿論結構ではあるが、問題は同時に農家負担増嵩を来たす点についての質疑、及び国庫全額負担要請に関しての論議が活溌に行われ、結論は、この問題は農政上の今後の課題として政府の真劍なる研究問題として後日の残された次第でございまして、詳細は速記録によつて御覽頂きたいと存じます。委員会は三回に亘る審議をいたしました後、昨七日討論採決に付しましたるところ、本案全会一致を以て衆議院送付原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に農業災害補償法第十二條第三項の規定適用を除外する法律の一部を改正する法律案について御報告申上げます。  農業災害補償法による共済掛金負担区分につきましては、現状は大体半分は農民、半分は国家負担ということになつて運営されておるのでありますが、現行法の第十二條によりますと、水稻陸稻及び麦等主要食糧農作物共済掛金につきましては、右申述べました国家負担分食糧管理特別会計がこれを負担し、同特別会計はその負担分消費者に転嫁するため主要食糧売渡価格中にこれを織り込む仕組みとなつておるのであります。併しながらこの規定制定後未だ実行せられず、別に農業災害補償法第十二條第三項の規定適用を除外する法律という、この法律臨時立法として制定せられ、昭和二十三年度及び同二十四年度におきましては、国庫負担金一般会計から食糧管理特別会計に繰入れられて参つたのでありますが、今回の改正法案におきましては、明二十五年度におきましても同様の措置をとらんとするものであります。  元来この消費者負担制度につきましては、現行農業災害補償法制定当時から、農業災害補償社会保障的制度であること、及び消費者転嫁大衆課税的性質を有する点に鑑みまして、種種論議をせられたところでございます。今回の改正法案審議及び討論に際しましても、速かに現在の臨時立法を恒久立法化することについての要請委員会支配的空気でございました。詳細は速記録によつて覽願いたいのでございますが、結局本案は、国家財政の見通しの困難なる現状においては臨時的措置も又止むを得ざるものとし、将来の検討にこれを委ね、委員会討論採決の結果、全会一致を以て衆議院送付原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔総員起立
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて両案は全部一致を以て可決せられました。      ——————————    〔帆足計発言の許可を求む〕
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 帆足計君。
  36. 帆足計

    帆足計君 本員はこの際、ストレプトマイシンの生産確保について緊急質問することの動議を提出いたします。
  37. 小林勝馬

    小林勝馬君 帆足君の動議賛成いたします。
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 帆足君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。帆足計君。    〔帆足計登壇拍手
  40. 帆足計

    帆足計君 我が国における結核患者の数は百五十万と言われております。従いまして五十人に一人或いは十世帶に一人の割合で結核に苦しむ不幸なる患者がいるわけでございます。結核当人並びに当人の家族並びにその周囲に與える苦痛、及びその治療の長期を要すること、並びにその物質的、精神的苦痛の如何に悲惨なものであるかということにつきましては、同僚議員各位の十分承知せられるところでございます。而も結核の最も恐るべき特質の一つは、それが社会的な疾患であるということでございます。従いまして、結核我が国に與えております打撃我が国経済に與えてあります打撃だけを勘定いたして見ましても、專門家の統計によりますと年間一千億に達する損害を與えておると計算されております。然るが故に、私は結核対策強化、特にその予防、早期の発見並びに治療強化は、政府並びに国家が非常なる努力を傾注せねばならぬところの刻下の急務中の急務であると考えるのでございます。  御承知のごとく結核の死亡率は欧米では今非常に少くなつております。例えばイギリスにおきましては五%、アメリカでは四%、デンマークでは三%という数字になりました。もう結核はさのみ重要でない問題になつておるに拘わらず、我が国におきましては実に一八%という大きな死亡率を示し、世界第一の結核国たるの悲惨なる現状に置かれておるのであります。近年における結核病理学の進歩は幸いにして非常なる発展を示し、第一にはBCGによる免疫の確保、第二には赤沈、レントゲン検査その他の検査によるところの早期発見の可能性、第三には気胸整形手術等によるところの医療法の進歩等によりまして、もはや我々が真劍なる努力をしますならば、これをなくし得るところの見通しを立て得る段階に達しておるのでございます。而もここに更に結核治療につきましての一大福音は、ズルフオンアミド剤、ペニシリンに引続きまして、化学療法の一大進歩といたしまして新たにストレプトマイシンを発見し得たということでございます。御承知の通りマイシンは結核に対して必ずしもまだ万能なものではございません。少くとも空洞性の結核並びに慢性の結核は未だ手の届かざるところでございます。併しながら初期の結核患者四十万並びに特殊結核患者と称せられる最も悲惨なる腸結核、喉頭結核又は結核性脳膜炎等の二十万の特殊患者、これらの最も苦しい而も従来不治と言われておりました方々に対しまして、マイシンが独得の効能を持つておりますことは、もはや医界におきまして確認されるの至り、昨年の十一月にアメリカにおきましてはこれを国民医療のリストに掲示するに至つたのでございます。  現在百五十万の患者のうち只今申上げましたように四十万の初期の患者があり、二十万の特殊の患者がございまして、合計六十万はこのマイシンの適応症でございます。この六十万の患者に対しまして本年度の凡その見通しは、その後若干増加したことと存じまするけれども、昨年末における政府当局の御答弁では、大凡輸入が一万人分、生産が一万人分、即ち六十万の適応症に対して僅か二万人の手当しか付かない。二十万の特殊患者に対して僅か二万人分の手当しか付かないというような数字になつております。従いましてマイシンが極度に欠乏いたしておりまするために、只今一キユールのマル公は凡そ一万四、五千円でございましようけれども、それが闇では十万円、五、六万円出しましても手に入りかねるような現状でございます。このような次第でありまするので、これが対策は実に急務中の急務でございます。従いまして当面の対策といたしましては、先ず第一に輸入に依存する以外に途はなかろうと存じます。現在ガリオア資金によりまして若干のものが輸入されておりまするけれども、今後ローガン構想によりましてボンド資金又はドル資金を獲得することができますならば、私は至急に輸入を増加して頂きたいと存じます。国民は一年のうちコーヒー茶椀一杯の砂糖を節約しても、各国民が一個のパンを節約しても、その節約した為替資金を以ちまして二十万の患者を救うことに、私は少しの御異存もなかろうと考えております。第二にはマイシンの生産確保のために直ちに準備し生産を開始する必要がございます。由来我が国は濕度が高く、微生物の化学に適しておる国でございます。皆さん御承知のように、ペニシリンによつて如何に多くの貴重なる人命が救われたかということは、皆さん毎日御体験の通りでございます。ペニシリンのごときも、すでにその品質、価格におきまして、もはや国際水準に近付き得るところまで到達いたしました。併しながらストレプトマイシンの生産の特色はペニシリンと違いまして、極めて大規模の設備を必要とするということでございます。只今技術者の方々のお見積りでは、この設備に一社当り概ね一億円乃至一億五千万円の設備資金を必要とするということになつております。而も化学生産の特色として少くも二年くらいはコストが高い。従いまして、このようなストレプトマイシンの生産を緒に付けまするためには、どういたしましても一定期間の保護育成政策を必要とする現状でございます。このような意味におきまして、私は政府当局がストレプトマイシンの生産確保の重要性をよく御認識なされ、こと人命に関する重要国策の一環として、将来の輸入ということも併せ考慮しつつ、業界が即ち生産者が合理的條件の下に安んじて生産の着手し、即刻準備し、生産を関始し得るような條件を作ることが国としての責任であると存じます。  このための條件といたしまして私共が政府に要求いたしたいことは、第一にはマイシンの生産設備資金の確保でございます。現在マイシンの生産開始にとりまして、その準備にとりまして最大の隘路は、この生産資金が手に入らないということでございます。設備資金確保の見通しが未だに付いていないということでございます。すでに数社のマイシン製造工場は薬事法の許可を得まして着々と準備を整えておるのでございまするけれども、遺憾ながら本格的生産にまだ着手し得ないような状況に置かれておるのでございます。勿論均衡予算の今日、資金の工面ということは非常なる苦心を要するところでございますけれども、私はストレプトマイシンのこの重要性ということから考えまするならば、政府は万難を排して、先ず第一の案としましては見返資金の中からこれを融資すべき性質のものであろうと存じます。第二に次善の策としましては、生命保險会社又は興銀等のごとく、長期資金調達の途を、力を有しておりまするところの金融機関の助力を仰ぐべきものであろうと存じます。尚更に市中銀行の理解を増すことも極めて重要でございます。これらの点につきまして私は政府がこの際マイシンの重要性に思いをいたし、これらの資金調達の途を開くために万全の努力を盡されることをお願いいたしたいのでございます。  第二には技術の問題でございます。この点に関しましては、ペニシリンの生産技術に対しましてアメリカからフオスター博士が参られまして、非常なる努力をして下さいました。我々は更にこの例に倣いまして、連合軍から技術顧問を派遣して頂くように努力せねばならないと思いまするが、そのような措置政府にとつて頂きますると共に、国内における技術の向上並びに交流について適切なる措置をとつて頂きたいと存じます。尚この機会に私共の要望いたしまする点は、結核その他の疾患撲滅のために完全なる化学薬品の発見発明のために、政府は一段の助成と協力をして頂きたいということでございます。  第三の問題は、当題の輸入の増大並びに国家買上げの問題でございます。この点に関しましては、将来の輸入のことも考慮いたしまして、当面は輸入と生産との間にプール組織のような形をとつて頂き、ここ二、三年の間は政府が確乎たる保護政策をとつて頂く態度を明らかにして頂きたいと思うのであります。これらの点に関しましては、業界においても、しばしば官民懇談会を開きましたけれども、生命保險協会におきましても、興銀におきましても、只今のような政府の政策では大事な預金を貸すことはできないという御答弁でございました。更に大蔵省、安本その他の当局は、厚生省の意図するところはよく分るけれども、結局吉田総理と大蔵大臣の政治力にかかつておるというような不幸な御答弁でございました。先生アメリカでは、たつた一人の幼兒が井戸の中に落ちましたときに、この貴重なる生命を救いますために全アメリカの世論が沸騰したと言われております。然るに我が国におきましては、命旦夕に迫る二十万の患者を前にしまして川田原評議に時を重ねておりますような現状は、どうしても改めて頂きたいと思うのでございます。私共はかかる事態を行にいたしまして、国会議員といたしまして我々の怠慢に思いをいたしまするときに、いても立つてもおられないような気がいたすのであります。本日は遺憾ながら総理並びに大蔵大臣は御欠席でございますけれども、副総理格たる林厚生大臣が御出席になつておられますから、どうか林厚生大臣の一段の御努力によりまして、ストレプトマイシンの生産につきましては、その生産條件の確保につきまして合理的な必要期間の育成策につきまして、はつきりした態度を明言せられ、設備資金の確保と将来の生産條件の確保生産を直ちに開始し得るような適切な経済政策を即刻とられることを言明つて頂きたいと思うのでございます。  私は前国会並びに予算委員会におきまして、一応厚生省御当局に対しましてこの点御注意を促しました。そのときの政府の御答弁がラジオで放送されますや、各方面から数十通の結核患者の方々の悲痛なる歎願のお手紙を貰いました。科学の恩惠がすでに手の届く所に来ておりながら、むなしく死を待つておりまするところの数十万の結核患者のことを考えますると、又そのうちには明日の命をも知れぬ腸結核、喉頭結核という、最も苦しい、最も伝染力の強い不幸な人達があることを考えますると、一刻も早く政府当局として統一した政策を確保し、実施して頂くことをお願いしたいのであります。私自身、一昨年秋過労のため喀血いたしまして、只今は毎週一回気胸をしながら登院をしておりまする患者の一人でございます。従いまして私は今後結核対策の議員連盟を皆様と共に結成し、更に努力を続け、厚生省当局を助けて、結核僕滅のため努力する決意でございます。どうか厚生大臣におきまして問題の重要性を認識れ、総理並びに大蔵大臣の完全なる了解を得まして、内閣打つて一丸とした政治力を以ちまして、この解決のため御努力あらんことをお願いする次第でございます。尚、本日大蔵大臣並びに吉和総理が御欠席でございますので、私から質問書の要旨をお届けいたして置きました。従いましてそれらを基といたしまして、政府における統一した施策をお示し下さることをお願いいたしまして、本日の緊急質問といたした次第でございます、(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  41. 林讓治

    ○国務大臣(林讓治君) 帆足議員にお答えいたします。  只今帆足議員からの御説明のありましたように、我が国におきましての現在の結核患者というものは約百五十万を超えておるであろうと考えておりまして、只今おつしやつた通りであります。一度結核にかかつた場合においては、本人の失業、貧困その他精神的にも又物質的にも苦痛のありますことは勿論のことでありますが、この病気が長期を要しまする慢性疾病であるという特質から、最惡の場合は家庭を破壊をいたしまするし、健全な社会生活をも阻害し、実質的に国家社会に與えまする経済的の損失というものは非常に大きいものと考えておるわけであります。又結核のため生産能力の低下並びに療養費等の損失につきましては、お説の通りに年間約一千億を越えることと考えておるわけであります。つきましては、結核対策公衆衛生対策上最も重要な問題であるばかりでなく、社会政策上の点から鑑みましても、又経済復興対策の見地から見ましても、極めて重要なる問題であると考えておるわけであります。従つてこの治療の薬といたしまして、幸いにストレプトマイシンの国内生産も先ずその緒に着き得られるのではなかろうかと考えておるわけでありますが、これを非常に緊急を要する問題と考えまして種々対策を講じております。尚この生産につきましては、連合軍総司令部の非常な好意によりましてその種の菌を讓受けまして、これを目下政府におきましても研究をいたしておりますが、漸くこの工業生産につきまして自信を得ることができましたので、昨年の九月、閣議におきましても、その生産を促すための種々なる方策をとるべきものといたしまして基本方針を定めたわけであります。その生産確保することといたしましたために、設備資金につきましては特別の考慮の今日拂うことといたしまして、特に昭和二十五年度におきましては、見返資金による設備資金の借入を目下計画をいたしておるわけでありまして、これは定めし成功いたして御期待に副い得られると深く信じておるわけであります。併しながらストレプトマイシンがまだ国内の生産の軌道に乘りますまでは、これを米国の輸入に仰いで参りたいと考えておるわけであります。つきましては、昭和二十五年度において六億三千百万円の買上げの予算を計上いたしまして、輸入品と国産品とを政府において買上げまして、価額をプールいたしまして一般に配給いたす計画を立てておるわけであります。尚、我が国のストレプトマイシンを必要といたしまする患者の数は少くとも二十五万人程度であろうかと考えておりますが、今年は国内生産が設備の完成が遅れて参りましたものですから、約二万人分程度のものができるに過ぎないような実情にあろうかと考えます。従いまして今年度におきましては約三万五千人分のものを輸入を計画いたしまして、そうして合計のところ約五万人分程度の需要を充たしたいと考えておるわけであります。尚、生産はペニシリンの技術と大体同様でありますので、今後尚一層技術の向上を図りまして、漸次相当の増産が期待せられておりますが、原料費その他の関係で、昭和二十六年度におきましても輸入品と国産品の価格に大きな開きのある場合は、引続き国家買上げの予算の措置を講じて参りたいと考えておるわけであります。尚、技術者の問題でありますが、是非ともペニシリン同様に日本の生産を完全ならしめるがために、目下総司令部に対しましてこれを折衝中であります。尚、厚生省といたしましては、今後帆足議員のおつしやいましたように、我々も全力を挙げてこれに邁進をいたしたいと考えております。(拍手
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣は病気のため、大蔵大臣は関係方面に出向いておりますので、両大臣の答弁は他日に留保されたい趣きでございます。      ——————————    〔木下源吾君発言の許可を求む〕
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木下源吾君。
  44. 木下源吾

    ○木下源吾君 本員はこの際、国鉄裁定控訴に関して緊急質問をすることの動議を提出いたします。
  45. 小林勝馬

    小林勝馬君 木下源吾君の動議賛成いたします。
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木下源吾君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。木下源吾君。    〔木下源吾君登壇拍手
  48. 木下源吾

    ○木下源吾君 私はこの際、国鉄裁定の問題に関しまして政府は控訴したということでありまするので、この機会に憲法を擁護するという建前、又国鉄の運営を良好に向上せしめるという両面から、政府質問をいたしたいと思つておるのであります。  要点は、仲裁委員会の裁定に従わないという政府の行為は憲法違反である。若し違反でないとするならば、公共企業会の従業員の生活権は何によつて保障せられるか。次は、政府は東京地方裁判所の判決に従つて債務履行のため国鉄に対して団体交渉をなさしむべきである。又理由のない控訴はなすべきではない。これが要点であります。  憲法の違反であるということは、同時にこの問題に関する限りは占領政策に対して従わないという疑いも十分であるのであります。申すまでもなく公共企業体の職員は公共の福祉のために労働を提供いたしております。そのために、憲法の十二條、十三條のいわゆる公共福祉に適合するものであり、同時に憲法二十八條の労働の基本権がそれ故にいわゆる制度されておるのであります。併しながら憲法二十五條の国民のいわゆる生存権に関しては全く別の意味を以て扱わなければならない。政府の今回の行為は、この罷業権とそうして仲裁制度というものを分離いたしまして、当然公務員が保護を受ける代りに設けられたこの制度を無視し、この制度の裁定という嚴然なる法律上の事実を曲げて、そうして公共企業体職員の生存権を脅かしておるのであります。この点がいわゆる憲法に私は違反するものであると、かように解釈いたします。尚且つ政府が違反にあらずとするならば、国家公務員に準ずる公共企業体職員の生活権を一体何によつて保障することができるか。保障しようと考えておるか。政府は国鉄裁定の問題を甚だ非民主的に解釈しておる。国有鉄道が只今の公共企業体になつたということの重大な理由の一つは、国有鉄道が強い自主権を持つことによつて民主化への方向を示したものである。鉄道大臣はこれが監督の地位にありまするが、大蔵大臣は又予算上に対する権限を持つておると称しまするけれども、政府はこの監督の権限を従来のような非民主的な、一方的な権限と解することは、根本において過ちであると私共は考える。今回の裁定の中にありまするところの予算上、資金上支出可能な部分と不可能な部分との限界を政府は曖昧にし、全くこれを模糊の中に葬り去らんとしておりますけれども、国鉄の自主性を尊重するという建前からこれを見るならば、国会権限に属する問題と国鉄の自主的に解決すべき問題とは明瞭な限界のあることを知らなければならない。  次に、政府は去る二月二十五日の東京地方裁判所の仮処分判決に従つて債務履行のために直ちに国鉄に団体交渉をなさしめなければなりません。申すまでもなく、この仮処分は普通の訴訟と違うことは法務総裁もお分りであろう。仮処分の判決は直ちに効力の発生しておるものであり、控訴によつてこの効力が停止されておるものではない。これは台閣の諸公すでにお分りであろうと思う。分つておることを行わないということは一体何に原因しておるのであるか。かくのごとき明瞭な事実、東京地方裁判所の判決は命令をしておるのであります。債務を履行すべしと條項を掲げておるに拘わらずこれをなさない。履行の方法までも示しておる。配分の方法について直ちに交渉すべきであるということを命じてあるに拘わらず、政府の監督するところの国鉄公社においてはこれをなさない、怠慢である。政府又これに対して傍観的態度でいるということは、義務履行に対して傍観的態度であるということは、全く無責任極まるものである。従つて理由のないところの今回の控訴は取止むべきである。政府は、国民の、国家の財政を擁護する見地を或いは主張するかも知れませんけれども、擁護をするという建前ならば、何故にあの仮処分の公判の際にこれに参加しなかつたのか。堂々と公開の裁判を行なつているのである。控訴の理由といたしまして新聞の伝うるところによれば、裁定判決の仮処分は強制執行権がないから仮処分の必要性は全くないと抗弁しておる。あの判決文を見れば分る通り、公共企業体であり、公益性を持つているものであり、且つ政府を尊重しておればこそ、寛大にも強制権を任意の履行に任してあるということが分らないのか。普通の高利貸の取引のようなものではございますまい。任意履行を政府に迫つておるという、この責任は更に政府は重大であることを痛感しなければならない。或いは又予算の自由流用などについての大蔵大臣の承認は、法規裁量ではなく自由裁量である、仮に法規裁量であつても僅かにそれは制限されているに過ぎないと、こう言つておるのでありますが、然らばその制限されておる法規とは一体何を指しているのであるか。これは大蔵大臣にも、同時に法務総裁にもお尋ねしなければならない。それは逆に法規裁量であつて、行政的自由裁量の部分こそ稀薄だということでなければならないのである。何故に公企労法を作つて仲裁制度を設けたのか。この点に関して政府は仲裁制度というものに対する認識が極めて不十分であり、一九四八年七月二十二日のマ元帥の書簡によれば、保護に代えるに調停仲裁の制度を設けなければならないとある。私は冒頭に占領政策にも違反する疑いがあるというのはこの点である。このことは台閣の諸公明瞭に銘記すべきである。このような仲裁の制度、その制度を作つたからいいではないか、これがマ書簡に従つているというだけでは済まされないのであります。この仲裁制度の機能をして真にその制度を設けた目的のために運営してこそ、初めてマ書簡に応えるゆえんであると我々は解さなければならない。真にやはり自由裁量であつて法規裁量ではない、かように確信を持つておる、そうして法規裁量で幾部分制限されるということを言つておるが、その法規とは何を指しているのであるかを、これをお尋ねしたいのである。  次にこの罷業権の制約と仲裁制度とは別個なものでないということは只今私が申上げた通りである。決して別個なものではなく、その故にこそ、不可分なものであるからこそ、そう解釈してこそ、民主主義的なものであると思うのである。要するに政府はこの裁定に関しまして仮処分の判決にも従わない、そうして公共企業体の公社の従業員をして極度の不安に陷らしめる、そのことは同時に国鉄運営の上に多大の支障を来たしている現状を何と見るか。速かに政府はこの点に関しまして飜意をし、これを実行する、義務を履行するということでなければならないと思うのであるが、この機会において本員は、特に、この国会において国鉄裁定に対する議決をいたしました、そのことは誠に敬服に価するものである。従つてこの国会におけるところの議決と殆んど同一趣旨による判決が東京利方裁判所によつて下されているこの事実に鑑み、政府は率直に誠意を披瀝して私の質問に対して答弁する義務があると思うのであります。再質問は保留いたします。(拍手)    〔国務大臣増田甲子七君登壇拍手
  49. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 木下さんにお答え申上げます。  御指摘のごとく公共企業体労働者諸君がその労働権の行使について一定の制約を受けているという事実、一面において労働條件の維持改善をでき得る限り政府、公共企業体において努力すべきものであるというお考えは、政府と全然所見を一つにしているわけでありまして、私共極めて御同感でございます。でございまするから、公労法第三十五條におきましては、協定若しくは裁定等は原則としては無條件にこれを呑むようにということが、これ又公共企業体に命令されております。ただ併しながらその第三十五條の但書におきまして、「同法第十六條に規定する事項について裁定が行われたときは同條の定めるところによる」、これ又法律に明定されておる次第でございまして、十六條とは、裁定若しくは協定の内容である労働條件の維持或いは改善に関する事柄のうち、予算に関係ある部分、資金上に関係ある部分、而してこの予算上、資金上支出することを不可能とする部分については政府を拘束しない、こう書いてあるわけであります。可能とする部分はもとよりぎりぎりまで資金上、予算上の奮発をすべきものであるというふうに、これ又三十五條に法の精神が明瞭に謳われているものと我々は解釈いたしております。ただ併しながら予算上、資金上ぎりぎりまで奮発いたしまして、裁定の内容、協定の内容である労働條件を維持し若しくは改善を図りましても、尚不可能な部分はいたし方ないということも法律に書かれておる次第でございます。ただ併しながらこれは第一項だけのことでありまして、政府を拘束しないからといつたそのまま放つて置いてはいけない、第二項によつて、果して予算上、資金上不可能なる部分はそのまま放つて置いてよろしいかどうか、国会独自の御判断に任せている次第であります。国会が御判断を下すつた結果、今回は不幸にして両院の意思決定は合致いたしませんために、承認が得せれませんので、我々は如何とも処置ができない、こういうふうな立場になつているのでございます。若し仮に承認が得られますれば、無理をいたしましても予算措置を講じ、資金上の措置を講ずるだけの責任を政府は新らしく負担するものと、こういうふうに我々は考えております。御承知のごとく承認は積極的に得られませんでした。ために協定或いは裁定は、協定、裁定のなされた日に遡つて効力を発生することを見ずして終つた次第でございます。でございまするから如何ともいたし方がなかつた次第でございまして、尚、政府全体の均衡予算からはもとよりでございまするが、あの法規の解釈は、專売公社なり国鉄公社なりの予算、資金という面から、可能か不可能かを決定する次第でございまして、国家全体の総合均衡予算というような見地からは我々は見ておりません。そういうことを見たのでは公共企業体労働者諸君に対して無理であるというふうに考えておりますから、従いまして公社の予算上、資金上可能か不可能かを我々は一生懸命研究し、判断し、思慮をめぐらした次第でございまするが、只今のところ十五億五百万円以外は裁定の内容を受諾しこれを履行することができなかつた次第でございます。将来の問題といたしましては、尚裁定の中には生産性を発場した場合にはこれこれの措置をすべしというような規定がございますから、これらの部分は最大限度これを忠実に履行いたしたい、こう考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣大屋晋三君登壇拍手
  50. 大屋晋三

    ○国務大臣(大屋晋三君) 只今の木下君に対する増田官房長官の答弁と全く私も同一に考えておる次第であります。そうして先週の土曜日に国鉄をしてこの東京地裁の仮処分の判決に対しまして控訴をいたさせましたが、その理由は、只今木下君が、当時国鉄公社から発表いたさせました控訴の理由を新聞に発表さしたうち一二御指摘になりまたが、その他数点の理由を以ちまして、木下君すでに御承知と思うのでありまするが、国鉄といたしまして、又政府といたしましても、あの仮処分の趣旨はこれは妥当でないという数点の理由によりまして、その理由はすでに新聞紙上に発表してある通りの理由によりまして控訴をいたさせた次第でございます。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉君登壇拍手
  51. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 木下さんにお答え申上げます。  公共企業体の職員は国家公務員に準ずる地位にあるものであります。全体の奉仕者としての性格、公共の福祉からする要請によりまして、全面的に団体行動権を制約されておるのであります。即ち罷業権をも禁止されておるのであります。これは憲法の解釈上からいたしまして当然のことである。併し公共企業体の職員と公社との間に紛争の生じますること、これ又ないとは言えないことであります。そこでその紛争を調停いたすために調停仲裁の制度を設けたのであります。併しながらその制度といたしましても絶対的なものでないことは申すまでもないのでありまして、各種の制約を受けておるのでありまして、公労法に規定するところがその通りであります。政府はこの公労法の規定に従いまして行動いたしておるのでありまして、決してこの公労法を無視はいたしておらぬつもりであります。罷業権の禁止と調停仲裁の制度とか表裏一体をなすがごときお話でありましたが、私共はさように考えておりません。それはおのずから別々の理由によつて成立しておるのであります。そこで私は憲法違反の問題は毛頭起らないものと考えております。  それからなぜ控訴をいたしたかという点につきまして法律上の考えを申上げます。東京地方裁判所の判決は御承知の通りでありまするが、この判決の理由は、私共の考えでは法律上到底成立つことができないものと確信をいたしておるのであります。即ち第一に、仮処分のいわゆる必要性がないということであります。この判決の申しておりまするように、任意の行動を希望するというような仮処分は、法律的に申して殆んど無意味なものであると考えるのであります。第二番目は、予算の移流用の承認の点でありまするが、この承認が自由裁量行為であることは疑う余地がないのであります。たとい法規裁量の行為といたしましても、大蔵大臣の承認をするという行為は、必要不可欠なことでありまして、判決は、この行為をも、大蔵大臣の承認という行為をも、必要でないもののごとき判断をしておりまするのは、最も重大なるこれは誤謬であると考えるのであります。その次には、判決が、国会におきましてたとえ承認の決議がなかつたとしても、裁定は有効に存続するというように申しているのでありまするけれども、この解釈は私は全然誤まつていると考えます。公労法の第十六條、第三十五條の文理の上から判断いたしましても、到底そのような解釈は成り立たぬものであります。現国会におきまして、御承知のごとく裁定につきまして御決議を願つたのでありまするが、両院一致した御承認がなかつたのであります。従つて裁定は効力を発生することができずに終つたものと我我解しているのであります。又今日におきましてもさように確信をいたしているのであります。従つてこの確信に基きまして、この東京地方裁判所の判決に直ちに応じて行くわけには参らないのであります。(拍手従つてこれに対して控訴をいたしたのであります。私共はこれは重大なる法律上の問題でありまするから、純粹に法律上の理論を以てこれに対抗いたしまして、そうして上級裁判所の最後の判断を待ちたいと思つているのであります。決して政治的の考慮に出でているわけではございません。(拍手)    〔木下源吾君発言の許可を求む〕
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木下源吾君。    〔木下源吾君登壇
  53. 木下源吾

    ○木下源吾君 只今法務総裁の御答弁の中に、純然たる自由裁量であると、この点です。私は控訴の理由の中に、法規に制限さるる部分があるということを謳つている以上、何の法規を一体指しているのか、この点をお尋ねしている。又仮処分の効力については重大なる問題であります。これをお尋ねしている。私は如何に法務総裁が見解が違うと言つても、我が国の裁判の制度を是認する以上、東京地方裁判所の判決に従わなければならない、その効力が発生しているものを如何にここでこれを拒否いたしましても、法律を守るならば……。従つて私はこの仮処分の判決の効力についてお尋ねしているのである。只今増田官房長官は、最大限度を履行すると言われておつたが、これは一体何を意味しているのか。政府は今控訴をしている、そういう最高の裁判の判決の上においてやろうと言うのか、或いは又公共企業体に予算において、業績において、よくなつたならば、拂えるようになつたら拂うというのか、その点を明瞭にして貰いたいのが一つ。  もう一つは、予算上、資金上不可能な部分というのを、国鉄の経理の中の予算上、資金上の問題はどういうふうに解釈しておるのか。十八億数千万円というものは、すでに国鉄においては自主権を持つた国鉄においては可能として大蔵大臣の承認を求めておるのである。然るに大蔵大臣は十五億五百万円より承認を與えておらない。残余の部分は正に自主権を持つた国鉄それ自体が支出可能と言つているのである。殊に仲裁裁定というものは客観的に見ておるのである。独断であり主観でやろうとする現内閣のような性格に対しては鋭く対立しておる。客観的に見て可能だと、こういうように裁定が下されておるのである。この点について、政府は殊にこの不可能な部分について国会に承認を求めたと言いますけれども、何らの予算の伴わないそういうものを、裁定を国会に持つて来た理由が初めから分らない。予算を組んでそうして国会に承認を求めるべきではないか。国会は一体予算のない裁定をそのまま持つて来てですね、国会はただ予算上において、財政上の問題だけにおいて考慮するのであつて、裁定のよつて生れて来た根本を分析して国会はこれを是非曲直を言うのではない。そういうことを混同しておるのであるからこういう間違いを起す。我国の今日の民主化の過程において、現内閣のこういうような間違いを私は外国に聞かれたならば、見られたならば、どういう一体外国では考えられるか。民主的に今着々と進んでおると、かように我々は考えたいのである。この主観の独断を以てすべて、国会を律して行こうと、これは大いなる誤まりである。殊に本院においては賢くも、賢明に、あの議決を御覽になれば分る通りに、国会が承認をしないと言われておるが、本院はそういうことには触れない。政府は予算を付けて出さないことには触れないで、賢明にも政府のとるべき途を教えて上げておる。参議院はこの議決において教えて上げておる。この点が分らないというのは私は不思議だ。又大屋大臣は、只今官房長官が言われたようだというようなことで、無責任極まる。そういうことで一体国鉄の業績が増進すると考えておられるならば以ての外だ。今やかかる政策のためにこそどういう事態が起きておるかは台閣の諸公はよく分つておるでありましよう。そうして又してもこれらの制度法律によつて行わなければならない義務を怠り、僅かな賞與制度というようなものでごまかそうとしておる。そういうことでは幾ら経つて我が国の民主主義と向上いたしません。もつと科学的に、どうすれば一体民主主義に合致するものであるか、主観の独断を止めて、客観をも考慮に入れて、(「時間はあるか」と呼ぶ者あり)そういうことも十分にお考えにならなければ国政の運営は私は円滑に行かないとの考えから、もつともつと誠意ある答弁を私は期待するものである。    〔国務大臣殖田俊吉君登壇拍手
  54. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 先ず仮処分の効力について申上げます。仮処分は仮処分でありまするから、最後の決定はまだずつと後になるのでありまするが、これに対しましては、我々は、公社は控訴いたしました。控訴中でありましても履行の義務があるということは申すまでもないのであります。(「何故やらない」と呼ぶ者あり)併しながら判決と雖も当事者に不能を強いることはできないのであります。公社はこの三億円の支出をする権能を持ちません。不可能であります。公社にとつて……。公社は不可能の行動、行為をすることはできないからしないのであります。(「三百代言」と呼ぶ者あり)如何に公社が誠意を以ていたしましても、その義務を履行するにもする方法がないのでありますから、さように御承知を願いたいのであります。  更に自由裁量の点でありまするが、自由裁量と雖も各種の法則の制約を受けるということを申したので、自由裁量であるが故に、勝手に大蔵大臣が出したくないから出さぬ、出したいから出すと、こういうものではない。財政法その他各種の法規によりまして、そうして公正に法規に従い、そうして予算に従い、(「法規とは何だ」と呼ぶ者あり)それはいろいろあります。(「いろいろあるものを皆言え」と呼ぶ者あり)いろいろ申す必要はないでありましよう。(「必要がある」と呼ぶ者あり)完全なる自由裁量ではないと、そこまでは言わないと、自由裁量という意味は全く絶対に自由ということを言うておるのではないんだ、こういうことを申しておるのであります。(「勉強して来い」と呼ぶ者あり)例えば資金上、予算上不可能であるという場合に、ここに石炭費がある、或いは修繕費がある、これを出したらいいじやないかということを言われるのでありまするけれども、併しながら国家は鉄道に対しまして一定の輸送量、一定の能率の維持を要求しておるのであります。これは国民全体のために要求しておるのであります。それらをも、何といいますか、それらをも食い込んで、そうして労働者に金を拂うということはできないのであります。これは当然大蔵大臣のなし得ざるところであります。従つて大蔵大臣はさような制約をも受けるのであります。各種の意味におきまして制約を受けておるのであります。そのことを申しただけであります。(「了承」と味ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣増田申子七君登壇拍手
  55. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 木下さんにお答え申上げます。  先ず政府は、裁定を可能なる部分は最大限度にこれを履行すべきものであるという点については、先程私の御答弁によつて御了承を得た次第でございまするが、然らば将来も裁定を可能になつたならば呑むかどうかというような御質問でございましたから、これに対してお答え申上げます。第十六條第一項によりまして、我々は不可能な部分は政府を拘束しない、併しながらただ放つて置いてはいけないのでございまするから、同條第二項によつて国会に対して法所定の手続をとつた次第であります。でございまするから、あの所定の手続をとつたときに、公社の予算上、資金上可能なる最大限度の履行はいたし、受諾はいたし、裁定はこれを履行した次第でございまして、残余の裁定の部分は同條第二項によつて国会において所定の手続がなければ我我は履行しない次第でございます。而して同條第二項によつて国会においては承認という積極的の行為がなされなかつた次第でございまするから、裁定は将来に向つて、過去に遡つて効力を発生しない。終局裁定は我々の見解といたしましては現在生きていないと、こう解釈いたしておる次第でございます。もとより今は法廷において係争中でございまするから、将来一審、二審、三審というようなことで終局的に決定がなされれば、そのときは又別でございます。  それから国鉄においては自主的の立場を持つておる、そこで自主的の立場のおいて十八億出し得ると言つたのであるから、出せばよろしいのじやないかという御質問にお答え申上げます。我我は国鉄は全然自主的というふうに考えておりません、公共企業体というものは政府の監督下にある、国鉄は政府のうち運輸大臣の監督下にあると、こう考えております。従つて国鉄がこれこれ可能であると言つても、自主的に、あらゆる関係を離れて、無條件的にこれこれ可能だという事実にはならないと、こう考えております。而も国鉄が我々に申入れしたのは、これだけできれば拂いたいと、こういう意味の意思表示をしただけでございまして、これこれ可能であるというような認定をいたしたものと我々は考えておりません。  それから第十六條第一項に該当するかどうかは主観的に決定すべきものではない、客観的に決定すべきものであるというようなお話でございまするが、今法務総裁も言われましたが、自由裁量というものは何も、我がまま勝手に、気ままに判断するというのじやございません。御承知の通り、木下さんの夙に御熟知の通り、行政法上の言葉でありまして、行政上法律関係政府の責任において判断するということでございまして、その判断は政府に任されておる。而もこれは客観的に可能であるかどうか、不可能であるかどうかということを忠実に決断すべきである。法規裁量ということになりますと、そういう判断さえ許されないのでありまして、我々は公労法第十六條第一項は行政官庁の裁量の範囲内に属することである、行政官庁の裁量権の範囲内のことであると、こう考えております。然らば如何なる裁量をするかというと、皆様の議決にかかる予算の精神内容法律というものを忠実に探求しなければならぬ。皆様の、御議決にかかる鉄道公社の予算というのは、物件費、人件費等にそれぞれ分れておるのでありまして、輸送力だとか、或いは走行キロ程というものを破つてまで人件費に廻してはいかぬという意味で皆様が決議されておるわけです。こう考えておる次第であります。(拍手
  56. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大屋運輸大臣は御答弁がないという趣きでございます。大蔵大臣は関係方面に出向いておりますので、他日御答弁いたしたい趣きでございます。      ——————————    〔油井賢太郎君発言の許可を求む〕
  57. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 油井賢太郎君。
  58. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 本員はこの際、物価安定対策に関して緊急質問をすることの動議を提出いたします。
  59. 早川愼一

    ○早川愼一君 只今の油井君の動議賛成いたします。
  60. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 油井君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。油井賢太郎君。    〔油井賢太郎君登壇拍手
  62. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 私は吉田内閣のとつておるデフレ政策による物価の急落に伴い生じておる諸現像につき、産業界が如何に不安のどん底にあるかということを申述べ、首相、通産大臣、労働大臣、安本の各大臣に、この対策方をどうするかという点につき質問をいたしたいと存ずるのであります。首相初め各大臣は、去る一月末の本会議場におきまして、その施政方針の演説中に、口を揃えてデイス・インフレ経済政策を自画自讃しておつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ち戰後におきますところのインフレは、現内閣によつてすつかり影をひそめ、通貨は異常を示さず、物価は横這いに安定し、生産は増大し、国民生活も亦安定の軌道に乘り、国家の復興見るべきものありという意見を述べられたのであります。併しながら果して言われたようなごとき安定の落着きを現在示しておりますかどうか。いま日本の情勢がどんな状態になつているかということの一番よく分るのは、新聞紙上に出ておる事柄を熱読することであります。その新聞紙上に最近現われております報道は、実に陰惨であり、廃頽と絶望の渕に沈淪しておる人々がどんなに多いかということを明確に示しております。未だ曾てないような悲惨な生活状態、中には税金の過重のために一家挙げて心中をしておるというようなことまで報道されておるのであります。一体首相を初め閣僚の諸君が本当に新聞を御覧になつておるかどうかということさえ疑われるのであります。経済の危機におきましても、三月危機ということを毎日のように謳つており、警鐘を打鳴らし、政府の善処方を要望しておるにも拘わらず、口を開けば大なる楽観主義を大いに国民の前に並べまして、経済政策の方針に警告を発するところの善良なる官吏は首を切られ、国を思う誠を披瀝する人々は、ためにする言動だというふうにあつさり片付けられ、本当の独善振りを発揮しておるのであります。池田大蔵大臣或いは青木安本長官が政府を代表いたしまして、今日の経済事情がデフレではなくてデイス・インフレであると強く主張されておりますけれども、丁度これは第一次吉田内閣におきまして時の大蔵大臣の石橋湛山氏が、あの僅か一ケ年間に五倍、六倍といふ物価騰貴或いはこれに関連して起きましたインフレ現象を、これはインフレではないと断言されたのと全く好一対の対照を示しておるのであります。このインフレを收束することは、成る程現内閣の使命でもあつたでしよう。併しながらそのインフレ收束に対しましては、いわゆるデフレ的不安を釀成しないような方途が講ぜらるべきであつたのであります。然るにも拘わらず、自由党の諸君も現在の状況を称して、やはりデフレであるということを言つておりますが、このデフレ政策の改善に対して肝腎な政策を何も持つておらない。この点は只今これから私が申上げるところの物価の水準を如何に決めるかという点についても、何ら国民に政策を現わしていないということでも明瞭であります。一体物価というものは、デイス・インフレの線によつてはどの点に安定させるかということを明瞭に国民に現わすべきであつたと思うのであります。即ち最近の状態を見ますというと、一部の産業を除きましては、大体現政府の主張される物価低落の方向に向いておるのであります。併しながらその低落の方向に向いておる或る産業においては、單なる低落でなしに、急落であり、企業の崩壞であり、破綻を来すというような状況に陷つております。これに対しまして、やはり相当の技術的なる政府の施策を與えるべきではないのでしようか。この点は幸い青木安本長官がここにおられまして、後程お話があるでしようが、徹底的に国民に対して今の欠陷を如何にして改善するかということを表現されて頂きたいと思うのであります。凡そ物価は資本主義経済になりますれば、需給のバランスによつていろいろに変動するのは当然であります。生産が上つて物が豊富になつておるのにも拘わらず、これを消費するところの力がなければ下落の方向を迫るのは当り前であります。これは我々国会において審議されておりますところの給與ベース改善等にも大きな関連があるのであります。我々国民の生活も、戰後におきましてすでに五年も経過した今日、戰争直後のような耐乏生活と現在の生活というものは相当変動があつてもいい、向上されてもいいというのは当り前であります。生産が増強されて物が豊富になつた以上は、やはり我々国民生活もそれに従つて消費面の増大を期すということも又当然となつて参るのであります。それに対して政府は安易なるところの政策をとり、賃金ベースは釘付けにするという点のみを頑強に死守いたしまして、力のない、結束力のない産業界、殊に中小企業界がどんなに苦しむとも、これに対して何ら対策を示さないというのが現内閣の信條ではないでしようか。一例を挙げますれば、最近纖維品だけでも約百七十四億円という滯貨があるということを通産省から発表されております。その外の物資も、鉄鋼或いはその他一千三百億円になんなんとするところの巨大な滯貨が今日各所に散在いたしておるのであります。これが物価低落に大なる拍車をかけておるのであります。その纖維品だけの状況を申上げても、昨年の夏までは、政府が所有していた、政府機関のあの公団が所有していた纖維品がどんどん放出されたならば、国民は喜んでこれを受け、喜んで買つたでありましよう。併しながらその後情勢が変化いたしまして、昨年の秋のシヤウプ勧告が出て織物に対するところの消費税四割というものが撤廃されることに決定した、即ち一月になれば税金がなくなるのだから今から高い物を買う必要がないという心理状態によつて、国民の消費は急激に減退したのであります。減退した上に、更に又今の公団の手持品百七十四億の品物を一挙にこの三月一杯を以て売出して、国民に強いて買取らせんというような政策を現内閣がとつたのであります。併しこのことは賢明なるところの関係方面におきましても多少の延長を認めるように政府にも勧告せられるようでありますが、こういつたような調子で、もう業者が苦しもうとどうしようと、政府政府自体の都合さえよければどんな政策でも敢えてするというようなことをやりつつあるのであります。こういう点が現内閣にとつて国民怨嗟の的となる原因であります。マル公が外されまして自由になつたといたしましても、生産面と消費面の間の摩擦の緩和をできるだけ図つて行くべき一つの計画がやはり必要であると思うのであります。現内閣は自由主義経済に徹しており、統制経済を外すということについて汲々とせられる余り、その外す方策について何ら考えておらないということは、日本産業のために実に不幸である。而も日本再建のために最も肝要であるところの輸出産業がこのため阻害されておる事実を政府においては何と見ておるのでありましようか。アメリカにおきましても、日本の製品は買う後から後から値下りをするから恐ろしくて後は買えないというようなことを言つており、輸出減退の大きな原動力となつておるのであります。いわゆる政府みずからがダンピング競争の一員となつておるというようなことが、日本の再建、貿易進展に大きな阻害となつておるということが言われておるのであります。こういう点に関しまして、安本長官として如何なる対策をお持ちになるか、明確にせられたいのであります。  更に又物価というものはどの程度までに止めるかという大局からのみでなく、その物価のうちにもいろいろな品種がある。例えば価格補給金を外した物資、いわゆる安定帶物資というようなものについては、価格補給金を外したがために却つて二割或いは三割値上りがあつたのもあります。更に又主食等におきましても、農民のために米価の引上げというようなことも国会において行われ、多少の高騰を示しておるのもあるのであります。併し一般全体を平均いたしまして物価が下落しておるという現象は、即ちこれらの多少高騰したものを除いてその残りというものは大幅に下落の歩調を示しておる。こういうような状況で以て日本の経済界の内容が好転することは困難であります。従つて安定本部長官が予算委員会等に示されました国民所得三兆二千億というものが果して取り得るかどうかということを一応検討願いたい。恐らくこれは昭和二十五年度においては大幅に削減されてしまうような時期が来るのではないか。こういう点について、現政府が予算面に現わしたところの方策と実際経済社会面に現われておる現象を如何にマツチさせるかということを御回答願いたいと思うのであります。又只今出席されておりませんけれども、労働大臣といたしましても、企業の合理化によるところの産業の発展ということにより或る程度の失業者が出ることは、これは止むを得ないというふうな話をされております。併しながら物価の大幅、急激なる暴落によるところの破綻或いは破産者の出現というようなことにより、そういう産業の配下によるところの人々が、大きな人員が失業するということは全然考えておられないようであります。こういう点につきまして、今後労働大臣といたしまして、現内閣のとられる政策と相矛盾しておる点を如何に解決するかということをお尋ねしたいと思います。又大蔵大臣といたしましても、物価の思わざる値下りによるところの経済破綻が若しあつたとすれば、それによつて影響するところのものは直接金融面に響いて来るのが当然であります。今金融界におきましては、大資本だけに対して相当の融資をしておるのではないかと一般大衆より非難の的となつておりますが、全く今日物価の動きを見ましても、大資本系統、大企業系統におきましては余り低落しておらない。割合に堅実な歩調をとり、いわゆる中小企業者のみが今日物価低落の犠牲となつて、金詰り或いは資金の不足ということを心から味わつておるというような状況になつております。こういう点につきまして如何に大蔵大臣が処理されるかということを私は伺いたいと思うのであります。本日は出席されておりませんけれども、実は計画性の全然ない自由放任主義経済に徹底せる現内閣にこういう質問をするのは或いは間違つておるのかも知れないけれども、併しながら対策ということにつきまして、一言国民に挨拶せられるのが至当であると思いまして、緊急質問をいたした次第であります。(拍手)    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  63. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 只今の油井議員の御質問の、特に物価に関する問題についてお答えを申上げたいと存じます。  油井議員は、物価の不均衡の是正と最近の物価下落の傾向に対する政府の考え方はどうかという御質問であると存じます。おのおのの商品の価格は相互に均衡を得ていなければならないのでありますが、公定価格制度の下におきましては、自由経済下におきますると同様な均衡を保つことが実行の上で困難な場合があるのでございます。併しながら最近の需給状況の緩和しておりまする商品につきましては、漸次マル公を廃しておりまするから、各商品間の価格の不均衡は是正されて行くものと考えるのでございます。今後尚マル公の存続するもので均衡を得ていないもの、例えて申しますれば電気料金であるとか家賃等のごときものにつきましては、今後の需給状況の動向とその他の事情を勘案いたしまして、漸次是正して行く方針でございます。  次に最近の物価下落の傾向に対しましては、物価当局といたしましては、最近における各種商品の需給状況の緩和の実情に鑑みまして、漸次マル公を廃止して行く方針であります。一部の物資が滯貨処理とか或いは金詰り等の理由で不当に下落しておるものがありますけれども、これらに対しましては、実情に即して金融面その他の措置を講じて参りたい所存でございます。お答えを申上げた次第でございます。(拍手
  64. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣、大蔵大臣兼通商産業大臣及び労働大臣は後日答弁の趣きでございます。      ——————————    〔淺岡信夫君発言の許可を求む〕
  65. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 淺岡信夫君。
  66. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君 本員はこの際、徳田書記長のソ連に対する要請に関して緊急質問をするとの動議を提出いたします。
  67. 早川愼一

    ○早川愼一君 淺岡君の只今動議賛成いたします。
  68. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 淺岡君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。淺岡信夫君。    〔淺岡信夫君登壇拍手
  70. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君 私は自由党を代表いたしまして、総理大臣並びに法務総裁に質問をいたしたいと思います。  昨年の十二月二十一日、許されて対日理事会を傍聽いたしました。その後第百八回までの対日理事会の大半を傍聽いたしたのでございまするが、去る三月一日の第百八回の対日理事会を傍聽いたした折、事務局からそのシーボルド議長の声明書を手交されたのであります。私はこの声明書を本院で朗読いたします前に、昨年十二月二十一日の第百二回のシーボルド議長のその結論を読みたいと思います。議長に特にお許しを頂きまして、この百二回の声明書を速記録に載せて頂きたいと思うのであります。この末尾に、  「併しながら、如何に推測を逞しくしても、ソ連が抑留されている日本人捕虜の氏名、所在について聊かの情報も提供せず、死亡者に関する如何なる形式の基本統計も示さない怠慢、拒否、無能力を正当化する根拠は見当らない。   ソ連当局が、收容中の不幸な日本人が何人、どこにいて、そしてどうなつたから知らないことがあり得るであろうか。ソ連政府は、收容所には收容者名簿も人員表も死亡者記録もなかつたということを我々に信ぜよというのであろうか。   私は今ソ連代表に対し、これらの簡單で而も最も重要な問題に対し、ソ連代表が回答すべきことを重ねて要請する義務を持つものである。マツカーサー元帥、総司令部、日本全国民のみならず、全世界の文明人はこの事実を知りたがつている。   又私は対日理事会の全代表に対し、全代表が連合軍最高司令部マツカーサー元帥及び総司令部を援助し、懸案の日本人引揚問題の真相を暴露し、我々の前に蔽われている秘密のヴエールを取除くため協力され、その結果、抑留中ソ連領で死亡した日本人の捕虜並びに一般抑留の数と氏名をはつきり知り、現在尚ソ連に残されている日本人の引揚促進のためあらゆる協力と支持を與えられんことを要請するものである。」  更に第百八回の声明書を参議院の渉外部において訳したものであります。  総司令部   極東司令部渉外局発表     一九五〇年三月一日    〔「もつと大きい声でやれ」と呼ぶ者あり〕   一九五〇年三月一日開催第百八回会議席上における連合国対日理事会議長米国代表ウイリアム・J・シーボルド氏の声明   本理事会理事諸君は一九四九年十二月二十一日の第百二回理事会会議における私の声明を想起せらるることと思う。右声明において、私はソヴィエト連邦当局が日本人捕虜を共産主義者に転向せしめんとして実施せる組織的政治教育に関する日本人帰還者よりの多数の報告を総司令部が受領したる旨に言及した。この点に関し日本人捕虜に引揚者選択を決定要件として共産主義を受容するの止むなきに至らしめんとするソ連の意図については、もはや聊かも疑いの余地なき程多くの証拠が得られ、引揚者問題中、この点に関してはこれ以上触れる必要を感じない。   併し私は当理事会が去る二月二十三日参議院在外同胞引揚に関する委員会に持出された重大な訴えを看過してはならないと信ずる。同委員会において、最近の引揚者二名が、一九四九年九月十五日第九九地区(カラカンダ)第九收容所にて赤軍の一将校が一群の日本捕虜に対し、日本共産党書記長徳田球一がソ連官憲へ日本人捕虜の反動的なる者は盡くソ連内に留め、共産主義に転向せる者のみを帰還せしめられたいとの要求を書面を以て申込んで来ていると  語つた旨の証言をしているのである。二月二十三日、衆議院在外同胞引揚に関する委員会において行われたこの証言の外に、私は去月ソ連より帰還せる四十四名の日本人より口供書を受けている。これらの四十四名の帰還者は誓言の下に次の事項を証言した。それは一九四九年九月十五日、赤軍の政治部将校の一人がカラカンダ地区の第九收容所に收容されていた帰還者に、曾て日本の警察又は憲兵隊に勤務したことのある捕虜若しくは一般人でいわゆる反動的の者は盡くソ連内に無期限に抑留し、共産主義を完全に身につけた者のみが日本へ帰還せられる機会を持ち得るのであると語つたということである。更にこれら四十四名の帰還者は、カラカンダ收容所における赤軍のその政治将校が、日本共産党徳田書記長からソ連官憲へ書面を以て、ソ連政府は日本人捕虜に関した前記のごとき政扱をなすよう、特に要求して来ていると語つた旨証言している。   記録として本員はこれらの口供書数通の英文訳を発表する。    供述書            京都府舞鶴市        一九五〇年二月十四日   私は、私の良心に従い、何事も附加せず、又何事も隠さず真実を申立てることを確言する。私は自分の意思によつて次のことを宣言する。   一九四九年九月十五日、ソ連邦カラカンダ地区第九小收容所において、捕虜收容所政治部ヒラトフ少尉が該收容所長心得マツセルスキー(音訳)立会の下に、日本人通訳官を通して左記の声明をなせしことを私の良心に基き誓言します。   「我々は日本共産党徳田書記長より、共産党員にならざるものは何人と雖も帰還せざるようとの申入れを受けている。よつて反動的の者は一人も帰還せしめることはできない。お前達は皆直ちに入党するが得策であろう。」   この供述は一葉に書かれ、威圧の下に作られたものではありません。      全文終り       署名 松尾茂雄(音訳)マル印   証人  歩兵少佐 P・B・マウントジヨイ署名   CMP中尉 A・T・ヴォロナキス署名    供述書           京都府舞鶴市   私は、私の良心に従い、何事も附加せず、又何事も隠さず、真実を申立てることを確言する。私は自分の意思によつて次のことを誓言する。一九四九年九月十五日午前十一時頃、タシユケントより新たに到着せる我々の部隊凡そ三百名は、九九地区第九小收容所の倶楽部へ冬期準備のため集合を命ぜられた。この集合は小收容所政治部将校(カン通訳随伴)及び小收容所代理司令官が召集したのである。この集合においてミネタ(日本人捕虜)は「我々は帰還に関するソ連声明にある九万五千人中に含まれているか、いないか」と聞いた。これに対し……
  71. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 淺岡君、文書の引用の朗読は簡單に願います。
  72. 淺岡信夫

    ○淺岡信夫君(続) 只今議長から御注意がございましたので、こうした引例が四つ出ておりまするが、速記録に載せさして頂くことにいたしまして、結論を読みます。   私はこれらの口供書に盛られた非難評価は困難なことであると告白せざるを得ない。これらの口供書は、それに包含する日本共産党の書記長とソ連官憲との直接関係を示すものであつて、重大な事犯であり、それによつて前者はみずからを数千の同胞日本人の生命に対する独裁者たる地位に置いたのである。今日の会議にソ連委員が出席しておらるるならば恐らく本件に関し何言かの発言があり、それが本件の適切なる見通しに便宜が與えられたことと思惟するが故に、本日同委員の欠席は頗る遺憾とするところである。勿論本件に関しては、日本共産党側においてもこの声明を読まれたなら、本件事実の否定、強烈なる否定があることと思われる。併し單なる否定は、ただただ同胞の帰還を促進せしむる助けとならんとの目的を以て其の事情を供述せる四十四名の真摯なる人々が誓言してなせる供述書を拭い消すことはむずかしい。私は繰返し言おう。本件の訴えは重大である。これに加えられたる汚点は單なる否定を以て消し去ることはできぬ。かかる汚点は、恐らく、本会議において先に提唱され、且つ米国及び濠洲政府によりそれぞれ賛成のあつた帰還問題に関するソ連連地域内の公正なる調査をなすという提案を受諾することにより除かれることと思われる。ソ連地域におけるかかる調査が行われるまでは、本件の訴えが打消され難く、且つ十分なる証拠を有し、それが少くともソ連の捕虜送還を完遂し能わざる一つの素因の説明となつていると私には思われるのである。(「質問は何か一体」「落着いて聞け」と呼ぶ者あり)やかましい。シーボルド議長のこの声に対しまして、英連邦代表ホジソン大使は、若し日本共産党書記長徳田球一氏が日本人捕虜で共産主義化されない者は送還しないようにとの要請をソ連当局に送つたことが真実であれば、徳田は祖国を裏切る者であると共に、重大な犯罪を犯したことになる、私は総司令官が日本政府に対し断乎徳田を処置するよう命ずることを望むと発言し、議長は対日理事会米代表として総司令官にその旨進言すると答えた。その瞬間の議場というものは誠に緊張そのものでありました。その後この問題に対しまして共産党或いは徳田書記長自身からいろいろと弁明もありましたが、その弁明の前に、先ず曾ての共産党の同志でありその指導者であつた三田村四郎君が何と語つておるか。共産党よ、本音吐け。赤化しない日本人捕虜は送還しないようにと日本共産党徳田書記長は言つている。これに対して三田村四郎君は、十分あり得ることだ、又共産党としては、それで何が悪いと開き直るべきである、こう言つておる。彼らの理論からいつて、共産主義信奉者以外はすべて敵である筈だ。終戰直後、大連で組織された労組の委員長石堂清倫氏(現日本共産党員)が引揚促進を唱えた日本人を反動分人として摘発し、シベリアに送つた事実、引揚を許されるため共産党員になり、上陸するや赤旗を捨てた幾多引揚者の例などを挙げておる。で、これらを思い考えまするときに、その結論において、こうしたことを又三田村氏は言つておる。日本社会党が同志的立場でイギリス労働党にメツセージを送ると同じように、日本共産党がソ連の同志に、反動を叩き潰せと書面を送つても不思議はない筈だ、これを同胞に対する、祖国に対する、人類に対する犯罪だと見るのは、共産主義者の世界観ではない、かく言つておるのであります。こうしたときに、たまたまカラカンダ地区の問題のみならず、他の地区にも、二十四年九月の或る朝、イズベストコーツヤ地方ヴルガルの分所で、徳田要請の新証明が上村宗平氏によつて参議院に送られておる。又三月四日には小俣忠男という最近引揚げて来た人が、沿海州十三地区政治部長チーベル大尉が共産党から言つて来ておると、三輪通訳によつて、これと同様なことを言つておるということを参議院に申して来ておるのであります。こうした外地の問題は、今後少くとも委員会において或いは国会において取上げられることでありまするが、又政府においてもこの問題を曾て法務総裁或いは増田官房長官も言明いたしておりまするが、私の聞かんとするところの問題は更に国内に起つたところの問題であります。  昨年の七月二十五日に告訴状がこの二月の二十日の問題から発せられておる。    告訴状   日本共産党代議士徳田球一は昭和二十四年二月二十日秋田市記念館にて公開演説を行いし際に、ポツダム條令趣旨背馳の主張と占領政策の非謗と考えられる言辞があり、又同野坂參三は昭和二十四年六月二十九日同所にて公開演説をしたる節、占領政策違背の主張があり、共に人心擾乱甚しきに付、何卒御取調べの上処罰下され、法を明らかにせられ度、御願い申し上げます。   昭和二十四年七月二十五日    本籍 秋田県雄勝郡院内町下院内    現住所 秋田市公園前敬愛学園内    職業 秋田南高等学校助教諭      敬愛学園講師          高橋彌太郎     明治四十四年三月十一日生   秋田検察庁検事殿  以上の告訴状が出ておりまして、更にその内容が詳しく書いてあるのでありまするが、時間がありませんので省略いたします。で、更に陳情書がこの参議院に提出されておる。   此の度ソ連引揚船高砂丸の日の丸組より徳田球一氏がソ連え「日本人帰還を急ぐ必要がなくソ連え協力させて欲しい」と申し入れた事実が報ぜられ、御院にて同氏喚問との新聞記事あるに鑑み、小生が昨年、徳田、野坂両氏を秋田市にて告発し未解決なる件を申し上げ、併せて御査問題ひたく陳情に及びます。  こうした問題で詳細に掲げてあるのでありまするが、これは速記録に一応載せさして頂きます。この問題に対しまして、秋田市の秋田警察署長より、この問題の調査書が送られて来ておりまして、五名の証人の方々から供述書が出ておりまするが、大体この告訴状の内容に近いこととを証言しておるのであります。そこで秋田市におけるその証言の内容を一二読んで見まするというと、  徳田市は引揚問題の質問に何ら触れることなく、講演を続けて、終り頃になつてから先程の質問に対してお答えすると言つて、次のような答弁をされました。   徳田市の答弁  ソ連は日本から船さえ寄越せばいつでもこれを帰す用意をしておる。日本政府は国内の食糧事情が困るからと言つて余り船を送つていない現状である云々。  秋田市における三千の聽衆を前にして、「ソ連引揚の遅延するは」、〔「質問に入れ」と呼ぶ者あり〕 質問に入る……
  73. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 時間がないので…… ○淺岡信夫(続) 「ソ連の要求通りマ司令部並びに日本政府が船を廻さないからであつて、ソ連の責任ではない。又日本は将来ソ連の世話になる国に決まつておるから、今はソ連から引揚を急がず、五ケ年計画に努力すべきだ」と説いた。こうした事実を法務総裁は知つておられるかどうか。この告訴状の出たことを知つておられるかどうか。これが第一点であります。更にこの計画に協力すべきだと説いた、こうした声は各地に聞く声だ。これが一家の支柱を失つた全国百数十万留守家族を不安と悲観のどん底に陷れ、マツカーサー司令部のたびたびの配船の公式発表がされた事実に相反する言辞を弄したことは誣告も甚だしい。占領下の日本として断じて許せぬ問題であります。更に前記に述べたるソ連の五ケ年計画に協力し引揚を延期すべきだと説得したことは、今次の高砂丸引揚者の各証言と併せ考えるとき、今や徳田要請、徳田進言は疑う余地もなく祖国日本を裏切るものであると同時に、重大なる犯罪を犯したことになる。速かに断乎処置すべきであるとの輿論が強いのであります。而もこれは国際的に大きな波紋を起しておることは周知の事実であります。これに対して法務総裁は如何なる処置をとられるか。法務総裁の明快なる御所信を承わりたいのであります。更に総理はこれに対して如何なる方針で臨まれますか。吉田総理大臣の御所見を承わりたいのであります。以上が私の緊急質問であります。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉君登壇拍手
  74. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 淺岡君にお答えをいたします。  秋田の告訴の出ている話は私も承知をいたしております。さて引揚問題につきましては、今や国を挙げてこれが促進を熱望いたしまして、連合国総司令部におかれましてもポツダム宣言の履行といたしまして多大の努力を拂つておられまするところでありまして、若し我が国民の中に一人と雖もこの引揚を妨害するような行動に出ずる者がありといたしますれば、それは我が国民の総意を裏切るものでありまして、売国的行動と言わねばならないのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手政府といたしましてはこれを国民の世論に訴えますと其に、嚴重な取締を励行する所存でございます。これを以てお答えといたします。
  75. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣は後日答弁の趣きでございます。      ——————————
  76. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第九より第四十までの請願及ば日程第四十一より第五十二までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。建設委員長中川幸平君。     —————————————    〔中川幸平君登壇拍手
  78. 中川幸平

    ○中川幸平君 只今上程せられました請願陳情四十五件につきまして、建設委員会審議の結果を報告いたします。  河川に関するものは、天龍川を初め、北上川の岩手県前澤町及び見前村地区、岩手県夏川、宮城県砂押川、福島県杉田川、岐阜県揖斐川及び藪川、岡山県吉井川の上流、支流宮川及び津山市地区、同県梶並川、大分県番匠川、宮崎県大淀川上流支川改修工事若しくは災害復旧とその国庫補助に関するものであります。  砂防に関するものは、宮城県砂押川、岩手県御山川外五支川、青森県黒崎川及び笹内川の外、岡山県下三十五町村に亘つて砂防工事の施行要請しております。  利水に関するものといたしましては、京都府由良川の河水統制、堰堤工事及び山口県木屋川ダム建設工事の再開があり、又昨年数次の台風に襲われた宮崎県の災害復旧事業と九州地方海岸堤防改修工事に対する国庫補助の要請があります。熊本県荒尾市海岸大島川堤防補強復旧工事に関するものは三池炭鉱の採掘によつてその必要が生じたものでありまして、この種鉱害の発生防止については関係政府当局において今後嚴重なる措置を本委員会としては強く要望することを特に附加えて置きます。  道路改修に何するもののうち、国道は第十号線山形県飽海郡吹浦地区、第三号線宮崎県延岡—富島間、第四号線茨城県古河町—新郷村間及び第二京浜国道の舗裝に関するものであり、府県道は宮崎県都井岬—福島線、山口県島地—鹿野線、京都府京福道路の外、福島県南会津街道、島原半島循環道路、山梨県新倉—奈良田間道路の改修工事施行であります。北海道では石狩胆振国境の金山トンネルの開鑿及び岩内郡江差岩内線中一部路線変更と開鑿の外、北海道の道路費に対する国費増額の請願であります。  この外、南海震災による被害地区水道施設及び下水道改修に関するもの、建築士法の制定、奧会津総合開発に関するものがあります。又全国都道府県土木部長協議会からは、戰災都市の復興、災害復旧事業の促進及び道路改修費国庫補助増額に関する陳情が提出されております。  以上本委員会においては愼重審議の結果、治山、治水、交通、保健、産業の発達向上を図り、国土の保全開発のため、いずれもこれを採択して内閣に送付すべきものと決定した次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  79. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成諸君起立を求めます。    〔総員起立
  80. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。  本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会は明後十日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十五分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 両院法規委員選挙  一、日程第二 彈劾裁判所裁判員辞任の件  一、彈劾裁判所裁判員選挙  一、日程第三 海外移住組合法廃止に関する法律案  一、日程第四 国が有償で讓渡した物件略奪品として沒收された場合の措置に関する法律案  一、日程第五 栄養士法の一部を改正する法律案  一、日程第六 性病予防法等の一部を改正する法律案  一、日程第七 農業災害補償法の一部を改正する法律案  一、日程第八 農業災害補償法第十二條第三項の規定適用を除外する法律の一部を改正する法律案  一、ストレプトマイシンの生産確保に関する緊急質問  一、国鉄裁定控訴に関する緊急質問  一、物価安定対策に関する緊急質問  一、徳田書記長のソ連に対する要請に関する緊急質問  一、日程第九乃至第四十の請願  一、日程第四十一乃至第五十二の陳情