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1950-01-31 第7回国会 参議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月三十一日(火曜日)    午前十時二十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十三号   昭和二十五年一月三十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第七日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。昨日に引続き順次質疑を許します。遠山丙市君。    〔遠山丙市君登壇拍手
  4. 遠山丙市

    遠山丙市君 吉田総理大臣施政演説の中に、民主主義国民の間に根柢を固め、健全な発達を遂げており、過激思想に対し国民の正確なる判断の下にこれを支持せざる事実は、各種選挙における各政党の得票に徴し明白であると述べられたのであります。自由と人格とを蹂躪せんとする暴力的、破壞的傾向の一部少数分子が、国民の安寧を乱し、経済復興を阻害するがごとき好ましからざる事件を頻発せしむることは、甚だ以て心外とするところであります、かかる矯激分子は、健全にして思慮深き国民自由意思により根こそぎ排撃せられるであろうことは、私の信じて疑わないところであります。(拍手国民のこれが反撃は正に表現せられました。現に矯激分子はすでに国民より追い打ちをかけられ、意気全く揚らざる現状でありまするから、暫らくその成り行きを見るといたします。(拍手、笑声、発言する者多し)お靜かに願います。  私は次の二点について御質問をいたしたいと思う。その一つ青少年犯罪防止に筋金を入れる問題であり、他は統制経済が漸次廃止の段階と、検事総長統制違反者徹底的検挙を行う旨の声明についてであります。  ここに終戰後社会情勢の悪條件下に、青少年犯罪は遺憾ながら激増の一途を辿り、その行動は集団化し、犯行は兇悪、その手段は巧妙となり、国会を通じて活溌に論議せられております講和條約が成立して自立する文化国家たる日本の将来を担う青少年間に、かかる犯罪傾向が大きく浮き出ておるということは、誠に寒心に堪えないところであります。(「誰がその原因を作つておるか」と呼ぶ者あり)終戰前後における青少年犯罪数の比率は、昭和十五年と昨年とを比較いたしますれば加速度的に増加し、窃盗においては二倍半、強姦は三倍、殺人は三倍強、傷害は四倍弱、強盗に至つては七倍強(「経済が安定していないからだ」と呼ぶ者あり)という驚くべき数字を示しております。国会はこの問題に対しまして常に深甚の注意を拂つておるのでありまするが、これはひとり法務関係の職掌である検察、矯正及び保護の面のみで解決される問題ではなく、文部、厚生、労働の各省、警察裁判所等の所管である教育、社会福祉施設職業補導少年相談等の諸施設と有機的の関連性を持つておるものであります。これらの官庁が連絡協調し、国民協力を得て総合的に対策を樹立し、以て「問題の解決を図らなければならないことを考慮いたしまして、先に第五国会において、衆議院で「青少年犯罪防止に関する決議」及び本院で「青少年不良化防止に関する決議」の二大決議案が上程せられ、いずれも満場一致通過をいたした次第であります。政府におきましてはこの国会決議に促され、過ぐる六月十四日の閣議において、青少年問題対策協議会を設けることに決定し、これを内閣官房に設置せられました。さて、この協議会設置要綱を見てみますると、その組織内閣官房長官以上各官庁次官級を以てこれが委員に充て、十六名の委員中、民間人は僅かに五名、而もこの問題に対しまして多大の関心を持つておりまする国会議員は一人もこれに加わつておりません。先ず第一に、青少年不良化防止という大問題につきまして総合的な対策を樹立いたしますのに、このような態勢で果して拔本塞源的な恒久対策を打ち立てることができるかどうかということであります。そのメンバーは殆んど官僚が占めておるのでありまして、協議会そのものが極めて官僚臭の濃い統制的な機関であり、結局本問題の取扱い方も杓子定規的な事務的なものに終るのではないかと惧れるのであります。これは幸いにして私の杞憂に過ぎなければ結構でありますが、この機会に本問題の重要性を特に強調し、これを国策として取上げるよう熱望すると共に、青少年問題対協議会のごとき内閣官房附設機構に過ぎないようなものは、目下政府行なつておる各種審議会等整理に際し、この協議会も当然廃止いたしまして、これに代るに関係大臣国会議員及び民間有識者等によつて構成する強力な機関を設置することを政府に要望する次第であります。而してこの機関青少年問題対策協議会のような單なる行政事務統制機関ではなく、政府機関並びに民間人より青少年問題に関する各種情報の提供を受け、これを総合研究して統一的諸施策を立案し、行政事項に関するものは内閣総理大臣に建言してその施政に採用せしめ、立法事項に関するものは国会に反映せしめて法文化する途を講ぜしめるような、政治的国策機関たらしむる構想の下に設置せられたいのであります。尚、青少年犯罪につきましては、その犯罪の発生を契機といたしまして、これを矯正保護し、その更正を図ることはもとより必要でありまするが、これは少し手遅れの感を免れないのでありまして、国策として本問題を取上げる場合におきましては、犯罪の予防に特に重点を置くべきであると思うのであります。換言いたしますれば、文化日本の将来を背負つて立つ青少年が健全且つ純正に育つことのできるような施策を確立することこそ緊急事であります。尚、只今申上げましたような機関設置のためには相当の予算の計上が必要でありまするが、目下進行中の各種審議代等整理に伴い生ずべき余剩費用をこれに振替えることにより、或る程度賄うことができるのではないかと信ずるものであります。いずれにいたしましても、政府はこのような重要問題について情熱を燃やし、以て万難を排しその解決に邁進せらるる御意思と御用意がありましようか。総理大臣並びに法務総裁の御所見をお伺いいたしたいのであります。  次にお尋ねいたしたい問題は、昨年末新聞の報ずるところによりますると、最高検察庁は、近頃漸次経済統制罪則條文が外れつつありますが、経済検察の面からは引続き取締を続行、更に強化して行く方針であるとの検事総長談発表しております。最高検察庁が如何なる目的を以て、如何なる意図の下にかかる発表を敢えて行なつたものか、その内容につきましては明確を欠くのでありまするが、対日講和を目前に控え、自由貿易に移行せんとする我が国の現状に鑑みまして、政府も完全なる自由経済を目標として逐次統制の枠を外しつつあることは、安本長官演説によつても明白な事実であります。民主主義自由経済の下においてのみ完全に実現せられるのであることを確信いたし、我々はかかる政府意図には全面的に賛意を表するものでありまして、その方針を推進するに当りましては協力を惜しまないものでありまするが、かかるときに最高検察庁が只今申上げましたような発表をいたしましたることは、世間に與うる影響は決して軽いものではないと信ずるものであります。社会悪に対しまして敢然挑戰し、国家の骨組にコンクリートを入れ、国民尊敬の的である最高検察庁が、誤まつて国際情勢認識を欠き、方途を誤まり、且つ政府方針を理解せず、その施策に同調することなしに、形式的な法令の解釈に流れ、若しくは独善的な立場を固定するならば、それは民主主義に逆行するのみならず、今次の発表は世人の疑問を招く点が多いのであります。元来一部官憲は、ややともいたしますれば時代の認識に欠くるところがあり、検察官の今回の声明もこの傾向を多分に含んでいるのではないかと感ぜられる節も見受けられるのであります。これによつて立上らんとする国民の腰が折られ、萎縮し、活溌なる取引に支障を来たすようなことがありますならば、それは延いては政府の標榜する活気ある経済への移行にも阻害すること少からざるものがあると考えられまするので、今後政府はかかる発表につきましても、その監督権を十分に発揮し、発表の時期、目的等について愼重なる態度をとられんことを希望すると共に、本問題について法務総裁の御答弁を求むる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉登壇拍手
  5. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 遠山議員の御質問になりました第一点でありまする青少年不良化の問題、誠に御意見通りでありまして、国家として甚だ大問題であると考えておるのであります。遠山さんの御意見に従いますれば、不良化防止対策を両院で決議をして、それに対して政府は直ちに委員会のごときものを組織して、この対策に当つておるけれども、甚だ不十分ではないか、その組織も弱体ではないかというお話であつたと思うのであります。誠にさように考える節もないではないのであります。併しながら官僚が大勢入つておりまするけれども、僅かの五人の民間委員は実に有力な方々でありまして、その御意見は多数の官僚を圧して、この委員会をリードしておると考えておるのであります。その効果は可なり大きいものがあると考えております。但し今お話のごとき点もございますので、十分に考慮いたしまして善処いたしたいと考えておるのであります。昨年青少年不良化防止対策協議会という名前でこの委員会を作りまして、しばしば会議を開きまして、いろいろ案を練つておりました。途中に昨年の秋でありましたか、一応中間報告をいたしまして、それによりましていろいろな施設を新たに起しておるのであります。まだ甚だ不十分でありますので、更に更に会議を続けまして研究を怠らずにやつておるのであります。併し只今のような御意見もありますので、問題を新たにいたしまして更に考慮をいたしたいと考えております。  それから昨年の検事総長統制撤廃の問題に対する声明お話がございましたが、経済統制撤廃に関しまして、昨年の暮の議会で衆議院の本会議で御質問がありましたので、私は次のような答弁をいたしました。統制撤廃後はその事情を十分考慮して、真に止むを得ない事件でない限りは起訴しない。一方裁判所係属事件の審理を促進し、不公平をできるだけ是正する。その次に、統制が存続するものについては、従来通り重点的な取締を行う。若しその必要がないものは、統制そのもの撤廃すべきものと思う。こういうようなことを申したのであります。ところが昨年のその前であります。今のような確か質問にお答えする以前だつたと思いまするが、最高検察庁発表新聞にありまして、如何にも統制撤廃はされたけれども、検察は一層強化するというようなふうに見えるような発表があつたのであります。併しそれは私が直ちに調査をいたしたのでありまするが、統制撤廃があつてもまだ存続する統制がある。その存続する統制取締も今後はもうなくなるのではないかというような一般の空気があるから、それに対して警告を與えたような意味であの声明を発したのであるということでありまして、よく聞いて見ますれば、重点主義の強化で、決して一般経済違反について、更に取締を強化するというようなことは毛頭ないということでありました。そこで私が昨年の暮でありました、十二月二十七日であつたかと思いまするが、更に各検察庁に対しまして、先程申上げました通り衆議院で答えましたような意味の趣旨のことを各検察庁に対しまして通牒を発しました。従つてその後には検察庁におきましてもよく私共の精神を体して事務を処理しておることと存じますから、今ではもう誤解はどこにもないと考えております。(拍手
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田総理大臣は後刻出席の上答弁せられる趣きでございます。板野勝次君。    〔板野勝次登壇拍手
  7. 板野勝次

    板野勝次君 私は日本共産党を代表して質問をいたします。  吉田首相施政演説並び池田蔵相財政演説は、日本政治経済の将来について仮定の問題について所信を述べたものであります。そこに述べられておることは決して既定の事実ではなく、明らかに仮定の問題であり、而もその仮定たるや歪曲誤認された認識の下に立てられておるのであります。吉田首相は常に仮定の問題については答えられないと言つておるが、ここでは自分自身仮定立場に立つて事実を歪曲しておる。即ち與党の星島君の質問に対して、一刻も早く戰争状態を終了することが必要であり、これは国民が熱望しており、又共産党の言うように單独講和とか全面講和とかいう問題ではないと言つておるが、これこそ正に仮定の問題に答えたことになるのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)而も人民大衆の要求に基いて共産党が主張しておることを歪曲しており、国会議員質問に対して、或るときは仮定の問題には答えられぬと突つ放し、或るときには仮定の問題に進んで答えるというがごとき矛盾は、吉田総理が持つておる下心の現われではないか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)国民国会議員を飜弄侮辱するものでなくて何であるか。(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり)自衛権の問題についても、吉田首相武士廃刀した場合のごときものであると言うが、これは日本が無條件降伏をして武力を放棄した事実に照して全然比喩の取扱い方が違う。武士廃刀自分だけが武装していた武士廃刀であり、従つて廃刀によつて何の脅威も受けるものではない。然るに今日の日本は、資本主義諸国の国際軍備拡張概走場裡で、軍備を持たない裸の姿である。従つて平和愛好国家安全保障がなかつたら一日も安心しておることはできない。況んやその裸の日本他国軍事基地なつた場合、日本人にして戰争の恐怖が感ぜられないとすれば、その人物は余程好戰的な人物である。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)この自衛権の問題は、現実の問題であると同時に将来の問題でもある。即ち仮定の問題は現実立場から取上げる限り決して仮定の問題ではない。少くとも政治に携わる者にとつては捨てて置けない問題である。このことは予算についても言えることであつて予算は未来の問題、仮定の問題であるが、それが現実と結び付く限り無視のできないものである。吉田首相は以上の点を先ず再認識して、以下、私の質問に答えられたい。  第一に、吉田首相と星島君との質疑応答において、できるだけ早く戰争状態を脱するために、可能な講和を積み重ね、いわゆるマジヨリテイ・ピース即ち多数講和の必要があると答えているが、そもそもこの多数講和とは、ポツダム宣言も無視し、米英中ソの四大国講和による公正なる講和を求めず、日本に不利なる、又現在民族の独立を危くしつつあるデアフアクト・ピース、即ちいわゆる事実としての講和を恒久化するための手段である。この場合、講和会議さえも開かず戰争状態終結宣言を行う肚であることは、外務省が現にやつておる作業の中に窺われる通りであります。吉田首相仮定の問題たる戰争状態終結宣言を急にほのめかし始めたのは何故でありましようか。それは明らかに公正なる講和可能性が日々に濃くなりつつあり、みずからの希望する多数講和が実現し難い見通しがはつきりし出したからではないか。(「そうではない」と呼ぶ者あり)又星島君はいわゆる全面講和を求めるならばソ連に向つて叫べといつておるが、すでにアメリカのフーヴアー氏のごとき有力な人物單独講和、多数講和を主張しておる事実を見落しておる議論であります。而も吉田首相が最近これを悪用したに外ならない。吉田首相はこの事実を無視し得るかどうか。  次に、一刻も早く講和條約を結び、世界平和の確立に寄與するためには、ポ宣言嚴正実施による四大国講和方式講和を結ぶより外に途はない。而もその途は最も早い講和の途である。吉田首相や星島君が考えているような多数講和は最も遅い講和の途だからこそ、戰争状態終結宣言をやらなければならないのである。戰争状態終結宣言は、單独講和、多数講和と同様に日本軍事基地化し、第三次大戰を誘発し、日本帝国主義復活を狙うことに外ならないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)そういうことを現に吉田首相は星島君に対する答弁の中で次のような意味のことを言つている。「我々は過去を考えて見るならば、再び国際団体に立つ日があれば、必ず曾ての輝かしき歴史を繰返し得るものと考える。」この言葉こそ正に東條の仇を俺が討つてやるということではないか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)日本は勿論のこと、中国、朝鮮、フイリツピン、オーストラリア、ニユージーランド、仏印ビルマ等人民諸君は、必ずこの吉田首相言葉を忘れはしないでありましよう。  第三に、吉田首相と星島君の八百長質疑応答において、ソ同盟引揚者問題に事実と全然相違する悪質なる虚言を構え、それが恰かもポツダム宣言に違反するがごときソ同盟の中傷をやつておる。未帰還者三十七万という出たらめ数字を作り上げたみずからの「ぺてん」を棚に上げた暴言を吐いている。一体、一国の首相たる者が根も葉もないことを強調して他国を誹謗するがごとき行為は、侮辱と言わんか、挑発と言わんか、呆れざるを得ないのであります。思えば東條は、軍隊と艦隊を背景に米鬼英鬼と罵り、今又吉田首相は、軍隊化せる警察を握り、海軍化せる海上保安隊を指揮し、ソ同盟に挑戰でもする気だろうか。これは正に狂気の沙汰であります。又殖田法務総裁ソ同盟引揚問題に関連して、ソ同盟に抑留された捕虜に対し日本刑法を適用し、或いは内乱罪、或いは殺人罪等を以て処罰することができる、というような意味のことを述べておるが、このような刑法の悪用、濫用こそ治安維持法の戰後版ではないか。  第四に領土問題について、吉田首相は星島、世耕両君質疑に応答しつつ言及しているが、そもそも領土問題こそは第一次大戰後のドイツで失地回復を理由にナチズムが抬頭した直接のモメントであつた事実から考えても、余程愼重にこれを取扱わない限り将来に大きな禍根を残すことになる。(「そうだ」と呼ぶ者あり)星島君はポ宣言第八項を楯にとつてヤルタ協定の無効を説いているが、ソ同盟の対日参戰は米、英、中国の要請に基くものであり、更にミズーリ艦上におけるポ宣言受諾に基く日本の無條件降伏に関する調印式には、ソ同盟デレヴイヤンコ中将が出席し、その後、極東委員会にも引続きソ同盟は参加しており、ヤルタ協定は一九四六年二月十一日すでに公表をされ、秘密協定ではなくなつている。即ちこれらによつてヤルタ協定ポツダム宣言と不可分のものである。ポ宣言第八項の、日本の主権は本州、北海道、九州、四国並びに我々の決定する諸小島に局根されるというこの諸小島の中には、樺太、千島列島は含まないことは明らかである。従つてヤルタ協定を無視することはポツダム宣言の歪曲である。この星島君の論理を以てするならば、沖縄、小笠原諸島に対しても数故言及しないのか。かかる態度こそ首相みずから戒むべきではないか。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)次に台湾については、吉田首相世耕君との問答において、正当な條約によつて與えられたものであるとして今日直ちに是正し得る地位にはない、将来是正する機会のあることを希望すると答えているが、台湾こそ日本侵略戰争によつて毟り取つた土地である。現に吉田首相は、この議場において小川議員質問に対して答え、「日本の国は領土拡張若しくは世界の平和を脅かす国である、この世界の不信の念が遂に戰争となり、今日の敗戰至つたのである」と答えているのではないか。而もそのような曾ての日本歴史を輝かしい歴史と讃美している吉田首相が領土問題を云々するその言たるや、戰前の軍国主義帝国主義フアシズム復活の念を潜めているではないか。(「それで日本人か」「国籍はどこだ」「日本人だ、そつちこそ国籍はどこだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)このことが確然としないうちに、今後の日本政治経済の問題もどこへ行くのか方針が立たない。予算のごときま完全に架空な問題となつてしまう。  吉田首相にお尋ねしたい。第一に、戰争状態終結宣言により講和会議を待たずして多数講和の実績を狙うのが吉田外交の本質とみなしてよいか。私が尋ねるのは外交方針政治方針である、仮定の問題ではない。第二に、單独講和といい、多数講和といい、マジヨリテイ・ピースの意訳と直訳の差に過ぎず、実質的には同じことであると思うがどうか。第三に、日本において他国軍事基地が建設されているのかいないのか。又ソ連軍事基地日本に建設されているかどうか。第四に、ソ同盟引揚者問題の根本原因たるいわゆる未帰還者数字に関する証拠として、資料を国会に提出し審議に付する意思があるかどうか。第五に、領土問題を利用して帝国主義軍国主義フアシズム復活を図りつつある人々がいるが、吉田首相はそれに呼応してやつているか。(「馬鹿こけ」と呼ぶ者あり)以上、吉田首相の曖昧でない答弁を求めます。  次に大蔵大臣並びに関係閣僚諸君にお尋ねする。  第一に、大蔵大臣日本経済は安定していると繰返して述べているが、果して事実はそうであろうか。一体昨年末から本年にかけての経済事情はどうだつたろう。不渡手形激増、株価の暴落、預金部資金と無條件公債買上による百八十億の取付準備金を用意しなければならなかつた程の銀行危機、これこそ正に一種の金融漠恐慌ではないか。銀行預金以上に貨出をしても、企業は滯貨が増大するばかりで、国内にも外国人にも商品は売れず、金詰りで賃金は遅配、欠配、中小企業も身動きができない。農家も農業手形を決済すれば供出代金の残りは昨年の半分以下、これでは春肥の仕度さえもできない。この日本経済恐慌こそは世界恐慌の押付け輸入によつて促進され、国内市場は狹隘化し、飢餓輸出外国資本に買い叩かれて断続的に痙攣しておる。これこそ労働力ダンピングどころか、資本ダンピングを余儀なくされ、日本経済そのものダンピングされておる実相である。この事実こそ日本経済が不安定であるということ、この不安定は事実としての講和のもたらしておる結果に外ならないもので、それを一層激化するものこそ戰争状態終結宣言又は多数講和に外ならない。吉田首相並びに大蔵大臣はこの重大な危機に導いた責任を感じないのか。  第二に、二十五年度予算案の特徴は国債償還問題であるが、この国債償還こそは、一つには金融恐慌に喘ぐ銀行人民大衆から搾り取つた税金を供給し、日本経済危機人民大衆の負担に転嫁する手段であります。この点、即ち二十五年度予算経済不安定を前提として編成されておると断じなければならないのであります。又この国債償還を通じて市中金融をますます日銀に依存せしめることによつて日本金融外国資本に隷属せしめることとなる。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)飽くまでも経済安定を主張し又日本経済隷属化を否定するならば、債務償還などは止めるべきであります。その決断があるか。それだけでも日本人民税金を軽くしてはどうか。大蔵大臣外国資本家日本人民大衆とどちらを大事と思つておるのか。(「答弁する必要なし」と呼ぶ者あり)  第三に、二十五年度予算中、平衡交付金公共事業費警察費日本軍事基地化に利用されんとしておる。大蔵大臣はこの点を防止する決意を持つておるか。持つておるならば具体的にどういう方法で防止するのか、答えられたい。  又最近沖繩に向けて、日鉄日本鋼管日本セメント、小野田セメント藤庫電線、古河電工、トヨタ自動車、三菱化成、東芝等から各種資材が輸出され、その量は一月二十七日附日刊東洋経済によれば、セメント第一年度六十万トン、第二年度四十万トン、トラツク三百乃至四百台、鋼材二十万乃至三十万トン、電線十五億円、土建工費五十億円、参加土建業者清水組、大林組、竹中組鹿島組西松組大成組、間組、池田組納富組と報ぜられておる。一体この経費はどのように決済されるのか。米国陸軍費から支出されドル建拂いで外貨予算收入となるのか。日本終戰処理費で支拂われるのか。大蔵大臣並びに通産大臣が若しこのような事実を知らないとするなら職務怠慢でありますが、恐らくは御承知でありと思われますから答弁を要求いたします。これと関連して終戰処理費については、日本予算の一部でありながら従来全然内容が具体的に公表されず、従つて国会審議も不能であつたが、これを改める意思があるかどうか。名目は終戰処理費というけれど実質的には臨時軍事費的なものであつてはならないのであります。  第四に、復金融資がなくなつてからは、それに代るものとして見返資金が登場しながら、その産業投資が遅れたために、企業は金詰りに苦しみ、労働者は食えない低賃金さえも遅配、欠配の憂目に会つておる。それが遅れたのは、日本の貿易構造、産業構造の軍事的、植民地的性格への切替のために手間取つたからであることは、すでに衆目の見るところではないか。我々が希望するのは、見返資金が平和産業の無制限拡大に役立つように速かに自主的に投資されることである。大蔵大臣並びに安本長官の見解はどうか。  第五に、政府は最近公団滯貨の国内放出を計画しております。これがために公団の赤字が途方もなく増大して人民大衆の財政負担を重くしないように、市場を混乱させて中小企業を倒産せしめないように、ブローカーの跳梁を許して参議院議員選挙の資金稼ぎなどの不正腐敗を発生せしめないように、考慮を拂つておるかどうか。その具体的方策はすでにできておるかどうか。大蔵大臣通産大臣にお伺いしたい。  以上要するに、平和的日本の樹立、日本民族の独立と自由のために、その誤まれる一般施政並びに財政経済政策を勇敢に改め、公正なる講和を一日も早く実現するために、二十五年度予算を組替える良心を持つておるかどうか。(「いない」と呼ぶ者あり)この問題は一党一派の私すべき問題ではない。日本の将来を決する重大なる問題として、党利党略を超越し、平和と民主主義の大道に即して処理しなければならない。この場合一切の恩讐の念を去り、冷靜に、合理的に、科学的に、事実をありのままに、具体的に、素直に認識し、以て万全を期さなければならない。重ねて言う。民主日本、民族戰線の結成を以てこの重大なる危機協力一致対処しなければならないのであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  8. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 板野議員の御質問にお答えを申上げます。  御質問の第一点は、年末金融が非常に逼迫して銀行の内容が悪いのじやないかというお話でございますが、御承知の通りに年末金融は大体昨年と同樣至極円滑でありまして、通貨も去年と大体同程度、銀行の内容に何ら不安はありません。又いろいろな点を挙げておられますが、今までの悪性インフレーシヨンから経済の安定に参ります経過的関門といたしまして、いろいろな摩擦があることは我々も覚悟いたしておるのであります。そこでこの摩擦をなくするために昭和二十五年度の予算を作り、一日も早く経済復興に行かしたいというのが私の念願であるのであります。  御質問の第二は、債務償還が多過ぎる、債務償還をしたならば市中銀行日本銀行に隷属するのじやないか、こういうお話でありますが、そうではありません。私は財政演説で申上げた通りに、この程度の債務償還経済安定への不可欠の條件と考えております。而も片方では減税をいたしておるのであります。次に、債務償還をしましたら日銀に市中銀行が隷属することはないのであります。債務償還をするからこそ日銀に隷属しないことになるのであります。  次に平衡交付金公共事業費或いは警察費日本軍事基地にするのではないか、こういう御質問でありますが、これはとんでもない話でございまして、どこに軍事基地にするような何がありますか、これもお答えする程の問題ではないと思います。(「答弁の要なし」と呼ぶ者あり)  次に、終戰処理費につきましては国会において何にも説明していないと申されましたが、これは毎国会において御説明はしておるのであります。(拍手)  見返資金の運用状況でありますが、見返資金は只今資金会計へ繰入れたのが千百三十億円でございますが、このうち七百数十億円をすでに使用しまして、残りの四百億円を糧券の引受け等、金融に協力いたしておるのであります。アメリカから各国へいろいろ援助資金を出しておりますが、これを最もよく使つておるのはイギリスと日本とフランスで、他の国は日本ほど使つておりません。尚、公団の赤字はどうするか。我々は公団に赤字が出ないように極力やつておるのであります。これを政治資金に使うとか何とかいうことは、とんでもないお話だと思います。二十五年度の予算を組み替える意思は全然ございません。(拍手)以上を以てお答えといたします。  尚この機会に、昨日欠席いたしましたために答弁を申上げられなかつた点をこの際答弁さして頂きたいと思います。先ず小林議員の御質問に、今の状態はデフレではないかという御質問でございますがこれはデイス・インフレであることはたびたび申上げている通りであります。尚、為替レートを変更する意思はないか。私は変更する意思はありません。(拍手)これは外国の状況その他と睨み合して考えなければならんのでありまして、私に、日本大蔵大臣に為替レートを変更する意思があるかと言う前に、私はイギリスのクリツプスにポンド引下げの意思があるかということをお聞き下さつた方が早いと思います。イギリスが引下げたり、世界の大部分がこの前のように二十二、三%も引下げた場合は問題になりますが、今の状態ではレート引下げは問題になりません。株式対策につきましては先般申上げた通りであります。無記名預金を廃止することはよくないのではないかというお話でありますが、我が国の預金というものは非常に無記名が多くて、整理にも都合が悪いし、又課税の充実を期する上から言つても今の状態ではいきませんので、シヤウプ勧告案に基きまして、できるだけ早い機会に無記名預金を廃止しようと考えております。大体今年の九月末日までぐらいに整理してしまいたい、こう考えておるのであります。  次に岡元議員の御質問で、在外財産の基本的調査をしているか、その結果を公表できないかという御質問でございますが、財外財産は御承知の通り昭和二十年の十一月の勅令によりまして調査はいたしております。調査はいたしておりますが、その結果を公表するわけに参りません。まだその時機でないと考えております。尚、引揚費中十億円を転用した理由はどうか。これは当初引揚者に対しましては三十数万人の方が帰されるという予定で四十数億円を予定しておつたのでありまするが、十万人程度足らずしかお帰りになりませんので、余つた金を十億円他に転用いたしまして、そうして遺家族の方々の待遇改善に充てるように十億円を転用いたしたのであります。尚又、在外公館借入金につきましてどういう支拂方法を考えているかというお話でございまするが、私は在外公館借入金整理準備審査会というものを設けまして、予算を七百万円計上いたしておりますが、在外公館の借入金を今計算いたしておるのであります。その整理ができましてから後に、この処理につきまして決定をいたしたいと考えております。尚、未亡人世帶に対しまして、課税は扶養控除の関係等で非常に過重になつているようではないかという御質問でありまするが、未亡人であれば殊に所得が少いとか、いろいろな点で税法上加味してありますので、只今のところ未亡人に対しまして特に課税上特別の措置をとるということは考えておりません。見返資金を住宅資金に百億円使う、その使い方はどうするかというお話でございまするが、これは一般会計から繰入れまする五十億と合せまして百五十億円で住宅金融公庫を作り、住宅建設資金に使つて行きたいと考えております。具体的の方法につきましては、既存の金融機関を補助機関として使いたいと考えておりまするが、その既存の金融機関の中に無盡その他の信用組合を入れるかという御質問に対しましては、只今検討を加えておるところであります。  次に岩本議員の御質問に対しまして、文部大臣よりお答えになりました以上につきまして私より申上げます。教職員の待遇向上について、もつと国庫補助を殖やす必要はないかということでございまするが、これは大体公務員と同様の取扱をいたしておるのであります。教職員の待遇につきましては特に意を用いまして、従来よりも今年度はよくいたしたような点もあるのであります。又僻陬地の手当につきましては、公務員と同様に取扱つております。又文化財の保護につきまして、もう少し金を出したらどうかというお話でありまするが、御承知の通り我が国の国宝保存につきましては、昨年一億円を計上いたしまして、今年は予算の規模が減つて参りましたが、国宝保存につきましては昨年の倍額の二億円余りを計上いたしまして、お話のように、とにかく文化財の保護につきましてはできるだけの努力をいたしておるのであります。御了承願います。(拍手)    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  9. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 板野議員にお答え申上げます。私の名前も出ましたけれども、大体大蔵大臣がお答えになりました。ただ一点、沖縄の問題について終戰処理費から出ておりやしないかという御質問であります。これは終戰処理費から出ておりません。それだけお答えいたします。(「どこから出ておるか」と呼ぶ者あり)それは存じません。  昨日私が出席をいたしませんで、予算委員会の方に行つておりましたので、寺尾議員からの御質問があつたようでありますが、その中で農業の機械化について御質問があつたようでございますが、この点についてお答えをいたします。農業の機械化の形態は、土地の状況と経営樣式等から考えまして、適当な形式のものが導入されますように指導しておりましたが、当面の目標は、特殊のものを除きまして、適期の耕耘、耕作、それから播種、それから收穫、調製等を目的とするものと、能率向上のための機械化に重点を置きまして、生産資材の確保と製品割当を行なつており、資材の面では十分確保の見通しが可能であります。それから一般農業用小水力発電につきましては、昭和二十四年度から米国の対日援助の見返資金によつて設置をいたしまして、二十五年度も継続実施の予定で、農業用の動力確保とそれから農業機械化の向上に資することにいたしております。そして尚、農業機械化の普及指導の面は極力共同方式をとります。例えば共同利用農機及び農機の修理工場の設置といつたようなものでありますが、この共同方式によることにいたしまして、その所要資金は農業経営改善施設資金として農林中央金庫から融資を行うということにいたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇
  10. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 私に関連した問題については、大体大蔵大臣並びに青木安本長官からお答え申上げましたので、ここに重ねて重複することを避けたいと思いますが、貿易公団の滯貨の処理につきましては、輸入滯貨については大体三百六十円のレートによつてこれが拂下を実行しており、又輸出滯貨につきましても適当なる価格においてこれが処理をいたしております。できるだけ滯貨を一掃いたしたいと存じておりまするが、同時に国内におけるところの業者を圧迫しないという形においてこれを実行しておることを御承知を願いたいのであります。(「その対策です」と呼ぶ者あり)  尚それからして先程の沖縄向け資材につきましては、これは我々の方は貿易外收入に相成つております。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田内閣総理大臣は、質疑の内容をよく検討された上で、次の質疑者の後で答弁されるそうであります。深川タマヱ君。    〔深川タマヱ君登壇拍手
  12. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 民主党の深川タマヱでございます。第七国会の初めに当りまして、政府施政方針に対しまして御質問申上げます。  重複いたしておる題目でございますが、今後久しきに亙りまして日本の国の運命を決定するかと存じます講和の問題につきまして、私も一つ質問をさして頂きたいと存じます。今回の国会では、衆参両院を通しまして、この問題は最も論議が繰返された問題でございますけれども、結果から考えますと、所詮、犬の遠吠えでございまして、この意向を採択して呉れるかどうかということは、一にかかつて連合国の胸三寸にあることだろうと存じます。併しながら未だ曾て世界にその前例を見ないような、終戰後正に五年の久しきに亙る間、日本人は自由が束縛されたまま未だに講和が開催されません。而してこの後も一体いつが来たならば開催して呉れることやら、全く五里夢中の状態にございますが、もはや日本人といたしましては、これ以上精神的にも、それから政治経済的にも忍び得ないものがあると存じます。最も痛痒を感ずるのは日本でございます。ただ、この上は堪え難い強い国民意思を表明いたしまして、あなた任せでなく、自分達の運命をみずから立つて開拓いたしますために、三すくみの状態にある講和を一歩前進させますために、政府国会国民は一致結束いたしまして、丁度在外同胞引揚運動をいたしましたように、今後は繰返し熱心に関係各国に懇願をいたしまして、速かにその対立を解いて即時講和を開催して貰うように懇願をいたすことが最も大切であり、且つ今日の日本におきましては、ただ一つ許された途であろうかと存じますが、これに対しまして総理大臣は如何思召し遊ばされるでございましよう。  第二番目は、税金の問題でございます。第一に、最近税制改革が行われましたけれども、これは日本経済の民主化に反するものがあると存じます。大資本資本蓄積を擁護するものでございまして、将来の日本は、大資本も貧乏人も作らなくて、大体中産階級を殖やさなければならない段階だろうと存じますのに、大資本の擁護に終つていると存じます。税制改革につきまして大蔵大臣の御意思があるかどうかを伺つて置きます。特に只今丁度来年度の予算が上程されておりますけれども、九百億円の減税という声は、これは非常に国民には誤解を起させることであると存じます。地方税の厖大なる増徴を計算に入れたりいたしますと、殆んど減税にはなりませんので、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)後で国民に失望させないために、大蔵大臣はこの場合、減税には大してならないということを正直に告白して貰いたいと思うのであります。(拍手)  それから来年度の減税の方向でございますが、敗戰国の貧乏国民に対しまして、一千二百六十八億円の多額の国債償還は時期尚早でございまして、これは国民には無理があると存じます。併し大蔵大臣はしばしばこれは日銀乃至市中銀行の手に返つて、金融の方面で御用を勤めておると仰せになりますけれども、若し金融が目的でありますなれば、むしろこの際こういう税金はお止めになりまして、国民各人の手許に残してお置きになりますならば、民主的な公平なる金融の目的に叶うと存じます。なぜならば、近頃の銀行の金融は、大資本には容易に貸して貰うことができますが、中小以下は一向、顔が利かないように思いますものであります。それから来年度の減税の方向でございますが、三十六億円の食糧管理特別会計及び公団とか貿易資金は、これは今使つてなくなつてしまうものでございませんので、むしろこれは日銀の融資に頼るべきであつて、それだけ税金を減税いたしますことが余程国民のためになると存じますが、大蔵大臣はこれに対しまして如何お考えになりますか、御返答を飼いたいと存じます。  第三番目は金詰りの問題でございます。不思議にも今回の国会では、大蔵大臣はデフレではないと言われますし、他の多くの議員は一様にデフレだと主張されております。ところがその後の金融の対策を伺つて見ますと、両者の間に大して相違のないことであります。従つてこの言葉の対立の問題は他の議員さんにお讓りいたすことにいたしまして、私は金融の問題は、来年度におきまして、国民から吸上げた金は、その年度内においてやはり国民に適当に還元するようでなければならないと存じますが、今年度などは、十二月の六日に閣議が開かれまして、初めて各産業別の割当が決定されたようであります。その間非常に金融逼迫を告げております苦い経験に鑑みまして、どうぞ来年度は同じ過失を繰返さないように、何分、一千六百億円の多額の見返資金でございますので、この使用に当りましては、今法案でなく、予算案が上程されると同時に、来年度の見返資金の用途、時期、金額などは今公表されて、議院に審議さすべき問題だと考えるのでございますが、これに対して大蔵大臣の御用意があるかどうか、伺いたいと存じます。  金融につきましてでありますが、日本の只今の現状では、国民公共の利益に非常に大きい関係を持つております銀行が自由裁量で貸出をいたしております。これは将来大いに改革いたさなければならない問題でございますので、大蔵大臣は将来日本銀行に対して強い監督をなさる意思と方法が準備されておいでになるか、伺いたいものであります。  第四番目は住宅の問題でありますが、衣食の問題はやや緩和されて参りましたけれども、住宅の問題は余程取残された状態でございましたのに、来年度におきましては見返資金百億円、住宅建設資金三十六億円、その他住宅金融公庫などを設けまして、大幅に庶民住宅が充実されるそうでございますので、これは誠に結構なことでございますが、敗戰後の日本にはなすべきことが非常に多うございますけれども、国民の命に別條のある問題から先に取上げなければならないと存じますので、同じく住宅の問題でありましても、みずからの資本を出して買うことのできる人や、信用があつて国家から融通資金を貸受けて家の建てられるような人、こういう人も大切でありますが、更に国家が手を延ばさなければならないことは、翌日職場に通います人が今日冷たいコンクリートの上で寝ておる状態、それから疎開やもめが、家のないために家族が別居いたしておつて、八疊間に六人も雑居いたしておつて社会悪の源泉をなしておる、こういう問題にこそ国家は率先して救いの手を差し延べなければならないと存じます。尚、住宅に関連いたしましては、来年度では母子寮一万が要求されておるのでありますが、これに対しまして御用意があるか。序でに申しますことは、来年度におきましては家賃が大幅に値上げになつております。当然生活費に響きますので、やがて給料値上の運動が展開されるであろうと思うのでありますけれども、これに対しまして政府は御用意がおありになるかどうかを伺つて見たいと思います。  第五番目は失業問題でありますが、今回の議会では労働大臣は、来年度の失業者概算は二百万に足りないけれども、失業対策は二百五十万乃至二百七十万の準備をいたしておるという御答弁でございました。よく考えて見ますと、どうやら来年度におきましては日本の国に一人の失業者もなくなる予定のようでございます。私は元来この失業者の数字には多くの疑惑を挾んでおりますけれども、これは信用いたしますとしましたら、来年度は久しく国民が待望いたしております完全雇用の実の挙がる年であると存じますので、民主自由党のお腕前に大きな期待を寄せておるのでありますが、(拍手)果してその完全雇用が何月頃実現されるか、御聰明なる労働大臣の御見通しを伺いたいと存ずるのであります。更に来年度におきまして、婦人の失業対策に対しまして、どういう御構想があるか序でに飼つて置きたいと思います。  それから未亡人の問題でありますが、来年度には生活保護法の予算が相当増額されます。全国の未亡人の中では十万の家庭が新たに生活保護法の恩典に浴さなければならぬ状態でございますが、厚生大臣はこの人達に温かい手を差延べられるような御準備になつておるかどうか、伺つて見たいと存じます。  それからその次は元の傷痍軍人であります。これは国立病院で療養中の傷痍者の方でありますが、その方々の食糧事情が極めて憂うべき状態にございます。実は今朝程、私ちやんと実物を貰つて来ておるのでありますが、ここに持つて来にくい事情でございますので、あちらに置いてございますから、御希望の方は御覽願いたいと思うのであります。(笑声)私は国立病院の調査に参りましてよく実情を知つておりますけれども、一日の食費が五十円であります。朝は大体熱病患者に対しましても、かちかちのパンと、戰場で残つた粉味噌を使いました一種異様な臭いのある味噌汁、それに僅かに菜つ葉の浮いておる程度のものであります。晝の御飯は代用食で、冷たいうどんが粗末なお椀に少し入つておる。二銭銅貨大の何か種もないような天麩羅が一つでも付いておる日は、今日は脂肪分がとれると言つて大変喜ぶ状態であります。ところが全国のカロリーの申告は大変僞わりになつておりますので、つい温かい手が差延べられないのではないかと存じますが、将来戦争をしないということと、過去の戰争で痛め付けられておる人達を保護するということはおのずから問題が別でございますので、日本人の温かい人類愛、同胞愛の手を差延べまして、来年度以後におきましてはこの傷痍者に対して、もつと温かい、もつと充実した食糧を提供して貰うように大蔵大臣に特にお願いいたして置きたいと思いますが、御返答を伺いたいと存じます。  それから近頃何故か流行病的に全国で十九歳から二十歳くらいの青年が凶悪犯罪を重ねております。先ず去年の秋頃或る秀才の学生が高利貨を営業した記事が載りましたが、これに対しまして案外社会は酷評いたさなかつた。これが原因かと存じますけれども、一種英雄的な気持をそそりまして、それに引続きまして郵便列車の抜取強盗の青年が現われました。それに引続きまして四十何軒を燒き拂つてします放火魔の青年も出て来るかと思うと、岡山あたりからは公金三十万円を拐帶して東京に出掛けて来て、輪タク屋に詐取されておる事件もあります。いずれも幼いくせにその蔭には罪の女がございます。更に最も注目いたさなければならないことは、日本の女性の中に、奧さんがあつても私はこの位置に満足をいたしますというような女性が沢山現われて来ておることであります。これは新らしい傾向でありまして、今までの日本では妾という存在は極めて恥辱のように考えておりました。ところが最近は、この戰争以来、日本では男子の数より女子の数が遥かに多くなつておるという現象も、ここら辺に現われておるのじやないかと存じますけれども、ともかく新らしい結婚の形式である、そしてこれは必ずしも惡いことではないという、こういう意識が強いようであります。こういうことは今後の問題もございますので、さつきの青年の問題と併せまして、文部大臣はこういうことが現われる度に新聞紙上を通しまして、これに対して十分御批評をなさいまして、本人は勿論、家庭とか学校の教育に対して十分な御指導をなさることが、最も効果的で且つ必要だと存じます。敗戰後のアプレゲール、こういう傾向に対しましては一方から解決いたしまして、日本の国の本然の姿に帰さなければならないと存じますが、文部大臣は如何思召しになるでございましよう。  最後に悪徳新聞の斬捨御免の記事についてであります。こういうことを申しますと、この議場内にお集まりの各新聞社の方々に丁しましては誠に失礼なようでございますけれども、皆さんとは何らの関係もございません。(笑声)私も三年間の議会生活におきまして、国会におられる新聞記者の方々が極めて廉潔でございまして、その報道の職責を自覚されまして、できるだけ正しい実情を報道しようと努力しておる姿は、この目で見ております。暑い最中に秘密会のドアに顏を当て、体全体を耳にして正しいニユースを取ろうとして努力しておる姿などを見ますと、余りの敬虔さに頭が下るようであります。名前を申上げるのはどうかと存じますが、曾て或る人が追放になりましたときに、総理大臣官邸の或る部屋で最後の審議がされたのでありますけれども、その部屋の下に潜つてニユースを取られた。こういうことも聞いておりますが、そうした行動が合法的であるか非合法的であるかということは暫らく措きまして、ともかく正確なニユースを報道しようという努力は高く買うべきであろうと考えております。ところが一方において、そういう善良な多くの新聞社がありますのに、半面において、これは又恐るべき時代錯誤の暴力的の斬捨御免の非民主的の新聞の存在することであります。この頃、新聞を見ましても、全治一週間というような傷を受けることはそう沢山ありませんが、この斬捨御免の新聞記者のペンの先にかかりましたならば全く一生涯の致命傷で、多年努力した地位も名誉もただ一枚のペーパーで抹殺されるような、恐ろしい暴力が行われておるということであります。日本人は元来活字を信用する国民でございますので、後でとやかく申してもなかなか火のない所に煙という結果になりまして、善人で痛手を蒙むる人が多うございます。思うに、これは嫉妬や野心のために買收する、こういうことに原因があるのではないかと存じますが、個人が中傷されまして社会的に葬られるような記事が出た場合、法務庁の総裁などは、時々本人をお呼びになりまして、この実情を調査され、この新聞社が、如何なる手段によつて、このニユースを取つておるかということを調査されまして、適当に指導されることがこの段階では大切だと存じます。敗戰日本政治経済、社会のあらゆる方面に亙つて暴力を排撃いたしまして、ひたすら民主化が行われておる時でありますので、特に御注意を拂つて頂きたいと存じます。いろいろ質問の準備もいたしておりますけれども、お願い申上げて置いた大臣の方々については誠に気の毒だと存じまするが、あとに質問者が大変控えておりますので、私の質問は端折りまして、ここらあたりで失礼いたしたいと思います。どうぞよろしく御答弁願います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  13. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 深川議員にお答えをいたします。  御質問の趣旨は、即時講和をなすべきことを最も熱心に要請すべきであるという御質問でありますが、これは終戰以来、国民として又政府として、歴代の内閣においても熱心に、国民の要望はその都度、適当な方法で以て最も熱心に要請しておつたことと思います。少くとも吉田内閣においては、絶えずこの問題は熱心に総司令部との間に話合つて来たものであり、要望もしておつたのであります。併しながらこれは、この間の施政方針の中にも申した通り、客観情勢によるべきものであつて日本ひとりが要望いたしても、客観情勢がこれを許さないために今日に至つたものであり、総司令部としても非常な熱心を以て連合国の間に早期講和については奔走して呉れたものと、私は体験もいたし、又確信もいたしますが、何分客観情勢が、即時講和ということに立ち至らなかつたことは甚だ遺憾であります。又このために講和促進議員連盟というようなものを作つてはどうかというお尋ねでありますが、これは政府としては、無論これを阻止する理由はなし、と言つてこれを奨励するということも、総司令部が非常に熱心に日本講和を考えておるときに、尚これでは足らずして、政府としては議員連盟まで作るべしということになりますと、或いは海外において総司令部が政府に強要されてとかいうような、誤解はありますまいが、そういうような説をなすものがあつても面白くありませんし、政府としては、この問題については、自然に起る連盟その他については無論阻止もいたしませんが、と言つてこれを奬励するということは誤解を招くことになりますから、政府といたしましては別段何らの処置もとらない考えであります。  又その他の問題については、所管大臣からお答えをいたします。  遠山議員にお答えをいたしますが、青少年犯罪防止のために何か適当な方法をとつてはどうかということであります。これは曾て青少年犯罪のみならず、浮浪兒の増加はどうしたらいいかということを、政府は相当研究もいたし、私自身としても研究をいたしたのでありますが、何分これは或る機関を設けたとか、或る予算をとつて、そうして或る方法といいますか、防止のための機関を拵えて見ましても、従来のところ、多くは失敗に終つておるのであります。非常に熱心な篤志家が身を以てこの問題に一生を捧げるというような熱心な人があつて初めてできるので、單に予算を作つて見ても、單に機関を拵えて見ても、何とかという機関を設けて見ましても、多くは当局者が熱意が足りないと申しますか、或いは徳が足らないと申すか、政府が法制を設けて見ましても、なかなか目的を達しないのであります。今日までの経験から考えれば、非常な篤志家がこの問題のために一生を捧げ、身を以てこの問題を考える、この問題を取上げる、青少年犯罪防止のために、極力みずから身を以て当るというような篤志家が出て来て、これを政府が援助するとか或いはその事業を容易ならしむるというような間接な方法でやりませんと、機関或いは政府予算だけでは、なかなか目的を達し難いという私は結論に達し、当局者も多分その結論に達しておるであろうと思います。故に政府として或いは国家としてこれを放置していいか、打つちやからして置いていいか、これはそうではないのでありますが、なかなかむずかしい問題であり、絶えずこの問題を念頭に置いて適当な方法を考えるべしという以外に、私はここでお答えをするところを知らないのであります。又第二の御質問として、統制違反を徹底的に取締ると検事総長が言つたが、これはどうかということでありますが、すでに統制があり、又その統制に関する法律があり、又悪質な違反がある以上は、当局としては取締らなければならぬというより外いたし方ないと思います。  次に板野議員にお答えをいたしますが、日本経済は安定していないと、こういう御趣意でありますが、これは比較論であるといいますか、或いは客観的に考える人の議論を聞くべきであつて、私は安定していると思います。これを終戰直後の事情とは……ずつと考えて見まして、とにかく日本経済は安定の径路をとりつつあると私は確信いたします。それ以上は議論になりますからして、ここで特にお答えをいたしません。又第二の質問として、給與ベースの改訂は不可能だと言つておるがというお尋ねでありますが、これは施政方針の中にも述べて置きましたが、日本経済の安定若しくはインフレーシヨン阻止のためにも、この際、賃金ベースは改訂すべからずという結論に達したということは、施政方針の中にも述べておる通りであります。(板野勝次君「そのことは質問しないのです。講和問題について質問したのです」と述ぶ)政府は足らない食糧を輸入するのは、これは食糧過剰に悩む外国のためにするものではないかということでありますが、日本の食糧は欠乏いたしております。戰前と雖も千五百万石以上の外米の輸入をいたしておつたのでありますから、安い食糧を求め、そうして日本国民食糧を安定せしむるということ、確保するということは、止むを得ざる措置であります。その次に、吉田内閣の政策はポツダム宣言の精神に反しておると、これは断じて反しておりません。(拍手)  その他の問題は関係大臣からお答えをいたします。    〔国務大臣益谷秀次君登壇拍手
  14. 益谷秀次

    国務大臣(益谷秀次君) 家賃の関係と生計費の関係、それから住宅の建設関係をお尋ねのようでありました。現在の家賃統制は矛盾があると私は存じておるのであります。即ち住宅の維持保全のためには、適正の価格にまで家賃を値上げいたさなければなりません。そうして調整いたして参らなければならぬことは認めます一面、借りる人の生活費の中から、これを支拂い得る限度の実施いたさなければならぬのであります。従つて戰前には都会地に、即ち東京のごときは約七割以上貸家住宅があつたのであります。そういう関係から見ますると、今日貸家住宅の企業として行われないのは当然であります。そこで政府といたしましては、取敢えず非常に住宅に困窮しておらるる、或いは只今御指摘の過密居住でありますとか、或いは今日尚壕舍に住居しておられる人もあります。遠距離から通勤せられる人もあります。又家族とも別居しておられる人もあります。こういう人達が約百万世帶と推定いたしておりますが、でありまするから、この方面の住宅難を先ず第一に取上げて、これを徐々に緩和して行きたいという考えから、御承知の通り、これまでいわゆる庶民住宅と申しますか、地方公共団体において国家が半額補助をいたしまして作る住宅であります。これは非常に低家賃の住宅であります。これをいたしまして、一面、国庫の補助によつての住宅を作つて、その方面で住宅難を緩和すると同時に、今回御承知の通り政府出資が五十億、その他百億の見返資金援助を以ちまして、総計百五十億で住宅金融公庫というものを設立いたします。これで只今申上げましたように、最も困窮しておらるる勤労階層の人を第一の主眼といたしまして、低金利長期の金融をいたして参りたいという考えであります。そうして最も困つておらるる勤労階層の住宅を徐々に解決いたして参りたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇拍手
  15. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 過日のこの議場における失業吸收の計画の説明を基礎としての御質問であつたように思いますが、あのときの説明を吟味して頂けば、その中に一応のお答えが出ておると存じます。極く簡單に主要な点を申上げまするというと、お説のように、二百二十八万乃至二百八十五万の吸收の計画が二十五年度予算の中にはできておりますということを申上げたのは、その通りでございます。ただその中には恒久的な安定的な吸收もあるし、例えば失業保險のように極く一時的な吸收もある。それから緊急失業対策のように半永久的なものもある。全部を集めて今の二百二十八万乃至二百八十五万という吸收計画ができておりますという意味であります。例えば約八十万人は二十五年度の日本国民経済の中から体らしい雇用が生れて来る。それから御承知の見返資金、よく問題になる見返資金を使えばどのくらい出るか、三十万乃至四十万は雇用が出て来る。それから公共事業も二十四年度は五百億円であつたのが一千億円くらいに殖えておるからして、二十五年度に純粹に公共事業で殖える分が五十万人くらいは勿論ある。これを総計すると百六七十万になる。これは、やや安定した後に残つて行く雇用であります。併しこれは四月になつたら一挙に出て来るのではないのでありまして、予算を運営して行く間に一年間を通じてこれだけの雇用が出て来るのであります。その間の時間のズレをどうするか。それに対しましては、失業保險で六十万乃至九十万人ぐらい吸收ができる。いろんな計画を織り交ぜて今申上げたようなことになつておるのであります。完全雇用という状態は、大戰後には一挙にはできませんけれども、こういつた総合計画を繰返して行くうちに失業者の残る数というものを順次減らして行つて、いつか完全雇用に近い状態に到達し得るところの計画はでき上つておりますということを予算について申上げた意味でございます。(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  16. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 深川議員にお答えをいたします。生活保護法の予算の問題でありまするが、目下現行の生活扶助費の基準額は、本年の一月に米価の改訂に伴いまして改訂をいたしました。それで六大都市の標準は五人世帶で五千三百七十円となつておるわけであります。この生活扶助費の基準額は、そのときどきの社会、経済の諸事情に則応いたしまして、世帶人員、性別、年齢別に最低限度の生活を営むことのできる金額を算定いたしたものでありまして、米価の引上げ等生活の基準となる価格の改訂がありました場合には、それに対処して適正な価格にまで引上げられることになつております。従いまして、生活扶助費の基準額の引上げは生活扶助を受ける対象の増加を意味しないのでありますから、その点御承知願いたいと思います。もともと生活保護法は、生活保護を必要とする状態にある者の生活を国が無差別平等に保護することを目的とするものでありまして、特に未亡人世帶であるからといつて特別の取扱をするということはできないわけであります。もとより未亡人世帶で真に生活に困窮しておられる場合には、生活保護法を適用いたしまして必要な救済をするように取計らいをいたしたいと考えております。    〔議長退席、副議長着席〕  尚、国立病院の傷痍軍人に対する給與の問題でありますが、傷痍軍人に対しまして特別な取扱はいたしておりません。従来入院患者全般に対しまするところの一人一日平均賄費が五十五円で、カロリーから申しますと二千二百乃至二千五百ということを保持して参つたのでありますが、本年の一月から六十三円に補正せられたので、主食の値上り等の関係もありますが、相当に改善せられるのではなかろうかと考えております。併しながら一層給食の改善を促すがためには、賄材料の調弁、献立の調整、或いは炊さん調理等につきまして努力をいたしまして、栄養価値の向上に努めて行きたいと考えるわけであります。尚、只今申上げましたように、先程現品の御持参もあられるようでありますから、又拜見をいたしまして、今後共、政府といたしましては、極力この栄養価値の向上に努めて参りたいと考えるわけであります。(拍手)    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇拍手
  17. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。最近、青少年の凶悪犯罪とか婦人の家庭破壊というような社会道義頽廃の事件が非常に顯著に認められるという点につきましては、全く遺憾な次第であります。これらの現象は、結局はその根底におきましては、過去におけるような封建的な強制的な社会法律というものから、新らしい民主的な自主的な社会規律への転換期に、なかなかその転換が思うように容易に行けないというようなところに実は根本的な原因があるだろうと考えております。そういう新らしい自主的な社会規律つまり民主的な社会道義を確立する手段といたしましては、お話のような新聞紙その他のジヤーナリズム、又ラジオ、一般出版界というようなものが、非常に重要な役割を果しておるのでありますから、御意見のように新聞を通しての善導をするというようなことも是非共必要なことと考えております。尚、御承知のように青少年犯罪防止につきましては、内閣に青少年不良化対策審議会というのが設けられておりますし、文部省には青少年教護委員会というのが設けられて、いろいろと真劍に検討をいたしております。又婦女子の情操醇化ということにつきましては、文部省に純潔教育審議会というのがありまして、いろいろと具体策を考えておるわけでありまして、これらの審議会の審議の結果等とも併せて、お話のようなジヤーナリズムを通しての具体的方策というものも今後考えて実施して参りたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉登壇拍手
  18. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 御承知のように出版法、新聞紙法というようなものが以前はございまして、そうして報道の取締をいたしておつたのでありますが、この二つの法律は昨年の五月に国会の議決を経まして廃止になりました。尤もすでに終戰の年の九月にメモランダムが出まして、この二つの法律は実際上はその効果をもう失つてしまつておつたのであります。これに代るものといたしまして総司令部の発せられましたいわゆるプレス・コードというものがありまして、間違つた報道或いは占領目的を阻害するような報道を禁止するという措置が講ぜられておるのでありまするけれども、これは管轄が総司令部にありまして、私共の所管にはないのであります。従つて只今新聞等はその報道は全く野放しのような状態にあるのでありまして、自然いろいろな問題を生ずるのであります。甚だ遺憾に存ずるのでありまするけれども、法的に今どう処置をするという途がないのであります。報道の公正は何より必要でありまして、私は只今のところ、これは新聞等の自省及び社会の批判とに待つてこれを維持する外はないと考えるのであります。勿論将来におきまして、これが取締につきまして法律を新たに立法をするというようなことを考えないかという問題でありまするが、私はそれは実は考えておるのでありますが、報道の公正ということを如何にして言論の自由と調和せしめるかということが一番むずかしい問題でありまして、いろいろと考慮いたしておりまするけれども、まだ御審議を願う程度に至つておりませんのであります。只今いろいろお話もありましたので、一層力を入れまして急速にこれらの問題を考えて参りたいと存じます。(拍手
  19. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 大蔵大臣答弁は後刻御出席まで留保されました。玉置吉之丞君。    〔「大蔵大臣が来ておらん」「大蔵大臣どうしたんだ」と呼ぶ者あり〕
  20. 玉置吉之丞

    ○玉置吉之丞君 大蔵大臣にお伺いしたいのです。    〔「休憩」と呼ぶ者あり〕
  21. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) もう少し……御出席が遅れます。    〔「休憩」と呼ぶ者あり、玉置吉之丞君「大蔵大臣が出席しなければ質問しない」と述ぶ〕
  22. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) それではこれにて休憩いたします。開会は凡そ一時半頃の予定をしております。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時二十六分開議
  23. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。玉置吉之丞君。    〔玉置吉之丞君登壇拍手
  24. 玉置吉之丞

    ○玉置吉之丞君 私は緑風会を代表いたしまして、過般本会議場における総理大臣施政方針演説並びに大蔵大臣財政演説に対して、二三の質疑を試みたいと存じます。大蔵大臣がお見えにならんようでありますから、他の出席大臣に対して御質問をいたしたいと思います。私は先ず益谷建設大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  政府は今国会へ提出の予算の中へ、住宅難に苦しむ国民の熱望に応えて、住宅建設に対して、一般金融機関から金融を受けることの困難な住宅の建設資金供給を目的とする住宅金融公庫を設立し、この公庫から住宅建設標準費の五割乃至八割の貸付を行い、而うして残りの五割乃至二割をみずから調達できる者を貸付の対象として、年利率五分五厘で、償還期間は五年乃至十五ケ年程度として、明年度の事業計画は差当り八万戸の建設住宅に対して融資する案が提出されておりますが、私は現下の国民の期待に副いたる案と存じて賛意を表するものであります。終戰直後我が国の住宅の不足は、公けの調査によりますと四百二十万戸と申されましたが、その後四年間に凡そ百八十万戸以上が建築されたそうであります。一方この期間内における風水害、火災、自然腐朽等による喪失と人口の増加によりまする需要等を戰前同様年三十万戸といたしますれば、結局差引六十数万戸の増加に過ぎませんから、現在尚三百六十万戸の住宅が不足するわけであります。私は今尚職場や仮小屋に寢泊りをする人、又六疊の間に五人も六人も多数住んでいる人、片道二時間以上の遠距離を通勤する人々、その他、住宅難に悩む人々のために、政府は更に軍備の必要なき日本においては、思い切つて住宅建築に積極的施策を施す意思ありやを伺いたいのであります。過般の安本長官演説によりますと、明年度においてセメント四百万トン、鉄鋼二百五十万トンの増産が確保されておるそうですが、このセメント、鋼材を利用して、この場合に戰災都市に対して防火壁を兼ねた住宅を政府の資金で一戸凡そ十五坪ぐらいの住宅を、アパート式の集中家屋として凡そ百万戸ぐらい、向う十ケ年計画で建設する案を考える意図がないかを伺いたいのであります。(拍手) 十万戸に要するセメントは凡そ八十万トン、鋼材が凡そ二十万トンぐらいと聞いております。明年度において見返資金より先ず十万戸の建設資金一坪二万円、一戸十五坪として三十万円、この合計十万戸に対して三百億円ぐらいを廻して頂いて建設するといたしますれば、一戸に対して一ケ月仮に千円の家賃をとるといたしますれば、年間一万二千円になつて、年四分の利廻りになりますが、これによつて住宅難に苦しむ国民を年々四五十万を安定せしめると同時に、これら資材の有効需要を起し、積極的には失業救済となり、又一面森林の濫伐をも防ぎ、治山治水にも役立つわけでありますが。平和日本文化国家建設の対象として、せめて軍備を放棄いたしたる我が国としては、戰災の復興対策として、これが実現に建設大臣として大いに努力される意思あるやなしやを伺いたいのであります。(拍手) 又同時に大蔵大臣のこれに対する所信を承わりたいと存じます。  次に森農林大臣に対して一二お尋ねしたいと存じます。  先ずその第一点は、大臣は前国会の当議場において食糧政策の一環として、食糧の自給度を高める一方、農村工業化により農村の工芸品の輸出を高調されておりまするが、この工業化に対して明年度本予算に如何なる予算の措置が講ぜられておりますか。農村工業化と申しましても、資金がなくば実現が不可能と存じます。例えば靜岡であるとか和歌山県であるとかという所に相当量の柑橘が生産されております。これらを加工して罐詰等にいたすならば、アメリカその他南方地域に輸出されまして、内地で消費するよりも有利な事業であります。併しながら農家個個では到底これが実現できません。そこで、これには、やはり政府において資金の心配をするなり技術の指導を行わなければならんと存じますが、このような具体的の方法があるならばお示しを願いたいと存じます。  次に大臣は今後の我が国の食生活は量より質であるとたびたび繰返されておりますが、我々国民の食生活において最も大衆化したものは即ち蛋白質を含んでおる魚類であります。然らばこの魚類をとる水産業界に対して如何なる施策が講ぜられておりますか。私の承知いたしておる範囲におきましては、水産業界においては明年大体三百億円くらいの漁船や漁網を作る資金が要るようでありますが、これは、そのうち百億円ぐらいは自己資金で賄うことができるかも知れませんが、他は融資による外はないと存じます。水産業界は御承知の通り、四、五の法人組織の大会社を除けば殆んど中小の個人企業です。これらの業者が金融に悩んでおる実情は大臣先刻御承知のことと存じますが、これが対策について御所見を伺いたいと存じます。  世界の農産物が段々増産されて参りまして、而して我が国の円レートが一応三百六十円に定着するものといたしまするならば、ここにローガン構想に基き段々自由貿易に近付きつつあることは御承知の通りであります。同時にボンド地域に対しまする輸出入は大体バーター制でありますから、従つて米国の援助の資金もこの方面よりの輸入食糧の資金に充てられることになつた結果、この方面より相当量の食糧が輸入されまして、而して世界の農産物の物価水準に繋がる時は、我が国農業、農村の恐慌の時と思いますが、これが対策として農村の施策に、農民の自覚はもとより、政府施策がなければならぬと存じます。審議会などをお設けになつて検討するもよろしいが、この際、私は農林大臣としての抱負経綸を伺つて置きたいのであります。何らか我我の得心できる農政に対する御所見を伺うことができますれば誠に仕合せと思います。  次に稻垣通産大臣に対して中小企業の金融対策についてお尋ねをいたしたいのであります。全国の企業者数のうち九〇%以上を占め、又生産高の六〇%を賄つている中小企業界の金詰りに対して、政府はこれが救済のために、日銀ポリシー・ボードの協力を得て、先に二十億円の資金を目標に、都道府県庁を通じ、設備資金の調査表をまとめまして、昨年末検討を終えられて、都道府県庁及び中小企業庁らの意見を附しまして、日銀を通じて地方銀行を主とする金融機関へ融資方を通達されましたが、その後金融機関におきましては、損失補償の伴わないことと、中小企業者の実態が把握できないというような理由から協力を得られません。折角当局が親心を以て計画されたことも絵に描いた餅になつていることは大臣すでに御承知のことと存じます。先日大蔵大臣演説にも、又見返資金から十五億円程度の融資を行い、市中銀行手許資金を見返資金と抱き合せて貸出す案がありましたが、これも前の日銀政策委員会の案と同様の運命となるものと私は考えるのであります。大臣の所信はどうですか。中小企業界に対する金融の困難なことはもとよりであります。今や我が国中小企業は潰滅の一歩手前にあると存じますが、通産大臣としては責任上この問題に対して如何なる積極的施策ありや。この場合に承わつて置きたいと存じます。  尚、高瀬文部大臣にお尋ねいたします。最近全国的に不就学兒童の続出しておることは御承知の通りであります。現に私共の佳いいたしております海南市という小さい市においても、僅かに人口三万四、五千の都市に凡そ三百人くらいの兒童が学校に登校しない。そのために若い教職員がこの就学の勧誘に涙ぐましい努力をいたしておるのであります。これは私は全国的に反映をいたして、相当の数があると思うのであります。国家の将来誠に由々しき問題と存じますが、これらについては種々なる家庭の事情もあり、又将来において社会保障制度等の問題とも関連性のある問題と存じますが、これに対する文部大臣の御所見を伺いたいと存じます(拍手)  次に、地方財政平衡交付金の配付につきましてでありますが、今日の教育委員会の制度等ができておつて、それらの実際に鑑みまして、教育費に対する割当等の決定方法については、明年度においてどういう方策がとられておりますか。この際、伺つて置きたいのであります。次に尚六・三制補助金が明年度において四十五億円の予算が盛られておりますが、今日地方においてはこの問題について相当貧弱なる農山漁村においては困難をいたしておるということは事実であつて、この財政上の癌となつておりまする六・三制教育の設備費の問題については、これらは少し不十分でないか、徹底しないというような気持がいたすのでありますが、この際文部大臣の御所信を伺つて置きたいと存じます。  大蔵大臣が見えぬようでありますが、どうかお伝えを願つて答弁を頂きたいと思います。先日池田大蔵大臣は当議場においと明年度の予算案の説明をせられるに当つて、本年度の予算は前年度予算に比較して減税において凡そ九百億円を行い、尚一千二百億円の債務償還の案を立て、且つ又公共事業費等も本年に比べて凡そ九割近く増額を行なつて、而してその他の諸般の施策と相待つて、これらによつてインフレーシヨンに一応の終止符を打つたとおつしやつて、健全なる均衡予算である、而して経済のあり方はデイス・インフレーシヨンであると申されたのであります。断じてデフレではない、又デフレなどと論議する者があるとすれば、これは、ためにする一部の議論であつて、かようなことは断じてないと断言せられた自信に対して、私は一応敬意を表して置きます。併しながら私は、デイス・インフレであるか、デフレであるかは、かかつて今後の財政金融政策即ち本予算案の運用如何と、我が国の輸出貿易の振興状況並びにこれに伴う生産の増強と、内地における有効需要の円滑化等による経済状態の平常化に伴う金融難打開に最も重要なる役割を演ずる見返資金が、政府の考えの通り滑らかに公共事業その他の民間企業に放流されることと、債務償還による資金が急速に民間金融に還流されて、而して政府施策が円滑に行われるや否やが岐路に立つものであると信ずるのであります。  そこで先ず第一に伺いたいのは、大蔵大臣の御見解では、三月末までに見返資金が過般本会議場で御説明のあつた既定計画の通り資金が放出されますか。これが見通しにつきまして池田大蔵大臣の腹蔵ない考え方を、この際はつきりとお漏らしを願いたいと存じます。先般一万田口銀総裁の談として各新聞紙上に掲載されました記事によりますと、即ち本年三月の経済危機説であります。これに対して国民の多数は今尚一抹の不安を持つております。私は今日の過重なる租税等が年度末において一度に徴收される状況と、現下の各方面における金融難、滯貨の状況、株式の暴落、物貨の売行き模様等を考えまして、日銀総裁の考えにも又一理あると存ずるものであります。これに対する大蔵大臣の所信とその対策を承わつて置きたいと存じます。  次に明年度予算案について大臣演説中、明年度において一般、特別会計を合せて七百億円、見返資金特別会計から五百億円、会計一千二百億九の債務返還が予定されておるというお話でありましたが、これこそ超健全財政かも存じませんが、近頃大蔵大臣は、この問題が財界方面の人気が余りよくないので、これが国会に反映しておることに対して甚だ御機嫌がよくないようでありますが、私をして率直に言わしむれば、一体昭和七十五年、即ち向う五十ケ年間に徐々に支拂つてよい、而も戰争中、無方針、無鉄砲に発行された公債をも含む国家の負債を、一ケ年度にかくのごとく巨額に支拂い得る国家財政の半面たる国民経済においては、国民の過重なる租税の納付に要する金策に苦しみ、デフレ傾向を帶びたる有効需要の減退に伴う滯貨による資金難、又株式暴落による金詰り等々の状況下において、如何に健全財政主義とは言いながら、かくのごとき巨額の債務を返還し得る財政に余裕あれば、いま少しくこれを国民負担の軽減に充てるべきであるということが各方面に起つておる声であります。(拍手)のみならず、これが債務の返還を受ける金融機関においても、これらの資金が直ちに民間に還流されるものでないということを申しております。その事柄は蔵相の篤と御存じのことと存じますが、念のためにお尋ねをいたして置きたいのであります。私の承知いたしておりまする範囲におきましては、償還されるこれらの公債の所有者は、大銀行において百六十億円、地方銀行において百六十億円、その他、保險関係において三十五億円、合計三百五十五億円、その他は日銀所有の国債並びに復金債であるということでありますが、ここにおいて如何なる結果を招来いたしますか。国債こそ運用の妙を得れば市中銀行にとつて誠に重宝なるものであります。それは銀行業務の本来の性格から、預金の全部を貸出す等無謀な経営ができないのであります。最も確実な放資物件として、国債を持つておれば、資金の入用なときには日銀に持つて行けば何時でも資金が得られるのであります。私は往年高橋是清翁より国債についてのお話を伺いましたが、一部の国民の中には国債亡国論などを唱える人もあるが、一定限度の国債は国民資本の蓄積にも又銀行経営の上にも絶対必要なものである、国力に相応した限度を失わない国債は、銀行経営にとつては利息の付いた通貨も同様であると申しておられましたが、そこで一度に償還を行いましても、これが直ちに市中銀行を通じて還流されるか否かが問題です。償還を受けたる銀行が果してこれを民間の融資に充て得るや否や多大の疑問を持つものであります。殊に償還されたる国債が日銀に担保に入つておるとすれば、これは借金の肩替り即ち通貨の收縮であります。殊に日銀所有の国債償還は、これ又即ち通貨の收縮です。ここにおいて債務償還即ち通貨の收縮論が論ぜられておるのであります。これがいわゆる蔵相のデイス、インフレーシヨンか、デフレーシヨンかが、この債務の返還の資金がスムースに民間企業に還流して今日の金融梗塞を打開する上に役立つか否かが、大きな問題と存じます。これが民間へ還流の方法について蔵相より明確なる計画の御説明を願いたいと存じます。  次に私は公務員の給與ベースの改訂の問題について、今期国会において各議員の質問に対して、大蔵大臣は断じてこれを改訂しない理由として、若し公務員の給與ベースを人事院勧告案の通りに改訂するとすれば、中央地方を通じて凡そ六百億円の財源を要し、且つ又公務員給與ベースは、一般賃金ベースに比較して左程安くはない、種々な観点より申して詳細なる御説明があり、又口を極めて賃金と物価との悪循環にはこりこりだと仰せられておるのであります。私もこれに対して同感を感ずるものであります。明年度勤労所得税について凡そ三百六十八億円本年度に比較して減税されておりまするが、源泉課税の基礎控除等につきましても、今回の減税案はシヤウプの勧告に基いて、現行の一万五千円に対してシヤウプ勧告案二万四千円の上に一千円プラスして二万五千円となつております。又扶養控除等においても税額から千八百円引いたものを、所得のうちから一万五千円引くというような幾分か是正された点もありますが、勤労控除は従来二五%であつたものが一五%となり、最高三万七千五百円が三万円と相成つております。この際、賃金と物価の悪循環を繰返すような賃金ベースの改訂よりも、多数の勤労者が熱望しておる勤労所得税の軽減は誠に結構なことと存じまするが、併しながら私は現下の実情に考え、今回の減税は甚だ微温的であると申さなければならないのであります。その理由は、昭和五年頃において、大体年收千二百円程度以下は免税に等しいものであつたのであります。若しそれを今日の貨幣価値に考えますと、凡そ二十万円ぐらいに相当すると思います。又アメリカにおきましても年間六百ドル以下が控除されております。これを即ち邦貨に換算すれば二十一万六千円となります。敗戰後の我々国民があらゆる耐乏生活を続けつつ、国家再建のため、また又民生安定のために重税にも堪えなければなりませんが、私は我が国の勤労階級の生活の実際に考えて、せめて基礎控除は五、六万円程度に引上げるべきものであると存じますが、大蔵大臣のこれに対する愼重なる考慮を煩わしたいと存じます。私は、この際、大臣債務償還の一部を割いて今一段の勤労所得税の軽減を図られるというお考えがないかということをお尋ねいたしたいのであります。と申すことは、私の信念としては、これによつて人事院の賃金ベース改訂案に報い、実質賃金の向上ともなり、勤労意欲の高揚を図り、而してその一部は貯蓄となり、或いは購買力となつて、物資の有効需要を増してデフレーシヨンを阻止する上において、多大の作用をなすものと信ずるのであります。この際、蔵相は勇を鼓してこれが実現に努められる意思ありや否やを伺いたいのであります。  次に税制改革の問題について、シヤウプ勧告に基く附加価値税の複雑性を廃し、これを簡素化して、徴税し易い、又納めるに手数のかからぬ税制として種類別を設けぬこと等についての御所信と、資産の再評価における土地建物の賃貸価格の千倍というような一律の定め方に伴う実際の土地価格と非常に隔たつた、或いは五倍となり一倍ともなるというような不合理極まる不当な倍率案、並びに電気事業、私設電鉄の資産の再評価等についても愼重なる考慮を加える要があると存じますが、これらについてのお考えを承わりたいと存じます。尚、地方税の改正等についても幾多の問題がありますが、差当つて鉱産税等につきましても、炭鉱地帶におきましてはすでに都道府県と市町村の間においてこれらの地方税の分割問題について国会の中へもすでに陳情が来ておる。それらの一端によりましても、これらの決定の如何によつては、市町村において財政的に破滅に瀕するような事態が起り得る場合も予想されますが、(拍手)それら地方税制の改革に対する大蔵大臣の御所信を承わりたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣益谷秀次君登壇
  25. 益谷秀次

    国務大臣(益谷秀次君) 住宅は未だお説のごとく大体三百六十万戸の不足と推定いたしております。これは政府といたしましても非常に住宅問題については重大なる関心を持つておりますと同時に、でき得るだけのこれに対する対策を講じて参つたのであります。只今都市における耐火住宅百万戸を国庫で作つたらどうかというお話しでありまするが、大体国が直接住宅を建設いたしてそれを貸付けるということは、住宅の管理並びに維持というような面から見ましても非常に不適当であります。のみならず百万戸という厖大なる耐火住宅を作るということは、これは計算もいたしませんが何千億という巨大なる費用を要するのでありまするから、今日の財政の上から見ましてこれは困難であると思います。そうして従来は御承知の通り住宅の建設の隘路は敷地と資材とそれから資金でありました。今日は敷地と資材の面は非常に緩和せられまして、最も隘路と見るべきものは資金の点であります。故に御承知の通り政府はこれまで通り庶民住宅、御承知の半額国庫補助の住宅であります、そうして低家賃の住宅であります、これを従来通り実行いたしますると同時に、今回は百五十億の資金を以ちまして住宅金融公庫を作りまして、そうして主として先程仰せのごとき最も困難を来たしておられる勤労階層の住宅を作る、これには低利の資金で長期の貸付をいたすというので、この方面、いわゆる庶民住宅或いは低利長期の貸付という両面から、住宅難を除々に緩和して参りたいという所存でございます。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇
  26. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 玉置議員にお答えいたします。第一のお尋ねは農村工業についての御質問でありましたが、先にも申上げました通り、今日の農村におきましては是非余剰労力を活用いたしまして、農村工業の振興を図るということが農業経営を合理化する一環であるということを信じておるのであります。農村工業と申しましても、各地区的にいろいろの原料、資材等の関係がありまして、一概に申上げることはできないのでありまするが、例示されました柑橘類の加工輸出ということも最も有利な農村工業の一つと考えております。二十四年度におきましては、四百四十五万円くらいな経費を以て臨んでおつたのでありまするが、二十五年度におきましては、千百三十万円ばかりの経費を見積りまして、その加工技術の指導、又輸出に対する援助等も考慮をいたしておるのであります。而してお話通り、こういう工業を振興いたしますにつきましては、いずれも資金が問題であります。資金は農林中央金庫を利用するの外ないのでありまして、二十五年度におきましては、この農林中央金庫の資金を倍加いたしまして、その預金等の資力より三百億余りの資金を融通することができることになつておるのであります。勿論これは農林水産等の各農林省関係の事業に融資するのでありますが、相当な資金を以ちまして、その工業の実体について融資をいたしたいと、かように考えておるわけであります。  次に、水産政策について金融方面についての御質問でありましたが、これは昭和二十四年の十二月までに水産金融いたしましたのは、資本漁業と又沿岸漁業、零細漁業等の各方面に亘つておるのでありまするが、資本漁業といたしまして、アメリカ式の巾着網について一億二千五百万円、以西底曳の漁業設備に対しまして一億三千三百万円、又小笠原捕鯨事業等につきまして二億五千万円、南氷洋捕鯨の大事業運転資金といたしまして三十九億四千万円、その外一般の漁業に対しましては、農林中央金庫の取扱で中長期の設備資金といたしまして二億七千五百万円、漁業手形による運転資金といたしまして七億三千九百余万円、北海道の漁田開発、これが一億円、又輸出用の寒天の運転資金等について三千万円、こういうふうに合計十五十億余万円に上つておるのであります。二十五年度におきましても、目下見返資金計画を樹立いたしまして、この実施に努力中であるのでありまするが、水産加工業、これは輸出向のものでありますが、設備資金につきましても、中小企業別の枠で融資をできるように極力今考えておるわけであります。今後の情勢につきましては、中小企業融資といたしまして、見返資金から十五億円を予定いたしております。昨年末来の日銀のマーケツト・オペレーシヨンは今後も大いにこれを活用するように折角努力をいたしておるのであります。興銀、勧銀、農林、中金、商工中金、北海道拓殖銀行の増資を見返資金で引受けまして、その債券発行限度、これを二十倍にいたしまして、これらの調達をいたしまして、長期の資金を考えておるわけであります。二十五年度に予定いたしておりまする事業の分量につきましては、第一に企業関係におきまして二十二億六千五百万円、第二の組合関係におきまして三億七千五百万円、その他につきまして十四億円を予定いたしておるのでありまして、今後ともこの見返資金等の融資のできる限り、水産業の振興に貢献いたしたいと、かように考えておるわけであります。  次に、将来の農業政策についてお尋ねがあつたわけでありますが、いつかもお話にありましたように、今日の農業政策即食糧政策でありますが、この食糧政策につきましては、たびたびお答えいたしました通り、あらゆる角度から日本の生産力を高めて行くということが今日許されておるものでありまして、今日の輸出の状態が正常にまだ復帰いたしておりません以上、この日本現状のみを捉えまして、こうすべきである、或いは最惡の場合を考慮いたしまして、或いは農産物価の最低保証をするとか、或いは関税政策を用いるというようなことは、今日お話申上げる段階に入つておりませんから、今日アメリカから食糧を貰つておる立場におきまして、あらゆる角度から日本の食糧増産に努力するということに專念いたしたいと、かように考えておるわけであります。    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇
  27. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 中小企業に対する昨年末の日銀を通じてのマーケツト・オペレーシヨンによる融資が円滑に行つていなかつたということについては、甚だ遺憾に存じておるのであります。これは一つは、地方銀行において徹底を欠いておつたという点もありますし、又同時に企業者側において受入体制が整備されていなかつた、この二つの点があると思うのであります。最近昨年末より地方銀行に対するところの十分な了解と、それからして又受入側におけるいろいろな準備と、こういつたようなものが整いましたので、本年になつてから、これが案外滑り出しよく動いておるのであります。同時に先程まあ十五億の見返資金を以て共同融資をするということも、今後同じような結果になるのではないかというお尋ねがありましたが、そういう状態に動き出しておりますので、今後今の十五億の見返資金の下に共同融資も大いに期待できると我々はかように考えておるのであります。尚、商工中金の増資、或いは又債券の発行というようなことも、これに対して大いに助成される一つの方法だと、かように考えておるわけであります。    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇拍手
  28. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えします。お話になりましたように、    〔副議長退席、議長着席〕  現在不就学の兒童生徒の数、長期欠席の兒童生徒の数が相当に上つておるということは甚だ遺憾な次第であります。文部省といたしましては、その実際の状況を調査いたしておるわけでありますが、その調査の結果に基いてよく原因を確かめて適当な対策を従来も講じて来ております。原因として挙げられるものの大きなものは、先ず第一は経済的な原因で、家庭の窮迫にあると思いますが、もう一つは、兒童生徒の怠惰とか不良化というような点にもあるかと思います。それぞれ適当な対策を考えなければならないと思いますが、一番大きな原因は、何といつても家庭の経済的な窮迫にあるわけでありまして、これについては文部省は従来厚生省と密接と連絡をとりまして、就学奬励費というものを出しましたり、生活保護法によります救済対策を講ずるというようなことをやつてつておるのであります。来年度におきましては、特に生活扶助という面から強力に対策を講ずるということで相当の予算が計上されておる筈であります。  次に、二十五年度予算から地方の教育費に対する国庫補助が平衡交付金の中から支出されるという制度に変りましたために、地方教育の水準が維持されにくくなるという点で御心配があるというお話であつたと思いますが、文部省も無論この点非常に重要視しておるのでありまして、何とかそういうことにならないようにしたいと、いろいろと準備を進めております。それについて一番大切だと考えられますのは、何と言つても地方教育の最低水準を維持するについて必要な標準的な経費というものがどのくらいであり、又それをどうして確実に維持して行くかという点にあるかと思うのであります。で、そういう趣旨で現在適当な方策を立てようと準備を進めております。  次に、六・三制の建築費補助予算につきまして、二十五年度四十五億計上されておるが、それでは甚だ不十分ではないかと、こういう御意見であります。無論、私も甚だ不十分だと考えておるのでありますけれども、とにかく今まで青空教室とか馬小屋教室とか言われておりましたように、教室が全然ないとか、或いは馬小屋とか、小使部屋とか、廊下で授業をやるとか、或いは二部授業、三部授業で非常に不完全な授業をやると、こういう最も不完全な状態にありました施設は、一応大体これで整備ができると、こういう程度の予算であります。ですから、それだけで無論教育上十分だというわけではありませんから、今後は毎年財政の許す限りにおいて、やはり建築費予算を計上いたしまして、漸次完成を進めて行きたい、こういう方針であります。(拍手
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大蔵大臣は尚出席できかねるので、後刻答弁がある趣きであります。中村正雄君。    〔中村正雄君登壇拍手
  30. 中村正雄

    ○中村正雄君 政府施政一般に関しまする演説に対しましては、各会派の代表がそれぞれあらゆる面につきまして質問されておりますので、私は立場を変えまして、憲法上の観点から自衛権の問題及び労働政策並びにこれに関係する予算面につきまして、私の見解を逆ベながら質問を進めて参りたいと思います。主として内閣の首長である総理大臣より責任ある御答弁を得たいと思いますが、質問の内容を御判断の上、他の国務大臣を適当とお認めになるならば、その方でも差支ないことを予め申上げて置きます。要は内閣として責任ある御答弁を要求して置きます。  日本国憲法が他の如何なる国にも例を見ない特色を持つております点は、前文に宣言いたしておりまする永久平和主義の採用であります。この理想の具体化といたしまして、第九條は、戰争のみならず、武力による威嚇、又は武力の行使を永久に放棄いたしまして、更に進んではその具体的な裏付けといたしまして、軍備を廃止し、あらゆる場合において国の交戰権を否定いたしておるわけであります。即ち日本国憲法第九條の第一項におきましては、国際法上戰争と認められるものであると否とを問わず、広く武力を用いることは、国際紛争を解決する手段としては一切これを放棄いたしております。一言で申しますならば、侵略的な戰争、即ち違法な戰いは、永久にこれを放棄すると宣言いたしておるわけであります。この第一項の内容は一九二八年の不戰條約にはつきりと明示され、世界の殆んどすべての国がこの條約の加盟国となつていることは諸君御承知の通りであります。この不戰條約の内容、即ち日本国憲法第九條第一項と同じ趣旨のことを憲法に規定しております国は、今までに五指に余る程あります。即ち一七九一年のフランス大革命の憲法、一八四八年のフランス共和国憲法、近くは一九三一年のスペイン憲法、一九三四年のブラジル憲法、一九三五年のフイリツピン憲法等で、いずれも不戰條約の加盟国として侵略戰争を放棄する旨を宣言いたしております。従つて第九條第一項は日本国憲法に特有なものではなく、憲法第九十八條によつて、不戰條約の加盟国としての当然な義務を国内法規に宣言いたしておるに過ぎないわけであります。第一項によつて放棄されておらない戰争、即ち侵略的でなく、違法でない戰争は、第二項後段の交戰権の否認によつて初めて放棄されることになるわけであります。違法でない戰争、これは国際法上明らかなように、自衛のための戰争と制裁のための戰争であります。この交戰権の否認について最も重要なことは、これが全く無條件になされておる点であります。武力による威嚇はもとより、武力の行使もすべてこの交戰権の否認と軍備の廃止の項とによりまして完全に放棄せられておるわけであります。ここに至つて戰争の放棄は完全に徹底的に行われたものであり、永久平和主義の理念が具体的に宣言されておるわけであります。これこそが世界の憲法に全くその比を見ない日本国憲法の特色であります。  然るに先般の吉田総理演説の中に、突如として自衛権を放棄するものでないという言葉が、本当に木に竹を接いだように述べられております。この演説を聞いて、永久平和主義を採用し、如何なる理由による戰争も完全に放棄したものだと信じていた国民が、吉田内閣は自衛のための戰争はこれを行い得るものだということを宣言したものと思つて非常に驚いておることは想像に難くありません。各会派の代表が殆んど漏れなく自衛権の問題について質問しておることは、この国民の驚きを端的に表明したものだと考えられます。この自衛権の問題に関しましては、総理なく各代表に対する答弁において、武力を伴わない自衛権という意味答弁をなされております。人間に本能があるがごとく、国家一般に国際法上自衛権を有するものであり、我が国は戰争は完全に放棄した、軍備は完全に廃止した、併しそれだけであつて自衛権は放棄したとは言つておらない、従つて放棄しない限りにおいては自衛権は存続するものであり、ただ、この自衛権の発動について戰争に訴えることはできないという制限があるだけだというお考えだと思います。  併しながら一国が他国の攻撃を受けた場合、或いは圧力を受けた場合に、国際法上自国を守る自衛権の発動として武力を伴わないものが想像できるでありましようか。或る人は、戰争や軍備の行使でなく、例えば警察官に許されておりまする武器とか或いは竹槍がそれに該当すると説明する人もあります。併しながら警察官の武器や竹槍の行使も広い意味における武力の行使であります。又これらのものを集団的に使用して、国が侵略国に対して発動する場合においては、憲法言うところの交戰権の発動であり、明らかに交戰権を無條件に否定した憲法の規定に背反するものと言わなければなりません。従つて総理の言う自衛権、武力を伴わない自衛権なるものを、我が憲法は果して留保いたしておるものでありましようか。私は日本国憲法前文の第二段、第三段及び第九條並びに憲法全体の精神より見て、自衛権は憲法改正と同時にこれを放棄したものと見ることが、永久平和主義を理念とし、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我らの安定と生存を保持せんとする憲法の精神に合致するものだと考えておるわけであります。憲法改正の際の記録を読んで参りましても、この戰争放棄の章については、自衛権をめぐつて相当の議論が鬪わされております。併し政府委員並びに議員の答弁なり或いは意見の中にも、相当自衛権の放棄を意味する言葉が出ております。恐らく吉田総理も当時の内閣の首班としては、自衛権も放棄しておるとお考えになつていたものと考えられます。然るに憲法制定以来三年有余、国際情勢の変化に伴いまして、自衛権の留保を言明せざるを得ない立場に至つたことは推量するに余りあるものがありすすが、併しながら、憲法の基本理念は、解釈は、国際情勢国内情勢の変化によつて左右すべきものでは断じてありません。(拍手)八千万の国民が、憲法改正以来、永久平和主義の理念に徹し、一致団結して世界の信用を得るために努力いたしております最中において、講和会議の開催を近き将来に控えておる現在におきまして、総理の自衛権の留保という演説が、国民の信念を弛緩させ、一部軍国主義者に乘ずる隙を與えることを私は最も恐れるものであります。(拍手)以上の見解に立つて総理にお尋ねしたい第一点は、如何なる場合に武力のない自衛権を発動するかという仮定の問題ではなくして、武力を伴わない自衛権の内容であります。権利という以上、それが観念的なものではなく、一定の内容を持つものでなければなりません。武力なき自衛権の内容を御説明願いたいと思います。  第二点は、国を守るに何らの実効を伴わないと私は考えておりまする武力なき自衛権という観念を、一般施政方針演説において、宣言することが、如何なる利益を我が国にもたらすものであるかということをお聞きしたいと思います。  第三点は、我が国の安全保障の問題であります。我が国が国際法上の義務以上に、進んで軍備を廃止し、自衛のための戰争まで放棄しておる現在、何によつて国の安全を保障するかは国民の重大なる関心事であります。憲法改正の際において、政府及び各議員の間におきましても、国際平和団体を樹立して、これに加盟することによつて、我が国の安全を保障せんとしていたようであります。端的に申上げますならば、この国際平和団体の加盟国の軍事的援助によつて我が国を侵略攻撃より守らんとするものであります。この場合、国民の最も重大な関心を持つている点は、この加盟国よりの軍事的援助を受ける方法であります。我が憲法が戰争放棄の章におきまして、「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」と言つておりますことは、軍備を全廃し、日本が完全な平和主義をとり、日本を完全な平和国家にするために、日本の領土内に全く軍備を置かず、日本を完全な非武裝状態に置くためであつたと考えられます。従つて日本の軍備ばかりでなく、たとえ他の国の軍備であつても、これを日本に置くことは憲法の精神に反するものと言わなければなりません。(拍手従つて総理にお尋ねしたい点は、国民のこの重大関心事である日本を完全な非武裝状態に置くことが憲法の精神であるという私の解釈を正しいとお考えになるかどうか、若し正しいとお考えになるならば、他国より万一軍事的基地の要求があつた場合、占領下における政府として如何なる決意によつてこれを排除せんとするか、又私の解釈が間違つておるとするならば、総理の解釈を承わりたいと存じます。  次に、政府労働政策並びに賃金ベースの改訂につきましてお尋ねしたいと思います。一昨年七月二十二日附のマ書簡によりまして、公務員及び公共企業体従業員は労働三法の適用外に置かれ、公務員に対しましては団体交渉権及び罷業権を、公共企業体従業員に対しましては罷業権を剥奪するそれぞれの法規の改正が行われております。このことは、憲法第二十八條に規定する勤労者の基本的人権が第十二條及び第十三條に規定する公共の福祉という見地から制限を受けたものであると、審議の際政府は説明いたしております。これら勤労者の生存権を確保し、経済的利益を確保するために、罷業権に代うるに、公務員に対しましては人事院の制度、公共企業体従事員に対しましては仲裁委員会の制度を設けて万全を期するものであるということを又説明されております。公務員や公共企業体従事員から憲法上認められました基本的人権を剥奪するということは、他方におきましては、人事院の勧告や仲裁委員会の裁定を尊重し実施するということによつて、初めて合理付けられるわけであります。(拍手労働運動を健全に発達さすためには、労働争議を平和のうちに解決するためには、労資双方が平和的処理機関の権威を尊重しなければなりません。人事院や仲裁委員会の制度は單なる労働争議の平和的処理機関ではありません。これは罷業権に代るべきものであります。憲法上認められました基本的人権が形を変えて法の上に現われたものと考えなければなりません。従つて人事院や仲裁委員会の権能は憲法上の効力を持つておるものと考えて、初めて公務員法や公共企業労働関係法が罷業権を否定していることが、合理付けられるわけであります。然るに政府は一方において罷業権を剥奪し、他方におきましては仲裁委員会の裁定や人事院の勧告を多数の力によつて否定することは、労働者にのみ法規の遵守を強要し、みずからは法を蹂躪するものでありまして、明らかに民主主義の否定であります。民主主義が正しいためには、多数決の政治が正しいためには、多数の考えは理に合つておるという裏付けがあつて初めてその妥当性が見出されるわけであります。数の力によつてのみ解決することは、政府意思に反するものに対しましては、與党、絶対多数の威力によつてすべてこれを否決し去るということは、明らかに暴力主義であります。昨年暮の国鉄に対する裁定、本年の專売公社に対する裁定に関し、政府は不承認の議決を国会に求めております。又総理の施政方針演説において公務員の賃金ベースの改訂はやらないと言明いたしております。このことは言い換えれば人事院の勧告を無視するということと同意語であります。現在政府労働政策は、一言にして申しますならば、労働者の利益になることは法を無視してもやらないということに盡きると思います。  以上の観点に立つて総理にお尋ねしたい第一点は、昨年末の国鉄に対する裁定残額の支給であります。政府国会に対して議決を求めた案件は、御承知のように衆議院においては不承認、参議院においとは承認の議決をいたしております。従つて国会としての意思表示はなされなくて、これは廃案となつております。言い換えれば、国鉄の裁定に対しては国会は何らの意思表示をなすことを得なかつたわけであります。この裁定の効力に対しましては、参議院の運輸並びに労働の合同委員会におきまして、内閣を代表して官房長官が、裁定が提示された場合は国有鉄道及び労働組合は公労法第三十五條により債権債務を負うものであり、この債権は国会の不承認という議決によつて既往に遡つて消滅する解除條件付のものである、ということを数回に亙つて言明いたしております。従つて国会の不承認という解除條件は完成しないことが確定し、ここに債権債務は完全にその効力を発生いたしておるわけであります。従つて裁定総額より十五億五百万円を差引いた残額の支給について、政府は如何なる予算的な措置を講ずる考えかお聞きしたいわけであります。  第二の点は專売公社に対する裁定の問題であります。政府はこの裁定に対しましても、予算上、賃金上不可能なものとして全面的の不承知を求めて参つております。然るに昨日の参議院の議院運営委員会における秋山証人の証言によれば、裁定に示す金額は、公社の、経理状況など内部につき詳細検討した結果、支出し得る財源はある、ただ予算の流用につき大蔵大臣の許可が必要であるので、これを申請したが許可にならなかつた。大蔵大臣がなぜ許可しないのか、その真意は分らないが、私の承知するところでは、金額の面ばかりでなく、前の国鉄裁定と同様、民自党の一貫した政策だと思うと述べております。これは專売公社の責任者である総裁が国会におきまして宣誓した証人としての供述であります。当の責任者である総裁が予算上可能なりとして裁定に服する意思を表示しておるに拘わらず、なぜ政府がこれを予算上不可能なりとして国会に不承認の議決を求めんとするものであるか。又民自党の一貫した労働政策とは、法規をも輿論も無視した数の力による労働賃金の釘付けを意味するものであるか。この点につきまして、はつきりした御答弁を得たいと思います。(拍手)  第三は賃金ベースを改訂しないという点であります。総理は人事院の勧告に応じ難い理由として大体二つの理由を述べております。一つは、給與の引上げは物価と賃金の悪循環を惹き起す結果になるという点であります。他の一つ予算上の余裕がないという点であります。第一の点につきましては、人事院の勧告書に、数字を基礎にして、正確に給與の引上げがインフレーシヨンに関係ないことを示しております。私は総理が法律上の権能として人事院の出しておる勧告書をお読みになつたかどうかを疑うものであります。若し総理の言うように悪循環を惹き起すというならば、人事院の勧告書は間違つておるわけであります。如何なる点について悪循環を惹き起すか。又勧告書のインフレに関係ないと主張しておるどこが間違つておるのか。はつきりと御答弁願いたいと思います。第二の予算上の余裕のないという点は、これは政府予算化する意思がないからであります、ベースを改訂する意思がないことを前提として予算を組んでおるからであります。私は総理がみずから作つた法律に基く人事院の勧告による給與の引上げに対しまして、如何なる考えを持つてこれを行わないとおつしやつておるのか、その所信をはつきりとお伺いしたいのであります。  最後に、終戰後初めて民主的労働組合の自党によつて労働運動が正道に乘らんとしておるときに、政府の横暴と無自党によつて仲裁委員会の裁定は踏みにじられ、人事院の勧告は無視されんとしておる現在、公共企業体従事員は何によつて自己の生存権を確保するものでありましようか。政府が如何に強力な彈圧政策をとろうとも、輿論が如何に組合の合法運動を要望しようとも、政府がかかる方針で進む限りにおいては、食うためには、生きるためには、合法鬪争の枠を突き破つて、非合法鬪争に突き進むであろうことは火を見るよりも明らかであります。かかる労働運動が危險なる方向に向わんとしておるときに、責任ある政府は如何なる政策を以てこれに善処せんとするものであるか、総理の確乎たる答弁を要求いたしまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  31. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。自衛権戰争放棄と共に国家としては放棄したものである、こういう御説でありますが、これは私の承服せざるところであります。苟くも国家がある以上は、独立を回復した以上は、自衛権はこれに伴つて存するものである、又武力なき自衛権、これは想像ができん、なぜこんなことを突然申したか、安全保障或いは自衛権、恰かも武力がなければ安全保障なく、自衛権がないかのごとき議論をなす人がありますが、併し武力なしと雖も自衛権はあるのだ。武力なき自衛権を私は想像し得るのであります。然らばその内容は何か、どういう形か、これは始終申すことでありますが、自衛権発動の前提としては、自衛権を行使しなければならない状態の発生を前提といたすのであります。従つてその状態によつて自衛権の形も内容も定まるものである、これはしばしば申したところであります。又軍事基地の問題についてお話がありましたが、これは現に交渉を受けておりませんからお答えいたしません。その他の問題は主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇拍手
  32. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 番一番の、国鉄裁定の中に残額に対する措置はどうかという御質問でありまして、この点について官房長官の解釈というものを御引例になりましたけれども、私の承知しておりまするところでは、官房長官は只今指摘されましたような解釈は訂正されまして、訂正と申しまするか修正されまして、政府の全体の考え方と今日では完全に一致しておると考えております。その政府の考え方は、国鉄の裁定に限らず、公共企業体の裁定は、資金上、予算上不可能なる部分については国会の承認を得て初めて効力を生ずる、過去の日附に遡つて効力を生ずる、従つてそれが得られない場合には効力を生じない、従つて債権債務も発生しないし残らない、これが政府の終始とつて来た解釈でありまして、国会における国鉄裁定の審議の推移は、衆議院においては承認せずということになり、そのまま衆議院とやや異なつたところの解釈で以て、結局は両院協議会によるかの方法でなければ承認ということは得られないという事態に立ち至りましたので、政府といたしましては、承認を得られないものといたしまして、そういう事態といたしまして、効力は発生せず、従つて債権債務は残らないという解釈をとつておる次第であります。  第二に專売の裁定であります。專売公社の総裁にもそれぞれの立場から、観点から、いろいろなる意見はあると思います。政府といたしましては、当該の大蔵大臣の、当時の段階におけるあれを国会に提案する際における財政上、資金上のそれらの関係からして、流用その他も不可能であり、いわゆる不可能の範疇に属するという判定を信頼いたしまするし、その考え方に従いまして、その段階においては不可能の部分に属するという見解の下に国会審議を仰いだわけでありまして、勿論国会はこれに対しまして、公労法の建前から行きましても、国会審議権から行きましても、政府に対して詳細なる説明を求めて、国会自体の立場に立つて、そうして承認不承認を決定して頂きたいと存じております。  その他、民自党の労働政策如何というふうな問題につきましては、すでに第五国会以来、委員会、本会議を通じまして、しばしば申上げて来たところでありまするが、御指摘になりましたような徒らなる彈圧或いは強圧、賃金の徒らなる釘付けというふうなことを、真向から振りかざしておるのではないことはしばしば申上げて来たところであります。公務員の給與如何という問題につきましては、それはそうであるけれども、この現在の安定政策の遂行過程の現段階におきましては、公務員の給與を今直ちに上げるということはなすべきでないということは、大蔵大臣その他からしばしば申上げた通りであります。  今後民主的な労働運動の方向ということに対してどう考えておるか。これも申すまでもないのでありまして、私共は昨年の春の組合法その他の改正当時からしばしば申しておりまする通り、破壞的な、純政治的な意図きりないような労働運動に対しては反対であるけれども、建設的な、民主的な労働運動に対しては、勿論その質量共に強力な発展を希つておりますということに毛頭間違いはないのでありまして、賃金政策自体が、或いは裁定自体がそれに直ちに従わなければ、直ちに反労働運動的であるという結論は下せないと思います。いろいろな角度からして可能なる場合もあり可能でない場合もあるからこそ、それらを想定いたしまして、公労法第三十五條と共に十六條が存在しておるのでありまして、この法の精神に従つて、私達は法の命ずる通りに、又国会審議権を重んじて民主的に推進して参りたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  33. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。昨日專売公社の総裁が或る席上で、專売公社には財源があるということを言われたとかいうお話がございまするが、專売公社の総裁が予算上認められている財源があれば、專売公社の総裁がその権限においてお出しになればいいのであります。私の所へ参りましたのは、予算上認められていないお金を出そうとして相談に参りましたから、私は予算上、資金上不可能なりとして断わつたのであります。ある、ないは私の権限であるのでありますから、專売公社の総裁がどういうことを言われたかも分りませんが、私といたしましては、財政法その他いろいろな角度から申しまして、十六條の規定によりまする予算上、資金上不可能なりとして、裁定案を国会審議に付した次第であるのであります。  第二に、人事院は、公務員の給與を上げても物価と賃金の悪循環はなし、こういうことを人事院が言つておる、それを政府が悪循環ありという理由如何という問題でありますが、これは先般もたびたび申しておりまして、人事院の考え方によりますと、国民の総消費量に対しまして給與を上げた金額はこれこれだというので、公務員だけ、即ち中央の公務員だけのことを言つておられまするが、これは公務員を上げますと地方の公務員も上げて来なければなりません。或いは公共企業体の分も上げて来るようになります。そういたしますと年に六百億円の資金が要るのであります。而もこの資金を出しますためには、減税を止めるとか、或いは鉄道通信の料金を上げるとか、いろいろなことをやらなければならぬ。こういうことをいたしますと、過去の歴史が示すように悪循環を来たすということが我々の考え方であるのであります。而も尚、公務員の給與というのは、電気関係の労務員、或いは石炭関係の労務員へも影響することがあるのでありまして、こういう点を考えますと、私は悪循環の原因をなすと考えておる次第であるのであります。  尚この機会に私が欠席いたしました間におきまする御質問に対してお答えをさして頂きたいと思います。  先ず深川議員の御質問について、今日の租税は経済民主化に反して大資本の蓄積への奉仕が強く、下に重いと思うが改革できるか、こういう御質問であつたと承わつておりまするが、今回の税制改正は、日本の再建に最も適した税法を樹立すべく、我々の考えは勿論のこと、世界的に有名人たるシヤウプ博士の来朝を得まして、ここに立派な税制を布き、大資本家のみならず一般国民大衆の租税の負担公平、適正化を図つたのであるのであります。併しこの案では私は満足はいたしておりません。将来できるだけ財政の規模を縮小いたしまして、国民全般に租税の軽減ができるように努めて行きたいと考えておるのであります。  御質問の第二は、国民に重税を課している今日、千二百八十六億円の債務償還は時期尚早である、減税を図つては如何、この問題もたびたび申上げておるのでありまするが、経済再建のために資本の蓄積が必要であります。而も又一方ではアメリカから千数百億円の援助を受けております場合におきまして、減税をすると同時にやはりこの際債務償還をして置くことが経済再建のためになると思つてつておるのであります。債務償還ばかりをやつておるのではありません。減税もやつておりますし、或いは経済復興に必要な資金も出しておるのであります。いろいろな方法で再建を図つておるのであります。債務償還した場合には、金融に役立ち、大資本家のためであるというお話でございまするが、債務償還した金は金融機関を通じまして日本産業の復興に役立つ資金となつて出て行くのであります。産業が復興すればそれは一般国民全部の役に立つと私は考えておる次第でございます。それから減税の声は国民に誤解をさせる、税負担の実情を示せ、こういうお話でございまするが、これは財政演説で申上げましたように、本年度におきましては、前年に比べまして実質的に九百億円、補正予算を組みました関係上七百億円となつておりまするが、七百億円の減税になるのであります。併し一方地方税におきまして大体四百億円程度の増税が行われますから、差引五百億円の実質的減税になると考えております。而して地方の四百億円の増税も、今まで行われておりました寄附金の代りに増税するという考え方によつておるのでありまして、国民の負担は可なり減つて来ると思うのであります。最も減ります階級は農家でございまして、農家につきましては、別の機会に申上げましたように、平均所得十万円といたしまして、扶養家族四人の場合におきましては半分程度になると思うのであります。中小商工業者におきましても附加価値税の問題がございますが、前年度に比べまして相当減ると思います。勤労階級におきましては、独身者は余り減りませんが、家族の多い方につきましては相当減つて来ることの別の機会に又詳しく御説明いたしたいと思います。  次に見返資金の用途、融資時期等を計画して予算と共に国会に示すべきであると思う、見返資金も国民から吸上げたものであるから年度内に国民に還元せよ、こういうお話でございますが、見返資金は御承知の通りに、アメリカの援助資金によりまして輸入した物資を民間に拂下げて、そうして拂下げた代金を貿易会計から見返資金特別会計に繰入れるのであります。大体昨年の実績は月に百七八十億円程度に相成つております。この一—三月におきましては前二三十億の予定であります。只今入つております金額は千百三十億円ぐらいでございますが、これもすでに七百数十億円を使いまして、その残りの分は証券等を買受けまして、遊ばしてはおりません。これは併しいつ如何なる時期に出すかということをはつきり決めることはなかなか困難でございます。貿易状況によつても繰入金額が違います。又貸出先も多岐に亙つております。ただ根本方針といたしましては、できるだけ早い機会にできるだけ沢山の金額を使いたいと考えておるのであります。而してこの金は国民から吸上げたものであるから年度内に国民に返せということは、これはちよつと誤解があるかと思うのであります。即ちアメリカの援助資金を以て持つて来ました小麦とか或いは生産に必要な資材を民間に売下げ、そうして政府が取上げておるのであります。普通ならばこの金はアメリカに返すとか、或いはアメリカから借金した金と考えるべきであるから、国民の金だとお考えになることは私は間違いだと考えております。これは説明をもつと詳しくしなければなりませんが、他の機会において御説明いたしたいと思います。  それから金融機関の公共性から、その運営を自由裁量に任せず、金融機関の監督を嚴にすべきである、この真意は分りませんが、金融機関の監督につきましては十分力を入れておるのであります。併しお金の使い方につきまして、戰争中のように、政府がここへ金を貸せ、ああいうふうに金を使えというような指令をやるということはよろしくないと考えます。やはりコンマーシヤル・ベーシスによつて、金融機関の公共的性質に鑑みて適当に使うのが経済の発展の終局的目的に合致すると考えておるのであります。  次に玉置議員の御質問に対しましてお答え申上げますと、庶民住宅建設資金として三百億円の見返資金を出すことについて所見如何。只今のところ見返資金より庶民住宅に三百億円を出す計画はいたしておりません。一般会計から五十億円、そうして見返資金から百億円を出しまして、百五十億で住宅金融公庫を作つて、そうしてこれによつて庶民住宅の建設に充てようとしておるのであります。今の住宅不足の状況から考えまして、できるだけ沢山の金を出したいのはやまやまでございますが、いろいろな点から考慮いたしまして、本年度はこの程度で我慢して頂きたいと考えておるのであります。これに他の費用即ち公共事業費から出します三十六億円を加えますと、百八十六億になるのであります。今年度はたつた三十億円しか出していないことから比べますと格段の相違があるのであります。  次に年度末の金融対策として三月末までに予定通りに見返資金が放出されるか、その予定通りと申しますのは、大体私は五百億円前後を予定いたしておるのであります。五百億円前後のうち二百三十五億円は復金債の償還に充てることに決まつております。これも絶対的に出て参ります。今度直接投資の方は、大体今日もすでに十四億円ほど日鉄或いは造船に出しましたが、後もう百七八十億円出ることを期待いたしております。そうしますと四百億円、そうして又別に国債の償還として百億円程度を見返資金から出したいということを関係方面と折衝いたしておるのであります。この国債償還の百億円前後が出まするというと、大体五百億円のお金が一—三月のうちに出て行くことになると考えております。  御質問の第三は、千二百八十六億円の債務償還は過大ではないかというお話でございますが、これは前にお答えいたした通りであります。  その次に、大蔵大臣は、財源、民間との均衡、物価との悪循環等の故に給與ベースに反対し減税を強調しているが、むしろ今回の減税は微温的である、基礎控除を五、六万に引上げよ、そうして債務償還を止めて減税を断行せよ、こういうことでありますが、とにかく債務償還を止めて、思い切つて減税をしろ、こういうことで御質問があると思うのでありますが、これはなかなか困難なことでございます。今アメリカの援助がありますから、我々は余り飢死することなしに行つておるのであります。アメリカの援助を減税の財源として使つてしまつたならば、援助がなくなつたときに又増税いたします、そういうことは財政政策としてはよろしくないのであります。従いまして私はアメリカの援助のある間にできるだけ債務償還をし、又復興にも使い、余つた金を減税にして、そうして援助がなくなつた場合におきましても国民が非常な苦しみに陷らないような準備のために債務償還をし、復興をし、減税をする、こういうふうなやり方で行つておるのであります。御了承願いたいと思います。(拍手
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 川上嘉君。    〔川上嘉君登壇拍手
  35. 川上嘉

    ○川上嘉君 無所属懇談会を代表いたしまして、吉田総理並びに関係国務大臣に御質問を行います。施政方針の全般に亙つて、飽くまでも全勤労大衆、全国民立場に立つて、徹底的にこれに検討を加え、政府の責任を追及すべきでありますが、これは他の同僚議員諸君によつてすでに活溌に論議されましたので、私は例によつて税金問題一本槍で質問を行うことにいたします。  吉田総理は、過日行われた施政方針演説の中で、税制改革は国民多年の要望であり、又政治の源であると述べ、又第五通常国会においても、重税に国民は未だ曾てない苦痛を感じつつある、誠に憂慮に堪えない事態である云云と述べておられます。誠にその通りでありまして、国民の毎日の新聞の報道やラジオの放送で、遺憾ながら徴税施風とか税金地獄とかの表題で悲劇の実例をいやという程知らされて来ておるのであります。税金を軽減するのかしないのか。税金の苛酷さに圧殺されようとしている国民を救うのか救わないのか。税金問題の解決こそは正に政治の根幹であると堅く信じます。国民の担税能力の限度を超えている過重な税金をどう解決するのか。税金関係の法律や規定の不備欠陷をどう是正するのか。徴税機構や税金の取り方をどうして民主化するのか。以上の諸点こそは税制改革に対する全国民の切実な要望である。政府の税制改革論は果してこれらの国民の要望に応えることができるかどうか。この程度の改革案に吉田総理は満足しておられるかどうか。総理の率直な見解をお伺いいたします。政府はシヤウプ勧告に基き云々と常に言明しておられるが、勧告案の中で、大口所得者、資本家の都合のいい面は嚴格に実行されている。都合の悪い面は修正削除されている。勧告は本質上、技師の研究報告のようなもので、詳細の点が採用されなければ、一般的な勧告だけでは余り効果がないことを特に注意しておる。尚、シヤウプ使節団が特に細かく指摘している脱税を擁護するような政府の諸措置、例えば無記名定期預金銀行調査の問題等に対しては、依然として何らの対策が構じられていない。常にゼスチユアたつぷりに減税を叫び、負担の公平を一枚看板に掲げながら、中小企業者、農民、俸給生活者に対する減税は全く名目だけであつて、法人税の軽減、資産再評価、起過所得の廃止等によつて国民大衆の負担と犠牲を強要し、最も優先的に資本の蓄積を図つているのが、政府予算案であり、税制改革案である。これらの諸点について池田大蔵大臣の率直詳細な御答弁をお願いいたします。  次に、シヤウプ使節団は、日本の税制は諸種の不完全な運用と規定の下に苦しんでいる、その欠陷の一つ一つは、それ自体では大したこともないが、その欠陷を積み上げると不満と危機をさえ釀成する要因ともなる、こういう判定を下しておるが、全く同感であります。所得税は一方に脱税、他方に独断的な更正決定の危機にさらされている。加うるに高い税率と高度の脱税は、相待つて悪循環をなしておる。この悪循環を断ち切るために、税率の引下げ、控除の引上げを行わんとする政府の狙いは正しい。併し狙いが幾ら正しくとも、出来た政府の税制改革案は極めて不十分であり、微力であり、無力であります。税率は五十万円を超えるものは、百万、二百万、五百万以上でも全部同率になつておる。これは不公平も甚だしい。富裕税の創設云々の理由を掲げておるが、余りも恩典が高額所得者に厚く、低額所得者に薄い。大衆課税的な性格を改善するどころか、却つて逆進課税的な作用が拡大されておる。不公平な性格を改善するどころか、却つて不公平の度合が大きくなつておる。尚、基礎控除は戰前の免税所得千二百円を今日の価値に換算すれば二十一万六千円となる。又各国の免税点を邦貨に換算すれば、アメリカが八十六万円、イギリスが四十三万円、西ドイツでさえも二十二万円であつて、改正案の二万五千円は苛酷な程低額である。政府は常に減税を叫んでおる。負担の公平を叫んでおる。これは單なるゼスチユアであり、人気取りであり、国民を欺瞞するものである。以上の諸点について大蔵大臣の詳細な責任ある答弁を願います。  次に、青色申告制度は、その実施が時期尚早で、税法上、納税者、税務官庁、いずれの立場から見ても実情に即していない。この理由は極めて明白であります。理由の第一点は、記帳方法が余りにも複雑難解で、納税者は到底これを消化し切れない。第二点は、税務官庁もこれを消化し切れない。納税者の理解が行くように、具体的に記載方法、記載例、その範囲等を明確に指示して、懇切に指導できる能力余裕を持つていない。昨年の十二月には、休日なく、連日深更まで夜業を続けておる。山積せる事務整理、過重な勤務に酷使されているのが僞わりのない職場の現状であります。第三点は、職場を混乱に陷れる危驗が十二分にある。政府は今年度において納税者の三割を目標として実地調査をなし遂げることに努力したが、この結果は東京、大阪のごとき大都市では一割程度、地方の成績の良好な所で一割五分程度に過ぎない。このことは現在の税務官庁の実地調査をなし得る能力の限界を立証しておるのである。従つて納税者の二割程度以上の者が青色申告を提出したら、もはや現在の税務官庁ではこれを年度内に消化処理することは不可能である。この結果、所得税においてさえも過年度の未決定分が蓄積することになる。尚、現在でさえも過年度未決定分が二割程度も残つておる法人税は、一層の過重事務が予想できる。このために納税者と税務官庁との対立と軋轢は激しさを加えて、職場を全く混乱に陷れる危險がある。行政管理官政務次官一松君が、今月十二日、大分県の日田市、加藤正成方において、日田税務署の事務官三人との会談において、シヤウプ氏の青色申告なくというものは厄介なもので、徒らに仕事を紛糾させるだけであると、青色申告を率直に攻撃しておる。この一松君の会談内容については沢山記録があるので、委員会質疑を行うことにいたします。青色申告の実施の実情、その見通し、更に今後の対策等について大蔵大臣答弁を願います。  次に、シヤウプ勧告は、若し割当目標額課税なくしてその機能を発揮できなければ、所得税は撤廃した方がいいときめつけ、更に目標額を作るというような技術が他の国で採用されておるのを聞いたことがないと皮肉つております。大蔵大臣が再々言明したところによると、本年度以降は決して目標額、責任額なるものはない筈であるが、各目は別として、依然として実質的には目標、割当なるものの圧力に苦しめられておる。吉田総理も、去年八月十五日附読売新聞の報道によると、「日本の進む道」という題で、馬場氏との対談で、税金の割当を率直に非難攻撃しておる。尚、兵庫県の養父郡大蔵村の住人から、具体的な証拠を挙げて、收入の実情が無視され、申告額の数倍に及ぶ割当課税が強行されておる、薬商人が税金のために変死した、是非実情を調査して貰いたいとの申出が参つております。依然として予定申告、更正決定をめぐつて納税者と税務署との不安な対立を続け、殊に年度末を控えて、確定申告、確定決定をめぐつて、物凄く危險な情勢が発生しつつあるのであります。この実情をどう見るか。この程度の税制改革案で、この不合理を是正できる自信を持つておるのか。尚、更に積極的な対策の用意があるのか。大蔵大臣答弁を願います。  次に、運用面を合理化するためには、税務職員の大幅増員、素質の向上、待遇の改善、諸手当、福利厚生の改善等、徴税費を大幅に増額することが急務であります。シヤウプ勧告は、十分な数の税務職員を拒むのは一文惜しみの百失いであると、定員法を根本から覆しておる。尚、徴税費の増額は不十分な歳出予算によつて妨害さるべきものでない云々ときめつけておる。然るに政府は依然として画期的な対策を講じようとしない。二十五年度予算において僅かに新規職員一千五百人の増加を見込み、徴税費の総額は二十四年度に対して九億八千万円の減である。このことはシヤウプ勧告に反するものである。以上述べた運用面の諸対策についての見解並びに今後の対策等について大蔵大臣答弁を願います。  尚、待遇改善については、政府は給與ペースの改訂は行わないと言明しております。この点は参衆両院において、すでに活溌に論議し盡され、只今も中村議員によつて詳細十分に検討されたのでありまするが、重ねて質問する。給與ペースを改訂しないことは、政府みずから人事院の勧告を無視し、法を無視することで、正に民主主義の推進を拒むものである。予算案は物価が上昇するとの基礎に立つて編成されておる。給與ペースは物価は上昇しないとの基礎に立つておる。全く不合理極まるものである。名目賃金は上らないが、減税、各種諸手当の適正なる支給、社会施設の充実整備等によつて実質賃金は上ると宣伝しておるが、別に数字的な根拠、具体策を明示していない。これは全くこじ付けである。給與ペース改訂については、大蔵大臣労働大臣、人事院総裁のそれぞれ率直な所信をお伺いいたします。  尚、地方税制の改革、四百億の増額によつて、府県市町村の税務事務は一層過重を予想されるのであるが、果して現在の陣容でこれを乘り切る能力があるのか。府県市町村の税務職員の身分、待遇の実情、尚今後の対策等について本対国務大臣答弁を願います。税制問題についての質問は以上を以て打切ることにいたします。  次に、財務部管財職員は、あらゆる危險、不安、生活苦の中で日夜賠償物資管理業務の従事しておる。然るにその職務の重大性にも拘わらず、身分の保障が全く講じられていない。而も全国一万の管財職員は、不安焦燥の中にありながらも、一切の私的生活を犠牲にして日夜職責の遂行に奮闘を続けております。政府は管財職員の身分保障、失職による就職斡旋、配置転換及び行政部費切換、尚、退職金制度等に緊急に具体策を講ずべきであるが、その用意があるか。大蔵大臣答弁を願います。  最後に講和問題に関連して、最も切実なる具体的な事例、鹿兒島県奄美大島の日本本土帰属及び日本本土との交通復旧について質問いたします。鹿兒島県奄美大島は、ポツダム宣言受諾に伴い、終戰直後占領軍の直接統治下に入り、昭和二十一年二月以降、日本本土との政治的、経済的その他あらゆる関係は遮断されておる。併しその歴史的沿革、行政上の沿革、経済的依存関係、民族的感情、一切の点から見て、早急に日本政府に帰属すべきであり、尚、帰属問題は幾分時期的にズレがあるとしても、交通は明日にでも全面的に復旧すべきである。従来日本本土に勉学を続けていた学生生徒は学資送金の途を断たれ、学業半ばにしてこれを放棄した者、或いは放浪の群に身を投ずる者等続出しておる。尚、日本本土への進学の希望者の望みは全く失われておる。日本本土に上陸したとの理由で、密航、密貿易の罪名の下に牢獄に繋がれておる者が相当数に上つておる。同じ日本人でありながら、而も小さな発動機船でさえも往復できる範囲内にいながら、何が故にこの悲惨な苦しみをしなければならないのか。この苛酷で悲惨な現実は一日も見逃して置くべきではない。帰属問題の時期的見通し、交通復旧についての関係方面との折衝の経過、今後の見通し、その対策等について吉田総理答弁を願います。  以上を以て質問を終ることにいたします。    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  36. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 川上君にお答えいたします。税制の問題は大蔵大臣その他から答弁がある筈であります。  最後にお尋ねのありました鹿兒島県の奄美大島の問題でありますが、これはお話通り昭和二十一年の総司令部の覚書によりまして、日本政府からその行政及び政治上の管轄を停止するという覚書が参つた結果、お話のような現状でありますが、併し最終の決定はポツダム宣言によつて連合国が決定をする筈であります。その決定の場合には、日本と従来の歴史的、人種的、いろいろな関係については必ず考慮せられるべきものと私は確信いたします。尚、交通の問題でありますが、これは第一次吉田内閣のときにも、この問題は我々の承知するところになつて、爾来往来は自由になつていると私は承知いたしておりますが、併し現状については取調べた上で以てお答えをいたします。  板野勝次君の質問に対して答弁漏れがありましたから、追加いたします。  板野君から、多数講和單独講和は実質的に同じではないか、又ポツダム宣言の実施による四大国方式の講和を結ぶことが最も早い講和への途であるという御質問がありましたが、これは講和問題は現在まだ日本政府の承知いたしておるところでありませんから、お答えは差控えます。  又我が国はヤルタ協定に拘束されるのではないかということでございますが、ヤルタ協定には日本は参加いたしておりませんから、直接にはこれに拘束されませんが、併しながら日本は無條件降伏した以上、降伏條約の決定には従わなければならないのであります。  軍事基地の問題については、現在問題になつているような交渉を受けておりませんから、これは答弁を差控えます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  37. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 川上議員の御質問に対してお答え申上げます。  今回の減税で満足しておるかというお話でございまするが、私は満足してはおりません。できるだけ政府の歳入歳出を縮めまして減税に極力努力いたしたいと考えておるのであります。今の状態では、今回御審議を願いまする税制改正案で満足しておるのであります。  次に、シヤウプ勧告によつてつて行くというけれども、法人課税その他大資本については非常に軽く、シヤウプ勧告以上に軽くし、一般大衆には酷いことをしておるじやないか、こういうお話でございまするが、これは御見当違いでございます。法人その他資本再評価につきましては大体シヤウプ勧告案通りに行つておるのでありまするが、一般大衆につきましてはシヤウプ勧告案以上の減税をいたしておることは、川上君も專門家でありまするから御承知のことだと思うのであります。  次に、アメリカ、イギリスの負担を比較されたり、或いは為替レートとか、物価の問題で、今の税金が高いというふうなことをおつしやつておるのでありまするが、これは全体の中の一部の見方であるのであります。即ち昭和十二三年項は第三種所得税の免税点は千二百円、これを物価の上昇問題から二十一万円になるから、二十一万円を基礎控除にしろ、こういうお話でありますが、あの頃の経済事情と今の経済事情とは全然違うのであります。而も又アメリカの負担とイギリスの負担を三百六十円で換算をして免税点をこういうふうにしろというのでありますけれども、とても当らない議論であります。そういうようなことをしたら大変なことになつてしまうのであります。今の日本経済状態、国際状態を御研究下されば十分お分りになることと思うのであります。  次に、青色申告書の実行につきましては、これは今度の税制改正で最も異色のあるものでありまするので、納税者におかれましても、又税務官吏におきましても、この青色申告書の円滑なる実行につきまして万全を盡して行きたいと考えておるのであります。税務職員の問題につきましては、できるだけ数を沢山にし、或いは待遇の改善に努めて行きたいということは、従来から申上げておる通りであるのであります。  次に管財関係の職員につきましても、御承知の通りに、やめて行く者につきましてはできるだけの就職の斡旋をいたしておるのであります。又身分にいたしましても所管大臣として十分考慮いたしておるのであります。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇拍手
  38. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 私に対する御質問は給與の問題であろうと存じます。この問題につきましては、給與は現段階においては引上げないという方針の下に進んでおるということは、しばしば総理からも大蔵大臣からも、特に大蔵大臣からいろいろな資料を挙げて御説明した通りの結論であります。この点について私共の考え方といたしましても、先ず現在比較になるところの労働省調査の毎月勤労統計、あれはすべての手当、賞與、それから実物給與をも金額に附加した、そういつたものも全部含んでおる。一方、公務員の給與はそういうものを含んでおらない。それから又労働省の毎月勤労統計は、百人以上の労務者を使つておる工場全部、それから三十人以上の労務者を使つておる工場の中の一〇%ぐらいを対象としたものであつて、それが工業界全体の賃金水準だというふうに考えて、両者を素朴に比較するということは、相当そこに事実と違つた点もあるということをも考慮に入れるべきであるとも考えております。勿論この問題につきましては、総理も施政演説の中で申しましたように、現在において上げないという方針をとつておることは確かであるけれども、政府も又公務員の給與の実情に対しては非常に関心を持つておることも、総理が施政演説の中で申しておる通りであります。こういう状態の中で以て給與を現在の水準で以て維持して、一方は実質賃金を維持充実して行くところの根本方式が可能かという質問が中心であつたように思います。この点については幾つかの計数を挙げていろいろ議論がおありでありましようけれども、私共の持つております数字を見てみますと、例えばC・P・Iは昨年の一月に一〇〇であつたものが五月には一〇七・六に止つた。それからずつと下り坂を持続して、季節的の変動はありますけれども、大体下り坂を持続して、只今分つておるところでは十月には九八・三に下つておる。それから実質賃金の中の主要部面を占める闇物価、現在ではマル公を外していますから自由物価という方が当るかも知れませんが、日銀が調べておるところの闇物価の指数は、一昨年の一月一〇〇であつたものが、五月は一〇八・三、それが十二月には八七・五に下つておるのであります。こういうような事実、それから主食の内容を充実して行くこと、それから纎維品その他を質の上でもよくし、量も殖やして、そうしてその方面から自由価格を通じて生活必需品を下げて行くというふうな一連の総合的政策を行う以上、現在政府のとつておる給與ベースを現在の名目的の形においても、一方において実質的に維持し、積極的に向上せしめ得るということは、かかつて政府全体の政策の中にあるのでありまして、少くとも安定の道を一年間歩んで来た現段階においては強力にこの方針を推進すべきだと考えております。    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  39. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 国税徴收関係の職員を増員すべきではないかという御趣旨の質問であつたようでありますが、この点につきましては、政府といたしまして昨年行政整理をやつたばかりでありまして、その趣旨もでき得る限り堅持いたしたい。行政の簡素化と人員の厖大化を抑制して行くという方針は依然として堅持しておるのであります。このシヤウプ勧告に基きまする複雑なる税制には、お話通り人員を増加しなければならない面もあるのでありますけれども、一面、取引高税等、廃止になりまする税のために事務の減少という面もあります。又、国税全般としては相当税額も減少して来る次第でありまして、そうした面も考慮しつつ今研究中であります。この問題につきましては複雑なる税制の改革は勿論でありますが、事務の簡素化、合理化、能率化、それと共に税務職員の質の向上というような面に更に力を入れて行くべきではないかと考えておるのでございます。  次に地方税務職員の身分、待遇について御質問があつたのでありますが、この地方税を受持つておりまする地方の職員について、一般の職員との間に今日のところでは何らの差別はないのでありますが、今回税制が非常に繁忙を極めて……徴税が繁忙を極めて参ります現状にも鑑みまして、政府では手当等において若干の優遇措置を考慮はいたしておるのであります。併しながら御承知のようにシヤウプ勧告によるこの地方税の増強の結果は非常な繁忙を極めることにもなつて參りますので、国の税務官吏に対する待遇等ともよく均衡をとりまするように、適当な措置を講じて行きたいと存じております。この地方徴税職員に対する直接待遇改善の責任は各地方にあるわけでありますが、自治庁を受持つ私といたしましても、でき得る限り今後の地方の徴税に支障を来たさないように、そうした方面にも改善が推進せられるように努力して行きたいと考えております。(拍手)    〔政府委員山下興家君登壇
  40. 山下興家

    政府委員(山下興家君) 先刻川上さんからのお話に対しまして、人事院といたしましては結與ベースの改訂が必要であると認めて、先だつてこれを勧告したのでありますから、これをできるだけ早い機会において実現したいということは痛切に考えておるのであります。ところが、この勧告に対しまして、いろいろな誤解があるように思われますから、この機会に一言その誤解を解きたいと思うのであります。  その一つといたしましては、給與ベースは四月から施行になつておるのである。一昨年の七月からではないというお話であります。併し六千三百七円を決めました基準は、一昨年の七月のデータをとつておるということは、はつきりしておりのであります。それで六千三百七円を苟くも変えるということであるならば、その基準に比べて現在どう変つておるかということを考えるべきであつて、それが予算の都合によつて引延ばして、そうして四月と言われるが、本当は昨年の十二月でありますが、そう延ばしたから、その間の物価の変化は考える必要なしと、こういう議論は、これは全然我々の理解することのできない問題であるのであります。(「明答」「その通り」と呼ぶ者あり)それから先刻伺つておりますと、賃金と物価が悪循環をする、で、人事院の調べたのでは物価に対して二%しか影響がないということがあるが、あれは中央国家公務員に対しての話であつて、その他の影響するところを考えておらないということでありますが、これ又非常な大きな間違いでありまして、その資料は人事委員会にすでに提出済でありますから、十分御覽下さると分るのでありますが、それは公共企業体も、地方公務員も、專売公社も、すべて社家公務員と同じように七千八百七十七円に変つたと仮定して、而もその増した給與が全部消費に使われたという最惡の場合を仮定いたしましても、物価に二%以上の影響はないということを、数字を挙げて、算式を明らかにして出しておるのでありますからして、それを御覽下さると、そういう物価と賃金の悪循環は決してないものであるということは、はつきりするだろうと思います。(「明答」と呼ぶ者あり)  それから先刻労働大臣が、民間給與と比較するけれども、あれは小さな中小工業と大きな工場とがある。それをごつちやにしては駄目であると言われますが、それは私共十分分つております。併し事実は中小工場よりも大規模の工場の方が賃金が高いのであります。段々高くなつておるのである。それから比べますと、この国家公務員は非常に大きな企業に相当するものであつて、百人以下の小さな工業と比較すべきものではないのであります。而もそういうものを引つくるめて比較いたしましても非常な相違があるのであります。尚この際申上げて置きたいのは、一昨年の七月即ち人事院が国家公務員の給與ベースの基とした、その算定の基礎である一昨年の七月からの、労働省で最近発表されました工事従業員に対する賃金は、約七割を増しておるのであります。その間人事院は……七月の基準そのままになつておるのであるからして、如何なる政策であつても、これは国家公務員或いは国家公務員はかりでなしに、すべての公務員の犠牲においてのみ実行せられるべきものではないということを私共は確信するのである(拍手
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣演説に対する質疑は終了したものと認めます。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通信いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十二分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第七日)