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岩間正男君 最初に端的に申上げますが、この
修正案に対しまして我々は
賛成であります。
原案に対しまして、それを除いた
原案の全体の部分に対しまして
反対いたします。で、その点を申上げたいと思う。
現在
公務員の生活がどうな
つているか。これは誰よりもよく
政府の諸公が知
つておる筈であります。又知らなければならない義務がある。ところが知らない振りをしていると言わざるを得ないのであります。だからこそ二千九百二十円、これを税引きにしますと約二千円、戰争前ならば十円札そこそこの年末
手当を出して、如何にも恩を着せたような顏をしているのであります。而もこの二千九百二十円はただの二千九百二十円ではない。年末
手当という性格の外にいろいろな性格を持
つた二千九百二十円なんであります。先ず第一に、本年四月以来積りに積
つて来た六千三百円の不足、この不足によ
つて起
つた赤字を補填するところの
意味を持
つておるのであります。次にペース
改訂は絶対にこれをしないと言
つて、いわばその
ベース改訂をしないという言いわけ賃みたいなのがこの二千九百二十円であります。更に第三には、
国鉄に対しては仲裁
委員の
裁定の一部
履行の義務を果すのだ、こういうような
意味を持
つておるということを言
つておるのであります。誠に複雑怪奇な性格を持
つた二千九百二十円であると言わざるを得ないのであります。
政府の智慧者は、これで、まるで一石二鳥だ、一石三鳥だ、そういう妙手を
考えたと、ほくそ笑んでおるのでありましようか、これではまるで味噌も糞も一緒だと言わざるを得ない。尤も第三の
理由につきまして、
裁定の
履行云々の件については、
委員会で野党側の猛反撃に会
つて、慌てて
政府は引つ込めたという醜態を演じておるのであります。ところで、この法案を審議するに当
つて最も重要なことは
ベース改訂の問題であります。
ベース改訂は当然これをやらなければならない。六千三百円を実際に
実施した本年の四月から、
公務員の生活はすでに二七%から三五%の赤字を示している。これは民間の賃金と比較してもはつきりその数字が出ておるのであります。だから
人事院はその
法律に
従つて勧告すべきであ
つて、勧告義務はすでに一年前に発生していたのである。ところがそれを今日まで怠
つていたのであります。
政府はそれをいいことにしまして、待遇改善については何らの
措置をしないのみか、却
つて賃金を切下げる、首切りをやる、
労働強化をやる、超勤その他の諸
給與はこれを大部分削減するということをや
つて来た。だから
公務員の生活は現在どのようだかと言いますと、まるで生身を剥ぐような誠に剥身生活であります。今日一世帶で平均二万円くらいの負債とな
つておるのであります。ところが
人事院が遅蒔きながら勧告をした今日でさえ、
政府は頑として
ベース改訂をやらないということを言
つております。それならその
根拠は何かと言いますと、例えば
増田官房長官の
説明によりますと、最近は均衡政策が漸くその功を奏してインフレもどうやら終熄した、生活は安定している、CPIは四月に一〇〇であ
つたものが今は九五ぐらいにな
つている、だから
ベース改訂はこれをやらないで、所得税、物品税、織物消費税などの軽減又は廃止によ
つて、そうして実質賃金を高めたいということを言
つておる。一にも実質賃金の向上、二にも実質賃金の向上ということを言
つているのであります。併し実質賃金を向上するということは結構である。我々も無論これには
賛成である。それの
賛成の主張を持
つている。問題は
政府の現在の政策で以てそれが果して実現できるかどうかというところにあるのであります。現に
大蔵当局は
国鉄や海上運賃の値上げ、米価の値上げ、補給金の廃止等によ
つて、物価は今後一一%方上昇するということを認め、これを減税によ
つて吸收できるということを言
つている。だが果してこれは可能かどうか。果して減税が行われるかどうか。
政府は今所得税の大幅軽減を大童にな
つてじやんじやん宣伝しておりますが、これは眉唾ものと言わなければならない。又仮に名目的な多少の軽減はあるとしましても、一方物凄い地方税の強化、このことを隠しておるのである。これをどうするか。これは大企業家の間からも猛烈な
反対が起
つている筈でありますから、この実態については二十五年度
予算が出されればはつきりするわけであります。減税は当然、国税、地方税を一本にして論ずべきである。それを單に地方税を切離して国税だけの問題で都合のより点だけ宣伝しておるというのが
政府の今のやり方であります。納める者は同一人でありますから、このような
政府の手心の加わ
つたやり方に対しては我々は絶対に承服することはできない。これを総合して
考えるというと、来年度は減税どころか遥かに増税なのである。この正体を
考えますときに、これで一一%の物価の値上りを吸收し、尚その上、月三千円の赤字をどのようにして解消するか。これは観物である。これは全くできない相談であると言わなければならない。こんなことをや
つていて勤労者にその犠牲を押付け、低賃金をますます強いることになれば、
労働の生産性はますます低下し、購買力は止まり、産業は不振となる。このような政策は我々の絶対に
反対するところであります。
ベース改訂は絶対にやらなければならない。
ベース改訂を伴わないこんな一時逃れの年末
手当、而も
労働者の血を吐くような切実な
要求を何ら充たすに足りないような法案に対しては、我々は
反対である。いよいよ年末
手当の
給與袋をあけて見るというと、却
つて淋しくなる、淋しさがひしひしと迫るというのがこの今年の年末
手当の実態であります。全く先に見通しのないような法案には我々は
賛成できない。
次に、この法案と連関して
考えられますものは、地方教員、地方
公務員の保証の問題であります。
政府はこのたびの年末
手当の
支給に当
つて、よく公平の法則ということを何回も耳にたこが寄る程言
つている。地方
公務員は
国家公務員並みにするということを言いましたが、併しその
予算的
措置には何ら触れていない。一片の通牒を出しているだけで、その財政的な
措置をしない。そうして、すべてを地方財政に押付けようとしている。ところで、補正
予算による新らしい配付税九十億のうちのすでに五十五億はこれは使途が決定されておるのでありますから、
従つて三十五億残る。三十五億残るというようなことでは絶対にこれは不可能なことであります。この不足分については、年度末には国庫で何とか保証するというようなことを、これは関係の
大臣が言
つておりますけれども、而もここで必要なのは、具体的に保証の仕方を法制化するなり、
予算化するなり、又ははつきり確約をすることでありますが、そのことがされていないから、末端におきましては
支給されないという実情が起るのであります。今度の年末
手当の
支給で、実は一番儲かるのは
政府であります。その所得税のはね返りを見ますというと、
国家公務員の分が少くとも十二億ある筈であるし、地方
公務員の分が八億、合計して二十億ある筈であります。これが国庫の新らしい
財源となるのであります。これに民間からのはね返り、例えば民間ではどういうことにな
つておるかというと、この年末
手当は石井鉄工では一万円、北辰電機五千円、海上火災一万八千円、京浜鉄道五千四百円、関東製鋼七千八百円、関東電気一万五百円、共同通信では九千二百五十円、
日本経済では一万一千五百円、大
日本印刷では八千百円、花王石鹸一万三千五百円、こういうような工合でありますから、額におきまして二倍から三倍、員数におきまして二倍以上でありますから、これにたとえ賃金の遅配、欠配分ということを考慮しましても、その所得税のはね返りは約百億以上になるということは言えるのであります。
政府はこのような財政を持ちながら、これをどのように使うのであるか。こういう点について何ら方向を明示していないのであります。勤労者から取
つたものは、これは勤労者に返すべきである。地方から取
つたものは地方に返すべきである。これは血の出るような、赤字補填というような性格を持
つたところの年末
手当でありますから、その性格から言うて我々は、はつきりそう
考えられるのでありますが、
政府はそう言
つていない。
政府は又
本法案が常勤のみを対象としておりますが、
非常勤でその
勤務実態が全く常勤と変らない者、先程木下
議員から
提案がありましたこういうような問題については何らや
つていない。この
修正をさえ、これは否決する方に努力しておるのであります。又吉田内閣の
労働政策の犠牲者とも見るべきところの日傭
労働者に対しましては、何ら具体的な年末
手当の
措置を講じていないのであります。こういうような現状でありますから、これが
実施されてもどういうことが起るかということは実に保し難いのであります。
以上、時間がありませんので
簡單に申述べたのでありますが、
労働階級をここに追込んでおる。
労働階級は苦しんでおるから、藁でも掴むような気持で、この年末
資金を待
つておることでありますから、まるで飢えた飼犬にパンでも投げるというような、このようなやり方には、
労働者の基本的人権を尊重する建前から言いましても、その権威を高める上から言いましても、我我
日本共産党は絶対
反対せざるを得ないのであります。(
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