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政府委員(岡咲恕一君) この第四節におきましては、授権資本
制度及び無額面株の
制度を採用いたしましたのに伴いまして、第一に資本の構成に関する規定を設けたのでございます。
第二といたしまして、現行法にありまする法定準備金を資本準備金、利益準備金との二種類に分かつことにいたしまして、資本準備金として積立を要する金額の種類を挙げております。第三に新株発行に必要なる費用の均等債却を認めることにいたしました。第四といたしまして株式による配当
制度を採用し、第五に準備金を資本に組み入れる
制度、第六に株式分割の
制度を採用いたしたのでございます。更に第七といたしまして二百八十
一條に掲げまするいわゆる計算書類の附属明細書の作成
事務を認めたのでございます。
只今申しましたのが第四節における重要なる
改正点でございます。
二百八十二條は監査役を廃止いたしまして、会計監査役を採用いたしましたことに伴いまする條文の
整理が主たるものでございまして、別段申上げることもございません。
二百八十四條も同様でございます。
二百八十四條の二は、
只今申しました資本の規定に関する規定でございまして、相当重要な規定かと
考えます。これも本日までしばしば御論議になりまして御
説明を申上げたかと思いまするが、会社の資本は原則といたしまして、「発行済額面株式ノ株金総額及発行済無額面株式ノ発行価格ノ総額トス。」これは現行法の
建前と大体一致するかと
考えます。
第二項におきまして無額面株を発行いたしまする際に、その発行価格の四分の一を超えない金額を資本に組み入れないで拂込剰余金としてリザァーブすることができる、留保することができるということにいたしたのでございます。設立の際に発行いたしまする無額面株式につきましては、特に設立の際における会社資本の充実を図る
趣旨におきまして、最低発行価額を定款に記載せしめることにいたしてありまするが、拂込剰余金は最低発行価額を超ゆる
部分であ
つて、且つ発行価額の四分の一を超えない金額というふうに二重の制限を設けたのでございます。
それから五百八十六條の二でございますが、これは現行法の二百八十六條と同
趣旨でございまして、新株発行に要しました費用は貸借対照表の財産の部に計上いたしまして三年内に均等債却が許されるということにいたしたのでございます。この規定によりまして株式発行による費用の負担を緩和せんとするものでございます。
次に二百八十八條でございまするが、この度の
改正案におきまして法定準備金を資本準備金と利益準備金との二種類に分かちまして、利益準備金につきましては現行法
通り資本の四分の一に達するまで、無決算期の利益の二十分の一以上を積立てなければないらないということにいたしたのでございます。現行法におきましては法定準備金の中には額面株式における超過額、いわゆるプレミアムも入るわけでございまして、会社が非常に業績が良くて株価が高いという場合には、相当多額のプレミアムが利益準備金として積立てられます
関係上、会社の毎決算期における利益積立の負担が比較的軽い場合もあるかと
考えますが、
改正法案におきしては、
只今も増しましたプレミアムは二百八十八條の二によりまして、資本準備金として別途に積立てることにいたしまして、その金額如何に拘わらず別に利益準備金として毎決算期の利益を別途積立てなければならないということにいたしたのであります。
二百八十八條の二は、
只今申しました資本準備金として積立てる費目を規定いたしたのでございまして、一号は
只今も申しました額面以上の価額を以て額面株式を発行した場合の額面超過額、いわゆるプレミアムは資本準備金として積立てなければならないということになるわけでございます。
二号は無額面株式の発行価額中拂込剰余金として資本に組入れない金額というものを留保いたしました際、これを資本準備金として積立てなければならないということにいたしております。第三号はいわゆる評価益でございまして、一営業年度における財産の評価益から評価損を控除しました残額は、いわゆる評価益として積み立てることを認めたのでございます。第四号はいわゆる減資差益金でございます。即ち資本の減少によりまして減少しました資本の額が株式の消却、又は拂戻に要しました金額及び欠損或いは填補に充てました金額を超えたその超過額は、資本準備金として積み立てなければならないということにいたしたわけでございます。
第五号はいわゆる合併差益金でございまして、合併によ
つて消滅した会社から承継した財産の額が、その会社から承継した債務の額又はその会社の株主に支拂いました、いわゆる交付金並びに合併後存続する会社の増加したる資本の額、又は合併によ
つて設立した会社の資本の額を超えました超過額、これを合併差益金と申しますが、これを資本準備金として積み立てることを要するということにいたしたわけでございます。この資本準備金と利益準備金を別途にいたしましたという
関係が際の資本の充実が図られることになると
考えます。
次に二百八十九條ですが、これは大体現行法の規定と同様でございまして、利益準備金及び資本準備金は資本の欠損の填補に充てる場合を除く外は使用することができないということにいたしたのでございます。尤も後に述べますように準備金から資本に組入れるということは許しておるのでございます。まず欠損填補の場合に使用されますものは利益準備金でありまして、利益準備金を使用いたしましても、尚欠損が填補できないという場合に資本準備金をも
つて不足額を填補するということにいたしております。これが二百八十九條の第二項でございます。二百九十條は現行法
通りでございまして別段申上げることはございません。
二百九十
一條はいわゆる建設利息の配当に関する規定でございまして、大体これも現行法の
建前を踏襲いたしたものでございますが、授権資本と無額面株を採用いたしましたことに伴いまして必要な
整理をいたしたものでございます。第一項に「
一定の株式」という言葉を用いておりますが、これは授権資本
制度の採用によりまして、現行法におきますように利息の配当を受ける株式の範囲が定ま
つておりませんので、予め
一定しておく必要があるからでございます。現行法には但書がございまするが、但書を割りましたのは無額面株の採用によりまして、利率の算定が不能によりまして、利率の算定が不能となりましたのでこの但書を割
つたわけであります。尤も但書に変えまして第三項を新設いたしております。この三項の規定の実質は現行法の第一項の但書と同様でございます。それから第二項につきまして変更につき
裁判所の認可を要することにいたしておりますが、これは現行法の二百九十二條と同
趣旨でございまして、定款の変更を
裁判所の認可事項といたしておるのと同様でございます。二百九十二條を削除いたしておりますが、これは資本増加の規定を排しましたのでこれは削除し、その
内容は二百九十
一條の方に移したのでございます。
次に二百九十三條の二について御
説明を申上げます。これは
改正法律案におきまして新しく採用いたしました株式による利益配当に関する規定でございます。第一項におきましてはこの株式による配当は株主総会の特別決議によらなければならないということを定めたものでございます。そうしてこの株式配当は必ず利益の配当に代るものでなければならない。言い換えれば配当をすべき利益の裏付がなければ株式配当は許さないということにいたしたのでございます。
第二項におきまして、然らばその株式による配当につきまして、いわゆる発行価額をいかようにするかという問題でありますが、額面株については必ず券面額によらなければならない、無額面株につきましては、券面額がありませんので、その価額は特別決議において定めるということにいたしたのでございます。重ねて申上げますると、発行すべき株式の券面額の株金総額、或いは無額面株の発行価額の総額に配当する利益がなければ、株式による配当は許されないのでございます。
第三項は株式による配当をいたしまする際に、配当すべき利益の額が券面額又は発行価額に満たないような端数を生ずる場合があり得るわけでございまするが、この場合の
取扱を簡便にいたすという
趣旨におきまして、この端数につきましては株式配当をいたしませんで、金銭配当をするということにいたしております。無額面株につきましては、一般の株式の発行におきましては、佛込剰余金という
制度を認めておりまするが、これは全然必要がないと
考えまして、無額面株を株式配当いたす際におきまして、佛込剰余金というものは認めないということにいたしたのでございます。株式の配当におきましては株式申込書も必要がございませんし、又佛込期日というものもございませんし、又現実の佛込も認めないわけでございまするから、
一体いかなる時期において配当をされる株式が株主に帰属するか、言い換えればいかなる時期において新株について旧株主は株主となるか、そういう時期が問題になりまするので、五項の規定を設けまして株主総会の終結のとき、言い換えれば株式配当を決議いたしましたる株主総会の終結のときに株主になるということにいたしたのでございます。この株主になりまするならば、二百二十六條の第二項の規定を準用いたしまして、旧株主は当然新株券の交付を請求することができるわけでございます。又二百九條の第三項によりまして、登録質権者は新株式について当然質権を及ぼすことができることに相成ることでございますので、二百九十三條の二の末項に取締役は株主総会の決議があ
つた際には、遅滞なく株主及びこの登録質権者に対して株式配当の必要事実を通知することを要し、又この無記名式の株券を発行しておりまする場合には、これを公告することを要するということにしたのでございます。
次に二百九十三條の三でございますが、これも新しく採用いたしました
制度でございまして、準備金の全部又は一部を資本に組入れる途を開いたのでございます。これによりましてこの会社のいわゆる
法律上の資本というものはいよいよ充実いたしまして会社の信用を増すことにもなりますし、会社の経理上会社を健全にいたすためにはこの措置が非常に有効に働くのではないかと
考えます。準備金の資本への組入れの場合におきまして、会社において適当と
考えました場合にはこの株主に対して新株を発行し得ることをいたしたのでございます。これは第二項の規定でございまして、この場合におきましては株主は取締役会の決議のときから新株について株主となるということにいたしたのでございます。株式の発行につきまして若し端数を生ずるというふうな場合には株式の発行ができないものと解釈いたしております。言い換えれば株式が各株主に行き渡
つていないと株式の発行は許されないと解釈いたしております。株主及び登録質権者に対して重大な影響がございまするので、株式配当の場合と同様にそれぞれ株主、登録質権者に通知し、或いは公告をいたすという規定を準用いたしておるのでございます。
次に二百九十三條の四でございます。これも新しく認めた
制度でございまして、株式の分割に関する規定でございます。会社は取締役会の決議によ
つて株式の分割ができることと規定いたしております。これも一般的な
説明の際にも申上げましたように、株価が異常に高いために、新株の発行にも支障を来たし、或いは株式の流通の上にも妨げられる、株式の市場性についても十分でないというふうな場合には、株式の価格を引下げるために行われるものでございます。株式の分割は株主を平等の原則によらなければならないことは当然でございますので、無額面株全部につきましては同一の比率によ
つて分割が行われなければなりませんし、分割によりまして株式の数が増加することは当然ですが、増加します株式の数が定款に定められておりまする授権資本の枠外にはみ出るというような場合には当然定款を変更いたしまして、先ず採権資本の枠を拡げなければならないことにいたしたのでございます。一般的な
説明のときにも申上げましたが、本條の規定いたしておりまする株式の分割は無額面株式に限るわけでございます。額面株式の場合には当然券面額の変更を伴いまするので、定款変更の手続を採らなければならない
関係上、取締役会の決議のみによりましては分割ができない次第でございます。
分割前の株式と分割後の株式とは同一性を有するのでありまするから、分割前の株式を目的とする質権は分割によ
つて株主が受くべき新株式の上に当然効力を有するわけでございまして、二百八條にその
趣旨の規定を設けております。一株を二株以上に分割するという場合には、新株券を発行すればそれで宜しいわけですが、二株を三株に分割するという場合には株式の併合を伴いますので、旧株券を会社に提出せしむる必要があるわけでございます。従いまして株券の提供を必要とするという場合には、資本減少の場合における株式併合に関する規定を準用する必要がありまするので、二百九十三條の四の第二項を設けたわけでございます。
次に二百九十三條の五でございます。これも一般的
説明の際に申上げた点でございまするが、会社の業務及び財産の状況を一般に公示する、株主に公示する
趣旨を以ちまして、附属明細書というものの作製業務を認めたのでございます。取締役は又決算期より四ヶ月内に第二百八十九條に掲げますいわゆる計算書類の附属明細書を作りまして、これを本店及び支店に備えておかなければならない、この附属明細書に会社の業務及び財産の状況を相当詳細に記載することを要する、ことにその期における会社資本及び準備金、これは法定準備金でございます。資本及び準備金の増減、それから取締役、会計監査役、株主と、会社との間の取引、それから会社がなす担保権の設定、会社が金融を業としない会社である場合におきましては、その会社のなす金銭の貸付、それから他の会社の株式の取得並びに固定財産の処分につきましては必ず明瞭にせしめなければならないということにいたしたのでございます。
只今申しました事項は会社の財産を営業年度における
関係において、いかように
なつたかということを示す上に重要でありまするのみならず、得て会社の財産に損害を生ずる虞れのある取引でありまするが故に、特にこれを明確にいたすことにいたしたのでございます。この附属明細書につきましては、株主は営業時間内いつでもこれを閲覧又は謄写することを求めることができまするし、又会社の定めておりまする費用を支拂
つて、その謄本又は抄本の交付を求めることができるということにいたしたわけでございます。
次に二百九十三條の六及び七は、しばしば問題になりましたいわゆる会社の会計書類の閲覧権に対する規定でございます。発行済株式の総数の十分の一以上に当る株式を有する株主は、会計の帳簿及び書類の閲覧又は謄写を請求することができることにいたしまして、この請求の手続は必ずこの書面を以てする。そうしてその書面にはその請求の
理由を明示しなければならないということにいたしております。この請求がございました場合には、会社は株主の請求が、権利の濫用であるとか、或いは株主一般の利益を害するという特段の事由がない限りは拒むことができないということにいたしたのでございます。そうしてその特段の事由を二百九十三條の七に明らかに規定いたしております。特段の事由として認めまするものは、株主が株主の権利の確保若しくは行使に関し
調査を為すためではなくして請求したとき、又は会社の業務の運営若しくは株主共同の利益を害するため請求したとき、言い換えれば、株主としての正当な権利の確保のためではなくて、他の目的のために閲覧を請求した、或いはその請求が会社の業務の運営、又は株主一般の利益を害するために行われたという場合には、会社はその請求を拒み得るわけでございます。第二といたしまして、請求いたしました株主が会社の競業
関係にあるものである場合、或いは競業
関係にある会社の社員である場合、或いは株主である場合、又は取締役である場合、又は会社と競業
関係にあるもののためにその会社の株式を有するものであるという場合には、会社は請求を拒み得るということにいたしおるわけでございます。第三は、株主が書類の閲覧又は謄写によ
つて知り得た事実を利益を得て他に通報するために請求したとき、又は請求の日の前二年内にその会社著しくは他の会社の書類の閲覧又は謄写によ
つて知り得た事実を利益を得て他に通報したことがあるものである場合、言い換えれば、会社の営業上の事実を利益を得て他に漏らすということをなしたるもの、又はそういう目的で請求した場合には、これは会社の株主共同の利益に勿論反しまするけれども、特にこの場合には、当然会社はその請求を拒み得るということにいたしたわけでございます。第四といたしまして、如上のような場合でなくても、株主が不適当なるときに閲覧又は謄写の請求をなした。例えば決算期が目前に迫りまして会社の経理
関係の従業員が非常に忙しく帳簿の
整理、或いは
調査をいたしておるというふうな際には、会社としては閲覧請求を拒むことができるということにいたしまして、会社の正当な運営が害されないというふうにいたしておるのでございます。
次に二百九十四條は授権資本を採用いたしました
関係上、資本の十分の一とありまするのを、各法人株式の十分の一に改めました点と、監査役を廃止いたしましたので、監査役に代えまして代表取締役といたしたという点を除きまして、現行法には何らの修正を加えておりません。