○国務大臣(
殖田俊吉君) 先ず
少年法、
少年院法の
改正をしばしばお願いしておりまして、これは私は
宮城委員と全く御
同感でありまして、実はこんなにたびたび
一体改正案を出すのはおかしいじやないか。何とか
考えがありそうなもんじやないかということを、実は
事務当局と
話合つてお
つたのであります。
ところが御
承知のように、この
法律ができますときに、我々の
考えだけでなくいろんな外部の
考えも入
つておりまして、急にこれを立法し、施行しましたために思わざる
事情が続々と出て来て、
従つて甚だ不手際でありますけれども、
法律の方を
改正して行かなければならないということもございまして、それから又例の
パール法ができまして
パール法ができましたために又それと調和を図らなければならんという
事情も出て参り、更に又これを十分な
準備が整いません、例えば物的人的にいろいろの
設備の拡張を必要とするのでありますが、その点は
財政に関するところ非常に多いのでありまして、なかなか今日の
財政緊迫の
時代におきましては、思うように参りかねるのであります。
従つて準長期間を十分に置きたいということを申してお
つたのでありますが、それが又他の
事情によりまして
準備甚だ不十分であるにも拘わらず、施行しなければならんということに立至りまして、
自然法律の
規定と実際運用とが適合しない。その間の
財政的措置を講じつつこれを、
法律の
規定を実現して行くというようなことになりましたために、しよつ中そこに齟齬がありまして
法律の方が行き過ぎまして、
設備の方が整わない、
設備が整いませんから先ず
法律のその分の適用を延ばさなければならんということもありましたりして、もう両方の
法律が今度で確か立法されまして以来、もう三遍目ぐらいなこれは
改正にな
つておると思うのです。こういうことでは又この後も
改正があるのではないか、
大変心配でもありますので十分検討いたしたのでありますが、もう大体今度の
改正を以て終りといたしまして、この両
法律は、その後は特別な
事情が発生しない限り
改正をしないで、済みそうであります。先ず今日のところこれで御
承知を願いたいと思うのです。
それから
只今の
お話のその問題は、これは最も
根本問題でありまして、
一体少年というものを特別の
対象といたしまして、そうしてその
犯罪の面、或いは道徳上の面からこれを
矯正、
改善して行くということにつきましては、
大人の問題より、より以上の問題があるのであります。それは十分
考えなければならんことでありまするが、まあ今日の
家庭裁判所、
少年法というもので、これはまあその
方面に向
つての
改善が一歩、二歩進んで参
つておるのであります。併しそれから又昨年来
政府におきましても、
少年対策を今頻りに
研究いたしております。併しいずれの場合におきましても、
根本は、この戦争中もそうであ
つたでしようが、
終戦後殊に敗戦の結果経済上、
社会上その他の面におきまして非常な変動がありましたために、
少年に対する
保護と申しますか、
少年に対する
扱い方が非常にむずかしくなり、又
犯罪、何かとそれに類する
不道徳が非常に殖えておるということは否むことのできない事実でありまして、私は段々
終戦後の動揺がなくなりまして、日本の
社会が復興して参る。或ひは恢復して参るに従いまして、段々かような悪い
傾向は減
つて来るものとは
考えます。これは
大人の
犯罪について
考えると凡そ同じような
傾向にな
つて参るものとこれは
考えておるのでありますけれども、併しながらいつに
なつたらさようになるか、又
一つの
時代の
風潮といたしまして、必ずしも今申したような
原因からのみじやなく、何か外の
原因でさような悪い、
風潮が爛漫して来るということもあるのでありまして、ただ成り行きに委してばかりおられません。余程
考えなければならんことと
考えます。現在におきましては
法務府で扱います
少年と、或いは
厚生省で扱います
少年、或いは
文部省もこの間に入
つて参るのでありまするが、これを単に
年齢によ
つて区別をしておる、その
年齢の
区別が
一体よいことであるやら悪いことであるやら、或いは
年齢を、もつと
少年の
年齢を、
犯罪少年の
年齢を上げる方がよいじやないかという
考えもあります。或いは又下げた方が手取り早いという
考えもあるのであります。それから又これらに対する取
扱い方、
設備、或いは教育の
方法、
改善の
方法等にいたしましてもいろいろと問題があるように存ずるのであります。これを極く特殊の極端なる例をと
つて見ますれば、それはいずれか一方にはつき分るのでありますけれども、仲間がボーダーラインにな
つておるところが多いのであります。これを成る程と
皆さんの納得いたすように
処置をすることが、甚だ困難のように思うのであります。
只今お話のごとく
兒童省というような特殊の
一つの
行政機関を作りまして、それが全部を扱う、これも一案であります。併しながらそれにいたしましてもやはり
年齢の
区別がございますし、或いは
不道徳の
程度、
傾向の又
区別も出て参るのであります。おのおのそれに応じた
設備なり、組織なりをや
つて行かなければならん。同じ問題はやはり残るのであります。
只今のところ
財政上の余裕がありませんから、特別な
機関を設けるということは甚だ困難でありましようが、要するに広い
見地から全体の問題を総合して
考えます。そうして
各省に分れておりましても、お互の
機関がそれぞれできるだけの
協力をする。そうして
連絡をよくして行く。そうして成るべく
お互いに
議会を開くなりその他相談をするなりいたしまして、協調の取れたでこぼこのないような政策を立つ行くということが、当面の
喫緊事ではないかと
考えておるのであります。私はよく、この頃は見かけませんけれども、省線などに乗りますというと、殊に夜分遅くなどは
戦災孤兒と思われるような
少年少女が沢山乗
つておりまして、そうして寝所もないようでありますし、又職業も決ま
つたものは勿論ないでありましよう。非常な汚れた着物を着ておりまして、髪はぼうぼうとしており、私はよく
おじさんお金を呉れなんと申しますから、ときどき恵んでやりましたけれども、決して人の恩情になじみません。可哀相に思
つてやりましても、案外反抗をいたしましたり、更につけ上
つて来たりする、度し難き悪性に落ちておる者が多数でありまして、私は後ではもう彼らに会いましても、実は同情しなく
なつたようなこともあ
つたのであります。併しこれではいけないのでありまして、もつと広い
見地から、もつと思いやりを持
つてやはり
処置をすべきものであるとは今でも
考えておるのであります。
只今内閣でずつと続けておりまする
少年の
対策の
委員会等で、もつともつところの問題を練りまして、そうして成案を得次第それを具体化して行くというより、
只今のところ実は手がないのであります。ただその
責任の地位におりまする私共が、常にそれを念頭に置き、そうして
研究を怠らない、そうしてなるべく案ができ次第それを実施して行くということの外に、今のところどうもこれという決め手もないように思うのであります。私共の能力が甚だ不十分でありまして、又平素の
研究も不十分なのではないかと密かに実は憂慮をいたしておるような次第であります。
只今お話のごとく
政府だけでなく、
皆さんも非常に御
心配にな
つて頂いておるのであります。この上ともに
一つ御
協力を賜わりまして、なるべく早いうちにできるだけの
手当をして参りたい、こう
考えます。それができませんときには、ますますどうもこの世の中は悪くな
つて行く。
少年はいずれ年々、年を取
つて参りますから、それが直ちに青年の
犯罪層に送り込まれて参る、いずれから見ましても非常なこれは大事なことであり、旦つ又
喫緊事でありまして、世間が思うようにそんなにただ特殊の
慈善家とか或いは
社会事業家の問題ばかりでないと思います。その点におきましては、
宮城委員と私共も全く御
同感であります。ただ今申上げるようなことで甚だ不徹底な状態であります。この上一層私共は
努力をいたしたいと
考えております。