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政府委員(古橋浦四郎君) 簡單に申上げます。
只今の提案理由で大方明らかにな
つておると存じますが、逐條につきまして補足いたしまして
説明をいたします。
この
法律の第一條から第三條までは
法律の
目的と
矯正保護作業の理念について
規定いたしておるのでございます。第一條のこの
法律の
目的は、
一つは
矯正保護作業を運営するに当
つて、受刑者は
個人として尊重し、その精神にふさわしい環境の下にこれに従事せしめるという、その根本基準を定めること、それから
一つは、
矯正保護作業にふさわしい作業をこの
法律によ
つて確保するという、この二つを
目的としておることをこの
法律の
目的として
規定いたしておるのでございます。
第二條は
矯正保護作業の定義でございまして、懲役に処せられた者に課する作業を
矯正保護作業というということにいたしております。尚この
法律におきまして受刑者とは懲役に処せられて、定役に服する者をいうということにいたしております。従いましてこの
法律からは一般の請願作業及び労役場留置につきましては除外いたされるわけでありまするが、精神においては異なるとこころはないと存じております。尚、少年に対する刑務作業、
矯正保護作業はこの
法律に含まれておるのでございます。
第三條で
矯正保護作業の理念を明らかにいたしておりまして、これは
矯正保護作業は行刑に関するいろいろの監獄法その他の
法令の定める制限の下におきまして、受刑者が持
つておりまする基本的人権を害しないようにし、且つ受刑者の矯正保護に役立つものでなければならんということに
規定いたしておるのでございます。そうして第二項におきまして、受刑者が
矯正保護作業によ
つて修得しなければならん勤労の風、尚職業技術その他の心構えを
規定いたした次第でございます。
次に、第四條から第五條、第六條は、これは矯正保護労働に関する基準を定めたものでございます。労働基準法に準じまして、労働に関する基準を定めたものであります。即ち第四條におきましては作業賞與金を
規定いたしております。「
矯正保護作業に従事する受刑者には、
予算の
範囲内において、監獄法(明治四十一年
法律第二十八号)第二十
七條第二項に
規定する作業賞與金を給するものとする。」といたしております。監獄法第二十
七條第二項におきましては、作業賞與金を受刑者に給與することができるという
規定にな
つておるのでございまするが、この本法におきましては原則として、建前として作業賞與金を給するものといたしまして、受刑者の勤労に対しましては作業賞與金を給することを原則といたした次第でございます。
第五條は、作業時間、休暇及び休日について
規定いたしたものでありまして、「
矯正保護作業における作業時間、休憩及び休日は、受刑者が健康を保ち、修養をなし、元気回復をなし得るように、合理的に定められなければならない。」とし、その詳細な
規定は府令に譲
つておるのでございます。
第六條は、安全及び衛生についてでございまして、これは労働基準法の安全規則に基きまして、府令におきましてこれを定めることに譲
つておるのでございます。
次に、第
七條以下第十一條までは矯正保護にふさわしい作業といたしまして、その官業主義の方針並びにその方針によ
つて実施いたしまする運営の手続きを
規定いたしておるのでございます。即ち第
七條と第
八條は、そのいわゆる官業主義、先程政務次官が
説明いたしました官業主義の方針がここに明らかにされておるわけでございます。
第
七條は、
矯正保護作業の確保といたしまして「国は、受刑者の就業に十分な量の作業を確保しなければならない。」第二項が、「地方公共団体は、
矯正保護作業の確保について、国に協力しなければならない。」とな
つております。この
法律の
趣旨は、受刑者の労務が
法律によ
つて定められたものでありまするから、国はこれに対して十分な作業を確保しなければならん。その努力目標を、刑罰を科した
目的に十分に副うようにしなければならんという点を示しておる
規定でございます。
次に、地方公共団体がその
矯正保護作業について国に協力しなければならんという点でございますが、これは地方公共団体は地方財政法その他の建前がございまして、国の
機関と同一にいたすことができません。併し諸般の理由によりまして、協力の義務はあるものといたしまして、作業の確保について国に協力することに
規定いたしておるわけでございます。
第
八條は、
矯正保護作業の運営でございまして、「
矯正保護作業によ
つて生産される品物及び受刑者の労務は、優先して国及び地方公共団体の
機関の需要に供することを原則とする。」、この
意味は、
矯正保護作業によ
つて生産されまする品物及び受刑者の労務は、先ず第一に公共の
公益に優先して使われることが望ましいというところから、先ず国及び地方公共団体の
機関の需要に供することを原則とするということにいたしたのでございます。つまり刑務所は、ここに仕事が三つありまして、国の仕事、或いは公共団体の仕事、或いは一私人の仕事というような場合に、どれを先にするかという場合に、国のものを先ずやらなければならん。それは
矯正保護作業として最もふさわしいものだという理由でございます。その理由につきましては、先程提案理由において詳細お述べになりましたような理由からでございます。次に二項は「
矯正保護作業を実施するに当
つては、労務に関する政府の政策を尊重しなければならない。」、この党につきましても、提案理由において詳細
説明されたのでございますが、ここに労務と申しまするのは單なる受刑者の労働のみを申すのではございませんので、この労務によ
つて生産せられる製品に関するものまで含んでおる
意味でございます。即ち
矯正保護作業を実施するに当りましては、政府としての施策、国の施策というものを十分に尊重しなければならん。つまり労働につきましては労働者、或いは作業につきましては通産省、その他政府といたしまして採用いたしまするいろいろな政策は、これを十分尊重しなければならんということにいたしておるのでございます。この点につきましては、労働省並びに通産省からの要請もございましたので、第二項としてここに挙げまして、更に詳細の
規定を府令に譲ることにな
つております。
次に、第九條から十一条は、この官業主義の方針の具体的な手続きを定めたものでございます。第九條は、注文案内書の作成及び
送付でございまして、「
法務総裁は、
矯正保護作業によ
つて生産される品物及び受刑者の労務に関する注文案内書を作成し、これを、国又は地方公共団体の支出の
原因となる契約を担当する職員であ
つて、
矯正保護作業の確保について協力を求めるのに適当と認められるものに
送付するものとする。」であります。
つまり刑務所、
法務府、矯正保護管区におきまして、注文案内書を先ず作成しまして、そうして国の
機関或いは地方公共団体の中の特に協力を求めるのに適当と認められる方にこれを
送付するという手続きを定めておるわけでございます。適当という言葉が出て参りますが、これは地理的条件その他いろいろな客観的に見まして適当と認められるという
意味に解するのでございます。二項は「前項の注文案内書には、
矯正保護作業によ
つて生産される品物の種類及び品目、受刑者の労務の職種その他
矯正保護作業の能力に関する参考事項を記載しなければならない。」とありまして、注文案内書の
内容をここに記載しておるのでございます。この九條は、国及び地方公共団体の
責任義務を定めまするが、併し適当の
機関がそれに対して
責任を負うというのではありませんのであ
つて、この適当と思われる、客観的に適当と思われるものに注文案内書が作成されるということをここに
規定されておるのでありまして、
送付されるということを
規定されておるのでございます。
第十條は、需要の通知及び協議でございまして、「国の支出の
原因となる契約を担当する職員は、前條の注文案内書の
送付を受けた場合において、これに記載された品物又は労務でその属する
機関の需要計画に適合するものがあるときは、
法務総裁又はその委任を受けた矯正保護管区本部若しくは刑務所の長に対して、すみやかにその旨を通知し、且つ、その品物の購入又は労務の受給について協議しなければならない。但し、災害等の場合において、急速を要し、通知及び協議をする余裕がないときは、この限りでない。」ということにいたしております。つまりこの注文案内書の作成、
送付を受けました国の
機関の契約を担当する職員は、先ずその
機関においてこれが適合するような需要計画がございました場合には、他に注文する前に一応刑務所に通知して、協議をしなければならんという協議の義務をここで
規定いたしておるわけでございます。併しその通知、協議の義務も災害或いはその他非常に急速を要する場合等のごとく、余裕のない場合においては、その限りでないということにな
つております。第二項は、地方公共団体の支出の
原因となる契約を担当する職員におきましては、前條の注文案内書の
送付を受けた場合には、前項の
規定に準じて、通知及び協議をすることに努めなければならない。これは通知及び協議することに努めることに
規定されておるわけでございます。
第十一條は供給能否の通知でございまして、需要通知及び協議を申入れました
法務総裁、又はその委任を受けた矯正保護管区本部若しくは刑務所の長は、協議に際しまして、速かにその需要に応ずることができるかどうかを決めて
相手方に通知しなければならないということにいたしております。
第十二條は、
矯正保護作業が
公益に奉仕する義務を負ふという建前から出まして、風水害その他の災害に際しまして、
公益のために矯正作業に奉仕しなければならないということを
規定いたしておるものでございます。「風水害その他の災害に際し、公共の安全を維持するため必要がある場合において、急速を要し、且つ、他に手段がないときは、
法務総裁又は矯正保護管区本部若しくは刑務所の長は、
関係都道府県知事の求により、受刑者の労務を提供しなければならない。」と
規定いたしておるのであります。
これは
法務府当局としての義務を
規定いたしておる次第でございます。
次に、実施
規定といたしまして、第十三條は、注文案内書の作成及び需要通知の手続、その他前條までに申述べましたいろいろの残されたこの
法律の施行に関して必要なる事項は
法務府令で定めることを
規定いたしておるのでございます。
次に、附則におきまして、施行期日を本年の四月一日といたしました。尚この
矯正保護作業の官用主義への完全なる切替えをできるだけ速かになさなければならんという
規定を第二項に定めておるのでございます。