○
政府委員(
岡咲恕一君)
只今の松村
委員の御
指摘は一々御尤もでございまして、全く私共その通りに考えまして、この
法律案を起案いたした次第でございます。無
額面株金の
分割拂制度を
廃止いたしましたことは、
只今御
指摘のように、当然
授権資本制度に発展するものを含んでお
つたということが言われるのでございまして、これは松村
委員の十分御了承の点と思います。
授権資本制度を採用いたしますると、
会社の
理事者に非常に強大な
権限、
現行法で申しますると、
株主総会の持
つておるところの
資本増加の決定権というものも
取締役会に與えることになるわけでございます。そこで、先だ
つても簡單に御説明申上げました際に触れましたように、
会社の
理事者のあり方というものをこの際併せて考えなければならない。
授権資本制度を採用するからには
会社の
理事者、
取締役のあり方というものを
検討しなければならないということに到達いたしましたので、
取締役会という
制度を引続いて考えたわけでございます。それから
取締役会というものを考えますると、この構成員であるところの
取締役の選任、それから解任という点についても
検討を加えなければならないというふうになりまして、その
一連の
規定を設けるわけでございます。この前も申上げましたように、結局
企業の
運営を支配いたしまするものは、
企業の経営者であるところの
理事者、
取締役の如何という問題と、それから
資金の調達
方法如何というものにかか
つておると考えるのでありまするが、
取締役会というものに
企業経営上の全権を與える。少くともこの
会社の業務の執行に関しては
取締役会に十分の手腕を揮わせる、
権限を與えることが
企業の発展に好ましいのじやないか。
現行法におきまするように、
会社における最高の機関は
株主総会であ
つて、
株主総会は
法律に違反しない限り如何なることでも
取締役会に対して支配できる、指揮監督できるということは、理念的には一応考えられましても、
企業の方の現実の動き、殊に
企業の経営は高度に技術化されましたところから考えますると、結局無理なわけである。むしろ
株主総会は
会社の根本の組織、その構造に関しては大きな発言権がある。例えば
定款を変更するとか、
会社を合併するとか或いは解散をするとか、或いは合併に等しいような営業の譲渡、或いは営業の譲受け、そういうふうなことを決定するにはこれは
株主総会が極めて適当の機関であるけれども、業務全般に関する広範なる支配権をいうものはむしろ不適当であろうというふうに考えますると、
取締役会と
株主総会との調和或いは
株主総会の
権限の縮小というものをこの際考えなければならない。
株主総会の
権限を縮小いたしまして、
取締役会の
権限を
強化するということになりますると、その
強化されている
取締役会というものが、一々全部業務の執行に現実に当るということはどうも不可能でありまして、やはりその
取締役会から
取締役の中で業務執行に適任者である人を選び出しまして、これを代表
取締役として
会社の常務を執行せしめて、同時に
会社を代表する機関たらしめる。言い換えれば業務執行における決定権と、これを執行して行く機関とを分けて行く。併しその業務執行の
権限はもとより
取締役会にあるわけですが、現実の問題として執行して行く機関と、業務執行を決定する機関とを分けるということにいたしますると、その業務執行を決定する機関をして現実の代表
取締役の行なう業務執行を監督するということにいたすのが合理的ではないかそうしますると、現在ありまするような監督役というものの存在をもう少し
検討して見なければならない。
現行法で監督役は業務監査と同時に会計監査をやるとか、業務監督権を持
つておるわけですが、業務監督が余りに強くなると、ドイツにおける監査役のように執行権の上にあ
つて執行部を支配するような形になる。ところが現実の業務を離れて、ただ第三者的な地位にいる監査役が業務執行を監査するということは、それ自体として多少無理があるのではないか。若しもその監査役がドイツ等におけるように余りに強い業務の支配権を持つということになれば、それは監査役じやないので、業務執行の
責任者ということになるわけですから、これも行き過ぎである。ところが
日本の例によくありまするように、
取締役の決定というものには大体無條件に従いまして、ただ会計の面だけで監査をして行くような監査役ということにすると、これも又実は
法律が認めておる監査役の機能から見ると非常に後退したものになる。いずれにいたしましても業務の執行を離れた別の機関をして監査をするということに少くとも
企業の上には無理があるのではないか。むしろ監査役というものをこの際は考え変えまして、会計監査だけを行わせるというふうにした方が合理的ではないかというふうに考えまして、監査役を
廃止して会計監査役を訪けるということを考えたわけであります。そういたしますると、結局業務執行権というものは、監査役の会計監査があるのみでありまして、証券取引法による国家的な監督は別といたしまして、
会社の内部機関による監督というものが非常に乏しくなるのではないか、幾ら
株主総会において
株主の信任によ
つて取締役の地位についたとしても、人は間違いがないということは保し難いので、その場合に誰も
会社の内部機構としてこれを直接に監査する機能のないのは不十分と言わなければなりませんので、やはりこの監査機能としては
株主にある程度の
権限を與えることが合理的ではないか。少くとも
会社の機構を
民主化するという線から申しますると、多数の決定には無條件に服従しなければならないという制定には多少行過ぎがありますので、少数
意見であ
つても或いは少数者の考えであ
つても、それが非常な
意味を持つことがあり得るわけでありますから、たとえ少数
株主と雖も
会社に対して適切有数な監督を行わせるということを認めることは、むしろ合理的ではないかというふうに考えまして、
少数株主権或いは
個々の
株主に対して相当重要な
会社業務の執行に対する監督権を附與することを考えたわけでございます。
その中の最も重要なものは、後程細かく御説明申上げる
機会があると思いますが、
取締役が法令、
定款に違反する行為をなして
会社に重大なる損害を及ぼすような虞れのある場合には、そして業務執行を差し止めるといういわゆるインジヤンクシヨンを認めて行く、
取締役が法令、
定款違反の行為をして
会社に損害を與えておるというな場合には、
取締役に対して
責任を追及する
訴えを認めるというのも
一つの監督権の現れであると思いますが、そういう
権利を認める。その他にも二、三ございますが、主な監査機能はそういう点ではないかと思います。
出発は
授権資本制度の採用でありますがそれから
只今申上げましたように
一連の関連あるもののみを採り上げまして、今度の
改正案を考えたわけであります。