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1950-03-07 第7回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月七日(火曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件裁判所職員定員に関する法律の一  部を改正する法律案内閣送付) ○商法の一部を改正する法律案内閣  送付)   —————————————    午前十時五十三分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより委員会を開きます。裁判所職員定員に関する法律の一部を改正する法律案議題に供します。速記を止めて下さい。    午前十時五十四分速記中止    ——————————    午後零時九分速記開始
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を始めて下さい。それでは休憩をいたします。    午後零時十分休憩    ——————————    午後一時四十八分開会
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 午前に引続き委員会を開きます。商法の一部を改正する法律案議題にいたします。前回に引続きまして、本日は一般質問に入りたいと存じます。
  5. 松井道夫

    松井道夫君 今回の改正は相当大規模な改正で、問題となるべき点も沢山あるのじやないかと想像されるわけですが、各界の意見を参照されて法律案立案されたのでありますから、問題となる点は大方解決されたのであろうと思いますけれども、その解決の理由等につきましては、やはりお尋ねしないと分らんところがあるのではないかと思うのであります。併しながらそういつた細かいところの條文の解釈は各章御説明のときに譲りたいと思つております。今日は極く大さつぱなことについてお尋ねいたします。  本改正が企てられるようになつたの提案理由書にも書いてありまするが、これが経済界改正を求める声というか輿論というか、声があつてそれが企てられるようになつたのか。或いは又関係方面示唆といつたそういつたようなことによるのか。或いは法務庁におかれてその必要を感じられて企てられるに至つたのか、その辺の事情を先ず……。
  6. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) このたびの改正案法務府で研究いたしました直接の動機と申しまするか。法務総裁提案理由にもあつたかと考えますが、第二回の国会におきまして、法律第百四十八号として公布せられました商法の一部を改正する法律案のよりまして、株式会社による株金分割拂制度廃止したというこに直接の起因があると申してよろしいかと存じます。当時株金分割拂制度廃止につきまして、実業界方面の御意向を伺いましたところ、分割拂制度廃止はよろしい、併し分割拂制度の持つておるところの非常に大きないい点、言換えれば会社側で必要とするところの資金取締役会決議において便宜調達拂込みを徴収し得る、よつて会社自己資金を容易に調達し得るという理念が失われる、ついてはこの失われたる資金調達の利便を株式会社に與えるためにアメリカで行なわれておりますような授権資本制度というものを採用してはどうか、政府においてその点を研究せられることを要望するという趣旨意見が各方面から参つたのであります。例えて申しますというと、東京商工会議所生命保險協会損害保險協会東京銀行協会特殊会社整理委員会証券取引委員会、通商産業省、それから経済安定本部といつたような方面から今申しましたような要望がございましたので、これは極めて御尤もなことであると考えまして、私共の方におきまして早速まあ研究に著手するということにいたしたわけでございます。当時法務庁に、商法改正調査会というものを設けまして、その調査会に諮問いたした次第でございます。同時に関係方面におかせられましても、この点株金分割拂制度廃止する当時から多少そういうふうな御意向をお持ちのようでございまして、当時の法務総裁兼長官に対してそういうアドバイスがあつたということを私も承つておるのであります。私共といたしましては、資金調達便宜を提供するという問題に出発いたしまして、いろいろ改正後の状況検討いたして見まするのに、独占禁止法とか或いは集中排除法法的措置というようなものによりまして、従前のように株式が有力なる資本家と申しまするか、の手許に集中されることがなくなりまして、よく国民の間に株式が分散して行つたということは隠れもない事実のように考えられるのでありまして、従いまして株式運営実態につきましても更に検討を要する必要があるのではないかというふうなことを考えまして、授権資本制度研究に着手いたしますと同時に、その方面のこともそろそろ研究を始めまして、只今提案いたしておるような法律案基本の構想というものを作り上げるようになつた次第でございます。
  7. 松井道夫

    松井道夫君 それで、只今の御答弁で大体のことが明白にされたのでありますが、立案当局とされて今の資金調達に関連いたしまして、無額面株式授権資本制度取締役会の創設、或いは個々株主権利強化保護、さような観点立案されたようでありますが、その他に従来の規定でそういつたことにも全然関係のないようなものでもこの際一応検討して見て、不都合なものがあつたらこの機会改正をしようというような観点も持つておられたのかどうか、その点を一つ
  8. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 松井委員お尋ねになりまするように、折角商法、殊に会社法に対しまして根本的な検討をいたすからには、この授権資本制度或いは取締役会株主権限強化という問題に限定いたしませんで、会社法全面に亘りまして、運用上必ずしも適切でないという規定があるのではないか、その点についても検討いたしたいということももとより考えまして、全然関係のない分につきましても二、三修正をいたしたい点がございますけれども、率直に申上げますと、この短期間内に無額面株式授権資本制度取締役会制度法制化、或いは個々株主権利強化というような問題を検討いたしますだけで実は時間がすつかり潰されてしまつたようなわけでありまして、外に二、三検討いたしたい点もございましたけれどもこの大問題と取組みまして、殆んど調査会の機能、或いは審議会商法部会というものも殆んど今申上げました問題に審議を集中されました関係上、いろいろその他の方面亘つて十分の検討をいたすことを得なかつたというのか実情でございます。併し例えばあとに残つておりまする問題といたしましては、株式会社整理という問題がございまするがこれは現在法制審議会部会におきまして、破産法会社整理という問題を特に取上げまして検討されておるわけでございますから、これも遠からざる中に成案を得られまして、国会法律案として提案いたすことに相成ろうと考えおります。整理を除きますと、差向き特にこの点が不便だというふうな問題は比較的少いように考えます。二、三もう少し検討してはという問題がなくもございませんけれども、先ず一応間に合い得るだろうというふうに考えまして、もう少し時間がございますならばこの点についても十分検討いたすべきでございましたけれども、特に不自由だと思う二、三の点だけは取敢ず修正いたしましたので、一応の法案といたしまして、只今お話になりました重要なポイントを中心といたしましたものをまとめまして改正法律案として提案いたし、附随的に二、三の現行法修正をこれに附加したというのが実情でございます。
  9. 松井道夫

    松井道夫君 これは私の聞き違いか知りませんがまだ参議院に出ておらんようでありますが、会社等臨時措置法の中に例えば株主総会招集方法、これは確か同法の他の部分が失効いたしました後においても、それは必要だということで活かして置いた部分であつたと思うのでありますが、私の聞くところでは更にそれを延長する法律案が出るとか出たとかいう話をちよつと聞いているのであります。或いは勿論戰争の経過によりましてその必要が甚だしくなつてあの措置ができた。その後平和が回復されましたけれども、そういう状況が引続いているということで有効にしておつたと記憶するのでありまするが、ところが今回の改正に当りましても、そういつた便宜方法改正の中に盛り込むべきだという意見もあるやに聞いておるのであります。勿論情勢も改まつて来ているわけでありまするが、そういつた情勢の変化といつたようなこと、或いは臨時措置のつもりで作つたものでも、それが例外が原則になつて存外恒久的なものになるというような点もありますし、その辺の関係はどういう工合に考えておられますか。
  10. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 只今お尋ねになりました会社等臨時措置法は、松井委員もすでに御承知のように、昨年末を以て一応失効いたしたのでございますが、その法律の中に例えば総会招集に関する特例、或いは定款変更等特剔抉議に関する方法特例といつたようなものは、現在における日本実情から考えても是非規定として存置することが望ましい、又適当であるというふうな意見は確かにございまして、この法律は本来法務府の民事局の所管でありました関係上、事務引継を円滑にする意味におきまして、民事局におきましてこの法案の効力の存続につきまして関係方面ともいろいろ折衝いたしておりますのでございますが、遂に関係方面了解を得ることができませんで、昨年限り失効いたしたわけでございます。私共もこの臨時特例というものを商法基本法規の中に取入れるべきであるかという点について検討いたしたのでございますが、臨時特例といたしましても容易に関係方面了解を取ることができ得ない実情に鑑みまして、恒久法としての商法の中に取入ることが到底不可能であろうと考えたので、私共といたしましては特に商法の中にこの規定を持つことを強く主張をいたすということは実はいたさなかつた次第であります。関係方面の、私共の実は聞くところによりますと、株主権利として最も大きな権利議決権である。議決権行使が遺憾なく行われるために法的措置というものを十分検討すべきであるというふうなお話もありまして、このたびの改正商法におきましても、例えば総会における定足数に関する定めとするとか、取締役の選任についてはその定足数発行済株数の三分の一以下に下すことができない、或いは特剔抉議における定足数を改めるといつた問題、その外議決権行使について一連規定がございます。それは全く株主に與えられておる議決権というものを飽くまでも尊重して、そうして権利の上に眠らないようにすることが企業運営民主化の上には絶対必要である。少くとも法律はその保障をなすべきであるというふうな点から出発したものと考えます。招集特例という点は、この点から申しますると、個々招集通知に替えまして、会議の目的とすべき事項及び会議を開くということを通知に替えて公告するということでございますから、総会招集を徹底せしむるという点において確かに多少欠けておるところがあるということは申さなければなりませんし、又特剔抉議の方式につきましても、この特例は必ずしも株主権を、特に議決権を非常に重く考えておるというふうには断定できませんで、むしろ多少便法という点があることを否定できないと考えます。尤も株式の分散という点から申しますと、現行法のように株主数というものに重きを置くということはこれは確かに無理でございまして、改正商法特剔抉議株主数というものを全然考えませんで、専ら発行済株数の過半数というものに重きを置きましたり、或いは出席株主議決権の三分の二以上というふうなことを建前にいたしました点は、特例と相似たところがあると思うのであります。いずれにいたしましても、特例は飽くまでも特例でございまするが、商法根本法規として取扱うことについては多少無理があるのじやないかと考える次第でございます。ところが松井委員の御指摘のように物資も不十分でございますし、交通関係も必ずしも完全とは言えない現状におきまして会社に非常な負担をかけるところの招集手続商法の本則に則らしめるということは、少くとも現在の経済事情を考えると多少無理があろうと考える次第であります。幸いにして衆議院の法務委員会におかれまして、この問題をお取上げになりまして、株式会社総会招集等臨時特例に関する法律案というものを起案せられまして、近く国会に御提案になよるうに承つております。この株式会社総会招集等臨時特例に関する法律案は、只今お話になりました総会招集特例定款変更等決議方法特例を定めた点が主要な点でございまして、幸いにこの法律案が可決されまして法律となりますならば、松井委員の御指摘の点は解消されるであろうかと考えております。政府といたしましてもこの法律案提案せられ、可決せられるにつきましては、満幅の賛意を表する次第であります。
  11. 松井道夫

    松井道夫君 先程立案動機について聞き漏らしたのでありますが、最近外資導入ということが言われております。アメリカにおいて現在行われておりまする授権資本、無額面株式というものが日本に行われるならば、外資導入も大変よくなると思うのであります。それでそういうことに関連いたしますことは、他にもいろいろありましようが、外国会社の章が直接それに当るだろうと思うのであります。それでこの立案されるについて外資導入というようなことを考慮されたかどうか。それから又そういうことについて考慮しろというような声があつたかどうかということをお聞きしたいのであります。
  12. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) この法律案の起案なり審議に当りまして、授権資本制度、或いは無額面株式というもの、その他取締役会権限強化株主権利強化、或いは取締役責任の過重といつたような一連法制建前が専らアメリカ法制を引用したということは、そうであると申上げなければならんと思います。従いまして、アメリカといたしましては、大体この日本会社法アメリカ法と同じような建前なつたということになりますと、アメリカ資本が比較的法制の上では安易に日本に投下されるであろうということは期待するわけでございます。併しながら外貨導入を主要な目標として、或いは外貨導入のためにこの法律案改正いたしたのではございません。又そういう趣旨示唆なり或いは産業界要望というふうなものも曾て承つたことはございません。こういうふうな法制になれば、少くとも会社法法律の面から外資は入り易くなるであろう。その意味において望ましい法律案であるというふうなことは承つたことはございます。重ねて申上げますが、外資導入するのに便宜のように法制を作れとか、或いは作ることを望むというふうな話は私共事務当局として承つたことはございません。
  13. 松井道夫

    松井道夫君 終戰後種々の事情によつて会社増資というものが相当必要を生じたと存ずるのでありますし、又方々でいろいろな人から増資をやつたということも聞いておるのであります。その増資傾向といいますか、それがどんな工合になつておるのか、又株式全額拂込制商法改正において実現しましてから日が浅いのでありまするが、未拂込制度廃止のために増資をするというような傾向が生じたのではないか、その辺のことについてお尋ねいたします。
  14. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 未拂込制度廃止せられまして、やがて二年になるわけでございますが、東京日本橋の登記所調査によりますと、その管内の株式会社は殆んど拂込を徴収いたしまして、全額拂込になつておるようでございます。尤も東京都内におきましても他の登記所におきましては、尚未拂込が多少残つておるように聞いております。今調査もいたしておりまするので、その資料を整え次第各委員にお配りいたしまして御参考に供したいと思つております。未拂込の徴収という方法がなくなつたからということよりも、他の経済的な大きな原因によりまして、一昨年殊に昨年あたりは有力会社において盛んに増資をせられ、中には倍額或いは二倍、三倍といつたような増資もあるように承つておりまするが、その増資は必ずしも未拂込制度廃止せられたということと直接の関連がございませんで、やはり会社資本を必要とする経済的なものが非常に多いがために増資が行われたのではないかと想像いたしております。
  15. 松井道夫

    松井道夫君 資料はいろいろ御用意中というお話でありますので、その増資に関する資料を更に拜見いたしまして、参考にしたいと存じます。  それから個々株主に種々の権利を與えますと、それがいわゆる会社荒しに利用されるということが恐れられているようでありまするが、従来の制度におきましてどんな態様の会社荒しというものがあるかどうか、又その事件といいますか、そういつた事例といいますか、その数は相当あるものと思います。又この本法がそれに則つたところのアメリカ制度によりまして、会社荒しというものがどんな状況になつておるのか、その点を……。
  16. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) このたびの改正案で最も注目されました、又法制審議会におきましても議論の白熱を呼びました問題は、只今松井委員の御指摘のような株主権利強化に関連した点でございます。特に現在におきましても、いろ社会社会社荒し、いわゆる総会屋というふうなものによつて大いに悩まされている。で、現在においてもすでにこの程度であるのに、若し改正案のようにいろいろの方面から株主の管理を強化するならば、会社荒しに対しては非常なる利器を提供することになつて会社企業経営上非常な困難に逢着するであろう、或る法制審議会委員は、会社法出でて会社滅ぶというふうなことにならないとも限らないというふうなことまで言われたことがございます。で、私共といたしましても、一体この会社荒し会社荒しといろいろ言われるようだけれども、一体どういうふうな実例があるのか、その点十分な時間と方法がありますならば徹底的な実態調査をもいたしたいと考えたのですが、なかなかそこまで手が廻りませんで、十分な実態調査ができなかつたことを遺憾といたしております。で、法制審議会なり或いは私共の知り得る範囲で実業界方々お話を承わつて見まして、会社荒しというものが大体どんなものだということを承知いたしたわけですが、私共の承わりましたところでは、大体会社荒しは総会における議決権行使の際に行われるものであるというふうなのが現在の実際のようでございます。創立総会当時より、その後の普通定時株主総会、或いは定款変更特別総会臨時総会といつたような機会におきまして、そういう会社荒しと称せられておる人々は比較的法制に通じておりまして、極めて軽微な手続上の過失というものを指摘する、或いは計算書類の作成の仕方における欠点指摘する。そうして場合によりましては、長時間堂々と反対の演説をする、或いは賛成の演説をする。要するに会社理事者を悩ます。そうすることによつて場合によつて会社から不正な金額を受取るというふうなことを行なつているもののようでございます。で、その外の点について、例えばいわゆる現行法でも少数株主権というものがございまするが、極く稀れには訴えという方法会社要求する。若し要求を容れて呉れれば自分の方は訴えを取下げるというふうなことを言つて会社理事者に迷惑をかけるという例も全然なくはないようでございまするが、まあ大体は総会機会を利用して、議決権行使に絡んで会社に不正の要求をするということが多いようでございます。で、この点は現行法におきましても四百九十四條の規定によりまして、特に刑罰を以てこれを処分せられるということになつておるのでございまするが、これは会社荒しが巧妙であるためか、それとも会社理事者側にも又多少の欠点がございまして、問題が裁判沙汰になることを避けられる故ですか、四百九十四條による罰則の適用を見た事例が極めて少いのでございます。私の承つておるところでは殆んどないのではないかというふうにも考えております。これは折角法律が正当なる理事者業務遂行を保障しておりながら、それが不法に犯されてもその責任を追及しない、言い換えれば飽くまでも正しい権利主張するという態度理事者側もとれないという点に大きな原因があるのではないかと思つております。今度の改正商法によりましては、確かに個々株主権利、或いは少数株主権というものが、著しく強化せられたのは事実でございまするが、この権利行使は、多くの場合結局は裁判によつて確定せられるという性質のものを持つているのでございまして、裁判外においてこの権利を振廻すということは比較的少いのではないか、議決権以外には殆んどないのではないかというふうに考えております。従いまして理事者の方で不当な要求であるというふうにお考えになるならば、決然としてその要求を撥ね付けられる。そうすれば会社荒しは訴訟という手段を通さなければならん。ところが訴訟ということになると、この会社荒しにとつては最も苦痛とするところでありますので、株主権利強化されながらも、訴訟を通して自己権利主張するということになると、結局は裁判所健在である限りそういう会社荒しの主張は排斥されることは明瞭であろうと考えます。従いまして議決権を通しての会社荒しをいうものは、或いは跡を絶たないのではないかと思いますが、この権利主張におきまして、会社荒しが巧みに功を奏するということは、結局理事者が不当の要求決然としてお撥ねにならないというところに起因することが多いと思いまするので幸いにこの法案が成立いたしまして施工と相成りました際に、理事者側の勇気ある態度、正義に向つては飽くまでも自己を堅持し、健全なる民主主義の慣行というものを確立されることを特にお願いしたいと思いまするし、又私といたしましては、恐らくそれは期待して差支ないとかように考えているものでございます。
  17. 松井道夫

    松井道夫君 承わると、先の会社法改正ですか、転換株式、或いは転換社債というものがさつぱり利用されておらないということなのでありまするが、例えば今度の改正におきましても、無額面株式、これは恐らく今の転換社債のようなことはなく、盛んに利用されるであろうと私思うのでありますけれども、新らしいものにはなかなかなじまないといつたような一般傾向もあるので、その辺の見通しを伺いたいと思います。又相当新らしい会社法普及徹底宣伝等もなさなければいけないと思うのでありまするが、その辺について、その費用とか予算とかいつた方面のことはどういうふうになつておりますか。その辺お聞きしたいのであります。
  18. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 松井委員の御指摘のように現行法におきまして、アメリカ制度に倣いまして、転換社債、或いは転換株式というものを規定いたしておりまするが、改正商法が施行されましたのは確か昭和十五年一月一日であつたかと思います。で、当時太平洋戰争に入りまする直前でもございましたし、国内は大体準戰時体制或いは戰時体制というふうな形になりつつありましたので、会社法改正で認めましたいろいろのこの新らしい試みをする機会なしに、大きな国家的な統制に入つてまつた次第でございます。従いまして折角の新らしい制度も活用せられることなしに現在に至つたのではないかと思います。尤も終戰後最近に至りまして、転換社債は多少利用される機運があるやに承つております。で、このたびの改正案において採用されました授権資本制度、無額面株というものは私共の予想といたしましても、恐らくこれは大いに活用されるだろう、と申しまするのは、企業における最も大きな要素資本が如何に合理的に会社に調達されて行くか、言い換えれば資金形成方法如何ということが企業の運命を決する一つ要素であると考えます。で、旧来の個人企業から段々と発展いたしまして、人的会社並びに更に物的会社として株式会社というものが企業におけるところの王座を占めている。資本主義というと法制的には何びとも直ちに株式会社というものを考えるというゆえんのものは、結局株式会社資金を吸収するという面において極めて合理的な制度であるということにあるように考えるのであります。ところがこの大陸法に比較いたしますると、アメリカ法授権資本制度及び無額面株式というものは、資金調達面においてはこの上のない全く徹底的な、弾力的な融通性を持つた制度でありまするが故に、資金調達というものが会社企業強化する面において非常に有意義である、それだけそれを助ける授権資本制度と無額面株式との利用される見通しは甚だ多いであろうと思います。その外例えば償還株式或いは種類株式なども認め、或いは無議決権株式というものを当初から認めるようにいたしておりますが、こういうような各種の株式も結局は資金調達という面において非常に機動的な有機的な働きをなす面が多いので、アメリカでも活用されておるところでございますので、これは授権資本制度或いは無額面株式程速かには活用されないと思いますが、やがて国民がその株式に慣熟いたしますならば、余り遠くない将来において相当活用されるのではないかと予想いたしております。  次にこの法律案が幸い法律として可決いたされましたならば、私共及ばずながら法律の周知徹底につきまして、大いに努力いたしたいとこう考えております。で、法務府の情報化におきまして、その点を検討いたしまして、今数字等は正確に記憶いたしておりませんが、多少の予算を組みまして、或いはパンフレツトにより、或いは講演により、或いは実業界産業界方々と懇談することによりまして、成るべく法律趣旨を徹底いたすことにいたしたいと思つております。後程情報課の予算を取寄せまして、御参考に供したいと考えておりますり。
  19. 松井道夫

    松井道夫君 大体今日はお尋ねしたいことは終つたのでありますが、この改正関係のある会社実態につきまして、政府委員におかれて重要点であると考えられる資料がございますならば、そういうものを蒐集せられて参考に供して頂きたいと思います。今日はこれで終ります。
  20. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 私はこのいろいろな文献を頂いたのですが、甚だ知識が乏しいので恐縮でありますが、無額面の株式のことに関して実施面においてどういうことになるかということを具体的にお教えを頂きたい。お願いします。それから会社の創立の当時、それから合併若しくは増資その他の面に亘つてお教えを頂きたい。
  21. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 無額面株式はすでに鬼丸委員も十分御承知のことと拜察いたしまするが、株式に券面額を書かない、言い換えればその株式の発行につきまして、額面による法律上の制限がないというのが無額面株式でございます。会社理事者が適当と考える価格によりまして株式を売り出すことができる。これは会社の創立、設立に当りましても差支ございませんし、会社成立後新株式の発行の際に無額面株を発行することはもとより差支ないのでございます。尤も会社定款の中に必らず無額面株を幾株発行するかということを記載して置きませんと、無額面株は発行できないわけでございます。それから設立の際の無額面株だけは制限がございまして、これは定款に設立の際に無額面株を発行いたします場合は、最低発行価額というものを定款に記載しなければならないということにいたしております。例えて申しますと、現在は大体株式の発行価額が通常額面株は五十円、中には百円の株もございますし、稀には二十五円或いは二十円のものもあるやに承つておりますが、大体五十円といたしますと、無額面株を設立に際しまして発行する会社におきましては、一応最低発行価額というものを二十円或いは五十円と決めるであろうかと想像いたします。そういたしますと、これは発行の制限になりまして、その会社においては設立に際しては無額面株はその制限以下の価額では発行することは許されないわけでございます。併しこの場合を除くの外はとにかく無額面株式会社理事者が市場相場とか或いは会社に対する人気とかいうようなものを検討いたしまして、これならば消化し得るであろうという一応客観的な公平な価額によつて発行することが許されるのであります。この価額を如何なる価額に決定するかということは完全に理事者若しくは取締役会権限とされているわけでございます。現在は無額面株はございませんので、現在会社を合併するという場合には事は極めて簡單でございますが、将来無額面株を発行しておる会社額面株のみ発行しておる会社との合併が如何ようになるかということが問題になるかと思いまするが、これは後に御説明いたしたいと思いまするが、この定款で合併の契約書を作らなければなりません。その契約書の作り方において多少複雑と申しまするか、現行法に多少の修正が加えられますけれども、根本的には大した修正はございません。と申しまするのは、この額面株と無額面株というものを考えますると、何か本質が根本的に違つておるかのように考え勝ちでございまするが、額面株と申しまするのは、まあ額面価額によつてその株式を取得したとか或いはその額面株がプレミアム付で発行されておりまする場合には、その額面に更にプレミアムをくつつけた価額によつて取得したものではありまするが、まあ大体株主として曾て会社に対して拂込み義務を負つたところの金額というような意味しか持ちませんで、苟くも株式の所有者である以上、言い換えれば株主である以上は、会社に対してその株式が表示をしておる部分的な、割合的な権利をもつておるに過ぎないわけではないかと考えます。そういたしますと、無額面株については成る程額面に金額はございませんし、一体幾ばくの金額を会社拂込んでその株式を取得したかということは額面株程明確じやございませんが、とにかく何がしかの対価というものを支拂つて、そうしてその株式を取得したということについて額面株と相違もございませんが、すでに株主なつた以上は、額面と無額面との間には全然相違はないわけでございます。従いましてこの合併の際にもその点は優先株とか或いは劣悪株というような特殊の株式が発行されておるような場合とは違うのでございまして、一律に普通株として合併上取扱つて差支ないかと考えております。
  22. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういたしますと、無額面株式発行の場合に発起人の引受株というものが勿論あるわけですが、その発起人の引受株の価額はどういうふうに決めるのですか。最小額に決めるのか、或いはそれとも発起人自体がすでにプレミアム付で以て引受けるというようなことになるのですか、その点はどうなるのですか。又無額面株式を発行する場合に発起人の引受株がプレミアムが沢山付く場合には余計引受けることになります。そうすると一般公募の株が相当少くなり、発起人の引受株については何等の制限と受けずして、……その辺の会社と発起人の引受株との間の利害の調節はどういうふうになるのですか。こういうことを一つお聞きします。
  23. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 無額面株の場合には、鬼丸委員お尋ねのようにプレミアムという観念は全然ないわけでございます。無額面株の発行価額が……。
  24. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 今私共の考えとして、プレミアムにまあ値するからというのですが。無論プレミアムという名前は使いませんけれども。
  25. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 発行価額如何という問題だけになるかと思いまするが、設立に当りまして発起人が或る一定の価額、例えば定款に最低発行価額五十円とされておる。その株式を発起人は七十円で引受ける。ところが非常に人気が出まして、これを公募する際には我も我もと註文がある。従つて百円くらいには売出しても十分消化し得ると発起人が見通しを付けますならば、その株を百円株で一律に売出すということはこれは差支ないかと考えます。その場合に、然らば拂込んだ金額百円なり発起人の拂込んだ七十円というものが全部会社資本になるかと申しますと、これは関係條文のときに御説明いたしまするが、発行価額の四分の一を超えない金額、それから最低発行価額を超えた金額に限つて拂込剰余金として積立てることを認めておるわけでございまして、その拂込剰余金として積立てられる金額が額面株について申しますと、いわゆる額面超過額プレミアムに該当する金額になるわけでございます。
  26. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういたしますと、非常な人気が出て高く売れそうなということの見通しの下にありまする株ならば、敢て公募しなくたつて、発起人の方で以て全部それを引受けてしまつたらば、一人で利益するようなことになりますから、敢て公募するなんというような手続によらなくてもいいことになります。従つてそういう虞れがあるならば、同時に発起人の引受株というものについて制限を加えるに非ざれば公募という事実を生じて来ないことになりはしないかと思います。
  27. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 鬼丸委員お尋ねのような、そういう非常に人気が集つて公募するならば多額の資金を調達し得るというふうな会社は誠に結構だと思いまするが、そういう会社につきまして発起人が全部株式を引受けましていわゆる発起設立をするということは一向差支えないのでございまして、発起人が全部株式を引受けて発起設立をしても構いませんし、或いは会社資金を成るべく有利な條件で調達するというために、発起人が例えば三分の一を引き受て、他の三分の二は相当有利な価額を以て売出す、むしろ会社の発展のためには成るべく株式を分散して、大衆的な支持を得るようにする方が私は会社の利益になるのではないかと思いまするが、一部を引受けて残部を一般公募にする、或いは全部を発起人が引受けるという、いずれにいたされましても一向構わないわけでございます。
  28. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういたしますと、その設立する会社資本金の表示というものは結局最小価額の総計によるものである。或いはそれとも市場価額というものが出て来まして、これは非常に動的状態にありますから、或いは百円で買う人もあろう、或いは百五十円で買う人もあろうというようなことが出て来て、結局その価額には非常に移動が出て来ますから、会社資本金というものが未確定になるわけです。それから尚発起人の引受けた株式が人気が出て非常に上るということになると、発起人の引受ける額というものは発起人間において取決めをして、それから市場に出した価額は非常に高く売れる、こういうことになつて来ると、売れるか売れんか分らないようなことで以て、又人気が出るか出ないか分らないというようなことで発起人の方で以て非常な無額面株式の設立というものが濫設されるようなことがありはしないかということ、それ自体の会社設立だけで以て大変な儲けができ得ることになりはしないですか。その辺はどういうふうになるんでしよう。
  29. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 只今の第一点のお尋ねの、資本の点につきましてお答えを申上げますると、條文で申しますと、二百八十四條の二という條文資本に関する規定でございます。第一項にございますように「会社資本ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外発行済額面株式株金総額乃発行済額面株式ノ発行価額ノ総額トス」ということになりまして、資本につきまして二、三特別の規定会社という中には置いておりますが、一応額面株につきましては額面総額というものが必ず資本になるので、無額面株につきましてはその発行額の総額というものが勿論資本になる。両方発行しておる場合にはその合算額が資本になるという建前になつております。ところが第二項にございますように「無額面株ニ付テハ其ノ発行価額ノ四分ノ一ヲ超エザル額ヲ資本ニ組入レザルコトヲ得」無額面株につきましては、発行価額の四分の一以内の金額についてはこれを資本に組入れないことができるということにいたしておるのであります。ですから、原則といたしましては無額面株の発行価額の四分の三は少くとも資本に相成るわけであります。
  30. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ちよつと例を挙げて説明して呉れませんか。
  31. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 例えて申しますと、無額面株式を六十円で発行いたしましたとすること、六十円の四分の一、十五円だけは資本に組入れませんでリザーブできる、資本に組入れないで機動的に利用すると申しますか、資本に準ずる取扱いになりますが、資本に組入れないでリザーブする金額を認めるわけであります。後の四十五円を資本に組入れる、こういうことになるのであります。従いまして資本総額というものが会社設立当時は勿論分りません。併し設立したときにはその当該会社資本額が幾らあるということは明瞭に分るわけでございまして、会社の設立に当つては設立登記に資本額を掲げるということにはいたしておりますが、これを以て現行法のように定款の記載事項にいたしますというと、その後取締役会が新株を発行するために定款変更をしなければならん。新株発行が取締役会権限に属しておりながら同時に株主総会を開かなければならないということになつて、特に株主総会を開かしむべき理由はないのに定款変更のために株主総会を開かなければならないという無駄なことになりますので、定款の記載事項から資本額というものは削つたわけであります。
  32. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 六十円としますと、四分の一は資本に組入れるのですか。
  33. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) そうです。
  34. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると十五円になりますね。
  35. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 四分の三を組入れるのです。
  36. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 四分の三は資本になり、総株式は幾らということを記載するのでありますか。
  37. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 総株式定款に記載がありますし、発行の時に何株ということが決りまして、それで四十五円を以て十五万株なら十五万株を組まれるわけですから、それが資本になる。……
  38. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それが会社資本になるのですか。
  39. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) それがいわゆる現在の……。
  40. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 無額面株式の場合であれば、表面に現われるべき額と実際会社の資産額とは違つて来ますね。
  41. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 表面に現われる額と申しますと。……
  42. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 四十五円なら四十五円の十五万株の総額が会社資本金で、そのとき六十円で売出したのを八十円で売れるという場合でも六十円で一律に売出すというのですか。
  43. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) その点の不公正な取扱いをさせないために條文で申しますと、二百八十條の三というのでございまして、「株式ノ発行価額其ノ他発行ノ條件ハ発行毎ニ之ヲ均等ニ定ムルコトヲ要ス」ということになつておる。六十円と決めれば六十円で売出さなければならん。
  44. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 今のあなたの説明では、人気が出て来てうんと高くなつても最初の決めの額で価額が決るわけですね。そういうことから見て遺漏はないのでありますね。
  45. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) さつき申しましたのは、発起人が幾らかの株式を引受けるが、そのときはまだ将来の見通しも付きませんし、人気ということも分かりませんから。
  46. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 六十円で引受けて六十円で売出そうとしたら、百円で売れるということになると……。
  47. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) そういうことを認めれば、百円で売出しの日に公募しても差支ないのであります。
  48. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 百円として売出し、全部売れたとすれば、全部発起人が引受けて四十円先に儲けていいのでありますか。
  49. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) ところが、この儲け方には悪意とか故意、或いは重大な過失というのがございまして、そうしてこれはもう百円に売れるということは明瞭だと、会社の事業の性質とか、いろいろな点から考えまして完全に百円に売れるということが分つておりながら、安く買つて置こうと言つて六十円に買つたとしますと、そうして公募の際は百円で売つたとすれば、四十円の差金を付けたということが、悪意、或いは重大なる過失ということになりますと、この発起人は設立における発起人の責任として一般株主なり或いは場合によつては第三者に対して損害賠償ということもあり得る。
  50. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 自分が六十円で決めて、そうして百円で売れるか売れんかは公募の関係を決める時期には発起人が実際知つておるのだから、最初から六十円の……。
  51. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) それにする必要はなくなる、百円に決めればいい。
  52. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その間のずれとか、違いが出て来る筈がないと思います。同じ人間が同じ決めをするのでありますから。
  53. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 鬼丸委員の御指摘のように、当然百円に売り得るという株を殊更発起人なるが故に六十円で引受けるということになりますと、明瞭なる事務懈怠ですから、会社に対して損害賠償としなければならんということも明瞭であります。又実際問題といたしまして、発起人は会社の名誉なり信用を重んぜられるだろうと思いますので、そう発起人の引受額と公募などとの間に価額の開きをお置きになるということは先ずないと思います。百円で売り得る株であるならば、発起人としても一応それに近い額でお引受けになるということが法律上の責任だと思います。そういうことは杞憂だと思ますが、鬼丸委員の言われるごとくお儲けになります事例がありますれば、それは発起人の事務懈怠の責任として損害賠償の責任を負わなければならんと思います。
  54. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、公募の売出額を決めて公募しますね。段々人気が出て来て百円が百五十円にも売れるとなつて参りますると、その場合であつても百円より以上に価額を上げることはできないことになるのであるか。一旦そういうふうに最初決めた公募価額というものは、つまりせり上げというようなことは考えられないであるか、法律上許されないとすれば……今六十円という場合で百円のお話がありましたね、それは本来ちやんと売出しの価格と発起人の引受価額というものは大体において同一価額でなければならんということになりますね。そう言うないけれども併し私はその間に大きな開きができて来て利潤ができるということがあると思う。会社が乱立して煽り立ててその価格に間隔ができて来ますね、その間隔だけで以て不当な利益を得るということ、時代の動き、そういう故意、或いは重大過失等がない場合であつても、時代の動き等がそれに加つて来てそれがために価額がどんどん上つて来るというようなこともあり得ると思います。その点一つ……。
  55. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 発起人に悪意若しくは重大な過失がなくて、発起人が善良なる管理者の注意を以て仕事をされる限りにおいては、予想外の価額の変動によつて結果的に見れば発起人が思わない利益を得たいというふうなことがありましても、これは責任がないと思います。それから一応発起人が引受けた価額を以て売出すのは発起人の性質という意味からも当然かと思いますので、実際問題としては余り開きを設けた公募ではないだろうと予想いたします。のみならず最近は株式の売出につきましては鬼丸委員すでに御承知のように証券取引法がありまして、いろいろ公募について届出とか、公示であるとか、その内容を証券取引委員会或いは一般に公開するというふうなことをいたしておりまするので、大体発起の過程におきましては、ガラス張の中における行動が期待されるのではないかと思いますので、鬼丸委員の御心配になりますような非常な山勘的な泡沫会社を頻りに作つて利鞘を稼ぐというようなことはこれからは行われない、かように考えます。
  56. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 まだどうも用意ができないので、実に素人くさい質問を申して恐縮ですが、他日又日を改めて御質問いたします。
  57. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 今の無額面株発行というようなことをめぐつて一つ心配なのは、こういう新らしいちよつと考えても素人に分りそうにもないような立法をするということが、株式民主化に支障がないかどうかという点です、外貨輸入よりも今国民に要望しておるところは、各会社の株をできるだけ民衆に持つて貰うという運動をしておるわけでありますね。その場合に今鬼丸さんが御質問になつておるように私はこれはちよつとむずかしいことではないかと思う。そういうようなことを今ここに急に新らしい立法をするということが、今申しましたような工合に対外的のものであれば別であります。併しながら株が非常に下つておる原因一つとして世間に言われておることは。余りに株を民衆化させ過ぎた。そうして多数の人が株を持つた。ところが急に金が要るから売出した。そこで下つたというようなことを言う人もあるが、一方において非常に株を国民一般に持つてつて会社の事業というものをいわゆる資本家といいますか。そういう人だけで持つのでないようにしたいという際には成るべく分りやすい立法で必要ではないかと思うのであります。学者のいろいろな参考書類を見ましても、彼これと割引発行と、無額面との利害得失を論じておるが、併し割引発行ということはやつていないのです。やつていないことを議論しておつて、その特質についての問題を取上げてそうしてここに立法するということは余程私どうかという疑問を持つておる。割引発行が現にあればそれに対して議論してもよい。割引発行よりも無額面株が優つておるというような議論をする世間の学者の或る意において弄ぶというかどうか、その議論の研究にはなるか知れないけれども、民衆一般にそれがどれくらい株式制度を理解させる上において利益があるかどうかという点が疑問ですが、ちよつと素人が考えるならば、やはり従来の慣れて来ておるところ、そういう関係において根本的に変えなければならんという理由の方が私にはよく分らない。で、額面、無額面ということはありますけれども、現在の制度が素人には分りやすいのではないかと思う。それは額面というものと資本維持との原則がぴつたりと結びついている現在の制度は、額面に相当するまだ資本を維持しなければならない、ということが直ぐ素人には分るのです。その市場価値と額面との関係については始終市場は会社の価値によつて動くのですが、額面の定めて置くことは維持すべき資本の額を明瞭にするゆえんとあると思う。それで私の問わんとするところはこれが日本国民に対して株式というものを民主化するために必要なのかどうかいう点をお聴きしたい。
  58. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 松村委員お尋ね、全く御尤もと拜承いたしました。で確かに一昨年或いは昨年あたりから一般の人々が非常にこの株式に興味を持ちまして、しきりとこの株式に対して投資をした。そのために株式は或る程度分散化いたしまして民主化されたということは事実であろうと思います。でまあ証券業界の人々のこのまあ噂は、と申しまするか説明によりますると、この分散された株式も実は真実な意味における株式投資、言い換えれば事業に対して一般国民が投資いたしたのではなくて、実はこの株の景気というものを狙つて單に一つの儲けの手段として、言い換えれば利鞘と稼ぐ意味において投機的に株を買つた。従つて遠からん将来必ず売れるという見通しの下にこの株を買つた。併しながら昨年末或いは本年に入りまして株が思うように売れない。そのために遂に資金に因つてどんどん株を売つている。それが尚更株の暴落或は下落をさせた状態になつている。従つて現在において株式民主化ということは本当にこの事業に対して国民が共同の利益を以てその一端を分担するという堅実なる投資でないので、誠に危なつかしい投資であるということを説明したのを聞いたことがございますが、或いはそういう面もまあ非常に多いのではないかと思いますが、折角政府或いは国会がいろいろな民主化の立法をいたしましても、国民がその方面において十分に理解いたしませんで、どこまでも目先の利鞘だけで行動いたしましたならば、本当の産業の民主化ということは望み得ないのではないかと思います。でこの株式の分散化、民主化につきまして無額面株というものはむしろ弊害になるのではないかというお尋ねでございまするが、これは結局その理解と申しますか、或いは感じの問題と申しますか、私は大体今の国民はその株式の題面というものによつて余り問題を考えませんで、やはり市場相場というふうなもの、或いはそれに対する配当をいうふうなことを非常に重く見まして、株を取得し或いは売拂つておるのではないかと思います。額面というものは今お話のようにただ額面の総額が資本になるという意味において或る一つ意味を持つかと思いまするが、この改正法案におきましては、株式のこの額面額と資本金との間に必ずしも関連を置かないという制度を認めておるわけでございます。即ち取締役会決議によりまして、資本準備金、或いは利益準備金から、言い換えれば法定準備金から資本への組入れということを認めておりまするので、仮に額面株のみを発行いたしておりましても、額面株の相場が必ずしも資本にはならないという建前をとつておるのでございます。又償還株式というものも採用いたしておりまして、これは先程松井委員お尋ねにもございましたが果してどの程度国民がこれを活用いたしまするか疑問と思いまするが、若し償還株式と発行いたしまして、これが利益によつて逐次償還されて参りますると、たとえ額面株のみを発行いたしておりまする会社におきましても、額面株の総額は必ずしも資本と合致しないという結果になりまするので、仮りに無額面株を認めませんで現行法通り全部額面株といたしましても、額面株というものと資本との間に従来程の関連がないことになりますので、そういうことになるならば、むしろアメリカにおいて相当活用されておる、殊に一九三〇年前後におきましては、普通株の殆んど九〇%或いは一〇〇%近いものが無額面株であつたというふうな実情を考えますると、案外活用されるのではないか、それならば無額面株という制度も認めておいてよかろう、無額面株制度を採用するか使用しないかは、これは全く会社の自由がございまして、法律は何ら強制いたしておりませんが故に、国民感情から見てこれは何となく縁遠い不安な感じを與える株であるということであれば会社は無額面株を発行いたさないで済むわけでございまするから、その間の取捨選択裁量というものは賢明なる発起人或いは理事者の判断に任せてよいのではないか、折角アメリカで非常な発達を示し、好評を拍しておる無額面株制度をこの際特に排斥する理由はない、かように考えて法案の中に採用したわけでございます。併しこれが如何様に運用されるか、国民感情に縁遠いものとして活用されないか、或いは活用されないことが望ましいかどうか、そういうことは全く国民の判断によるところでございまして、我々といたしましては、その便宜も提供するという意味におきまして無額面株制度を採いたしたならばということでございます。
  59. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 別に法律は強制しておるのではありませんから、できるだけ新らしいことをいろいろ研究してやつて、国民の選択を求めるということも私これは一つの立法だと思います。併し法律改正ということになると、こういう弊害があるからここを改めるというのが改正の目的じやないかと私は思う。別に弊害がないけれども、これも置いておいた方が……、こういう目的があるのだということがあれば結構だと思います。それで私は伺つておるんです。積極的目的はどこにあるか。
  60. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) これは明瞭は材料或いは資料があつて言うわけでございませんで、私の憶測を伴いまするので如何かと考えまするが、私が承つておりまするところでは、無論現行法は額面割引発行というものは厳禁いたしておりまするし、扱いその他につきましても厳罰を以てこれを禁止いたしておるわけでございまするが、承わるところによりますると、相当の会社におきましても事実なかなか額面通りの発行が困難で、或いは手数料名義とか、或いはいろいろな便法によつて多少脱法をされておる向きがあるやに承つております。アメリカにおきましても、確か一九一二年にニユーヨークの州法で採用いたしたのが最初かと思いますが、アメリカでもやはり額面を割る発行というものを脱法的にいたしておりましたようで、経済の必要の前には法律を以てこれを制御することはやはり困難である。むしろ経済の必要を正面から取入れた方が賢明であるということで無額面株を採用したように承つておりますが、仮にこの私の憶測しておりまするように、会社資金の必要上株を発行しなければならぬ、ところが市場なり、いろいろな状況からどうも額面通りの発行が困難な場合に、何らかの操作によつて額面以下の発行をするそういう経済上の必要に迫られて脱法的に行なつているという憶測が仮に真実といたしまするならば、その場合には無額面株式というものは十分必要に応じ得る働きをいたすわけでありますが、採用いたしても差支ないのではないかと考える次第でございます。
  61. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 それは額面の発行に対して割引が違法であるからという理論から来ておるのですが、その実際に適して御工夫はないのですか。という意味は何か割引をやる御工夫があればそれで済むと思うのです。日本日本的の民度に合つた程度の考えができないものかどうか。更にこういうことをお書きになるのは一向差支ない、無額面というものを今いろいろここに羅列して、美しいものを並べて、別に強制しないのだからいいものを取つたらよかろう、そういう立法もいいでしよう。併し日本の実際から生れておる方面の改善もやりながら、そういうものも立法を試みるというような御研究はなかつたものでありましようか。例えば割引ということが悪ければそれは発行の費用という形もできましよう。それからそれを一種のプレミアム附きというような工合にして額面を低くする方法もあるだろうと思う。現在の制度についての工夫を幾らもやつたけれども、これではいかないというところの立法であるのかどうかとそこは一足跳びに、割引は禁じておる。それでは許したらいいではないかという議論も出て来る。許すことをやめて新らしい方へ飛んで行くということよりも、或いは何らかの方法で現在の実際に困つているところを直すというような方の研究はどういう程度にされたのであるかどうか。今の実際において銀行で拂込というものの証明をして、そうしてこれだけの資本は確実に取つたのだというようなことをやらせて見ても、事実行われてないということは御承知の通りです。いろいろ改善に工夫はしておるけれども、実際こういうところで行われない。そうすればこの点を直したら皆な喜ぶだろうというような、日本的の方面の御考慮は余りされてないように考えるのでありますが、そういう点はどうであつたのですか。現行法の方のここをこう変えればいい。けれどもこれよりもこれがいいというような、こういう工合な経路を選んでここへ進んだものであるか、一足跳びにこつちへ飛んでしまつたものであるか、その点についての経過を一つ伺いたい。
  62. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 額面株式の発行制限というものが、事実上会社資金調達の上に多少の不便を與えておる。言い換れば割引発行というものの途を開くということが、無額面株式を認めた一つの確かに事由となるわけでございます。で、松村委員の仰せのように、或いは拂込んだ金を設立の費用として償還するとか、或いは特定の場合に特に割引発行を認めるというような手当をいたすことも一つ方法かと思いまするが、割引発行を特に認めるといたしますれば、そういう一旦拂込んだ金額を拂戻すというようなことは、これは資本充実の上から言いましてもむしろ不得策でございまして、やはり割引された金額でこれは発行するということを正面から認めて行く方が賢明かと考えます。で、参考になりまするのはイギリスの立法でございまして、イギリスの会社法ではたしか割引発行を認めておるのでございます。その認め方はちよつと今明確に覚えておりませんが、期間的にも制限もありましたし、発行の株数なり株金額にも限定があつたかと思いまするが、要するにその必要があるかどうか、割引発行がその場合公正であるかどうかということの保証のために、特に裁判所の許可を得た場合に限つてこの割引発行を認めるという制度であつたように記憶いたしております。会社理事者が独断でやりますので、株主総会とか、或いは裁判所の許可ということを條件にいたしまして、割引発行することも確かに一つ方法かと考えます。併しこれは、えて理事者責任というものがこの国家機関の方に転嫁されることになりまして、むしろそういう国家機関の介入によつて発行の公正を保証するというふうな間接的な取扱いにいたしますよりも、むしろ全面的に理事者の全責任において割引発行を認める、併しそれに対しては理事者は全面的に責任を負うという立て方の方が適当であろうというふうに考えます。一見、如何にも急激な変更を與えるような印象と松村委員にお與えいたしたかと思いますが、むしろ裁判所の許可にかけるとかというふうなことにいたしますよりも、完全に理事者責任といたしまして、ただ理事者がその発行について従事すべき必要なる規定商法中設けて、その規定理事者が嚴に守つている。違反に対しては十分理事者責任を負わせるという形において必要に応じては額面の割引発行を認めるという制度を作つた方がむしろ合理的だろうと、かように考えておるわけでございます。
  63. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 前のように四分の一拂込制度を止めて、全額拂込制度にした場合に、当然授権資本というものを考え付かなければならん筈だと思うのですが、それはどういうわけだつたのでありましようか。元来四分の一拂込というのはやはり金額を一応金額として認めておいて、第一次は四分の一拂込、こういうことを考えて見ると、授権の中の四分の一を全額拂込をするという思想でよかつたと私は思うのですが、その当時はそういうことは考えなかつたのですか。
  64. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 株金の分割拂を禁止するこの法案国会提案いたしましたときに、私共といたしましては、授権資本制度は勿論考えたわけでございます。それで分割拂を禁止いたしまするこの法案を作る際に各方面に紹介いたしましたところ、先程申しましたように、官界なり或いは実業界からも、無額面授権資本制度を採用することを希望しつつ、分割拂の制度廃止することに賛成されておつたのでございまするから、もう私共といたしましては、あの法案を作ります際に、遠からざる将来に授権資本制度というものを採用いたしたいと考えて、あの法案提案いたした次第でございます。
  65. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 そういうわけでありますから、今の授権資本という思想は、やはりこれは改良の方向に行つておるわけであります。前に行過ぎた、或る意味において行過ぎたと私は思います。四分の一の拂込という制度はそういう思想でできておる。ただ初めから株主に全体を括りつけるところは良くないというわけで、あとからいろいろ追徴いたしますから拂込の際にいろいろの弊害が起つたりすることがこの戰後のいろいろなときに直ぐ表面に現われて来て困つたということがあります。それで懲りてしまつたということに、私は余り急速にその問題を解決し過ぎたのじやないかと私は思う。そういうふうな意味において授権に進むというところは、私は必然来るべき道行なんでありますから、そんなような道行によつた改正と、新らしく加える改正との区別がある筈と思う。立法の際において、どういうところがこの従来の立法を辿つての改善であつて、どの点が新らしいものであるということを少し区別して御説明願いたいのであります。
  66. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 只今の松村委員の御指摘は一々御尤もでございまして、全く私共その通りに考えまして、この法律案を起案いたした次第でございます。無額面株金の分割拂制度廃止いたしましたことは、只今指摘のように、当然授権資本制度に発展するものを含んでおつたということが言われるのでございまして、これは松村委員の十分御了承の点と思います。授権資本制度を採用いたしますると、会社理事者に非常に強大な権限現行法で申しますると、株主総会の持つておるところの資本増加の決定権というものも取締役会に與えることになるわけでございます。そこで、先だつても簡單に御説明申上げました際に触れましたように、会社理事者のあり方というものをこの際併せて考えなければならない。授権資本制度を採用するからには会社理事者取締役のあり方というものを検討しなければならないということに到達いたしましたので、取締役会という制度を引続いて考えたわけでございます。それから取締役会というものを考えますると、この構成員であるところの取締役の選任、それから解任という点についても検討を加えなければならないというふうになりまして、その一連規定を設けるわけでございます。この前も申上げましたように、結局企業運営を支配いたしまするものは、企業の経営者であるところの理事者取締役の如何という問題と、それから資金の調達方法如何というものにかかつておると考えるのでありまするが、取締役会というものに企業経営上の全権を與える。少くともこの会社の業務の執行に関しては取締役会に十分の手腕を揮わせる、権限を與えることが企業の発展に好ましいのじやないか。現行法におきまするように、会社における最高の機関は株主総会であつて株主総会法律に違反しない限り如何なることでも取締役会に対して支配できる、指揮監督できるということは、理念的には一応考えられましても、企業の方の現実の動き、殊に企業の経営は高度に技術化されましたところから考えますると、結局無理なわけである。むしろ株主総会会社の根本の組織、その構造に関しては大きな発言権がある。例えば定款を変更するとか、会社を合併するとか或いは解散をするとか、或いは合併に等しいような営業の譲渡、或いは営業の譲受け、そういうふうなことを決定するにはこれは株主総会が極めて適当の機関であるけれども、業務全般に関する広範なる支配権をいうものはむしろ不適当であろうというふうに考えますると、取締役会株主総会との調和或いは株主総会権限の縮小というものをこの際考えなければならない。株主総会権限を縮小いたしまして、取締役会権限強化するということになりますると、その強化されている取締役会というものが、一々全部業務の執行に現実に当るということはどうも不可能でありまして、やはりその取締役会から取締役の中で業務執行に適任者である人を選び出しまして、これを代表取締役として会社の常務を執行せしめて、同時に会社を代表する機関たらしめる。言い換えれば業務執行における決定権と、これを執行して行く機関とを分けて行く。併しその業務執行の権限はもとより取締役会にあるわけですが、現実の問題として執行して行く機関と、業務執行を決定する機関とを分けるということにいたしますると、その業務執行を決定する機関をして現実の代表取締役の行なう業務執行を監督するということにいたすのが合理的ではないかそうしますると、現在ありまするような監督役というものの存在をもう少し検討して見なければならない。現行法で監督役は業務監査と同時に会計監査をやるとか、業務監督権を持つておるわけですが、業務監督が余りに強くなると、ドイツにおける監査役のように執行権の上にあつて執行部を支配するような形になる。ところが現実の業務を離れて、ただ第三者的な地位にいる監査役が業務執行を監査するということは、それ自体として多少無理があるのではないか。若しもその監査役がドイツ等におけるように余りに強い業務の支配権を持つということになれば、それは監査役じやないので、業務執行の責任者ということになるわけですから、これも行き過ぎである。ところが日本の例によくありまするように、取締役の決定というものには大体無條件に従いまして、ただ会計の面だけで監査をして行くような監査役ということにすると、これも又実は法律が認めておる監査役の機能から見ると非常に後退したものになる。いずれにいたしましても業務の執行を離れた別の機関をして監査をするということに少くとも企業の上には無理があるのではないか。むしろ監査役というものをこの際は考え変えまして、会計監査だけを行わせるというふうにした方が合理的ではないかというふうに考えまして、監査役を廃止して会計監査役を訪けるということを考えたわけであります。そういたしますると、結局業務執行権というものは、監査役の会計監査があるのみでありまして、証券取引法による国家的な監督は別といたしまして、会社の内部機関による監督というものが非常に乏しくなるのではないか、幾ら株主総会において株主の信任によつて取締役の地位についたとしても、人は間違いがないということは保し難いので、その場合に誰も会社の内部機構としてこれを直接に監査する機能のないのは不十分と言わなければなりませんので、やはりこの監査機能としては株主にある程度の権限を與えることが合理的ではないか。少くとも会社の機構を民主化するという線から申しますると、多数の決定には無條件に服従しなければならないという制定には多少行過ぎがありますので、少数意見であつても或いは少数者の考えであつても、それが非常な意味を持つことがあり得るわけでありますから、たとえ少数株主と雖も会社に対して適切有数な監督を行わせるということを認めることは、むしろ合理的ではないかというふうに考えまして、少数株主権或いは個々株主に対して相当重要な会社業務の執行に対する監督権を附與することを考えたわけでございます。  その中の最も重要なものは、後程細かく御説明申上げる機会があると思いますが、取締役が法令、定款に違反する行為をなして会社に重大なる損害を及ぼすような虞れのある場合には、そして業務執行を差し止めるといういわゆるインジヤンクシヨンを認めて行く、取締役が法令、定款違反の行為をして会社に損害を與えておるというな場合には、取締役に対して責任を追及する訴えを認めるというのも一つの監督権の現れであると思いますが、そういう権利を認める。その他にも二、三ございますが、主な監査機能はそういう点ではないかと思います。  出発は授権資本制度の採用でありますがそれから只今申上げましたように一連の関連あるもののみを採り上げまして、今度の改正案を考えたわけであります。
  67. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は実際から、今日まで株式会社法を行なつて来た上から、日本の現状ではこんな点、こんな点がどうもよく行つていないからということの列挙が実は承わりたいのです。それは今お話になりました中の監査役制度のごときものは、日本では実際行われていないのです。それであれば監査役は止めるのだというようなことで御説明になれば、理解が私は行くと思う。併しながら余りにそういうことを離れて理想的な面から議論されますというと、株主というものの地位をどういうように見るか、日本株主はどういうことを考えておるかというようなことからやはり立法を考えなければならんのじやないかと思う。日本株主は大体事業の中に余り関心を持つていないのじやないかと私は思う。利益配当を考え、株の値段の上ることは考えますけれども、それは事業がよくならなければ株の値段は上らない、だから経営の立派なものを選ぶことについての関心は勿論持つておりますけれども、事業そのものの内容については、いろいろ説明を聞いてどういう事業が有望であるかというようなことまで、実はそれまで考えなけれがならんと思いますが、日本株主の状態はそこまで行つていないと思う。そうすれば利益配当を確実にするような方向に持つて行けば、株主要望に応ずるのじやないかというようなことは私は考えます。そうすると経理面で非常に大事です。事業経営ということは、勿論必要でありますけれども、そんなようなことからこういうような制度に持つてつたのだというような御説明だとか、只今少数株主の議論がありましたけれども、実際民主主義的に行けば、少数というものはそう重きを置く必要はない。今度は累積投票のことを考えましても、むしろそんなことがあるから余計なここにトリツクが行なわれるのじやないか。少数に累積すれば多数にも累積することになりますから、そろばんから行けば私は同じことであると思う。十人の株主があつて五人の取締役を選ぶ場合に、少数に二という人は一人しか選べないというような関係があつた場合に、それを倍にすれば選ばれるだろうと言つても、大きい方も倍になるのでありますから、両方とも結局同じことになるのじやないかと私は思う。そんなことは本当に民主主義制度に合つておるかどうかということは私は実は疑つておる。そんなような点において、実際の必要上そういう累積というようなことが要望されておるのかどうか日本株主の中に。それはただこの方が便利だからと言つてお書きになつたのであるか、それとも先程お話のごとく、それは随意なんだから、そのいうことをやろうがやるまいが強制をしておるのじやないから、こういうものがあつたらよかろうというので書いたのであるというような意味なんですか。そういうような点を少し御説明願いたいと思います。
  68. 岡咲恕一

    政府委員岡咲恕一君) 只今私のいたしました説明が多少観念的な説明で、松村委員お尋ねの点に十分触れなかつたのは、非常に申訳ないと存じます。  平たく申しますると、会社の経営におきましては、何と申しましても会社企業の所有と経営の分離ということをよく申しますが、経営の責任者であるところの取締役権限強化して、そうしてこれに十分の責任を與え、十分の手腕を振う機会を與えるようにすることがやはり必要なんではないか、それが又議論だけの問題でございませんで、現実を見ましても全く会社がよく行つておるかどうかということが、経営の衝に当つておる取締役に人を得ておるかどうか、全く適者がその地位におるかどうかという点にかかつておると思います。現在多くの会社は勿論株主要望を担つておる人が取締役の地位に就いておると思いますが、私共の耳にいたします範囲でも、少くとも戰争前におきましては、大株主の御意向さえうまく拜承しておけば取締役に簡單になれる、言い換えますれば、そこに実際に少数の有力な識見のある株主がおつてもこれは無視され、大株主の御意向さえ拜承して、意さえ迎えておけばまず大体安泰だと、自分はこういうふうにしたいと思つても、若しもそれが大株主の御意向に副わない場合には遺憾ながら自分の意見というものは曲げなければならん、然らずんば取締役の地位を去らなければならない、こういうようなことも聞いたのであります。成る程取締役の地位に就くのは株主の推輓によるわけであるけれども、苟しくもその地位に就いた以上はその人に良識に従つて、良心に従つて誠実を以て職務を遂行して行くという体制を法律的に強くすることが私はやはり現状から見ても必要ではないか、況んや現在におきましては、昔のような大株主というものは段々大会社においてはなくなりまして、株式が分散されました以上、成るべく大多数の株主の輿望を担つた人が取締役になる、その面から見ますると、累積投票という制度アメリカでは随分活用されておるようですから、これはとにかく採用することも取締役会強化することに役立つというふうに考えまして採用いたしたわけでございます。株主総会というものがありましても、これがえて空位、例えば重大な合併決議におきましても、国会におけるように愼重審議して、株主意見を十分に戰わせてその結論によつてやるというのでなくて、理事者の決定した原案を出すというと、五分か十五分の総会でこの重要なことがさつと決つてしまうというようなことに承つております。そうなると、株式総会というようなものをあれ程強大な機関にして置くことが、まあ実情法制との間が遊離しておるということが言えるのではないかというふうに考えまして、やはり株主総会というものを本来あるべきものに改めるということを考えることが実情に副うゆえんであるというふうに考えたわけでございます。又監査役につきましては、只今松村委員の仰せの通りでございまして、私もどうも日本においては監査役というものは非常に微弱で、むしろこれを止めて、全く経理の面だけにおける責任ある機関を置く方がいいというふうに考えたわけでございます。それから株主権利の問題ですが、これは必ずしも私はすべての面においてこれは活用されて、株主はこういう権利が認められることを要望しておるということはちよつと言いかねるのじやないか、折角法律を置きましても、案外眠つておるようなことになるのではないかということを多少憂えておりますが、一応株主総会なり監査役、取締役の業務執行に対する監査権というものを圧縮した以上は、やはり会社の内部機構においてこれを監査する、監督する適当な権限株主に認めることは何といつても合理的であるというふうに考えた次第でございます。仰せのように株主の多くはいわゆる不在株主でございまして、ただ株価が上るかどうか、或いは今期の配当が如何ように決定されるかというようなことのみに関心がありまして、会社の今営業年度における事業計画は如何ようにあるか、その計画に対して理事者は如何なる覚悟と用意を持つておるかということについて、まじめに知りたいという欲望と持つておる株主は極めて少いだろうということは仰せの通りであると思います。併しながら中には、稀ではございますけれども、ときにそういう株主がないでもない、而もその株主の誠実な意図というものが会社理事者に対して非常な強い、有力なアドバイスであるということも或る意味ではあろうかと考えますので、一応株主の監督権を法制の上に認めるということも、そう空中楼閣に終るということはないだろう、むしろ全体の規定の権衝から申しますと、株主権限強化するということが当然ではないか、かように考えたわけでございます。
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本日はこの程度にいたしまして、明日午後一時から質疑を継続いたします。本日はこれを以て閉会いたします。    午後三時四十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            齋  武雄君            深川タマヱ君            松井 道夫君            松村眞一郎君   政府委員    法務政務次官    検     事 牧野 寛索君    (法制意見總務    室第一局長)  岡咲 恕一君    検     事    (法制意見總務    室第四局長)  野木 新一君