○
委員長(
山本勇造君) それではこの
文化財保護法案が可決されたにつきまして、この際私として一言申述べたいと思うのでございます。この
法案が
立案されましたのは、
只今の
提案の
理由の中にありましたように第五
国会の初めからでございまして、一年有余の歳月がかか
つております。その間
委員会或いは打
合曾等は五十五回や
つておりまするし、非公式の會合は数え盡せない程や
つております。又この
法案は十回に及ぶ
草案の
改訂をいたしておるのでありまして、この
法案作成までにはなみなみならぬ苦労を重ねておる次第であります。併しながら
発議者各位のたゆまない
努力と、
眞劍な
熱意によりまして、今日見を結ぶようになりましたことは誠に感慨に堪えないものがございます。
一体議員が
立法するということは非常に困難なのでありまして、その困難を我々は
目の当り味わ
つて来たわけであります。併しながら
憲法には、
国会は「国の唯一の
立法機関である。」と明示されております。そういう上からしますと、
国会は
立法に最も力を盡さなければならん所と思うのでありますが、現実においては、
議会から出る
法案よりも、
政府提出の
法案が多いのであります。勿論
政府に
提出権があるのでありますし、又それを
審議して行くことも、この
国会の任務ではありまするけれども、一面において
議員立法が盛んになることは非常に望ましいと思うのであります。その中にありまして、この
文部委員会といたしましては、前々からその点に力を注いでおります。今回はこの百三十一條にも及ぶ大きな
法案、而もこういうものは
世界に類例が殆んどない
法案、そういうものを
議員みずからの手によ
つて作り上げたということは、この
国会のあり方を示す上において少なからぬ
意味を私は持
つておるものだと思います。
国会は
議員立法が肝心であると考えても私は言い過ぎでないと思うくらいなのでありまするが、そういう上から、この
法案ができ上りますことは、
皆様と共に御同慶に堪えないのであります。
ただ
一つ私残念に思いますることは、この
法案の
発議者の中に
田中君の名前がないことであります。勿論
事情正むを得ないことではありまするけれども、前
委員長であつた
田中君は、この
法案に対しては非常に
努力をされてお
つたのでありまして、恐らく
田中君も、今日この
委員会でこれが可決されたということを聞きましたならば、非難に喜んで呉れるだろうと私は思うのであります。前
文部委員長、現
最高裁判所長官である
田中君に対しまして、私は
感謝の言葉を述べたいと思うのであります。
又この
文化財のことにつきましては、
衆議院におかれましても、非常にこれに御
熱意を持たれ研究をされまして、
一つの
法案をお作りになりました。それにも拘わらずその
法案を全部我々の方に御提供になり、更に又この
法案の
国会へ
提出する権利と申しますか、そういうふななものも
参議院の方にお護りにな
つております。私は
衆議院の
文部委員会の、この雅量ある態度に対しまして敬意を表すると共に、深く
感謝いたすものでございます。
又、今
河野委員から述べられましたように、これの
作成に当りましては、
專門員室並びに
法制局において非常に実際的な働きをや
つて頂きました点も私からも深くお礼を申すものであります。併しこういう大きい
法案を出すということは、
專門員室或いは
法制局の
意義と実力とを本当に発揮するところものでありまして、
立法府であるこの中に入
つております我々
議員としては、今後の
法制局專門員室に大いに働いて貰いたいことを期待するものでございます。
それから
非課税の問題にも觸れておりましたから、重ねては申しませんが、我々の初め考えてお
つたように進んで行かなかつたことは誠に残念に存じまするが、併し我々としてはできるだけのことをいたしたのであります。そうして
大蔵委員会或いは
地方行政委員会にも働きかけ、そうして両
委員會共我々に非常な理解と同情を以
つて協力して呉れたのであります。この点につきまして両
委員会の
委員長並びに
委員諸君に対しましても、私は深く
感謝をしたいと思うのでありあます。
最後に十回にも及ぶ程これは
改訂をやつたということは、今日の国情といたしして、さまざまの点でそういうことにな
つているのでありますが、これは
関係方面とのことだけでなくて、
衆議院であるとか、或いは
文部省であるとか、
博物館であるとか、或いは
国宝寺の
所有者であるとか、或いはこの方に対する有
識経驗者或いは
地方団体、
宗教団体と、さまざまのものの
意見を徴しまして、そうして聞けるだけのことは聞き、又この中に取入れられるだけのことを取入れてや
つたのでありまして、そういう
意味から申しますると、この
法案は最も民意を代表したところの
一つの
立法だと思うのであります。決してこれが十分であり、満足すべき
法案だとは思
つておりませんけれども、併し
議会内で
立法するといたしまして、我々は我々としてできるだけのことを盡したのだということは言えると思うのであります。この
法案は今のようなあれにおきまして、
文化の
保存と、それから向上との上で
意義の深い、そうして又有力なる
法案だと信ずるのであります。それだけに
文部当局におかれましても、この
法案が
両院を通過し、そうしてこの
法案の中にありまするところの
文化財保護委員会が
出発するに当りましては、さまざまな御
答弁がありましたけれども、こういう新らしい
出発をして行くに当りましては、今年の
予算だけではなかなか十分なることはできないと思うのであります。勿論今日は
予算の上で非常に困難でありまするから、
文部当局の苦衷は我々もよく存じているのでありますが、この
委員会が
出発してちやんとや
つて行くためには、
是非共一つ省内の者もやりくりだけでなしに、
予備金の方からも出して頂いて、十分にこれが活躍でき、そうしてこの
法案の
目的であるところの
文化財の
保護の実が上るように御
努力願いたいのでございます。
それではこれから
標準教育費の問題について御
質問等もあるようでありますが、一応
委員会を閉じまして
懇談会に移して御
質問を願うことにいたします。それでは
委員会の方はこれで散会いたします。
午後二時二分散会
出席者は左の
通り。
委員長 山本 勇造君
理事
岩本 月洲君
木内キヤウ君
委員
河崎 ナツ君
河野 正夫君
岡崎 真一君
大隈 信幸君
梅原 眞隆君
來馬
琢道君
西田 天香君
堀越 儀郎君
鈴木 憲一君
政府委員
文部政務次官 平島 良一君
文部事務官
(
社会教育局
長)
西崎 惠君