○
説明員(
稻葉泰三君) 私
総合研究所の
稻葉でございます。
ちよつと御了解願
つて置きたいと思いますが、私の方の
研究所は
下部組織を持ちませんので、
資料を直接
調査するということができませんので、大体
資料は
農林省、その他の官庁、或いは
民間団体ででき上
つたものを分折総合するというような
研究になりますので、どうしても長期的な保存的な
研究に陷り易いのであります。
資料といたしましては、大体皆さん御承知のものばかりでございますから、特に
資料を作
つて参りませんけれども、その点御了承願いたいと思います。
私がこの
單作地帶の
研究を今や
つておる方法から申上げますと、
單作地帶がなぜ問題に
なつたかと申しますと、
統制経済ということが大きな
原因じやないかと考えておるのであります。で、
統制経済の下において、
單作農業というものがどういう
影響を受けたか。これを確かめることが
対策を立てる一番大きな問題ではないかと考えて、この
方面から
研究して見たのであります。
單作農業といいましても、
自由経済においては勿論成立したのでありますから、これが問題となるとすればやはり
統制経済が
影響をしておるのだということが先ず考えられるのであります。
單作経済の歴史を考えますと、第一次
大戰当時山形の
庄内地方でやはり問題にな
つたのでありまして、当時
養蚕が非常に景気が好か
つたのですが、
庄内の
農家は非常に
單作で苦しいということを
言つたのであります。然るにその後間もなく
米価が非常に暴騰しましたので、その問題はそのまま解消したのでありますが、こういう状態で
自由経済の下においては
單作農業は成立してお
つたのであります。そういう
関係から見まして
單作地帶に先ず
影響を及ぼすものとして考えるものは、
供出とその
価格、それから
必需物資の
配給の量と、その
価格が問題となるのではないかと思います。これは
單作地帶というものは
農家の技術的な
特殊性とどういう
関係にあるかということを、
研究して見たいと
思つてこれまでや
つて来たのであります。第一に
單作地帶というものは一体あるのかないのか。これが先ず第一に問題になるのではないかと思います。
地帶としましては確かにあるのでありますが、我が国の
農業経営というものは、いわゆる散
地経営と称しまして、外国のような
方式の農場というものはないのであります。その
関係で、
畑作の
農家も
水田地帶に
行つて耕作をしますし、
水田地帶の
農家も又
畑作の
地帶へ
行つて耕作をしている。而もこれは最近リヤカーができましたので、非常に
相当広範囲に
亘つて出作、
入作の
関係に
なつておる。こんな
関係で、
單作地帶を決めるということはなかなか困難な問題じやないか。
対策を立てる場合にどうしてもこの点を決めなければならんのじやないかと思います。なかなかむずかしい問題があるということで、先ず第一にこの点へ手をつけて見ました。それで
日本のこの
水田の利用の
状況を見ますというと、
一毛作田というのが非常に多いんであります。東北、北海道は一〇〇%大体
一毛作田で、
單作地帶というのはこの辺であるというのが分るだろうと思います。併し
関東地帶も七〇%乃至八〇%、千葉のごときは九〇%以上もある。それから
裏日本は非常に多いのでありまして、大体七〇%がら九〇%くらいあるのです。新潟は特に多く大体一〇〇%に近い。冨山は少し少なくなりまして四五%、こういうのを
全国的に平均して見ますというと、六六%というものは
單作地帶に
なつておるのであります。
單作の
水田なんであります。三〇%以下の県というものは九州とか、四国に極く僅かあるに過ぎないのでありまして、こういう
方面から見ますというと、
單作地帶というものは非常に大きな地域に亘
つておるということが一応考えられるのであります。
然らばこの
農家の
状況はどうかと言いますというと、この
調査は余り正確なものはないのでございますが、
米單作の
農家というものは極く僅かでありまして、
全国で約十七万戸
程度なのであります。だからして、
單作地帶の問題になるものは決してこれだけの
農家じやないので、もつと大きな数に上るのじやないかという疑問が先ず起るのでありますが、そこで
單作の問題が、
供出とか
税金という
方面に仮にあるとしますれば、先ず
供出の
対象になる
農家が問題じやないかということで、この五反以上の
米作農家を見ますというと、約二百二十四万六千戸くらいになるのであります。
米作をしている
農家は全
農家の約八四・五%に
当りまして、この中の
相当部分のものが米を
供出しておる、こういう
工合に見られるのであります。そこでこの
供出している
農家が米に依存している
程度はどうかという
方面から見ますというと、
ちよつと先の
説明と年度は違いますが、二十二年度、先程の
数字は二十一年の
数字でございます。二十二年の八月一日現在で見ますというと、
農業現金收入で四割以上の
米作收入を占める
農家というものは約二百万四千戸、
農家全体の三四・八%約、三五%
農家というものが大体米の
收入に依存しているということになるのでありますが、こういう点から考えて見ますというと、この
單作地帶という問題は非常にむずかしいのでありまして、或る一
地帶に限
つた問題じやなくて、
相当大きな
全国に亘
つた問題じやないかというように考えおのであります。この問題はこれ以上の
資料がないので、更に
突込んで今のところ
研究できないでおりますが、然らばこの
單作問題の
原因というものは、果して何であろうかということを、次に考えて見ますというと、これも余りいい
資料がないのでありますけれども、幸い
農地局から出ました
耕作放棄の
調査があるのであります。
耕作放棄ということはこれは
農家にと
つては、
最後の手段でありまして、いろいろな
原因から来るのでありますから、この
資料が一番
原因を調べるにはいいのじやないかと思いまして、一応この
資料に当
つて見ました。この
数字を少し申上げて見ますというと、この
調査では
耕作放棄というものを
二つの
方面から
研究しております。
一つは
放棄されて
荒廃した
面積、それから
一つは、これは
放棄と
言つていいかどうか分りませんが、一応或る
農家が
放棄して或る
農家がそれを継承した、つまり單なる
耕地の
移動であります。この
二つの
方面から
調査しております。これは
資料としましては非常に不備なものでありまして、各県に紹介して調べたものでありますが、各県のこの問題に対する関心の
程度と言いますか、その点必ずしも統一が取れておりませんので、必ずしもこの
数字を以て
全国にこの
耕作放棄の分布している
状況というものは分りませんですけれども、大体この
原因というものはこれで分るのじやないかと思うのであります。で
ちよつと
数字を申上げて見ますというと、
放棄されて
荒廃した、土地を
放棄した
農家の
戸数、これが大体八千五百五十五戸ばかりに
なつております。勿論この
荒廃の
面積には
災害による
放棄は除いて見ました。この八千五百余の
農家の
放棄した
原因を見ますというと、
供出が一三%
税金が高いというものが四%で、
両者のどちらとも
区別がつかない、とにかく
供出と租税の両方からであるというものが三五%になるのであります。それ以外の、その他という
原因に
なつている……、この
内容がよく分りませんが、それが大体四八%というのが、この
数字に出ているのでございます。
その次に單なる
耕地の
移動、つまり或る
農家が
放棄しまして、或る
農家がそれを継承して耕作したというものの
戸数もやはり八千九百五十九戸、大体似たような
数字に
なつております。でこれも
災害による場合を除いてのことでありますが、その
原因を見ますというと、やはり
供出が一番多くありまして、一六%は
供出がきついという
理由に
なつております。それから
税金の高いというのが四%で、前と同じに
なつております。そうして
両者の
区別のつかない、どつちであるか
区別がつかないが、
両者を
原因とするものが五四%ということに
なつております。そうして
原因の分らないその他というものが二六%ということに
なつております。このその他の
原因が何であるかということを、この
調査では
事例で示しておりますが、その
事例が
山形県の
單作、とは言えませんが、まあ
水田地帶十ヶ村の例を挙げておりますが、それによりますというと、大体
労働の
雇用が問題だというのが多いようであります。それから転業したような者もありますが、大体
労働の
雇用関係から来ているのが多いように考えられます。でこれを
面積から見ますというと、
荒廃した
面積が、
供出を
原因として
放棄されたもので
荒廃したものか、田で百四十五
町歩、
税金で二十
町歩、
両者の
区別のつかない
原因のやつが二百二十五
町歩、総
面積に対して六三%、畑地におきましては
供出が百十七
町歩、
税金が百十九
町歩で、
税金の重いという
理由は田よりもむしろ畑に多く
なつております。そうしてこの
両者併せてどちらか分らないというものが百七十
大町歩、この三者を合計しますというと、全体の六四%がとにかく
供出と
税金の高いということで
放棄され、而もそれが
荒廃に帰したということに
なつております。その他の
原因というものは田が三百三十
町歩、畑が三百五十一
町歩で、畑の方がやや大きくなうております。比率から言いますというと大体
両者とも三六・七%ということに
なつております。
それから單なる
移動として、継承という
名目で
調査されているものを見ますというと、やはり田では
供出が一番多くありまして二百四十九
町歩、
税金では三十
町歩、
両者の
区別のつかないが五百三十四
町歩、この三つを合せますと、全体の約七七%というものが
税金、
供出の
関係になります。畑にありましては
供出が百二十七
町歩、
税金では九十七
町歩、
両者の
区別のつかないものが二百二十一
町歩で、
割合から見ますというと七九%ということに
なつています。その他の
原因によりますものは田が二百四十
町歩、畑が百十九
町歩、
割合から見ますというと田が二三%、畑が二一%、こういう
状況に
なつていますところから見ますというと、畑も田も大体同じである。
供出、
税金の面から見ますと
供出は断然多いが、
税金という点から見ますというと田よりも畑の方が多い、こういうことに
なつております。それではこの
移動から見ますというと、田が断然多くなりまして大体畑の倍になりますが、これは一体田が畑よりも
経済が苦しいのかどうかということになりますというと、
簡單に
結論は下せないじやないかと思います。と言いますのは畑をや
つている者は
食糧関係から非常に田を希望するということ、それから田を專門にや
つている者から言いますと、畑を非常に希望するというような現状にありますので、田と畑の交換が
相当にあるということが
一つ考えられることと、もう
一つは
水田地帶内部において
経営の
大小によ
つて耕作が
移動しておる。こういう
関係から田の方に多く出て来るんじやないかということが考えられるのであります。大体こういうことで
單作地帶の見当をつけまして、それではこの
税金、
供出というものが
單作地帶にどういう
工合に
影響するかという点を
突込んで見たいと
思つているのですが、現在のところ食糧庁にある
資料以外のことは分りませんので、そういう
資料で計算した限りにおいては、どちらが有利か不利かというような
資料は出て来ないのであります。ただその
供出の量から考えますというと、二十二年は
收量が前年に比して
減つたのに拘わらず
供出が非常に多か
つたという点が
一つ考えられます。併しこれはこの
供出量の中には雑穀とか或いは代替の「いも」とかが入
つておりますので、これも必ずしも
水田がきついのかどうかということは、この
数字からの限りでは
結論が出て来ないのであります。この点もなかなかむずかしい問題であります。それから
税金の問題でありますが、
税金も目下のところ余りいい
資料がないのでありまして、私が主として
統計調査部で調べました
関係の
調査によ
つて、少し当
つて見たのでありますが、これによりましても
所得と
税金との
関係だけを見ますというと、必ずしも
水田とか
畑作に不公平があるというような
結論は出来ないのであります。尤もこの
資料というものは非常に不備なものでありまして、
扶養家族の数とかいういろいろな点が欠けておりますので、この
資料から直ちに
結論は下せませんが、ただこのアンケートの下の方に少し下
つて見ますというと、
相当課税の
関係からアンバランスがあるのじやないかという点がありますが、併しそれも
水田地帶と或いは
畑作地帶と、或いは
果樹地帶と分けてはどうかということは、今のところ当
つておりませんので、はつきりした
数字は申上げられません。
その次に
価格が問題になるのでありますが、この
価格の点につきましては非常にむずかしい問題がありますので、まだ私はそこまで入
つておりません。一応
バリテイ方式というものがいろいろ批判されなければならないとしましても、現在與えられたるものとしましてそれを前提としまして、
実態がどう
なつておるかということを
研究して見たのであります。その
理由はなぜかと申しますというと、現在この
農家の
経済の
実態を見ますというと、一方
統制経済で
供出その他のもので押えられているに拘わらず、半面におきましては非常に
闇売も又あるというような
関係で、單に
パリテイ方式、いわゆる
公定価格というものだけを
対象にしましては非常にむずかしい、
実態を掴めない。そこで先ず
差当り農家の
実態から
農家経済の
状況がどうであろうかということから入
つて行きたい。
第二段として
価格の
方面に更に入
つて行きたいという考えで、先ず
農家経済の
実態に入
つて行つたのであります。
農家経済の
実態ということになりますと、
資料は
農林省の
農家経済調査に限られているのでありまして、この点の詳しい
数字は
杉村さんからお話になると思いますが、私はこの
農家経済調査のまだ
確定数字の出ない前の
数字で一応概算を当
つて見たのでありますが、これで見ますと、
農業收入のうち
供出といいますか、
統制を受けている
部面と、自由販売した
部面との
割合がどういう
工合に
なつているかということを先ず当
つて見ました。それによりますと
一毛作田は六九%が
供出で
收入に
なつております。それから
二毛作地帶は五五%、
普通畑作地帶が四九%、
蔬菜地帶三五%、
果樹地帶五一%、これは案外多く
なつているのが意外でありますが、一応こういう
数字が出ております。
養蚕地帶が五四%、それで
支出の方は然らばどうかということを見ますと、
農業関係の
支出におきましては
一毛作田の
農家におきましては二二%、
二毛作の
農家では二四%、
普通畑作農家では二九%、
蔬菜の
農家が一七%、
果樹が一二%、
養蚕が二八%、それから
家計上の方で見ますと、
一毛作で一九%、
二毛作田で一七%、細作が一八%、
蔬菜が
ちよつと計算しておりませんが、大体一七、八%と
なつておると思います。それから
果樹がやはり同様であります。かように
供出とか或いは
配給とかいう
統制を受けている
部面が非常に多いのに、
支出の方では非常に
配給の方が少い。
自由購入の面が多く
なつている。而も
單作地帶といいますか、
一毛作田におきましては
供出の占めている
部分が非常に強いということに
なつておるようであります。然らば
農家の
最後の
余剰はどうであるか。この点を
突込んで見ますと、これは先程も申しましたように私のやりましたのはまだ
決算前のことでありまして、正確な
数字ではありませんけれども、大体において全部黒字に
なつておりますが、ただ
養蚕だけが
赤字という結果になります。非常に大
ざつはな数字で
間違が
相当あると思いますが、これは
決算前の
数字ですから、あとでその点は
杉村さんから訂正して頂くことにしまして、私の計算した範囲内で
数字を申上げますと、
一毛作田四万三千円、
二毛作田一万八千円、
普通畑作二万円
蔬菜が一方三千円、これが非常に少いのはどういうのか、尚
研究して見なければならんと考えておりますが、
果樹が一番多くありまして十八万円、
養蚕が二千円の
赤字ということになります。この
赤字というのは私の計算しましたのは
兼業收入は考えておりません。
農業の
所得で
家計費を賄えるかどうかという見地からや
つて行
つたものであります。従いまして
農家に実際にこれだけの
余剰が残
つているとか、
赤字に
なつているという意味じやありません。この外に
農家には
兼業の
收入があるわけなのです、これで見ますと、ずつと私は
農家経済調査をや
つておりましたが、
農業所得だけで
家計上賄えたということは、
農家経済調査では殆んどなか
つたのでありまして、
昭和十四年に確かこういう結果が出て来ましたが、後は常に
兼業で
家計上を賄
つておるという結果に
なつてお
つたんであります。この最近の結果によりまするというと、こういう
工合に
農業所得でとにかく
家計上が賄われておるということは、これは
一つやはり
インフレの
関係じやないかと考えられます。でこの結果で見ますというと、
單作といいますか、
一毛作田が必ずしも悪い
数字は出て来ておりません。ただここで
ちよつと考えなければならんのは、先程の数
そのものを
余剰とは見られないだろうと思います。と申しますのは、
インフレの進行中でありますから、稻作のような或る一定時期に
資本を投下しまして、それを回收するまでの
期間が
相当長いという場合は、その間の
物価の
値上りがあります。
従つて先に投下した
資本よりも
利益が非常に多くなります。
名目上の
利益が非常に多くなる。それに反しまして
蔬菜のような
作付期間の短いものにつきましては、
物価の
値上りが少く出て来ますから、結果としては
余剰の小さな
数字になるだろうと思います。こういう
工合に
数字そのものは
單作地帶は大きく出て来ますが、それ程
單作地帶はよいという
数字にはならないのであります。この点は
收入と
支出の
種類分別、
物価の
値上りの
状況等、諸種の点からはつきりしたことは申上げられませんが、これをやりますには
相当の日数を要するということでまだ手を付けておりませんが、いずれや
つて見たいと
思つておりますが、併しこれはどこまでできますか自信がないので、非常にむずかしい問題になります。併しこういう結果から見まして
單作地帶はいいとも申せませんが、必ずしも悪いということも申上げられないのではないかと思います。それでは
單作地帶はどこに問題があるかということですが、
一毛作田を
耕作面積の
大小によりましてその
内容を見てみました。それによりますというと、大体私は
農業の、先程計算しました
農業の
所得を
耕作面積で割りまして、反当の
所得と、それから
農業に従事している人数で一人
当りの
所得と、
二つを出して見ました。そうすると一
町歩未満の
農家では約一万一千円の反当
所得になります。それから一
町歩から一町五
反歩になりますと、これもやはり一万一千円になります。大体似たところでありまして、それから一町五
反歩から二
町歩になりますと、少し落ちまして一万円一二町から三町になりますと又落ちまして九千円、それから三町以上になりますと、ぐつと落ちて六千円というような恰好になりますと。どこにこういう欠陥がありますかというと、大体大きい程段々
支出が大きく
なつているというのが大きな
原因であります。その
内容に
至つてはまだ検討しておりませんが、いずれ
統計調査部に
行つて、その
資料を全部借りまして
内容を分析したいと
思つておりますが、今のところ
原因ははつきりしたところは分
つておりません。今度これを一人
当りの
所得から見ますというと、逆に小さい方が少くなります。一町
未満では二万五千円、それから一町から一町五反になると三万五千円、それから一町五反から二町になると四万五千円、それから二町から三町になると下りまして四万三千円、それから三町以上になりますと四万五千円ということになります。これは二町から三町の間で少し
減つたのは、
従業者が非常に多いのでありまして、この
関係じやないかと思います。かように二町を境にしまして反当の、一人
当りの
所得も下
つて来るということは、
一つの
研究問題じやないかと思います。ただここで申上げたいことは、
農林統計を見ましても、大きい
農家が非常に
減つて、小さい
農家が殖えておるという
原因は、この辺にあるのじやないかということが考えられます。先程申上げました
山形県十ヶ村の
耕地の
移動の
状況から見ても、三町以上の
農家がやはり
放棄しておる者が多いのでありまして、それを受けておる、つまり継承して耕作した
農家は一町、二町のところ大体集中しておるというような格好に
なつております。この
原因を考えて見ますと、
單作地帶におきましては従来大きい
農家と、小さい
農家の
二つに分れる
傾向があ
つたのであります。つまり大きい
農家は
雇用労働を入れて
経営する。小さい
農家はそれに
労働を提供するというような
傾向が強く現われてお
つたのであります。それが戰後になりまして
雇用労賃が非常に高く
なつた。それから
現物給與を要求されるという点、それから家畜の飼料が不足したというような点から、大きい
農家が
相当経営が苦しく
なつて来たというのが大きな
原因じやないかと考えられます。
大体私の
研究の現在のところはそんなところでありますが、これにつきまして
結論を
簡單に申上げますというと、こういう
單作地帶の結果がよく出ておるというのはなぜかと申しますというと、結局現在の
早場米奨励金、
超過供出という特殊な政策があるためじやないかと考えております。若しこの
制度がなくなれば、
單作地帶は
相当打撃を受けるのじやないか。
農林省の
調査課の
資料によりましても
山形県の僅かの例ではありますが、はつきりと記憶がありませんが、三
町歩以下の
農家ではこの
超過供出と
早場米の
奨励金がない場合は、すべて
赤字になる。三
町歩以上だけがこの
制度がなくても僅かの
余剰が出て来るという結果が出てお
つたように思います。こういう結果から見ますというと、結局
單作地帶の問題というものは、片方において
供出が強化されるに拘わらず、
購入方面において闇と言いますか、
有田経済に放任されておるという、ここに問題があるのでありまして、これが
早場米奨励金と
超過供出でカバーされておると見て、大体いいのじやないかと私は考えております、
單作地帶の
農業の特に特徴といたしましては、
收入が或る一時期に限
つておる。従いまして金融上の不便があるという点が、
單作地帶としては特に考えなければならん点じやないか。それからもう
一つは
作付転換が不能であるという点であります。これは
畑作地帶になりますというと、
事前割合によりまして自分の
経営を最も合理的に
経営できるように、或る
程度作物の選択が自由なのであります。従いましてここに
自由取引と言いますか、闇取引の余裕も生れて来る。ところが
單作地帶ではこういうことが大体において不可能であるということが
一つの特徴じやないかと思います。以上が大体私の話の
結論であります。で今後私としましては、更に
單作地帶の先程申上げました
経営の階層別の相違が、どこから出来るかという問題それからもう
一つ單作地帶と比較する意味におきまして、
農業一般の、他の
農業の状態をこういう
工合に
一つ階層別に分析して見たい。それからもう
一つは
最後に
価格の問題、これを今後
研究したいと
思つておりますが、又いろいろ皆様の御批判を頂きまして、今後の
研究の方法を進めて行きたいと思います。
簡單ですが御報告申上げます。