○
藤野繁雄君 戰後農地放革に次いで、
我が国農村民主化の基幹として確立せられた
農業協同組合の
組織は、
農業生産力の発展と
農村の経済的、社会的向上を目標とするものとして大きな期待が寄せられたのであります。然るに
農業協同組合法が施行せられてよりすでに二年有半を経た今日、一応外形的には
組織の整備を見たものの、これが内容については尚微力にして所期の目的を達成し得ない
実情にあることは遺憾に堪えない次第であります。而してこの
農協不振の原因としては経済情勢の変動に対処する役職員の
経営能力不足、農民の自覚的
努力の欠除等、
農村側に負わさるべきもののあることはこれを認めるのに吝かではなく、農民自体が更に反省し、
農協の充実に自発的に
努力すべきことはもとより当然のことであります。併しながら不振の最大且つ根本的の原因として、我々は
政府の財政政策、
農業政策の貧困に基く
農業経営及び
農村自体の窮迫、疲弊を指摘せざるを得ないのであります。一九四五年十二月八日附連合軍司令部より発せられた農地放革についての覚書において、「
農業構造を久しきに亘
つて虫ばみ来つた病根の
一つとして、商工業に比し格段に
農業に不利なる
政府の財政政策」と指摘してあるのは、そのまま現
政府の財政政策についても適用することができると思います。即ち
政府の
農業に対する財政投資は極めて乏しく、且つこれを補足すべき
金融措置についても殆んど見るべきものがない
状態であります。例えば全額国庫負担とすべき耕地の災害復旧についても
予算僅少であ
つて、過年度の復旧さえ思うに委せん
実情にあり、一方又
長期資金として、見返
資金も、
農業に対して二十四年度は僅か七千万円しか出されなか
つたのであります。而も一方において、
生産費を償うに足らぬ低価格による農産物の供出強化があり、他方不当なる課税の重圧が加えられております。かてて加えて近くは必要量以上の外国食糧の輸入による重圧が加重されつつあります。
このようにして最近における一般的経済事情の惡化と共に、
農業経営はますます逼迫化し、
農村の
不況はますます深刻ならんとするとき、
農協の運営の振わざる亦当然と言わなければなりません。従
つて農業協同組合をして真にその目的を達成をしめるためには、先ず以て根本的に
政府の
農業政策、財政政策を是正することが必要であり、
農業及び
農村に対する
政府の再認識と猛省を要望して止まないのであります。
尚具体的に申上げれば、
農業経営の赤字化及び
農村不況の原因に真に認識し把握して、拔本塞源的施策を講ずるため、速かに市町村ごとに経済
不況打開及び
農業振興の
計画を樹立実行せしむると共に、これを
計画実行に必要なる
応急並びに
恒久の
金融措置を講すべきであります。
次に
農協運営の問題については、日本農民
組織に関する
原則において、
農協に対する
政府の
金融的、技術的援助が要請され、
農協組織の自由が強調されているのにも拘わらず、
金融的
措置も技術的援助もなきに等しき
状況であります。特に
組織の自由に開しては、
農業協同組合法の規定、そのものに反して行政
措置を以て県区域以上の連合会がそれぞれ事業別に細分、分立を余儀なくされて来たことは極めて遺憾であり、これが
農協の発達を阻害する大きな原因をなしたことは否めない事実であります。
今回の
改正により、漸く事業連合会の統合が認められるに至つたことは、この
意味においては一歩前進というべきであり、賛成の意を表する次第であります。
尚この際
改正案の実施に関連して今後問題となるべき事項につき
政府の注意を喚起したい思います。
第一に
農協の育成強化のための
予算措置の確立であります。即ち少くとも本
改正法の実施に当りては、
農林省に検査課を設置し、
農協の経理の合理化、運営の刷新を図ると共に、
農協の検査費、指導監督費、役職員及び組合員の教育宣伝費、自治監査助長費及び教育施設費等に少くとも三億数千万円の
予算措置を講ずること。
次に
農協の目的達成のためその財務を堅実にし、
経営を適正ならしめるこては極めて緊要でありますが、
農協法第五十二條の二の規定による
政府の作成実施に当りては、経済界の
現況に適応するよう十分考慮して愼重を期すること。
農協経営不振の原因として役員の任期余りにも短きため、
経営に專心することの不可能なることが挙げられるので、
農協を健全に発達せしめんため、理事の任期を四ヶ年、監事の任期を三ヶ年に延長すること。
最後に
農協は営利を目的としない社会的使命を有する相互
組織であるから、第二次世界大戰までは非課税の
原則が堅持されていたが、今回の
改正税法では課税されることにな
つたのであるが、
農協の本資に鑑みて、法人税、資産再評価税、附加価値税、固定資産税、市町村民税等は減免の
措置を講ずべく
努力すること。
以上を以て賛成討論を終ります。