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藤野繁雄君 積年の造林未済林地を五ケ年間に急速に植栽し、森林資源の培養と国土保善に資せんとする本
法律案にはその
趣旨において賛成するものであります。
併し山林
所有者が植えられなか
つた林地、又植栽の意思も持たない林旭に地上権を設定して、希望者に植栽せしめる非常手段が果して実現し得るか否かについては、その第一條第三項に
規定する「
補助金の交付、
資金の
融通、苗木の確保、その他の
施策の実行」が直接に重要な役割を持つことを
政府は十分に認識すべきであるのであります。それは現在のような未曾有の変態的なインフレ経済の下では、長期
資金は勿論、それによらなければならない
事業の
経営は私企業としては甚しく困難であるという経済理論によ
つても明瞭であるのであります。
我が国の森林の荒廃状態は甚だしく、災害の頻発は累年その被害を増大しつつあり、国民経済全般に及ぼす影響は甚大であるのであります。即ち治山治水
事業の拡充強化の問題は、今日より強く痛感されることはないのであります。又これと目的を
一つにする施業調整の問題、森林の開発促進の問題等、一連の林業
施策が併行して取上げられることが喫緊の要請であります。
更に諸税負担の重圧が一般大衆の林業
経営意欲を減退せしめ、殊に木材
価格の低調下落に対する不安がますますその傾向を助長している事実に鑑みまして、先ず林業税制については特別の考慮を払う必要があるのであります。具体的には、新植林地は十ケ年間免税とするとか、或いは所得税におけるように特別の取扱いを富裕税及び
地方税にも適用する必要があるのであります。木材
価格の安定については、幸いに木材の全需要量の三割乃至四割を占むる国有林産材の生産の調節によ
つて、極めて簡單になし得ることに留意して、有効な
措置、即ち特別会計の弾力性ある運用を可能ならしめるよう森林基金
制度を創設することなどは当然に必要であります。
予算の
措置について述べて見ます。と、二十五年度一般造林補助費として林野当局は四十二億余田を以て合計三十九万町歩の造林を完了する
予定であ
つたというのであります。然るに閣議では約半額の十九億円弱に削減され、造林五ケ年
計画を承認して置きながら、
計画を甚だしく変更することは妥当でないのであります。特に本法制定の上はかかる
措置は許されぬところでありますから、補正
予算を以て補充し、
計画が完遂されるように努力を必要とするのであります。
次に造林
資金について述べて見ますと、造林不振の
原因が
資金の枯渇にあることに着眼して、その
措置を取りつつあるのは林野行政の大進展であり、当局の努力を多とするところであります。併し対日援助見返
資金による
融通は、先日西村安本政務次官の言によれば、やや確実性を認められるとしましても、その額は所要の十億に遠く及ばないものがあるらしいのであります。山林
所有者の意思を拘束してまで強権発動を以て、造林を促進せんとする
政府の一方的
措置は甚だ遺憾であります。例えば開拓者
資金融特別会計などの例に倣
つて、最少
限度の
資金を
融通できるようにする必要があるのであります。現行森林法第九條乃至第十一條の造林命令に関する
規定が死文化して発動し得なか
つた不名誉な事実を繰返さないように重ねて
注意をする次第であります。
次に苗木の確保及び優良苗木の養成についてであります。樹苗の生産が過去三ケ年間に順調に進展して、略々所要量を充足し得るに至
つたのは約二割の
補助金があ
つたからであることを忘れてはならないのであります。幸いにして所期の目的が達せられるようにな
つた現在において、これを打切るのはやや尚早の感があるのであります。即ち本格的な自己の採算による生産
條件が備わるまで、更に一、二ケ年継続せらるべきであると思うのであります。ここで問題になるのは品質の低下である。植栽後十年近くの歳月を経なければ、良否の判別を下し得ない樹苗の特異性は、ややもすれば粗品の販売をする幣に陥り易く、これがために蒙る被害は金銭のみの計算では済まない点に留意する必要があるのであります。併し樹苗の良否は養苗技術の問題よりもその
種子にある点に留意して適助な
措置が望まれるのであります。国において採取した
種子を無償配布する
措置及び樹苗の
計画生産、配布等、業者が安んじて業を営み得るように
措置する必要があるのであります。
次は林業
関係税制の問題であります。林業
関係の諸公租、公課の負担は過重であり、且つその体系は甚だ雑然としていて、今次税制の改正で形態は整理されるようであるが、尚その負担は必ずしも軽減される傾向は見受けられないのであります。現行法による負担の例を示して見ますというと、山林
所有者が負担する杉一石当りの公租公課は百八円で、立木
価格平均二百円と見れば、その五割乃至六割に該当します。素材生産業者が負担するものは平均石当り六十三円であります。都市の卸小売業者の負担するものは約百二十五円であります。以上の合計金額三百六円は、平均の立木
価格二百円に対しまして一五倍に相当するのであります。逆に申上げますならば、若しも諸税負担がなか
つたならば立木の
価格は五百六円にまで引上げることがてきるという
結論になるのであります。收益率の低い林業に一般並みの富裕税を賦課することは中大林業の
経営を否定する結果となる。又具体的には富裕税の税率の最高三%は資産の利廻を八乃至一五%と想定したものであるから、林業
経営の利廻の三乃至五%の場合には更に低率の賦課が認めらるべきであるのであります。換言すれば、林木の価値生長率が年に三%の場合には、富裕税を三%負担すれば林業
経営の目的が達せられない結果に陥る。更に所得税との合計においては、価値收獲よりも二割乃至三割も多額な負担とな
つて経営は成立たないのであります。米国における年々五%の財産税は、山林の早期伐採を誘発し、造林を減退せしめた事実において甚だしく不評判であります。先人の轍を踏まぬ
対策が必要であると信ずるのであります。
次に水利地益税の賦課に際しては、往年の反別割のごとき観念による課税は行わないよう
措置することが必要であります、山林の造成による受益者は、山林
所有者よりも一般住民であるとの理論すら成立つのであります。
取引高税を
廃止したのに拘らず木材引取税を存置する
理由はないのであります。凡そ林業課税は甚だ過重である。従
つてややもすれば
経営意欲を喪失して荒廃への途へ追込む結果が生れ勝ちであるのであります。従
つて全般的に再検討を要する問題ではあるが、特にこれら三税目については早急に解決をする必要かあると信ずるのであります。