○
説明員(
徳安健太郎君) お手許に差上げております
昭和二十五年
農産種苗法一部
改正法案資料というものを御覧頂きたいと思います。
この
法律は二十三年の三月から
施行いたすことに
なつておりますが、実はこの
予算の
定員が
関係方面の了解が得られなか
つたために、
検査官の
発令が非常に遅れまして、
專任の
検査官を
発令いたしましたのが二十四年の五月にいたしております。従いましてこの
検査の
実績等につきましては、大体七月から十二月というものを挙げております。一応この
資料の初からずつと
簡單に御
説明申し上げます。
先ず第一に
農産種苗法第二條によります
届出の
状況でございますが、これにつきましては現在のところ大体
市町村長に
届出ましてそれが
農林大臣の方に送付して参
つておりますが、約二万五千五百であります。現在これを
カード式に各
府県別に
整理をいたしまして
取締の便に資したいということで
整理をや
つております。
それから次の
ページの
種苗検査職員の設置問題でございますが、これは今申上げましたように
検査官の
発令が非常に遅れましたのでありますが、現在配置いたしておりますのは、本省に
專任の
検査官二名、
兼任六名、それから
長期出張の形を以ちまして農林省の
園芸試験場の
本場、
東北支場、
東海支場、
九州支場というようなところに
專任が
本場四名、各
支場に二名、
兼任が
本場三名、各
支場二名づつ配置いたしております。それから尚
本場及び各
支場に
検査室を設けまして、そこで
種苗の
発芽試験なり
検定試験を
実施しております。尚又
府県の方に対しましては
主要種子の
生産府県に対しまして十名を
長期出張いたさせまして随時その各
隣県等につきましても
種苗の
取締に任じておるわけであります。
次にこの本
事業伴う
経費予算でございますが、二十四年度におきましては、先ずここに書いてありますように、八百八十七万九千円、二十五年度におきましては目下要求いたしておりますものは八百十六万二千円でございます。この前年度より減りました
理由につきましては、実は我々直接の当事者といたしましては、この
事業をや
つて行きます上に
相当人もふやして貰いたい、又
事業費も増額して貰いたいという要求を出したのでありますが、大蔵省の査定で相当削られまして、前年度よりも減
つております。併しながらこの減りました大
部分というものは、
検査事業費の中でも
備品費でありまして、これは大体
検査に用しまする
発芽試験費或いは冷蔵庫、検微鏡その他の機械、器具でありまして、これらは二十四年度において一応
検査が
実施できるように整備いたしておりますので、この点につきまして
検査事業費の削減につきましては、
検査事業については支障は余り来たさないということに相成るかと存じております。次に
種苗検査の
概要でございますが、前に申上げましたように、一応二十四年の七月から十二月というものを取りまして、先ず第一にやりましたのが、
営業者の
届出ができているかどうかということにつきましての
検査を
実施いたしました。大体全国で八県を除きましてあと三十八県いたしております。その中でもここに挙げました十八県につきましては全部をや
つたわけではございません、一部をや
つております。その他の所につきましては大体県が全部の
種苗業者の
届出等の有無につきまして調べたのでありますが、その結果につきましては、ここに書いてありますように、
検査箇所千四百五十二の中で、
無届営業者は二百十四で大体一五%であります。これらはいずれも
種苗法の
公布施行を知らないものが大
部分でありまして、中にはここに書いてありますように三十年近くも
卸販売を業としておりますが、税金の過重を避けるために
届出を怠
つたという例もあ
つたようであります。いずれにいたしましてもこれらにつきましては
届出を励行するように
検査官をして指導せしめております。
次に
保証票を
添附しておるかどうかということに対する
検査でありますが、これにつきましては全体で
調査箇所が千四百五十二でありますが、
検査総点数が九千三百十一、
完全添附いたしましたものが二千四百三十八、全体の二十六・一%、無
添附が四千九百六十九、五三一三%、
記載の
不備が千八百七十、二〇%、それから
虚偽の
記載を心いたしたものが三四、〇・五%あります。で、この比率から見ましても、無
添附が過半数を占めております。これらはまだこの
法律の
施行を知らんというものが非常に多か
つたわけでありまして、
記載不備の大半は
生産地の
府県名のみを
記載いたしましていわゆる
市町村名を書かなか
つたのが大多数であります。いずれこれらにつきましては
注意をいたしまして、尚
惡質のものにつきましては嚴重な
注意を発しました上に
始末書を提出させております。この問題につきましては後程もう少し詳しく申上げたいと思います。
それから
種子の
検査でございますが、先ず第一にこのためには
清潔歩合と
発芽歩合を調べたわけでありますが、
清潔歩合につきましては一応次の
ページに出しておりますように大体良好でありまして、九八%以上の好
成績を示しておるものが多うございまして、ただそのうち仔細に検討いたしますと、同種の成分でも未熟な
種子とか、或いは
発芽不能と考えられるような
極小種子、虫害を被
つた種子というものを含んでおりまして、更に
精選度の
向上を要するものが六分あ
つたようであります。
次に
発芽歩合でありますが、これにつきましては各
種苗業者から
拔取りましたものを
検査官が持帰りましてそれを
発芽試験をや
つておるわけでありますが、ここに掲げました
種類別検査の中で中程に「そらまめ」とありますがこれは
大根の
間違でありますので御訂正願います。それから「きうり」の次に「
かんらん」を
一つ落してあります。「
かんらん」の合計が百四件、それを合せまして全体で千九百四十五件に
なつております。それでここに実は
発芽の
歩合を掲げておきませんでしたが、この点につきまして一応申上げますと、大体抜取りました
蔬菜の
種子の
発芽率は大
部分のものにつきましては、大体我々の方で想定いたしております、例えば
十字花科のものにつきましては八〇%、或いはその他のものにつきましても六〇%乃至七〇%という
標準があるのでありますが、この
標準に概ね近いということが言えるわけであります。ただここで問題になりますのは、「
たまねぎ」につきましては大体七〇%の
標準に対しまして、全体で
発芽率のその
標準以上に行
つておりますものが四五%、それ以下の
発芽の非常に
惡い不
合格のものが五五%、「それから「ねぎ」につきましても
発芽の
惡い不
合格のものが四〇%、「
ほうれんそう」につきましては更に惡くて六五%の不
合格を出しております。それから「なす」につきましては五五%、「にんじん」「
ごぼう」というものは
発芽率が非常に惡うございまして我々の方といたしましても、今後
取締をして行く上にこういう
種子につきまして重点的に行いたいい、かように考えております。それからこれらの
違反事項に対しましては、
試験の終了の都度各
検査官から
記載発芽率の訂正、又は必要に応じましては
当該種子の
売止を命じておりますが、更に
発芽試験の結果は
特産課長名を以ちまして
個々に
注意を促しております。それから
発芽試験に関連いたしますが、
品種の問題は
圃場検定を受けなければなかなか分らないのでありますので、各
園芸試験場及び
支場に一定の圃場を持ちまして
圃場検定をや
つております。それは「
ほうれんそう」「
つけな」
大根等につきましても
試作を行
なつておりますが、これにつきましては、二十五年度から本格的な
試作をや
つて行きたい、かように考えております。目下「
たまねぎ」の
種子の
検定につきまして、
九州の
検査室で
施行中であります。
次に
行政処分の
件数でありますが、これは
検査施行いたしまして早々でありますので、
種苗法の
普及徹底が十分でないと認められますので、各
検査官をしてこの
普及徹底を図らしておりますが、
違反事件はいずれもこれは
司法処分に付しませんで
行政処分に付しております。先ず
無届営業者につきましては
届出の励行を指導し、
保証票の無
添附及び
記載不備につきましても
完全添附を
注意いたしております。又
虚偽の
記載につきましては
記載事項の変更を命じておりますが特に「
ほうれんそう」につきましては相当
惡質と認められるものが四件ありましたので、これらにつきましては
始末書を提出さしております。この問題を
ちよつと具体的に申上げますと、昨年の「
日本ほうれんそう」の
種子の
採種が非常に惡うございましてそれで
種苗業者の中で「
西洋ほうれんそう」の
種子を播いた者がありますが、これは御承知の
通り「
日本ほうれんそう」は
種子に「
とげ」がありますが「
西洋ほうれんそう」には「
とげ」がありませんですけれども、その中の二、三
西洋品種につきましても「
とげ」のあるものがありまして、これを混入いたしまして「
日本大葉ほうれんそう」というような全然
品種のないような名前で売りまして、その
発芽が非常に惡か
つたというような
事例が相当ありましたので、愛知県の方に主任の
検査官を派遣いたしまして
実情を
調査いたしました。これにつきましては県の
係官立会の上で
業者を呼びまして
始末書を取
つております。
それから
種苗検査が斯界に寄與いたしました
事例をここに若干挙げておりますが、結局これは
生産者が
種苗業者から
種子を買いました場合に、その
種子の非常に
間違つておるというような
事例がありますので、その点につきましては
検査官がそれ応対しまして必要があれば
検定をいたしまして、その
当該県の
係官立会の上で
業者が
話合を進めて
解決したり、又は今
解決の途上にあるものを挙げております。
只今これにつきまして
一つ例を申上げますと神奈川県におきまして、或る部落で永年
種子をその
地方の
種苗業者から
買つてお
つたわけでありますが、昨年
美濃早生大根の
種子と称しまして約二十
町歩の分を買
つたわけでありますが、ところがたまたまその中の四
町歩分は
練馬系の
大根でありまして、
美濃早生大根は七月の末に播種いたしますが、
一般の
大根は大体八月の末が播種の適期と
なつております。ところが
練馬大根を
美濃早生大根と称してや
つたものですから全部七月の末に播きましたところが、
練馬大根は全部
萎縮病に罹りまして全滅した。
従つて四
町歩分が収穫皆無に
なつた
事例が起
つております。これらにつきましてもその
採種地域であります千葉県に
検査官を派遣いたしまして
実情を
調査いたしまして、そしてこの
検査官が
生産者団体と
種苗業者との間に或る
程度の
見舞金を出させまして
解決をしたというような
事例があります。
それから次に
発芽試験法でありますが、実はこの
蔬菜に限りませず
一般の農産物の
種子につきましても、まだ
一つの体系付けられた学問としてのものが成立しておらないのでございまして、幾多のいろいろの
検査をや
つて行きます上に技術的に
解決しなきやならん問題が多々あるのであります。でこれは
アメリカにおきましてもまだ全部完成したわけではありませんが、
アメリカは気候が乾燥しておりまするために
発芽率が落ちるということが非常に少いのでありますが、
日本は濕気が非常に多いために
貯蔵方法その他によりまして
発芽率が急速に低下するというような
関係もありまして、今後いろいろ
研究を進めて行かなければならんと思います。ここに挙げましたものは例えば
休眠期の
関係から
大根は
採種いたしましてから七月一杯、「
かんらん」につきましては
採種いたしましてから九月の上旬までは
発芽が不良な傾向が認められるのであります。又「
ごぼう」につきましては
発芽試験をやります場合に、光線がないと
発芽しないというようなことが最近判明したのでありますが、これらはいずれも
個々の
発芽試験、
採種事業、或いは
栽培法の
改善等につきましては相当役立つ問題ではないかと考えにおります。
それからその次に
委託の
発芽試験件数でありますが、これは特に
輸出等につきまして、先方の
輸入業者から
発芽試験の
成績を
添附せよというようなものがありますので、それらにつきましては
委託を受けまして
検査官の方で
発芽率を
記載いたしましてや
つております。主としてこれを出しましたのは「
たまねぎ」が主体であります。
それからその次の(六)でありますが、
種苗検査実施に必要な
調査研究、これは前に申上げましたように
種苗検査につきましては相当今後
調査研究をしなきやならん問題が多々あるのでありまして、これにつきまして各
園芸試験場及び
支場におきまして、これらの点につきまして以下挙げましたような項目について検討を進めておるわけであります。次に
種苗の
名称登録の問題でございますが、これにつきましては二十三年の三月からこの
法律が
施行になりましたので、この方は
定員の
関係もありませんので、
委員を二十名任命いたしまして二十三年におきまして十月に第一一回の
審査会を開催いたしております。この
審査員は大体国の
試験研究機関の人と或いは
地方の
試験研究機関、又は大学或いは
民間の有識者というような人達のうちから、この
権威のある方二十名を選びまして
総理大臣から任命して貰
つておりますが、現在一人欠員に
なつております。この問題は特に非常に慎重を要しますので
行政に携わ
つております我々は
審査員の中に入りませんで、本当の
権威者という方だけにお願いいたしております。でこの
種苗名称登録につきましては、二十三年の十月に第一回を開きまして現在までに四回開催しております。大体一年に一月と六月ということにいたしております。これによ
つて登録の
実績を申上げますと、総
出願件数が全部で六十九件で、この外に
現行法では
登録対象とされておりません「すいか」二件があります。これらの六十九件のうちで現在までに
登録いたしましたものは「
りんご」の「
陸奥」、特にここに三年、五年、五年と書いてありますが、これはこの
農産種苗法で三年から十年という
一つの期限がありましてその間はこの
名称で外の人は売れないということに
なつておりますが、その年数は
審査会でそのもの毎に決めて行くということに相成
つております。その「
りんご」につきましては「
陸奥」は三年、
登録を取りましたのは
青森県の
菜果試験場、「
つけな」は「広
茎かつをな」五年、これは福岡市箱崎町の木村半治郎、「かぶ」は「改良博多かぶ」五年、これも同人ということで、現在
登録に
なつておりますのは三つありますが、最近行いました
審査会において決定いたしまして、
目下農林大臣に答申中のものが十二件あります。ここに書いておりまするものであります。それから非常に優秀な新
品種又は新系統と認められなか
つたものは三十八件ありまして、これらはいずれも認められないということを本人に通知いたしております。次に目下
審査続行中のものといたしましては十六件あります。これらにつきましてはその
申請のありましたものを栽培してみるとか、或いは
調査に参りまして
調査するということによりましてこの次の
審査会において可否を決定することに相成
つております。次に今度の
法律改正に伴いまして
農林大臣の指定する
種苗の
種類の問題でありますが、ここに挙げましたものの中で○印をや
つておりますものは
現行法で指定されておるものであります。これらはこの今回の
改正におきましてできますならば
取締りはいたしませんが、新
品種としての
登録の
審査ができるというものは、ここに挙げましたように
蔬菜につきましては「ゆうがお」「スキート・コーン」「ちしや」、「セロリー」「とうがらし」「こも
ちかんらん」その他○のついていないものは全部であります。
果樹につきましては同じく「
かんきつ」以下○印のついております「おうとう」とか七品目について新
品種の
登録ができるようにいたしたい。それから第三の
花類につきましてはこれは非常に
沢山のあれになりますが、百四十三でございましたかここに
種類を挙げておりますが、この
種類の中にも又いろいろ
品種がありますので非常に
沢山になりますので、これらにつきましては
取締はいたしませんが新
品種の
登録に加えて行きたいとい
つた種類でございます。以上
簡單でございますが
検査並びに新
品種登録の
概要につきまして御
説明いたしました。
尚参考のために第一回に新
品種として
登録いたしました「
りんご陸奥」の写真がございますが、これは
昭和五年に
青森県の「
りんご」
試験場で「ゴールデンデリイシヤス」と「インド」をかけ合せまして作りましたのでありまして割合丸みを
帶びております。これは特徴といたしましては非常に
貯蔵がきくことでありまして、
品質も非常に優秀でございますので、これが
農林大臣の
品種登録の第一号に
なつたわけであります。