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町村敬貴君 私は
北海道に長くいる者ですからこの問題について少し申上げたいと思うのですが、
只今長官の
お話のように、
北海道の
開発が
明治二十七年くらいまでは非常な勢で進んだ。勿論まあ私の
考えでは、先ず
明治の間は相当な勢で
北海道は進んだように思われるのですが、その後に
至つてどうも
北海道の進み方が非常に鈍くな
つて来た。又いろいろな
意味から行きましても、
中央の方でも
北海道を割に認識しないし、又
北海道の人間も又
割合に
中央の御厄介になるということの
感じが非常に鈍い。まあいろいろな
関係があ
つたのですが後には非常に
北海道の発達が鈍くな
つてし
まつた。ところがそこに又この満洲というものが発展されて以来というものは、
北海道は殆んど顧みられんという形にな
つてし
まつた。甚だしきはこの満洲が始ま
つて以来は、一年に一戸の
つまり移民さえ来なく
なつたというようなことさえ私共は見ておりました。併しながら
北海道というものは、どうして満洲がああいう短時間にああいう長足の
進歩をしたか、それで
北海道が昨年八十年の
記念式典を挙げるのに、過去を顧みまして八十年間に非常な遅い
進歩を見せて、さつ
ぱりその計画の半分も達していないというのが、先ず今度の八十年
式典の結果であ
つたように私には思われるのですが、併し今
日本の実情から
考えまして急速な
移民をするということも不可能でありますし、どうしてもやはり残されておるものは、
只今官房長官がおつしやいましたように、
北海道よりまあないということだろうと思いますが、この
北海道の
開発を本当にやるということになりまするというと、やはりこれはただ一地方庁の
行き方ではこれはできない点が沢山あります。丁度米国が
TVAをや
つて、そうしてその
行き方によ
つてその州の
開発をするというのは、先ずこれは国が或る程度そこに乘り出して、やるべきものは国がや
つてしまつて、それから後に
移民を入れるとか、いろいろなものが自分でつまり自発的にやり得るようなところまでは、これは国がや
つてしまわなければ
いかん。到底小さな農家がそこへ入
つてもどうにもなりません。ところが今
北海道の
開発の
状態を見ますと個人的にやり得るようなものは殆んどつまり今までには
開発し盡してあります。それが丁度
北海道が約百六十万
町歩の
耕作地を、
耕作可能地を持
つておるのでありますが、一時は殆んど百万
町歩に近いところまで伸びて
行つたのでありますが、ここ二十年前
あたりから段々減りまして、今では七十何万
町歩というところへ落ちてし
まつた。それがまだ減
つて行く傾向にあります。それですからこれはやはり
既耕地でさえ減
つて行くくらいなところにあるのになかなか今後の残されておるところの七、八十万
町歩というようなものが、これは到底今のところでは見込がありません。これはどうしてもやはり国がやるべき
一つの大きな
建設を行な
つて、そうして
つまり計画と
実施をいたしまして、それから実際の農民を入れるとか、
移民をさせるというようなことが
順序であると思うのでありますが従来の
北海道庁のああいう
行き方であ
つては、到底こういうものには頼ることができなか
つたのであります。そこで私は今度こういう
北海道開発法案というものができました以上には、どうか過去において全くやり得なか
つたというようなものに特に
重点を置いてこの
開発庁がこれを
実施するようにいたしまして行くならば、私はこの
開発庁というものは非常に
北海道のためには大きな今後の途を拓くものだろうと、こういうふうに確信しておるものでありますが、ただ私としましては、若し
只今長官がおつしや
つたように、
計画は
北海道開発庁がやる、併し
実施は、いろいろな
仕事の
実施は
各省がやる。ここにおいて私が
一つ非常に心配することは、例えば
農林省、
建設省の問題でありまするが、一例を挙げまするというと、
北海道の
泥炭地の
開発というような問題が大きく残されております。恐らくは
北海道の
泥炭地は四十万
町歩という全く不毛の土地にな
つて、この八十年間を寢ております。ああいうものをやりますときには、
最初はこれはもう殆んど
建設省の
仕事になると私は思うのであります。これは
農林省の方の
仕事にも勿論最後にはなるのでありますが、
最初はこれは
建設省が
一つのそういうような
計画をやるのでなければ、それから後にそれが徐々に
農林省に移
つて行く、こういうふうに
各省がその実態に即して横の
連絡を完全にと
つて行くのならば、私は非常にいいと思いますけれども今までの調子を見ますると、ややもするとお互いに繩張り範囲を侵すことを非常にあれされまして、遂に本問題に入らずに終るようなことがよくあると思います。今回の
北海道のこの場面も、小さいようなことは、これは
北海道庁がや
つて行くようなことにはそう触れずに、実際に過去においてやり得なか
つた、
北海道を本当に
開発する上においてやり得なか
つたというような点に、
各省が完全に横の
連絡をと
つて、これをや
つて行くというようなことになりますならば、例えば
漁業にいたしましても、今までは
北海道はこの
北洋漁業を持
つておりましたために、函館がただ
一つの大きな
漁港であ
つてやり得たのでありますがこの
つまり北洋漁業を
失つた北海道としましては、どうしても今度は
沿岸漁業によ
つて行くより仕方がない。そうしますと相当に沢山の小さい
漁港を必要とするのであります。その
北海道にはその
漁港が非常に少い。こういうような面からいたしまして、
北海道の魚類を殖やすということは、結局
日本全体の栄養上に非常な大きな問題があるのでありまするから、いろいろな点におきまして
北海道の残されておるところのあれが、非常に大きいのでありますから、私はこの
北海道開発法案によ
つて、これを最も有効に
実施するということを切望するものでございます。