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公述人(齋藤藤吉君) 私は北海道四百二十万の道民に利用者の大多数の意思を
代表いたしまして、次の三点から反対の
意見を申述べるものであります。
第一に
電源開発に及ぼす
影響であります。第二は
料金の
地域差に及ぼす
影響であります。第三はこの両
法案の根本的疑念から来る問題であります。第一の北海道における既設発電設備は僅かに全国の三・五%
程度に過ぎないのでありまして、現在の需要を充すには尚多量の不足をいたしているのであります。一応計数上統計的に出ておりますものでは、一六%と公表されておりますけれども、
現実の需要状況からいたしましては、現輝の生産事情から要求されますものの約六〇%
程度を充たしているに過ぎないのであります。かような点からいたしまして、北海道民は非常に
電源の
開発を熱望し、現在も多数の者が上京いたしまして、この運動を続けているのであります。試みに最近十一ヶ年間におきますところの北海道における
電源開発の事情を見まするに、
水力が三万一千八百キロワツトでありまして、この間における全国の百三十万八千三百二十キロワツトの拡充に比しますと、僅かに十一ヶ年に全国の比率において二・五%の非常に劣勢な
開発の状況に置かれておるのであります。従
つてこれらの不遇の
電力事情の
状態を脱却しますために、北海道におきましては
電源開発五ヶ年
計画を立てまして、
水力において二十六万四千キロワット、
火力を合せまして三十三万キロワットの新たな
電源開発をしたいということで、これらを
関係当局に要請をいたしておるわけであります。又経済安定本部におきましても、北海道のこうした
電力需給の困窮の実情をよく御斟酌下さいまして、独自の
立場から五ヶ年
計画を樹立いたしまして、漸く二十四年度からこれに着手するに至りまして、久保内、蘭越外
水力火力で以て六ヶ地点の新増設工事に着工する運びに
なつたのであります。
今回再
編成の問題が起りまして、全国の
電気事業を九分割して、民有民営の
独立採算制によるところの基本線に立
つて、その地区へ会社の全部を委ねられるというようなことに相成りました。道民としては非常に狼狽をいたしているわけであります。若しかような分割が行われます場合におきましては、恐らく北海道の新設会社の実力というものは、この莫大なる
開発費、即ち三十三万キロワットを
開発する費用といたしましては約四百億を推算されておるのでありまするが、この四百億の費用をどうして今後準備し得るかということが大きな問題になるのであります。この分断されました会社が、全国の
日発、
配電の持ちますところの資産をその
地域に分割いたしますと、僅かに四%に過ぎない力なのであります。この四%の力によ
つて四百億の融資を受けるということは、恐らく望み得ない問題になる。
政府関係では、分断をしたからと申して決して
開発が遅れるというようなことはない、かようも申されておるのでありまするが、
採算の最も惡い、而も担保力を持たないこの新会社に対しては、私共としては融資の受ける手段としては全く断たれるのではないか、殊に見返資金は、最近の新聞紙上その他私共がGHQに陳情等に参りましても申されておりまするが、二、三年中にもこれはなくなるのである、こう言われておる、そうしますれば
政府自体は、分断によ
つて決して
開発を阻害することはないと、かように申されまするけれども、何らこれに対する裏付けを受けておらないということで、私共としては大きな不安を持たざるを得ないのであります。従
つて若し
政府の言われるように、将来の
電源開発は決して不案がないんだ、北海道の現在の窮状はよく分
つておるから、現在の
計画をそのまま推進して行くんだ、かように
政府が太鼓判を押されるとするならば、少くとも今度の
法案の提出と同時に
電源開発法案とか、或いは
電源開発融資
法案とかいうような、
開発の裏付けをすべき何らかの
措置が同時にとらるべきではないかと、私共はかように
考えるのであります。而もかような問題に対しては何ら触るるところなくして、ただ單に
電源開発に対しては何らの支障を来さないという、この一片の言葉を以て私共の現在の北海道の事情といたしまして肯定し得るわけには参りませんので、この点を是非とも明確に表示をせられまして、道民が安んじて将来の
電源開発を期待し得る
状態に置いて頂かない限りにおいては、この
法案には反対せざるを得ないのであります。殊に北海道におきましては、只今申上げたような極めて困難な実情にありますために、最近道自体が何とか
電源開発を行
つて、窮状を少しでも打開をいたしたい、現在頻りにこれが申請に対する
手続について努力をいたしておりますわけであります。ところがこの再
編成法案の第八條若しくは
公益事業法の第二十八條の第三号等を見ますと、
公共企業体がこうした事業を行うことは困難であるように想像せられる。従
つて極めて困難な実情に置かれる北海道にあ
つて、その道民の不利益を
代表すべき
公共団体もただ傍観をしていなければならないというような、かような
法案に対しては私共としては全く遺憾の意を持つものでありまして、この点どうしても賛成の意を表し難いのであります。又私共がGHQ等に参りましていろいろ
お話を申上げますと、先方では分断をされればお互いに
地域的なものがその必要に応じて出資をしてこれを行うような態勢がとれるではないか、又そういう意欲は必然的に生まれて来るではないか、かように申されておるのでありますが、只今申上げたような四百億というような大きな資金を将来に想定されますところの
電源開発が、現在の北海道の持つところの経済事情によ
つて、果して道民が負担し得るや否やということはおのずから明らかなる、自明の理であると私共は
考えておるのであります。従
つてこれらは
如何にいたしても
政府自体の完全なる裏付け
措置を得ざる以上は、恐らく北海道におけるところの
開発は行われない、かように存ずるわけであります。又一面この
電源開発におきましては、分断することによ
つて外資等の導入が期待されるということを言われておりますが、成る程
日本の全体量としての
開発の促進においては、或いは外資の導入等、有利な地区の非常に大きな会社に外資が入
つて期待できるかも知れませんけれども、北海道のような離れたる
地域はその恩惠に浴することは極めて困難である、非常な不利益な
條件に置かれるところは、その恩惠に浴することは恐らく期待できない、かように
考えられるのであります。むしろ北海道等では、こうした外資の導入によ
つて非常に有利な地位と、それによ
つて生ずるところの犠牲的地位を作るものであるということで以て、これに対する反対が非常に大きく行われております。この反対の中を潜
つて共産党の諸君等が、いわゆる
電気事業の売国最
措置であるというような痛烈な言葉で以て背後で煽るというような実情に至
つておりまして、むしろこうした
措置を強行せられることが、占領政策の一環として私共は反するのではないかというような観念を持たざるを得ないのであります。従
つてこれらの諸点から
考えまして、私共は第一には、
電源開発の事情からこの両
法案には反対をしたすものであります。
更に第二に、
料金の
地域差についてでありますが、これは現在の新
料金によりまして、旧
料金から約六割の北海道は上昇をいたしております。更にこれを分断をされますと、全国平均にいたして一〇%の高率になる、一番安い北陸等に比較いたしますと、約十割高になるというような地位に置かれておるわけであります。更に只今申上げたような新たなる
開発を予想いたしましてこの資金を投入いたしました場合に、これによ
つて起るところの差というものは、その分断されました場合の
料金の約七〇%更に上昇するということが計算上想定されるのであります。そうして参りますと、北陸に対比いたしまして三倍の
料金に相成る、
如何に
地域差が或る
程度止むを得ないものであると申しましても、かように大きな差が生じますことは、北海道自体としての
産業を壊滅せしむることであると、かように私共は存ずるのであります。勿論
政府では
火力調整金というようなものによりまして
調整をいたそうということもお
考えにな
つておられるようでありまするが、これらも先に
政府の試案なるものについて検討いたしましても、北海道といたして約三千万円の
火力調整金が入
つて参るのでありまするが、三千万円の
火力調整金ではその救済というものは全く雀の涙に等しいものである。今日までの
経営のおきましても、
日発が公表しておりますところは五億乃至六億の年々赤字を出しておると、かように公表しておりますので、三千万円の
調整金は、全く北海道の現在の事情からして
料金の
調整を行うには足るものではないと、私共はかように
考えるのであります。而もこの
調整金に対します規定等につきましては、單に
公益事業法の中に
調整ができると書いてあるだけでありまして、法的根拠として私共が期待し得るものは何物もない、こういう点を
考えました場合に、極めて漠然たる
措置でありまして、こうした内容によ
つて将来への
料金の
調整を期待することは全くできないわけであります。以上のような実情から参りまして、このままの形において、いわゆる
独立採算制のよるところの分割が行われるということになりますれば、私共の北海道としては非常に
産業界に混乱を来し、殊に現在の
需用の三一%の
電力を使用いたしておりますところの化学工業、なかんずくカーバイト、肥料、水銀、製紙、ゴム製品等には非常な
影響を来しまして、その既成
産業すら閉鎖をしなくてはならんというような実態に立ち至ると思うのであります。御
承知のごとく先般皆樣の非常な御援助によりまして、北海道は総合
開発法案が通過いたされまして、二十六年度からはいよいよ北海道の持つところの資源の
開発をしようという機会に遭遇いたしておる。これは全く国土
計画の一環として、北海道が人口七百万を以ちまして、而して北海道の持つ
産業を中核として
日本経済の再建をしようという当面の事態に立
つておりまして、
電力の
需用というものは單に北海道だけの問題ではなく、
日本の経済再建の非常に大きな問題を北海道としては持
つているわけです。然るにかような実情からいたしまして
開発もできない、
料金にも非常に大きな
地域的不利が生ずるということになりますれば、この総合
開発も実際には行い得ない実情に立ち至るという危險が私共の前に想像されておりまして、大きな不満を持
つているような実情にあるのであります。従
つてこの点からも私共はこの両
法案に対しては賛成し難いと、かように存ずるわけであります。
更にこの法規的の疑問でありますが、この両
法案の持つ目的は、
公共の利益を増進するためにあることは、第
一條に示されておりますので明らかなのでありますが、いわゆる
公共の利益というのは一体どういうものでありますか。私共は国民全体の利益でなくてはならんのじやないか、少くとも
公共の利益というものは、国民大多数の利益であらねばならない。然るにこの
法案に対しましてはです。私共、
九州、
中国、四国、この四地方がすでに全く同一の
立場において反対の
意見を持
つております。又近畿も私共と同様反対の意思を持
つておる。
日本の全人口の半分以上のものが自分達の
経済力に対して大きな
影響を與うるものであると
考えてこれに反対をいたしておるのであります。かかる
状態にあるのもが真に
公共の利益を増進するものであるかどうかということは、私共は非常に疑問に思うわけであります。一、二の地区の人々が大きな利益を得るために、他の多くの地区の者が非常に不遇な
立場に置かれるということでは、真に
公共の利益を保持するの
方法ではないと私共はかように
考えるわけであります。従
つてこの点から参りまして、
日本全国中に半ば以上の反対の現存いたします現在の段階においてこれを強行せられることは、いわゆるこれは法規の言うとこけの
公共の目的に副わざる結果を招来せしむるものであるということを私達は強く主張せざるを得ないのであります。殊に最前からいろいろ
公述人から申されております今日の国土
計画を行わんとするところも、戦争によ
つて狭められたるところの
日本の国土のうちに、人口の分布を公平にし、
産業の発達を公平に行い、そうしと
日本の
経済力を増強しようということが目的であり、北海道の総合
開発のごときも、この目的の下に立脚されておるのであろうと思うのでうりまして、当然
産業の発達には
電力だけではなくて、交通、資源その他幾多の
條件が国に備わらなければならないのでありまして、一地区に
電力だけが発達したからとい
つて、あながち
日本の国土
計画の上におけるところの完全なる
公共の目的を保持するような
産業の将来への
形態を建設するものではないと私共は
考えております。資源と交通力、その他あらゆる
條件を相マツチせしめて、そこに完全な国土
計画の一環としての
電力運営の機構が成り立たなければならないという点について、この
法案については何らそうした考慮が拂われずに行われているかのように
考えられますので、この点についても私共はこれに反対をするものであります。
又この
公益事業法の点におきましても、
料金を適正にするとか、供給を豊富にし、又それによ
つて公共の福祉を増進すると書いてありまするが、この
法案の内容はいわゆる分担会社に
地域独占を認める、むしろこの分担会社それ自体の保護法でありまして、
需用者に対する保護規定には何らな
つておらない、而もこれがために国とか
公共団体に全くこれらに対するところの事業を行わしめないような
状態にもなり、又
需用者自体が何らこの法規を通じて自己の利害に関して要求すべき基本的な規定が設けられてはおらない、かような点から
考えまして、私共
需用者の
立場からいたしましては、非常に不安定な気持で以てこの両
法案を見詰めておるわけであります。従
つて私共はこれらの法規の面におきましても、基本的疑問を持
つておりまする以上においては賛成をし難い。以上の三点からいたしまして私共はこの
法案に反対の意思を表示するものであります。
北海道といたしましては、現在の事情から行きましては、どうしても先ず
電源開発を急速に行な
つて頂きたい。而も最前申上げましたように過去十一ヶ年の
開発パーセンテージから見ました場合に、北海道の現在の
電力事情の極めて劣勢なことは、戦争目的遂行のための国の犠牲の一端である、かように私は
考えておるのであります。従
つて現在の全国的コストにおいてこの
開発を行な
つて頂いて、安い
開発コストのものと、これから行うべき高い
開発コストのものを
調整されたところの分割を行な
つて、将来への
料金差等をも除去して頂くような
措置をと
つて頂きたい。それには先に発表に
なつた大山私案のようなものを私共は非常に希望をいたしておるものであります。従
つてそれらの
調整を何とそこの特別
委員会の各位におかせられましても、十分御考慮に預かりまして、北海道の
電源開発に支障なからしめ、将来のこの
料金差等について大きな不安を生ぜしめないような
措置を願いたいと存ずるわけであります。
尚若し分断が必須のものであると、かようにいたしますならば民有民営、
独立採算制というこの
建前に関して、それ相当の法的
措置をと
つて頂きたい。例えば関発につきましては、最前申上げましたように
開発公団ができますか、或いは
開発融資
法案ができますか、それらの
措置をと
つて頂き、又
料金差につきましても、法律的
措置によ
つてこれがなし得るような画然たる
措置を示されんことをお願い申上げて、以上反対の
意見を申述べます。