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国務大臣(
高瀬荘太郎君)
只今議題となりました
商品取引所法案につきまして
提案の
理由を御
説明いたします。
昨年来
経済九
原則及びドツジ・ラインの実施によりましてインフレも漸く終熄し、物価も安定して参り、物資に対する統制も順次解除されつつある
状況であります。
従つて公定価格制度や配給統制は極く限られた一部の商品についてのみ存続し、大部分の商品の
生産及び配給は
経済原則によ
つて規制されることと相成
つたのであります。従いまして商品の価格は
需要と供給のバランスによ
つて決定されることとなり、この
需要と供給を成るべく広い範囲に亘って集中して公正な価格を作るための市場の形成が必然的に
要求されて來ると共に、現物のみならず、先物についての市場も
要求されることになり、ここに商品取引所の設立が業界から強く要望されるに至
つた次第であります。
我が国の商品取引所は、古くは徳川時代の米会所に由来し、
戰前におきましては心を中米とし、綿花、綿糸、綿布、繭、生糸、人絹糸、雑穀、肥料、砂糖等広汎な種類の商品に亘
つて設置されていたのでありますが、戰時に入りこれらの商品について全面的な統制が行われるに及んでその機能を失い、
昭和十六年頃までには盡く閉鎖又は解散されるに至
つたのであります。而して商品取引所に関する
法律も、明治二十六年の制定にかかる取引所法が数回の改正を経て今日に至
つている次第であります。即ち
昭和二十二年証券取引所開設の必要に応じ全く新らしい構想を以て、証券取引法が制定されたのでありますが、商品取引所については未だ開設の時期に非ずとして何らの工夫もなされず、ただ、一応旧来の「取引所法」に「商品」という字句を冠して残されていたのであり、これが現行の商品取引所法であります。
従つて商品取引所を、新たに開設するに当
つては、先ずその根拠法規である商品取引法を現在の
経済の実情に即したものとするため新たな構想の下に全面的に改正する必要が生じたのであります。
以上改正をいたしました主要な点について御
説明を申上げます。
先ず第一に、現行法によりますと、取引所は株式会社組織によるものと会員組織によるものと二者いずれをも認めておるのでありますが、今回の改正案では、会員絹織のみが認められることとな
つているのであります。
株式会社組織によるときは、実際の取引業者にと
つて開設の必要がない場合においても、投機的な取引のみを行うことを
目的として取引所が設立される危険性がありまするし、会社として利益を挙げ、配当を殖やすために、実情に副わない売買であ
つても取引高が多額に上ることのみが念願される傾向を誘致し、又実際に取引を行う者とは別個な会社の幹部によ
つて取引所が管理されることとなる等、従来からその弊害が批判の対象とな
つていたところであ
つたのであります。
従つて今回は会員組織のもののみを認めることとしたのであります。
次に今回の改正の第二点は、取引所の設立に当
つて、免許主義を止めて、登録主義をとることとしたことであります。本
法案では取引所の設立の
要件はできるだけ
法律上明記することとし、法定の
要件を備えたものは、特に
法律で定めた登録拒否の
規定に該当しない限り登録を行うことといたしました。之は官庁の許認可等による自由裁量の余地をできるだけ少くし、業界の自主的な
活動に俊つ趣旨であります。
次に改正の第三点は、取引所において上場することのできる商品を法定している点でございます。この
法安では、綿花、綿糸、綿布、乾繭、生糸、人絹糸、スフ糸、毛糸、ゴム等が法定されておりますが、これらは大体において曾ての取引所に上場されていた商品であり、今後においても取引所の設立が妥当又は必要と認められるものであります。併しながら今後の我が国の
経済は
戰前とはおのずから異なるものがありますので、其の他の商品につきましても取引所を設立することが必要となる場合も予想されますので、本
法案では必要の都度政令で商品の品目追加が行われるような途を開いてあるわけでおります。
次に改正の第四点といたしまして、本
法案では民主化という点から種々の
規定がしてあります。即ち先ず第一に証券取引法の先例に倣いまして取引所における各種の紛争を円満に解決するために、仲介の制度を創設しております。これは紛争の当事者の言分を聴きまして妥当な解決点を見出だし、その受諾を勧告いたすものであり、その他にも主務
大臣の処分に際しては必ずその事前に公開による聽聞を行う等行政の民主的な運用を期している次第であります。尚今回の改正案におきましては以上の外にも改正点が種々存するのでありまして、例えば商品取引所の定義を明確にしたこと、他人の委託を受けて売買取引を行う者を商品仲買人として特に厳重な規制を加えていること、取引所の取引についても従来と異り可なり厳重な監督
規定を設けたこと、
定款、業務規程、受罰契約準則の必要記載事項を明確にしたこと等がこれであります。
要は、免許主義を登録主義に改正した等
産業界の自主的な
活動を尊重したこと、取引所の義務についてはできるだけその自治に委したこと、併し他面取引所の国民
経済上の
重要性に鑑み売買取引の
基準を明確にし、その行き過ぎの
訂正を図り以て売買取引の公正と委託者保護の徹底を期したことが今回の改正の大綱であります。
何とぞ愼重御審議の上速かに御賛成あらんことを御願いいたす次第でございます。