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1950-03-29 第7回国会 参議院 懲罰委員会 第2号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十五年三月二十九日(水曜日) 午後三時十四分
開会
—————————————
委員
の異動 十二月十二日
委員宇都宮登
君は
辞任
した。 十二月二十一日
議長
において
松下松
治郎君を
委員
に指名した。 一月二十日
委員赤木正雄
君は
辞任
し た。 一月二十六日
議長
において
岡部常
君 を
委員
に指名した。 二月十三日
委員小野光洋
君
辞任
につ き、その
補欠
として
鈴木安孝
君及び栗 栖赳夫君を
議長
において指名した。 三月二十日
委員栗栖赳夫
君
辞任
につ き、その
補欠
として
鈴木順一
君を
議長
において指名した。
—————————————
本日の
会議
に付した
事件
○
懲罰制度
及び
慣行等
に関する
調査
の 件
—————————————
太田敏兄
1
○
委員長
(
太田敏兄
君) これより
懲罰委員会
を
開会
いたします。 本日は、かねて
調査
中の
懲罰制度
及びその
慣行等
に関する
調査
につきまして、過般
アメリカ
の
議会政治
を視察して帰られました
高田議員
、
近藤事務総長
、
金森国会図書館長等
に
出席
をお願いいたしまして、
アメリカ
の
議会
における
懲罰制度
及びその
運営等
につきまして、見聞になりました点を御
報告
して頂きたいと思うのでありますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
太田敏兄
2
○
委員長
(
太田敏兄
君) それではそういうことにいたします。先ず
高田議員
の御
報告
をお願いいたします。
高田寛
3
○
委員外議員
(
高田寛
君) それでは私から見て参りました点について御
報告
申上げます。 実は
議員団
の末席を汚して
アメリカ
に渡ります際に、
懲罰委員長
から、
アメリカ
の
議会
の
懲罰
問題の取扱い方について
調査
して來て貰いたいという御
注文
を受けまして、この点も
調査
して参るつもりで
行つたの
でありますが、
アメリカ
の
議会
は、
運営
の
方法
が
日本
の
議会
と大分違
つて
おる点も多くありまして、いろいろこちらで
懲罰事犯
に挙げられるような
事件
が非常に少いのであります。從いましてこちらの
懲罰委員会
に
相当
するような
委員会
というものは
アメリカ
には全然ないのであります。むしろこちらに
常任委員会
の中に
懲罰委員会
があるということを話しましたところが、
アメリカ
の
議員連中
は驚いているというような次第なのであります。それで
アメリカ
ではやはり
議院
、つまり
ハウス
の
懲罰権
は
憲法
に決められておるのでありますが、この
懲罰権
の発動ということが極めて稀であるのであります。それで
欠席議員
に対しても処罰を以て臨むということができる旨の規定はございます。併し実際上は
出席
を強制するというようなことは全然や
つて
いないそうであります。つまり
アメリカ
の
議院当局
の
説明
によりますと、欠席しても
選挙民
がそれを容認するならば差支えないではないか。それで院としては強制する必要はないのであ
つて
、こういうような
欠席議員
をどう扱うかということは、
選挙民
が判断すればいいというような
説明
もいたしてお
つたの
であります。尚その外に
懲罰
に該当するような
事件
が起
つて
も、院が別にそれを処罰しなくとも、
選挙民
がよくその
行動
を監視しておるから、そういう
議員
は次の
選挙
には必ず落選する、これが何よりも重い事実上の
懲罰
である。だから
議院
としては別に
懲罰
というようなことをする必要はないということの
説明
を聞かされたのであります。 それから尚
アメリカ
におきましても、
議員
は三分の二の同意を以て
除名
するということは規定してございます。併しこの
実例
が又殆んどないということでありました。それから尚又ついでに
カナダ
の
議会
に参りまして、この点も
質問
いたしたのでありますが、
カナダ
の
議場
において、特に我々が関心を深くいたしました点は、その
議場
において非常に喧ましく騒ぐというような不都合な点があれば、
議長
が一回
注意
を発しますが、
注意
を発しても尚これを改めない際には、
退場
を命ずるのであります。そのときは、
守衞長
がその
議員
の所に出て参りまして、そのときの
言葉
が面白いのですが、ゼントルマン私について來て呉れというのだそうであります。そうするとこれはもう絶対の問題で、どうしてもついて行かなければならない。そうすると
議場
から外に出されてしまうので、それでもう
議員
の
権能
が行えなくなるので、一番のこれが
懲罰
であるということを、
説明
を聽かされたのであります。要するに
憲法
には
議院
の
懲罰権
、つまり
ハウス
の、
議院
の
懲罰権
というものは規定してはおりますけれども、
国民
が
選挙
した名誉ある
議員
に
懲罰
を以て臨む必要があるような
事件
は、これはその
実例
が殆んどないので、この
取扱方
というようなことを
説明
することはできないというのが
結論
でございます。
日本式
に考えますと、たとえそういうことがなくても、やはりそういう場合を想定して
取扱手続
を決めて置かなければ気が済まないというようなことが我々の從來の考え方でありますけれども、英におきましては、実際問題上必要の起らないことはたとえ
憲法
に決めてあ
つて
も、それを実際にどう行うかということは何も決めて置く必要はないじやないか。そういうことが起
つた
ら、その起
つた
とき処理する。併しそういう
事件
が起らないからそういう細かい取決めもない。又前例もないので御
説明
する
資料
がない。これが
結論
でございます。要するに
アメリカ
の
議会
、又
カナダ
の
議会
におきましても、
議場
におきましては十分に
議員
の
発言
を傾聽する。
反対党
の
議員
の
発言
も、やはりこれが一部の
国民
を代表している
発言
としてこれを傾聽するという
習慣
がよく滲み込んでおります
関係
上、
議場
で非常に喧ましく騒ぐというようなことは実際問題として起らない。又一方
議長
に
相当
の
権限
を持たしてお
つて
、万一起
つた
場合には
議長
が適当に処理するということで、何ら今まで支障を來たさない
関係
上、
懲罰委員会
というようなものを設けるというようなことは、まあ全然考えたこともないというのが、私の知り得ました実情でございます。 尚又御
質問
でもございましたら、
自分
の知
つて
おる
範囲
において又お答え申上げたいと思います。 尚
懲罰
の件につきましては
近藤事務総長
が、
アメリカ
の
議会
の
事務総長
からいろいろ御
説明
を聽きに
行つて來
ておりますから、尚一層詳しいことは
近藤事務総長
から又改めて御
説明
があろうと思
つて
おります。
太田敏兄
4
○
委員長
(
太田敏兄
君) 有難うございました。
質問
がありますればお願いいたします。
——ちよ
つと
速記
を止めて下さい。 〔
速記中止
〕
太田敏兄
5
○
委員長
(
太田敏兄
君)
速記
を始めて。 次に
金森国会図書館長
は別段
報告
する材料もないとのことでありますが、せめて御感想でもお願いいたしたいと思います。
金森徳次郎
6
○
国立国会図書館長
(
金森徳次郎
君) 私は参りましても、大体
ワシントン
で
図書館
に関する方に主に
行つて
おりまして、
議会
の
様子
というものを細かいところまでは立至
つて
研究いたしておりません。これには参
議院
の
近藤
君と、
衆議院
の
大池
君が專ら技術的な
調査
に当
つて
お
つた
というふうに了解いたしております。私の考えましたところでは、
アメリカ
の
議会
は
相当
政治
の実質については激しい論争をいたしまするけれども、
議会
の中におきましての諸般の
行動
は非常に
秩序
を守るということが発達しておるらしいのでありまして、
ハウス
の方へ参りましても、セネトの方へ参りましても、又他の地方の
議会
へ参りましても、
規則
は几帳面に守る。その守る前提の下に許されたる
範囲
の
方法
で、
政治
的ないわば、
闘争精神
を現わすというような
秩序
ある争いということに重点を置いておるらしいのであります。
從つて議会
におきまして書物によりますると曾て
懲罰
をしたという事実はございますけれども、今日それは実際にはなかなか起り得ないことであ
つて
、
從つて
私共がそれについて研究するという途もございませんでした。それから先程
高田
さんが言われましたが、実際
カナダ
の方へ参りましても、断片的な話題として聞いておりまするのは、
議長
の
議場
の
統制
をする
権能
が非常に強いようにな
つて
おりまして、例えば
議場整理
の必要があるという場合には、初めは
議長
が抽象的に
議場
において騒いではならんというような勧告をいたしまして、その間は無事でありまするけれども、はつきり
名前
を挙げて、何何君、
秩序
に反しておる。こういう
名前
を挙げて宣言をいたしますると、その人は直ちに
守衞長
によ
つて室外
に拉致されるということができるようにな
つて
おる。事実はないかも知れませんが、
守衞長
がみずからその時にこそ
自分達
の仕事が起る。こう言
つて
おりました。こういうことが物語にな
つて
おるくらいでありますから、結局実態は平穏無事に
行つて
おるというふうに存じました。一面において非常に訓練がよく行き届いておると、こう思いました。
從つて
又
懲罰
について
現実
の眼で見たお答えができないというような結果にな
つて
しま
つた
わけであります。
松井道夫
7
○
松井道夫
君
金森先生
は
会議
の模様を御覧に
なつ
たと思いますが、
野次
のようなものはやはり飛ぶのでしようか。
金森徳次郎
8
○
国立国会図書館長
(
金森徳次郎
君) 私共の
行つて
おりました中では、
野次
は聽かなか
つた
ようですね。それは激しい
議場
の場合には丁度行き合わせなか
つた
から何とも言えませんが。
高田寛
9
○
委員外議員
(
高田寛
君) その点は少し申上げますと、
野次
というようなものは、先ず私共州
議会
や、
連邦議会
で傍聽したときもありませんでしたし、又事実ないそうですな。それで兎に
角他人
がしやべる以上はそれを傾聽するものとしてこれを敬意を払
つて
聽くという
習慣
がよくできておる。併し又非常につまらない議論が出る場合には、
野次
りはしないけれども、もう勝手に横を向いていたり、中には
議場
で新聞を出して平気で読んでおるのがおる。要するにしやべることを妨害はしない、併し
自分
が聽くのがいやならば、外のことをや
つて
いるというようなことなんですな。それで人がしやべるときに、それをしやべれないように妨害するというようなことはもう殆んどないという
説明
を聞かされました。
松井道夫
10
○
松井道夫
君 それからまあ
日本
の
議場
では、
議場
の
交渉委員
のようなものがあ
つて
、例えば
事務総長
とか、或いは
議事部長
なら
議事部長
のところへ行くわけですが、そうすると
大勢
、
委員
である者もあるでしようし、そうでない者もあるでしようし、
大勢
どかどかと
行つて秩序
が乱れるというようなことがよくあるのですが、
議場
内のいろいろの
交渉
とかそういう点は……
高田寛
11
○
委員外議員
(
高田寛
君) その点は
ちようど
私の見て來たことは御参考になると思うから、御
説明
申上げます。まあ
議場
はやはりこちらと同じように並んでおるのですが、そこに
与党側
と
野党側
とにそれぞれ
議場
の
リーダー
がおるのです。これをマジヨリテイー
リーダー
と、マイノリテイー
リーダー
、多数党の何と訳しますか、多数党の
院内総務
、
少数党
の
院内総務
というふうに訳せばいいのではないかと我々
話合つたの
ですが、これが嚴然と控えておりまして、そういう
議場
のことはその両党の
院内総務
が全
責任
を持
つて
これに当
つて
おる。外の者は、
共和党
なら
共和党
の中の者が、
院内総務
に
注文
をつけに行くことはあるけれども、表だ
つた事務総長
との
交渉
とか、又他党との
交渉
は、両党の
野党
、
与党
の
院内総務
が
責任
を持
つて
当る。そのことがはつきりしておるので、皆一緒に壇上に駈け上がるというようなことは全然起らないのですな。
院内総務
というものに非常に大きな
権限
を持たしておるんですな。
太田敏兄
12
○
委員長
(
太田敏兄
君) それでは
近藤事務総長
は
議事
の都合で手が引けませんので、暫く
休憩
したいと思いますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
太田敏兄
13
○
委員長
(
太田敏兄
君) それでは
休憩
いたします。 午後三時三十四分
休憩
—————
・
—————
午後五時十三分
開会
太田敏兄
14
○
委員長
(
太田敏兄
君) 再開いたします。
近藤事務総長
に
報告
を承わります。
近藤英明
15
○
事務総長
(
近藤英明
君)
出発
前に
議員団
に対しまして、当
委員会
を代表せられました
委員長
から、いろいろな
調査項目
を頂戴いたしまして、これらの
項目
を調べて
來い
というような御要求がございまして、私共は
ワシントン
到著直後、
上院
の
事務総長
の
部屋
で
歓迎会
を受けました際に、当時私の
連絡万端
をいたしておりました
ゼネラルリーバー
を通じまして、当
委員会
の
調査項目
を全面的に
向う
へ渡しまして、尚重ねてその後
図書館側
との会談の際にも、尚これをもう一遍同じものを渡しまして、
回答
を求めたいということを申し添えました。その際外に団としての
調査項目
もございましたので、これも同時に提出いたしまして、どちらにつきましても滯在中に
書面
で
回答
を受けることができませんので、それで
出発直前
に
ゼネラルリーバー
を通じて、これはどうにかして貰えんかということを照会いたしましたにつきまして、
議会関係
についての話は分
つた
。それらは調べて上げる。
懲罰
問題については
資料
がどうも
現実
の
資料
がないので、
憲法
に明らかに
懲罰権
があることが書いてあるけれども、尚
憲法
に從えばこの
懲罰
には
除名権
があることが明示されておるけれども、我々が承知をしておるところでは、その例が少しも見付からないので、これ
図書館
の
立法考査局
の方に命じた上、そういう事案があればその事実に対して正確なことを御
返事
する、かようなことでございましたので、遂に
書面
は
向う
で貰うことができませんでした。尚今日までその
書面回答
は得ておりません。尚帰りました後にこちらで
ホイツトニー将軍
から、
向う
の方で
調査
漏のことがあ
つて
調べたいことがあれば言
つて
貰いたい。何ぼでも便宜を計るから、こういうような
申出
が
マツカタ
君から参りましたので、
マツカタ
君には重ねて先般
ワシントン
にこの間の
調査
を御依頼しておるけれども、
回答
がないので何とかやはり一応こういうことは
該当事項
がないということを
書面
で頂戴したい。
書面
で頂ければこちらで便利だということを帰国後も依頼いたしております。それで途中
向う
に参りましても、各州、各市、それから
連邦
の
議会等
でいろいろ
質問会
の場合、大体
上下両院
の
事務総長
と、私とこちらの
衆議院
の
大池総長
で懇談いたしました際も、
懲罰
の問題につきましては、できるだけ聽いて、そうして
返事
を得ようとして努力いたしました。それでその間得ましたところで大体
向う
の
返事
は例がないので、
法規
には、
憲法
に
懲罰権
がある以外のことはどうもそれ以上のことはないというので、
具体的例
がないために
説明
ができかねるということが多か
つたの
ですが、
コロンビヤ
で、サウスカロライナ州の
議会
に参りましたときに、サージエントアツトアームといろいろ話しましたけれども、あなたの方で今
議長
の
規律権
に伴う
懲罰権
の問題というような問題で、どういうふうに扱
つて
おるか聽きたいと言
つた
ら、どうも
懲罰
というと、まだそこまでに
なつ
た場合は長年
守衞長
をや
つて
おるけれども例がない。
自分
として一番困
つた
問題が
一つ
ある。それは三年に一遍ぐらいだが、たしか夜
会議
を たしましたとき、一杯頂戴して
アルコール分
を含んで出て來られたので、
守衞長
は御遠慮下さいというが、本人は醉
つて
おる覚えがないから大丈夫だ、
議場
に出て非礼なことはしないからというのを、御遠慮下さいと忠告して止めさせた場合があるが、
紳士
に対して醉
つて
おるからということも言えないし、そういうことが
自分
としては一番心苦しいということを
守衞長
が言
つて
おりました。これによ
つて
想像
しますと、こういう問題でお困りになる
事例
は少いのではないかと考えられます。それからその後も各地でこの問題を聞いて見ますと、どうもこういう問題で
懲罰事犯
として取扱わなければならんという
事例
は殆んどない。ただ
議長
の
規律権
として、
議長
が一度命じたことは実行されるのだ、
発言
についてもいろいろ
規則
があり、或いは両
党協議会
をする場合もあるが、最終的の
発言
の
決定
をする
権限
は
議長
にあり、
議長
が一度決めた以上は、これに從わざるを得ない。だから
議長
の
統制権
というようなものは絶対的である。こういう意味の
説明
がありました。更に
懲罰
まで持
つて
行かなければならん
事件
も
議長
の
権限
が強くてそこまで行かないという裏付けじやないかと思うのですが、ただ更に
ワシントン
についてそういう
質問
をした
あと
で、
カナダ
へ参りました。
カナダ
であそこの
議会
を見学しておる際に、
いろいろ目
の付きましたことは、非常に靜かな
議場
で
議長
が丁度恰も
権威
の表徴であるかのごとき
議長
が、高いところでガウンを着て嚴めしく坐
つて
おる。
議長
が立
つて
宣告すると全員着席する、廻りにおる給仕が腕組みをしてさつと立ち上る、そういう儀礼が守られておるところを見まして、あそこで
事務局
と懇談の会が僅か二回ございましたが、十分に私
大池
君と共に会談する時間を与えられた、その際
向う
の
事務局
といろいろ話しまして、こちらで
懲罰関係
の
手続
について特に聞きたいというのでいろいろ立入
つた
点を
議長
から……特に
懲罰
になるような
事項
ということは余りない。
自分
の方ではこういうふうに扱
つて
おるということで、それは例えば
ルール違反
がある、
法規違反
のことが行われておるというと、
事務総長
が
議長
の前に
行つて
丁寧に一礼する、「これこれのことは
法規違反
でございます。」かようなことを言うと
議長
は直ちに立上る。
議長
が立
つて
ルール違反
があ
つて
も全部着席するまでは沈黙を守らなければならない。それでも聞かずに尚
ルール違反
を継続したらどうなるかと申しましたら、
議長
はそのときにはどこそこ州、或いはどこそこプロビンスの
選出
の
議員
さんという
言葉
を
議長
は言われる。そうすればその
議員
は非常な
注意
を受けたことになるので、直ちにその行為を止め
発言
を止めなければならん。若しそれを聞かなければどうなるかと私は勇を鼓して突つ込んだら、その場合には「
ミスター誰々
、どこそこ
選出誰々
。」というのです。誰それさんという
言葉
を使う、こういうことでその場合はどうなるかと申しましたら、その場合にはその
議員
は……
議長
と向い
合つて守衞長
が着席しております。「
誰々
。」と
議長
が宣告すると、その人がそつとこちらへついて來て下さいと
言つて外
へ引張り出してしまう。ひとたび引張り出された人は再び
議場
において
議決
があ
つて
、着席が許されるまでは
議員
としての一切の
権能
が停止されて
議場
へ復することはできない。これは最も強い
懲罰
である。そういう例がありますかと言
つた
ら、
自分
の
時代
にはない。
自分
の
前任者
の
時代
にはあ
つた
とは聞いておるけれども、稀れな例に過ぎない。その
権限
のあることは事実だ、仮に
議長
が若しそういう
ミスター誰々
というようなことを頻繁に行う、或いは不当にそういうことを行うことが仮りにあ
つた
らどうなるかという
質問
を私から重ねて追究いたしましたところ、随分考えた挙句に
議長
はそういうことをすることはないし、そういう
批判
を受けることはないが、仮に
議長
がそういう
批判
を受ける場合があるとすれば、これは
ハウス
において、特にそういう
調査委員会
でも
作つて検討
の上、
ハウス
において
議長
の
行動
が間違
つて
おるという
議決
をする。この場合に初めて
議長
の
退場
を命じたことの
措置
があやまりであるということで、これを取消される。それは法的にはできる、さような
自分
らの
議長
の
決定
を覆すような
措置
をしたことは聞いたことがない、かようなことが
カナダ
で得た
返事
でございます。それではその外に何か
議員
で、
懲罰
に付された
議員
の例はないかと聞きましたのに対しまして、年数はいつかは知らんが、よほど前
上院
の
事務総長
をしておりまして、その人が
今上院
の
議員
をや
つて
おりまして、その人の一代前の
事務総長
の時分と記憶するけれども、或る国の秘密を売
つた
というような
事件
がある
議員
について起
つて
、その場合に
議院
は
議決
をも
つて
懲罰
をしてこの人を
除名
した、これは
院内
の
行動
ではなく、院外において兎に角 密を売
つた
という
事件
が暴露したので、これは
議院
の体面上許せざることであるとして、
議院
の
権威
のために
除名
を断行することは、
カナダ
の
議会
における最も目ぼしい大きな
懲罰事件
である、こういう
説明
を受けまして、それから
ワシントン
へ参りましてからは、その点につきましては特にいろいろ
事務総長等
につきまして聞きましたが、先刻申上げました通りどうも例がないということでございます。 それから
懲罰そのもの
につきましては殆んど例がつかめませんが、
事務総長
からも的確な
返事
がありませんし…
法規
はないかと言
つた
ら
憲法
にはつきりしているので、あれでいつでもやれるじやないかという
返事
でございました。いつでもや
つた
かというと、その例はございません……それで若しそういう問題が起
つた
とき同じような
質問
をあなたの方で
議員
から
質問
を受けたらどういう
返事
をするかと言
つた
らそういう
質問
はことが起るまでは受けないだろう、その
事件
が起
つた
ときに恐らく解決されるような処置が取られよう、だから私は事前にかくあるだろうというような
返事
をすることは不可能だという
返事
がありました。
懲罰
の
継続審査
の問題がいろいろありまして、こちらの
質問事項
の中にもありました、ことで、
懲罰
に対する
継続調査
のための
資料
は掴み得ませんでした。
継続審査
はしておるかとい
つた
ら、
コングレス
と
コングレス
の間にはございません。これは
改選
と
改選
の間には
継続審査
の例はございません。
一つ
の
コングレス
の間における
セクシヨン
と
セクシヨン
の間には、
継続審査
があります、重要な議案については
ハウス
の
議決
によ
つて
行な
つて
おる、例えば現在の非
米活動委員会
がその例であります。非
米活動委員会
のごときは、この
ハウス
の
議決
によ
つて継続審査
をいたしておりますとかような
返事
でございます。 尚
懲罰委員会
というようなサージエントコミツテイが
向う
の
常任委員会
にはないということは
法規
上明らかに
なつ
たことであります。一応私の申上げました今日の
状況
はこの程度のことを申上げたいと思います。
松井道夫
16
○
松井道夫
君
向う
の
議員
或いは
議員会館
とい
つた
ような工合はどうな
つて
おりますか、その点聞きたいと思います。
懲罰
に関連するものとして酒ですね、酒を飮んで
議場
へ入るようなことは原則としてない、而も夜にな
つて会議
が続行されるような場合もあるということなんですが、この例えば
国会
の
議員食堂
とい
つた
ようなもので酒を出すとかいうようなことはないのでありますか。
近藤英明
17
○
事務総長
(
近藤英明
君) 今の酒でございますが、これは今の
コロンビヤ
の場合も飮んで醉うて外に見えることがいけない、飮むこと自身は別に禁止されない、
議員食堂
で飮ましておるかどうか確かめませんし、
議員食堂
へは
議員
以外には入れませんし、小
食堂
で
向う
の方に御馳走になりました。
ちようど
私共着いた日に
行つて
、直ぐ
向う
の
上院
で特に
議決
をいたしまして暫くの
休憩
を宣して
日本
の
議員団
と交歓をするというために
議場
で握手しました。その
あとカクテル・パーテー
をいたしたいということで
上院
の
事務総長
の
部屋
でやりまして、こちらの
議長サロン
のようなものがついておりまして、
事務総長主催
で両方の
フロアーリーダー
を
お呼び
になりまして、両党の
有力者
、それから
アメリカ
の
有力者
、これは
議員
以外の
キーナン
氏なんかも來ておりましたから、必ずしも
議員
だけに限らず、よその方も
お呼び
にな
つて
、
事務総長
の
事務室
において
カクテル・パーテイ
をお開きにな
つて
、盛んにウイスキーの杯が交換されたことは、事実でございます。かなり愉快にお飮みにな
つて
おりましたが、
議場
に出るときに
様子
が変
つた
状況
で出られるということは、
想像
されないのですが、ただ飮んだ後でどつかを歩かれるということは
想像
できますから、飮んだことが外に現われるということは、あすこの
習慣
として、私
想像
のつかない非礼なことだろうと思いますので、酒の飮み方が上手だということにもなると思いますが、現に
事務総長
も
相当
愉快に飮んでおられましたし、私達もいい気持で一、二杯頂戴してお
つた
というような、
カクテル・パーテイ
が行われたという
状況
でございましたし、午後も確か二時でございましたか、又本
会議
が始りました。
松井道夫
18
○
松井道夫
君 そうすると、
向う
の
議員
は、
相当酒
が強いということになりますね。
近藤英明
19
○
事務総長
(
近藤英明
君) 強いと申しますか、
自分
の飮んだ
状況
を外に現わして、乱れた様で人の前に出るということは、
紳士
としては
想像
のできない点ではないかと私は考えるのですが、
一つ
は
紳士
としての立場で飮まれるという点は、
議場
の
秩序
の問題ですが、何といいますか、
野次
があるではないかという疑問を持たれる方がよくあると思うのですが、
議場
で或る方が討論されます。質疑という形式はございません。殆どデイベイトでございますが、或る方の討論に対して、反対討論がございます。討論の最中に、反対側の方がそれに
質問
をされるのです。この場合に、勝手に横から
発言
をして
行つて
野次
をされるという
状況
はございませんで、随分盛んに御
発言
がありますが、一々手を挙げて合図をされます。その方を見て何かというような顔をされると、ウイルザ・ジエントルマン・イールド・ツー・ミー、あなたは私に譲
つて
下さいという鄭重な
言葉
でございます。その場合に、
発言
者は極めて気前よく、よろしいという
返事
をされます。そうすると、
発言
をなさ
つた
方が、これこれの材料は違いはしないかと、こう言われると、それは御尤もだと言われる場合もありますし、
自分
の調べたところによればこれこれだと言われて、論旨を進められる。これは明らかに
発言
者には
相当
の痛手を加えることになると思いますが、決してこれを拒否されませんで、進んで聞く。その場合に、それが
質問
されれば、明らかにその時間だけ持ち時間は減るのですけれども、甘んじてこれを受けて、おられるし、同時に相手方も、本人の許可がなければやらないのです。又都合が惡ければ断わ
つて
もよいのだし、断る場合もある。断
つた
場合には、絶対
発言
はできないのだと、こういうことでした。つまり
紳士
として
発言
する以上は、相手が許さない限り
発言
はしないが、その代りお許しを得れば
発言
すると、こういうふうな御
説明
でございました。 大体の点は、先程
委員長
のお手許までお出ししましたのは、これは団といたしまして、
出発
前に
調査項目
なるものを作りまして、それで
向う
に参りまして、いろいろな
調査
をした点の
回答
をいたそうじやないかということで、小
委員会
ができまして、小
委員会
でそれを編集することにな
つて
おりますが、その前に、その小
委員会
の参考
資料
として、私だけの調べました、
向う
で聴取しました点並びに
向う
から頂戴いたしました
資料
等を、ここで御
回答
できるものだけをここに何しましたので、これは団としての
調査項目
の正式の
返事
ではございませんので、これは
近藤
の一個の見解はかように見て参りましたということでございまして、これを御参考までにこちらの
委員長
のお手許に出しました次第でございまして、この中には一部分は今の
懲罰
のことに関する部分も含んでいると、かように御承知を願いたいと思います。
松井道夫
20
○
松井道夫
君 先程衞士長というお話が出ましたが、衞士は
相当
数
議場
内にいるわけですか。
近藤英明
21
○
事務総長
(
近藤英明
君)
議場
内に衞士らしい者の顔は見ませんで、衞士長がいるだけでございます。大体建物の中に余りおらないのでございます。数は極めて少いのございます。それは
委員会
なんかの入口には、
委員会
は御承知の通り、公聴会のときだけは公開いたしますし、それからその他の場合にはエキゼキユーテイヴ・セツシヨンに、なりますと、いわゆる秘密会で、
委員
と專門員だけで法案を如何にすべきかということは論議されますので、廊下の入口に、門番といいますか、そういう人の立
つて
いるのは見ましたけれども、殆んど建物の中の警備として目立つような人員の配置は、一回もどちらでも見ませんでした。その代り
守衞長
と申しますか、サージエント・アツターム、これはこちらでは
守衞長
という観念が非常に低く考えておりますが、
向う
の
守衞長
というのは非常な
権威
のあるものでございますから、これが
議場
内に着席しておりますのを見ましただけで、その他
議員
場内に警備のための人員が配置されるというような
状況
は見ませんし、事実その必要はないだろうと思います。傍聴席には、そういう警備員のような者がおるのを見ましたが、傍聴席には、私共が入
つた
ときにも、警備員がおりまして、あなた方こうだ、ああだと、写真機は持
つて
入
つて
いいとかどうとか、
議場
の傍聴席にはそういう警備員の配置を見ましたが、傍聴席以外には見ませんし、建物には出入りが自由にな
つて
おりまして、
議場
の中にもどんどん自由に入れますし、あそこでは
議場
に入るのを取締る必要はないだろうということだけは感じました。 デモがあるかということを聞きましたが、
日本
ではデモが、
衆議院
で焚火をしたとか、飛び込んで來たとか、どつかの市会が占領されたとかいうことがありましたが、これは言わなか
つたの
ですけれども、あなたの方でもデモがありますかと、
国会
に対しては、やはり外へはや
つて
來て、
国会
の周りを廻
つて
帰ることがございますと、こういうことでした。別に
議場
の中に飛び込むとか、それを恐れて警戒しておるような風は全然感じませんでした。
太田敏兄
22
○
委員長
(
太田敏兄
君) その建物の外は、警察というものはどうですか。
近藤英明
23
○
事務総長
(
近藤英明
君) おりませんでございます。建物並びに建物の敷地は、一般法によりまして、サージエント・アツタームが警備権を持つことが定ま
つて
おります。その建物或いはその建物の敷地、構内において、何か毀損する、或いは
法規
に違反する行為を行
なつ
た者がある場合には、
守衞長
は直ちにこれを逮捕して正当な裁判に引渡せということに、
向う
から貰いました
資料
には、
法規
に定ま
つて
おるということはありました。それで、建物のところは、自由に私共行きましたし、こういう柵なんかございませんから、写真なんか写しにぞろぞろ入
つて
参りまして、警察官もおりませんし、それから警備員らしい者がそう沢山立
つて
おるような気配も見えません。
太田敏兄
24
○
委員長
(
太田敏兄
君) ちよつと
速記
を止めて。 〔
速記中止
〕
太田敏兄
25
○
委員長
(
太田敏兄
君)
速記
を始めて。この機会に
調査
の進行
状況
について簡單に御
報告
しますが、この
調査
は大体
日本
の帝国
議会
以來の
懲罰制度
及びその慣行を中心としまして、外の
アメリカ
、イギリス、フランス、ドイツその他欧洲の二、三の国の
懲罰制度
に関する
資料
を蒐集しまして、目下これを整理しておるのでありますが、ところが欧洲諸国に関するものは戰時中から戰後にかけまして、出版物の輸入が全然ありませんので、最近の事情が分りません。
資料
は皆古いものばかりでありまして、これは今日の場合止むを得ないと思うのでありますが、これらは又他日の機会にその足らんところを補う外はないと思
つて
おります。それで今会期も
あと
三十日ばかりにな
つて
おりますが、この
調査
は是非この
国会
中に取急いでまとめまして、本
委員会
の審議を経まして、本
会議
に
報告
する運びにいたしたいと思
つて
努力しておりますから、さよう御承知願います。ではこれで散会いたします。 午後五時四十一分散会
出席
者は左の通り。
委員長
太田 敏兄君 理事 松井 道夫君
委員
鈴木 安孝君 鈴木 順一君 岡部 常君 国立
国会
図書館側
国立
国会
図書館
長
金森徳次郎
君
事務局
側 事 務 総 長
近藤
英明君