○
政府委員(
武藤文雄君) 当然お説の
通り條例で、どういう場合にはどれだけの手数料、例えばここには千円以下とな
つておりますから、交付の場合は幾ら、再交付の場合は幾らというふうに段階をつけて決める、或いは画一的に決めるということは、そういうことは
條例で定めて行くわけであります。この
法律で相当細かいところまで
法律に
内容が盛られております。御覧の
通りに非常に詳細な
規定にな
つている。
本当に
命令に譲られた点は、その
手続、
書類、どこに出すという点だけで、実際問題としてこれ以上に
條例で
規定すべき
事項はないと思います。
次に移ります。第十四條は帳簿の点でございます。
営業のために帳簿を備えておきます。例えばここに書いておりますように、いつ質に受けたか、その品目、数量はどうか、質を置いて行
つた人は誰かという点を帳簿に明確にして置いて貰う。そうでないと、後に臓品の捜査のために協力を求めるとい
つた場合に齟齬を来たすということになりますと、この帳簿を備えて貰
つてその記載を適正にして貰う、これは非常に大事なことと存じますので、かような
規定にいたしたわけでございます。
古物営業法の場合においても同様の
規定がございます。
第十
五條はこの帳簿の廃棄、その場合においては
警察署長の承認を受けなければならない。滅失き損等の場合には届出をしなければならない。これも他の
法律におけると同様の
規定でございます。
第十六條は質受証の問題でございます。
質屋が質にとりましたときに、質札或いは通帳によ
つてこれを質置主に渡すことにな
つております。で、質にと
つたということを明かにするためにかような質札或いは通帳を必ず質置主に渡さなければならないということにいたしました。その
法律関係を明かにして置くことは、後でいろいろ誤解なり間違いが起らないようにするというたために、かような質受証を必ず渡す。でその
様式などは
命令で定めることにいたしました。
第十七條は掲示の問題でございます。
質屋は
営業所の見易い所に利率或いは利息、計算の方法、
流質期限、或いは
営業時間、そうい
つたようなことについて必ず見易い場所に掲示して置く。これは利用者がはつきりとその
質屋の條件が分るようにするということが便利であり且つ必要でありますので、必ずこれは明かにして置くという
意味においてこれを励行させる所存でございます。尚重要な点は、第二項におきまして
流質期限は三ケ月未満の期間で定めてはならない、少くとも三ケ月でなければならないということにいたしたのでございます。これは
公益質屋法においては四ケ月ということにな
つておりますが、この場合は
営業でありますので、又先程も御
説明申上げましたが、大体
営業の過半というものは三ケ月で行われているのが従来の慣行であります。
従つてその慣行を受けまして三ケ月というものをここに掲げたわけであります。そこでその次の第三項、第四項の点でこの
質屋が掲示したというその掲示
内容と変
つて質置主に不利益な契約をしてはならない。仮にそういう契約をしてもその不利益の部分は当然この掲示
内容によ
つて契約されたものと見倣すということにいたしまして、その店頭に掲げてある掲示
内容が嚴正に履行され、いわゆる闇といいますか、その質置主に不利益にならないように保護するという
建前でさような
規定を設けて、十分にその掲示した
事項が遵守され、質置主を不利益にならないようにという趣旨でかようなものを設けたわけであります。
第十八條は質物の返還で、質置主は流質期間前であればいつでも元金と、それから
利子を拂いまして、その質物を受けることができる。これが質の特色でありまして、いつでもとにかく流質期間内であればいつでも金を、元金、
利子を揃えて持
つて行きますればいつでもその物を返して貰えるというのが
庶民金融としての質の特色であります。でその趣旨を受けまして、とにかく元金と
利子を揃えて行けばいつでも貰える、返して貰えるんだ、その日でもいいんだということにな
つておりますので、その趣旨のことをここに掲げたわけであります。でその場合には前に渡しました質札、或いは通帳、それを示して引返しを受ける、物を返して貰うわけであります。尚第二項に、
質屋がその物を返す際においては、その人は間違いな人だということをやはり確認して相手方から、とにかく
自分が預けたに違いない、或いはその権限があるんだということをはつきりさした上において物を返すということにいたしたのであります。
第十九條はこの流質物の取得及び処分の
規定であります。
流質期限を掲示板に三ケ月以内の期間として掲示してあります。その期間内に元金と
利子とを持
つて返還を請求に来なか
つたという場合には、これは
質屋の特色といたしまして、流質期間後はその物の所有権を
質屋が取
つてしまうのであります。これが質の
制度のまあ特色にな
つているわけであります。ところがそこに但書がついております。
質屋が成る程流質期間後当然所有権を取得するのでありますが、ところがまだその
質屋が流質物を処分してなか
つた。まだその物を持
つてお
つたという場合においては僅か日数が過ぎたからと言
つて金を、元金
利子を揃えて行
つたけれども物を返して貰えないということは質置主に誠に気の毒でございます。そこでできることならこういう場合においてはその元金、それからこの遅れた分までの日数の
利子を揃えて金を持
つて行
つたならば、物を返して貰えるということが望ましいわけであります。併し一方
質屋にして見ますれば、契約でとにかく流質期間というものが一応決ま
つておる。
従つて極端に言えば一日と雖も猶予はできないということが言えるかも知れません。併しそこは
お互いの信義誠実の原則によ
つて、日数は若干遅れた、併し
質屋がまだその物は処分しないで持
つてお
つたという場合ならば、できるだけ
質屋は質置主に物を返してや
つて貰いたい、とい
つてそれを義務化するということは
質屋に対しても酷に過ぎる。
一つお互いの信義誠実によ
つてできるだけ円満に事を進めるようにしなければならないという
意味において第十九條の
規定を置いたわけであります。第二項に
規定がございますのは、
質屋はさてその流れた物をどうしておるかと申しますと、これを、例えば
古物商に持
つて行つて売るとか何とかしておるわけであります。ところがよく行われておりますのは、古物市場に持
つて行つて販売する場合が非常に多いようであります。そうい
つた場合においては、
古物営業法に
規定がありますように、古物市場は
古物商のみに限
つて出入できることにな
つております。そこで
質屋についてはその場合においては古物市場に
行つてや
つてもいいのだということを特に認めた、その
意味において第二項の
規定を置いたわけであります。
第二十條は質物が滅失した場合、これは非常に複雑な問題が起
つて来るわけであります。そこで先ず第一項におきましては、災害その他の
理由によ
つて質物が滅失、毀損或いは盗難にかか
つてしま
つたという場合にはね先ず
質屋がその質置主に速かに通知をするということをして貰う。そこでさて今度はその災害等によ
つて滅失、毀損した場合が、いろいろの場合が考えられる。先ず
質屋及び質置主双方の責に帰することのできない事由によ
つて滅失、毀損、盗難にかか
つてしま
つたという場合はどうするか。この場合においては民法の原則によりますと、
質屋は
自分の
責任に帰すべき
理由によ
つてその物が滅失、毀損したのではないので、
従つてそれに対する損害賠償はしなくてもいいことになる。併し一方質置主の方から金を拂わなければならない義務というものは消滅しない。つまり物は受取れないけれども、金は返さなければならないとい
つた状況になるわけであります。で、従来
質屋においてはこうい
つた場合においては両方共なくなる。つまり
質屋も質物が預
つてあ
つたものが、たとえ
自分の
責任ではないけれども、物がなくな
つてしま
つた、その場合において、損害賠償の
責任はないけれども、併し質置主から金を返して貰う債権も消滅するというのが、結局互いに両方で損をしたということになるわけでありますが、さような慣例が行われ、又実際問題といたしましては、
質屋においてはこういうものに普通保險をつけておるようであります。
従つて保險によ
つて質屋は損失を免れるということが実際にも行われておりますので、
従つて両方の責に帰することのできない事由によ
つて減失、毀損した場合においては、
質屋は物を返さなくてもいい、勿論返せないのですが、それについての損害賠償の
責任もないし、又預けた人も金は拂わなくてもいいということにいたしたのであります。ところでその次は、
質屋が
自分の
責任で、責に帰すべき事由によ
つて物が滅失、毀損した、盗難にかか
つたという場合においてはどうするか。この場合においては当然損害賠償に応ずる
責任があるわけであります。
自分の
責任で滅失、毀損したという場合においては、
質屋はそれに対する損害賠償の
責任が起るわけであります。ところが予めそうい
つた請求権はないのだというこの約款を附して契約する、予めこうい
つた場合においては損害賠償の請求はしませんという、請求権を放棄をさして契約するということが行われますと、丁度金を借りたいという人の、弱い身の立場から、それでも
承知して契約するという場合もあり得るわけでありますが、このような場合においては誠に利用者の立場から言えば気の毒であります。
従つてかように、予めそうい
つた質屋の
責任に帰すべき場合にでも損害賠償はしませんということを予め契約を強いるということは、如何にも酷に過ぎるのでいけないということを第三項に示したわけであります。