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参考人(村上義一君) 本日は有難うございました。本多国務大臣も御出席下さいまして誠に有難うございます。全国の私鉄が現在
負担しておりまする
地方税額は二億円余であるのであります。今日は特にお断りして置きますが、専ら
地方税についてお聴き願いたいと思うのであります。二億円余あるのでありますが、近く政府が提出されんとする案を人に伺いますれば、
国税は若干減少いたしますが、
地方税は二十六億余になるのでありまして、丁度十三倍に増加するのであります。全く
企業運営上致命的な重税であると思うのであります。この二十六億、十三倍という
数字につきましては、正確な
数字でありまして、監督官庁の方に御照合あれば明白だと思うのであります。只今御手許に重ねて差出しました
税制改革の私鉄
事業に及ぼす影響と題しておりまする印刷物、この要望書を昨年十月に参衆両院議員諸公に提出しまして窮境を訴えた次第でありまするが、本日再び実状をお聴き取り願う機会を與えられましたから、私は全国の私鉄百六十社余を代表しまして、私鉄の実状なり、又その特性なりを率直に申述べまして、そうしてこの際国鉄と同じく私鉄に対しましては一切の公課公租を免除されることは当然であると信ずるゆえんをお聴き取り願いたいと思うのであります。併し若し不可能でどうしてもそれはできないというのでありますれば、少くとも二十三年度の
税額の三倍
程度に止めて頂きたい。そういうように格段なる御配慮を衷心から懇請する次第であります。
私鉄の現状についてでありますが、元来私鉄は交通機関としての機能は国鉄と全く同一でありまして、国鉄と共に経済、
産業、文化の動脈をなす典型的な
公益事業であることは多言を要しない次第であります。従いまして国家の監督が頗る峻嚴でありまして、又世論の批判も熾烈であるということ、そういう立場に置かれておるということは申上げるまでもないのであります。私鉄の業態は旅客の輸送が主でありまして、貨物輸送は一
部分に過ぎないのであります。
收入からこれを見ますると、貨物
收入は総
收入二百六十億円のうちで大体三十億円
見当でありまして、一割余りに過ぎないのであり、そして一面
地方鉄道及び軌道の輸送しておりまする旅客人員は、年間最近四十三億人でありまして、国鉄の旅客輸送は三十億人前後であります。大体国鉄よりも私鉄の方が約四割多いのであります。規模が比較的大きい十三の
会社だけの輸送人員を見ましても、大体国鉄の全輸送人員の八割になんなんとしておる
数字であります。この
数字だけをお考え下さいましても、如何に国民の近距離交通上、又通勤通学上、更に
住宅政策上、又経済、
産業上に重大な使命を課せられておるということを御了解願えると思うのであります。私鉄の総
收入は只今百六十億円
見当であると申上げましたが、その旅客
收入は二百三十億円のうちで、普通の旅客の
收入は百八十億円でありまして、定期
收入が五十億円であります。大体旅客総
收入の二割二分
見当に当
つております。そうしてその人員はどうかと申しますと、普通旅客が四五%であります。定期旅客が五五%であります。定期の五五%に対して僅かに五十億円の運輸
收入しかないのであります。若し四五%の普通客に対して百八十億という、この率で申しますれば五五%は二百十五億余りになると思うのであります。結局実
收入五十億と比較しますと百六十五億円という運輸
收入は、一種の公課として社会に奉仕しておると申して敢えて過言でないと思います。この点について、深甚なる御考察を煩わしたいと思うのであります。私鉄の旅客
收入の
総額のうちで、定期
收入が二割余りであると申上げましたが、国鉄の方は旅客総
收入に対して大体一割一分に当
つております定期の
收入は、これは何を
意味するかといえば、非常に割引率の多い定期旅客、言い換えますれば輸送コストの半分にも満たないこの運賃で運ぶお客さんの率が、
割合に私鉄に多いということを物語
つておるのでありまして、定期の制度は私鉄の財政上において非常に痛い制度であるのであります。勿論これは社会政策上、又
物価政策上緊要な制度であることは申上げるまでもないのでありますが、とにかくそういう犠牲を拂
つておる、貢献しておるということを御記憶願いたいと思うのであります。
こういう私鉄の経営上重大な犠牲を拂
つておりますに拘わらず、国家から受けておる恩典というものは、甚だ少いと言わざるを得ないのでありまして、今日地租の免除を受けておることが唯一の恩典であると申して差支ないと思うのであります。而も今回の
改正では、地租の免除を取消されるやに伺
つておるのであります。約十年前までは
地方鉄道補助法、軌道の補助法というものもありましたが、今日は何らそういう経済的の恩典はないのであります。
一面、趣旨は勿論違いますが、国鉄は経戰後におきましても、御
承知の通り五ケ年間に六百億余の金額が、
一般財政から
鉄道特別会計に交付されておるとは御
承知の通りであります。二十年度におきまして十一億五千万、二十一年度は四十二億、二十二年度は二百十四億一千万円、二十三年度に三百二億八千万円、本年度は予算で三十億が計上せられておるが、決算はまだ分りません。とにかくこれだけの
数字を加えましても六百億四千万円余にな
つておるということであります。
尚、建設に当
つて公用徴收の特権が與えられておるのじやないかという議論もESS方面でも伺つたのであります。併し経済的におきましては、公用徴收のためには、却
つて一般取引よりも高い代価を拂うというのが普通でありまして、今日の客観情勢は、過去においてありしような安い
価格でこういう徴收ができるということは不可能である点に御注意をお願いしたいのであります。
義務の方面は随分多いのでありまして、こういう特殊な公共的
事業であるという、国民生活上、極めて緊密な関連性を持つ特殊業務であるという点におきまして、勿論必要なことでありまするが、先ず以て敷設のときから工事施行につきましても、すべて認可を要することにな
つております。運賃料金の制定について、変更についても勿論であります。又公益上若し運輸大臣が必要であると認められたならば、その命令には絶対に服従を強要されておるのでありますから、
事業の休止、廃業、或いは合併とか委託管理というようなことにつきましても勿論のことであります。
事業を解散するというにつきましては、総会の決議は認可があ
つて初めて効力を発生する、更に若し国家がその
鉄道を必要とするなら、国家の一方的意思によ
つて買收に応ずるという受任の義務も課せられておることは、
事業の性質上もとより当然だとは言えますが、とにかくそういう特殊の義務を負うておるということを御記憶願いたいのであります。私は国鉄と比較しまして、その所有者が違
つておるということ以外には何ら異なるものがないということを申上げたいのでありまして、一面におきまして、御
承知の通りその創業に当りまして、厖大な
設備をせんければならんことは申上げるまでもありません。この
設備が戰災によりまして非常な打撃を受けた
会社があります。特に戰時中からこちらへ非常に酷使に酷使を重ねまして、その
設備の現状は甚だ憂慮すべきものが少くないのであります。
一般に終戰後営々としてその復興に努力をし、
合理化に努力をして参りました。併し現在になりましてはもう増資もでき得るだけ増資をし盡しまして、又融資もできる限りやりまして、社債につきましても殆んど限度に達しておる、そうして必要な復興資金を獲得して参つたのでありますが、今日は客観情勢と相俟ちまして、又本質的に増資等も不可能と言
つてもいいような情勢に相成つた次第であります。そういうことで今日まで復興に努力をし、
合理化に努力をして参りました。そのために今日では大体全国的に見まして、輸送力は戰前の水準に漸く復旧したと申して差支ないと思うのであります。併し
設備が甚だ脆弱である、酷使の
状況が未だ回復されていないというために、御
承知の通じスピードは戰前に比較して非常にのろいのであります。保安上止むを得ない次第でありまするが、
設備の保守不完全ということを
意味しておる次第であります。元来創業に当りまして、厖大な
設備をいたしまして、この
設備を多数の従業員が運用して、そうしてサービスを提供するという
事業であることは御
承知の通りであります。
従つて労務管理の上につきましても、経営者は今日まで惨憺たる苦心を嘗めて来たのであります。賃上げの要求は、各四半期ごとに繰返されておることは御
承知の通りであります。昨年七月以降の
基準賃金値上げの問題その他に絡みまして、昨年末も関西二十六社のゼネストがあり、又本年正月にも再びゼネストが繰返されたということも御記憶に新たなるところだと思うのであります。更に関東その他の各地においても絶え間なく労務管理上のトラブルがある次第であります。勿論
基準賃金は一面において上昇して今日に至りました。併し従事員数は
相当数減少いたしておるのであります。能率化のために又
合理化のために苦心を重ねて参
つておるのであります。こういう次第でありまして、今日の全国の
一般の私鉄の財政状態は非常に困窮という形容をして差支ない状態に置かれてあるのであります。大多数の私鉄は最善の努力に拘わらず毎期欠損状態を続けておるということが事実であります。これは今支出の面におきましては
人件費と保守の物件費と、これが大宗をなしておるのでありますが、
人件費は十一年
基準年次に比較しますると、全国
平均百七十五倍に相成
つております。
物価は二百二三十倍、御
承知の通りであります。而も
收入源である旅客運賃は六十六倍にな
つておるに過ぎないのでありまして、支出と
收入とは極端なアンバランスにな
つておるのであります。従いまして組織の縮小又人員の減少、
一般の節約その他の
合理化に努力して参りましたが、到底投資家を首肯せしめるような成績を挙げ得るということはできない
実情に追い込まれておるのであります。今回の税制
改正で
超過所得税が廃止せられることにな
つておりまするが、この
超過所得税の廃止による
利益を受け得る
会社は絶無であると言うて差支ないのであります。そういう状態に置かれておるのであります。財政上幾多のやり繰りをし、
設備の保守は而も不完全である。嚴正に批判しますれば
資本を食い潰しつつ決算をしておるという
実情にあるのでありまして、増資融資の力もすでに今日は消耗しておると言うても差支ない現状であるのであります。甚だしい
会社は、もはや営業を継続することができない。昨年中にも営業の廃止をしましたものが二三あります。北海道で最大の
鉄道であります北海道拓殖
鉄道のごときその
一つでありますが、現に運輸大臣宛に営業の廃止を申請しておる
会社もあるのであります。これは草軽
鉄道、昔津軽井澤間の六十キロ余りだと記憶いたしますが、この
鉄道は
設備はぼろぼろにな
つて来て危險を感ずるし、一旦事故を起したならば非常な責任だ、ひとり責任のみならず、財政的に何とも措置が講じようがないじやないかということから、総会の決議を経て現に廃止の認可申請をしつつあるような次第であります。併しながら沿線の町村からは運賃を十分適当に上げて呉れて差支ないから、是非営業廃止申請を却下して呉れという申請が別途に出ております。又所属の労働組合からは同様な請願を衆参両院に提出しておることも御
承知の通りであります。こういう情勢下におきまして、本年の一月一日から御
承知の電気料金の大巾の値上げが断行せられた次第であります。勿論この措置に対しまして、政府に、又ESSに対しましてもあらゆる努力をして参つたのでありますが、結局第四四半期
平均三・二倍、つまり過去の電気料金に比較しまして二十二倍の増加を今甘受しておるという
実情であります。政府なり、ESSの電気料金の値上げの看板は三・二倍ということでありますが、私鉄は二十二倍の電気料金の増額に耐えなければならんという羽目に
なつたのでありまして、適正な経営は到底至難でありまするから、目下私鉄の財政救済策につきまして、政府に対して真劍に御相談をいたしておる次第であります。
こういう
実情の下におきまして、近くシヤウプ勧告が実施されんとしております現在、六大
都市附近の電鉄の運賃べースは国鉄よりも若干、一割或いは一割五分安いのであります。運賃ベースは国鉄に比して低率にな
つております。特に輸送人員の五割五分を占める、前刻申上げました通りこの定期旅客の運賃は輸送原価の半分以下のものでありまして、即ち百六十五億の割引をして社会に奉仕しておる。こういう私鉄に対しまして十三倍の
地方税を更に課せられるということは、如何にも不
合理である。ただこの緊要なる
事業が壊滅する、壊滅しないまでも非常に貧弱な経営を続けなければならない、国民生活上に又
産業文化に貢献することのできない、貢献するような力を持つことのできないような状態に置いて置くということは、国家として非常に考えなければならないことだと思うのであります。保線費からも
人件費からも捻出して税を納める余地が全くない窮迫した財政状態にある次第であります。一言にして申せば、今日の経営がすでに極めて貧弱困窮な状態に置かれておるのであります。担税力をこの上多く持つということは全然余地がないのであります。国鉄の運賃が旅客運賃を値上げされない限りは、運賃にこの税を
転嫁する私鉄の負うべき税を
転嫁するということは絶対不可能なのでありまして、国鉄の旅客運賃という鉄壁で押えられておる、自然に押えられておるというのが私鉄の現状であります。その私鉄に対しまして更に十三倍の
地方税を課して致命的な打撃を與えんとする全く悪制度であると確信するのであります。
シヤゥプ税制の
改革の基本方針が、
負担の公平、
資本の蓄積、
企業の育成というような点が最も主要なる点であることは、勧告書にも明記されておるのでありまするが、私鉄の本質がたとえそういう特異性を持たないただ普通の自由
企業であるとしましても、今第一の
負担の公平という点から見れば非常な不公平だということを思うのであります。
資本の蓄積とか
企業の育成とかいうことに対しましては、正反対に逆行する結果を来すことは御了解下さると信ずるのであります。又シヤウプ・ミツシヨンの勧告は、
国税において六百億
減税する、
地方税において四百億増加するということも明記されており、又それが狙いであるやに見受けられるのでありますが、
地方税が四百億増加する、要するに原稿の
税額に対しまして約三割の増加であると思うのであります。これに対しまして十三倍になる、いわゆる百二十割増になるということはどうしても首肯できないのであります。若しシヤウプ・ミツシヨンに当時政府から適当なデーターが提出せられ、ミッシヨンが私鉄の在り方について、又
実情について理解せられておりましたならば、必ずや私鉄については特殊な措置を勧告せられたことと信ずるのであります。国鉄に比較しまして国家の恩典に浴することが甚だ浅い、又経済的に見て社会に貢献する
程度が一層多いという私鉄に対しまして、当初切望しましたごとく、国鉄と同じく一切の公租公課を免除して貰うのが適当ではないかと信ずる次第であります。併し若し免税の措置がどうしても不可能であるとするならば、少くとも廃止せられんとする
通行税額を
地方税と
減価償却との増加額に充当するという根本方針を確立して頂きたいのであります。即ち増
税額は多くも
現行の
地方税の三倍乃至三倍半という
程度に止めて頂きたいと心願する次第であります。三倍乃至三倍半に止めるというためには、大体当
つて見ますると、
附加価値税につきましては
税率を一・二%にするか、或いは
課税対象を運輸
收入の二〇%にするという特例を設けて頂くか、いずれかを採用して頂きたいと思います。
固定資産税につきましては、地租は勿論、
現行の通り免税にして頂きまして、軌道税は
現行の通り一メートル当り十円ということを堅持して頂きたい。電柱税につきましては、これ又、
現行通り、木柱については五十円、鉄柱については百円、鉄塔が二百円という
税率を是非維持して頂きたい。更に車輛税を一輛について五千円
程度の
税額に止めて頂きたいと思うのであります。そうして駅舎、変電所、諸建物その他の
固定資産に対しましてのみ
一般固定資産税を課して、重複
課税、二重
課税を避けるということに是非お願いしたいのであります。尚電気税は、他の重要
産業と同様に免除する。又市町村民税の
課税対象は、本社とか、又は
地方局であります
地方の出張所という
程度に止めて、現場機関、今日極めて不公平に、又複雑にな
つておりまする現場の機関に対しまして、対象から除くということにして頂きたいのであります。以上のような特段なる措置を講じても、
地方税は二十三年度と比較して尚三倍四分になる、つまり二十四割増になる次第であります。重ねて懇請いたしまするが、
收入減の
基準において、国鉄と何ら異ならないし、又国家に対する義務が一層重い、補助恩典が一層僅少なこの私鉄に対しましては、この際国鉄と同じく一切の公租、公課を免除して、
設備の復興に、又輸送の安全に、サービスの改善に邁進し得るように格段なる御配慮を希う次第であります。前刻も申しました通り、若しどうしても免税は不可能だというならば、少くとも
地方税の増額を
現行の三倍或いは三倍半という
程度に是非止めて頂きたいと念願する次第であります。
尚お手許に差出しておりまする印刷物について一言申添えたいのでありますが、昨年十月附で、十月に作成しました
税制改革案の私鉄
事業に及ぼす影響、この附表の中で、
現行税がゼロと書いてあるのは大
部分はゼロなのでありまするが、一
部分はまだ
調査の当時に、徴收状を受取
つておらないというためにゼロとして報告を受けたために間違えが一
部分あります。これは御了承置きを願いたいと存じます。
尚
地方自治庁の第九次案か、第十次案に基きまして請願書を作つたのでありますが、今印刷中であるのでありまして、近く各議員諸公に配付する筈であります。本日は取敢えず謄写版を持参いたしてお手許に差出した次第であります。どうぞ御一覧を願いたいと存じます。長時間どうも有難うございました。