○
森下政一君
大蔵委員会でこういうことを
お尋ねするのは甚だ他の
委員諸君には御迷惑と思うのですが、お許しが頂けますならば
大蔵大臣にこの
機会に
お尋ねしたいのです。二十四
年度の予算が画期的な超均衡予算であるということは、これはもう誰しもが認めておるところであります。
政府は二つの狙いを持
つておられたと私は思う。
一つはこれによ
つて、昂進して止まないインフレを抑えて行こう、と同時に今度は輸出貿易を振興するという挺子入れをして、国内の有効需要も振起して行く。そうして
日本の経済を向上せしめて行きたい、こういう大体二つの狙いを持つた予算であつたと私は思う。そこで、これがためにはいろいろな批判が行われましたけれども、第一段の方の目的は、いろいろ
政府が、極端な通貨の膨脹に対する圧力を加えられたということが見事に成功して、通貨を抑制するという面は私は鮮やかに成功したと、こう思うのです。二十四
年度が殆んど終了する今日になりまして、過去一ケ年間の実績を振返
つて見て、この面は
政府の所期
通りの成果を收めておる。これは誰しもが異論のない筈である。思い切つた政策であ
つて、よくぞインフレが、通貨の面においては確かに收めることができた。誰しもがこう思
つておるのであります。ただ併し
大蔵大臣も日夜憂えておられるということでありますが、
年度末にな
つて振返
つて見ますると、前段の目的は確かに達成したけれども、予算自体の中に包蔵しておる原因とは言いませんけれども、外国貿易は、予算編成当時に恐らくは
想定しておられるだろう他の原因のために思うように進展しなかつた、こういう事情はあると思う。例えばボンド価の切下げなんてことが起りましたが、これらのことは当然何とか処置をすることができる、対応策を講ずることができるにいたしましても、世界的な生産過剰、
従つてどの市場に対しても
日本品の輸出ということがなかなか思うように行かないというふうな事情が発生したということが、大きな貿易が伸びて行かなかつた、伸展しなかつた原因だと思います。ところで
中小企業がどうも振わない、振わないだけでなしに、
国会でも問題にな
つておるように、相次いで倒産して行くとか、或いは農村が極端な窮境に陥つた。或いは又昨年以来金詰りの状況というものが打開されないとか、
従つて部分失業、或いは完全失業が段々殖えて来るというふうなことが起
つて参りまして、そういう好ましくないと思うような経済情勢をずつと並べて見ただけでも
日本経済の今日の段階というものは、袋小路に追い詰められたというような印象を受けざるを得ない、そこで一体これが外部的な、予想することのできなかつた事情によ
つてのみ誘致された現象であ
つて、それが累積して今日に至
つておるのかと思うと、一部分私はこの二十四
年度予算自体の中にこういう現象が必然的に起
つて来るのも止むを得ないものがあつたのじやないか。それは何かと言えば、結局第一段の目的を達成するための、通貨面に対して極端な圧力を加えたということが、勢い
中小企業に対する金詰りを誘致する。
従つて中小企業が進展しない、倒産せざるを得ないというふうなことにな
つて来たんじやないか。そこで二十五
年度の予算というものが、二十四
年度から一貫して同じ方針で編成されておる。もとより例えば
公共事業費が昨年よりも遥かに殖やして計上されておるというふうな面はあるにいたしましても、第一段の目的を達成するために加えられた施策というものを、多少この際
政府が謙虚な
気持で反省されて、一部は私は修正されていいんじやないか、そうすることによ
つて、今日二十四
年度の
年度末に我々の前に展開されておる
日本経済の好ましからざるところの情勢というものは、二十五
年度においてはこれは刈取ることができる。こういうふうに私は思うのです。それは例えば
債務償還というものを千二百億やるならば、
一般会計からする分でも、或いは見返
資金からする分でも四百億乃至五百億というものを差控えられて、却
つてこれを或いは公務員の給與の改訂に廻すとか、或いは
中小企業の
金融のために思い切
つてこれを活用するというふうな方策をとられることによ
つて、別段今日まで收束されたインフレが直ちに再燃するというような懸念もないだろうし、それから今日見るような
日本経済の好ましからざる情勢というものが非常に打開される、刈取られる、好転して行くのじやないかそうすればかねて
政府の考えておられるインフレの抑制の目的を達することもできるし、或いは
日本経済の進展ということにも貢献するのじやないかと、こう思うのです。尤も
大蔵大臣の御意見はいろいろの
機会に伺いまして、
債務償還ということをこの際や
つて置かんことには、若し米国からの援助が打切られるということになるときには、飢餓輸出をして行かなければならないというふうな御説明も承
つておるのでありますけれども、私はこの際に謙虚な
気持で
政府が一歩後退して、二十四
年度の実績に鑑みられて、二十五
年度の経済政策というものに、
一つの何というか修正を加えられて、国民が非常に喜ぶということになるんじやないかと思うのですが、この点に対する大臣の御見解如何でしようか。