○国務
大臣(増田甲子七君) 造詣の深い
木村さんの御意見は御意見として承
つて置きますが、私共はこう
考えております。今非常に大事なことである。この際若し
給與ベース等を変えるということがあれば、
物価と
賃金との惡循環が始まるとい
つたような言論は、すでに二年前のことであるというようなことを、衆議院の議員の諸君の中で言われた方がございますが、二年前でなくて現に十二月の十二、三日頃帰られたドツジさんが、帰られるときにそう言
つておるのでありますから、このウエージ・エンド・プライスが、再び惡循環が始まるというようなことを言われておるのです。而もドツジさんの我々に示唆された均衡
予算の特色は、やはり日本のインフレというものを徹底的に收束させるには、債務償還というようなものに相当の
支出をしなくちやいけない。債務償還の
関係の
財源があるのだから、こつちに廻せばいいのじやないかということになれば、再び
公務員の
給與ベースが上り、産業労働者の全体の
賃金も上る、
予算も上るということになる。結局八千億円、一兆、一兆二千億円というように段々
予算は増加して、事業量から見れば昔と変らないような事業量しかない。即ちこれがインフレである、こういうことに再びな
つて行くのじやないかと我々は憂えておる。今のところ、我々はイージー・ゴーイングで惡評を買いたくなければ、国民からもこれは非常に不景気
政策だと言われておりますから、各種の惡評を買うことがいやでありますならば、安きに就くことが私は一番楽だと思います。そうすれば緩漫なるインフレ
政策になる、石橋財政ということが言われておりますが、私共責任の地位がないので、非常に申上げにくいのですが、こういうことになれば非常に楽なのですが、これでは毎月々々毎年毎年
賃金が上
つても
購買力は大して上らない、結局同じごとだとい
つたような
公務員、一般産業労働者諸君の嘆きは絶えず続く、結局足取を合せて産業再建という巖を一応樹立しなければならん。多少苦しみはございましようが、この際
賃金ベースを一時の苦難を忍んで貰
つても変更しない、将来巖の上に産業再建という立派な家ができたときは、我々は
考えなければならんと
思つております。
昭和五乃至九年に比べて六十数%にしか
実質賃金が上
つていない。
木村さんの御論の
通り我々は
昭和五乃至九年までの
生活水準を許されておるのですから、月給七十五円で洋服二着できたというような時代に、早く社会なり経済を持
つて行かなければならん、こうも
思つておる次第でございまして、そのためにも
只今のところ、総合均衡
予算というものは折角一年や
つて効果を奏してお
つたところが、これではどうも怨嗟の声も相当あるからして、又金詰りその他いろいろな不平の声もあるし、破産者もあるから、我々が惡評を避けるとか、再び前の安きに就こうということは、非常に人間の本能といいますか、割合に楽なことなのですが、そういうことを敢えてしないで、難き途をと
つておる次第でございます。債務償還のことについては、造詣深い
木村先生でございますから、各種の御意見もございましようが、ドツジさんはあそこへ特色を置いているようでございますから、我々はやはり人の言のうち聽くベきものば聽くという見地から、自分の責任で総合均衡
予算を採
つて見たところが、幸いに四月から安定していることは御
承知の
通りであります。但しこの安定
政策の活用ということは我々は大事じやないか、こうも
考えておる次第でございます。
明年度等におきましては、又
予算説明の際に
大蔵大臣等が
説明されると思いますが、公共事業費その他事業量においては、本年度よりは確かに多いのでございます。
調整費等は少くな
つておりまするが、事業量におきましては産業復興に役立つ積極面が多い、総額においては六千百億円でございまするが、事業量は今年の七千四百億円より遥かに多い。從
つて産業復興について我々は希望を持ち得る積極
予算である、こう
考えておる次第でございます。