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証人(
永井寛次君) 永井でございます。今回
衆議院で
修正可決されました
漁業法の一部を
改正する
法律案、これに私は全く
反対いたします。私は学者ではございませんので、
自分みずからが
調査した資料の持合わせはございませんので、いろいろな
水産試験機関が発表しました資料を見まして、又もう
一つには本県の冬季におけるの
漁業の実情から考えまして、即ち十二月から翌年頃四月まで岡山県には殆ど漁がないのでございます。それは魚が全部死んでしまうわけはないので、それは必ず冷たい水を嫌いまして、暖かい方へ避寒するというように漁師共は考えております。又実際問題としまして五月に入りまして鯛、「さわら」の廻遊を見て、漸次春の盛漁期に入りまして、これが十一月まで続くのでございます。こういうように冬季全く漁がなくなりまして、春から夏秋にかけまして漁があるのでございますが、こういうような点を
判断いたしまして、
内海といわゆる
修正案で謳
つておる
紀伊水道というものが一体である、
従つて紀伊水道の重要な
漁業調整については、
瀬戸内海の多くの
漁民も必ず
発言権を持たなくてはならないというように考えるのであります。これは丁度一本の大きな河がありまして、上流にも下流にも漁があるとい
つた場合に、上流のところの
漁業調整のために河口の
漁業調整が左右されるというのは当然で、河口が好き勝手にそこで
漁業をや
つたならば、上流の
漁業者というものの生活は脅かされるのは当然で河口が好き勝手にそこで
漁業をや
つたならば、上流の
漁業者というものの生活は脅かされるのは当然でございます。丁度
瀬戸内海は細長い一本の帯のような海でございまして、東西の両入口というものは、河川における河口と全く同様ではないかという見解を持
つております。で、こういう
意味におきまして、私はたとえ
紀伊水道に
香川県、岡山県が沿
つていなくても、そこの重要な
漁業調整については、必ず
発言権を持たなくちやいけないという見解を持
つております。然るに今度の
修正案は、そういうことを全く無視してしま
つた案なのでございます。特に私共が一番心配しておりますのは、今回の
修正によりまして、将来底曳業者が跋扈しやしないかという懸念が多分にあるのでございます。その懸念の起きた
理由を詳細に申上げますと、私共は
県下の
漁民の代表としまして、数名、三月の二十四日に、郷土の代議士を
衆議院へ訪問いたしまして、こういうことをや
つて貰
つては甚だ困るのだという
陳情をや
つたのであります。たまたまその席上、
衆議院の川村善八郎代議士と田渕光一代議士が見えたのでございますが、そのときに、郷土の代議士が紹介いたしまして、あれによると、君達が心配しておるような点は少しもないと、一応
提案者の話を聴いてや
つて呉れというお話で、御両名からいろいろお話を伺いましたのでございます。そのとき川村代議士が、こういうことを途中でお話しなす
つたのでございます。永井君、
紀伊水道に機船底曳がある、それは正式のものと違反のものとを問わず、あるに違いない。仮に三百乃至四百の闇の底曳業者がいると仮定したら、これは
瀬戸内海と言わず、
紀伊水道と言わず、
漁民は一丸とな
つて撲滅しなくちやならない。ところが正規の許可を受けた底曳業者が百あるとすると、これを将来どういう
漁業整で活かすかということは社会問題だと、こういうことを川村議員がお話しにな
つたのであります。これは正規の許可を受けた底曳業者が五百あろうと六百あろうと、何も今度の
瀬戸内海のこの
修正案には
関係がないので、当然こんなところで話の出る事柄ではないのであります。然るに、そのことが川村議員の話で出まして、百のものを五十にして活かすか、どういうことにして活かすかということは社会問題だと、今日の
陳情団はこの点をどう考えておるのだというお話があ
つたのです。そこで私は、それだからこそその点を心配するのだ、万一
紀伊水道というものが孤立してしま
つて、そこで現在許可を受けた正規の底曳業者を活かそうというような魂胆があるならば大問題で、その点で私共が気違いのようにな
つて、
紀伊水道を抱きかかえて、
内海二十万
漁民のために奮闘しなければならないのであります。と言
つたのですが、たまたまそのときに、郷土の代議士が止められまして、まあまあということで、その話を止めたのでありますが、そういう点が多々あるのでございます。それから、この
修正案が出る前に、全然
瀬戸内海というものを、淡路島の
内海で切
つてしま
つて、それから南は本当の公海にしてしま
つて、許可を受けた底曳船が自由に日の御岬の線から上
つてくる案があ
つたのであります。これは、その後私がG・H・Qの方へ行きまして、ヨーさんと大儀見さんに会
つて、直接聴いた話でございます。そういうようなとんでもない案が出たのだが、G・H・Qとしては、こんな馬鹿なことがあるかと言
つて、蹴
つてや
つたと、その後又数日して、今の
修正案が我々のところへ来たので、まあやらんよりはましだろう、まあとに
かく占領政策に
関係のないことなんだからあんた達でやれと言
つて帰したのだというお話を聞きましたが、この
修正案の前身が、底曳をやれる区域を淡路島の南端まで持
つて来ようと、ところがそれに失敗してこの案に変
つたのだということを知りますと、ますます底曳業者に対する脅威を感ずるのでございます。又
和歌山、
徳島両
県下から出ておる
陳情書なるものも、いろいろ承わりますと、底曳業者という
言葉と
違反漁業者という
言葉の、二つの使い分けをや
つておるのでございます。所によると、
違反漁業者は徹底的に取り締まらなくちやならないということを言
つておりますが、そこでは、底曳業者という
言葉でないのでございます。こういう点で私は、
紀伊水道関係の
漁業者の方が、
機船底曳漁業というものと
違反漁業というものと区別がつかないのではないか。機船底曳はどこでもや
つてもよいのだ、正規の許可を受けた底曳は当然
紀伊水道で生きなくちやいけないのだというような
先入感があるのではないかというような気がするのであります。こういう点で私は、底曳
漁業が、
紀伊水道が独立したことによ
つて、将来跋扈する憂いを持
つておるわけでございます。丁度一軒の家に、玄関があり、奥があり、離れがあり、台所があるように、
瀬戸内海には
紀伊水道と言わず、周防灘、播磨灘、或いは豊後水道、いろいろな海区がございます。これはそういうものが集ま
つて一つの
瀬戸内海というのもを構成しておるので、丁度家に例れば、或いは
紀伊水道が玄関に当るかも知れない。玄関で、何も台所や奥座敷に用のないところが、玄関だけ独立させろというような考えを持ちましたならば、一軒の家に
瀬戸内海というものは、これは当然将来自滅するのではないかという心配を多分に持
つております。ところが幸いにして、
只今出席しまして、
和歌山或いは
徳島の方の御
発言によりますと、底曳業者というものは全然嫌われておるようなんで、こういうような懸念は、或いはこの席ではなくなるかも知れませんが、それがないとすれば、果して現行法をここで
修正しなくちやならないか、どういう
理由で
修正しなくちやならないか、大きな原因を私は発見するのに苦しみます。三月の六日、七日に亘りまして、三浦
会長以下私共は、
衆議院の
水産常任
委員会に
陳情に行きました。そのときに、
石原委員長曰わく、これは
瀬戸内海のためを考えて却
つて独立さしてや
つたのだというようなお
言葉があ
つたのです。こういうものを、
瀬戸内海の奥のことを考えて下す
つたならば、そこの
漁業調整に
発言権を持たせないで奥を考えて頂く手があるかというような心配を持
つております。丁度冬の寒いときに、可愛いのだ可愛いのだと言
つて、
自分の子どもの羽織をとり、着物をとり、繻絆もと
つて、真裸にして風邪を引かして、お前が可愛いのだと言
つておるのと、同じような理窟ではないかと、痛感いたします。私は強ち
兵庫県の味方でも、或いは
香川県の味方でもないのでございます。底曳業者は
瀬戸内海から徹底的に駆逐せよという線におきまして、私共は、どこまでも
紀伊水道というものを包含して、そうして
瀬戸内海の
資源の
保護ということを図らなければいけないと感ずる次第でございます。又、現在の
法律でやれないことはないと確信を持
つております。私共はそれ以外に何も、
徳島や
和歌山がやる磯立だとか、一本立だとか、こういうよう
なつまらない、つまらないというよりか、小さな、
瀬戸内海全般に
関係を及ぼさないような
漁業調整まで
発言権を持ちたいとは思
つていないのであります。又明治何年から何十年間
瀬戸内海であ
つたけれども、未だ曾てこのために問題を起こしたことはございません。そういう
意味で、将来、今度の
漁業法が本当に
漁民というものを考えてああいうよい
法律ができたとすれば、
修正しないで現行法をそのまま適用するのが当然じやないかというふうに考えます。又これは別の
意味から今度の
修正案を考えますと、二つの
委員会がありまして、その上に
一つの
漁業調整事務局がある。
従つて、私共が今まで心配していた点は、
衆議院の
水産委員会では、上に事務局が
一つなのだから、そんなことは絶対にさせない、強硬な
取締をやればよいじやないかというような御
説明も聞いたのでありますが、今度の
漁業法は、
漁民の
自主性ということを非常に尊重していらつしやる。ところが、一番肝心な重要な
漁業取締とか、或いは
繁殖保護とか、或いは底曳をどうしようかというような問題について、
衆議院の御
説明を解釈しますと、そういうことは
漁業者にやらせないで、一本の役所にやらせるのだから心配ないというような解釈になります。そうなりますと、両方の
漁業調整委員会というものは全くでくの坊で、やはり官僚
調査によ
つて紀伊水道、
瀬戸内海の
調整をや
つて行く方針だ、こんな結構なことはないじやないかという案を術議員では私共
陳情班に押しつけられたのじやないかという感がするのでございます。こういうような観点から私は今度の
修正案には絶対
反対である、現行通りの
漁業法を実施して頂きたいというように考えます。