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参考人(野中六郎君) 私漁村経済協会の野中でございます。私は協同組合の
立場と、それから先程
鯨岡さんが申しました八九%を占めている零細漁民の
立場から、
地方税の改正案につきまして、どういう
影響があるか、これに対してこういうふうに希望するということを簡單に申上げます。
先ず第一に、先程申しましたように、日本
漁業の非常に零細化のことは、いろいろの点で分るのであります。先程申しましたように、大体二・九人の形態が大部分であるということにな
つております。これに対しまして、現在水
産業協同組合法の実施に伴いまして、約四千の協同組合ができておりまして、一月末現在で、約七十万の漁民がこの組合員にな
つております。以上の組合に対しまして、我々が分
つておりますところの
地方税の改正案では、どういう
影響があるかということを簡單に申します。
先ず第一に、新
税制法案によりますと、
地方税のうち、
附加価値税と
固定資産税の両面におきまして、漁民の
関係はどうなるかということを申します。先ず第一に、
附加価値税について申上げたいことは、先程申しましたように、非常に零細であるために、
附加価値税が大きくなる。例えば一番極端な例で申しますれば、一般の小釣
業者は約九五%以上の
附加価値を持
つておりますから、非常にこの
附加価値税は多くなる。又協同組合において経営しておりますところの組合員が従事しておりますところの鰊刺網においては、
附加価値が八九%になります。或いは鰊の定置網におきましては約八八%になる。こういうような
状態でございますから、この
附加価値税を
漁業に対しては適用しない、
附加価値税を適用しないということが好ましいことであります。これを
漁業の場合と
農業の場合と比べて見ますと、同じような
状態にあるところの
固定資産税の
負担状況を、兵庫県の水産課で作りました表によ
つて見ますと、内容は省略しますが、この所得に対する比率としては、
農業者が二・五七%、それから
漁業者は三・八九%にな
つております。而も申すまでもなく
農業における自給経済と、
漁業における交換経済とは相当の生活内容に相違があるということは申すまでもありません。
従つて漁業者に対するところの
固定資産税なり、或いは
附加価値税というものは、当然これを適用しないようにして頂きたいと思います。
それから次に新
税制法案によりますところの
地方税関係と協同組合との
関係を申上げます。先ず第一に、私が言うまでもなく、第二大戰以前までは、すべての協同組合に対しましては、
国税と
地方税とを問わず非課税でありました。第二大戰中に、協同組合におきましては、特別法人税というものが初めてかかりましたのでありますが、これは飽くまで臨時的な性質のものであ
つて、当然これは廃止されるべき性質のものでありました。そういうような状況でありますから、特別法人税を課しましても、営業税並びに営業収益税は協同組合に課せられておりませんでした。ところが二十三年の
税制改正によりまして、特別法人税は廃止されまして、
国税においては法人税、
地方税においては
事業税が協同組合に初めて課せられたのでありますけれども、飽くまで一般法人とこれを区別しまして、御承知のように、他の一般法人よりも低い税率をと
つております。今度の改正案を見ますると、協同組合も営利法人と全く同一の税率を受けるというようなことにな
つておりますが、言うまでもなく、
漁業協同組合は、昨年の二月十五日実施になりました水
産業協同組合法によ
つて設立されたものでありまして、非常に設立の日が浅く、他の営利法人と同率の課税には到底堪えられんということがはつきり言い得ると思います。而も
漁業協同組合の場合におきましては、収益力が非常に少い。公共的な性質を持つ施設が多いために、この施設に対しまして、同率の
固定資産税がかかるということは、協同組合の将来に対して暗澹たる途を示すものと言わざるを得ないのであります。尚昨年の十一月インドのラクーウに開かれました国際連合の食糧並に
農業機構の発起人会におきましては、協同組合に対しては、原則として
税金は免除すべきであるということが明らかに宣言されております。以上の状況から言いまして、これを東京都の協同組合の場合におきまして、現行税率と改正後の、
只今伺
つておりますところの税率との比較によ
つて、その
負担を見てみますと、どういうことになるかと申しますと、現行では、この協同組合が剰余金が一万三千三十七円ある分に対しまして、
国税並びに
地方税を総合いたしますと、現行の場合は二万六百八十九円でありますが、改正案によりますれば、十一万八千八百九十四円、即ち九万八千二百五円の差額であります。四七・五%の増加となるのであります。
従つて我々は協同組合の
立場と漁民の
立場から見て、どういう点を改正して頂きたいかということを具体的に申上げます。先ず第一に協同組合の面から申します。協同組合に対する
附加価値税については、先程
鯨岡さんから申上げましたように、これを
撤廃するか、或いは少くとも特別法人として、税率を他の一般営利法人と変えて貰うということが必要であります。
理由は、申すまでもなく、協同組合たる特殊機関として利益が少く、且経費の中で人件費が非常に多いということは、この
負担に堪えられないからであります。
それから二番目に同様に
附加価値の中で附加税についても協同組合に対して課税しないようにお願いしたいと思います。その
理由は何故かと申しますと、御承知の通り、
只今旧水
産業団体法に基き
漁業会並びに
地方水
産業会は清算中でありまして、この協同組合の社会性というものから見て、法律改正等によ
つて思い掛けない解散が行われて、その際の清算については、特別な措置をして頂きたいという意味であります。
第三番目に、協同組合が賦課金等によ
つていろいろの事業をや
つておりますが、この場合にはこれを
附加価値の対象としないということを要望いたします。その
理由は、協同組合は、経済事業の外に非経済事業としていろいろなものをや
つておりますが、それをやる場合に、賦課金によ
つて賄う場合が非常に多いのであります。でありますからこの事業は
附加価値を生ずるものでありませんから、収入金額から控除するのが正しいと思います。
第四番目に、組合員の利用した事業経営に対する協同組合の割戻しは、
附加価値に算入して頂きたくないと思うのであります。その
理由は、協同組合において協同組合員が利用した事業に対しての事
業者の割戻しは、これは実質においては協同組合員が余計に協同組合に拂
つたものであり、或いは協同組合が組合員に割戻すことをしなか
つたというのがこの剰余金の事実であります。
第五番目に、
附加価値税を徴収するとしますれば、この徴収の時期は、協同組合の事業年度に
従つて、その属する年度の決算後にして頂きたい。これは言うまでもありませんが、納税する
立場から見て最も便利なことは、又協同組合におけるその事業年度の決算した後の方が納税し易いわけであります。
第六番目に、
固定資産税について申上げますと、先程一部申上げましたが、固定資産は、
漁業協同組合の場合においては非常に公共的施設の内容を持
つたものが多いのであります。
従つてこれによ
つて生ずるところの収益というものは少いのが当然であり、而もこの施設を利用するものが組合員であるというような観点からいたしますれば、当然多額の
固定資産税に堪えられるものではありません。
従つてこれは同様に、
附加価値税と同じようなことに特殊の取扱をして、でき得れば公団とか、
会社のように、これらの固定資産については
固定資産税を課さないということにして頂きたいと思います。
第七番目に市町村税について申します。市町村税は当然我々が支拂うべきもので、納税すべきものでありますが、協同組合の場合においても、これは当然納めなければなりません。併しながら協同組合の事業の上、本部があるところ以外に支部のあるようなところがございますが、こういうものの支部等の従たる事務所に対しては課税しないことが必要であると思います。
尚八番目に、
漁業権について申上げますが、共同
漁業権については、
地方自治庁の御賢察によりまして、協同組合に対してはこの
漁業権税は賦課しないということを伺
つておりますが、過日、昨年の十一月二十九日に議会の修正を受けて近く施行されますところの新
漁業法については、区画
漁業なり、定置
漁業なりを実質的に非常に有利に改正されました。
従つて区画
漁業なり、定置
漁業なりを振興するために当然
漁業権税を徴収しないことが必要であります。漁民の個人の場合につきましては、先程申しましたように、
附加価値税は、
固定資産税については簡單に触れましたから、ここで繰返すのを省略いたします。尚補足的に二、三申上げます。
第一番に、各市町村長が指名いたしますところの評価
委員会でありますが、この固定資産の評価
委員会については、非常に水産には特殊な事情がありまして技術的にむずかしいのでありますから、特に水産に理解のある人をこれに附け加えまして、嚴正な水産に対する固定資産の評価をして頂きたいということを要望いたします。
それからもう
一つ申上げますが、これは青色申告と関連したことであります。この青色申告の実施について、私の方では、あらゆる機会を利用いたしまして漁民並びに
漁業組合等を指導いたしております。御承知の通り、青色申告には、決算の補填として繰戻し、繰越し、或いはこの両者が合併した欠損補填の
方法が行われておりますが、
附加価値も、あれを拜見いたしますと、五ヶ年間の繰越しが認められております。でき得れば青色申告をなした場合の人が、この青色申告の欠損の補填の
方法と同様に、
附加価値の補填の
方法を合わして頂きたいということを要望いたします。
以上で私の陳述を終ります。