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国立国会図書館長(
金森徳次郎君) 今お話の問題は大切な問題でありまするが、まあ私共の方で教育に代るようなことをやることは、人手も少いし、又
図書館全体が
研究図書館であ
つて、教育
図書館でないという点から見まして、やり方を余程
考えなければならんと
思つております。学校の
図書館とか或いは地方の公共団体の
図書館では可なり進んで教育に近いことをやることも一理あると思いますが、何しろああいう
政党の上に超越をいたしまして、又そのときどきの教育方針等も超越いたしまして、
図書館によ
つて最も自由な
研究をして貰いたい、世界中にこの
図書館だけは何らの圧迫もなく思うがままに本が読める、こういう所に仕立て上げたいのでありまするから、
余り積極的に指導をするということは多少の危險も伴うものでありまして、そこの指導者が一種の思想を持
つておりますれば、そういう思想の方にばかり人を引き込む虞れもあるのであります。そこで私の方で
考えておりまするのは、御
希望があつたときにどういう間をお読みになることが常識上よろしいかということをお答えするという態度をと
つておりまして、中に、何といいますか、リファレンサーと私共の方で言
つておりますが、人の
質問に応じて場物の
関係においてどういうような本がこの場合によさそうだ、
中味までは入りませんが、
一般に読まれるとか、これが新しい本であるとか、これが網羅的であるとかいうように軽い意味で本の世話をするという者は中におります。それが始終
利用されております。それから今
一つの面は、私
考えておることでありまするが、
図書館というものが
ただ本を見るというだけでなくて、
図書館に行く度に本に親しみの念を持つ
書物こそは文化の蓄積物でありまして、人間はどんなに学問があ
つても死んでしまう、どんな大きなことをした人もいつかは血統が絶たるのでありまするが、生き死にを超越いたしまして人間の努力を蓄えておるのは
書物である、こういうふうに
考えて行きますると、成るたけ
書物を国民の頭に浸み込ませ、これに接近して親しむようにする、こういうふうに持
つて行きたい、これは
中味に
関係なく
書物そのものに親しむという気分を作ることでありますから、
図書館として許されることと
思つております。その見地から申しますと、二つの
方法が
考えられます。
一つは
図書に関する展覽会のようなもの、或いは展覽室、
参考品展覽室というものを
図書館の一部に設けまして、ここへ本を読みに来た人がたまたま
通りすがりに、例えば世界の文献はどんなふうな状勢にな
つておるか、新らしい
書物としてはどういうような角度のものが今世に現れておるか、古い
書物としてはどういう
書物に特色があるかというようなことが分るようにする、つまり
図書館におきまして陳列室を拵えまして、そこにはときどき入れ換えはしておりますが、その設備をいたしますれば
図書文化は非常に高まるのではなかろうか、こういうふうに
考えております。今
一つは
図書館に来ない人にも我々の
図書館の
一つの利益を供給する意味におきまして、
図書館で
一つの雑誌を出しまして、
図書館法の中に書いておりまするように、あらゆる
日本の
図書館及び
図書館人に対して
奉仕をするという見地から、そういう人達が読んで役に立つ雑誌を出しまして、且つは又
一般の人々がこの雑誌を読みまして、近頃
外国からどんな本が入
つて来ておるか、そのうちのめぼしいものは
中味にどんなことが書いてあるか、或いはマイクロ
フイルムというものがどんな
工合に今世の中に行われておるか、マイクロ
フイルムとしてどんな
資料が入
つておるかというふうに、
書物に関しましての万般の知識を供給して、それによ
つて利益と楽しみを得るというようなことが必要ではなかろうか、こう
考えておりまして、併しこれは国家に対して特に予算を
要求するというわけにも行きませんので、この四月から試みに成るべく民間の方の金を出して頂してその雑誌を発行するような心組の下に簿い雑誌ではありますけれども、一冊の見本的なものを出しまして、これを成るべく
日本の地方の
図書館、
図書館人、又
一般の
読書に親しむ人々に流して行きまして、その形をと
つて行きましたならば、今回できました
図書館法などと相並んで
日本人が
図書館というものはどんな働きのものだろう、どんな興味のあるものだろうというふうに親しんで来るのではなかろうかと
思つております。先にも申しました
印刷カードができますと、
日本の
図書館が非常に便利になるとか、それから総合カタログができますと、
日本の
図書館は皆ばらばらにな
つても実益の面では
一つに
なつたと同じである、ということはなかなか口を酸つぱくいたしましても
世間に行渡らせることはできません。こういうのは当然漁誌より外にいい途はないと
思つて、今日から試みに出しまして、今は宣伝時代でありまするから、それを二千部ばかり各
方面に
ただで配りまして、二、三冊の後にはあつちこつちで買
つて貰う、それは二十円くらいの雑誌でありますが、そういう方針を持
つております。各地に呼びかけてこれからひろめて行うとしておりますが、これも
一つの途だろうと
思つております。