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国立国会図書館長(
金森徳次郎君)
定員規程の一部
改正につきまして御
説明申上げますが、
法律の
規定によりまして、
図書館職員の
定員は、いわば普通の
制度で言えば、官制に当るものは
図書館法におきまして
両院の
図書館運営委員会の御
承認を経て決めるということに
なつております。そこで本日提出いたしましたこの規則の
改正もその
趣旨でありまして、一応案を立てまして、御
承認を得たいというのが願いであります。
先に昨年の十二月に
予算につきまして
委員会の御
承認を得ました。その
予算が今回成立をいたしまして、
昭和二十五年度
国立国会図書館予算に載
つておるのであります。従いまして
予算に基いて中の
職員の数を変更するという必要があるのであります。その現在の
職員の
主事以上の者は、本日提出をいたしましたこの
規程の中に
規定せられておりまして、そこでその
職員の数を若干増加をするというのが今回の
改正の
趣旨であります。
改めまする
主眼点は、
調査員と
主事との二つでありまして、
調査員は現在十八人でありまするのを、二十一人、
つまり三人だけ殖やしたいというのが
希望であります。
主事は現在九十六人でありまするのを、百二十一人に
改正したいというのが
希望であります。
この
改正いたしまする
理由は、
予算のときに一わたり御
説明申上げて置きましたように、細
かい点は抜きまして大筋で申しますると、
国立国会図書館におきまして、今年の夏、或いは秋の初め頃から
法律図書館というものを創設したいと
考えております。
図書館を創設するというのは話は非常に大きいように見えまするが、別にそういう特別なるものを作るのではございません。今まで
議会の方のいろいろな御依頼を受けて
調査をしておりまする
仕事の
相当部分は
法律に関するものであります。ところが
法律に関しまする
書物、
つまり実際の注文でありますとか、或いは
判決例でありますとか、或いは又
立法に必要なる
書物その他の
材料につきましては、どうも今までどこにもよく集ま
つておりませんで、よしんば集ま
つておりましても、
一般国民がこれを使うことはできない
実情にあります。そこでこの
法律に
関係いたします。特別な
材料を集めまして、
図書館自身がこれを
使つて議会の方の御要求の
調査に役立てるということが
一つでありますし、各
官庁、或いは
一般国民の人が自由にこの
材料を
利用することができるようにしたいというのが願望であります。今までとても、もとより
図書館に
法律の
書物等がございましたけれども、やはりこういうものは一まとめにして
利用いたしませんと、なかなか思うように捗りません。いずれは
図書館の本
建築ができまするときには、堂々とこれを実現するのが望ましいと思いまするけれども、今日では
材料もできず
資料たる
書物も数が少いのでございますから、
差当り三宅坂の私の方のいわば
バラック仕立の
建物の中におきまして、できる限り
沢山の
書物を集めたいと思
つております。そういうことはひとり私共が発案するのではございません。私が
アメリカへ参りましてずつと見と歩きますると、主な州の
政府の
建物の中に、又はその
建物に接近をした所に、大体どこでも
法律図書館はできておるようであります。御
承知のように向うでは個々の人が
法律案のいわば案文を作りまして、それを請願の形で
議会へ持
つて行つて、運がよければそれが
法律に
なつて行く、こういう途が開けておりますので、
法律の
調査に必要な
資料はどうしても誰の手にも必要であるというふうに
考えられておりまして、可なり力瘤を入れて
法律図書館を拵えております。現に
アメリカの
国会図書館の中におきましては、大体七十万冊の
法律專門の
書物を集めておりまして、そこへ行きますると何百年も昔のイギリスの
判決例も早速出て来る。或いは
アメリカの
各州の
條文も直ちに出て来る。
ヨーロッパ大陸の主だつたところの
資料もある。合計して七十万の
書物を持ち、それが
図書館の働きにもなり、又
一般人がそこに入
つて自由に
研究をしております。
日本におきまして
法務庁の
図書館であるとか、或いは裁判所の
図書館であると
かいうものが段々発達をいたしますると、まあ
法律のものも集まると思いますけれども、併し
国会として、殊に
一般国民の
利用を狙いにいたしますると、どうしてもこういうものが必要であるというふうに
考えております。ところが
国立国会図書館は非常に有利な立場にありまするのは、
外国の
官庁の公の
出版物は今は
アメリカは全部こちらで貰い受けております。尚
アメリカ以外、
アメリカ各州でありますとか、
南アメリカの国でありますとか、或いは
ヨーロッパの大きな国でありますと
かいう所の公の
政府出版物は、今はまだ自由に手に入りませんけれども、段々
努力をいたしますれば、自然に流り込ませることができるであろうと思
つておりまするし、尚この
日本国内り各府県、大きな市町村のようなところの
法規類、これは
法律の
規定によりまして、当然に
国立国会図書館に流れ込んで来ることになるのでありますから、こういう
材料を活用いたしますならば、いつかは
相当のものになり得ると思
つております。今日は名前だけで、殆んどその土台を作るという程度に過ぎません。
それから次に他の問題といたしましては
文献摘録という
仕事を私の方でやる
計画を持
つております。
文献摘録と申しますのは、主な
学術論文が毎日毎日新しく出るのでありますけれども、これは非常に專門的なものでありまして、
日本人にも必要であるばかりではなく、
世界の学者がこれを
利用することを
希望しておる筈のものであります。けれども何分にも
出版の数の多いものでありまするし、又範囲の広いものでありますから、それ
自身を
世界の人が
利用することは困難であろうと思うのです。そこでその
学術文献を、極く短
かいものに
摘録をいたしまして、その
摘録したものを
日本にも弘め、
外国にも廻すと、こういうことにいたしますると、又その自然の結果といたしまして、
外国でできた
摘録文献も
日本に流れ込んで来るのでありまして、これはひとり
日本のためではなく、
世界的に
学術の地位を高めて行くと、こういう
意味を持つものであろうと思いまして、従来からそれを
考えておりましたが、漸く
学術会議の
方々であるとか、その外の
方面とも話がつきまして、又
大蔵省の支持をも得まして、今回これに着手するのであります。これに対しましてまあ僅かながらも、そこに現れておりまするのは、
確か調査員一人と、
主事一人がここの中に含まれておりますが、それに附属の
職員もありまするので、段々や
つて行きましたならば、
世界の仲間に入
つて行けるのではないかと、こういう考を持
つておるのです。
今
一つの大きい問題は
受入整理と申しますのは、私の方の部でありますが、
受入整理におきましては、いろいろな
書物を買つたり、
受取つたりいたしまして、それを
図書館で
利用のできるように目録を作る、カードを作り、分類をするというふうな
仕事をして行くのであります。これが現在の
実情から申しますると、なかなか手が廻りかねるのでありまして、つい
沢山の本を買いましても、その
整理ができないために、十分の
利用ができないような悲惨なる状況でございます。
努力してそれに追われないように努めてはおりますけれども、殺々とこの
図書館が大きく
なつて行きますについては、受入れの
書物も殖えるのでありまして、大体一人の割当を一日に八册くらいと仮定をいたしまして、
つまり一人の人が八册の
書物を
整理して処置するというふうに
考えて見ましても、段々と殖えて来る
書物は、増員をしなければ処置し切れないようになるのでありまするから、ここに
主事を十人増加するという
計画、考を持
つております。その外に今度は
人事制度が殺々複雑になりまして、殊に
職附制等も漸次具体化されるということになりますると、ここにも
主事一人を殖やさなければならんということで、この
調査員三人殖えましたのは、
法律図書館に二人、そこに
法律図書館に……。二人だけであります。
尚
一つ図書館として新しい問題が起
つておりまするのは、かねて申上げましたように、従来
労働科学研究所というものがございまして、
国立の
財団法人であり、
書物を持
つておりましたけれども、諸般の
事情によりましてその中が分解しなければならんことになりまして、
関係方面の
了解を得まして、そこにありまするところの
労働科学の
書物を全部この
図書館で無償で引継ぐということになり、そのために現在ありまするところの
地点、
祖師ケ谷大蔵の近所でありまするこの
地点で、実際は四万册、併し数えられた形では九万册というその
書物がございまして、その
書物をそこで管理して、
一般の
利用に供す、こういうようなことになりましたから、そこで
調査員一人を殖やすということになるのであります。
その外……、大体それだけでありますが、そこで
調査員三人と
主事が合計して二十五人だけ殖えるというふうに
なつております。ところがこの
予算というものは
かなりむつかしく組んでありまして、それが今年四月から直ぐ使える
予算ではございません。その
一部分は七月、
一部分は十月から使うということに
なつておりまするから、
附則のところに
ちよつと妙な
規定がございまするけれども、原則としては七月一日から施行する、但し極く少数の
職員はそのときから殖やすことはできません。十月一日から殖やすというその
理由のために、
附則のところに面倒な
規定が設けてあります。これは主として
法律図書館は十月一日から開くという
事情から、かようなことに
なつておるわけであります。大体の
理由は右の
通りでありまして、何分よろしく御
審査を願いたいと存じます。