○
羽仁五郎君
最後に第八、
人事院についてでありますが、この
人事院が古い封建的な、
合理な
官庁人事というものを打破して、近代的にして
合理的な、民主主義的にして能率的な
公共業務の遂行に当
つておられることに対する
一般の
認識が極めてまだ低い。大体
人事院というものは悪口の材料にしかな
つていないということを御
報告せざるを得ないことを、甚だ残念に思う次第であります。これは根本的な点と実際上の問題と二つあると思いますが、根本的にはやはり、最近
東京地方裁判所が下した判決の中にもはつきり言われておりますように、
公務員から
争議権、
団体交渉権、
公共企業体労働者からは
争議権というものを奪
つて、そうして平和的な
方法で、その人達が全力を以て
公共に奉仕する、
労働に喜んで当れるような、まあ最近アメリカの
炭鉱労働を代表してルイスが言
つておるように、エイブル・アンド・ウィリング、実際それがやれる、そして喜んでやれるように、そういう状況に置くことに
人事院が重大な使命を持
つておりながら、それが十分果せていないということが第一であります。これは本質的な問題でありまして、この
委員員においても
人事院はよく、
最後の
決定をするのは
国会だと言われておりますが、併し不幸にして
国会の
決定が事実において
公務員や
公共企業体の
労働者の
生活の破綻を救い得なか
つた場合には、それでもう
あとは知らないのだということが言えるかどうか。本来ならばその際に
公務員なり
公共企業体の
労働者は、
争議権を発動してみずからの
生活を救うのでありますが、それをさせない以上は、若し
国会の多数がこの問題を
了解しなか
つた場合に、
人事院は
国会がもう
決定したことだからとい
つて、
あと涼しい顔しておられるということが、理論的にも現実的にも許されるだろうかという問題であります。
第二は実際上の問題でありますが、
人事院は新しい
人事制度についての
啓蒙宣伝において、
十分一般を
納得させていないと
結論された次第であります。これは最近の
高級官吏の
試験の問題についてもそうでありますが、何のためにああいうことを行い、如何なる種類の
試験を行う、その結果どういうふうになものかということについて、少しも
一般を
納得させていない。それで
人事院がときどき
発表される
発表は甚だ唐突であ
つて、又前後の連絡がなくて、
却つて世人を
混乱させているようであります。例えば、いわゆるマルチプライド・チョイスというものの本質について、
人事院は果して本来本質的に啓蒙をなさ
つたか疑わしいと思うのであります。これは我々
人事委員が
人事院を鞭撻して、
人事院が現在行な
つているところの新しいいろいろな
制度について、その本質を
一般に
理解して貰うために、宣伝活動をもつとや
つて貰いたいと思うのです。但しこれは言うまでもなく
人事官諸君が甚だ世間に
疑惑を招くような形において、そういうことをなさるということを是認してでは勿論ないので、むしろ
人事院総裁なり、
人事官なりが適時に、新聞或いはラジオを通じて、
人事院が現在行な
つている新らしい
制度の本質をもつと啓蒙して頂きたい。最近の
試験制度についても、昔の半ば封建的な時代の
試験制度と、現在
人事院がや
つている新しい民主的な
試験制度の違いというものは、
一般の人は分
つておりません。又マルチプライド・チョイスの本質も少しも分
つていない。それで徒に無
理解な、そして場合によ
つては悪意のある非難を浴びて沈黙しておられるということは、我々
人事委員会としては黙
つて見ておるべき問題でないと思うのでもその点を申上げる次第であります。
以上甚だ簡単でありますが、我々第二班が派遣せられました
調査報告の極めて輪郭及び
要点だけを申上げましたが、尚いろいろ落ちた点もあるかと思いますが、それは提出いたします
調査報告書及びそれに付けての
資料によ
つて詳しく見て頂きたいと思うのであります。
それから
一つ落しましたが、それはこの定員法の問題でありますが、定員法施行の結果が甚だ不
合理な
状態を現しているということが
一般の事実であります。例えばこの全逓従業員、職員
関係において、與えられておる休暇を殆んど取ることができない。二十日間の休暇が與えられておるのに、それを全然、二日ぐらいしか取ることができない。これは與えておる、一方において休暇を與え、他方においてその休暇を活用してその体力、精神力を回復することができないようにしているような定員法というものは再考の必要がある。それからこの郵政及び電通の両省が分れたことによ
つて、管理職が増大し、現業員が減少している。こういうことは新しい定員法の精神の逆行である。これらの実例、その他
一般にこの
国鉄の
関係などにおいても、定員法の結果がさまざまの。非常に困
つた問題を起している。例えば新潟の駅の駅長などの
意見を聽いて見ますと、定員法によ
つて非常に人手が足りなくなり、且つ熟練しない駅手を使
つているために、拠どころなく、場合によ
つては人間の命が大切であるから、車を衝突させても止むを得ないというようなことが起
つて来る。この場合に車を衝突させてはいかんと言
つて、人命を危險に曝すということはできない。何人がその
責任者であろうとも、それはできない。そうして車を衝突させると、忽ちそこに何十万円、何百万円という損害が起
つて来る。これは定員法によ
つて国費を節約すると言いながら、実際において不
合理な定員法を行
なつた結果、国費の損耗を国民に負わしめておるという結果になる。こういう
意味で昨年の定員法が非常に不
合理であるという事実は、これは私自身、この定員法に反対して、参議院本会議において
意見を述べたものでありますが、不幸にして私が予告してお
つたような事実が、実際において多々現れておる。これは定員法について我々が至急に再検討を加えなければならないという
結論に到達いたした次第であります。
以上私の
報告を終ります。尚重要な問題で残
つた問題があるかと思いますので、詳細は
調査報告書及びその
資料によ
つて御検討を願いたいと思う次第であります。