○
説明員(
小川朝吉君)
予防課長でございますが、只今総括的な点につきまして
局長が御
説明申上げましたが、私から若干細部に亘りまして申上げたいと存じます。
結核対策につきましては、今日特に新らしいものがあるということでなしに、
考え方といたしましては、大体一貫した
方針によ
つて実施せられて来たのでありますが、従来は時の
政府、時の
主管省の
関係によりまして、その内の
実施せられる
分野につきましては若干の
変動がございまして、或る場合におきましては
施設の面に
重点を置き、或る場合には
予防接種等の点に
重点を置くというように、若干の
変動がございましたが、最近におきましては、それらの包括した
事項につきまして、必要なものを全面的にやりたいという
考えを以て
実施いたしております。本日御
説明申上げます
内容は、
予算と直結した
恰好で申上げますよりも、お
手許に差上げました
資料によりまして、その
事項別に御
説明申上げました方がお
分りかと存じますので、その
資料に基いて若干御
説明をいたしたいと存じます。
先ず第一に
結核予防施設の
現状について申上げたいと存じます。十一頁になるかと存じます。
先程
局長から御
説明申上げましたように、
結核予防施設は大体
指導的な
分野を扱う
保健所とか、各
職域におきまする
病院、
診療所、或いは
一般診療施設というような
指導施設という場合と、それから
收容施設とに分れるのでありますが、先ず第一に
保健所について申上げます。
保健所につきましては御案内のように、大体衞生
行政各般の
第一線機関になるのでございますが、私共
結核対策につきましても、これを中心として運用いたす
方針でございます。究極の
目的といたしましては、少くとも
人口十万につきまして一個所ずつ設置いたしまして、そこに
必要数の
結核專任の
医師、或いは必要な
技術者、
保健婦等を設置する
予定でございますが、来年の
予算に計上いたしておりますのは、
全国で七百四個所になると存じます。尚私共は各
保健所ごとに最低二名の
專任の
医師を配置しまして、同時に
保健婦が
各般の業務をいたしておりますが、
結核だけをやるといたしますならば、少くとも六名要るという
考え方でございます。
現状といたしましては、そこにも記載してございまするように、本年は六百八十九個所の
保健所に対しまして、
專任医は九百三十三名でございます。尚そうした
見地から見ますというと
保健婦も二千四百二十二名でございます。又問題は、現在の
実情は非常に
給與が低いために不十分と思われる
定員数すら充足しておらないということが
現状でございます。尚又明年は七百四個所に増加いたしまして、
專任医師は千四百八名、
保健婦三千百十六名に達する
予定でございますが、これ又多くの困難を予想しておる次第でございます。
次に
職域指導施設等について申上げますが、現在
保健所はその管内の
公衆衞生をやるということは中枢的な
役割だけで、
実践面の
役割については、例えば
工場につきましては
工場の衞生
管理者、
学校につきましては
学校医というような、それぞれの
施設におきまする
指導施設というものが十分に活動いたさなければ、
結核予防の
目的は達成できないのでありますが、現在私共が見ますというと、そうした会社、
工場の
施設、或いは
学校医等につきましては、その
機能は十分であるというふうに
考えておらないのであります。これは直接
厚生省だけの
所管ではございませんのでありますが、こういうような点につきましては
労働者、或いは
文部省と緊密な連繋を取りまして推進をいたしておりますが、大
工場或いは特に理解のある中
工場等では、或る
程度の衞生
管理は行われておりますが、それ以下の
中小工場、
零細工場等につきましては、全く
指導的な
役割がないと
言つてもよいんじやないかというふうな
現状でございます。
尚又
一般診療施設について見ますと、やはり
一般人はそれぞれかかりつけのお医者さん、
家庭医につきまして
指導を受けるわけでございますが、
結核の方は正しい
指導をするためには、
レントゲン施設その他の
施設が必要でありますが、
一般の
結核を御覧になる開業医についても、十分なる
施設を有する
医師は必ずしも多くないのでございまして、今後こういう
方面に対しましても、
医師会その他と十分な連絡の上に、十分な
機能を有するように要請する必要があると
考えております。
次に
收容施設について申上げますが、お
手許に差上げました三枚組の
資料を御覧頂きたいと存ずるのであります。先ず第一に
結核療養所、
結核病院、いわゆる
結核病床について申上げますが、第一頁に挙げてございますのは二十四年の
現状でございます。これは統計上お
手許に差上げました
資料には昨年の十月の現在数、
国立施設数につきましては、本
年度予算におきまして三月末に完成すべき
病床、その中から挙げてございます。私共現在これを拜見しますというと、大体
全国で八万床の
結核ベットがございます。その中
国立として五万五千が三月末には完成する
予定でございます。従来この
結核病床を
結核対策上幾つ作るかということにつきましてはいろいろ議論がございますが、現在
アメリカでは大体
年間の
死亡者の二・五倍ということを
結核対策上の
目標とすべきだという結論のようでございます。尚又従来に
国際連合等のこうした
会議の結果で、
最少限度の数字として
死亡者数と
同数にせしめるということを
目標としまして了承されておることでございますが、現在の
実情を見ますというと、十四万五千の
死亡者に対しまして八万でございます。
従つてその率は五五・三%、つまり
同数にいたしますということを一応仮定いたしますと、現在は五割五分
程度完成せしめておるというような
恰好でございます。一応これを対する
政府の
考え方といたしましては、
国立において取敢ず八万床にいたすという計画を持
つておるのでございます。
明年度はそのうち八千五百床増加することにな
つております。その詳細は
療養所課の方から申上げたいと存じます。こういうのが現在の
結核の
病床の
実情でございます。私共は取敢ず
国立においては八万床確保するが、その八万の確保の
目標といたしましては、各県毎にその県の
死亡者数の
半数を
最少限度保有せしめ、同時に
大都市周辺でありますとか、或は北海道というような広地域につきましては、少くとも七〇%—八〇%国の責任において設置する必要がある。かような
考え方でございます。尚又急速に
死亡者数と
同数にいたしますには、
地方公共団体或いは
公益法人の
療養施設につきましても援助をして、
病床増加を容易ならしめるということが必要でございますが、現在では
国立の
病床の拡充の方に
重点を置いておる次第であります。
尚
外国の
死亡者数の
実情等につきましては、この
資料の
附表に表を以て揚げてございますから、後列御覧頂きたいと思います。
次に
結核病院でない
收容施設といたしまして、
保養所という性格のものがございます。これは病気になる前、つまり
発病の虞れのある者を收容したしまして、これによりまして
患者の
発生を防止するという
施設でございますが、私共は現在
発病の虞れあるものを收容するという建前から、
従つて健康診断を科学的に徹底して行うということに
重点を置いて運用いたしております。現在は
厚生省の
所管といたしましては、小兒の
保養所が、
東京、横浜、名古屋に一箇所、大阪に二箇所、尚本年は神戸に
建設中でございます。二十五
年度予算といたしましては京都に
建設が決定しておる次第でございます。その他、
保養施設といたしまして、
文部省の
所管いたしますいわゆる
学校教職員の
保養所がございますが、それはお
手許の三枚綴りの一番最後の頁に一応揚げてございます。これは実質的に真の
保養所の
目的で使用されておる
保養所と、それから
病院に入れると
恰好が惡いというので、実際は
結核患者を入れております
教職員の
保養所と二つに分けられております。
患者を入れることは
医療法の適用を受ける
病院とみなすべきものだか、一応表向きは
保養所でございます。これが千九百八十九床あります。
次に後
保護施設につきまして申上げます。
結核患者は非常に長期を要するのでありまして、或る
程度治療いたしましても、昔の体に帰ることが、困難でありますので、場合によ
つては職業の
転換等をする必要がございます。或いは又
永久排薗者というような形でございますので、
永久に
保護を加えるというような
傾向の
患者もあるのであります。かような
方々のためには、後
保護施設いわゆるアフター・ケアー・システムという
施設が必要でございます。これは
日本では現在非常に少いのでございまして、そこにやはり第三頁目の表にございますように、極く僅かの
施設しかないわけであります。而もこれが公にやられておりますのは現在はございませんで、
国立の場合におきましても私共
療養所の一部として
実施しておるような次第であります。これなども将来の問題として積極的に
研究の余地がある
仕事ではなかろうかというように
考えております。
次に
研究施設について申上げますが、
研究施設は特段の
行政的なものの対象とな
つておりますのは、
結核予防会の
附属結核研究所でございます。それ以外には東北大学の抗
酸薗研究所、大阪大学の
竹尾研究内、
京都大学の
結核研究所等が
結核患者の
対策を
研究しているのであります。
日本におきます
結核の
研究並びに
業績につきましては、ある
意味におきまして世界の
水準若しくはそれ以上の
業績がございます。問題はこれらの
政策が直ちに
行政に板されるという点に問題があると
考えております。尚又
日本の特性としまして
研究施設が小さいので、立派なものを持ちながら
一般的に
経費が少いので、
研究にはいずれも不自由しておると私共観測しております。
以上が大体
結核予防施設でございますが、次に
実践面の
予防事業の
現状につきまして概要を申上げたいと思います。先ず第一に
事業面として
考えられます問題は
生活の
改善でございます。これには
連合軍のサムス準将も指摘されておられますが、
日本の
生活のうち疊の上の
生活、
蛋白質脂肪等に乏しい
生活が
結核の温床であるというふうに指摘されておりますが、誠にその
通りだと私
考えております。特に
戰後の
住宅事情は
結核患者も普通の
家族も密集しておる
関係上、最近は全般的には
結核は減
つておりますが、
乳幼兒の
死亡が増加して来ております。かような
意味におきまして、住宅問題の
根本解決或いは
病床の
増設等がその
解決をするわけであります。取敢ずの
措置といたしましても、
患者の
居室改善等につきましては意を用いるべきものではないかという
考え方を持
つております。次に栄養問題でございますが、栄養問題につきましては、これは
一般的に
日本は質の取り方が下手でございまして、
従つてその
関係上
患者になりましても給養の
質等は
相当損をしているのではないかと
考えております。これは
栄養調査の結果に徴しても明瞭でございます。
結核で
一つ問題がございますのは、従来
結核の
施設に入院している
患者につきましては
主食の増配を行
つておりますが、
自宅にいる
患者が実は多いのであります。これらの
方々には
主食の配給が行われておらんというようなことで、私共
事務当局といたしましては懸命の努力をいたしておりますが、まだ完全な
解決点には到達いたしておらんのであります。若し
患者の
家庭に
主食が増配できるならば、これは
病院に入
つております
患者も喜んで
自宅に帰りまして
療養ができる。
従つてベツト等も有効に活用できるのでありますが、現在はさような矛盾がございます。
次に
予防接種について申上げます。この問題は
予防事業中の最
重点として
実施しているのでございますが、現在
予防接種法によりまして、年齢三十歳までのものにつきましては年一回の
予防接種をいたします。而も尚年一回だだけの
接種では、学者が示したように、例えば
予防接種の結果、
結核の
発生を二分の一に阻止する、或いは
死亡率を八分の一以上に
減少せしめるということは確定の事実でございます。年に一回の
予防接種ではそのままの
額面通りの
成績は收め得られるものではありませんので、我々の
考えといたしまして
患者の
家族であるとか、或いは
東京とか、その他
結核の多い地区に存在します中学生、
高等学校、或いは二十五歳までのものにつきましては、少くとも年二回を
実施するように
指導をするのが必要だと
考えております。ところでもう
一つ問題になりますことは、この
予防接種の
実施は従来は
昭和十八年以来や
つて参つておりますが、従来は
予算措置によりまして、
地方庁のやります
予防接種に
政府が三分の二を補助しまして
実施して来たわけであります。
予防接種法に包括された
関係上、
一般的の
財政見地から、定期の
接種につきましては
実費徴收という形にな
つております。これは全般的の
政策からそういうことを入れたのでありますが、私共
事務当局といたしましては、せめて強制します
予防接種ぐらいは無償でや
つて貰いたいと思います。現在ではそういう
状態で
予算措置ができないということを、ここで御参考までに申上げたいと思います。
次に
健康診断でございます。この
結核患者を早期に発見して、早く治すということがやはり又
結核対策上、
一般事業として最も重要なことに属します。而もこの
健康診断と
結核予施接種をかみ合せましてやることによ
つて、大体に
結核対策が完成するわけであります。一番成功いたしましたのは
石川県でごいます。
石川県は
健康診断と、
予防接種を
昭和十五年に強力に
実施いたしましたところ、従来は
日本一の
結核患者の県でありましたが、現在では平均県にな
つております。而も尚これが十分なる
実施をいたしました十五
年度乃至十六
年度というものは、四分の一に
減少いたしております。かようなことを強力にやるという
考えで、
地方庁を督励いたしておるのでありますが、ここで問題になりますのは、現在
健康診断につきまして法制的な
基礎のございますのは、
労働基準法にありますところの
健康診断、それから
学校教育法におけるところの
学校における
健康診断、並びに
厚生省の
所管いたしておりますところの
結核予防法に基くところの
健康診断と三者の
法的基礎がございます。ところがこれらの
診断の
内容につきましては、それぞれ事務的に調整を図
つておりますが、私共は率直に申上げますというと、必ずしも十分に行
つておるとは限らんのであります。即ち
工場におきます或いは事務所におきます
健康診断では、その
実施の義務が
工場長、
使用者にな
つております。現在
俸給等の遅欠配もある今日、十分
健康診断させるような
経費につきましては、十分にやらなければならんのでありますけれども、負担に堪えない
工場が多々ございます。特に
中小工場、五十人以下の
零細工場におきましては、全く無視されておると
言つてもいいのでありますが、
結核の
発生がこういう
零細工場にあるということは、全く注目すべき事実ではなかろうかと
考えておりまして、尚又
学校につきましては、理解ある
学校におきましては、又
父兄等の非常に金持であるような場合には、立派な
施設に委嘱しまして、十分な
結核診断をや
つておりますが、これ又
文化水準の低いような
学校では、親というものは
飴玉を買うには五十円、百円と金をやりますけれども、
学校へ金を持
つて来て
レントゲンを撮るというような場合には金を出したがらないのであります。私共は
健康診断につきましては強力に一本化しまして、
実施しないところにはそれぞれ又
補助予防策を採
つて、完全
実施するという
政策が必要ではなかろうかと思うのであります。
次に最も重要な問題でございますが、
健康診断をかように普及いたしましても、問題はできた
患者の
始末であります。できた
患者の
始末につきましては、私共はいわゆる
事後措置と申しておりますが、
事後措置の徹底によ
つて、初めて第一の
目標の
健康診断ができるわけであります。例えば
病毒伝播の虞れある
患者が多ければ直ちに休ませるし、或いは就業を禁止する、入院を強制するという
措置を取る必要があります。現在現行の
予防法におきましても、さような規定があるのでありますが、実質的には運用せられないのであります。その理由といたしましては、例えば
政府管掌の健康保險の対象者は六百万余りでございます。そのうちの加入者は三百万なにがしであります。五〇%近い未加入者があるのであります。この
方々を若し
健康診断の結果就業の禁止をいたしますということが若し可能であるといたしましても、これは翌日から
生活に困窮を来たしまして、そういうような
意味合からそれを救うのが
保護法でございますが、
保護法までの過程に何らかの
措置が講じられるというのが、実質上の
結核対策推進上最も大きな政治問題と
考えなければならんと存じます。現在皆樣によ
つて御検討中の社会保障制度の確立に当りましては、特にこの点に御留意頂ければ幸せではないかと
考えております。これ又
政府からとしての御
説明としては、甚だ不適正な言葉でございますが、私共はその点につきまして、将来において折衝いたしたいと存ずる次第でございます。
尚次に
結核患者の收容、
指導、
保護という問題につきましては、別の面から申上げるのでありますが、入院して
治療すればこれは一番いいわけでありますが、先程申上げましたように、三百五十万の
結核患者があり、
病床は八万でございます。一応
目標といたしますところにつきましても、非常に多数、殆んど大部分の者が
自宅において
療養いたしております。これらの者につきましては、適正な
医師の
指導と、或いはそれの協力者としての
保健婦の
指導、並びに社会的な
保護が必要なわけでありますが、現在これも細かく申上げれば限りないことでございます。私共の專門的な
見地からといたしましては、十分に行われているということは言えないと存じます。その外
一般の
医師の
結核に対する協力というような字もございますが、これは
医師が、例えば現在の
結核予防法におきましては、
医師が
結核患者、特に
病毒伝播の虞れがある
結核患者を診察いたしますと、それに対する必要な指示の義務がございます。又指示を受けた者はこれによる履の行義務がございますが、実質的には非常に低調である、というふうに申上げて然るべき
実情ではなかろうかと
考えております。尚又
保健婦の
事業でございますが、これは在宅
患者即ち入院しておらない
患者に対する唯一の手掛けでございますが、先程
保健所の整備のところで申上げましたが、現在では
保健婦の数も不足でございますので、
家庭におる者に対する
保護の手が十分でないという
実情でございます。私共としましては御医者さんの届出に対しまして、平均四回くらいの
家庭訪問を
実施させたいと存じておりますが、旅費等の
関係等、実際の
経費の足りない点で、そこまで手が伸びておらんというのが
実情でございます。
尚
結核の
治療について一言申上げますが、最近外科的手術、或いはストレプトマイシンという新しい薬品の発見によりまして、従来不治とせられております
結核患者は、適当な時期に
治療いたしますれば、むしろ治る病気であるというような結論にな
つて参つておるのでございます。ところが外科的手術をいたしますには、やはりそれぞれ必要な、
病院施設を必要といたします。尚又ストレプトマイシンに対しましても、これ又御案内のように現在では輸入によ
つて極く一部の方に蒲高ておる
実情でございます。かような
意味合におきまして、急速に
医療施設の拡充を図り、ストレプトマイシン等の生産に対しまして今少し
政府が協力する必要があるのであります。特にこれ又
病床等にも制約されるのでありますが、外科的手術を要する
患者が再質的には非常に多いのでありますが、
一般には人工気胸術というような胸郭の中に空気を入れる方法でございますが、これによりましても
相当な
成績が收め得られるのでございます。これに対しましても現在
保健所等を非常に督励いたしまして、
成績が挙がるようにいたしておりますが、やはり
一般の診療
施設におけるかかる近代的
治療が普及するという点が問題になるだろうと存じております。まだ
国民の中には迷信的
治療をして、適切な
医師の
指導よりも、隣りのおかみさんに
指導されますと直ぐ
考えが変るというような、
一般的なこの間違つた観念につきましても、これを矯正しませんと、近代的な
治療の恩惠に
国民一般が與るのが遠いのではないかと
考えております。
次に
結核予防職員の確保について申上げたいと存じますが、
現状といたしましては
政府といたしましては
相当の努力をし、又皆さんの御
指導によりまして
結核病床が
戰後におきましては或る
程度急角度に増しております。只今御
説明申上げますというと、
日本の
結核対策は何から何まで皆不十分じやないかとお
考えになるか存じませんが、これは
結核という專門の
見地から申上げるのでありますが、多年かかりました
結核施設の眼から見ますというと、終
戰後におけるいろいろな
病院の増加、
保健所の増加等も急角度に上
つておりますが、それに対しまして
技術職員が非常に不足いたしております。それは
給與の
水準の問題が根本問題だろうと存じます。例えば大学を出た新らしいお医者さんを五六千円の俸給で雇おうとし、或いは又十数年経ちました経験のあるお医者さんでも一万円前後であるというようなことでは、我々の期待する知識と経験の十分な
医師を我我の
施設に入れることすら困難ではないかというのが
実情でございます。従いまして
給與水準の改正につきまして、
厚生省としましては人事院
当局にも強くお願いに上
つておるような次第でございます。尚又多数の
医師に対しまして、近代的
治療をなせるような立派な
技術を体得させることが必要でございます。現在では
結核予防会の
研究所におきます訓練が一番理想的なものでございまして、これは海外から見えられた方も感心するような教育を行
つておりますが、こういうような特殊の教育は量的には十分にならんのであります。
従つて私共は短期の講習会を方方で行
つておりますが、
予算的にもまだ十分というような
実情ではございません。次に特に政治的な
見地から重要な問題と
考えられますのは
医療社会
事業でございます。即ち
結核はやはり貧困な方に余計出ますし、又裕福な方もこれに襲われますと貧困になります。そういう
意味合におきまして、而も又
結核治療には
相当長年月を要します。そういう
意味合から
医療社会
事業は
結核という問題については最も大きな課題でございます。
現状の
医療社会
事業の
基礎となりますものは健康保險、その他の社会保險、或いは共済組合或いは
生活保護法等でございますが、先程も申上げましたように、健康保險に入るべき資格を有しながら入らないものが三百万ございます。
学校教職員等につきましても、共済組合に入
つておらんものが四%ございます。これらの人は若し
結核と
診断されますと即日
生活に困窮を来たす、
医療ということよりも
生活に直ちに困窮いたすような
実情でございますので、かような
見地から先程申上げましたように、急速に広い
意味の社会保障制度が確立される必要があるのでなかろうかと
考えるのであります。尚
国立病院或いは
一般公益法人等の
療養所におきましては、社会保險或いは
生活保護法の
患者というのが大多数でございます。特にその一部負担のできない人の数は
相当多いのでございます。或いは又
保護法にはかからないが、一銭も拂えないという
患者は大変あるのであります。従いまして
国立病院それ自体の赤字を御覽になりますと直ぐお
分りになるかと存じます。又
公益法人におきましても多々ありますし、一応
予算的
措置をそのために国が採らなければならないというような
現状でございます。その他
結核予防知識の普及びまあ最後的な
一般的な施策になります。これにつきましては多言を要しませんので省略いたします。
以上御
説明申上げましたところで大体私共の、
事務当局の
考えて来ております
結核対策並びに
実情というものがほぼ話し盡されたと
考えますが、この
予算の
内容について、その
実情を更に簡單に申上げたいと存じます。五十三頁から五十四頁にかけまして現在の
結核予算のことが書いてございます。これによりますと、現行の
予算は形の上では
仕事ができるようにな
つております。これを率直に申上げますと、形の上では
結核に対する
事業は或る
程度できることにな
つております。併しながらこれを第一線で大衆に及ぼす場合には、非常に不自由な
予算であるというのが
現状であります。例えば
予防接種をやりますその際に、取れるものは金を取るという建前は極く僅少の金でありますから何でもないのでありますが、
従つて予算措置といたしましては、貧困者の分だけの
予算措置は講じております。ところが、実質的には金を持
つて集まれということになると、集まらんというような点で
予算の
実情と……、でき得る筈のところも、
実情実施しておるところの相違が、現行
予算では出ておるというのが
実情でございます。
まあ以上一応
結核の
現状について申上げたのでございますが、私共はその結論といたしまして、担当者の
考えておることを附け加えさせて頂きたいと思います。勿論
結核を
減少せしめます場合には、各個人の
生活が裕福になり、国が富んで参りますれば、自然
減少して参ります。併しながら
生活向上による自然
減少というものには、非常な長年月を要します。例えば、各国におきまして
結核が
減少した実例を申上げますというと、ヨーロッパでも或いは
アメリカでも、今から百年前は現在の
日本の
結核の倍の惨禍に掩われておつたのであります。即ち
人口一万について三十五から四十五という
死亡率を示していたのでありますが、これは現在では
日本の五、六分の一ということになるのでありまして、その原因を詳細に検討して見ますというと、大体一八五〇年から一九〇〇年の間におきまして、五十年かか
つて結核は半分にいたしております。その頃から
結核は
伝染病であるということも明確になり、特定の
予防技術というものが、加味されて参りまして、第一次欧州大戰の前後では、その後の半減に対しまして、二十年から三十年の日子を掛けております。それから第一次欧州大戰争から今次大戰争の、現在の絢爛たる医学が適用されることになりましてからは、十二年乃至二十年位で半減いたしまして、そして今日のように極く僅かな
結核患者数にな
つておるのであります。従いましてこの見方から見ますと、現在では、
外国では例えば
結核の
病床なども非常に多く持
つておりますが、
病院自体の数においては
日本と変
つておりません。
日本の
結核病床と
アメリカの
結核病床とは絶対数では大した差がありません。即ち
外国は
結核がどんどん減
つておるから
病床数が殖えて来ておる、そういうような
実情でございまして、現在
日本の持
つております
結核予防技術を以てすれば一体どの位減るかということが、私共
技術者に課せられた責任でございまして、いろいろな角度から
研究いたしました結論だけ申上げますならば、五年乃至十年で私共は
日本の
結核は半分に減らすことは、現在の
日本の科学
技術では可能だと
考えております。又同時にこれが非常に国力、国の
経済力を増加し或いは不要なる
経済負担を軽減するものではないかと
考えておりますが、これに対しましては十分なる御
研究の結果、我我
医療行政の施策の上にやり易いような政治的御配慮が願えれば仕合せではないかと思う。そういうような経過的な
事項につきまして特別の計画を持
つておりますが、別の機会に或いは御
説明するようになるかと思いますから、一応概括的な見通しだけについて申上げさして頂きました。