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事務総長(
近藤英明君) 先回の
議院運営委員会で、五月三日以後の
参議院の性格についての考え方、並びにそれの考え方をどう考えるかによ
つて、更にそれに附属する問題としてどういう点が考えられるかを検討しておけと、かような御
趣意であ
つたかと思います。そこでその後
事務局といたしましては、先ずこの問題を研究いたし、更に
法制局とも協議いたしまして、種々検討を加えまして今日までに得ました一応の、私共の
法制局並びに
事務局で一致いたしました点を先ず私から申上げます。
それは第一に問題になりますのは、五月三日以後に
参議院が存在しておるかどうかという点が第一でございます。これにつきましては憲法論といたしましては、両方の議論が成立つじやないかということが先ず言われます。と申しますのは、憲法四十六條の半数交替の
関係、五十四條の緊急集会の問題等を併せて考えますと、少くとも
参議院は半数の方が任期が切れてしま
つておるので、かような場合に、
参議院は、現実に残り半数で、存在してはいないという議論も一方では成立つわけでございますが、逆にこれが成立つという議論の論拠といたしますと、半数交替制を初めから予期されておるが故に、残り半数というもので
参議院の継続性を保とう、かような
趣意であり、尚緊急集会というようなものを設けた
趣意からすれば、半数で
参議院は存在しておると、かようなことも言えるかと思います。そこでこれに関連いたしまして、日本の上院制度がアメリカの上院制度を採入れた点から、アメリカの上院という点も併せて研究いたしますと、向うの方は三分の一だけが改選になりますということで、継続性ありという建前をはつきりと
つておりますが、三分の一だけが替
つて、三分の二が残
つておる。更に向うの上院は一州二名ずつの
議員を以て構成されておるという事実、そうして如何なる場合でも州代表が一名は現実に残
つておるという事実、こういう点から継続性があるということは非常にはつきり向うの方は言えるだろうと思う。こちらの場合はそこの点が、ありという議論もなしという議論も、一応は成立ち得るかと思います。
次に活動能力があるかないかという問題は、これに又
関係かある問題かと思いますが、一応ありと、
参議院が存在しておるという建前をとるならば、活動能力も又ある、こう言わざるを得ないだろうと思われます。あるとするならば、その場合の定足数は何を基礎にするか、或いは臨時議会の召集請求権はどうなるかというような問題、或いは緊急集会はどうするかというようなことすらも考えられると思いますが、すべてさような場合の基本数は平常の場合の三百五十というものが基礎になるのではなかろうかということが考えられます。そこで先ず根本問題といたしますと、
法律論といたしますと、
参議院の継続性があるという議論も決して違法だとは言えないだろうと考えられます。併しながら実際問題として、それではこの
参議院の継続性ありという建前でこれ等の行動を全部起すということになりますと、法的には一応起し得るということも言えますが、緊急集会や、或いは臨時議会の召集を
要求するとか、そういうような点を考慮して行きますと、或いは定足数の問題にいたしましても、諸般の不自由と困難が起りまして、五月三日以後に継続性ありとして普通に議会を開く、
国会を聞くということには非常なる困難が沢山伴い得るということだけは明らかな事実でございます。従いましてこの継続性ありという議論を仮にとるといたしましても、継続性ありということで行う場合には、余程の條件でない限り通常五月三日以後に議会活動が行い得るのだという建前でや
つて行くことは非常な無理が生じるのではないか。但し如何なる場合と雖も継続性なしとしてあつさり決めて、五月三日以後のようなときには議会活動ができないのだと仕切
つてしま
つていいかと申しますと、非常な緊急の事態が起
つた場合ということを考えられないこともありません。さような場合に或る活動が全然不可能であ
つてよろしてかという点については多分な疑問が残るかと思います。問題は五月三日以後に、実際上どの程度の活動を真に必要とするかせんかという点が、この問題につきましては大きな鍵になるのじやないかということが一点でございます。
次には、従いましてこの
国会が五月三日以後に延長することが
法律的に、憲法的に可能か不可能かという問題にも一応触れて見なければならない問題としまして、
法律的に触れて見ますと、これも全然違法であるとは、そういうような建前からいたしますと言い切れない面があるかと思いますが、実際問題としましては、五月三日以後に、この
国会を継続して開くということは非常な困難な問題と無理が通常の場合はあるんじやないか、その無理を忍ぶ必要があるかないかという問題にもかかると思います。
次に役員の問題でございますが、三年
議員で役員である人は、この五月二日の十二時で以
つて役員の地位も失うことは明かだと思います。つまり
議長、副
議長の地位、或いは
常任委員長という地位も、その任期が五月二日で切れると同時に切れてしまうという結果に
なつています。それから六年
議員である人、五月三日に任期の切れない人、この人達が
国会役員である場合に、その人の役員である地位はどうなるかと申しますと、これは
法律的に申しますならば、全然影響がないということを言わなければならんだろうと思います。政治的な問題等は別個といたしまして、一応
法律上の問題として考えますならば、この五月三日以後には六年で任期の続いている
議員は、役員としての地位も又当然続いておると見なければならんだろうと思います。問題は、政治的な問題は別個の問題として考えなければならんと思いますが、次に
常任委員長の問題でございますが、
常任委員長、これは五月三日以後は現在の
常任委員長のうち、三年であられる方は、皆
常任委員長でなくなります
関係上、現在のままであるとすれば
常任委員長に多数の欠員が生じる、
常任委員長のない
委員会が生じるということは考えられます。これを防ぐ
方法といたしましては、先日この
運営委員会でお話が出ました
通り、この
会期中に六年
議員である方と入変
つて置かれる場合は、これが防げるではないか。それから
委員会におきましても、少くとも平均すれば半数は変られてなくなるわけであります。これは現実に平均いたしませんから、或る
委員会は極めて多数の方が欠けて、ほんの少数の
委員になるところもありましよう。
定員の半分にも、三分の一にもならんところも出て来るかも知れませんし、或る場合は半数以上持つ
委員会もできるかと思います。そこで仮に五月三日以後にその
委員会に真の活動をさせなければならんという建前とするとすれば、その
委員会だけでも少くともこの任期の五月三日で切れない
議員を以て充実して行かなければ、実際上の活動には非常な不便が来るのではないか、例えば十人の
委員のところで半数欠けるといたしますと、五人、五人の半数三人で
委員会を開き、今度は二人で多数決で決めるということが如何に不合理であるかということは、一応考えられる問題かと思います。真に活動しなければならん
委員会が若しあるとするならば、この
委員会は一応充実して、六年
議員で以て充実して行かなければ行動の上に、事実開いても無意味な活動に終るのではないかということは言えると思います。それで
常任委員会と継続
審査との問題に更に触れて見ますと、本院規則によりますと、十六までの
委員会に二百五十の
議員が全部
委員に割当てられるわけであります。そこで更に定足数は
委員会は半数でございます。この半数という計算は、現在まで実数の半数という欠員かある場合には欠員を除いた実数の半数という
方法をと
つて来ております。そこで先刻申しました
通り、十人のところ五人欠ければ五人の
委員の実数からすべてや
つて行かなければならんという問題もあります。そこで若し実数を全部集めることをやらないで、この
国会活動をやらなければならん必要が起きるとすれば、どうするかと申しますと、
委員会の
審査をすべて省略するという極めて異例な
措置をとらなければならん場合も起ると思います。もう一つは規則の暫定的
変更、つまり現在の二百五十を以て十六までの
委員を割当てるという
方法を、半数の百二十五で以て
委員会が成立つような規則の
改正までも設けなければならんじやないかということを考えられます。そこで継続できるような事件ならば、つまりこの
会期中にやらなくても継続して置いても済むような事件ならば、又或る場合には実際に五月三日からやらなければならんという理由も、三日からやらんでもいいじやないかという場合も起るのです。つまり
会期中に、今
会期中の済まない事件は強いて三日から直ぐ行わなければならんということは言い得ないじやないかという場合もあるじやないかと、こういうふうに考えます。
そういたしますと
法律上から申しますならば、継続
審査をすることは、直ちに違法であるという議論はでき難いか知れませんが、実際上においては継続
審査をやるということは極めて困難と無理が伴うのみならず、或る場合には極めて無意味なことをやるというような結果も考えられると思います。然らば六月の改選で他の半数が当選された後はどうするかということがそこに更に起るのでありますが、その際に
委員の割当はやはり通常で考えますと、次の
国会ができてから割当をするということが普通かも知れませんが、この場合通常
国会まで待つ、或いは臨時
国会まで待つということが妥当かどうかという問題になりますと、長い間数ケ月に亘
つて議員に当選しながら、
委員の割振りをせずに行くということは、
参議院としては適当であるまいということが考えられます。
参議院としては、と申しますのは、
衆議院の場合は解散後所定の
期間内に特別
国会を開かなければならんということに
なつておりますが、当然その
期間が一定の
期間に開かれて十分割振りもできるわけでありますが、
参議院の場合は今度の改選後何日以内に議会を開くという規定がございません
関係で、いつ開かれるかということは憲法的な予測は付かないわけでございます。そこでさような場合を考慮いたしますとしますと、一応六月に
議員が当選されて、当選証書の照合も済んだ場合に、その後において
議長の職権で以てこの割振りを行
なつて、
常任委員を充実してしま
つて置くというような処置は不当ではなかろうかと考えます。この点は
法律的に申しますならば、
国会法四十一條の規定がございますので、この次の
国会、臨時
国会或いは通常
国会を開かれたときに充実することが一番
法律的には正当な
方法だということは言えると思います。併し今申しますように、若しその間真に必要があるとすれば、
議長職権でやるということも考え得る途である。その場合に
議長だけで直ちに
常任委員を割振るということは事実上不可能でありますから、この
議院運営委員会を充実して置いて、
議院運営委員会に諮
つてでも決められるというような
措置をとる外はなかろうかとかように考えます。
そこで先ず第一に継続
審査という
関係を考えますと、五月三日から六月の選挙の間ということと、六月以降の問題を一応二つに考える必要もあるかと思います。五月三日以後六月の選挙までの間は恐らく各種の活動は先ず不可能に近い状態ということは言えると思います。この間は先ず活動能力がないのに近いと考えたが間違いなかろうと思います。六月四日以後においてもそういう
常任委員を指名するという処置を強いてやればできないことがないかも知れませんが、その
措置をやらん限りは、活動能力の面において
相当の制限を受ける。少くとも次の通常
国会なり臨時
国会なりが開かれるまでは
相当活動の面に制限を受けるということは考えられるわけであります。そこで継続
審査は困難であり、極めて妥当性を欠く点が沢山ある。
法律的には不可能ではないが、強いて行うなら行うような
措置をとらなければならんということは考えられるわけであります。そこでできるだけ継続
審査は避けるべきものではないか、成るべく避けられるなら避けたい。ただ
議院運営委員会というようなものですらもこれは避けられるならこれは避けなければならないが、それなら
議院運営委員会は継続
審査は行わなくても済むかという問題でありますが、これは予備金の支出という問題もありますが、これは事後承諾でいいようなことに
なつておりますから、これは一応片が付く。それから
人事の問題についても従来の
方法で特別の大きな問題でもなければ先ずやれると思います。こういうようなことも考えられるわけであります。それからもう一つは、
議院運営委員だけは一応六年の方で詰めて頂いて、
議院運営委員そのものが存在する状況にして置けば、継続
審査はやらなくても
議院運営委員の懇談会というものは開けると思いますから、
議院運営委員の懇談会に諮れば実際上
議院運営委員会を開いたと同じ効果を持
つて仕事がなし得るのではないか。こういうふうに考えられます。
最後には彈劾裁判所の裁判員と両院法規
委員会の法規
委員の問題が更にあるかと思います。これは両院法規
委員の方は、この五月三日以後活動を現実にしなくても済むのではないかということが一応考えられますが、彈劾裁判所の方は十二月まで、仮に十二月まで補充ができないというようなことがありますと、その間に活動の必要が起ることがあるだろうと思います。というのは、訴追
委員会で訴追された場合に、
参議院側の彈劾裁判所の裁判員が何人欠けておるというような状態のままで置くのは適当であるまい。そういう点を考えますと、この彈劾裁判所の裁判員、できれば両院法規
委員期方もこの
国会中に六年
議員で充当して置かれるならば、その点は安心であるということは言い得ると思います。但し
衆議院の解散の場合には、
衆議院の訴追
委員がなくなるというような事例は現実にあ
つているのでありますから……。
一応
事務局で検討を加えた点は以上でございます。