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証人(
星加要君) 私が
国鉄労働組合の
書記長の
星加でございます。私の方の昨年の九月に
生活の実態、或いは
民間の
給與、若しくは
物価の
情勢、これは
CPS等を参考といたしまして、現在
国鉄の
職員が是非とも確保しなければならない
給與はどれだけであろうかというところを検討いたし、且つは
国際情勢、若しくは
占領下にありますために、GHQの要
情等をも勘案いたしまして、九千七百円
ベースを
決定いたしたのであります。この九千七百円
ベースに対する
信念は今日と雖も変
つておりません。けれども、これが
調停並びに
仲裁という
制度をくぐりました場合において、我々はやはりこれを尊重したいということであります。それで一応
調停委員会において
基準内賃金といたしまして、八千五十円というものが第一次
裁定の場合出されておりますが、これに対しましても私共は
調停委員会の上に
仲裁委員会があるということを知
つておる。けれどもこれは非常に不満な
金額ではあるけれども、やはり
調停委員会というものが、
公共企業体労働関係法によ
つて定められて、これが
最初に下した
調停であるとすればこれを尊重したい。
従つてこれを尊重する
建前から
現実といたしましてはその
調停案を受諾したのであります。けれども
運輸当局側は、これでは受諾することができなか
つたので、ということはやはり
ベース改訂、或いは
賃金値上げということができないという、ただそれだけの
理由で、これはもう
政府からそういう方針を授けられておるのであろうと思うが、それに対して
自分の理想を堂々として断行をする勇気に欠けておるし、又官僚である以上いたし方もなか
つたのであろうかとも思うけれども、要するにこれを受諾することがなか
つたのであります。
従つて我我といたしましては、
仲裁委員会にこれを持ち込まざるを得ない。それで
仲裁委員会にこの問題を提起いたしましたところ、一応
ベースの
改訂ということは四月以降のこととして見送り、
政府の施策がどのように現れるか、そのときまでまあ待
つてみよう。そうして
賃金が実際に低下してお
つた面を、
仲裁委員会としては千円と見積りまして、この低下した面の総額を四十五億と算定いたしたのであります。そうして三十億を十二月に
支拂え、後は毎月五億づつといたしまして、月千円
づつの回復をしてやろう。この
金額は
ベースを上廻らすものではないけれども、とに角今まで低下してお
つたものに対する保障として出そうということであります。これに対しましても、勿論その
文句の言える筋ではありませんので、これを尊重し、且つこれに従うことにいたしましたが、この問題の実現が甚だ困難であ
つたので、今日裁判問題とな
つておりますところは、その際にどれだけの
金額が
支拂われるか。年末に三十億
支拂えと言われたものに対して、ここへ来られております
加賀山総裁は、やはり概算十八億円は可能であるということでありました。けれども
政府は公務員との
関係も考慮いたしまして、そうして十五億円というふうに
決定をされたのであります。それで我々はここに十五億円という
支拂いを受けまして、後の
金額が
残つてしまつたのであります。ところがそのままの
状態でこの四月を迎えることになりました。四月以後の
賃金をどうして呉れるかということについては、
経済情勢その他を勘案いたしておりましたけれども、それらはやはり何ら
変化がありませんので、我々といたしましては九千七百円
ベースを、尚これを実現せしむべく新しい問題として提起をいたしました。この際
調停委員会は
運輸大臣が
説明いたしましたように、やはりこの前に
調停をしたときと
情勢も変らないから同じ考えである、且つ
調停委員会がここでやりましても、すぐに又
仲裁へ持込まねば仕方がないような結果にな
つて来るであろうということで、
調停委員会というものは
自分がなぶられるのが馬鹿々々しいから、
仲裁委員会にすぐに持ち込んでしま
つた。
従つてここに
調停委員会に尊重するという
態度を若し欠き、
国有鉄道に対して
信念をやはり貫かせるということなく、これを操り人形のようにしてお
つたのでは、むしろ
調停委員会を早く止めさせたほうが
人件費の節約になるということであります。
調停委員会はあるけれども、
自分で
仕事をしない。すぐに
仲裁委員会のところへ持
つて行
つて呉れ。それで
仲裁委員会に問題が移りまして、
仲裁委員会で
裁定をされたのが八千二百円
ベースということであります。
本
国会において
只今問題にな
つておりますのは、八千二百円
ベースをどうするか、並びにそれの第二項に附加えられておりますところの
実質賃金低下の面を復旧せしめよという
裁定を、どのように実現するかということであります。従いまして私共としましてはこれを実現して貰わねばならない。実現して貰わねばならないけれども、この問題がやはり
国会においても第二義的に取扱われまして、
国会が今や数日を出ずして終ろうとしておる今日ようやくここに
提案をされ、この際これがたとえ可決になりましたとしても、二十五
年度の
予算案がすでに通過しておる今日において、果して鉄道
職員の
給與をかくしなければならないと
決定があ
つても、近くすぐにこの
決定に
従つて、又
予算案まで変更されるということの困難な事態を招いておるのであります。従いまして事情が実際問題としてかくのごとく推移いたしました以上、これを元に帰してどうこうというわけには参りませんから、本
国会において速かにその
結論を出されて、そうして
予算案が修正されまして、これが一日も早く
国鉄従業員の給料として実現するように御協力を願いたい。そのときは前に遡
つて支拂うというようなことをも、こちらのほうでは楽しみにして待ちたいと思う次第であります。
従つてこれが期日その他の
関係で尚遅れるというようなことがあ
つても、愼重
審議をする
建前上やむを得ないかと思います。この点は非常に重要ですが、実は無理を強いるということはできません。前の第一次
裁定のときに
衆議院の決議と
参議院の決議が異なりまして、
参議院としてはよくその事情を明察されまして、我々に有利に
決定をして頂いたけれども、
衆議院のほうではそうでない
決定をしておる。ここで
国会としての
議決の成立というところから見た場合に、
両院が違
つたものを
議決した、そうして会期が済んだというので、その問題はそのまま立消えにな
つてしま
つて、それで
国会で再び
結論を出すかというと、本
国会においてはそれをやはり採上げなか
つたということであります。
従つてこの
給與問題がこれが
国会の都合によ
つて立消えになるというようなことがあ
つては、これは我々にとりまして絶体絶命の問題であ
つて、そういう取扱をされては困る。愼重に御
審議を願うことにして、若しこの
国会で山掛頭独ないというような場合は、次の来るべき臨時
国会においても継続してこれを
審議されるような方途を講ぜられて、そうして必ずこれの実現を図
つて頂かねばならんということであります。
次に一言附加えさして置いて頂きたいことは、
労働組合運動の性質及び
裁定というものとの関連であります。これは我々が三億円の問題につきまして裁
規定がら離れまして、裁判所、東京地裁へ強制執行の訴えを起した判決がほぼはつきりと、法律的な明記をも
つて説明しておるように考えますが、私共の考えは、実は
公共企業体労働関係法というものは、
労働組合を認めた主なる趣旨、すなわち対等の
立場に立
つて団体交渉を行わすという趣旨を壞しておるのであります。それは
公共企業体労働関係法の十
七條におきまして争議行為を禁止しておるからであります。なぜ団体交渉の趣旨を壞しておるかということは、
争議権というものがない以上、話合を進めただけでは、非常に困難の中から
給與を支出するというような場合においては、
労働者の
要求というものは、貰うほうですから、出すほうに人間よりは弱い、そうしてぎりぎり一杯のところまでのやはり成果をあげることができないということであります。
今回私は昨年末から米国へ出かけまして、米国の国務省で座談会を
開きました。
日本における
労働組合運動についてということであります。我々の運動が米国へ伝わ
つておりまして、まあ
日本の
組合運動ということになると、
国鉄の
労働組合運動が第一番であるから、一つ
星加君からその模様を話して貰いたいというので、話をしたのであります。その際
公共企業体労働関係法の話をしまして、実は私がハンガー・ストライキをや
つたことが米国に伝わ
つておるのですが、米国ではこのことが理解できない、どうしてハンガー・ストライキのようなことをやらねばならないかと言う。罷業権がないからそれでこういう方法でもして反省を促すよりほかに方法がないのだということを
説明しました。そうすると国務省の役人は、罷業権がなくては団体交渉にはならないではないかという反問をしてくれたわけであります。かくのごとく米国では不思議に思われておる。そこで私は答弁といたしまして、実は我我も罷業権というものはぜひ必要であると思
つておるが、
労働組合の実績というものがやはり罷業権の濫用に落ちたという反省も持
つておる、且つは我我は敗戰国民として
日本の再建を急がねばならないときに、ストライキを濫発して再建を遅らすということもできない、ここに罷業権を失
つたという点については、残念ではあるけれども、やはりこれは耐え忍ぶべきところであろうかと考えておる、それについては罷業権よりは弱いけれども、罷業権を失
つたところを補強するために
調停並びに
仲裁制度というものがあ
つて、多少カバーされておるのであるという
説明をして、とに角向うの人間に
国鉄労働組合が、罷業権を持
つていないという点での了解をして貰
つたのであります。
又米国での実情では、鉄道が重要な交通機関たる地位を今日と雖も失
つておりません。この鉄道が如何なる法律の下に
労働組合運動が規制されておるであろうかというならば、鉄道
労働法という法律によ
つて規制されております。これは罷業権がどうであろうかと見ますと、普通の場合は罷業権は普通の
組合と同じであります。けれども、罷業権が大規模において行われようとするような事態には、大統領が非常事態宣言を行います。大統領のエマージエンシーが出されますと
調停委員会が開かれ、その
調停委員会に要する期間は三箇月間であります。その
調停案を見ましてから
組合が納得するしかないか、納得しない場合は又ストライキということになるのでありますが、尚三ケ月間を経た後でなければストライキをすることができない。
従つて重大なる争議となる虞れのある場合は、大統領のエマージエンシーが出まして、
調停に要する期間最大三箇月、それから冷却期間三箇月、合計合せますと六箇月間になります。大統領のエマージエンシーを出したような重大事態の予想される争議ですら、六箇月間の期間を経過した場合は、やはりストライキが断行できるというふうにこの
調停の
制度ができておるが、やはり最後に問題を解決する押しの鍵として
争議権というものが認められておるわけであります。かかる観点からいたしまして、
争議権というものが如何に重要であり、それがあることによ
つて却
つて米国等においては問題の解決が促進されまして、争議の件数が非常に少いわけであります。
又米国の昨年から今年にかけて行われておる大争議としては、大体一応解決を見ましたが、炭鉱
労働組合の争議があります。それと自動車ではクライスラーの争議というものが、今も尚継続しておるだろうと思います。これらはすべて
賃金問題を以てストライキに入
つておるわけであります。それで
賃金問題でこのようなストライキが勃発をするということは、
調停或いは斡旋というような
制度は
日本以上に完備しておるわけではあるけれども、そういうところでは他の
條件での
紛争が解決されるけれども、
賃金問題である限りどうしても本質的に或る
程度の満足が双方に得られない場合は、解決し得ないということを示唆しております。米国の
労働組合はストライキの件数が相当多いというのが
一般的な常識にな
つておりますが、ここでTVAを見ますと、TVAでは争議というものがありません。けれども法律でこれを禁止しておるかというと、そうではなしに、
賃金問題を解決する方法を定めて、その方法を実行しておるのであります。他の
労働組合は争議をしておる。如何に
調停、斡旋等の手続を経ても、実際その争議というものが治ま
つておらない。その
原因が一体どこにあるかというと、
賃金問題であります。ところがTVAの方はこれは争議が今までにない。そのない
原因は一体何かというと、
賃金算出の方式が定められてお
つて、その定められた方式で
賃金が実現することにな
つております。これはTVAが存在する地域の
平均賃金、プリヴェリングウエーヂを算出しまして、それを従業員に支給する。
組合側とTVAがプリヴェイングウエーヂの多寡を廻
つて資料に基いて国体交渉をするからであります。かくのごとく
賃金問題の解決ということが、労使の間の平和
関係を維持するための第一の
條件であります。それが実行されて行くところに労使の
紛争というものはなくなり得るという証明に私はなるのではないかと考えております。
そこで
国有鉄道に対しまして我々が強制執行を含む仮処分を東京地裁に提出をしました際も、これは法律で明らかに
労働者、即ち
労働組合側の債権としてこれを認められまして、これを保全するために強制執行を止むなし、その
理由といたしましては、やはり民主的な
労働組合運動を守らねばならないという
意見であ
つたと私は考えております。
労働組合運動が左翼化しようが、或いは合法になろうが非合法になろうが、それは
組合の自由であるから、勝手にせいということを言うのが、これが
政府の役人の言うことであります。こういう
政府の役人が世の中にお
つていいかどうか、
政府の役人だけでなしに、政治家もそういうのです。これはまあ大屋
運輸大臣は言わんかも知れんと思うけれども、これの代理をして来た者が裁判所でそう言
つておる。それで果して
国会議員の皆さんは、
参議院の皆さんはいいと思うであろうかどうかということ。私はまあえらそうに言うわけではありませんが、一応昨年の七月、八月、九月頃を想起して貰いたいと考える。そのときは六月一日から
公共企業体労働関係法が実施をされておりまして、罷業権のないときであります。そのときに共産党が今だ主流をなしておりまして、そうして先ず第一に起
つた問題は何かというと、これは列車妨害であります。その列車妨害事件が頻々として起りまして、一種の社会不安と
なつた
情勢をあなた方は忘れておるであろうか。思い出して貰いたいと思う。その次にはどういう問題が起
つておるか。今は
国鉄総裁は
加賀山さんですが、その前は下山さんであ
つた。その下山さんは一体どういうふうになられたのであるか、それをはつきりと言い切ることができますか。彼は自殺したのであるということをはつきり言うことができるか。彼の裏にはやはり誤
つた労働組合運動、極左的な
労働組合運動というようなものの暗い影がまつわ
つておるということはやはりあるであろうと思う。その次には三鷹の電車区で電車がひとりでに動き出したということ、けれどもこれがひとりでに本当に動いたか。これ又極左的
労働組合輸動の影濃いものがあるのではないか。その外福島においてもある。いろいろ重大な問題を起しまして、今日に来た場合に、そういうことを忘れてはならないということ、我々が民主的な
労働組合運動ということを唱えて今日
国鉄労働組合の主流をなしておる、
国鉄労働組合が民主的であるということの具体的な主張なり、或いはその差異というものはどこにあるかというと、合法的な
労働組合運動をするのである。合法的な
労働組合運動を推し進めるところに民主的な
労働組合運動があるということ。その合法を軽んずるような発言をするとは一体
何事かと言いたい。合法であろうが、非合法であろうがまあ好きなようにして貰いたいと言う。こういうことではこれは国を亡ぼす、何といいますか、実にこの国のうちに置いて置くべき人間ではないと思う。これは共産党以上に惡いと思う、そういう連中は。それでとにかく合法的に
組合運動を進めて行こうとする場合に、我々の取るべき手段というものは、法律上許された方向を辿
つて行かなければならん。そうして
仲裁、その
仲裁案が出て、それで問題が解決されないということでは、私といえども合法運動に限界ありと言わざるを得ないではないか。そう
なつたならばこれを合法運動即ち合法を看板とするところの民主的合法
組合が死んでしまうから、私は限界があるというようなことは言わない。あくまでそういうふうに誤
つたものを覚めさすために、やはり行動をして行かなければならない。無理が通れば道理が引込むというけれども、我々は道理の
立場に立
つて引込んでお
つたんでは、これは国家のためにならん。飽くまでもその道理を押してやり抜いて見せる覚悟であります。
従つて合法的な
立場を守るために飽くまでもその
政府の陰謀なり、当局の無気力なりによ
つて裁判所を蹂躪し、いろいろなことをする場合には、我々としても法律を守る
日本人というものを亡ぼさないために断乎たる
態度を取る必要があると考えておる。で願わくはそういう無茶なことを言わんように是非ともこういうふうにしてや
つて行かねばならないと決めて、そうしてやられたことはそれを少々の無理は通してもこれを実行して行
つて、
日本の国が民主的に立
つて行けるようにして貰いたいと思う。そういう
労働組合が成り立
つて行けるように考えて貰う必要があると思うのであります。私は特に言うて置きますが、この
国会においてこの
裁定が完全に実施されるように御盡力を願いたい。けれどもそれが間に合せんというならば、次の臨時
国会まで待つのも止むを得ないから、これでうやむやに葬むるようなことがあ
つてはならんという、その点を特にお願いいたしまして、私の一応の証言といたします。