○
堀木参考人 形式的にと申
しますか、
法律的に見まして、今度の
専売裁定については、
予算上、
資金上可能な
支出である、これが私
どもの
考え方でございます。その点については形式にわたり、実体にわた
つて申し上げたのであります。つまり
政府の方と申
しますか――まだ
政府の公式な御
意見を聞いておりませんが、この明らかな
規定を運用されないで、これを
国会にかけて、
予算上、
資金上不可能な
支出だというふうなお
考えが、
大蔵大臣にありといた
しますると、
考えられますことは二点であります。一つは、
財政法上、
大蔵大臣は
予算の
流用についての
承認権を持
つておる。それから
予備費について
大蔵大臣に保管の権限があるというふうな点から、形式的に見ますと、これは
大蔵大臣の裁量であるから、その自由裁量の
見地から、
予算の
流用を許すべきでないという
判断のもとに、
予算上、
資金上不可能な
支出として、
国会に
議決をお求めにな
つておるように
考えられる。これは正式にお聞きしたわけでもありませんので、そういうふうな前提に立
つてものを言いますことは、いいか悪いかも問題がありますが、その問題に関
しまして、
公労法の第十六條にありますことは、前にも申し上げましたように、十六條の前に註として、「
資金の追加
支出に対する
国会の
承認の要件」という問題があ
つて、要するにここでいう
予算上、
資金上不可能かどうかということは、
国会の追加
承認を要することかどうか、追加
支出に対する
国会の
承認という問題が必要であるか必要でないか、こういう問題でものをきめるべきだ、これが私
どもの
考え方の一つであります。
なお字句的にもう一つあげますと、十六條の
公共企業体の
予算上というものは、原文と対比して、
支出予算であるということは明らかであります、こういうふうに
考えられるわけであります。それから第二段は、
政府を拘束するものでない。これはこの條文では、もう
政府を公式に拘束するものでないということで、
政府はま
つたく十六條から第三者的にいるようなことを言われるのでありますが、本来から言いますと、
公共企業体と
労働組合との団体交渉によ
つてきま
つたものについて、
政府が第三者であるということは当然なのであります。拘束するのは
公共企業体と
労働組合であるということは当然でありますが、ここにわざわざ拘束するものでないというのは、
公共企業体が、この
国会の
議決を要しなければならない、つまり今までに
議決をされた中で出すものについては、
政府を拘束するものということを言わんがために、
政府を拘束するものでないと言
つているということに
解釈するのが正当である。ことにその点につきましては、
公社と組合との間には、
既定予算の範囲外で
協定が結ばれることを予想しておりますから、第一項の
後段でも
つてこういう
規定ができている。それから第二項におきまして、そういう議会の決定を経ました
予算の中で
支出できないものについても、
政府はか
つてに
判断をしないで、十日とか、五日以内に出して
国会の
承認を受ける。つまり期限付で――荏苒
政府のか
つてなことで日にちを延ばすということは、労働者の権利を擁護するゆえんでないという
観点から、こういうものをお出しになるので、この第二項が出て参
つておるのであります。その場合には、その効力は、記載された日付にさかのぼ
つて効力を発するものとするとありまして、それが今申し上げたように、わざわざ生きて参るというように、私
どもは
解釈するのですが、それに対
しましてどうも
大蔵大臣の今回の場合は、
大蔵大臣の
流用権、つまり
公社の
総裁独自でできることに限局されようとしておるのではないか、という
考え方になるのであります。その点につきましては、私
どもは
大蔵大臣の
財政上の権利というものをも
つて、国民の私権を侵すことはできないと思います。これは明らかであります。そのときに
大蔵大臣は、おれの自由裁量だからとい
つて、か
つてに自由裁量を何でもしていいように
考えて、おやりなさることは間違いで、やはりこれは法規裁量で、法規によ
つてお
考えになるべきである。特に
公社と組合とを
仲裁裁定が縛りますと、私権が発生いた
します。財産上の権利が発生いた
します。その権利を
大蔵大臣が、自分の御都合から出すとか、出さぬとか言われるべき
性質のものではない。はたまた
財政上の
大蔵大臣のああいう権利は、行政上の
手続規定であると
考えられるということが、私
どもの
考え方であります。
それからもう一つ、今まで申し上げませんでしたが、賃金の問題については
大蔵大臣の自由裁量で、どうしても、何と申
しますか、出さないのであります。そういう
政府の
考えがここに現われておることは、さきに
今井委員が申し上げましたように、今度の
予算総則において、さらに制限されるような
規定ができておりますが、根本にさかのぼ
つて考えますると、この
公労法によりましても、団体交渉が
理由の大部分を占めている。団体交渉の対象に賃金ということが書いてあります。
公労法の第八條において団体交渉になり得る。そうして労働協約を締結することができるものはいろいろあるが、そのうちに賃金という問題があるから、これを御
考慮願いたい。これを
大蔵大臣の自由裁量で奪うことはとてもできない。ことに
裁定が起りまして、両者間に労働協約が締結されたと同様の効力を発生しているときはなおそうである。こういうふうに具体的に
裁定が起りますと、その問題が起るのであ
つて、両者を拘束する制限、つまり約束に反抗し、契約書に反抗したと同じことになると
考えます。それで私
どもとしては、今申し上げた
理由で
考えて参りますと、今度の
裁定は形式的にも十六條の問題があります。それから
実質的に
予算の
内容に入
つてみますると、これは私がつべこべ申し上げまするよりは、ここにおいでの
秋山総裁自身が去年の十二月二十八日に、
予備費を入れまして四十億の移用、
流用の金、あるいは不用額に立て得る金がある、そのうちで一億二千万円出したいとおつしや
つておるのですから、これも
既定予算の範囲内で金のあることを、
総裁みずからが裏書きしておられる。
それからもう一つ問題になりますことは、
予算の歳入
歳出から出ました
益金が、
一般会計の納付金にな
つておるわけでありますが、この歳入と
歳出の結果、四億八千百万円
一般会計の納付金が減るというふうな御
計算が一応立
つているようであります。しかしこの点に関
しましては、私
どもこの十六條におきまして、まず
法理的に
考えまして、これは議会で
議決をした
支出予算、つまり経費の
歳出予算ということが形式的に言い得るのであります。もう一つは歳入自身についても、
今井委員から詳しく申し上げましたように、タバコのうちで歳入の調節によりまして――
今井委員は非常にうまいことを言われたのですが、タバコを半日分くらい小売商人に売りさばくかどうかで済んで
しまうというようなことで、ともかくもごくわずかな操作でも
つて、歳入面についてふえ得る見込みがあるし、のみならず今までの月別の売上げから見ますると、一、二、三月の売上げを相当悲観的に見ておられる。また
歳出面で見ますと、過般来しばしば言われましたように、いろいろ項目はあげ得るのです。たとえば
人件費におきましても、そのほかのいろいろな各種の経費につきましても、当
つてみますと、いろいろとこまかな経費でも
つて決算に相ならないというものも
考えられますが、ともかくも大きな問題としては、塩の売上げが悪くて、歳入において十五億の欠損を――欠損と申
しますか、歳入
予定額より少く売れるということを見込みながら、塩については十四億さらに移用、
流用によ
つて歳出をなさろうとしている。しかもその塩は翌年度に財産として持
つて行くべきものである。そういうものが
歳出にな
つておるのでありますから、そういうものとの調節からしても、一億二千八百万円は歳入
歳出の差引
計算で、
一般会計への納付金を
考えましても、私
どもとしては十分できる問題であると思う。それは
法律上必要がないことでありますが、一応実体的に見て、
政府の本年度の
予算執行の上に支障を来さないだろうということが、事実問題として言い得ると思う。以上のような
法律上の問題及び実体的な問題から見まして、この問題は
予算上、
資金上可能な
支出だと私
どもは断定いたしておる次第であります。