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堀木参考人 私から一言
お答えいたしたいと思います。調停を尊重するということが、
仲裁としてやはり一つの職能だと
考えなければならぬ重要なポイントである、こう思うのであります。
公共企業体労働関係法の第一條をごらん願いますと、「この
法律は、
公共企業体の職員の労働條件に関する苦情又は紛争の友好的且つ平和的調整を図るように
団体交渉の慣行と
手続とを確立することによ
つて、
公共企業体の正常な運営を最大限に確保し、も
つて公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする。」これが非常に私は
考えていただかなければならぬ点であると思います。つまり「
団体交渉の慣行と
手続とを確立することによ
つて、」というのでありまして、
公共企業体の経営者と
組合との間に、この慣行を樹立することが
公共企業体労働関係法の
精神であるわけであります。この專売調停は、この経過の中にも書いておきましたように、事実問題としては、ほとんど妥結し得る
状態にあ
つたのであります。ただ何と申しますか、今
大橋委員の言われましたように、どうも公務員と引離すのがいやだという
考え方、これが確かに
政府にある。あまり内輪話はしたくないのですけれ
ども、私
どもと
政府の大臣などと話をするときに、どうもそれが出る。しかし、そんならなぜ
公共企業体をおつくりにな
つたのだ、両方が違
つておらぬのなら、マッカーサーの書簡によりまして、
政府がおつくりに
なつたときに、決心をさるべきなのです。それをあのマッカーサー書簡によ
つて公共企業体はつく
つたのだ。しかしその職員は今まで国家公務員と一緒だ
つたのだから、何と
言つても一緒だ。こういう気分が強いのじやないか。お互いにこういう新しい民主的な行き方のものがきまりましたときには、その方向に努力すべきなのです。バツクワードするようにして、昔の国家公務員と同じように、道連れにすべきものじやない。かたがた国家公務員は
団体交渉権を奪われてしま
つたのですから、その国家公務員ができたように、人事院の勧告もお聞きになり、国家公務員が民間の
給與と同じようにな
つて行くこそ、
政府の責任なのです。率直に申しますればあのマッカーサーの書簡の
意味はそうなのです。
公共企業体におきましては、
団体交渉権があるわけです。だからわれわれが、この
団体交渉権なり何なりというものをできるだけ尊重するのが、
公共企業体の労働
関係法においては当然なんだ。それを、一方的な権力をも
つて律するようなものに近づけることはできない。ことにそれが他の民間の
給與と比較いたしまして、悪い
状態に置かれてあるということは、無視することはできない。
政府の給典白書でも明かにそのことは認めております。ただ
政府の方はそれを僅少なりといたしておりますが、私
どもは著しく均衡を失しておるという
考え方にな
つておるわけです。それで国鉄
裁定の場合と何か思想的に非常に差異があるようにお
考えになりますが、国鉄
裁定のときにもわれわれは詳しく申し述べておりまして、他に制約がなかつたならば、もうすでに低いのだから、これは本来言えば、相当
給與を上げるべきだという観点で、ちやんと国鉄
裁定に、二割程度の引上げを要するものと認めるに至つたということは書いてあるわけであります。ですから思想的に決してかわりはない。ただ片方によく言われます賃金三原則がある。この点は実は私
議会で話が起らなか
つたので追究するのをやめたのですが、
国会放送討論会でありましたかで、あれをいかにも借入金をして賃上げを要求するように、増田官房長官が言われているので、私非常に残念に思
つたのです。末弘さんもその点に触れておられるのでありますが、しかし国鉄の場合には、少くとも経営
状態が悪くて、貨物運賃を上げて収支を償う、それに借入金をしておるという現状から見て、退職手当の分だけは、民間でもおやりにな
つておるのだから、ぜひその分だけは
国会でも考慮していただいて、そうしてや
つていただかなければならぬというので、
経理能力から見まして、切下げの分を補うという程度にとどめて出したわけであります。ですから、あれは賃金三原則、経済九原則をしつかり頭に入れているから、ああいう
裁定が出たのです。今度の專売の方は、いくらおつしや
つても、これは一体経済九原則、賃金三原則に触れるとおつしやるわけじやないと思うのです。私
どもは、今度はこの原則には、
專売裁定に関する限りは
関係ない。現在の
予算を調べてみてもない。こういうような確信に立
つておるのですから、その点の差は起
つて参
つております。しかし今度は実質的にもそう大した開きは起
つておりません。しかも企業経営が違うたびに
——少くともああいう賃金三原則なり、経済九原則を強行される以上は、企業の
内容が違つた場合に、
給與が違うことは当然認めておるわけです。これは当然だと私は思う。その点について金のあるものと、ないものを一緒にして行つたら、いつまでも金のないところの労働者がくぎづけになることは明らかなんで、そんなことはドツジ・ラインからは出て来ない。経営に負担
能力があればお出しになる。何もむちやに出せというのではなくて、それこそ私
どもも
政府もおたよりになるような、しかも労働者の意図に反してでも、労働者が服従しなければならぬ、そうして
公社も服従しなければならないという
裁定を出す以上、私
どもは責任を感じつつ、十分に全体の情勢を加味して、実情に合うように出した。この衷情だけはぜひ御理解を願いたいと思うのです。