運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-02-10 第7回国会 衆議院 労働委員会人事委員会大蔵委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十円(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員   労働委員会    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 篠田 弘作君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君    理事 稻葉  修君 理事 春日 正一君    理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    船越  弘君       松野 頼三君    赤松  勇君       前田 種男君    川崎 秀二君       柄澤登志子君    石田 一松君       岡田 春夫君   人事委員会    理事 上林山榮吉君 理事 小平 久雄君    理事 高橋 權六君 理事 玉置  實君    理事 成田 知巳君 理事 土橋 一吉君    理事 逢澤  寛君 理事 平川 篤雄君       廣川 弘禪君    松澤 兼人君   大蔵委員会    理事 前尾繁三郎君 理事 川島 金次君    理事 内藤 友明君       岡野 清豪君    鹿野 彦吉君       三宅 則義君    田中織之進君       竹村奈良一君    奧村又十郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  水田三喜男君         大蔵事務官         (主計局次長) 東條 猛猪君         労働事務官         (労働局長)  賀來才二郎君  委員外出席者         日本專売公社総         裁       秋山孝之輔君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 堀木 鎌三君         労働委員会專門         員       濱口金一郎君         労働委員会專門         員       横大路俊一君         人事委員会專門         員       安部 三郎君         人事委員会專門         員       中御門經民君         大蔵委員会專門         員       黒田 久太君         大蔵委員会專門         員       椎木 文也君     ————————————— 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第二号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより、前会に引続いて労働委員会人事委員会大蔵委員会連合審査会を開会いたします。  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件(内閣提出議決第二号)について、政府並びに参考人各位に対して質疑に入りたいと思います。なお一般労働問題につきましては、別に単独の労働委員会において質疑機会を持ちたいと存じますので、本連合審査会においての御質疑は、この議決の案の範囲内に限定して進められるよう特に御考慮を煩わす次第であります。なお質疑通告者も多数あるわけでありますから、なるべく重複を避けられまして、要点を盡されるよう御配慮をお願いいたす次第であります。これより質疑を許します。大橋武夫君。
  3. 大橋武夫

    大橋委員 この案件につきましては、まず裁定理由書の第三に「本委員会公社経理状態を調査した結果、公社はその予算上又は資金上今年度内に主文第一項に記した金額を支給し得る十分の経理能力を有し、従つて公労法第十六條第二項に関係なく、その支給に必要な措置をとり得べきものと認める。こういうふうにうたつてございます。この点につきまして、過日運営委員会においても問題となり、また本会議においても問題となつたのでございますが、一昨日のこの連合審査会においても、仲裁委員方々からこの問題についての見解が披瀝されたのでございます。ことに仲裁委員の一人であられます堀木君は、公共企業体の経営については、わが国の最高権威の一人と目さるべき方でありますし、また同じく今井君は、公務員の給與についての第一人者であられるのでございまして、かような方々のこの問題についての見解は、私ども委員としては最も知らんと欲するところでございます。同時に国民諸君もまた、より正しい理解をこの方々によつて得ることを希望しておると思うのでございます。従つてこの点につきまして、仲裁委員方々から明確なお示しを重ねて仰ぎたいのでございます。  そこでまず私がお伺いいたしたいのは、仲裁委員会は現在の段階におきまして、この裁定主文の第一項の金額支出が、公労法第十六條第二項に照しまして、法律上からいつて予算上、資金上可能の状態にあるかどうか、あるいは不可能の状態にあるかどうか、この点についての率直なる御見解をお願いいたしたいのでございます。
  4. 堀木鎌三

    堀木参考人 法律的に見ますときに、この十六條の予算上、資金上可能な支出か、不可能な支出か、それについての見解をお聞きになつたようでございますが、第一考えられますことは、この十六條の前に、日本文でも「資金追加支出に対する国会承認の要件」という見出しがございます。私どもといたしましては、結局この表題自身が、国会追加支出を要する場合を規定したものである、こういうふうにまず第一に考えられるのであります。それから第十六條の「公共企業体予算上又は資金上、不可能な資金の麦田を内容とするいかなる協たも、政府を拘束するものではない。」この予算は私ども見解では議会の御審議を経ましたところの予算だ、そうしてさらに考えられますことは、前文をさらに参酌いたしてみますと、十六條にアプロプリエイテッド・コーポレーション・パジェットという言葉があるのであります。これけ議会によつて議決を経た公共企業体予算、こういうふうに解釈すべきである、こういうふうに考えろのであります。さらにそう解釈いたしますもう一つは、十六條の第一項の後段におきまして、「国会によつて所定行為かなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならないというふうな規定があるわけでありますが、これで見ましても、国会によつて追加資金予算承認をなさるるまでは支拂つてはいけないということでありまして、つまり公共企業体労働組合との団体交渉におきまして、議会の協賛を経ていない宣命の範囲外協定も行われるということを予想して、この第二項が書いてあろのです。それは私ども考え方によりましては、労働組合公共企業体との間に協約が成立する場合は、公労法上におきましては——労働組合法、労調法によりますところの仲裁がなされました場合には、労働協約と同じものであるというふうになつておりますが、これもそう考えますと、この條文は非常に自然な條文になつて参ります。それから第二項との関係考えますと、十六條の一項は「不可能な資金支出内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。」この政府を拘束するものでないのは、議会議決を経ました上、予算の上から不可能な支出につきましては、政府を拘束するものでありませんが、その範囲におきましては政府を拘束するものであり、また公共企業体をも拘束するものである、こう読む方が、二項との関係がはつきりして参るように考えるのであります。そういう槻点に立つておりますために、法律的に見ますると、今度の專売の仲裁裁定につきましては、結局予算上可能な支出である、仲裁裁定に基きますところの一億二千何がしかの金は、予算上できる金である、可能な金である、こういう見解を持つておる次第であります。
  5. 大橋武夫

    大橋委員 一億二千八百万円が予算上可能なる支出であるという明確なお答えでございました。そこで可能と見られるところの根拠をお伺いいたしたいと存ずるのでございますが、まず第一に、公社におきまして、給與に充てらるべき本来の予算科目のうちに、そ、れだけの余裕かあるかどうかということをお答え願いたいのであります。
  6. 今井一男

    今井参考人 その御質問お答え申し上げる前に、ただいまの堀木委員お答えを若干補足させていただきたいのでありますが、われわれ仲裁委員会見解といたしましては、この法文ができ上つた沿革等にかんがみまして、文字の不明なる場合には、やはり英文の参酌を必要とするのであつて、ただいま堀木委員も申しましたように、アプロプリエィテッド・コーポレーション・バジエット、この文句は明らかに議会できめられました歳出予算からひつぱり出せるかどうか、その範囲のものはこれは可能である。その範囲を越えるものは不可能であるということに解せざるを得ないのであります。この点はひとり私ども見解のみならず、その道の專門家といわれる方々意見も参酌した結果、そういつた結論に到達いたしました。従いまして国会でこれだけのものは予算として認める、国会におきまして流用等を禁止されたものは別でございますが、その範囲内でやれるものにつきましては、すべて予算上可能である、かような解釈に相ならざるを得ないのでありまして、すでに公社からも御説明がありましたように、二十数億の余裕がございます以上、私どもといたしまして、給與予算あるいはその他の人件予算等から幾ら出るかということにつきましては、詳細なる検討はいたしませんでした。しかしながらこれもやり方いかんによりまして、決してゼロではございません。但しこまかい数字につきましては、私ども確認はいたしておりません。
  7. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、給典費について余裕があるかないかは御存じないというお答えでございますか。
  8. 今井一男

    今井参考人 まだ時間もあと半箇月あつた際でございますので、現在の予算の残額と今後のやりくりいかんによりましては、私ども数千万円程度のものは捻出可能である、こういう判定をいたしております。
  9. 大橋武夫

    大橋委員 この問題は、いずれ公社経理内容の問題になりますから、後に公社にお尋ねをいたしたいと存じますが、特にこの機会仲裁委員にお伺いいたしたいのは、いずれにせよ、給與費以外の費目からの流用がなければ、本件支出に必要なる財源が得られない、これは御承認になることと思うのでございます。現在のところ大蔵大臣承認というものは、この流用については得られる見込みがないということもまた御承知であろうと思います。大蔵大臣承認がなければ流用ができない以上は、予算として支出することは不可能であるということが、当然財政法考えられるのでございますが、しかもなおこれを予算上可能なりとせられる根拠を、重ねてお伺いいたしたいのでございます。
  10. 今井一男

    今井参考人 ただいま私述べましたように、この予算上不可能という言葉の中には、先ほど堀木委員が申しましたように、さらに追加予算を必要として、その追加経費について国会承認を要する場合、こういうふうに明白にうたつておるわけでありまして、政府限りでやる場合は、全然この中に含まれておらない、これは後段にありますところの、国会所定手続きがあるまで云々という法文から見て、明白と考えられまするし、また法文の純理から申しまして、予算上可能な場合は政府は拘束される、予算上不可能な場合は政府は拘束されない、こう思いますが、その拘束されるべき政府が、不可能か可能かを自分できめられる、そういう妙な法律は、私にあり得ないと思います。従いましてわれわれは條文の文理から解しましても、かつまた精神から解しましても、この場合におきましての大蔵大臣流用承認権云々というものが、予算上不可能という理由になるということは、どうにも考えられないのであります。そういつた意味合におきまして、ただいま大橋委員の仰せになりました、かるがゆえに不可能であるという前提につきまして、遺憾ながら私ども賛成いたしかねるのであります。
  11. 大橋武夫

    大橋委員 それでは方面をかえまして、大蔵大臣流用承認が、現実に拒否されておるということ自体は否定されないのでございましようね。
  12. 今井一男

    今井参考人 そういうお話は私どもも伺いました。しかしながら私どもは、先ほど堀木委員も触れましたように、公共企業体の十六條は、財政法に関する明白なる特例であると判断せざるを得ないものであります。すなわち、予算がなかつたたらば、物を買つたり、いろいろの契約をしたりしてはいけないという財政法の明文、従来からの予算上の法則があるのにかかわらず、この場合は予算上不可能なものでも協定してよろしいと、はつきりうたつてあるわけでありまして、従つて国会議決予算成立基本條件であります。国会議決のない限り予算効力は全然ゼロであります。そういつたものにつきましても、なおかつ財政法の原則の例外をなすような規定、すなわち公労法というものが、基本的に団体交渉を基調として一切を解決するという立場から出発いたしまして、そういつた明白な建前がここに明らかにされておる。いわんや大蔵大臣流用承認権なるものは、行政府内におきましもひとつ取締り関係に過ぎないものであります。決して外部の人たち関係を持つ規定でないことは、実例をあげるまでもなく明瞭なところだろうと考えるのでありますが、そういつた基本的な予算成立條件に影響のあるような点につきましても、なおかつ団体交渉をしてきめてよろしいといつた建前をとつておる公労法精神からも——どもそういつた事実は聞いておりますが、それをもちまして、予算上不可能であるという解釈をとるわけには行きかねると考えます。二十五年度の予算を拝見しますと、公共企業体につきましては給與総額幾ら幾ら、これ以上越えては相ならぬといつたことが予算総則にはつきりとうたつてあります。こうなりますと大橋委員のおつしやる通り、すべて国会議決を経なければ、いかようにも動かせませんから、問題は明らかに予算上不可能ということに相なることは私ども承服いたします。しかしながら本年度のは、そういう制限はついておりません。従いましてその意味から申しましても、これは反対に解釈せざるを得ないかと思うのであります。
  13. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、大蔵大臣承認がなくても、この場合は公社予算支出してさしつかえないという御意見でございますか。
  14. 今井一男

    今井参考人 形式上、部内の公社総裁大蔵大臣との関係は、これは行政内部手続としてどんなことがあるか知りませんが、少くとも公社総裁予算上可能であり、また政府もこれに拘束される以上、大蔵大臣財政法上の流用承認権をお使いになつて、それに縛られて御承認になるという形でもかまいません。またこれを私の考えますように、洗用承認権というものを、この際対抗させるわけに行かないという解釈をとつてみてもかまいませんが、とにかくこの場合政府は拘束されるといつた基本線に立たざるを得ないと思います。
  15. 大橋武夫

    大橋委員 根本的に申しましては、はたして公社経理流用してさしつかえないかどうかということが問題としてあるわけでございますが、この点についての仲裁委員としてのお考えは、ただいまで伺つたところでは、公社総裁流用してもさしつかえないと言つておられるのであるから、この点は経理上可能であるというふうに伺つてよろしゆうございますか。
  16. 今井一男

    今井参考人 決して公社総裁言葉だけを基礎にしておるわけではありません。経理状態について検討した結果、とにかく一億二千万円くらいの金は、国会承認をいただきました歳出予算範囲内にすべて含まれる、こういう認定から出発しておるのであります。
  17. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、仲裁委員予算上可能なりやいなや、不可能なりやいなやということについての認定権を持つておられるのでありましようか。
  18. 今井一男

    今井参考人 これは最終的には裁判所できまるのであつて、だれもそのほかの人が、最終的に効果的な決定をすることは不可能と考えております。
  19. 大橋武夫

    大橋委員 先般堀木委員から、大蔵大臣承認というものは、財政法自由裁量となつておりますが、この場合においては、これは法規裁量と目すべきものであるという御説明伺つたのであります。この点についての成法上の根拠を重ねて付いたいと思います。
  20. 堀木鎌三

    堀木参考人 結論においては私と今井委員と同じ結論になります。法律問題でありますから、今非委員の言われるように、公労法の十六條が、財政法の十五條でありましたか、それの例外規定であるというような御解釈をおとりになる方もございます。私としては、必ずしもその例外規定であるかどうかというところまで、断定するだけの研究は積んでおらなわけいであります。しかしながら大蔵大臣財政法流用すべきであるかどうかという問題につきましては、決して便宜裁量の問題ではない。大蔵大臣というのは財政法だけ知つておればよいとか、財政法の技術だけ知つておればよいというものではないのであつて公労法自身も十分にお考えにならなければならない。また今度の專売裁定に関しましては、ここで提案理由を御説明になりましたように、当然公労法関係者であります。公労法第一條第二項によりますならば、この裁定実施のために、最大限の努力をしなければならないことになつております。私ども解釈によりますと、大蔵大臣裁量権は、完全に公労法によつて制限さるべきものである。自分のかつて解釈で、これは出せないのだということになりますと、せつかく公労法を認めまして、争議権はございませんが、団体交渉権を持ち、労働協約を締結することを認めた以上は、やはり十六條の、政府を拘束するものでないということに、国会追加予算あるいは補正予算を出す場合に限るのであつて、それ以外のときには当然拘束される、こういうふうにお考え願わなければならない。それでないと、先ほど大橋委員の言われましたように、大蔵大臣がいけないと何でもかつてに言えると、今度の問題のように、総裁は出したくても、出す予算上の金は議会承認を得た範囲内て十分あるのだが、また私どもが見まして、きのう指摘しましたように、ほかのものについては実に十数億の流用承認しようとしておりながら、人件費だけはびた一文も出さないというふうな結果に相なるのであります。そういたしますと、何の団体交渉権であるか、全然わからなくなる。そういう実質のない労働協約は成立いたしませんね。私先ほどから言つてつたのですが、それでは一体何のために公社総裁が、団体交渉の相手となつてやり得る能力があるかという問題にまで発展せざるを得ない。そういうことを考えますと、これはどうしても法規裁量でなくてはならない、大蔵大臣は拘束される、政府は拘束されるものである、こういうふうに考えております。
  21. 大橋武夫

    大橋委員 ただいまの堀木委員の、大蔵大臣は拘束されるという御説明は、一応承つておきますが、大蔵大臣が拘束されるということは別論といたしまして、現実予算流用について、今日大蔵大臣承認が得られておらないということは事実でございます。その場合に財政法上、公社総裁適法公社予算人件費支出できるかどうか、この点についてはどうお考えになりますか。
  22. 堀木鎌三

    堀木参考人 私ども見解で申しますと、公社総裁労働協約を結びますと、それは議会議決を経ました予算範囲内ですと、当然労働協約は有効に成立し、かつ履行しなけばならぬというふうに考えております。ですから労働組合との協約は有効に成立する。しかし財政法上、総裁大蔵大臣承認を得べきものを得なかつたという、手続上の欠陷はあります。しかし先ほど今井委員が言いましたように、これは労働組合総裁との間の法律行為の有効無効には全然関係ない、結局総裁大蔵大臣の間の手続上、行      一政上の欠陥である。こういうふうに見ざるを得ない。かたがた私ども見解に従えば、大蔵大臣流用承認しないということが言えないわけであります。私ども見解に従えば、政府を拘束しておる。ですから、その点は簡單にお考え願わないで、そういう法律関係に立つものというふうにお考え願いたい、こういうのが私どもの趣旨です。
  23. 大橋武夫

    大橋委員 そういたしますと、大蔵大臣流用承認しないということは事実であるが、それは間違つたことだ、こういうことでございますか。
  24. 堀木鎌三

    堀木参考人 私どもはきのう申し上げましたように、大蔵大臣がこの問題を国会議決を求むる作としてお出しになつ理由が那辺にあるか、解するに苦しむと申し上げましたのは、そのことでございます。
  25. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、ただいまのお答えで明らかになりましたことは、仲裁委員も、大蔵大臣承認現実に行われておればと、この点は認めておられる。そこでこの前提のもとにお伺いいたしたいのでございますが、大蔵大臣承認をしておらなければ、財政法上、当然公社としてはこの支出適法になすことを得ないものではないかと私は考えますが、この点はいかがですか。
  26. 今井一男

    今井参考人 私ども予算上可能と考えておりますがゆえに、予算国会へあらためて出す必要のない範囲の問題でありますがゆえに最小限度考えましても、労働協約は有効に成立し、組合側はこれに対する債権を持つております。組合側といたしましては、公社に対して、政府内部関係はいかにあろうと、それに対して有効なる請求権を持つことになると思います。予算がありますのに、たとえば会計課長が家なら家を買う約束をしてしまいます。ところが大蔵大臣流用してくれ、大蔵大臣流用しない、それならその契約が無効になる、こういつた関係には絶対に相ならないことは明瞭でありまして、内部関係いかんにかかわらす、組合の持つている債権の方は有効に進む、かように御承知願いたいと思います。
  27. 大橋武夫

    大橋委員 私の今お聞きいたしているのは、この裁定が有効なりいなやや、調停が有効なりやいなやの問題ではなく、大蔵大臣承認がないのにもかかわらず、公社において財政適法にこの支出をなし得るかどうかということを伺つているのでございます。
  28. 堀木鎌三

    堀木参考人 大橋委員お答え申し上げますが、私の申し上げたことをお考え願いますと、まず第一段に大蔵大臣は拘束されて、これが予算上、資金上不可能な支出ということを言えないはずです。これは法律的にも、実体的にも言えない。これが私ども見解ですから、その見解に基いて立たれた大蔵大臣考え方自身——大蔵大臣と申しますか、政府考え方が根本的に間違つている。また大蔵大臣は、公社法の上からも、財政法の上からも、行政上これをいろいろ監督する権限はあります。だからいろいろなその権限に基いておさしずがあるものと思いますが、今申しました法理に立ちますと、実は今の御質問が起らないのではなかろうか。私ども違つた法理に立つておりますから、次からの御質問は起るはずでありますが、私ども見解に立つて法律解釈いたしております以上は、これは万が一そういう権利がありましても、労働組合との間は有効になつておる。今度大蔵大臣が諸般の情勢上、これは予算上、資金上不可能な支出だなんとおつしやいますと、これはまた先ほど今井委員がいいましたように、裁判上、最終的には裁定効力によりまして、労働組合請求権を持ち、そこで判定の下る問題でありますが、率直に申しますと、私どもとしてはもう明らかに公社法律上も縛られておりますし、政府も縛られておる。そしてそれをいくらそう法律的に解釈いたしましても、実際に予算かなければ、しようがないのでありますが、それはもう実際どうお考え願つても、公社予算からは、既定の議会承認を得ました予算からは出せる問題でありますから、実は大橋委員が今御質問になりましたようなことには、私ども立場からはお答えできないような状態で、私ども立場からのお答はもう明らかである。また御質問がいつも違つた平行線というか、そういうような感じを受けます。
  29. 大橋武夫

    大橋委員 大蔵大臣のとられた措置に対しまして、仲裁委員がそれは聞違つておると言われることは、これは先ほどから私ども了承しておる。しかしながら現実にはその事態が発生しておる。そこでこの現実の問題に対して、仲裁委員がいかなるお考えを持たれるかということを私は伺つておるのであります。大蔵大臣予算流用承認というこの現実前提に立つて——この場合に公社予算流用をなし、裁定の要求する金額支出することは、財政法適法になし得るかどうかということを伺つておる。
  30. 堀木鎌三

    堀木参考人 できるだけ答弁いたすつもりであります。財政法——大橋さんの言われるように、確かに大蔵大臣がいけないという点からいたしますれば、これは法律でいいますると、欠缺のある手続だと思うのであります。しかしそのために効力は妨げられない、これが私ども考えであります。
  31. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、公社総裁としては適法支出することができない、こういう明確なるお答えをいただいたわけであります……     〔「それは違う」と呼びその他発言する者あり〕
  32. 倉石忠雄

    倉石委員長 靜粛に願います。
  33. 堀木鎌三

    堀木参考人 私が手続上、財政法上の手続欠陷があると申しましたことは、すぐ違法たということにはならない。それをすぐ違法だとお結びつけになりますか、なりませんかは、別でありますが、先ほど今井君があげました例が、一番よく表わしておるのであります。行政——われわれも前身は官吏でございまして、これは率直に、もう少し実例的に申しますとよくわかると思うのですが大体は議会承認を得ますると、こまかくいろいろありますが、流用承認を得られるだろうというので、契約はいくらもすることがあるわけであります。そのときに財政法大蔵大臣が承知しないから、この物品代は抑えない、拂わなくていいのだ、工事代は拂わなくていいのだというふうな問題にはならないのでございます。むしろ私は、どうして給料に関すると、こう神経過敏に一文もお出しになりたくないのだろうという気がいたします。率直に申しまして、この会社の五百億以上の支出予算で、この大蔵大臣流用承認権というのは——それは大蔵省にお仰ぎになると、われわれも官吏だからよく知つておる。わずかなものは大蔵大臣まで行かないのです。一体大蔵大臣流用承認権は、そう言つては悪いけれども、事務官僚、われわれは元やつてつたのだから知つておりますが、次官か主計局長あたりでやつている。そはれ相当な金が来るのです。ところが事給料に関しますと、いけなくなる。ことにこのごろはよほどいけないと思うのでございますが、私どもが官吏をしておるころは、もつと楽でございました。もつと所管大臣を尊重し、その企業の責任者を尊重した。これはもう当然のことです。大蔵大臣といえども何でも縛つてしまう気持はないだろう。これはあたりまえのことなんでありまして、もう常識的に見て承認されることが、給料になるとこのごろは非常にやかましい。一銭一厘でも出さないといういかめしいお考えがあるのかしら。それならば私どもに言わせると、ずいぶんおかしな話だ。何のために公労法団体交渉権をお認めになつたか。公務員について人事院の勧告を法律上お考えなつたろうかという気がいたしまして、一体人来院の勧告も、仲裁裁定も、大蔵大臣自由裁量で、物品や工事については別だが、給料については一番あとで拂うという思想が、公労法から出て来るわけはない。健全な大蔵大臣の常識から出て来るわけがないのであります。私どもとしては今お聞きになりましたようなことは、むしろ大蔵大臣の常識について、皆さんが、私の申している方が正しいか、大蔵大臣がここで讐弁ずる方が正しいか、それこそ国会で御判定を願いたい。こう考えております。
  34. 大橋武夫

    大橋委員 ただいま仲裁委員大蔵大臣がやつたことが正しいか、自分たちが考えておることが正しいかということを、ひとつ国会でよく調べていただきたい、こういうお話でございます。この点はいずれ調べなければならぬと思うのですが、かりにあなたの言われるように、大蔵大臣のやつたやり方が違法であるといたしましても、違法の行政処分というものは、これはもう全然無効ではないのでありまして、存在しておる以上は、やはりこれを何とかしてその効果を正しくするためには——物事を正しくするためには、それをなくすとかいう措置がなければならないのです。ところが現在におきましては、すでに大蔵大臣は不承認の態度を決定いたしております。従いましてこれに対しましては、財政法適法給與を支拂う道はない。もしこれを支拂つて——あなた方が期待せられておるように、公社職員諸君にこれだけの裁定金額を與えて、職員諸君の権利を十分に保護するためには、どういう方法が残されておるかといえば、もはやこれを予算上不可能の問題として、国会において取扱う以外には、現実においては道はないではありませんか。その点はいかがにお考えになりますか。  なおこれに関連いたしまして、裁判においてどうこうと言われますが、たとい裁判において組合側が勝訴の判決を得られましたところで、国家に対して強制執行というものは認められておりません。従いましてこれに対する公社の支拂いというもの、つまり判決に基く公社支出というものは、必ず財政法上の所定手続をふまなければ抑えない。従つて大蔵大臣流用承認ということの拒否された現実というものは、これはいかなる場合において、どんな裁判があろうとも、あなた方の期待するような給與を、現実において職員諸君が獲得すすことには、さわりになつておる。この点についていかがお考えになりますか。
  35. 今井一男

    今井参考人 ただいま大蔵大臣の不承認につきまして、行政処分云々と言われましたが、行政処分という言葉も、私どもは吟味して見る必要があろうかと思います。直接国民に対して効果を及ぼす意味行政処分でごさいましたら、別ですが、この場合の大蔵大臣流用承認は、そういうものではありません。單なる行政内部において公社総裁をどこかの省の局長か何かと考えて、それに対しておさしずをなさるという権利たけであります。従つてその権利をもちまして、私ども考えているごとく、団体交渉によつて組合が有効に権利を獲得した以上は、これに内部の手続云々で対抗し得ないことは明瞭でありまして、現に実はこういう案件がありました。それは一昨年でありますか、例の二千九百二十円の三月闘争の際に、私もその当時関係した一人でありますが、厚生省において、もし二千九百二十円ベースをのんだならば、一—三月分の差額をすぐさま拂う、こういつた覚書を大臣名をもつて組合側に交付いたしました。当時はもちろんマ書簡の前でありますから、団体交渉権のあつた時代であります。それでのみましたところが、いろいろな関係で金を抑うのが十五日ばかり遅れました。これは暫定予算関係あるいは支拂い予算関係その他いろいろの関係から、別になまけたわけではなかつたのですが、遅れたのであります。これに対して東京の第一国立病院の看護婦さんたちが十数人来て、けしからぬ、それは団体協約違反であるから、これに対して延滞利息を抑え、こういう請求をされました。私どもこれは少しむりじやないかと思いましたけれども、これも裁判所に行つて、りつぱに昨年の暮れ負けました。かような延滞処分というようなものは、予算科目の上ではむろんありません、そんなものを拂うことは財政法上できないのでありますが、そういうことでも、有効に私権として裁判所において裁定される立場になつております。従つてただいま国会云々という言葉がございましたが、この問題も、私ども考えている通り、私権ということに相成りますと、最終的にどうしても裁判所できめるよりほか方法かない、かように思います。なお強制執行云々のお話もございましたが、これはなかなか法律論としてむずかしい点であります。少くとも公社は国ではありません。公社がもしもいかにふみ倒しても、おれの方はよろしいのだ、こういう立場になると、これは公社と取引はできないことになる。むろん公社、国鉄法等を見ますと、担保に供することはできます。担保に供するということは、結局強制執行を受ける場合かある。担保に供する場合に、こういつたものは何々大臣の許可を受けるとか何とかいう規定はございますけれども、全然強制執行はできない、こういうふうに断定することは、私は取引の安全からも、公社法精神からも、言えないと思います。国と全然別個である、別個の法人格である、そのためにわざわざ公社をつくつた、こういう建前からいたしますと、私御質問の点もいささか異議がございます。
  36. 大橋武夫

    大橋委員 その点につきましてはこの程度にとどめまして、引続いてお伺いいたしたいのですが、裁定効力につきまして、当委員会において、仲裁委員から、一昨日、予算上、資金上不可能なるものとして、国会においてこれに不承認議決があつた場合においては、当事者がこれに拘束されるという御意見の開陳があつたように記憶いたしております。この点につきましては、過日の国鉄裁定の問題に際しまして、私から仲裁委員にお伺いいたしましたときに、今井委員から、実は委員会の中でもこの点については二つの説があつた、今のところ統一しておらぬというお話があつたのですが、仲裁委員会においては、この問題について、最近において統一的な御意見が成立つておりますか。
  37. 堀木鎌三

    堀木参考人 私、今井委員が国鉄のときに言われました際出ておりませんので、実はきのう速記録を拝見いたしましたが、今非さんの言われましたように、確かに統一はしていないのであります。これは末弘さんの議会における議論では、法律論として抗弁権が成立する、公社側に正当な抗弁権が成立するので、損害賠償なり遅滞の責任にならないというふうな解釈をとつておられるようでありますが、まだ御本人も最終的な決定に至つていないようであります。それから、今非委員の言われましたように、私どもとしても大体今井委員とやや以た、また末弘先生と同じような考えを持つているのですが、これは個人的な意見にわたるようですけれども法律問題でございますから、いろいろ意見はあります。政府の停止條件つきの意見もありますが、私どもとしては、最終的にこれでなくてはならないという意見には、まだ到達いたしておりません。
  38. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、この問題について一昨日開陳せられました意見は、中間的な結論であつて、最終的な結論に到達しておらないということがよくわかつたのでございますが、これについて重ねてお伺いしてみたいのです。公労法の三十五條に、当事者双方は、調停に対しまして最終的な決定として服従しなければならない、こう書いてあります。思うに裁定効力というのは、これをさすものであると思いますが、これ以外には裁定については規定はございません。と、但書というものは、これは性質上除外例を現わす場合に用いるものでございます。従つてこれは原則であるところの当事者双方とも服従しなければならないという、この本文の原則に対しまして、そこでこの規定を見ますと、その次に、予算上、資金上不可能な支出内容とする場合には、「但し」と書いて、但書で規定いたしてあります。そこでこの但書というものの法律的な意味考えてみます但しというのは除外例であるから、すなわち当事者双方とも服従しなければならないものではないという意味を、但書の性質上当然含んでいるものである、こういうふうに私ども考えるのですが、この点はどういうふうに文理上御解釈になりますか。
  39. 堀木鎌三

    堀木参考人 どうもその点の解釈につきましては、仲裁委員会としてはつきりいたしておりません。三十五條の但書以下の問題につきましては、最終的決定として服従しなければならない、「但し、十六條に規定する」こう書いてありますが、十六條をどう解釈するかということは、一昨日のこの連合審査会におきましても、私どもが申し上げましたように、ともかくも国体協約そのものはりつけに成立する、有効に成立するのだ、しかし履行の問題について問題が起つて来る。但書を服従しなくてはいけないというふうにしなくてもいいのだとお考えになると、先ほどちよつと触れたと思いますが、十六條の一項の後段説明が出て来ないのであります。つまり協定は有効たが、「又国会によつて所定行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」こう書いてあるのですが、その裏から行きますと、国会議決をもらつて初めて支出できるようなものも、協定としては有効に成立するということを前提にしておるわけでございますね。つまり政府が、何と申しますか、むりに十六條を何とか解釈しようとお考えになれば別ですが、この文句が出て来たところをお考えになると、協定自身は有効にてきておる。裁定が下つた以上は、団体協約と同一の効力を両当事者間に発生するのである。その協定国会によつて所定行為がなされるまでは現実支出はしてはいけない、こういうことに解釈をしております。
  40. 大橋武夫

    大橋委員 有効に成立しておると言われたが、これは確かにそうでしよう。成立要件としては欠するところがないのでありますから、有効に成立はしておる。しかし私の問題にしておるのは、法律行為か有効に成立しておるかどうかの問題ではなくて、その法律行為内容をなしておるところの実質的効力が、有効に成立しておるかどうかという問題なんであります。
  41. 堀木鎌三

    堀木参考人 どうもまことにあつけない返事でありますが、政府が違法の措置をされるなんということは、私ども考えないのです。だから有効に成立したものをお拂いにならない——これは自由裁量権があるとし、国民の権利義務に関することを、大蔵大臣が、おれには財政自由裁量権がある——これは決して自由裁量ではない、法規裁壁である。だから実際においては、これは公社ですから、民事上の問題になりますが、国がほんとうの相手だつたら行政裁判上の問題になる。これは私法上の関係ですから、民事裁判上の問題になると思います。公法関係でも率直に言えば、私は行政裁判所の対象になり得ると思います。まさか政府が、そういうことについて自分自由裁量権でがんばられるということは、実は想像もしないのでございます。政府法律にお従いになるもの、またそれによつて支出をなさるもの、これは当然のことでありますから、そんなことまで答弁しなくてはならないといたしますと、すこぶる当惑いたすのであります。この程度で御容赦願います。
  42. 大橋武夫

    大橋委員 大分苦しい御答弁でありますが、(笑声)とにかく先ほども伺つたところによりますとこの但書というものは、原則としては適用しない、すなわちこの場合は十六條の定めるころによる。これが実質的の効力であるということについては、御承認たすつておられると思うのです。十六條の定めるところによるのであるから、原則であるところの最終的決定として当事者双方とも服従したければならぬという、この原則的な、実質的な効力を発生するものではない。十六條によるところの効力のみが発生する、こういうことが明らかにたつたのであります。そこで十六條を見ますと、十六條には一項と二項とありまして、その一項には政府は全然裁定に拘束されるものではないということ、国会議決を経て所定行為がたされるまでは資金支出を許さないということが定めてあります。それから次に第二項にに国会に付議すべきこと、また付議して承認されたときは、日附をさかのぼつて効力を生ずるということが規定せられてあります。そうしてこの効力ということは、当事者双方について効力を生ずる意味であると思うのでございますが、この点はいかにお考えになりますか。(「法務総裁に聞け」と呼ぶ者あり)1
  43. 堀木鎌三

    堀木参考人 法務総裁の御意見は、いくら言われても私と平行線らしいのでございます。政府を拘束するものでないということを、鬼の首をとつたような文句にお考えにたらないでいただきたい。これはお願いでありますが、政府はまるで公労法の外に立つておられるような気持でおられますが、どんな法律でも国会承認を経て法律として公布されれば、政府自身も拘束されるのです。先ほども申しましたように、拘束されることははつきりわかつておるのです。大蔵大臣は一体第一條第二項をどう考え——ただ言い放しにされるのか、私はそれを聞きたかつたのですが、諸般の情勢上と言われただけで、ひとつも、何と申しますか、ベストを盡して最大限の努力をどういうふうにしたかということを、言われてないのです。これは関係当事者なので、法律上義務がある。国会議決を経て追加支出を得るようなところまでは政府を拘束しないのですが、今度のような場合はもう政府を拘束しておるのです。国会議決を要する追加支出でも、政府自分の判断だけでしないで、国会に持ち出しなさい、それが第二項なんです。持ち出すのも、政府の都合でぐずぐずくしていてはいけない、十日以内にやろのだ、それが法律の趣旨なのです。おとといも申し上げましたように、出したくたいものだからむりに——労働者の団体交渉権及び団体協約を締結する権利があつて、労働者を擁護しようとした法律なんです。争議権を奪つた以上は、これくらいの保障はしてやろうというのがこの法律なんです。そういう観点からお読みにならないで——ともかくも団体交渉権がなくなつたのだから、安い賃金でいい、国家公務員もそうだ。この公共企業体法律関係はどうだか知らぬが、国家公務員の巻添えになるのだというお考えならば、この読み方がいろいろかわると思います。まさかそんなお考えはないと思いますが、それだから変なお読み方をなさるのじやないか、こういうふうに考えております。
  44. 大橋武夫

    大橋委員 いろいろ例をお述べになりましたが、結論といたしましては、十六條からは政府を拘束する効力が出て来ない。政府を拘束する効力は第一條の第二項から出て来る、こういうお答えでございますか。
  45. 堀木鎌三

    堀木参考人 いや、法律ですからいろいろ解釈があり得るかと思いますが、私は国会議決を受けた予算内では政府をも拘束する。そしてこの点は仲裁委員会としてそういう決定をいたしております。
  46. 大橋武夫

    大橋委員 政府を拘束するのは十六條によつて拘束するのでありますか、一條によつて拘束するのでありますか。
  47. 堀木鎌三

    堀木参考人 これはあの十六條というのは單独に出て来ておりません。この間も申し上げましたが、三十四條の第五号をごらん願うとよくわかります。これは運輸大臣、大蔵大臣または労働大臣が仲裁委員会仲裁を請求することがあるのでございます。
  48. 大橋武夫

    大橋委員 それはわかつております。今は法律の條項を伺つておるのであります。
  49. 堀木鎌三

    堀木参考人 それですから、十六條も私ども政府を拘束するものだと見る。その十六條は、單純な文字解釈でなくて、公労法ができた沿革、公労法にあります各條を背景にして十六條を見ますと、この十六條だけでも政府を拘束するものである。予算上、資金上可能な資金支出内容とするものは政府を拘束するものである。こういうふうに書いてある。
  50. 大橋武夫

    大橋委員 十六條について政府を拘束するという御意見ですが、一体十六條というものは本来協定についての規定なのです。協定というものは、契約法理から申しまして、当然一つの契約でありますから、契約当事者以外のものに対して契約効力を生ずるということは、第三者のためにする契約とか、特殊な法律上の基礎がなければ、契約が第三者に対して効力を生ずるということはあり得ない。しかるにこの十六條を基礎としてこれが政府を拘束するのであるという結論を出される理由が、私にはわからないのであります。特に私の伺つておるのは、国会が不承認議決をした場合に、そのものが当事者にいかなる効力を生ずるか、この点は先ほど伺いましたが、ただいまは政府を拘束する理由を伺いたいと思うのです。
  51. 堀木鎌三

    堀木参考人 実はなせ、予算上、資金上可能な資金支出内容とする協定は、政府を拘束するものだと読まなければならないかということは、先ほどもちよつと触れましたし、実はおととい、あまりに違つた見解があるようでございましたから、詳しく私ども意見を申し述べたわけでございますが、今特にそれを繰返しますと非常にこの点長くなるのですが……
  52. 大橋武夫

    大橋委員 いや、簡單に條文を指摘していただけばけつこうです。
  53. 堀木鎌三

    堀木参考人 政府を拘来するものでないということを言つておりますことは、なぜこれをわざわざ書いたかということをお考え願いますと、つまり大橋委員のおつしやるように、本来言えば政府協定の第三者でありますから、それならこれを書かなくていいはずであります。政府を拘束するものでない協定というものは、両当事者間の問題であつて政府は第三者である。だからそれは拘束するものでないというのだつたら、何のためにこれを書いたかわからなくなつてしまうのです。当然のことであります。私と今井君とが契約したのに、池田君が責任を負わなければならぬわけはない。それをわざわざ書いたのは——国会承認がなければ拘束したい、それを国会承認を受けるようた追加支出をする場合には、政府を拘束しない、とわざわざ意味があるように書いてある。それはそういう観点から意味がある。それからその場合でも二項で、お前のところは——政府はかつてな判断でものをやつてはいかぬ、十日以内というふうな、あるいは五円以内というふうな條件をつけて、わざわざ国会に提出しろ、そういうふうに書くためにこういう文句が起してある。この両方から、承認を得ました予算範囲では、当然政府をも拘束する、こういうふうに解釈するのが当然だと私は思います。
  54. 大橋武夫

    大橋委員 この政府に対する拘束の問題について、私は法律的な根拠をお伺いしたいと思つて質問しておるのでありますが、その点についてはお答えがございませんから、他の問題を御質問いたします。私は制度上の根拠條文によつて伺つてみたいと思つたのですが、それは得られませんから……  そこで先ほど問題になつておりました、大蔵大臣予算流用承認しなかつたことが不当である、こういう御意見です。この問題は特に重大であるからお伺いいたしたいと思うのでありますが、物件費の流用ということは、益金の減少ということに結果としてなつて来ることは確かでございますね。
  55. 今井一男

    今井参考人 專売会計におきましては、御承知の通り、歳入歳出のしりは残らず益金になるという建前をとつておりますがゆえに、人件費流用する、すなわち一億二千万円を認めるということは確かに益金の減少になりまするが、同時に塩を幾ら幾ら買うということも益金の減少になることであります。一切は益金の減少であります。
  56. 大橋武夫

    大橋委員 益金の減少ということについては、すでに公社において三十一億程度を見込んでおられる。そこでおそらく公社でも、また政府でもそう考えられておると思いますが、この裁定の実施によつて、その益金の減少というものがその金額だけふえて行く。これはお認めになつたわけでございますな。
  57. 今井一男

    今井参考人 すべて歳出はそれだけ益金の減少となります。これはいかなるものでもそうであります。
  58. 大橋武夫

    大橋委員 今年度の予算は、世間でいわゆる超均衡予算と称せられておる。すなわち赤字のない予算として一般会計は編成されておる。その精神から見ますると、たといわずかであつても益金の減少というようなことは、予算編成の原則から見た場合には、極力避けることが当然の帰結となつて来るのではないかと思いますが、この点はどうお考えでありますか。
  59. 今井一男

    今井参考人 まことにごもつともなことでございまして、極力益金を大ならしむることは必要なことでもありまた公社もそのラインに従つて努力していると思うのでありますが、ただ私どもの不可解なことは、十四億以上に上る塩、本年にいらない塩の輸入には益金を減少しても買つてよろしい。一億二千万円の方は出せない。これがどうも納得できないのであります。
  60. 大橋武夫

    大橋委員 それでは塩をお伺いしたいのですが、塩が輸入された場合に、公社以外のだれにそれを買わせればいいのか(「おかしいよ」と呼ぶ者あり)
  61. 今井一男

    今井参考人 どうもこれはおかしいようですな。
  62. 大橋武夫

    大橋委員 私は今非君がこの問題に対して答えを避けておられることを……     〔「ばかばかしいからだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  63. 倉石忠雄

    倉石委員長 靜粛に願います。
  64. 大橋武夫

    大橋委員 御同情を申し上げておる。実は今日のわが国の貿易というものは、ほんとうの自由な貿易でないということは今井君がよく承知しておられる。そうしてこれについて、いかなる品物がいかなる時期に輸入されるかということは、わが国の政府、あるいは需要が、その一方的な意思によつて自由に決定することは不可能になつておる。そういう情勢のもとにおいて輸入せられたる塩は、法律上これは公社が引取る以外に引取るべき人はないのでございますから、この点塩を買わなければよいという論を言われるかもしれぬが、それは公社の性質、また日本貿易の今日の実情を無規した御意見だと思う。わが国の塩の輸入は、政府なり公社なりが、自由にできるというふうに仲裁委員はお考えになつておられるでしようか。     〔「答える必要はない」と呼び、その他発言する者多し〕
  65. 倉石忠雄

    倉石委員長 靜粛に願います。
  66. 堀木鎌三

    堀木参考人 私から——御答弁もいらないという話もありますが、私にお聞きになつた点について申し上げたいのです。むろん貿易の問題について、大蔵大臣なり政府なりが、いろいろな事情に立つておることは私ども目をおおつておるわけではございません。しかしそれはともかくも歳入と歳出で三十何億になる。つまり塩が売れませんものですから十七億歳入減になつております。益金に来る関係は歳出と歳入両方から来るのですが、十七億減、塩を来年一年分くらい買つてしまう、これはいろいろの事情があるからというのでございますが、これと、差追つた、今職員を食わして、しかも能率を上げて行こうということとを、どうお考えになるか。むしろ私どもとしましては——十七億歳入の方で減じて、支出の方で十四億ふえる、差引三十一億の益金の減になるのであります。こういう問題は、公労法建前なり、全体の政治からどうお考えになるかということで、私どもとしては、実は塩を買うよりは、従業員給與をわずか上げてやるのがほんとうではないか。もう一つ言えますことは、塩をお買いになるのだつたら、貿易特別会計からおとりになつて、やりくりをする仕方もあるわけであります。これは私どもよくわかるのです。特別会計と公社と決算されるいろいろなやり方もあるだろうし、いろいろあるのであります。しかし、ともかくも塩があまり多いものですから例にあげましたが、先ほど今井君が言われましたように、深く一銭一厘まで調べたかと言われますと、非常に問題になりますが、專売公社自身の歳入、歳出を見ますと十分に予算余裕がある。ことにおととい申し上げたのですが、予算上、資金上というのは、法律的に見て歳出予算であることは明らかだ、エクスペンディチュアの費用であることは明らかなのであります。どうにもしようがないものだから、国家財政上益金が減るという方面のことをお用いになつたのでしようが、それを有用な方面にお出しになると——実は專売公社で、今度益金が四億八千百万円減ると言つておられますこと自身が、歳入面でも議論があります。またこれをあまりに言い出すと、暮れに年末手当をお出しになつたのも、なぜ政府国会議決を得なかつたか——こういう考え方でしたら年末にお出しになつたのは、やはり予算上、資金上、不可能な支出として、大蔵大臣国会議決を求められるのが終始一貫した立場であつた。あのときは流用を許して、このときはいけないとおつしやるのはどうも……
  67. 大橋武夫

    大橋委員 問題を元にもどしまして、職員の給與について、裁定を実施することになりますと、その結果は当然益金の減少になる。益金というものは御承知の通り一般会計の歳入予算に立つておるものでありますから、公社において裁定を実施するということは、結局それだけ一般会計の負担においてやらなければならぬという結果になるということは、お認めになりますか、どうですか……
  68. 今井一男

    今井参考人 一昨日その点につきましては、私相当詳しく申し上げたと思いますから、あらためて申し上げません。
  69. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちよつと御注意申し上げますが、参考人のお二人方はなかなかおやさしい声なので、速記者が聞き取れないそうですから、静粛に願います。
  70. 大橋武夫

    大橋委員 一般会計の負担によつて結局裁定を実施しなければならぬ。こういう結果になることをお認めになりますか。賃金につきましては、御承知の通り一昨年の夏以来、賃金三原則というものが関係方面から指示されております。すなわちその中の一つには、補給金による賃上げというものは認めるわけに行かないという一つの大きな原則、補給金を増額することによる賃上げというものは、結局政府の一般会計の負担になるものであります。それとこの場合の裁定の実施というものも、同じ瀞済的な結果になる。この点について特に仲裁委員のお方は労働問題につきましては練達のお方でございますから、この賃金三原則に照して、この裁定の実施ということはどういう関係に立つものであるか、この点についての御見解を承りたいと思います。
  71. 今井一男

    今井参考人 本質的に申しますれば、この問題は公労法上の問題でありますがゆえに、法律問題として扱うべきだと思います。私どももちろん賃金三原則は多少心得ておりますが、今回のこの問題があらゆる立場から見まして、賃金三原則に触れるものとは考えられないのであります。現にこの案は、打明け話を申し上げますが、調停委員会におきまして満場一致をもつてきめられた案でありまして、特に公社側の推薦を受けました調停委員であられる三井鉱山の山本常務、この方がとにかくまつ先に立ちまして、ここまで言われたほどの案であります。しかも四箇月もかかられまして、そこまでに話をつけられたのでありまして、私どもそういつた方は賃金三原則につきましても、十分心得ておられる方であるということを申し上げておきます。
  72. 大橋武夫

    大橋委員 多分賃金三原則を心得た方がやつたと思うから、それで賃金三原則に触れて一応承つたのです。  次に裁定内容について御質問をいたしたいのであります。第一には裁定に関する経過を御説明になつておられます中に——裁定書の二の(イ)でございます。「同委員会の到達した結論に信頼し、極力これを尊重することを至当とする。」という旨をお述べになつております。その理由としてあげられておりますのには、本件の実体はすでに調停委員会において検討済みであるから、という点をあげておられる。そこで私は、この仲裁委員会においてこの種の問題を取扱う態度について、承つておきたいと思うのでございます。仲裁委員会の目的というものは、この案件をできるだけ円満適正に処理するのでありますから、一旦調停をして不成功に終りました調停委員会結論に対しましては、さらに新たな角度から検討して行くということが、仲裁委員会のあり方としては至当であつて、調停委員会の検討が十分であつたといたしましても、ただそれだけを理由といたしまして、その結論を信頼し、尊賞するということは、仲裁委員会の態度としてあり得べきものではないように私は常識上考えておる。この点についての、根本的な仲裁委員会の態度をお示し願いたいのでございます。
  73. 今井一男

    今井参考人 この点は特に一昨日も申し上げたと思いますが、現在におきましても、公労法上の調停委員会は特殊な構成になつておりまして、調停で話の片づくことが、私はむしろ公労法精神に沿うゆえんたと思います。労働問題というものは、とにかく当事者が納得し合つて、よろしいと言つた基礎の上にこそ、ほんとうの平和は得られるのでありまして、当事者の意思いかんにかかわらず、法的な拘束力があるからということで仲裁委員会が押しつけるということは、私たち極力避けるべきだ、こういう立場に立つております。現に專売の問題につきましては、実に四箇月の長きにわたりまして、三人の委員が努力に努力を重ねられまして、まつたく打明ければ、これで調停が成るというところまで出ましたので、私どもとして、それ以上の案を出すだけの自信は持ち合せません。この際といたしまして、私どもこの原則に従いまして、むしろ調停委員会基本線によることが、少くとも労働問題解決の上に妥当である。要するに期間のないために、片一方政府の方においておぐあいの悪いような事情もあつたように拝承いたしたのでありますが、もう一度御再考願うということが、この際最も正しい態度である、こう結論した次第であります。
  74. 倉石忠雄

    倉石委員長 大橋君、ちよつとお待ちください。この際午後一時半まで休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後三時十七分開議
  75. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。
  76. 大橋武夫

    大橋委員 午前中の最後の質問におきまして申し上げましたように、裁定に対しまする仲裁委員会の根本的な態度として。まず調停委員会の調停を尊重する、こういう根本的な態度で仲裁に入つておられるわけであります。しかしながらこの点は、前にも申し上げました通り、すでに調停委員会の調停というものは、関係者によつて拒否せられておりまして、この線における解決は、まず困難であるという見通しになつて来ている。従つて仲裁委員会といたしましては、新たな観点においてこの仲裁の問題を取上げるべきだと思つているのであります。しかしこの点について仲裁委員会は、具体的なこのケースは別として、およそかかる調停を経た事件については、どういう根本的な考え仲裁に当るおつもりであるか。この点をあらためてお聞きいたしたい。
  77. 今井一男

    今井参考人 お答え申し上げます。調停委員会の調停案に対する尊重の考え方につきましては、午前中申し上げた通りでありますが、もちろん調停委員会のその案自身につきまして、われわれとして全然うのみにするというわけではございません。もちろんその案の妥当性につきましても検討は加えるわけでありますが、できれば尊重したい。もちろん極力尊重したい。こういつた意味合いであることは、申し上げるまでもないところであります。ただ、ただいまの大橋委員のお言葉の中にありました、片一方が断つたら、また別の案を出せということ自身は、私ども仲裁委員としては非常に納得できないものであります。そういう慣行をつくりまして、がんばれば、がんばつただけ、必ずそちらに有利な仲裁ができる。こういつたかつこうになりましたならば、調停委員会でまとまるものまで、まとまらなくなる。むしろ私どもは調停委員会の線が妥当であるかどうかということに重点を置いて、それを極力尊重するという線が、仲裁委員会としてのあるべき姿であろう。かように考えます。
  78. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、極力尊重するということは、調停の経過にかんがみて極力尊重することが、この場合に具体的に妥当であつた、よつて尊重をした、こういう意味でございますか。
  79. 今井一男

    今井参考人 われわれの原則的立場に、これはちようど適合するものであつた。こういうことであります。
  80. 大橋武夫

    大橋委員 そうするといかなる場合においても、まず調停を尊重するという線でやられるわけではない。そうですな。
  81. 今井一男

    今井参考人 原則として尊重いたしますが、この中間におきましての当事者間のいろいろな経過でありますとか、案自身に対するいろいろな検討の結果によりまして、例外的に異なる場合はあります。
  82. 大橋武夫

    大橋委員 次に理由の一を拝見いたしますと、公社の職員は国家公務員と異なる給與を受けてさしつかえない。こういう趣旨の法律論が展開してあるのでございます。しかして日本專売公社法第二十一條第二噴をひつぱつておられますが、その條項の中には、職員の給典は国家公務員の給與を考慮して定めなければならないとあつて、これも確かにその條文の中に入つておる。従いまして公社の職員の給與が、国家公務員の給與をまつたく無視して定められてよいものでないということは、この條文から見ても明かでございます。ことに調停の玉ページの一行目を見ますと、労働の量と質とに応じて相当違いがある。こうしるしてありますが、国家公務員におきましては、たとえば印刷庁あるいは造幣庁、郵便、電信官署等のいわゆる現業機関に属するところの公務員は、労働の量と質においては、公社職員ときわめて相似た性質を持つておるのでございまして、これらの国家公務員に対する給與と、公社職員の給與は、必ずしも違わなければならぬとは限らないと思うのでございますが、この点についての御説明を承りたいのでございます。
  83. 今井一男

    今井参考人 お説の通り、われわれはもちろん国家公務員の給與を無視はいたしません。しかしまた引写し的に、国家公務員とそのまま右へならえをしなければならぬということは——これはもちろん大橋委員もそうおつしやつたわけではありませんが、われわれとしてはとらないところであります。特にマ書簡においては、明白に国家公務員というものは国民の公僕であつて政府とは団体交渉をする立場に立たない。こういつた基本概念で出発いたしておりまするがゆえに、また一方公共企業体につきましては、公社団体交渉によつて賃金をきめる。こういう建前をとられておりまするがゆえに、実質しただいま御指摘のような印刷庁、造幣庁等において似たようなものがございましても、その建前手続的に異なつておる関係から、そこをお話のような法律論たけで解釈することは、結局この法の精神そのものに沿わない場合が起つて来るということを、あわせて申し上げようと思います。
  84. 堀木鎌三

    堀木参考人 その問題に関しまして私もぜひ一言さしていただきたいと思うのであります。と申しますのは、現在の政府には、国家公務員の給與ベースをかえるまでは、公共企業体のベースをかえないのではないかという疑いが一点ありまするので、特に申し上げておきたいと思います。このおあげになりました理由についてまずお読みを願いますと、今公社の職員は、今井参考人が申し上げました通りの本質を持つており、この点につきましては日本国有鉄道の場合においても、詳しくその性質を明らかにしたのでありまして、「目下民間給與と著しく均衡を失している国家公務員の給與に準じて定められなければならない法的根拠は存在しない。」法的根拠もそうでありますが、私ども考え方は、国家公務員の給與も民間給與と著しく均衡を失しておる。この間政府がお出しになりました給與白書では、その差がひどくないと言いなから、すでに一千円以上の給與が違うこと自身をお認めになつておるわけであります。なるほど国家公務員の給與も、公社法の二十一條で考慮をしなければなりませんが、私ども考え方の実体的なものは、ここに表わしましたように、国家公務員の給與も改めらるべきだというふうな考え方が一つ入つておることでございますので、この点は特に申し上げたいと思つて立つた次第であります。
  85. 大橋武夫

    大橋委員 労働條件、ことに労働賃金というものは、労働市場を通じてお互いに影響し合う性質のものでありまして、ことに現在のわが国のように、賃金というものか多分に生活的な色彩をもつて理解されておる場合におきましては、一つの部門における賃金の引上げは、当然他の部門に波及しやすいということを考えなければならない。ことに今回の全官労あるいは国鉄、專売等の各部門の賃上げの問題は、相提携した一連の労働運動としての要求が行われておる場合でありますから、これらの各部門における要求を、個々に引離して解決しようといたしたところで、これはまつたく机上の室論でありまして、当然この一部門の解決は、他の部門の職員に対しても影響を及ぼすものと考えなければならぬと思うのでございますが、この点は仲裁委員はどう御理解になつておられるでありましようか。
  86. 今井一男

    今井参考人 御指摘のように、現在のみならず一つの企業におきまして賃金の引上げがありますと、それは他にも影響いたしましよう。私どもそれを別に否認するものではございません。しかしながら、そのことであるがゆえに、上げてはならぬというりくつは、また相立たぬと思います。そういたしまして、不当に低賃金に置かれてれる者は、いつまでたつても低賃金でおらなければならぬ、こういつたりくつにも相ならぬものと考えます。なおわれわれの立場は、国鉄と專売につきまして——公共企業体について、団体交渉を基礎とする労働慣行の確立という役割を仰せつかつておるわけでありまして、もちろん賃金三原則等の基本線は考慮の基礎にいたさなければなりませんが、もしも御指摘のように一般市場に影響がある。これが国策しただいま賃金は動かすこと相ならぬということでありますれば、率直に私一個の委員としての意見を申し上げれば、法律で賃金ストップ令をお出しになればよろしいと思います。団体交渉の原則を認め、それによつて賃金をきめるという建前をとりながら、しかも賃金は非常に下つておるという事実がありながら、他に影響するから上げられぬ、こういつたりくつには私どもとして承服できません。
  87. 大橋武夫

    大橋委員 ただいまのお答えを承りますと、專売公社の職員の給與と国鉄の職員の給與また公務員の給與、これらの問題は個別的には決定することができない。当然お互いに引合うという関係は認めざるを得ない、こういうお答えに承つた次第でございますが、いかがでございますか。
  88. 今井一男

    今井参考人 いかなる賃金も影響がある。いかなる物価の引上げも、いかなる賃金の引上げも、これはすべて経済的に影響がある、こういう原則を申し上げておるのであります。
  89. 大橋武夫

    大橋委員 私の承りたい点は、そういうことではなく、公社法の二十一條にありますところの賃金をきめるべき基準は、すなわち公務員の給與を考慮してきめなければならぬ。こり明らかに法律にうたつてある。これから考えてみても、公社の職員の給與考える場合に、国家公務員の給與を考慮に入れないということはあり得ないと思うのでございますが、その点を伺つたわけであります。その点は私の申し上げた通りでよろしゆうございますか。
  90. 今井一男

    今井参考人 御趣旨よく拝聽いたしました。われわれといたしまして国家公務員の給與は十分に考慮いたしました。特に現在において、いろいろ議論はございますが、政府として国家公務員のベース改訂をやらない、こういつたお立場に立つておられるようであります。のみならず、その見解の基礎は、今後物価が安くなる、実質賃金が充実される、こういつた御意見伺つております。こういつた見地に私ども敬意を表しまして、そこでこの專売につきましても、ベース改訂をやらない、一旦ペース改訂をいたしますと、これをさらに引下げるとかいうことにつきまして、非常にむずかしい事態が起りますがゆえに、そういつた大橋委員のお考えに順応いたしまして、国家公務員についての政府の政策ということも頭に置きまして、こういつた裁定を出した次第であります。
  91. 大橋武夫

    大橋委員 国家公務員との問題について、十分御理解のある御回答をいただきまして、私もたいへん喜ばしく考えておるのでありますが、次に国鉄に対する仲裁につきましては、昨年末わが国会におきまして、その裁定に対する承認が得られなかつたことは、皆様の御承知の通りでございます。これは仲裁委員会において行われましたところの仲裁に対して、最終的処理の與えられました最近の実例であると思いまするが、このたび專売公社裁定をされるにあたりましては、当然この最も最近における実例を参酌いたしまして、国有鉄道に対しまする国会のこの処理の結果と最も均衡のとれた措置に出られる、これが結局、労働紛争の合理的かつ円満なる妥結を期待する上からいつても、最も適当な処置と思うのでございまするが、仲裁委員会におかれましては、この点については、いかなる御方針によつてこのたびの專売裁定をなされたのでございましようか。
  92. 今井一男

    今井参考人 その点もわれわれ考慮の中に入れております。国鉄裁定が、国会におきまして、適当でないという議決をなされましたことは、私どももともとと承知いたしております。その際に、いろいろの理由があつたようでありますが、その一番主たる根拠は、要するに借入金をすることは適当でない。われわれの見解では、借入金をいたしましても、経済的に、事業的に成立し得るという見地に立つた裁定でありましたが、それをば御承認願えなかつた。要するに賃金支出のために予算のわくをふやすことは相ならぬ、こういうのが御趣旨で、あの裁定は、いわば否決、不承認のような形に相なつております。私どもこのこと自身に敬意を表しまして、今川の專売の裁定におきましては、決して歳出予算のわくを崩さない、こういつた立場で出しております。
  93. 大橋武夫

    大橋委員 国鉄の裁定に示されたる賃金の金額支出というものは、これが国会において不承認になつておることは、今おつしやつた通りであります。従いまして專売裁定においては、いかなる線において解決するかということが、当然問題となつて来るのでございますが、その点についてどういうふうにお考えになりますか。なるほど今国鉄の場合は、借入金をすることがいけないという趣旨であつた。しかし裁定に現われておる線そのものはよいのだ、ただこれを実現する方法がいけないのだ、こういう趣旨で国会で不承認なつたというふうに、失礼ですが、独断をせられておるように思います。しかしその点は今どうこうという問題じやありません。とにかく国鉄の裁定において、仲裁委員会の示されたる賃金額の線というものは承認を得られておらない、このことは確かに確実なる事実であります。これに対していかなる御考慮があつたのでありますか、その点を伺いたいのでございます。
  94. 今井一男

    今井参考人 その点少し私は大橋委員と所見を異にするものでありますが、国会におきまして、こういつた問題を公労法十六條によりまして御審議いただくということは、もつばら今まで承認を與えた予算以上のわくを認めるかいなかということで、裁定そのものがよろしいとか、うまいとか、まずいとかいうことを御批判になるものではないと心得ます。もちろん一般国政上の審議の立場から、国会がありとあらゆる問題を取上げることは御自由でありますが、建前からいたしまして、もしも仲裁裁定そのものを、いわゆる上告審とか何とかいう意味合いにおいて、国会でお取上げになるとすれば、予算上不可能な場合のみならず、ありとあらゆる場合を取上げまして、この協約はうまいか、まずいとか、これはどうだとか、こうたとか、御批判をいただかなければ筋が通らない。予算上不可能な場合に限つて国会の御審議をいただく意味合いであることは、そういつた法の精神上明白だと思つております。従つてども国会の権威を尊重する立場も、もつぱらその点に置かれております。但しそれと離れまして、ことに私は、ただいま大橋委員のおつしやいました、国鉄の裁定の賃金の線と権衡がとれているかどうかということにつきましては、別に意見を持つておりますから、ついでに申し上げますが、これは若干筋が食い違つております。私食い違つてさしつかえないと思うのであります。と申しますのは、これこそ公共企業体にしたゆえんであると思います。その企業がきわめて順調な運営をしている場合には、企業体の本質上、その職員には相当に割のいい賃金が與えられる。そのかわり、またある場合には割の悪い賃金が與えられる。そういつた企業の経営そのものに、労働者そのものが結びつく、こういつた態勢をとりたいがために、公共企業体にされた。公務員のように、企業の盛衰というものが、直接従業員と結びつかない態勢は適当でないという立場が、これが公社化された非常に大きな意味であると思いますので、そこわれわれとしまして、そういつた点も加味いたしまして、ここに若干違つた線が出ております。
  95. 大橋武夫

    大橋委員 これではつきりいたしました点は、仲裁委員会におかれましては、国鉄職員よりも專売職員には、より多くの賃金が與えらるべきである、そうしてその理由は、專売公社経理状態が国鉄に対していいから、それに対して当然の利益分配的な意味においても、そうあるべきであるというふうに承つたのでございますが、それでよろしゆうございますな。  そこで、もう一つ、これに関連してお伺いいたしたいのは、仲裁におきましては、極力調停條項を尊重する、こういう線をはつきりと打出しておられます。その調停條項の作成の基準となつておりますものを見ますと、これは全工業というものの平均賃金を基礎にしてやつておられます。なるほど、調停條項作成の際におきましては、公務員の給與というものは現状においては低きに失するという前堤のもとに、特に民間の事業を選んで基準を求められたことは一応了解できるのでありますが、すでに仲裁をなされました当時におきましては、国鉄裁定についての国会の処置というものは決定済みであり、同じ公共企業体でありますところの職員に対する最近の新しい基礎というものが、ここに確立をいたしているのでありますから、仲裁委員会としては、この新たな事情のもとに仲裁を下すべきであつて、もはやこの新たな事態においては、旧套に堕してしまつたところの調停委員会結論を尊重するというがごときことは、これはこの客観的な新事態に対して、まつたく盲目的な態度であるといわなければならぬと思うのでございますが、この点はいかがでございましようか。
  96. 今井一男

    今井参考人 盲目的なというのは少しはげしいと思いますが、(「それは考えようじやないか」と呼ぶ者あり)そうですな。国鉄裁定について国会においての御審議を承りましても、特にこれが不承認になりました衆議院におきましても、附帶條項において、あれだけの金額は、予算が入るようになつたら、なるべく拂つてやる、こうおつしやつたように私記憶いたしております。決して裁定そのものの金額が高過ぎるというおしかりを受けた覚えは、私として持つておらないのであります。そういう意味からも、私ども專売の調停を尊重するのに、別に障害になるとは考えません。なおこの民間工業の平均をとつたということにつきましては、調停委員会が最も苦心されたところでありまして、大体賃金をきめます場合に、いかなる資料から、いかにして結論を出すかということは、最もむずかしいところであります。その際調停委員方々がいろいろとお骨折りの結果、両者の意見を総合されまして、結局全工業平均から引出すということにつきまして、両者確認の上、これならよろしい、こういう立場で出発されて、この基準がつくられたわけであります。一言申し上げておきます。
  97. 大橋武夫

    大橋委員 そういたしますと、仲裁におきましての最後の結論を出すにあたつて、特に全工業を基準として、国鉄の職員の給與を基準としなかつた理由は、どういう理由でありますか。
  98. 今井一男

    今井参考人 私ども、前々から申し上げた通り、調停委員会の案というものをまず第一に尊重するという立場で、これを検討いたした結果、これがとにかくわれわれの基本的な考え方と相去ること遠くないということから、この線を採用いたしたものでありまして、国鉄裁定と必ず均衡をとらなければならぬものでないということについては先ほど申し上げた通りであります。
  99. 大橋武夫

    大橋委員 私が特に伺いたい点は、なるほど調停手続におきまして、きわめて用意周到にして愼重な数々の御検討を経られたことは、これは確かでございましよう。ございましようが、その後に仲裁が行われておる。この調停と仲裁との時期の中間におきまして、国鉄裁定に対する国会の最終的な結論というものが新しく打出されておる。従つてたとい従来の調停手続を尊重するといたしましても、ここに新しく現われた客観的な條件というものが、仲裁において無視されていいというはずは断じてないと思うのであります。ことに国鉄の職員たるや、乍年前までは專売公社の職員と同じように、ひとしく国家公務員として同じベースの賃金を與えられておつた。これに対してきわめて最近に、一つの早期解決を仲裁委員みずからの手によつて行われておるようであります。そしてその結論国会において出ておる。これに対して何ゆえに、それ以前において行われた仲裁條項、調停條項を尊重するという練だけを打出して、この新しい事態を加味して結論を出すという努力をされなかつたか、こういう点を特にお伺いしたいのであります。
  100. 堀木鎌三

    堀木参考人 私から一言お答えいたしたいと思います。調停を尊重するということが、仲裁としてやはり一つの職能だと考えなければならぬ重要なポイントである、こう思うのであります。公共企業体労働関係法の第一條をごらん願いますと、「この法律は、公共企業体の職員の労働條件に関する苦情又は紛争の友好的且つ平和的調整を図るように団体交渉の慣行と手続とを確立することによつて公共企業体の正常な運営を最大限に確保し、もつて公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする。」これが非常に私は考えていただかなければならぬ点であると思います。つまり「団体交渉の慣行と手続とを確立することによつて、」というのでありまして、公共企業体の経営者と組合との間に、この慣行を樹立することが公共企業体労働関係法精神であるわけであります。この專売調停は、この経過の中にも書いておきましたように、事実問題としては、ほとんど妥結し得る状態にあつたのであります。ただ何と申しますか、今大橋委員の言われましたように、どうも公務員と引離すのがいやだという考え方、これが確かに政府にある。あまり内輪話はしたくないのですけれども、私ども政府の大臣などと話をするときに、どうもそれが出る。しかし、そんならなぜ公共企業体をおつくりになつたのだ、両方が違つておらぬのなら、マッカーサーの書簡によりまして、政府がおつくりになつたときに、決心をさるべきなのです。それをあのマッカーサー書簡によつて公共企業体はつくつたのだ。しかしその職員は今まで国家公務員と一緒だつたのだから、何と言つても一緒だ。こういう気分が強いのじやないか。お互いにこういう新しい民主的な行き方のものがきまりましたときには、その方向に努力すべきなのです。バツクワードするようにして、昔の国家公務員と同じように、道連れにすべきものじやない。かたがた国家公務員は団体交渉権を奪われてしまつたのですから、その国家公務員ができたように、人事院の勧告もお聞きになり、国家公務員が民間の給與と同じようになつて行くこそ、政府の責任なのです。率直に申しますればあのマッカーサーの書簡の意味はそうなのです。公共企業体におきましては、団体交渉権があるわけです。だからわれわれが、この団体交渉権なり何なりというものをできるだけ尊重するのが、公共企業体の労働関係法においては当然なんだ。それを、一方的な権力をもつて律するようなものに近づけることはできない。ことにそれが他の民間の給與と比較いたしまして、悪い状態に置かれてあるということは、無視することはできない。政府の給典白書でも明かにそのことは認めております。ただ政府の方はそれを僅少なりといたしておりますが、私どもは著しく均衡を失しておるという考え方になつておるわけです。それで国鉄裁定の場合と何か思想的に非常に差異があるようにお考えになりますが、国鉄裁定のときにもわれわれは詳しく申し述べておりまして、他に制約がなかつたならば、もうすでに低いのだから、これは本来言えば、相当給與を上げるべきだという観点で、ちやんと国鉄裁定に、二割程度の引上げを要するものと認めるに至つたということは書いてあるわけであります。ですから思想的に決してかわりはない。ただ片方によく言われます賃金三原則がある。この点は実は私議会で話が起らなかつたので追究するのをやめたのですが、国会放送討論会でありましたかで、あれをいかにも借入金をして賃上げを要求するように、増田官房長官が言われているので、私非常に残念に思つたのです。末弘さんもその点に触れておられるのでありますが、しかし国鉄の場合には、少くとも経営状態が悪くて、貨物運賃を上げて収支を償う、それに借入金をしておるという現状から見て、退職手当の分だけは、民間でもおやりになつておるのだから、ぜひその分だけは国会でも考慮していただいて、そうしてやつていただかなければならぬというので、経理能力から見まして、切下げの分を補うという程度にとどめて出したわけであります。ですから、あれは賃金三原則、経済九原則をしつかり頭に入れているから、ああいう裁定が出たのです。今度の專売の方は、いくらおつしやつても、これは一体経済九原則、賃金三原則に触れるとおつしやるわけじやないと思うのです。私どもは、今度はこの原則には、專売裁定に関する限りは関係ない。現在の予算を調べてみてもない。こういうような確信に立つておるのですから、その点の差は起つてつております。しかし今度は実質的にもそう大した開きは起つておりません。しかも企業経営が違うたびに——少くともああいう賃金三原則なり、経済九原則を強行される以上は、企業の内容が違つた場合に、給與が違うことは当然認めておるわけです。これは当然だと私は思う。その点について金のあるものと、ないものを一緒にして行つたら、いつまでも金のないところの労働者がくぎづけになることは明らかなんで、そんなことはドツジ・ラインからは出て来ない。経営に負担能力があればお出しになる。何もむちやに出せというのではなくて、それこそ私ども政府もおたよりになるような、しかも労働者の意図に反してでも、労働者が服従しなければならぬ、そうして公社も服従しなければならないという裁定を出す以上、私どもは責任を感じつつ、十分に全体の情勢を加味して、実情に合うように出した。この衷情だけはぜひ御理解を願いたいと思うのです。
  101. 大橋武夫

    大橋委員 そういたしますと、ただいま堀木委員の御説明を承つておりますと、国鉄裁定の際の考え方と、このたびの專売裁定考え方とでは、ドツジ・ライン、あるいは賃金三原則に左右されるかどうかという点において、明らかに違いがある、こういうことでございますか。
  102. 堀木鎌三

    堀木参考人 国鉄の内容と一つまり経済九原則、賃金三原則を守つて両者の経営状態を見ますときに、幾分の差がつくのは当然だと考えております。
  103. 大橋武夫

    大橋委員 国鉄の裁定の際におきましては、国鉄の四十五億をふやすということは国鉄特有の事情によるのだ、こういうレッテルが張られておると私どもつておる。すなわち待遇切下げを補償する意味である。こういうふうに言われておりました。そうしてこのたびの專売の裁定におきましては、これは待遇の切下げの補償ではないのであつて現実においては低いベースを引上げるその手段である。こういうふうに理解してよろしゆうございますか。
  104. 堀木鎌三

    堀木参考人 確かに国鉄の場合は、引下げられた分を計算いたしたのであります。公社の場合につきましては、その引下げということは私ども考えられない。事実公社発足以来、率直に申しますと、秋山さんがおいでになりますが、秋山さんが総裁になられるから、待遇改善の跡は認めます。しかし、なおかつ先ほどあなたがお引きになりました二十一條の基準によつて考えますと、協定の線はわれわれとして当然認めるべきものである。こういうふうに考えた次第であります。
  105. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、專売公社においては賃金を引上げるべきものである。その引上げの一端として、このたびの裁定をしたというわけでございますね。
  106. 堀木鎌三

    堀木参考人 賃金水準を引上げるかどうかを言わそうと、御苦労なさつておると思いますが、待遇は改善される。しかしこれは先ほど今井委員がはつきりおつしやいましたように、かたがた協定案を合せてお読みくださるとわかりますように、つまり生産報奨的な金として、賃金ベースの改訂まで考える方がいいというように調停案に書いてある。先ほど今井委員の言われましたように、賃金水準の引上げということは、いろいろ政府の施策もあるでしよう。むしろそういう点を考慮しまして、昨年の暮れにおきましては、賃金水準を上げるという形をとらなかつたわけで、この点は国鉄裁定と同じ思想でございます。
  107. 大橋武夫

    大橋委員 今の賃金水準を上げないということは、形式的に上げないということで、実質的には明らかにそれだけ所得の増になるのですから、これは上るということじやありませんか。
  108. 堀木鎌三

    堀木参考人 先ほど今井委員説明いたしましたように、政府の施策がほんとうに成功いたしますような場合に、賃金水準の向上で解決するか、生産性に結びついた形で労働者の所得が多くなるようになるべきか、こういう点は、政府立場というより、むしろ方針を非常に尊重しまして、生産性と結びついた姿で解決したらいい。だから所得がふえるのは当然だというふうに考えております。  もう一つまたお尋ねがあるかもしれませんから、申し上げますが、私ども考え方は、專売の場合におきましても、国鉄の場合におきましても、本来公共企業体の職員の給與ベースは低いのであります。国家公務員も低いのであります。だから、この賃金の水準を上げ得るような場合には、なるべく早くしてもらいたい。專売公社裁定におきましては、二十五年四月以降の給與については、あらためて当事者間で協議することというふうなことを考えておるのです。しかし率直に申しますと、あまり仲裁委員会の個人的な意見言つてはいけないと言われるかもしれませんが、おそらく賃金水準をお上げになるのが近いのじやないか、ということを予想しておつたくらいだつたのです。それさえ申し上げれば、私ども意見ははつきりおわかりになると思う。
  109. 大橋武夫

    大橋委員 私が特に明確にいたしたいと思う点は、国鉄裁定においては、賃金水準を二割程度引上げるのが妥当であるが、しかしながら政府は、実質賃金に対して種々な施策によつてこれを増大するような処置をとつておる。その処置の結果に見きわめがつくまでは、賃金引上げという問題はしばらく預かりにしておく、そうしてその間は、今までの待遇の切下げの分だけを、補償的意味においてふやしてやろう、こういうお考えだつたと理解をいたしておるのであります。そこでこのたびの專売の裁定においては、賃金の水準は四月以降の問題として預かりにされるけれども、しかしこの中で三千数百万円だけは、その一部分の前渡しと申しますか、あるいは一端と申しますか、そういう意味においてこれだけ賃金の引上げを認めてやろう、こういう御趣旨に裁定がなつておるように私は思う。その点をはつきりいたしたかつたのであります。
  110. 堀木鎌三

    堀木参考人 国鉄の場合をお考えになると、非常に違うことがおわかりになるのですが、国鉄の場合は、御承知の通りに十万人の整理をいたしたのです。あれもやはり賃金三原則と申しますか、経済九原則と申しますか、それよりもつと公共企業体の独立採算制の樹立と申しますか、超均衡予算の強行と申しますか、そういうものでやつたのでありますが、この国鉄の場合を單純にお考えにならないで——国鉄の場合にお考え願いたいことは、二十三年度までは一般会計から三百億以上に上る補助金があつたわけであります。それを超均衡予算ですぽつととつた。超均衡予算をやるなら、貨物運賃と旅客運賃を年度初めから上げればいいのに、それを上げないで、独立採算制を非常に強行したために、十万人を整理して、それでなおかつ会計が成立たなくなつて来た、そういう公社の実情にある。私運輸大臣に申し上げたのですが、整理をなさるときは、公共企業体になつたのだから、お前らはここでもう独立採算制をとれと言つて整理をたさつた。だからほんとうを言いますと、私ども裁定で述べましたように、民間のどの企業にも劣らない難度の賃金をお與えになつたらいいじやないか、という考え方を持つておる。しかしその点については、政府なり国会なりでいろいろとお考えがあつたと思いますが、今度の專売公社の場合に、国鉄の場合と違うわけであります。財政上の負担能力と申しますか、既定予算の余力と申しますか、そういうものが違うわけであります。違うならば、本来の姿に従つて、なるべく労働者の所得が多くなるように考えて行く。それから国鉄の場合にお前は政府の施策をよく見てやる、こう言うておるのに、この場合は見ないのかというお話でありましたが、国鉄の場合にもすみやかにと書いてあるのでございます。これをお落し願わないように願います。政府の施策がいつ実現するか。それがほんとうに給與を上げないでいいほどになつて来るかどうか。私ども伺うところでは、一般民間の給與との開きは、いつまでも差が縮まつて参りません。むしろそういう争議権を奪つた団体交渉権——国家公務員の場合には団体交渉権はありませんが、しかしそういうふうな状態に置かれる場合の給與は、正常の状態に行くのが本来の趣旨でございますね。これはお認めになるでしよう。それが低いから、その低いのを、経理能力がよくなつて来たのに、いつまでも同じにしておかなければならないという考え方はないだろうと思う。そういうふうにお考えになりますと、国有鉄道の場合には——どもは国家公務員の給與考えるが、一般民間の給與水準も考えなければいかぬ。そして公社自身の支拂い能力といいますか、経理能力考えなければいけない。そういうわく内で労働者の正当な要求だけは、これを満たし得るような解決方策をとるのが当然なんです。これがマッカーサー書簡の趣旨にも合うのであります。公労法をきめられた趣旨にも合い、また団体交渉の慣行を認めて行く法律精神にも合う、こういう立場をとつておるのでありますから、全体として今御質問になることは、そういうことを当然だとお認めになつたら、私は当然だとお認め願えるのではなかろうか。一つ一つ書いたものについて申されることを、とやかく申し上げるわけではございませんが、全体の方向さえお考えくだされば矛盾はない。また思想的の統一性もある。こういうふうにお考え願つてけつこうだと思います。
  111. 大橋武夫

    大橋委員 今理由なり弁明なりについてはいろいろ伺いましたが、私の伺いたかつたのは、こういうわけで、こうしたというのではなく、裁定の結果現われておる違いを、はつきり伺いたかつたのです。そこではつきりした点は、昨年の国鉄裁定につきましては、四十五億を組合側に国鉄から支拂うべきである、こういう裁定をしておられます。そして不幸にしてそのうち十五億ばかりを除いた三十億近くのものは、国会において不承認に終つてしまつておる。かりにこれが全額承認された場合においても、今回專売において裁定せられておるところの金額は、国鉄の全額四十五億がすつかり承認されて実施せられた場合よりも、このたびのこの委員会にかかつて問題になつておる金額だけは、国鉄よりも專売の労組の方がより高い実収になる、こういう結果になることだけに明らかだと思います。その点は否定されろわけではないでしよう。いかがでございますか。国鉄の裁定の四十五億のうち三十億ばかりは不承認になつておる……     〔「そんなことはない」と呼び、その他発言する者あり〕
  112. 倉石忠雄

    倉石委員長 靜粛に願います。
  113. 大橋武夫

    大橋委員 不承認ということについて、事実と違うと言われるが、承認されておらないことは事実です。そうしてこの裁定の四十五億のうち三十億は、今日実施不可能の実情にあるわけでございます。これが全部実施されたものよりも、このたびの裁定の專売の賃金というものは、上の水準を示しておる、こう言わざるを得ないと思うのでございますが、この点をはつきりしていだきたいと思います。
  114. 今井一男

    今井参考人 国鉄の裁定は、いわゆるベース改訂あるいはそれに近いような考え方をとりませんので、ただいま大橋委員の御指摘にちやんとした数字を出すわけに参りませんが、大ざつぱに申し上げますと、四十五億が全部実施されますと、月八千二、三百円というような金額になります。これは超過勤務手当から何から、ありとあらゆるものを含めたものがそれであります。これに対抗いたしますのは、專売の八千百円であります。むろんこれの均衡がどうのこうのという御説もございますし、また考え方のいかんによつては、そういう問題も出ると思いますが、とにかくそう大して大きな不均衡——皮肉なことを申せば、政府給與白書において、民間賃金との千円以上の開きを、著しいとはお考えになつておらないわけでありまして、それから見れば、これは微々たるものであります。
  115. 大橋武夫

    大橋委員 しかし国鉄の裁定において現われた線は、この四十五億全額支給する、これは過去の引下げられた分を補償するという線てした。そしてこのたび專売裁定において打出されておる線は、現在のベースを上げるべきであるけれども、上げることは今ただちにはやらないが、その上げる一部分として、ここに年末までに一億二千万円ばかりを出す、こういうわけです。従つてここではつきりしておかなければなりません点は、ベースの改訂というものは、国鉄の場合においては、将来の問題として全部たな上げされております。ところがこのたびの專売裁定においては、ベース問題が全部たな上げされることなく、その一部分はこの裁定の中において解決しようと、こういう構想になつて来ておる。ですから、なるほど両公社経理状態は違いますが、しかしもし両公社経理状態という條件をはずして考えますならば、すなわち国鉄がそれだけの経理能力を持つておるということになりまするならば、今井委員がただいま仰せられた八千二百円という国鉄の賃金の平均は、專売の八千百円よりも相対的に安過ぎるのでおる。八千二百円国鉄の賃金には、さらに将来ベース改訂の一部として、ちようど專売と同じように、ベース改訂がここにおいても必要とされるのでありますから、その一部を実施する場合においては、まで何がしかの金を国鉄においてさらにプラスして行かなければならぬ、こういう結論になつて行かなければならぬと思うのであります。もちろんこれは両公社経理状態か、一方は惠まられておらぬ、一方は惠まれておるという差異から来ておる偶然の結果でございまして、仲裁委員方々の正しい考えを、もしその通り実行するといたしましたならば、昨年の国鉄裁定においては、四十五億全額を支給いたしましたる上に、さらにまたベース改訂の一部分の前渡し、あるいはその一端をやるという意味において、何がしかの金が組合側に支拂われるような裁定になつて行くべきものであつたと思うのであります。しかもその四十五億のうち大部分は不承認になつておる。そこで今日この專売裁定をこの通りに実施いたしますると、仲裁委員の思想の中にありまするところの、両公社の職員の賃金の水準というものからいつて、專売公社の水準が非常に有利であると申しますか、上の線になつておる。現実の金は別として、理論的に上のものになつておる。内容豊富と言いますか、そこに差異があるということになつておるのでございます。この点について重ねて御答弁があれば承りたいのであります。
  116. 今井一男

    今井参考人 だんだん御質問の御趣旨がはつきりして参りましたから、ここでわれわれの賃金というものを裁定するときの基本的な考え方を、ある程度まで申し上げた方が便利かと考えます。労組の諸君が賃金を要求される場合には、賃金そのものとしてあるべき姿のものを要求されます。特に公共企業体においては、経理、経常というものに対する問題を団体交渉の議題にできませんから、従つて労働組合そしてはそれが当然の立場かもしれません。しかしながら公社側の方では、これは当然支拂い能力という点が基本点となつて、これに対してお答えをされるわけであります。またわれわれも支拂い能力ということが基本となつて、その点におきましては、根本的に労組の諸君の要案とは、われわれの立場は違つております。ただ、しかしながら賃金のあるべき姿というものを出しましても、その要求の内容と、賃金のその支拂い能力の線というもののかみ合せが、これに至つてむづかしい問題であります。支拂い能力と言いましても、これにはいろいろの幅があります。ある一定の線を引く場合は、いかなる犠牲を拂つても、なほ賃金を拂うべき線があろうかと思うのであります。またある場合におきましては、よりほかの方面に使つて、賃金の上げ方を余裕があつても少くする。こういつた場合もあろうかと思うのであります。要するにその間のかみ合せが、われわれ仲裁委員立場といたしましては、最も苦心するところであります。従つてある意味におきましては、労組の諸君と基本的に立場が対立いたします。しかしこれはわれわれの職責上やむを得ないかと思うのであります。そういう見地におきまして国鉄の場合におきましては、われわれとしてこれを他の一切の状況を抜きにいたしますれば——われわれは、そういうふうに言いました通り、二割程度のベース改訂は適当と結論いたしましたが、御承知の通り現在の国鉄の経理はまことに重大であります。しかしながら少くとも切下げられたものだけは、私ども借金をしてでも拂う必要がある。その借金はこういつた意味で資本的な支出であるという立場で、われわれの裁定を下したのであります。ところが專売に、これとは経理状態を異にいたします。従いましてわれわれとしましては、またやや異なつた線を出した次第であります。ただここでお断りしておきたいことは、先ほどからベースベースとおつしやいますが、ベースという言葉はきわめてあいまいでありますので、その点見方によりまして、いかようにも解釈されますが、普通ベースと言いますれば、基本給の問題でありまして、官公吏で申せば、本俸、勤務地手当、家族手当というものの線を、ベースと考えるのでありまして、それ以外の別に所得として入るもの自身もベースということは、これは普通行われておりません。六・三ベースと申しますのも、それであります。またこのベースを政府として上げにくいという立場は、一旦上げますと、かりに物価が非常に下つた場合においても、これを切下げることがきわめてむづかしい。こういつたお考えも中に含まれておると、われわれは拝察いたしております。従いまして今回の專売の裁定は、その意味におけるベースではございません。もし大橋委員の仰せのようなベースを考えますと、昨年の年末手当、これもベースに入れなければならぬ。こういつた議論になるかと思いますが、要するに所得はふえます。しかしながらこれは未来永劫に、既得権的にきまつたものではございません。ベースとは基本的に違つております。ただそれによつても專売と国鉄の線が違うということ、それは先ほど申し上げました仲裁の特殊な立場から、支拂い能力というものと、賃金要求の緊急性のかみ合せから出た若干の差はございます。
  117. 大橋武夫

    大橋委員 それではお伺いをいたしますが、国鉄の裁定の末尾を拝見いたしますると、あの国鉄の裁定というものは、これは国家公務員の給與が将来すえ置かれるということを前提にして、この裁定を下すものであるということが明らかにうたつてあります。それならば、国家公務員に準ずべきこの專売公社の職員の給與問題について、明らかにこのたびの引上げが行われます以上は、当然国鉄においても、無関係であり得るというはずはないのである。従つて專売においてこれだけ上げれば、国鉄においてもやはりそれに対する何がしかの引上げということを考慮しなければならぬ。これはあなた方のお書きになりました国鉄における裁定そのものの末尾に、明らかに、ほかのものの給典がすえ置きになつておるということを原則にして、この裁定を下すものである、ということが書いてある以上、当然他の引上げがあれば、その前提は破れて来る。ここで新しく国鉄についても、この勧告は仲裁の書き直しをしたければならないという状態になるものと思うのでございますが、この点はどうですか。
  118. 堀木鎌三

    堀木参考人 末尾には、「国家公務員の給典水準が」とございまして、「專売公社給與水準が」とは書いてないのでございます。
  119. 大橋武夫

    大橋委員 大分苦しいお答えでございますが、文字のしたけで見ますと、確かにその通りであります。そうするとあなた方は、專売公社の職員の給與は引上げられても、国鉄には関係ないと言われるのでございますか。
  120. 堀木鎌三

    堀木参考人 どうも何と申しますか、食い違いが大きいように思うのですが、私どもは、実は政府が国家公務員の給典ももう上げられる時期だたろう、率直に言いますれば、国鉄のを書くときから、もうすでに人事院の中で、大体どの程度の事柄が作業上進行しているかということも、よくわかつてつたのです。しかし国鉄の場合よりは、專売が裁定になるときには、もつと明らかになつております。ごくわずかな時間的な差ですが、あの差異が大切な時期でありました。まさか人事院の勧告があつても何でも、給與を上げないのだというような態度は、政府はおとりにならないだろう、これが前提なのであります。ですから政府が国家公務員の給與を上げなければ、どんな場合でも、公社給與は上げないのだという前提があれば別でありますが、私どものは、もう上げるという客観情勢は熟して来たと見た。しかもお考えになつてもわかつますように、民間の企業は給與が上つておるので、その聞きは大きくなつている。給與白書では、物価は下るとか、横ばいだとか言いますけれども、米価の値上り分だつて、運賃の値上り分だつて、織り込み方、また生計費への影響というのは、いろいろの議論があると思いますが、ともかくも白書で千円以上の開きは認めておられる。そうすれば、この一千円り開きというものは、大した開きである。少くとも私どもはそう考える。ですから上げてやる方をお考えになるべきで、どうも下げてやるりくつは立たない。今の水準に、何でも公社の職員の水準を一緒に並べて行こうという思想は成立たない。大橋さんの言われるような考えとは、大分私ども食い違いがあるものですから、答弁がぴつたり行かないのだ、こういうふうに私は思うのであります。それでこの点さえはつきりさせていただければ——あなた方がどつちの立場をおとりになるのかは存じませんが、上げてやろうという立場をおとりになるならば、当然そういう御質問は起らないのではないかと思います。私どもにはこういうふうな前提があるのであります。どうかその点を御了承願つて、一々文句についていろいろ言うと、われわれも神様ではないのですから、文句の一々をとられるとなんでありますが、しかし全体としての立場は、さつき今井委員の言いましたのと、私の言いましたのとで、はつきりわかると思います。このことを申し上げて御了承をいただきたいと思います。
  121. 大橋武夫

    大橋委員 私はただいまの堀木さんの御意見を承りまして、非常に意外な感じを抱いたのでございます。それは堀木委員は、私が上げる立場をとるか、そうでない立場をとるかとお聞きになつおる。しかしわれわれは、今上げるべきであるか、それとも上げるべきでないかということを、国民の前で審議をいたしておる。われわれに対して初めから結論をつけて、そうしてそれに対するりくつをあなたから引出そうとしておるのではありません。私どもはその審議のために聞いているのでありまして、ことに委員として委員会に対するあなたのお答えを承りたい。そうしてわれわれは、それを基礎として公平なる判断をして、結論を出して行く、こういうつもりで聞いております。そこで今私は堀木さんからそういうお言葉伺つたのでございまするが、もしそういうお考え堀木さんがおられるとすれば、すでに公務員の給與を引上げるということが前提となつてこの裁定ができておる、もしこう言われるのでありましたならば、現実の問題として、公務員の給與の引上げが政府において拒否されておる実情でありまする以上、この裁定は根本の前提條件を失つてしまう、何ら価値がないということ。それともう一つ、私が今のお言葉から感じました点は、仲裁委員会がこれはこの程度上げてやろうという第六感と申しますか、まず初めに腰だめで結論を出して行く。そうしてその結論に対して、そのときどきに、かつて理由を押しつけているのではないかということを、疑わざるを得ないのでございます。ことに委員方々は練達の士でありまして、この練達の方々は、自由自在の手練をもつて、自由に理由を発見され、適当にそれをやられるところの十分な手練のお方でございます。まず月に千円ぐらいという目標を置いて、これに対して裁定理由をつけて行こうじやないかということで、たまたま国鉄に対しては待遇が低下しているという巧妙な理由を発見されました。しかしながら、そのときには專売のことまでは考えていなかつた。それで国鉄の場合においては、なるほど月千円という、それにちようどいい理由があつたかもしれません。しかしながら、これはあまりに芸がこまか過ぎたのではないか。国鉄裁定一つだけならば、それで済んだかもしれませんが、專売裁定におきましては、国鉄の裁定においてあなた方のおきめになつたところの、貸金の水準を引上げるというその改訂の仮処分を拾い上げておられるのであります。この二つの考え方は、明らかに理論的には矛盾であると言わなければなりません。そしてその矛盾がよつて来るゆえんのものは、承りますると、この二つの会社の経理状態が違つておるからこういう違いが現われておる、こういうふうに説明されておるのでございまするが、しかしながら、ただいま私が指摘いたしましたる国鉄裁定の末尾の一節を見ますると、他の公務員の待遇が引しげられないということが前提で、あの裁定ができておると言われる。ただいまの專売公社の場合においては、他の公務員の給與が引げられるという前提てこれができておる。しかもその結果は、先ほど今井委員も言われましたように、国鉄はこれで平均八千二百円である。專売は八千百円である。実にその自由自在なるお腕前に対しては、衷心から敬意を表せざるを得ないのでありまするが、ことにこの前の国鉄裁定の際における合同審査会におきまして、仲裁委員会のある代表者は、国会が不承認をした場合に、裁定の線に沿うた債務が残るかどうかという問題に対しまして、自分組合の弁護士になれば組合が勝つだろうし、自分公社の弁護士になれば公社が勝つだろう、こういう趣旨のことを言われたことを想起いたすのであります。すなわちこの考え方は、理論によつて結論を出すのでなくて、結論によつて理論をはめ込んで行くという行き方でありまして、かかる行き方が仲裁裁定の根幹をなすことがないように、わが国労働界の将来のために、私は衷心から希望せざるを得ないのであります。たお仲裁裁定においては、公社の現在の生産報獎金制度を改めろという御趣旨でありますけれども公社の現在のこの制度はどういうふうになつておるか。またそれは何ゆえに改める必要があるかという点を、お伺いしたいのであります。
  122. 堀木鎌三

    堀木参考人 大橋さんの御意思をいろいろ付度して申したことが、ごきげんを損したようですが、私はおあやまりすることは一向さしつかえございません。ただそれと同じように、私ども仲裁裁定を、むやみに結論から先に持つてつておるように御推定願うことも、実はおやめを願いたい。私どもは決してそんな練達堪能でもございません。ほんとうの打明けた話が、三人がほんとうに苦労するのでございまして、そんな練達堪能で、あめちよこをつくるようなつもりは決してない。国鉄五十万人従事員の起伏に関し、それから專売公社職員四万人の生活問題に直接関係する問題で、しかも公共企業体は公益性が強くして、国家の産業上の責任というものが非常に大きいということを十分考えながら、苦慮いたしてつくるわけでございます。私が大橋さんの御意思を付度したために怒らしたのなら……(発言する者あり)この点は別段あやまつていただく必要はございませんが、どうぞ御推定くださいませんことをお願いいたします。  それからこの文句で、政府が公務員の給與をかえることを前提にしているのではないかとおつしやるが、これは私ども政府見解を異にしております。政府はどうも公務員の給與は上げない。実は上げたくないような気分が見られますが、私ども政府が、普通の考え方で行けば、人事院の勧告も、仲裁委員会裁定もおのみ込みになるだろう、実はそういう政府を想像しておることは確かなんでございます。政府が実情にめをつむつて——拒否されるというふうな政府前提にしていないのでございますし、おそらく何もこう書いたから、政府がどうしても国家公務員の給與を上げるまで、公共企業体の職員の給與を上げないたんという立場は、絶対にとらない。むしろ国家公務員と公社とは違つて来るのが——公社でも、その実際の財政能力に応じまして違う場合がある。これは私ども基本線ですから、この点たけ申し上げておきます。
  123. 倉石忠雄

    倉石委員長 田中織之進君より議事準行について発言を求められております。この際これを許します。田中織之進君。
  124. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほどから本案の審議に関連いたしまして、民自党の大橋委員から盛んに質疑をされておるのであります。問題は本委員会の審査の方向と、私いささかはすれておるのではないかという感を深くするのであります。もちろん参考人として仲裁委員会の諸君に、本委員会に御出席願つておるのでありまするが、参考人として御出席を願つておるということは、本委員会の審議の対象になつておりまする仲裁委員会裁定について、われわれが説明を伺う意味において、仲裁委員会の諸君の御出席を願つておるのであります。本委員会の審査の対象は、あくまで公共企業体労働関係法第十六條二項の規定に基き、国会議決を求めるの件として、專売裁定の問題について、政府が一億二千八百万円を支出するということの、承認をしたいということについての件でありますから、これを国会として取上げることがはたして妥当であるかどうかという問題、またこれを国会として取しげるということに相なりました場合において、政府が不承認を求めて来ておることが正しいかどうかということについての国会側の態度を決定することが、本件に対する私ども審議の中心だろうと思うのです。従つて仲裁委員会がこの裁定を出したいろいろな経過については、一昨日の委員会において仲裁委員会側から詳細な説明があつた、もしその説明に納得できないということでございますならば——われわれは仲裁委員会の御説明を全幅的にとにかく了解できる。もし民自党の方で了解できないということになるなら、民自党の政務調査会なり代議士会に、仲裁委員会の諸君を御出席願つて、そこでとにかく得心の行くまで仲裁委員会の諸君と話合いを願いたい……     〔発言する者あり〕
  125. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  126. 田中織之進

    ○田中(織)委員 話合いを願いたい。ことに大橋君の質問前提としておる国鉄裁定の二十九億九千五百万円というものが、国会で不承認になつておるというような、誤れる事実の上に立つての立論については、——われわれは国会立場においてそういう誤れる立論の上に立つて質問については、議事進行上これは反対せざるを得ない。この点については現に国会としては、衆参両院一致の議決に至らないという厳然たる事実がある。国会としては承認とも不承認とも、いずれの議決も経ていないのです。これは歴然たる事実なんです。それを国会で不承認になつていると独断されて、その上に立つて質問をされるということは、いたずらに本委員会の審議を私は妨害するものだと思う。     〔発言する者あり〕
  127. 倉石忠雄

    倉石委員長 靜粛に願います。
  128. 田中織之進

    ○田中(織)委員 現にこの間の、われわれの專売裁定についてのこの議決案の撤回を求める動議のとき、民主自由党の福永君は何と言つたか。一月七日に国会に提出したものを、一箇月も経過しているけれども、審議未了にしているということは瑣末なる手続の問題で野党の諸君かことさらに審議を引延ばしておるのだ……     〔「その通り」と呼び、その他発言する者あり〕
  129. 倉石忠雄

    倉石委員長 靜粛に願います。
  130. 田中織之進

    ○田中(織)委員 断じてそうではない。——断じてそうではないと思います。
  131. 倉石忠雄

    倉石委員長 田中君、議事進行でありますから、なるべく簡明に願います。
  132. 田中織之進

    ○田中(織)委員 従つて私は、そうした誤れる前提の上に立つての、またこれは別の機会においてただすべき筋合いのものを、いたずらに本委員会の審議を阻害するような大橋君の御発言は、これ以上御遠慮願いまして、問題の本筋に入つての審議を進められるように、委員長においてしかるべくとりはからい願いたいという、議事進行に関する動議を提出するものであります。
  133. 倉石忠雄

    倉石委員長 田中君の議事進行についての御発言に、委員長からお答えいたします。仲裁委員会方々の御意見は、田中君の方では十分おわかりのようである。従つてそのことについてわからない者は、それぞれの政党の政務調査会あたりで十分聞いたらよかろうという御意見でありますが、元来この公共企業体労働関係法というものをわれわれが制定いたしましたときに、やはりこの仲裁に関する事柄は、御承知のように国会においては十六條第二項に定められた事柄、すなわち資金上、予算上可能なりや不可能なりやを審議の対象とすることは当然であるけれども、それを審議する場合には、裁定全般にわたつて論議が行わるべきであるということは、当時もわれわれ委員政府当局との間に明確に論議がかわされたことでありまして、この点は何らふしぎはないのであります。本委員会において裁定内容について、あるいは公社経理について、十分御検討なされることは委員の自由であります。  第二の点でありますが、これは本院の運営委員会においても議論のあつたところでありますが、要するに国鉄裁定に対しては、国会としての一定したる意思表示が行われなかつたということは事実であります。それをある人は、これは国会において決定されたる一定の意思表示がなかつたから、逆に否決せられたるものであると解釈をする人もあるでありましようし、またこれは結論が得られていないのであるという、田中君のような御解釈をなされる方もあります。これは御解釈の自由でありますが、運営委員会においては、国会議決が行われなかつたということを、議長の名において政府に通達いたしたことは御承知の通りであります。そういう点で、大橋委員がこれは否決せられたものであるという解釈をなされることは、大橋君の自由でありまして、大橋君の議論が、本委員会の論議の的はずれであるということには私はならないと存じます。  なおこの際委員各位に一言いたしたいと存じますが、参考人に対する質疑に対して、参考人がこれに答えて、意見を述べるかどうかということは、参考人御自身が定められるでありましようから、議題の範囲内での質疑である以上は、他の委員から答弁の要、不要を断ずるような不規則な発言は、嚴重に愼んでいただきたいと思います。御意見のおありの方は、それぞれ正規の発言順位をお待ちになつて正々堂々と御審議を願いたい。以上田中君の議事進行に関する委員長お答えといたします。大橋武夫君。     〔「動議が提出されたのだから採決せよ」と呼ぶ者あり〕
  134. 倉石忠雄

    倉石委員長 連合審査会でありますから、動議の採決などということはできません。大橋武夫君。
  135. 大橋武夫

    大橋委員 私の先ほど質問……     〔発言する者あり〕
  136. 倉石忠雄

    倉石委員長 靜粛に願います。
  137. 大橋武夫

    大橋委員 專売公社における現在の生産報奨金というものがどういう内容になつているか、それをいかに改められる御意向であるか、その点に対するお答えをお願いいたします。
  138. 今井一男

    今井参考人 その点はむしろ現行の規定を印刷物にして、後ほどお目にかけた方が了解が早いだろうと思います。
  139. 大橋武夫

    大橋委員 それでは現行の制度はその際書面で昇見するといたしまして、どういう点を、どういうふうに改正すべきであるという御意見でございますか。
  140. 今井一男

    今井参考人 現在の生産報奨金は、生産に直接従事する者だけにしか與えられないのでありますが、その点も現打上問題がございます。かつまた配分方法についても、いたずらに労働強化に資しているというような疑問もございますので、この点は一応両者の相談によりまして、合理的な解決方法を立ててもらいたい、もしまとまらないならば、仲裁委員の方である程度おせわをするというわけであります。
  141. 大橋武夫

    大橋委員 私は、ての点について一つの疑問を持つているので、この機会に御説明を煩わしたいと思うのであります。  元来賃金形態というものの発達の過程から言いますと、賞與制のごとき、使用者が一方的にきめるところの給與制度を排して、給與の全部を、労働者と使用者の雇用契約上の権利たらしめるということが、必要なことではないかと考えます。公社の現在の報奨金制度というものは、賃金学的に申しまするならば、一種の団体請負的な性質を加味いたしましたところの奨励加給の制度であります。かかる奨励加給というものは、高能率、高賃金という見地から、むしろ奨励せらるべきものでありまして、これを公社の一方的に定めまするところの賞與制度というような、契約上の基礎のない、いわゆる金一封的なものに改めるというようなことは、賃金発達の過程から見ても、また職員諸君の権利を保護する上から言つても、賃金発達の逆行ではないかという気持がいたしておるのでございますが、この点は仲裁委員としてはどういうふうに考えられますか。やはり奨励加給制よりも、賞與制の方がよろしいというお考えでございますか。
  142. 今井一男

    今井参考人 ただいまの大橋委員の、契約上の権利とすべきだという御主張は、全然御同感でございますが、お話のように、賞與というものは、すべて使用主が方的にかつてにやるものであるという前提に立ちますと、問顔があるのであります。ここに書きましたように、われわれは「公社組合と協議して」という建前をとつておるのでありまして、基準は両者で協議して、まとまらないような場合は、われわれの方である程度おせわするという立場に立つておるのでありまして、基本線ははつきりしております。むろん成績いかんによつて、その金額が多くなつたり少くなつたりいたしますけれども、その基準は、両者で協議してやつていただくという意味の賞與制度であります。
  143. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、それは賞與でなく、やはり種の奨励加給ですか。
  144. 今井一男

    今井参考人 奨励加給という言葉も、生産高そのものとすぐリンクするもの、あるいは一個当り幾らというような数に関するもの、あるいはまた利潤というようなものに入るものとか、いろいろございますが、われわれの考えているところの賞與制度というものは、利潤とか、あるいは経費の節約とか、そういうものが入るという意味において賞與という言葉を書きましたが、奨励加給よりはわくが広うございます。
  145. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、賃金における利益分配的な考え方を加味した制度を、今はさしておられるのですか。
  146. 今井一男

    今井参考人 国鉄の場合に出しましたものと同じようなものを、委員会としては考えております。
  147. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、やはり一つの権利として與えられるべきものであつて、方的なものではないというお考えですね。ボーナスをくれないからといつて、裁判所に訴えるわけに行かない。こういうものをわれわれは普通賞與と申しておりますが、仲裁委員会のお考えはそういう意味でなく、やはりつの賃金である、契約上の権利である。こういうふうにおつしやいましたから、この呼び方があるいは適切な表現ではなかつたように私思いますが、まあ字句のことはこの程度にいたしまして、それでその賞與制度をどういう趣旨にすることが合理的とお考えでありますか。またある程度の具体案がおありでございますか。この点だけをお漏らし願いたい。
  148. 今井一男

    今井参考人 この点は国鉄の場合には裁定書の部にある程度の説明を加えておりますが、これとまつたく同じものをわれわれは考えております。しかしながらこういつた問題も、やはり両者が納得の上でこしらえられるということが最も望ましい。それからまた能率の増進、事業の繁栄にも相なるかと存じますので、一応両者間でおきめにたつた上で、もしもお話がまとまらない場合にはわれわれが口出しをする。こういつた考え方にしておりますので、われわれといたしましてはプロフイット・シエァリングで、基準だけを両方できめて行くという考え方にして、とにかく労働者も、自分たちの労働の結果が自分たちのふところと直結する。こういつた態勢になることがいいんじやないか。そういつたことを基本的に考えております。
  149. 大橋武夫

    大橋委員 それで現在の奨励加給の制度、なるほどそれの範囲を拡張されるという点はよくわかります。だから、この部分は新しい問題でございますが、現在奨励加給を受けておられる人々に対しても、現在の制度は不適当である。こういう見解のもとに出て来た結論ですか。
  150. 今井一男

    今井参考人 決して現在のものを全面的に不適当というわけでもございませんが、しかしながらその基準のきめ方及び頭打ちの関係等におきまして、問題があるようでございます。要するに幾ら能率を上げましても、幾ら幾らでちよん切つてしまう。こういうのが現行制度でございます。こういつたことにつきましては、むろんいろいろの角度から両者の方に意見があろうと思いますが、そういつたことを、両者の話合いで触きほぐしていただくことを考えております。
  151. 大橋武夫

    大橋委員 仲裁委会の委員各位に対します私の質疑は、たお速記録を調べた上で多少お伺いしなければならぬ点があるかと存じます。その部分を保留いたしますが、一応本日はこの程度にいたしておきます。なお公社並びに政府に対する質問は保留いたします。
  152. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこ程度をもつて散会いたしまして、明日午前十時より引続きこの連合審査会を開きます。政府当局及び参考人各位の御出席をお願いいたしまして、質疑を進めたいと存じますから、本日御出席の参考人各’位は、御足労ながら明日も午前十時より御出席をお願いいたしたいのであります。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十四分散会